(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
(21)【出願番号】P 2018122105
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原田 範行
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-032133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0052635(US,A1)
【文献】特開2004-021577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソースが入力端子に接続され、ドレインが出力端子に接続された出力トランジスタと、
前記出力端子と接地端子の間に接続された分圧回路と、
前記分圧回路の出力端子が一方の入力端子に接続され、基準電圧源の出力端子が他方の入力端子に接続され、出力端子が前記出力トランジスタのゲートに接続された誤差増幅器と、
前記出力端子と前記分圧回路の出力端子の間に接続された位相補償回路と、
前記入力端子にソースが接続され、前記位相補償回路にドレインが接続された補助トランジスタと、
前記出力トランジスタのゲートと前記補助トランジスタのゲートの間に接続されたオフセット電圧源と、を備え、
前記補助トランジスタのゲートの電圧は前記出力トランジスタのゲートの電圧より前記オフセット電圧源の電圧だけ高い
ことを特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
前記オフセット電圧源は、電流源から電流を供給される抵抗素子である
ことを特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項3】
前記オフセット電圧源は、ゲートにバイアス電圧が供給されるMOSトランジスタである
ことを特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【請求項4】
前記オフセット電圧源は、ダイオード素子である
ことを特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテージレギュレータに関し、より詳しくはボルテージレギュレータの位相補償回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のボルテージレギュレータを示す回路図である。
従来のボルテージレギュレータ200は、誤差増幅器21と、基準電圧源22と、出力トランジスタ23と、分圧回路24と、抵抗25と、コンデンサ26と、補助トランジスタ27と、入力端子101と、出力端子102と、を備えている。
【0003】
誤差増幅器21は、反転入力端子に基準電圧源22の出力端子が接続され、非反転入力端子に分圧回路24の出力端子が接続される。出力トランジスタ23は、ソースが入力端子101に接続され、ドレインが出力端子102に接続され、ゲートが誤差増幅器21の出力端子に接続されている。分圧回路24は、出力端子102と接地端子103の間に接続される。抵抗25とコンデンサ26は、出力端子102と分圧回路24の出力端子の間に接続されている。補助トランジスタ27は、ソースが入力端子101に接続され、ドレインが抵抗25とコンデンサ26の接続点に接続され、ゲートが誤差増幅器21の出力端子に接続される。
【0004】
以上のような構成をしたボルテージレギュレータ200は、抵抗25とコンデンサ26と補助トランジスタ27で位相補償回路を構成し、補助トランジスタ27を流れる電流と抵抗25に生成した位相補償信号をコンデンサ26を介して誤差増幅器21の非反転入力端子に帰還信号として戻すことにより位相補償している。
【0005】
ボルテージレギュレータ200は、期待される位相補償効果を得るために、出力トランジスタ23が飽和領域で動作するとき補助トランジスタ27も飽和領域で動作することが必要である。従って、補助トランジスタ27は、ソース・ドレイン間電圧Vdsがオーバードライブ電圧(Vgs-Vth)より大きくなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術のボルテージレギュレータにおいて、補助トランジスタ27のソース・ドレイン間電圧Vdsは、入出力端子間の電圧より抵抗25の電圧降下分小さい値となる。従って、期待される位相補償効果を得るために、補助トランジスタ27が飽和領域で動作させるには、入出力端子間の電圧差を抵抗25による電圧降下分大きくする必要があり、入出力電圧差を小さくできないという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされ、入出力電圧差が小さい場合でも安定して動作する位相補償回路を備えたボルテージレギュレータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のボルテージレギュレータは、ソースが入力端子に接続され、ドレインが出力端子に接続された出力トランジスタと、前記出力端子と接地端子の間に接続された分圧回路と、前記分圧回路の出力端子が一方の入力端子に接続され、基準電圧源の出力端子が他方の入力端子に接続され、出力端子が前記出力トランジスタのゲートに接続された誤差増幅器と、前記出力端子と前記分圧回路の出力端子の間に接続された位相補償回路と、前記入力端子にソースが接続され、前記位相補償回路にドレインが接続された補助トランジスタと、を備え、前記補助トランジスタのゲートは、前記誤差増幅器の出力端子とオフセット電圧源を介して接続されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボルテージレギュレータによれば、位相補償回路を構成する補助トランジスタのゲートにオフセット電圧源を備えたので、入出力電圧差が小さい場合においても、位相補償回路は安定して動作することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のボルテージレギュレータを示す回路図である。
