(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】シートパッドの成形型およびシートパッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/38 20060101AFI20220525BHJP
B29C 39/26 20060101ALI20220525BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20220525BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20220525BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20220525BHJP
B29C 44/58 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B29C33/38
B29C39/26
B29C39/10
B29C44/00 A
B29C44/12
B29C44/58
(21)【出願番号】P 2018162789
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003425
【氏名又は名称】株式会社東洋クオリティワン
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】内田 悠太
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-202824(JP,A)
【文献】特開平09-277283(JP,A)
【文献】実開平05-049323(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 44/00-44/60、67/20
B29C 39/00-39/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡原液が発泡硬化した発泡樹脂から形成されるパッド本体と、前記パッド本体から露出する露出部を有して前記パッド本体に埋設されるフレームと、を備えるシートパッドを成形する成形型であって、
下型と、
一対のパーティング面で互いに当接した前記下型との間に、前記パッド本体を成形するキャビティが形成される上型と、
一対の前記パーティング面の少なくとも一方に取り付けられるシール部材と、を備え、
一対の前記パーティング面の間には、前記露出部が配置される配置部と、前記配置部と前記キャビティとを繋ぐ接続部と、が形成され、
前記シール部材は、
一対の前記パーティング面のうち前記接続部以外の前記配置部の周囲の部位に挟まれる線状の第1部を備え、前記配置部への前記発泡原液の浸入を抑制するように、一対の前記パーティング面のうち前記配置部の周囲の部位の間に位置
し、
前記パーティング面に垂直な方向から見たときに、前記第1部の両端を結んだ仮想線が、前記配置部よりも前記キャビティ側、又は、前記配置部と前記接続部との境界上に位置することを特徴とする成形型。
【請求項2】
前記第1部は、前記上型の前記パーティング面に固定されることを特徴とする請求項
1記載の成形型。
【請求項3】
前記シール部材は、前記接続部に位置して、前記下型の前記パーティング面と前記露出部との間を前記配置部側と前記キャビティ側とに仕切る第2部を備えることを特徴とする請求項
1又は2に記載の成形型。
【請求項4】
前記シール部材は、前記接続部に位置して、前記上型の前記パーティング面と前記露出部との間を前記配置部側と前記キャビティ側とに仕切る第3部を備えることを特徴とする請求項
3記載の成形型。
【請求項5】
発泡原液が発泡硬化した発泡樹脂から形成されるパッド本体と、前記パッド本体から露出する露出部を有して前記パッド本体に埋設されるフレームと、を備えるシートパッドを成形する成形型を用いるシートパッドの製造方法であって、
前記成形型は、下型と、
一対のパーティング面で互いに当接した前記下型との間にキャビティが形成される上型と、を備え、
前記上型または前記下型に前記フレームを固定して、一対の前記パーティング面の間に形成される配置部に露出部を配置する配置工程と、
前記上型と前記下型とを型閉じし、前記発泡原液を前記キャビティ内で発泡硬化する成形工程と、を備え、
前記成形工程において前記配置部への前記発泡原液の浸入を抑制するように、一対の前記パーティング面のうち前記配置部の周囲の部位の間にシール部材が位置
し、
