(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】圧縮機およびこれを用いた機器
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20220525BHJP
F16J 1/08 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
F04B39/00 104D
F04B39/00 107B
F16J1/08
(21)【出願番号】P 2018159906
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】521161750
【氏名又は名称】ジーエムシーシー アンド ウェリング アプライアンス コンポーネント (タイランド) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】永田 修平
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓愛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遵自
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/115530(WO,A1)
【文献】特開2013-096349(JP,A)
【文献】特開2000-345965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0123373(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2003-0039772(KR,A)
【文献】特開2007-132291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F04B 39/12
F16J 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
該シリンダ内を前後方向に往復動するピストンと、を有し、
前記ピストンは、
前記シリンダ内周と摺動可能なピストン摺動面を上死点側に有し、
前記ピストン摺動面より径寸法が小さいピストン小径部を下死点側に有し、
前記シリンダの内周の下死点側に凹部を有
し、
前記ピストンの側面視で前記ピストンに時計回り又は反時計回りの回転モーメントが作用した場合、
前記ピストンの前後方向視で、
前記ピストンの上側又は下側の一方が、少なくとも1箇所で前記シリンダに接触し、
前記ピストンの上側又は下側の他方が、該1箇所に対する左側及び右側のそれぞれ少なくとも1箇所ずつで前記凹部の縁に接触する圧縮機。
【請求項2】
前記ピストンの側面視で、前記ピストンに時計回り又は反時計回りの回転モーメントが作用した場合、
前記ピストンの前後方向視で、
前記ピストン摺動面の上側又は下側の一方の上死点側が少なくとも1箇所で前記シリンダと
接触し、
該
接触する点の個数よりも多い箇所で、上側又は下側の他方の下死点側が、前記凹部の縁と
接触することを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記凹部の左右方向の最大幅は、前記ピストンの半径超であることを特徴とする請求項1乃至
2何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記凹部の左右方向の最大幅は、前記ピストンの半径の1.8倍未満であることを特徴とする請求項1乃至
3何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記ピストンの上面視において、前記凹部の縁の形状は、左右方向いずれかに凸であることを特徴とする請求項1乃至
4何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記ピストンの上面視において、前記凹部の縁の形状は、前方向に凸であることを特徴とする請求項1乃至
4何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記凹部は、前記シリンダの下死点側端部に位置し、前後方向に直交する端面を切り欠く領域に位置することを特徴とする請求項1乃至
6何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記凹部に対向する凹部を有し、
前記ピストンの上面視において、該2つの凹部それぞれを円状又は弧状である場合、該2つの凹部の曲率半径は略同一であることを特徴とする請求項1乃至
7何れか一項に記載の圧縮機。
【請求項9】
請求項1乃至
8何れか一項に記載の圧縮機を備える機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機およびこれを用いた機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ピストンの質量や摩擦を抑制するために、下死点側に広く凹部7を有するピストンを開示している(0014、
