(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ソレノイドアクチュエータ及び電磁比例バルブ
(51)【国際特許分類】
H01F 7/16 20060101AFI20220525BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H01F7/16 B
H01F7/16 E
H01F7/16 N
H01F7/16 D
H01F7/16 R
F16K31/06 305E
F16K31/06 305J
F16K31/06 305C
F16K31/06 340
(21)【出願番号】P 2018160669
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 剛史
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-264316(JP,A)
【文献】実開昭58-193608(JP,U)
【文献】実開昭56-038421(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0100345(US,A1)
【文献】特開2006-222199(JP,A)
【文献】特開昭55-065782(JP,A)
【文献】実開昭62-160515(JP,U)
【文献】特公昭33-004280(JP,B1)
【文献】特開2008-306123(JP,A)
【文献】特開平06-042668(JP,A)
【文献】特開平02-043705(JP,A)
【文献】実開昭62-142811(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/16
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流の供給によって磁界を形成するコイルと、
前記コイルの内側に軸方向に移動可能に設けられる第1プランジャと、
連結部を介して前記第1プランジャと前記軸方向に間隔を空けて連結される第2プランジャと、
前記第1及び第2プランジャを前記軸方向に付勢する付勢部材と、
前記第1及び第2プランジャが前記軸方向に挿入可能にそれぞれ形成され、前記コイルによる磁束を前記第1及び第2プランジャに導いて前記第1及び第2プランジャを前記付勢部材の付勢力に抗してそれぞれ吸引する第1及び第2ベースと、を備え、
前記第1プランジャは、前記軸方向への移動に伴って前記第1ベースの開口端を通過する先端部を有し、
前記第2プランジャは、前記第1プランジャが前記付勢部材の付勢力により移動するにつれ前記第2ベースの開口端に近づく先端部を有し、
前記第1プランジャの前記先端部と前記第2プランジャの前記先端部との間隔は、前記第1ベースの前記開口端と前記第2ベースの前記開口端との間隔よりも小さい
ことを特徴とするソレノイドアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のソレノイドアクチュエータであって、
前記コイルは、前記第1ベースに導かれる磁束を形成する第1コイルと、前記第2ベースに導かれる磁束を形成する第2コイルと、を備える
ことを特徴とするソレノイドアクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載のソレノイドアクチュエータであって、
前記第1コイルと前記第2コイルとの間に設けられ、磁束の通過を遮蔽する磁気シールドを更に備える
ことを特徴とするソレノイドアクチュエータ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のソレノイドアクチュエータであって、
前記第1プランジャの位置に応じて前記第1及び第2コイルへの電流の供給を制御するコントローラを更に備え、
前記コントローラは、前記第1ベースに前記第1プランジャが挿入されている場合には前記第1コイルに電流を供給する一方で前記第2コイルへの電流の供給を停止する
ことを特徴とするソレノイドアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載のソレノイドアクチュエータであって、
前記コントローラは、前記第1ベースと前記第1プランジャとの間隔が所定間隔以下である場合には前記第1コイルに電流を供給し、前記第1ベースと前記第1プランジャとが前記軸方向に前記所定間隔を超えて離れている場合には前記第1コイルへの電力の供給を停止する
ことを特徴とするソレノイドアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のソレノイドアクチュエータと、
前記第1及び第2プランジャによって駆動される弁体と、
前記弁体を収容し、前記弁体によって開閉されるポートを有するハウジングと、を備える
ことを特徴とする電磁比例バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドアクチュエータ、及びソレノイドアクチュエータを備える電磁比例バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルへ電流を流すことにより磁界を発生させ磁力によりプランジャを移動させるソレノイドアクチュエータが開示されている。このソレノイドアクチュエータは、コイルが発生する磁界によりプランジャを吸引するベースと、プランジャを付勢するスプリングと、を備えており、プランジャは、ベースの吸引力とスプリングの付勢力とが釣り合う位置で保持される。
【0003】
また、特許文献1に開示されるベースの先端部は、プランジャの端部が挿入可能に形成されている。ベースの先端部は、吸引力が略一定となるように、テーパ状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるソレノイドアクチュエータでは、プランジャの端部がベースから抜け出ると、ベースの開口端とプランジャとの間隔が広がり、ベースによる吸引力が低下する。吸引力が低下すると、プランジャの動作が不安定になるおそれがある。そのため、プランジャを安定して駆動できる範囲(いわゆるコントロールゾーン)は、プランジャがベースから抜け出ない範囲に制限される。
【0006】
特許文献1のソレノイドアクチュエータにおいて、コントロールゾーンを拡大するために、ベースの先端部を伸ばしてプランジャが挿入可能な穴部を軸方向に拡大することが考えられる。しかしながら、この場合には、ベースの先端部が伸びる分、ベースによる吸引力が略一定となるようにベースを設計するのが難しくなる。
【0007】
本発明は、ベースの設計難易度を高めることなくコントロールゾーンを拡大することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コイルと、第1プランジャと、第1プランジャと間隔を空けて連結される第2プランジャと、第1及び第2プランジャを付勢する付勢部材と、磁束を第1及び第2プランジャに導いて第1及び第2プランジャを付勢部材の付勢力に抗してそれぞれ吸引する第1及び第2ベースと、を備え、第1プランジャの先端部と第2プランジャの先端部との間隔は、第1ベースの開口端と第2ベースの開口端との間隔よりも小さい。