一対の前記パーティング面の間には、前記配置部と前記キャビティとを繋ぐ接続部が形成され、
前記シール部材は、一対の前記パーティング面のうち前記接続部以外の前記配置部の周囲の部位に挟まれる線状の第1部を備え、
前記成形工程において、前記第1部により一対の前記パーティング面の間がシールされた前記配置部の空気が前記発泡原液の発泡圧によって圧縮されることで、前記発泡樹脂が前記接続部まで設けられるように、前記第1部の両端の位置を定めることを特徴とするシートパッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートパッドの成形型およびシートパッドの製造方法に関し、特に露出部への発泡樹脂の付着を抑制できるシートパッドの成形型およびシートパッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成形型の一対のパーティング面の間にフレームの一部を配置し、成形型のキャビティ内で発泡原液を発泡硬化させた発泡樹脂によりパッド本体を形成することによって、フレームがパッド本体に埋設されると共にフレームの一部である露出部がパッド本体から露出するシートパッドを成形する技術が知られている(特許文献1)。特許文献1では、露出部が取り付けられる相手部材と露出部との接触を防ぐために、パッド本体に連なる発泡樹脂で露出部の略全体を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術に対し、露出部が取り付けられる相手部材によっては、パッド本体の成形時に露出部への発泡樹脂の付着を抑制することが望まれることがある。
【0005】
本発明は上述した要求に応えるためになされたものであり、露出部への発泡樹脂の付着を抑制できるシートパッドの成形型およびシートパッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の成形型は、発泡原液が発泡硬化した発泡樹脂から形成されるパッド本体と、前記パッド本体から露出する露出部を有して前記パッド本体に埋設されるフレームと、を備えるシートパッドを成形するものであり、下型と、一対のパーティング面で互いに当接した前記下型との間に、前記パッド本体を成形するキャビティが形成される上型と、一対の前記パーティング面の少なくとも一方に取り付けられるシール部材と、を備え、一対の前記パーティング面の間には、前記露出部が配置される配置部と、前記配置部と前記キャビティとを繋ぐ接続部と、が形成され、前記シール部材は、一対の前記パーティング面のうち前記接続部以外の前記配置部の周囲の部位に挟まれる線状の第1部を備え、前記配置部への前記発泡原液の浸入を抑制するように、一対の前記パーティング面のうち前記配置部の周囲の部位の間に位置し、前記パーティング面に垂直な方向から見たときに、前記第1部の両端を結んだ仮想線が、前記配置部よりも前記キャビティ側、又は、前記配置部と前記接続部との境界上に位置する。
【0007】
また、シートパッドの製造方法は、発泡原液が発泡硬化した発泡樹脂から形成されるパッド本体と、前記パッド本体から露出する露出部を有して前記パッド本体に埋設されるフレームと、を備えるシートパッドを成形する成形型を用いる方法であって、前記成形型は、下型と、一対のパーティング面で互いに当接した前記下型との間にキャビティが形成される上型と、を備え、前記上型または前記下型に前記フレームを固定して、一対の前記パーティング面の間に形成される配置部に露出部を配置する配置工程と、前記上型と前記下型とを型閉じし、前記発泡原液を前記キャビティ内で発泡硬化する成形工程と、を備え、前記成形工程において前記配置部への前記発泡原液の浸入を抑制するように、一対の前記パーティング面のうち前記配置部の周囲の部位の間にシール部材が位置し、一対の前記パーティング面の間には、前記配置部と前記キャビティとを繋ぐ接続部が形成され、前記シール部材は、一対の前記パーティング面のうち前記接続部以外の前記配置部の周囲の部位に挟まれる線状の第1部を備え、前記成形工程において、前記第1部により一対の前記パーティング面の間がシールされた前記配置部の空気が前記発泡原液の発泡圧によって圧縮されることで、前記発泡樹脂が前記接続部まで設けられるように、前記第1部の両端の位置を定める。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の成形型によれば、露出部が配置される配置部への発泡原液の浸入を抑制するように、一対のパーティング面のうち配置部の周囲の部位の間にシール部材が位置するので、露出部への発泡樹脂の付着を抑制できる。