図2,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ピストンは、ピストン側面とシリンダ内周との間に供給される潤滑油を介在にした油膜圧力で支持されるところ、特許文献1のように下死点側を凹ませたピストンを採用しようとすると、これらの間の距離が増大するため、下死点側では油膜圧力による支持を行い難くなる。すると、ピストンは、側面視で時計回り又は反時計回りの回転モーメントを受けて回転しようとする力の影響が大きくなってくる。このため、ピストンの上死点側の上面側又は下面側と、下死点側の下面側又は上面側とがシリンダに接触しやすくなる。このうち、上死点側は比較的油膜圧力による保護が効くが、下死点側は上述の通り油膜が生じにくいため、下死点側の支持を検討する必要がある。しかし、特許文献1はそのような検討は何ら開示していない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記事情に鑑みてなされた本発明は、
シリンダと、
該シリンダ内を前後方向に往復動するピストンと、を有し、
前記ピストンは、
前記シリンダ内周と摺動可能なピストン摺動面を上死点側に有し、
前記ピストン摺動面より径寸法が小さいピストン小径部を下死点側に有し、
前記シリンダの内周の下死点側に凹部を有する圧縮機である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】実施例1のシリンダの、
図1におけるA-A断面図
【
図4】実施例1の下死点状態でのシリンダとピストンの側面断面図
【
図5】実施例1の下死点状態でのシリンダとピストンの後方図
【
図6】実施例1のシリンダの、下死点側上方から上死点側下方を見た斜視図
【
図7】実施例1のシリンダの摺動部と非摺動部との境界概略図
【
図8】比較例1の下死点状態でのシリンダとピストンの側面断面図
【
図9】比較例1の下死点状態でのシリンダとピストンの後方図
【
図10】比較例2の下死点状態でのシリンダとピストンの断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0008】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【実施例1】
【0009】
図1は本実施例の圧縮機50の縦断面図である。説明の便利のため、重力加速度方向を下方向、ピストンの往復動方向のうち上死点側を前方向、下死点側を後方向、とする。
【0010】
[圧縮機50]
圧縮機50は、ステータ5およびロータ6からなる電動要素30と、シリンダ1、ピストン4、ピストン4に下死点側で接続するコネクティングロッド2、クランクシャフト7からなる圧縮要素20とが密閉容器3内に収納された形をとる。圧縮要素20は電動要素30の上方に位置するよう構成されている。密閉容器3底部には潤滑油35が貯留されている。
【0011】
略円筒状のクランクシャフト7は、中空円筒状のラジアル軸受部1aを貫通して上下方向を軸方向とし、回転自由に設置されている。クランクシャフト7の回転軸から偏心した位置で、クランクシャフト7の上端にはクランクピン7aが構成されている。クランクピン7aに一端が接続し、他端がピストン4と接続したコネクティングロッド2が設けられており、これによりクランクピン7aが偏心回転運動するとピストン4が往復動する。クランクシャフト7の下部にはロータ6が設けられており、ロータ6が回転するとクランクシャフト7が回転し、クランクピン7aが偏心回転する。このような構造により、クランクシャフト7の回転に伴ってピストン4はシリンダ1内を往復運動することとなる。
【0012】
[ピストン4]
図2は本実施例におけるピストン4の概略側面図である。ピストン4は、ピストンピン9が挿入されたピストンピン型であり、ピストンピン9の挿入穴としてのピストンピン穴4aと、ピストンピン穴4aの一部又は全部より上死点側に位置しシリンダ1壁面と摺動可能なピストン摺動面4dと、ピストンピン穴4aの一部より下死点側に位置しピストン摺動面4dより径寸法が小さいピストン小径部4cとを有する。ピストン摺動面4dの例えば前後方向中央側には、周方向に好ましくは1周分に亘るピストン油溝4bを設けている。
【0013】
ピストン摺動面4dはシリンダ1の内周面と摺動する円筒面である。ピストン小径部4cは、ピストン摺動面4dの外径よりも小さく、ピストン小径部4cとシリンダ1の内周面との接触が少なくとも通常は生じないようにされている。また、ピストンピン9が嵌装された場合、ピストンピン9の上端及び下端はそれぞれ、ピストン小径部4cより内側に位置する。
【0014】
[シリンダ1の壁面]
図3は本実施例のシリンダ1の縦断面略図であり、
図1にて示すA-A断面である。シリンダ1は、ピストン4の外径よりやや大きい径寸法で、ピストン4の前後寸法より長い前後長さの筒状空間を、下死点側を除き囲んでいる。この下死点側からピストンが挿入されて往復動可能である。シリンダ1の下死点側の端部には、ピストン摺動面4dと非接触(非摺動)となる上側凹部8aと下側凹部8bが、相対する向きで形成されている。本実施例の上側凹部8aはシリンダ1上壁面を貫通しており、下側凹部8bはシリンダ1下壁面を貫通しない凹部である。凹部8a,8bはそれぞれ、これらとシリンダ内周面との境界としての縁を凹部8a,8bに含む構成要素である。
