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  • 特許-CAN通信方法及びCAN通信システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】CAN通信方法及びCAN通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/46 20060101AFI20220525BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H04L12/46 Z
H04L12/28 100A
H04L12/46 100C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018176651
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020048131
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平野 光
(72)【発明者】
【氏名】宮内 愼三
【審査官】佐々木 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-277896(JP,A)
【文献】特開2015-154212(JP,A)
【文献】特表2014-518034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0109309(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103503382(CN,A)
【文献】国際公開第2017/154296(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110056(WO,A1)
【文献】特開2010-278537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/46
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央ゲートウェイECUを介して中継接続される複数のバスを含むCAN通信システムにおけるCAN通信方法において、
第1のバスに接続される送信側ECUの信号送信周期をTcとし、第2のバスに接続される受信側ECUの信号受信サンプリング周期をTsとし、前記第1のバスと前記第2のバスとの間の前記中央ゲートウェイECUを介した信号中継の際の遅延時間をTgwとするとき、以下の不等式
Ts+Tgw<Tc (1)
を満たすように、前記受信側ECUの前記信号受信サンプリング周期Tsを設定する、
ことを特徴とするCAN通信方法。
【請求項2】
前記受信側ECUの前記信号受信サンプリング周期Ts、前記中央ゲートウェイECUの前記遅延時間Tgwが、正数x、y、z(x>0、y>0、z>0)を用いて、それぞれ、Ts=z×Tc,Tgw=x+y×Tcと表されるとき、以下の不等式
z<1-y-(x/Tc) (2)
を満たすように、係数zを設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のCAN通信方法。
【請求項3】
前記受信側ECUは、車両におけるエンジンECUであり、前記送信側ECUは、前記車両における任意のECUである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のCAN通信方法。
【請求項4】
前記送信側ECUは、車両におけるエンジンECUであり、前記受信側ECUは、前記車両における任意のECUである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のCAN通信方法。
【請求項5】
信号伝送のための第1のバスと、前記第1のバスに接続された第1のECUと、信号伝送のための第2のバスと、前記第2のバスに接続された第2のECUと、前記第1のバス及び前記第2のバスに接続されて、前記第1のバスと前記第2のバスとの間での信号の送受信の際における信号中継を行う中央ゲートウェイECUと、を含むCAN通信システムにおいて、
送信側ECUとしての前記第1のECUの信号送信周期をTcとし、受信側ECUとしての前記第2のECUの信号受信サンプリング周期をTsとし、前記第1のバスと前記第2のバスとの間の前記中央ゲートウェイECUを介した信号中継の際の遅延時間をTgwとするとき、以下の不等式
Ts+Tgw<Tc (1)
を満たすように、前記受信側ECUの前記信号受信サンプリング周期Tsを設定する、
ことを特徴とするCAN通信システム。
【請求項6】
前記受信側ECUの前記信号受信サンプリング周期Ts、前記中央ゲートウェイECUの前記遅延時間Tgwが、正数x、y、z(x>0、y>0、z>0)を用いて、それぞれ、Ts=z×Tc,Tgw=x+y×Tcと表されるとき、以下の不等式
z<1-y-(x/Tc) (2)
を満たすように、係数zを設定する、
ことを特徴とする請求項5に記載のCAN通信システム。
【請求項7】
前記受信側ECUは、車両におけるエンジンECUであり、前記送信側ECUは、前記車両における任意のECUである、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のCAN通信システム。
【請求項8】