【0009】
シール部材は、一対のパーティング面のうち接続部以外の配置部の周囲の部位に挟まれる線状の第1部を備える。パーティング面に垂直な方向から見たときに、第1部の両端を結んだ仮想線が、配置部よりもキャビティ側、又は、配置部と接続部との境界上に位置する。第1部の両端よりも配置部側の空間の空気が第1部によって閉じ込められるため、配置部への発泡原液の浸入を抑制できる。さらに、その第1部が挟まれていない一対のパーティング面からはキャビティ内の空気を抜き易いので、第1部によって閉じ込められた空気を圧縮する発泡原液の発泡圧が小さくなり、配置部への発泡原液の浸入をより抑制できる。その結果、露出部への発泡樹脂の付着を抑制できる。
【0010】
請求項2記載の成形型によれば、上型のパーティング面に第1部が固定されるので、下型に注入した発泡原液が飛び散って第1部に付着することを抑制できる。これにより、請求項1の効果に加え、発泡原液の付着に伴う第1部の耐久性の低下を抑制できる。
【0011】
請求項3記載の成形型によれば、シール部材は、接続部に位置する第2部を備える。第2部は、下型のパーティング面と露出部との間を配置部側とキャビティ側とに仕切る。これにより、下型に注入されて発泡し液面が徐々に上昇する発泡原液が下型のパーティング面と露出部との隙間から配置部へ浸入することを防止できる。その結果、請求項1又は2の効果に加え、露出部への発泡樹脂の付着をより抑制できる。
【0012】
請求項4記載の成形型によれば、シール部材は、接続部に位置する第3部を備える。第3部は、上型のパーティング面と露出部との間を配置部側とキャビティ側とに仕切る。これにより、下型のパーティング面と露出部との隙間からだけでなく、上型のパーティング面と露出部との隙間からも配置部へ発泡原液が浸入することを防止できる。その結果、請求項3の効果に加え、露出部への発泡樹脂の付着を更に抑制できる。
【0013】
請求項5記載のシートパッドの製造方法によれば、成形工程において、露出部が配置される配置部への発泡原液の浸入を抑制するように、一対のパーティング面のうち配置部の周囲の部位の間にシール部材が位置するので、露出部への発泡樹脂の付着を抑制できる。
【0014】
一対のパーティング面の間には、配置部とキャビティとを繋ぐ接続部が形成される。シール部材は、一対のパーティング面のうち接続部以外の配置部の周囲の部位に挟まれる線状の第1部を備える。成形工程では、第1部により一対のパーティング面の間がシールされ、第1部の両端よりも配置部側の空間の空気が閉じ込められる。その空気によって配置部への発泡原液の浸入を抑制できる。発泡原液の発泡圧により、第1部によって閉じ込められた配置部の空気が圧縮されることで、発泡樹脂が接続部まで設けられるように、第1部の両端の位置を定める。これにより、配置部付近のキャビティへの発泡樹脂の未充填を抑制しつつ、露出部への発泡樹脂の付着をより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態におけるシートパッドの正面図である。
【
図2】シートパッドを成形する成形型の平面図である。
【
図3】フレームが取り付けられた上型の平面図である。
【
図4】発泡原液を発泡硬化させる成形工程を示す模式的な説明図である。
【
図5】第2実施形態における成形型の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して第1実施形態におけるシートパッド1について説明する。
図1はシートパッド1の正面図である。なお、各図面では、シートパッド1の各部を模式的に示し、特に露出部5,6,7を大きく図示している。
【0017】
図1に示すように、シートパッド1は、乗物に搭載されるシートの基材である。本実施形態のシートパッド1は、自動車の2つの後部座席のバックパッドを一体に構成しつつ、その2つの後部座席の間に1つの後部座席を設けることを可能にしたものである。シートパッド1は、発泡原液35(
図4参照)が発泡硬化した軟質ウレタンフォーム等の発泡樹脂から形成されるパッド本体2と、パッド本体2に埋設されるフレーム3とを備える。
【0018】
フレーム3は、パッド本体2の剛性向上や型崩れ等を防ぐためにパッド本体2の外縁に沿って埋設される部材である。フレーム3は、主に、金属ワイヤ等の線材を屈曲させたり、その線材同士を溶接等により接合したりして形成されている。フレーム3は、パッド本体2から露出する複数の露出部5,6,7とを備える。
【0019】