【0015】
上側凹部8aを介しては、公知の構成により潤滑油がピストン4とシリンダ1との間に供給される。下側凹部8bは、後述する左右幅を有して設けられており、ピストン4が2点接触しやすいようになっている。
【0016】
なお、ピストン4にピストンピン9とコネクティングロッド2を組付ける工程では、ピストンピン9を上側凹部8aの切欠き部分を通すことで組立てやすい。
【0017】
[ピストン4の側面視における時計/反時計まわりの回転モーメント]
図4は本実施例におけるピストン4とシリンダ1の下死点における前後方向断面の
図3におけるB-B位置の側面概略図であり、
図5は
図4の状態での後方図である。
ピストン4の前後方向視の径はシリンダ1内周面の外径に比してやや小さく、潤滑油が供給される隙間を介してシリンダ1内周面に対向する。この隙間に起因してピストン4は揺動し得るが、往復動に伴い発生する油膜圧力で支持されている。しかし本実施例のピストン4は下死点側の径寸法が小さいため、上死点側と下死点側とで油膜による支持を均等にし難い。したがって、本実施例では、ピストン4が側面視で時計回り又は反時計回りに回転しやすく、ピストン4の上面や下面がシリンダ1内周面に点接触する虞がある。
【0018】
このような揺動の原因としては、ピストンピン9を介してコネクティングロッド2からピストン4が受ける上死点方向への駆動力と、シリンダ室内の圧縮ガスの圧力から受ける下死点方向への力の方向ベクトルの軸ずれが挙げられる。これら2つの力の方向ベクトルが同一軸上に存在しない場合には、ピストン4には回転モーメントが発生する。2つの方向ベクトルが一致するように設計製造することが好ましいものの、圧縮機部品の組み立て工程の都合上、各部品間には所定の隙間が設定されており、それらには加工公差が存在する。よって、実際の製品においてはピストン4には回転モーメントが発生し得る。
【0019】
本発明者の検討の結果、回転モーメントの発生方向は、
図4のような側面視で時計回り、すなわち、ピストン4の上面の上死点側と下面の下死点側とがシリンダ1に接触する方向であることが判明した。これは、ピストンピン9にコネクティングロッド2を嵌装するとコネクティングロッド2は自重によって下方向に力を受けるため、公差を想定した設計では設計位置よりも下方にずれてしまう一方、圧力による力が作用する位置は予めの設計で比較的高精度に予測できるためである。すると、ピストン4の重心周りの回転モーメントは、コネクティングロッド2による上死点方向への力が重心より下側に作用しやすくなる一方、ガス圧はピストン4の頂面に均一に作用する結果、例えば頂面の中心一点への作用と等価になるので、時計回りのモーメントが発生しやすくなる。
【0020】
よって本実施例のピストン4には、
図4に例示するように、上死点側ではピストン摺動面4dの上面を、下死点側ではピストン摺動面4dの下面又はピストン小径部4cの下面をシリンダ1に接触させるような回転モーメントが加わりやすい。このとき、ピストン4の上下での接触点数がそれぞれ1点の場合、ピストン4はピストンピン穴4aの軸まわりのモーメントをうけると、上下2接触点を結ぶ軸まわりに揺動しようとする。すると、ピストン4に加わる外力に応じてピストン4がシリンダ1壁面に衝突し続けることになり、圧縮機の信頼性が低下する。本実施例では、ピストン4をシリンダ1内に安定的に保持するために、
図5に例示するように、下面での支持を2点以上の接触で行えるように構成した。
【0021】
例えばピストン4とシリンダ1の接触点を合計3点確保し、その3点を
図5のように下死点方向から上死点方向にみたときに正三角形とすることが力学的に好ましい。好適には、下面での支持点2点間距離は、ピストン半径の約1.7倍(1.3倍以上、好ましくは1.6倍又は1.65倍以上。また、2.0倍未満、好ましくは1.8倍又は1.75倍以下。)となる。この2点間距離が狭すぎる場合、下面との接触点数が1点のときと同様、ピストン4は力学的に不安定な保持状態となり、圧縮機の信頼性が低下する虞が生じる。
【0022】
[前後方向視における回転モーメント]
ピストン4が上死点近傍に位置する時は、シリンダ室内外の圧力差が大きいために、ピストン4はシリンダ1壁面に強く押されて拘束状態にある。このとき、ピストン4の軸とシリンダ1の軸は略平行となっている。一方、ピストン4が下死点近傍に位置する時は、シリンダ室内外の圧力差が小さく、ピストン4の拘束力が小さい。このため、ピストン4が下死点近傍に位置する時は、わずかな外力のアンバランスによってピストン4の軸とシリンダ1の軸は略平行状態から崩れ、ピストン4とシリンダ1とが点接触を起こしやすい状態にあるといえる。さらに、下死点近傍ではシリンダ1とピストン4とのかかり代が小さいため、力学的に不安定である。力学的不安定な状態下では、ピストン4はシリンダ1壁面に何度も衝突する虞があり、摩擦損失や信頼性の観点から好ましくない。
【0023】