【0009】
この発明では、第1プランジャが第1ベースからから離れるにつれ、第2プランジャの先端部が第2ベースに挿入された状態で第2ベースの開口端に近づく。したがって、第2ベースから第2プランジャに導かれる磁束の密度を大きくすることができ第2ベースによる吸引力を増大させることができる。
【0010】
また、本発明は、コイルが、第1ベースに導かれる磁束を形成する第1コイルと、第2ベースに導かれる磁束を形成する第2コイルと、を備える。
【0011】
この発明では、第1ベースは、第1コイルによる磁束を第1プランジャに導いて第1プランジャを吸引し、第2ベースは、第2コイルによる磁束を第2プランジャに導いて第2プランジャを吸引する。したがって、第1及び第2ベースを、第1及び第2コイルに応じてそれぞれ設計することができ、第1ベースと第2ベースとを容易に設計することができる。
【0012】
また、本発明は、第1コイルと第2コイルとの間に設けられる磁気シールドを更に備える。
【0013】
この発明では、第1コイルにおける磁路と、第2コイルにおける磁路と、が隔てられる。したがって、第1ベースが受ける第2コイルによる磁束の影響を小さくすることができると共に第2ベースが受ける第1コイルによる磁束の影響を小さくすることができ、第1ベースと第2ベースとをより容易に設計することができる。
【0014】
また、本発明は、第1プランジャの位置に応じて第1及び第2コイルへの電流の供給を制御するコントローラを更に備え、コントローラは、第1ベースに第1プランジャが挿入されている場合には第1コイルに電流を供給する一方で第2コイルへの電流の供給を停止する。
【0015】
この発明では、第1ベースに第1プランジャが挿入されている場合には、第2コイルによる磁界の形成が停止する。したがって、第2ベースによる第2プランジャの吸引を停止することができ、消費電力を低減することができる。
【0016】
また、本発明は、コントローラが、第1ベースと第1プランジャとの間隔が所定間隔以下である場合には第1コイルに電流を供給し、第1ベースと第1プランジャとが軸方向に所定間隔を超えて離れている場合に第1コイルへの電力の供給を停止する。
【0017】
この発明では、第1ベースと第1プランジャとの間隔が所定間隔よりも大きくなって第1ベースによる吸引力が所定吸引力以下となるときに、第1コイルへの電流の供給が停止する。したがって、第1ベースによる吸引を停止することができ、消費電力を低減することができる。
【0018】
また、本発明は、前述のソレノイドアクチュエータと、第1及び第2プランジャによって駆動される弁体と、弁体を収容し弁体によって開閉されるポートを有するハウジングと、を備える。
【0019】
この発明では、ソレノイドアクチュエータのコントロールゾーンを拡大することができるので、弁体の移動範囲を拡大することができる。したがって、電磁比例バルブの開度を容易に制御することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ベースの設計難易度を高めることなくコントロールゾーンを拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るソレノイドアクチュエータの断面図であり、第1プランジャが第1ベースに挿入されている状態を示す。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態に係るソレノイドアクチュエータの断面図であり、第1プランジャの先端部が第1ベースの開口端に到達している状態を示す。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態に係るソレノイドアクチュエータの断面図であり、第1プランジャの先端部が第1スリーブの開口端に到達している状態を示す。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態に係るソレノイドアクチュエータの断面図であり、第1プランジャの先端部が第1スリーブに進入している状態を示す。
【
図5A】
図5Aは、本発明の第1実施形態に係る第1ベース及び第2ベースによる各吸引力を示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、本発明の第1実施形態に係る第1ベース及び第2ベースによる吸引力の合計を示すグラフである。
【
図6】
図6は、第1ベースのみで第1プランジャを駆動するときの第1ベースによる吸引力を示すグラフである。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係るソレノイドアクチュエータの断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施形態に係るソレノイドアクチュエータの断面図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の第3実施形態に係る第1ベース及び第2ベースによる各吸引力を示すグラフである。
【
図9B】
図9Bは、本発明の第3実施形態に係る第1ベース及び第2ベースによる吸引力の合計を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
<第1実施形態>
まず、
図1から
図5Bを参照して、第1実施形態に係るソレノイドアクチュエータ100、及び電磁比例バルブ1について説明する。電磁比例バルブ1は、作動油が流れる通路に設けられ、作動油の流れを制御する。
【0024】
図1から
図4に示すように、電磁比例バルブ1は、弁体としてのポペット部2と、ポペット部2が収容されるハウジング3と、を備える。ハウジング3には第1ポート3a及び第2ポート3bが形成されている。ポペット部2は、ソレノイドアクチュエータ100によって駆動され、ハウジング3に対して移動することにより第1ポート3aを開閉する。これにより、第1ポート3aと第2ポート3bとの間の作動油の流れを制御することができる。
【0025】
ポペット部2は、第1シャフト30aの一端に形成されている。ソレノイドアクチュエータ100は、第1シャフト30aの外周に固定される第1プランジャ20aを備えており、第1プランジャ20aを駆動することにより、ポペット部2を駆動する。
【0026】
以下、ソレノイドアクチュエータ100の構造を、具体的に説明する。
【0027】
ソレノイドアクチュエータ100は、第1コイル10a及び第2コイル10bと、第1コイル10a及び第2コイル10bの内側にそれぞれ設けられる第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bと、第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bをそれぞれ吸引する第1ベース40a及び第2ベース40bと、を備える。第1プランジャ20a、第2プランジャ20b、第1ベース40a及び第2ベース40bは、磁性材からなる。