露出部5は、パッド本体2の右下縁および左下縁からそれぞれ露出する部位である。露出部5は、フレーム3を主に構成する線材である線材部5aと、線材部5aに接合される金属製の板材である板材部5bとを備える。板材部5bには、線材部5aよりもパッド本体2から離れた位置に、ボルト(図示せず)が挿入される締結孔5cが形成されている。この締結孔5cに挿入したボルトによって板材部5bが乗物に取り付けられる。そのため、板材部5bのうちボルトが接触する締結孔5c付近には、発泡樹脂が付着してはいけない。
【0020】
露出部6は、2つの露出部5の間のパッド本体2の下縁から露出する部位である。露出部6は、金属ワイヤ等の線材を略U字状に曲げて形成されるフック6aと、フック6aの根本に取り付けられる金属製の基部6bとを備える。フック6aは、乗物に取り付けられる部位であり、発泡樹脂が付着してはいけない。フック6aは、両端が基部6bに固定されている。フック6aの両端を延長した線材が、パッド本体2に埋設されているフレーム3の一部である。なお、基部6bには発泡樹脂が付着しても良い。
【0021】
露出部7は、左右両側の後部座席のパッド本体2に架け渡されるように設けられる金属板である。この露出部7には、左右両側の後部座席の間に設けられる1つの後部座席のバックパッドを構成する部材や、左右両側の後部座席の肘置を構成する部材が取り付けられる。そのため、露出部7のうち、これらの部材と干渉する位置には発泡樹脂が付着してはいけない。
【0022】
次に
図2及び
図3を参照して、シートパッド1を製造するための成形型10について説明する。
図2は、開いた状態の成形型10の平面図である。
図3は、フレーム3が取り付けられた上型12の平面図である。なお、型閉じした状態では、フレーム3と下型11との各部の位置関係は、フレーム3と上型12との各部の位置関係と略同一である。
【0023】
図2に示すように、成形型10は、下型11と、下型11に対して型閉じ可能に設けられた上型12と、その下型11と上型12とを繋ぐヒンジ13と、を備えている。下型11には、上方へ開口する凹状の成形面14が形成されている。上型12には、下型11の成形面14との間でキャビティ16(
図4参照)を作る凹状の成形面15が形成されている。
【0024】
下型11及び上型12は、型閉じした状態において、互いに当接する一対のパーティング面17,18を備える。このパーティング面17,18は、それぞれ成形面14,15(キャビティ16)の全周に亘って設けられている。
【0025】
図2及び
図3に示すように、上型12の成形面15からは、フレーム3の一部が固定される複数の固定部19が突出している。固定部19は、その先端に設けられた永久磁石によりフレーム3を吸着して固定する。なお、固定部19によるフレーム3の固定方法は、磁石によるものに限らず、フレーム3の線材が嵌まる溝やフックを固定部19の先端に設けても良い。
【0026】
上型12にフレーム3を固定した状態において、一対のパーティング面17,18の間には、露出部5,6,7が配置される配置部21,22,23と、配置部21,22,23と成形面14,15(キャビティ16)とを繋ぐ接続部25,26,27と、が形成されている。配置部21,22,23及び接続部25,26,27は、一対のパーティング面17,18にそれぞれ設けられる凹みによって形成される、一対のパーティング面17,18の隙間である。
【0027】
配置部21は、露出部5が配置される部位であり、その露出部5の形状に沿って形成されている。接続部25は、配置部21とキャビティ16とを繋ぐ部位である。配置部21には、露出部5のうち発泡樹脂が付着してはいけない部分が配置される。即ち、配置部21と接続部25との境界B1よりもキャビティ16側には、露出部6のうち発泡樹脂が付着しても良い部分が配置される。
【0028】
配置部22は、露出部6が配置される部位であり、その露出部6の形状に沿って形成されている。接続部26は、配置部22とキャビティ16とを繋ぐ部位である。配置部22には、露出部6のうち発泡樹脂が付着してはいけないフック6aが配置される。即ち、配置部22と接続部26との境界B2よりもキャビティ16側には、露出部6のうち発泡樹脂が付着しても良い基部6bが配置される。
【0029】
配置部23は、露出部7の一部が配置される部位であり、その露出部7の形状に沿って形成されている。配置部23は、成形型10の外部に繋がっている。接続部27は、配置部23とキャビティ16とを繋ぐ部位である。配置部23には、露出部7のうち発泡樹脂が付着してはいけない部分が配置される。