このため、下死点におけるピストン4のシリンダ1に対する接触関係を改善することが最も好ましい。本実施例では、下死点におけるピストン4の上死点側の側面がシリンダ1内周面に接触(例えば点接触)した場合、下死点側の側面が下側凹部8bの縁に接触するようにされている。下側凹部8bの幅をピストン4の左右寸法より小さくし、かつ、ピストン4の左右方向の中心を含んだ範囲に設けることで、少なくとも縁の左側と右側それぞれ1ヶ所ずつがピストン4に接触可能である。通常、ピストン4の上死点側では左右寸法の中心近傍がシリンダ1に接触するので、上死点側の接触位置を挟んで左側と右側それぞれを下死点側で支持できる。したがって、少なくとも3点での接触が生じるため、左右方向の回転モーメント(ピストンピン穴4aの軸まわりのモーメント)を支持することができる。
【0024】
このように本実施例では、往復動方向視略円形のピストン4の下面がシリンダ1壁面に接触する位置は、下側凹部8bの幅によって調整できる。本実施例では、シリンダ壁面下部とピストン4とが接触する2点間距離(接触間隔)がピストン半径(ピストン摺動面4dにおける半径寸法)の2倍(すなわち、直径)未満、好ましくは1.3倍から1.7倍の間程度となるように設定されており、ピストンピン穴4aの穴径はシリンダ壁面下部とピストン4とが接触する2点間距離(接触間隔)よりも小さく設定されている。この時、ピストン4はシリンダ1と3点で接触でき、かつシリンダ壁面下部とピストン4とが接触する2点間距離(接触間隔)を比較的広くできる。このため、下死点近傍においてもピストン4がシリンダ1内に安定的に保持され、ピストン4がシリンダ1壁面と何度も衝突することを抑制できる。
【0025】
なお、上下方向に嵌装されたピストンピン9によってピストン4を拘束することで、左右方向への揺動(前後方向視での時計回り又は反時計回り)を抑えることができる。
【0026】
図6は本実施例のシリンダ1の下死点側の斜視図である。シリンダ1は、下死点側端部位置に、前後方向に直交する端面1zを有し、端面1zの中央側に、前後方向に延在する円筒状の空間が設けられている。この空間にピストン4が挿入される。
【0027】
上側凹部8a、下側凹部8bそれぞれは、端面1zの一部を切り欠いた上で前方向に延在するように設けられている。上側凹部8a、下側凹部8bそれぞれとシリンダ内周面との境界となる縁は、シリンダ内周面の範囲で左右方向に略凸となっている。本実施例では、上面視において上側凹部8aは上死点側に凸の略弧状であり、下側凹部8bは略円形(シリンダ内周面の範囲では略半円)である。また、それぞれの縁は、シリンダ1内周面と滑らかにつながっている。凹部8a,8bそれぞれを円状又は弧状にする場合、それらの曲率半径は略同一であることが好ましい。
【0028】
また、下側凹部8bは、前方向に凸となっている。これにより縁が左側と右側に形成されるため、少なくとも2点での接触が容易になる。
【0029】
ここで、シリンダ1とピストン4との摺動面への潤滑油の供給について考える。
図7は本実施例のシリンダ1内周面の非摺動部(凹部8a,8b)と摺動部(シリンダ内周面)との境界の概略を示す図である。図中、黒線矢印が摺動方向であり、白抜き矢印が油の流れ方向である。潤滑油は非摺動部を介して降りかかる又は非摺動部に貯留されるため、潤滑油の流れの向きは非摺動部から摺動部へと向かう方向となる。このためピストン4の摺動による引き込みによって、潤滑油が摺動部へと導入される。本実施例のように左右方向に凸な縁であると、摺動に伴って多くの潤滑油が摺動部に移行できるため、潤滑性を向上できる。
本実施例の圧縮機は、冷蔵庫その他の機器に適用可能である。
【0030】
[比較例1]
図8は、ピストン4のピストン小径部4cと、シリンダ1の下側凹部8bとが設けられていない比較例1のピストン4とシリンダ1の下死点における縦断面概略図を示す。
図9は下死点方向から見た比較例1の下死点における概略図である。なお、
図8および
図9ではシリンダ1とピストン4以外の部品は非表示としている。
【0031】
比較例1では、下面側の接触が1点接触となりやすい。ピストン4はピストンピン穴4aの軸まわりのモーメントをうけると、上下2接触点を結ぶ軸まわりに揺動しようとする。本比較例ではその揺動を支持する3つめの接触点がないので左右方向の回転によってピストン4とシリンダ1とが接触を繰り返し、信頼性が低下する。
【0032】
[比較例2]
図10は、ピストン小径部4cが前後方向中央側のみに設けられ、下側凹部8bがない比較例2の縦断面概略図である。下死点側にもピストン摺動面4dが形成されることとなるので、シリンダ壁面端部と下死点側のピストン摺動面4dとが1点接触となりやすい。したがって、ピストン小径部4cは、実施例1のように、下死点においてピストン4がシリンダ1から露出する範囲全体を含むことが好ましい。
【符号の説明】
【0033】
1 ・・・シリンダ
2 ・・・コネクティングロッド
3 ・・・密閉容器
4 ・・・ピストン
5 ・・・ステータ
6 ・・・ロータ
7 ・・・クランクシャフト
9 ・・・ピストンピン
1a・・・ラジアル軸受部
4a・・・ピストンピン穴
4b・・・ピストン油溝
4c・・・ピストン小径部
4d・・・ピストン摺動部
4e・・・コネクティングロッド挿入穴
7a・・・クランクピン
8a・・・上側凹部
8b・・・下側凹部
20・・・圧縮要素
30・・・電動要素
35・・・潤滑油
50・・・圧縮機