【0028】
第1コイル10a及び第2コイル10bは、中心軸が略一致するように並べられている。以下において、第1コイル10aの中心軸に沿う方向を「軸方向」と称する。
【0029】
第1コイル10aは、電気絶縁性樹脂材料からなる円筒状の第1ボビン11aに巻き回された導電性線材によって形成されている。第1ボビン11aの両端には鍔部が形成されており、一方の鍔部にはターミナル12a,13aが設けられている。
【0030】
第2コイル10bは、第1コイル10aと同様に、第2ボビン11bに巻き回された導電性線材によって形成されている。第2ボビン11bの一方の鍔部にはターミナル12b,13bが設けられている。
【0031】
第1コイル10a及び第2コイル10bは、ターミナル12a,13a,12b,13bを介してコントローラ70に直列に接続されており、コントローラ70から出力された電流は、第1コイル10a及び第2コイル10bに同時に供給される。第1コイル10a及び第2コイル10bは、コントローラ70からの電流の供給によって磁界を形成する。
【0032】
第1コイル10aの外周は、第1カバー14aの筒部によって覆われている。第1カバー14aは、磁性材からなり、第1コイル10aの外側における磁路を形成する。同様に、第2コイル10bの外周は、磁性材からなる第2カバー14bによって覆われており、第2カバー14bによって第2コイル10bの外側における磁路が形成されている。
【0033】
第1ボビン11aには、第1ベース40a及び第1スリーブ50aの筒部が挿入されている。第1スリーブ50aは、磁性材からなり、第1ベース40aと共に第1コイル10aの内側における磁路を形成する。
【0034】
第1カバー14aは、その筒部から第1ボビン11aの一方の鍔部を跨いで第1ベース40aに向かって延在する平板部を有する。第1カバー14aの平板部は、第1コイル10aの一方の端面側における磁路を形成する。第1スリーブ50aは、その筒部から第1ボビン11aの他方の鍔部を跨いで第1カバー14aに向かって延在する平板部を有する。第1スリーブ50aの平板部は、第1コイル10aの他方の端面側における磁路を形成する。
【0035】
第1ベース40a及び第1スリーブ50aは、非磁性材からなる第1フィラーリング60aを用いて軸方向に間隔を空けて連結されており、第1ベース40aと第1スリーブ50aとの間には磁気ギャップG1が形成されている。
【0036】
第1スリーブ50aには、軸方向に貫通する孔51aが形成されており、孔51aに第1プランジャ20aが挿入されている。孔51aの内径は、第1プランジャ20aの外径よりも僅かに大きく、第1プランジャ20aは、孔51aの内周に設けられる不図示のブッシュにより軸方向に摺動自在に支持されている。このブッシュは非磁性材からなり、第1プランジャ20aの外周面と孔51aの内周面との間には磁気ギャップG2が形成されている。
【0037】
第1ベース40aには、第1プランジャ20aが軸方向に挿入可能な第1穴部41aが形成されている。第1穴部41aの内径は、第1スリーブ50aの孔51aと同様に、第1プランジャ20aの外径よりも僅かに大きい。そのため、
図1に示すように、第1プランジャ20aが第1穴部41aに挿入された状態では、第1プランジャ20aの外周と第1穴部41aの内周との間に磁気ギャップG3が形成される。
【0038】
磁気ギャップG2及び磁気ギャップG3は、磁気ギャップG1よりも小さい。そのため、第1コイル10aにより形成される磁束は、第1ベース40aから磁気ギャップG3を通じて第1プランジャ20aに導かれ、第1プランジャ20aから磁気ギャップG2を通じて第1スリーブ50aに導かれる。このように、第1ベース40aは、第1コイル10aにより形成される磁束を第1プランジャ20aに導くように形成される。
【0039】
軸方向における磁気ギャップG3の幅は、軸方向における磁気ギャップG2の幅よりも小さい。そのため、第1プランジャ20aの先端部21aの近傍における磁束密度は、後端部22aの近傍における磁束密度よりも大きい。したがって、第1プランジャ20aは、後端部22aから先端部21aへ向かう方向(
図1において左方向)に力を受ける。その結果、第1プランジャ20aは、第1ベース40aによって、第1穴部41aに挿入される方向に吸引される。
【0040】
また、第2ボビン11bの内部には、第2プランジャ20b、第2ベース40b及び第2スリーブ50bが第1プランジャ20a、第1ベース40a及び第1スリーブ50aと同様に配置されている。第2スリーブ50bの筒部は、第2ベース40bと共に第2コイル10bの内側における磁路を形成する。第2カバー14bの平板部は、第2コイル10bの一方の端面側における磁路を形成し、第2スリーブ50bの平板部は、第2コイル10bの他方の端面側における磁路を形成する。
【0041】
第2ベース40b及び第2スリーブ50bは、非磁性材からなる第2フィラーリング60bを用いて軸方向に間隔を空けて連結されており、第2ベース40bと第2スリーブ50bとの間に磁気ギャップG4が形成されている。
【0042】
第2ベース40bには、第2穴部41bが貫通して形成されており、第2プランジャ20bの外周と第2ベース40bの第2穴部41bの内周との間には磁気ギャップG6が形成されている。第2プランジャ20bは、孔51bの内周に設けられる非磁性材からなる不図示のブッシュにより摺動自在に支持されており、第2プランジャ20bの外周面と第2スリーブ50bの孔51bの内周面との間には磁気ギャップG5が形成されている。第2スリーブ50bの孔51bには、プラグ43bが螺合により固定されており、プラグ43bによって孔51bが閉塞されている。
【0043】
図2~
図4に示すように、軸方向における磁気ギャップG6の幅が、軸方向における磁気ギャップG5の幅よりも小さい状態では、第2プランジャ20bの先端部21bの近傍における磁束密度は、後端部22bの近傍における磁束密度よりも大きい。そのため、第2プランジャ20bは、後端部22bから先端部21bへ向かう方向(
図2~
図4において左方向)に力を受ける。その結果、第2プランジャ20bは、第2ベース40bの第2穴部41bに挿入される方向に吸引される。
【0044】
このように、第1コイル10a及び第2コイル10bに電流が供給されて磁界が形成されると、第1ベース40a及び第2ベース40bは、第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bを軸方向にそれぞれ吸引する。
【0045】