【0030】
なお、露出部7の長さ方向の両端側のみがパーティング面17,18に挟まれ、露出部7の中央部分が成形型10の外部に出ている。この露出部7の中央部分に発泡樹脂が付着しないように、配置部23と接続部27との境界B3が、帯状のパーティング面17,18の幅方向の所定位置に設けられる。
【0031】
一対のパーティング面17,18のうち配置部21,22,23の周囲の部位の間には、ゴム状弾性体からなるシール部材としての第1部31,32及び第2部33がそれぞれ設けられている。この第1部31,32及び第2部33(シール部材)は、詳しくは後述するが、キャビティ16内で発泡硬化する発泡原液35が配置部21,22,23へ浸入することを抑制するためのものである。
【0032】
第1部31は、一対のパーティング面17,18のうち接続部25以外の配置部21の周囲の部位に挟まれる線状の部材である。パーティング面18に垂直な方向から見たときに、線状の第1部31の両端を結んだ仮想線L1は、配置部21よりもキャビティ16(成形面14)側に位置する。
【0033】
第1部32は、一対のパーティング面17,18のうち接続部26以外の配置部22の周囲の部位に挟まれる線状の部材である。パーティング面18に垂直な方向から見たときに、配置部22と接続部26との境界B2上に、線状の第1部32の両端を結んだ仮想線B2が位置する。
【0034】
第1部31,32は、上型12のパーティング面18のみに設けられる。詳しくは、パーティング面18に設けた溝に第1部31,32を嵌めて接着し、パーティング面18に第1部31,32が固定される。下型11のパーティング面17に第1部31,32がないので、下型11に注入した発泡原液35が飛び散って第1部31,32に付着することを抑制できる。その結果、発泡原液35の付着に伴う第1部31,32の耐久性の低下を抑制できる。
【0035】
第2部33は、接続部27に位置して、下型11のパーティング面17に取り付けられる線状の部材である。詳しくは、下型11のパーティング面17に設けた溝に第2部33を嵌めて接着し、パーティング面17に第2部33が固定される。型閉め状態において、第2部33は、パーティング面17と露出部7との間に挟まれ、その間の空間を配置部23側とキャビティ16(成形面14,15)側とに仕切る。
【0036】
次に
図2及び
図3に加え、
図4を参照して、シートパッド1の製造方法について説明する。
図4は、発泡原液35を発泡硬化させる成形工程を示す模式的な説明図である。
図4には、型閉めされた成形型10のうち露出部5及び配置部21付近の断面が模式的に示されている。また、
図4には、下型11に発泡原液35を注入した直後の発泡原液35の液面36が二点鎖線で示されている。
【0037】
まず、
図3に示すように、上型12にフレーム3を固定して、配置部21,22,23に露出部5,6,7を配置する(配置工程)。次いで、
図4に示すように、下型11の成形面14に発泡原液35を注入し、一対のパーティング面17,18を当接させて下型11と上型12とを型閉めし、発泡原液35をキャビティ16内で発泡硬化させる(成形工程)。発泡原液35が発泡硬化した発泡樹脂によってパッド本体2(
図1参照)が形成され、キャビティ16内に配置されるフレーム3がパッド本体2に埋設される。
【0038】
このパッド本体2を成形型10から脱型することで、シートパッド1が得られる。なお、脱型後のシートパッド1の露出部5,6,7のうち発泡樹脂が付着してはいけない部分に発泡樹脂が付着していれば、その部分から発泡樹脂を作業員が手作業で取り除く。
【0039】
図3及び
図4に示すように、成形工程(型閉め状態)において、一対のパーティング面17,18のうち接続部25以外の配置部21の周囲の部位に線状の第1部31が挟まれる。そのため、成形工程において、接続部25とフレーム3(露出部5)との隙間からキャビティ16内の発泡原液35が配置部21側へ浸入しようとすると、第1部31の両端(仮想線L1)よりも配置部21側の空間の空気が第1部31によって閉じ込められる。この空気が残った部分には、発泡原液35が充填されないので、配置部21への発泡原液35の浸入を抑制できる。
【0040】
さらに、第1部31が挟まれていない(特に第1部31の両端付近の)一対のパーティング面17,18からは、キャビティ16内の空気が抜け易い。これにより、第1部31によって閉じ込められた空気を圧縮する発泡原液35の発泡圧が小さくなり、配置部21への発泡原液35の浸入をより抑制できる。その結果、露出部5への発泡樹脂の付着を抑制できるので、脱型後に発泡樹脂を取り除く手間を省略できる。