【
図2】本実施形態の位相補償回路の一例を示す回路図である。
【
図3】従来のボルテージレギュレータを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施形態のボルテージレギュレータを示す回路図である。
本実施形態のボルテージレギュレータ100は、誤差増幅器11と、基準電圧源12と、出力トランジスタ13と、分圧回路14と、抵抗15と、コンデンサ16と、補助トランジスタ17と、オフセット電圧源18と、入力端子101と、出力端子102と、を備えている。
【0013】
誤差増幅器11は、反転入力端子に基準電圧源12の出力端子が接続され、非反転入力端子に分圧回路14の出力端子が接続される。出力トランジスタ13は、ソースが入力端子101に接続され、ドレインが出力端子102に接続され、ゲートが誤差増幅器11の出力端子に接続されている。分圧回路14は、出力端子102と接地端子103の間に接続される。抵抗15とコンデンサ16は、出力端子102と分圧回路14の出力端子の間に接続されている。補助トランジスタ17は、ソースが入力端子101に接続され、ドレインが抵抗15とコンデンサ16の接続点に接続される。オフセット電圧源18は、誤差増幅器11の出力端子と補助トランジスタ17のゲートとの間に接続される。
【0014】
ボルテージレギュレータ100は、出力端子102の出力電圧Voutを分圧回路14で分圧した帰還電圧と、基準電圧源12の基準電圧とを誤差増幅器11で比較し、その比較結果によって出力トランジスタ13のゲート電圧を制御することにより、出力端子102の出力電圧Voutが所望の電圧に保持される。
【0015】
抵抗15とコンデンサ16とオフセット電圧源18と補助トランジスタ17は、位相補償回路を構成する。位相補償信号は、補助トランジスタ17に流れる電流と抵抗15とによりを生成される。誤差増幅器11は、位相補償信号がコンデンサ16を介して誤差増幅器11の非反転入力端子に帰還されることで位相補償される。
【0016】
出力トランジスタ13が飽和領域で動作するための条件は、入力電圧をVin、出力電圧をVout、閾値電圧をVth、ゲート・ソース間電圧をVgsとすると(1)式で表される。
(Vin-Vout)≧(Vgs-Vth) (1)
【0017】
同様に、補助トランジスタ17が飽和領域で動作するための条件は、オフセット電圧源18のオフセット電圧をΔVos、閾値電圧をVth、抵抗15の抵抗値をRm、抵抗15に流れる電流をImとすると(2)式で表される。
(Vin-Vout-Im×Rm)≧(Vgs-ΔVos-Vth) (2)
【0018】
(1)式と(2)式より、オフセット電圧ΔVosを抵抗15による電圧降下(Im×Rm)以上に設定することによって、補助トランジスタは出力トランジスタと同様の入出力電圧差において飽和領域で動作させることが可能である。従って、位相補償回路は、より広い入出力電圧の条件において所望の位相補償効果を得ることができる。
【0019】
図2は、本実施形態のボルテージレギュレータのオフセット電圧源18の一例を示す回路図である。
【0020】
オフセット電圧源18は、入力端子101と誤差増幅器11の出力端子との間に直列に接続された電流源と抵抗を用いて構成した。オフセット電圧源18は、電流源と抵抗の接続点の出力端子が補助トランジスタ17のゲートに接続される。
【0021】
図2のようなオフセット電圧源18において、オフセット電圧ΔVosは、電流源の電流値をIb、抵抗の抵抗値をRbとすると(3)式で表される。
ΔVos=Ib×Rb (3)
【0022】
図2のように構成したオフセット電圧源18は、電流源の電流値や抵抗の抵抗値をトリミング等の手段で調整できるようにして、オフセット電圧ΔVosを所望の値にすることが可能である。
【0023】
以上説明したように、本実施形態のボルテージレギュレータの位相補償回路によれば、より広い入出力電圧条件において、期待した位相補償効果が得られるため、安定した出力電圧Voutを得ることが出来る。
【0024】
なお、オフセット電圧源18の抵抗は、ゲートが定電圧でバイアスされたMOSトランジスタを用いても同様の効果がある。その場合のオフセット電圧ΔVosは、トランジスタのオン抵抗値をRonとすると(4)式で表される。
ΔVos=Ib×Ron (4)
【0025】
また、オフセット電圧源18の抵抗は、ダイオードやゲートとソースを共通としたMOSトランジスタを用いても同様の効果がある。その場合のオフセット電圧ΔVosは、ダイオードの順方向電圧をVfとすると(5)式で表される。
ΔVos=Vf (5)
【符号の説明】
【0026】
11 誤差増幅器
12 基準電圧源
14 分圧回路
18 オフセット電圧源