第1プランジャ20aは第1シャフト30aの外周に固定されている。第1シャフト30aには、第2シャフト30bが第1シャフト30aと同軸に接合されており、第2シャフト30bの外周には第2プランジャ20bが第1プランジャ20aと軸方向に間隔を空けて固定されている。換言すれば、第2プランジャ20bは、連結部としての第2シャフト30b及び第1シャフト30aを介して第1プランジャ20aに軸方向に間隔を空けて連結されている。そのため、第2ベース40bにより第2プランジャ20bに作用する吸引力は、第2シャフト30b及び第1シャフト30aを通じて第1プランジャ20aに伝達される。
【0046】
第1プランジャ20aは、付勢部材としてのコイルスプリング80によって付勢されている。具体的には、コイルスプリング80は、第1ベース40aの内周に設けられる支持部44aと、第1プランジャ20aの先端部21aと、の間に圧縮された状態で設けられている。そのため、コイルスプリング80は、第1プランジャ20aを、第1ベース40a及び第2ベース40bの吸引力に抗して、第1ベース40aの第1穴部41aから抜き出す方向(
図1における右方向)に付勢する。換言すれば、第1ベース40a及び第2ベース40bは、コイルスプリング80の付勢力に抗して、第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bをそれぞれ吸引する。したがって、第1プランジャ20aは、第1ベース40a及び第2ベース40bによる吸引力の合計と、コイルスプリング80による付勢力と、が釣り合う位置で停止する。
【0047】
第1ベース40a及び第2ベース40bによる吸引力は、第1コイル10a及び第2コイル10bに供給される電流値の大きさに応じて変化する。したがって、コントローラ70を用いて第1コイル10a及び第2コイル10bに供給される電流値の大きさを制御することによって、第1ベース40a及び第2ベース40bによる吸引力を制御することができ、第1プランジャ20aの停止位置を制御することができる。
【0048】
第1プランジャ20aを安定して駆動できる範囲(いわゆるコントロールゾーン)について、
図5A及び
図5Bを参照して説明する。
【0049】
図5Aは、第1コイル10a及び第2コイル10bに供給される電流の大きさを一定とした場合の第1ベース40a及び第2ベース40bによる各吸引力を示すグラフである。
図5Bは、第1コイル10a及び第2コイル10bに供給される電流の大きさを一定とした場合の第1ベース40a及び第2ベース40bによる吸引力の合計を示すグラフである。
【0050】
図5A及び
図5Bにおいて、横軸は、第1ベース40aの吸着面43a(
図1参照)と第1プランジャ20aの先端部21aとの距離であるストローク量Sを示している。ストローク量Sは、吸着面43aに先端部21aが接触する状態を0(零)とし、ストローク量Sが増加することは、第1プランジャ20aが吸着面43aから離れる方向(
図1における右方向)に移動することを意味している。目標ストローク量は、第1プランジャ20aの目標停止位置に相当し、コントローラ70は、目標ストローク量に応じて、第1コイル10a及び第2コイル10bに供給する電流値の大きさを制御する。
【0051】
また、
図5Bには、コイルスプリング80の付勢力を示すグラフを併記している。
【0052】
図5A及び
図5Bにおける第1ストローク量S1は、
図1に示す状態、すなわち、第1プランジャ20aの先端部21aが第1ベース40aの第1穴部41aに挿入されておりかつ吸着面43aに近接しない状態のストローク量Sである。第2ストローク量S2は、
図2に示す状態、すなわち、第1プランジャ20aの先端部21aが第1ベース40aの開口端42aに到達している状態のストローク量Sである。第3ストローク量S3は、
図3に示す状態、すなわち、第1プランジャ20aの先端部21aが第1スリーブ50aの開口端52aに到達している状態のストローク量Sである。第4ストローク量S4は、
図4に示す状態、すなわち、第1プランジャ20aの先端部21aが第1スリーブ50aの孔51a内に進入している状態のストローク量Sである。なお、第4ストローク量S4は、第2シャフト30bがプラグ43bに接触している状態のストローク量Sであり、最大のストローク量Sである。
【0053】
第1ストローク量S1と第2ストローク量S2との間の範囲では、第1プランジャ20aの先端部21aが第1ベース40aの第1穴部41aに挿入されている。そのため、第1ベース40aの形状を適宜設計することによって、第1プランジャ20aの先端部21aの近傍における磁束密度を調整することができる。具体的には、第1ベース40aに、開口端42aに向かうにつれ外径が小さくなるようにテーパ部45aを形成する。テーパ部45aにおける磁路面積は、テーパ角に応じて変化するため、テーパ角を適宜設定することによって第1プランジャ20aの先端部21aの近傍における磁束密度を調整することができる。これにより、第1ストローク量S1と第2ストローク量S2との間の範囲における吸引力を、
図5Aに示すようにストローク量Sが増加するにつれ低下させることもできるし、ストローク量Sに関わらず略一定とすることもできる。以下において、第1ストローク量S1と第2ストローク量S2との間の範囲を、「吸引力調整可能範囲Z1」とも称する。
【0054】
なお、0(零)のストローク量Sと第1ストローク量S1との間の範囲では、第1プランジャ20aは吸着面43aに近接し、吸着面43aから第1プランジャ20aへ磁束が導かれる。そのため、この範囲では、吸引力を一定にすることが難しい。第1プランジャ20aが吸着面43aに近接するのを防止すると共に吸着面43aから第1プランジャ20aに導かれる磁束を遮蔽するために、吸着面43aに非磁性材からなる部材を設けてもよい。
【0055】
第2ストローク量S2と第3ストローク量S3との間の範囲では、第1プランジャ20aの先端部21aが第1ベース40aの第1穴部41aから抜け出ている。そのため、第1ベース40aの開口端42aから第1プランジャ20aに導かれる磁束が減少し、第1ベース40aによる吸引力は低下する。以下において、第2ストローク量S2と第3ストローク量S3との間の範囲を、「吸引力調整不可範囲Z2」とも称する。
【0056】
第3ストローク量S3と第4ストローク量S4との間の範囲では、第1プランジャ20aの先端部21aが第1スリーブ50aの孔51aに進入している。そのため、第1ベース40aの開口端42aから第1プランジャ20aに導かれる磁束は更に減少し、第1ベース40aによる吸引力は略0(零)となる。以下において、第3ストローク量S3と第4ストローク量S4との間の範囲を、「吸引不可範囲Z3」とも称する。
【0057】
ところで、第1ベース40aのみで第1プランジャ20aを駆動する場合、コントロールゾーンは、吸引力調整可能範囲Z1に限られる。これは、吸引力調整不可範囲Z2と吸引不可範囲Z3においては、第1プランジャ20aを安定して停止させることができないためである。
図6を参照して、具体的に説明する。
【0058】
図6は、第1ベース40aのみで第1プランジャ20aを駆動するときの第1ベース40aによる吸引力を示すグラフである。なお、