【0041】
第1部31の両端を結んだ仮想線L1が配置部21よりもキャビティ16側に位置しているので、第1部31によって閉じ込められた空気が発泡圧により圧縮されても、配置部21への発泡原液35の浸入を十分に抑制できる。さらに、成形工程において、第1部31によって閉じ込められた配置部21の空気が発泡原液35の発泡圧により圧縮されることで、発泡原液35(発泡樹脂)が接続部25まで設けられるように、第1部31の両端(仮想線L1)の位置を定めることが好ましい。これにより、配置部21付近へのキャビティ16への発泡樹脂の未充填を抑制しつつ、露出部5への発泡樹脂の付着をより抑制できる。なお、この第1部31の両端の位置は実験や計算から求めることができる。
【0042】
また、本実施形態の露出部5付近のフレーム3には、発泡樹脂が付着していても付着していなくても良い部分と、発泡樹脂が付着すべき部分とがある。発泡樹脂が付着すべき部分は、境界B4よりもキャビティ16側の部分である。即ち、成形工程では、第1部31によって閉じ込められた配置部21の空気が発泡原液35の発泡圧により圧縮されることで、発泡原液35が境界B4と境界B1との間まで設けられるように、第1部31の両端(仮想線L1)の位置を定めることがより好ましい。これにより、発泡樹脂が付着すべき部分に発泡樹脂を確実に付着させつつ、露出部5への発泡樹脂の付着をより抑制できる。
【0043】
同様に成形工程において、一対のパーティング面17,18のうち接続部26以外の配置部22の周囲の部位に線状の第1部32が挟まれるので、第1部32の両端(仮想線B2)よりも配置部22側の空間の空気が第1部32によって閉じ込められ、配置部22への発泡原液35の浸入を抑制できる。その結果、露出部6への発泡樹脂の付着を抑制できる。
【0044】
第1部32の両端を結んだ仮想線B2は、配置部22と接続部26との境界B2上に位置するが、接続部26と露出部6との隙間が小さいため、仮想線B2よりも配置部22側の空気がキャビティ16側へ抜け難い。そのため、配置部22への発泡原液35の浸入を十分に抑制できるので、露出部6への発泡樹脂の付着をより抑制できる。
【0045】
ここで、フック6aには発泡樹脂が付着してはならず、基部6bには発泡樹脂が付着しても良く、フック6a及び基部6b付近のフレーム3には発泡樹脂が付着すべきである。パーティング面18に垂直な方向から見たときに、仮想線B2がフック6aと基部6bとの接続部分に位置しているので、成形工程において仮想線B2よりもキャビティ16側に僅かに空気が残っても、基部6bに発泡樹脂が付着する部分と付着しない部分とが設けられるに留まる。即ち、フック6aへの発泡樹脂の付着を抑制しつつ、フック6a及び基部6b付近のフレーム3に発泡樹脂を確実に付着させることができる。
【0046】
また、
図3に示すフレーム3が固定された上型12のパーティング面18を、
図2に示す下型11のパーティング面17に当接させることで、接続部27に位置する第2部33が、パーティング面17と露出部7との間を配置部23側とキャビティ16(成形面14,15)側とに仕切る。そのため、発泡原液35(
図4参照)がパーティング面17と露出部7との隙間から配置部23へ浸入することを防止できる。特に、下型11に注入されて発泡し液面36(
図4参照)が徐々に上昇する発泡原液35は、上型12のパーティング面18と露出部7との隙間よりも、下型11のパーティング面17と露出部7との隙間から配置部23側へ浸入し易い。この発泡原液35が浸入し易い方に第2部33が設けられるので、配置部23への発泡原液35の浸入をより抑制できる。その結果、露出部7への発泡樹脂の付着をより抑制できる。
【0047】
次に、
図5を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、配置部21,22の空気を閉じ込めるための第1部31,32が配置部21,22の周囲の一部に設けられ、配置部23の周囲の一部である接続部27に第2部33が位置する場合について説明した。これに対し第2実施形態では、配置部21,22の周囲の一部である接続部25,26に第2部45a,46a及び第3部45b,46bが位置し、配置部23の空気を閉じ込めるための第1部47が配置部23の周囲の一部に設けられる場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0048】
図5は、第2実施形態における成形型40の平面図である。