図6に示す吸引力特性を取得するに当たり、吸引力調整可能範囲Z1における吸引力が略一定となるように、第1ベース40aのテーパ部45aの形状を設計している。
【0059】
図6に示す例において、ストローク量S23において第1ベース40aによる吸引力とコイルスプリング80の付勢力とが釣り合っており、第1プランジャ20aは、ストローク量S23の位置で停止するように見える。しかしながら、ストローク量Sがストローク量S23から僅かに増加するだけで、コイルスプリング80による付勢力が第1ベース40aによる吸引力よりも大きくなる。その結果、第1プランジャ20aは、ストローク量Sが増加する方向に更に移動し、ストローク量Sは、第4ストローク量S4まで増加する。また、ストローク量Sがストローク量S23から僅かに減少するだけで、第1ベース40aによる吸引力がコイルスプリング80による付勢力よりも大きくなる。その結果、第1プランジャ20aは、ストローク量Sが減少する方向に更に移動し、ストローク量S12の位置まで移動する。つまり、ストローク量Sの増加に伴って第1ベース40aによる吸引力が低下する吸引力調整不可範囲Z2では、第1ベース40aによる吸引力のみで第1プランジャ20aをストローク量S23の位置で安定して停止させることは実質的にできない。
【0060】
また、吸引不可範囲Z3では、第1ベース40aによる吸引力は略0(零)である。そのため、第1コイル10aに供給される電流を増大させたとしても、第1ベース40aによる吸引力はほとんど増加しない。したがって、第1ベース40aによる吸引力とコイルスプリング80の付勢力とを釣り合わせることができず、吸引不可範囲Z3において第1プランジャ20aを停止させることができない。
【0061】
このように、第1ベース40aによる吸引力のみで第1プランジャ20aを駆動する場合には、吸引力調整不可範囲Z2と吸引不可範囲Z3とにおいて第1プランジャ20aを安定して停止させることができない。したがって、コントロールゾーンは、吸引力調整可能範囲Z1のみとなる。
【0062】
本実施形態に係るソレノイドアクチュエータ100は、第1ベース40a及び第2ベース40bは、第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bをコイルスプリング80の付勢力に抗してそれぞれ吸引する。そのため、5Aに示すように、第2ベース40bの吸引力によって、第1ベース40aによる吸引力の低下を補うことができる。したがって、
図5Bに示すように、第1ベース40a及び第2ベース40bによる吸引力の合計を第1ストローク量S1と第4ストローク量S4との間の範囲において略一定にすることができ、コントロールゾーンを拡大することができる。
【0063】
以下、第1ベース40aによる吸引力の低下を補うように第2プランジャ20bを吸引するための構成について、詳述する。
【0064】
図2に示すように、第1プランジャ20aの先端部21aと第2プランジャ20bの先端部21bとの間隔L1は、第1ベース40aの開口端42aと第2ベース40bの開口端42bとの間隔L2よりも小さい。そのため、第1プランジャ20aの先端部21aが第1ベース40aの第1穴部41aから抜け出ている状態において、第2プランジャ20bは、第2ベース40bの第2穴部41bに挿入されている。したがって、第1プランジャ20aが第1ベース40aから離れる(
図2における右方向に移動する)につれ、第2プランジャ20bの先端部21bが第2ベース40bの第2穴部41bに挿入された状態で第2ベース40bの開口端42bに近づき、軸方向における磁気ギャップG6の幅が小さくなる。その結果、第2プランジャ20bの先端部21bの近傍における磁束密度が大きくなり、第2ベース40bによる吸引力が増大する。
【0065】
吸引力調整不可範囲Z2と吸引不可範囲Z3では、第2プランジャ20bは、第2ベース40bの第2穴部41bに挿入されている。そのため、第2ベース40bの形状を適宜設計することによって、第2プランジャ20bの先端部21bの近傍における磁束密度を調整することができる。
【0066】
具体的には、吸引力調整不可範囲Z2では、第1ベース40aによる吸引力は、ストローク量Sが増加するにつれ減少する。したがって、ストローク量Sが増加するにつれ第2ベース40bによる吸引力が増加するように第2ベース40bを設計することにより、第1ベース40aによる吸引力と第2ベース40bによる吸引力との合計を略一定とすることができる。ストローク量Sが増加するにつれ第2ベース40bによる吸引力を増加させるためには、例えば、第2ベース40bの外径を一定とすればよい。
【0067】
また、吸引不可範囲Z3では、第1ベース40aによる吸引力は、略0(零)である。したがって、ストローク量Sに関わらず第2ベース40bによる吸引力が略一定となるように第2ベース40bを設計することにより、第1ベース40aによる吸引力と第2ベース40bによる吸引力との合計を略一定とすることができる。ストローク量Sに関わらず第2ベース40bによる吸引力を略一定とするためには、例えば、第2ベース40bに、第1ベース40aのテーパ部45aと同様のテーパ部45bを設ければよい。
【0068】
このように、ソレノイドアクチュエータ100では、第1プランジャ20aの先端部21aが第1ベース40aの第1穴部41aから抜け出ている状態において、第2プランジャ20bは、第2ベース40bの第2穴部41bに挿入されている。そのため、第2ベース40bの形状を適宜設定することによって、第1ベース40aによる吸引力の低下を補うように第2プランジャ20bを吸引することができる。
【0069】
第1プランジャ20aと第2プランジャ20bとは互いに連結されているため、第1ベース40aによる吸引力と第2ベース40bによる吸引力との合計は、第1プランジャ20aに作用する。したがって、第1プランジャ20aが第1ベース40aの第1穴部41aから抜け出た状態においても第1プランジャ20aに作用する吸引力を第1ストローク量S1と第4ストローク量S4との間の範囲において維持することができる。これにより、コントロールゾーンを拡大することができる。
【0070】
図5A及び
図5Bに示すように、ソレノイドアクチュエータ100では、吸引力調整可能範囲Z1と、第2ベース40bによる吸引力が略一定となる範囲(吸引不可範囲Z3)に加え、吸引力調整不可範囲Z2においても、第1プランジャ20aの駆動を安定させることができる。したがって、第2ベース40bを用いず第1ベース40aのテーパ部45aを延ばしてコントロールゾーンを拡大する場合と比較して、第1ベース40aの設計難易度を高めることなくコントロールゾーンを拡大することができる。
【0071】
なお、
図5Aに示す例において、吸引不可範囲Z3において第2ベース40bによる吸引力が略一定である一方で、吸引力調整可能範囲Z1において第1ベース40aによる吸引力はストローク量Sの増加に伴って低下する。これは、テーパ部45a,45bの形状(例えばテーパ角)が異なるためである。つまり、第1ベース40aのテーパ部45aの形状を適宜設計することにより、吸引不可範囲Z3における第2ベース40bによる吸引力と同様に、吸引力調整可能範囲Z1における第1ベース40aによる吸引力を略一定にすることが可能である。
【0072】
ソレノイドアクチュエータ100では、第1コイル10aが第1ベース40aに導かれる磁束を形成し、第2コイル10bが第2ベース40bに導かれる磁束を形成する。そのため、第1ベース40aは、第1コイル10aによる磁束を第1プランジャ20aに導いて第1プランジャ20aを吸引し、第2ベース40bは、第2コイル10bによる磁束を第2プランジャ20bに導いて第2プランジャ20bを吸引する。したがって、第1ベース40a及び第2ベース40bを、第1コイル10a及び第2コイル10bに応じてそれぞれ設計することができ、第1ベース40aと第2ベース40bとを容易に設計することができる。
【0073】
第1コイル10aと第2コイル10bとの間には、磁束の通過を遮蔽する磁気シールドとしての非磁性材からなる環状のプレート90が設けられる。具体的には、環状のプレート90は、第1スリーブ50aの板部と第2カバー14bの平板部との間に設けられている。そのため、第1コイル10aの他方の端面側における磁路と、第2コイル10bの一方の端面側における磁路と、が隔てられる。したがって、第1ベース40aが受ける第2コイル10bによる磁束の影響を小さくすることができ、第2コイル10bによる磁束の影響を除外して第1ベース40aを設計することができる。これにより、第1ベース40aの設計難易度を低下させることができる。同様に、第2ベース40bの設計難易度を低下させることができる。
【0074】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0075】
ソレノイドアクチュエータ100では、第1ベース40a及び第2ベース40bは、第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bをコイルスプリング80の付勢力に抗してそれぞれ吸引する。そのため、第1ベース40aによる吸引力の低下を第2ベース40bによる吸引力によって補うことができる。したがって、第1プランジャ20aが第1ベース40aから抜け出た状態においても第1プランジャ20aを安定して駆動させることができる。これにより、第1ベース40aの設計難易度を高めることなくコントロールゾーンを拡大することができる。
【0076】
ソレノイドアクチュエータ100では、第1コイル10aが第1ベース40aに導かれる磁束を形成し、第2コイル10bが第2ベース40bに導かれる磁束を形成する。そのため、第1ベース40aは、第1コイル10aによる磁束を第1プランジャ20aに導いて第1プランジャ20aを吸引し、第2ベース40bは、第2コイル10bによる磁束を第2プランジャ20bに導いて第2プランジャ20bを吸引する。したがって、第1ベース40a及び第2ベース40bを、第1コイル10a及び第2コイル10bに応じてそれぞれ設計することができ、第1ベース40aと第2ベース40bとを容易に設計することができる。
【0077】
また、第1コイル10aと第2コイル10bとの間には、磁束の通過を遮蔽する非磁性材からなる環状のプレート90が設けられる。そのため、第1コイル10aによる磁束の経路と、第2コイル10bによる磁束の経路と、が隔てられる。したがって、第1ベース40aが受ける第2コイル10bによる磁束の影響を小さくすることができ、第2ベース40bが受ける第1コイル10aによる磁束の影響を小さくすることができる。したがって、第1ベース40aと第2ベース40bとを容易に設計することができる。
【0078】
また、電磁比例バルブ1では、第1プランジャ20aと第2プランジャ20bが駆動するポペット部2によって、ハウジング3の第1ポート3aが開閉される。ソレノイドアクチュエータ100のコントロールゾーンを拡大することができるので、ポペット部2の移動範囲を拡大することができ、電磁比例バルブ1の開度を容易に制御することができる。
【0079】
なお、ソレノイドアクチュエータ100は、プランジャとして第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bを備え、ベースとして第1ベース40a及び第2ベース40bを備えている。プランジャ及びベースの数は、2つに限られず、3つ以上であってもよい。
【0080】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るソレノイドアクチュエータ200について、
図7を参照して説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
図7に示すように、ソレノイドアクチュエータ200は、第1コイル10a及び第2コイル10bに代えてコイル210を備えている点において、第1実施形態に係るソレノイドアクチュエータ100と相違する。
【0082】
コイル210は、電気絶縁性樹脂材料からなる円筒状のボビン211に巻き回された導電性線材によって形成されている。ボビン211には、第1ベース40a、第2ベース240b及びスリーブ250が挿入されており、第1ベース40a、第2ベース240b及びスリーブ250によって、コイル210の内側における磁路が形成されている。
【0083】
第1ベース40aと第2ベース240bとの間に磁気ギャップG1が形成されており、第2ベース240bの第2穴部241bの内周面と第1プランジャ20aの外周面との間に磁気ギャップG2が形成されている。つまり、ソレノイドアクチュエータ200では、第2ベース240bが、第1実施形態における第1スリーブ50a(
図1等参照)として機能する。
【0084】
ソレノイドアクチュエータ200においても、第1ベース40a及び第2ベース240bは、第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bをコイルスプリング80の付勢力に抗してそれぞれ吸引する。そのため、第1ベース40aによる吸引力の低下を第2ベース240bによる吸引力によって補うことができる。したがって、第1プランジャ20aが第1ベース40aから抜け出た状態においても第1プランジャ20aを安定して駆動させることができる。これにより、第1ベース40aの設計難易度を高めることなくコントロールゾーンを拡大することができる。
【0085】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係るソレノイドアクチュエータ300について、
図8及び
図9を参照して、説明する。以下では、第1実施形態と異なる点を主に説明し、第1実施形態で説明した構成と同一の構成又は相当する構成については、図中に第1実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0086】