図5に示すように、成形型40は、下型41と、下型41に対して型閉じ可能に設けられた上型42と、その下型41と上型42とを繋ぐヒンジ13と、を備えている。下型41には、上方へ開口する凹状の成形面14が形成されている。上型42には、下型41の成形面14との間でキャビティ16(
図4参照)を作る凹状の成形面15が形成されている。
【0049】
下型41及び上型42は、型閉じした状態において、互いに当接する一対のパーティング面17,18を備える。一対のパーティング面17,18の間には、露出部5,6,7(
図3参照)が配置される配置部21,22,23と、配置部21,22,23と成形面14,15(キャビティ16)とを繋ぐ接続部25,26,27と、が形成されている。
【0050】
なお、第1実施形態では、露出部7の長さ方向の両端側のみが一対のパーティング面17,18に挟まれ、露出部7の中央部分が成形型10の外部に出ている場合について説明した。これに対して第2実施の形態では、露出部7の中央部分も一対のパーティング面17,18に挟まれるよう、パーティング面17,18の一部として連結面43が設けられる。露出部7の中央部分を挟む連結面43の両端がそれぞれ境界B3として設定される。この境界B3の内側が配置部23であり、境界B3よりもキャビティ16側が接続部27である。
【0051】
一対のパーティング面17,18のうち配置部21,22,23の周囲の部位の間には、ゴム状弾性体からなるシール部材としての第1部47、第2部45a,46a及び第3部45b,46bがそれぞれ設けられる。この第1部47、第2部45a,46a及び第3部45b,46b(シール部材)は、キャビティ16内で発泡硬化する発泡原液35(
図4参照)が配置部21,22,23へ浸入することを抑制するためのものである。
【0052】
第2部45aは、接続部25に位置して、下型41のパーティング面17に取り付けられる線状の部材である。型閉め状態において、第2部45aは、パーティング面17と露出部5との間に挟まれ、その間の空間を配置部21側とキャビティ16(成形面14)側とに仕切る。第2部46aは、接続部26に位置して、下型41のパーティング面17に取り付けられる線状の部材である。型閉め状態において、第2部46aは、パーティング面17と露出部6との間に挟まれ、その間の空間を配置部22側とキャビティ16側とに仕切る。
【0053】
第3部45bは、接続部25に位置して、上型42のパーティング面18に取り付けられる線状の部材である。型閉め状態において、第3部45bは、パーティング面18と露出部5との間に挟まれ、その間の空間を配置部21側とキャビティ16(成形面15)側とに仕切る。第3部46bは、接続部26に位置して、上型42のパーティング面18に取り付けられる線状の部材である。型閉め状態において、第3部46bは、パーティング面18と露出部6との間に挟まれ、その間の空間を配置部22側とキャビティ16側とに仕切る。
【0054】
これにより、第1実施形態と同様に、発泡原液35がパーティング面17と露出部5,6との隙間から配置部21,22へ浸入することを第2部45a,46aによって防止できる。さらに、発泡原液35がパーティング面18と露出部5,6との隙間から配置部21,22へ浸入することを第3部45b,46bによって防止できる。これらの結果、露出部5,6への発泡樹脂の付着をより抑制できる。
【0055】
さらに、第2部45a,46aと第3部45b,46bとで露出部5,6を挟みつつ、露出部5,6を挟んでいない部位で第2部45a,46aと第3部45b,46bとが互いに接触することで、配置部21,22側とキャビティ16側とを隙間なく仕切ることができる。その結果、露出部5,6への発泡樹脂の付着をより一層抑制できる。
【0056】
第1部47は、連結面43を含む一対のパーティング面17,18のうち接続部27以外の配置部23の周囲の部位に挟まれる線状の部材であり、パーティング面17に固定される。第2実施形態では、配置部23の左右両側にそれぞれ接続部27が位置するので、一対の線状の第1部47が配置部23を上下に挟んで設けられる。この場合、一対の線状の第1部47の端部同士をそれぞれ結んだ仮想線L2が、配置部23と接続部27との境界B3よりもキャビティ16側、又は、境界B3上に位置するように設定される。
【0057】