図8に示すように、ソレノイドアクチュエータ300では、第1コイル10a及び第2コイル10bは、コントローラ70に並列に接続されている点において、第1実施形態に係るソレノイドアクチュエータ100と相違する。コントローラ70は、第1コイル10aと第2コイル10bとに別々に電流を供給できるように形成されている。
【0087】
図9Aに示すように、第1ベース40aは、吸引力調整可能範囲Z1における吸引力がストローク量Sに関わらず略一定となるように設計されている。また、第2ベース40bは、吸引不可範囲Z3における吸引力がストローク量Sに関わらず略一定となるように設計されている。
【0088】
コントローラ70は、ストローク量S、すなわち第1プランジャ20aの位置に応じて第1コイル10a及び第2コイル10bへの電流の供給を制御する。ストローク量S(第1プランジャ20aの位置)は、例えば不図示のストロークセンサ(位置センサ)を用いて取得される。電磁比例バルブ1の出力である圧力又は流量をセンサを用いて計測し計測された値に基づいてストローク量Sを取得してもよい。また、第1コイル10a及び第2コイル10bへ供給される電流の大きさとストローク量Sとの関係が予めわかっている場合には、コントローラ70から第1コイル10a及び第2コイル10bへ供給される電流の合計値に基づいてストローク量Sを取得してもよい。
【0089】
以下、コントローラ70による電流の供給の制御について説明する。
【0090】
コントローラ70は、吸引力調整可能範囲Z1において、第1コイル10aに電流を供給する一方で、第2コイル10bへの電流の供給を停止する。そのため、第2ベース40bによる吸引力は生じず、第1プランジャ20aには、第1ベース40aによる吸引力が作用する。
【0091】
コントローラ70は、吸引力調整不可範囲Z2において、第1コイル10aと第2コイル10bに電流を供給する。そのため、第1プランジャ20aは、第1ベース40aによる吸引力と、第2ベース40bによる吸引力と、を受ける。したがって、第1ベース40aによる吸引力の低下を補うように第2プランジャ20bを吸引することができ、吸引力調整不可範囲Z2において第1プランジャ20aを安定して駆動することができる。
【0092】
コントローラ70は、吸引不可範囲Z3において、第2コイル10bに電流を供給する一方で、第1コイル10aへの電流の供給を停止する。そのため、第1ベース40aによる吸引力は生じず、第1プランジャ20aには、第2ベース40bによる吸引力が、第2プランジャ20b、第2シャフト30b及び第1シャフト30aを通じて作用する。
【0093】
吸引不可範囲Z3において、第2ベース40bによる吸引力はストローク量Sに関わらず略一定である。そのため、第1プランジャ20aに作用する吸引力を略一定とすることができる。したがって、第1プランジャ20aを安定して駆動することができる。
【0094】
このように、ソレノイドアクチュエータ300においても、吸引力調整可能範囲Z1と、第2ベース40bによる吸引力が略一定となる範囲(吸引不可範囲Z3)に加え、吸引力調整不可範囲Z2においても、第1プランジャ20aの駆動を安定させることができる。したがって、第2ベース40bを用いず第1ベース40aのテーパ部45aを延ばしてコントロールゾーンを拡大する場合と比較して、第1ベース40aの設計難易度を高めることなくコントロールゾーンを拡大することができる。
【0095】
また、コントローラ70は、ストローク量Sが吸引力調整可能範囲Z1内の値である場合に第2コイル10bへの電流の供給を停止し、ストローク量Sが吸引力調整不可範囲Z2又は吸引不可範囲Z3内の値である場合に第2コイル10bへ電流を供給する。そのため、第1ベース40aの第1穴部41aから第1プランジャ20aが抜け出て第1ベース40aによる吸引力が低下したときに、第2コイル10bに電流が供給されて第2ベース40bが第2プランジャ20bを吸引する。したがって、コントロールゾーンを維持しつつ消費電力を低減することができる。
【0096】
また、コントローラ70は、ストローク量Sが吸引力調整不可範囲Z2内の値である場合に第1コイル10aに電流を供給し、ストローク量Sが吸引不可範囲Z3内の値である場合に第1コイル10aへの電流の供給を停止する。そのため、第1コイル10aへ電流を供給したとしても第1ベース40aによる吸引力が略0(零)であるにも関わらず第1コイル10aへ電流が供給されるのを防止することができる。したがって、コントロールゾーンを維持しつつ消費電力を低減することができる。
【0097】
なお、吸引力調整可能範囲Z1は、第1プランジャ20aが第1ベース40aの第1穴部41aに挿入されている場合に相当する。吸引力調整不可範囲Z2は、第1プランジャ20aが第1ベース40aの第1穴部41aから抜け出ておりかつ第1プランジャ20aの先端部21aが第1スリーブ50aの孔51a内に進入していない場合に相当する。吸引不可範囲Z3は、第1プランジャ20aの先端部21aが第1スリーブ50aの孔51a内に進入している場合に相当する。
【0098】
コントローラ70は、第1プランジャ20aの先端部21aが第1スリーブ50aの孔51a内に進入しているか否かで第1コイル10aへの電流の供給及び停止を切り換える形態に限られない。例えば、コントローラ70は、第1プランジャ20aの先端部21aが第1スリーブ50aの孔51a内に進入していない状態において第1コイル10aへの電流の供給を停止してもよいし、第1プランジャ20aの先端部21aが第1スリーブ50aの孔51a内に進入している状態において第1コイル10aへの電流を供給してもよい。換言すれば、コントローラ70は、第1ベース40aの第1穴部41aから第1プランジャ20aが抜け出ておりかつ第1ベース40aと第1プランジャ20aとの間隔が所定間隔以下である場合に第1コイル10aに電流を供給し、第1ベース40aの第1穴部41aから第1プランジャ20aが抜け出ておりかつ第1ベース40aと第1プランジャ20aとの間隔が所定間隔よりも大きい場合に第1コイル10aへの電流の供給を停止してもよい。
【0099】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0100】