これにより、第1実施形態と同様に、第1部47の両端(仮想線L2)よりも配置部23側の空間の空気が第1部47によって閉じ込められ、配置部23への発泡原液35の浸入を抑制できる。さらに、第1部47が挟まれていない(特に第1部47の両端付近の)一対のパーティング面17,18からは、キャビティ16内の空気が抜け易いため、第1部47によって閉じ込められた空気を圧縮する発泡原液35の発泡圧が小さくなり、配置部23への発泡原液35の浸入をより抑制できる。その結果、露出部7への発泡樹脂の付着を抑制できる。
【0058】
以上、実施形態に基づき説明したが、本発明は上記各形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、パッド本体2やフレーム3の各部の形状や寸法、その形状や寸法に合わせたキャビティ16やパーティング面17,18の各部の形状や寸法などを適宜変更しても良い。また、露出部5,6,7の形状や配置を変更しても良い。この場合、露出部5,6,7のうち発泡樹脂が付着してはいけない部分が、配置部21,22,23に配置されるように、配置部21,22,23と接続部25,26,27との境界B1,B2,B3を設定すれば良い。
【0059】
また、シートパッド1は、自動車の後部座席のバックパッド(背凭れ)に限らず、着座部であるクッションパッドとしても良い。また、自動車の運転席や助手席にシートパッド1を設けても良く、自動車以外の乗物の座席にシートパッド1を適用しても良い。
【0060】
上記第1実施形態では配置部21,22の周囲の一部に第1部31,32が設けられる場合について説明し、上記第2実施形態では配置部21,22の周囲の一部に第2部45a,46a及び第3部45b,46bが設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。配置部21,22の周囲に第1部31,32、第2部45a,46a及び第3部45b,46bの全てを設けても良い。この場合、第1部31,32と、第2部45a,46aと、第3部45b,46bとで殆ど隙間なく配置部21,22を囲むことによって、その囲まれた部分の空気を閉じ込め、配置部21,22への発泡原液35の浸入をより一層抑制できる。また、配置部21,22の周囲に第1部31,32と第2部45a,46aとを設けても良く、第2部45a,46aのみを設けても良い。同様に、配置部23の周囲に、第1部47と、第2部33と、上型12のパーティング面18と露出部7との間を配置部23側とキャビティ16側とに仕切る第3部と、の中から2種類または3種類を選択して設けても良い。
【0061】
上記各形態では、第1部31,32,47が上型12,42のパーティング面18に固定される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。下型11,41のパーティング面17に第1部31,32,47を固定しても良い。
【0062】
上記各形態では、パーティング面17,18に設けた溝に第1部31,32,47や第2部33,45a,46a、第3部45b,46bを嵌める場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。溝を設けずにシート状の第1部や第2部、第3部をパーティング面17,18に接着させても良い。
【0063】
上記各形態では、成形工程において、パーティング面17,18のうち第1部31,32,47が設けられていない部分から、キャビティ16内の空気が抜ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。キャビティ16内の空気を抜くための既知の構成を成形型10,40に適用しても良い。これにより、第1部31,32,47によって閉じ込められた空気を圧縮する発泡原液35の発泡圧をより小さくでき、配置部21,22,23への発泡原液35の浸入をより抑制できる。なお、キャビティ16内の空気を抜くための既知の構成としては、上型12の成形面15にベントホールを空けると共に、通気性部材と非通気性部材とを一体化したものを成形面15のベントホールまわりに取り付けたものが挙げられる。この構成では、発泡原液35の発泡途中では通気性部材を通ってベントホールから空気が抜け、発泡後期では発泡圧によって非通気性部材が成形面15に密着してベントホールを塞ぐ。
【符号の説明】
【0064】
1 シートパッド
2 パッド本体
3 フレーム
5,6,7 露出部
10,40 成形型
11,41 下型
12,42 上型
16 キャビティ
17,18 パーティング面
21,22,23 配置部
25,26,27 接続部
31,32,47 第1部
33,45a,46a 第2部
45b,46b 第3部
L1,L2 仮想線
B1,B2,B3 境界