本実施形態に係るソレノイドアクチュエータ100,200,300は、電流の供給によって磁界を形成する第1コイル10a、第2コイル10b、コイル210と、第1コイル10a、コイル210の内側に軸方向に移動可能に設けられる第1プランジャ20aと、第1シャフト30a及び第2シャフト30bを介して第1プランジャ20aと軸方向に間隔を空けて連結される第2プランジャ20bと、第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bを付勢するコイルスプリング80と、第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bが軸方向に挿入可能に形成され、第1コイル10a、第2コイル10b及びコイル210による磁束を第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bに導いて第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bをコイルスプリング80の付勢力に抗してそれぞれ吸引する第1ベース40a、第2ベース40b,240bと、を備え、第1プランジャ20aは、軸方向への移動に伴って第1ベース40aの開口端42aを通過する先端部21aを有し、第2プランジャ20bは、第1プランジャ20aがコイルスプリング80の付勢力により移動するにつれ第2ベース40b,240bの開口端42b,242bに近づく先端部21bを有し、第1プランジャ20aの先端部21aと第2プランジャ20bの先端部21bとの間隔L1は、第1ベース40aの開口端42aと第2ベース40b,240bの開口端42b,242bとの間隔L2よりも小さい。
【0101】
この構成では、第1プランジャ20aが第1ベース40aから離れるにつれ、第2プランジャ20bの先端部21bが第2ベース40b,240bに挿入された状態で第2ベース40b,240bの開口端42b,242bに近づく。したがって、第2ベース40b,240bから第2プランジャ20bに導かれる磁束の密度を大きくすることができ第2ベース40b,240bによる吸引力を増大させることができる。これにより、第1ベース40aの設計難易度を高めることなくコントロールゾーンを拡大することができる。
【0102】
また、ソレノイドアクチュエータ100,300は、第1ベース40aに導かれる磁束を形成する第1コイル10aと、第2ベース40bに導かれる磁束を形成する第2コイル10bと、を備える。
【0103】
この構成では、第1ベース40aは、第1コイル10aによる磁束を第1プランジャ20aに導いて第1プランジャ20aを吸引し、第2ベース40bは、第2コイル10bによる磁束を第2プランジャ20bに導いて第2プランジャ20bを吸引する。したがって、第1及び第2ベース40a,40bを、第1及び第2コイル10a,10bに応じてそれぞれ設計することができ、第1ベース40aと第2ベース40bとを容易に設計することができる。
【0104】
また、ソレノイドアクチュエータ100,300は、第1コイル10aと第2コイル10bとの間に設けられ、磁束の通過を遮蔽する環状のプレート90を更に備える。
【0105】
この構成では、第1コイル10aにおける磁路と、第2コイル10bにおける磁路と、が隔てられる。したがって、第1ベース40aが受ける第2コイル10bによる磁束の影響を小さくすることができると共に第2ベース40bが受ける第1コイル10aによる磁束の影響を小さくすることができ、第1ベース40aと第2ベース40bとをより容易に設計することができる。
【0106】
また、ソレノイドアクチュエータ300は、第1プランジャ20aの位置に応じて第1コイル10a、第2コイル10bへの電流の供給を制御するコントローラ70を更に備え、コントローラ70は、第1ベース40aに第1プランジャ20aが挿入されている場合には第1コイル10aに電流を供給する一方で第2コイル10bへの電流の供給を停止する。
【0107】
この構成では、第1ベース40aに第1プランジャ20aが挿入されている場合には、第2コイル10bによる磁界の形成が停止する。したがって、第2ベース40bによる第2プランジャ20bの吸引を停止することができ、消費電力を低減することができる。
【0108】
また、ソレノイドアクチュエータ300では、コントローラ70は、第1ベース40aと第1プランジャ20aとの間隔が所定間隔以下である場合には第1コイル10aに電流を供給し、第1ベース40aと第1プランジャ20aとが所定間隔を超えて離れている場合には第1コイル10aへの電力の供給を停止する。
【0109】
この構成では、第1ベース40aと第1プランジャ20aとの間隔が所定間隔よりも大きくなって第1ベース40aによる吸引力が所定吸引力以下となるときに、第1コイル10aへの電流の供給が停止する。したがって、第1ベース40aによる吸引を停止することができ、消費電力を低減することができる。
【0110】
また、本実施形態では、電磁比例バルブ1は、前述のソレノイドアクチュエータ100,200,300と、第1プランジャ20a及び第2プランジャ20bによって駆動されるポペット部2と、ポペット部2を収容し、ポペット部2によって開閉される第1ポート3aを有するハウジング3と、を備える。
【0111】
この構成では、ソレノイドアクチュエータ100,200,300のコントロールゾーンを拡大することができるので、ポペット部2の移動範囲を拡大することができる。したがって、電磁比例バルブ1の開度を容易に制御することができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0113】
電磁比例バルブ1は、作動油以外の作動流体、例えば水やその他の液体の流れの制御に用いられてもよい。
【0114】
上記実施形態では、電磁比例バルブ1は、第1コイル10a、第2コイル10b、コイル210への電流の供給が停止している状態において開度が最大となるノーマルオープン型の電磁比例バルブである。本発明は、第1コイル10a、第2コイル10b、コイル210への電流の供給が停止している状態において閉弁となる、又は開度が最小となるノーマルクローズ型の電磁比例バルブであってもよい。
【0115】
第2プランジャ20bは、第1シャフト30a及び第2シャフト30bに代えて、1本のシャフトを介して前記第1プランジャと連結されていてもよい。
【0116】
ポペット部2は、第1シャフト30aとは別体に形成され、第1シャフト30aに連結されていてもよい。
【0117】
弁体は、ポペット部2に限られず、スプールであってもよい。すなわち、電磁比例バルブ1は、スプール弁であってもよい。
【0118】
上記実施形態では、ハウジング3と第1ベース40aとが一体的に形成されている。ハウジング3と第1ベース40aとは別体に形成され、固定されていてもよい。
【0119】
ソレノイドアクチュエータ100,300では、第1コイル10aと第2コイル10bとの間に磁気シールドとしてのプレート90が配置される。本発明は、プレート90を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1・・・電磁比例バルブ、2・・・ポペット部(弁体)、3・・・ハウジング、3a・・・第1ポート(ポート)、10a・・・第1コイル、10b・・・第2コイル、20a・・・第1プランジャ、20b・・・第2プランジャ、21a・・・先端部、21b・・・先端部、30a・・・第1シャフト(連結部)、30b・・・第2シャフト(連結部)、40a・・・第1ベース、40b,240b・・・第2ベース、42a・・・開口端、42b,242b・・・開口端、70・・・コントローラ、80・・・コイルスプリング(付勢部材)、90・・・プレート(磁気シールド)、100,200,300・・・ソレノイドアクチュエータ、210・・・コイル