前記送信側ECUは、車両におけるエンジンECUであり、前記受信側ECUは、前記車両における任意のECUである、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のCAN通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAN(Controller Area Network)通信方法及びCAN通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の車両においては、各部を制御する多数の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)が搭載されており、主としてECU相互間の通信のために、ライン型構造を有するCAN通信システムが車両に搭載されている。
【0003】
CAN通信システムは、車両以外にも、産業機器、農業機械、医療機器、鉄道、船舶、航空機等の幅広い分野において使用されている。
【0004】
CAN通信システムは、信号伝送のためのバスと、バスに接続されたノードとしての各種ECUとを含む(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2545508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CAN通信システムにおける比較的簡易な通信の場合には、同一のバスに接続された送信側ECUと受信側ECUとの間で信号の送受信が行われる。
【0007】
従って、送信側ECUの信号送信周期をTcとし、受信側ECUの信号受信サンプリング周期TsをTs=Tcとし、かつ、送信側ECUの遅延時間となる信号送信タイミングのぶれ(ジッタ)TjがTj<Tcである場合には、送信側ECUの信号送信から受信側ECUの信号受信までに要する時間である遅延時間は、最大でも1×Tc以下、即ち、信号送信周期Tcの1周期以下である。なお、従来のCAN通信システムにおいては、受信側ECUの信号受信サンプリング周期Tsは、Ts=Tcとなるように設定されているのが通例である。
【0008】
一方、複雑化する近年のCAN通信システムにおいては、複数のバスが含まれることが少なくない。CAN通信システムに複数のバスが含まれる場合、各バスは中央ゲートウェイ(CGW)ECUに接続され、それによって、ある一つのバスに接続されたある一つのECUと他のバスに接続された他のECUとの間の通信は、中央ゲートウェイECUを介して信号中継されることによって成立する。
【0009】
ところが、中央ゲートウェイECUを介した従来のCAN通信の場合には、中央ゲートウェイECUにおける遅延時間Tgwが上記遅延時間に加わるために、信号送受信過程全体としての遅延時間が過大となり、受信側ECUにおいて使用される各種ソフトウェアに、遅延時間の変化に対応した変更即ち更新や、遅延時間が制御に与える影響の検証が必要となり、ソフトウェアの開発負荷が過大になるという問題点があった。以下、この問題点について説明する。
【0010】
図3は、中央ゲートウェイECUを介して中継接続される複数のバスを含むCAN通信システムの構成を示すブロック図である。
【0011】
図3に示すCAN通信システムは、信号伝送のための第1のバス1と、第1のバス1に接続された第1のECU10と、信号伝送のための第2のバス2と、第2のバス2に接続された第2のECU20と、第1のバス1及び第2のバス2に接続されて、第1のバス1と第2のバス2との間での信号の送受信の際における信号中継を行う中央ゲートウェイECU30と、を含む。
【0012】
ここでは、第1のECU10を送信側ECUとし、第2のECU20を受信側ECUとする。車両におけるCAN通信システムの場合には、受信側ECUとしての第2のECU20を、例えばエンジンECUとすることができる。ただし、逆に、送信側ECUとしての第1のECU10を、エンジンECUとすることもできる。
【0013】
図3に示されるように、遅延時間Tjとなるジッタを伴って第1のECU10から周期Tcごとに送信される信号即ちCANフレームは、第1のバス1上を伝送されて中央ゲートウェイECU30に入力され、遅延時間Tgwを伴って中央ゲートウェイECU30により信号中継されて第2のバス2上に出力される。中央ゲートウェイECU30から第2のバス2上に出力されたCANフレームは、サンプリング周期Tsごとのサンプリングによって第2のECU20に受信される。
【0014】
図4は、(a)中央ゲートウェイECUを介さない同一のバス上でのCAN通信の場合の遅延時間と、(b)複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介した従来のCAN通信の場合の遅延時間とを模式的に表した説明図である。
【0015】
前述の例と同様に、送信側ECUとしての第1のECUの信号送信周期をTcとし、受信側ECUとしての第2のECUの信号受信サンプリング周期をTsとし、送信側ECUの遅延時間となる信号送信タイミングのぶれ(ジッタ)をTjとする。また、中央ゲートウェイECUを介した信号中継の際の遅延時間をTgwとする。
【0016】
また、前述の例と同様に、信号送信周期Tcと信号受信サンプリング周期Tsとが等しい(Ts=Tc)ものとし、送信側ECUの遅延時間Tjは、信号送信周期Tcの1周期未満(Tj<Tc)であるものとする。
【0017】
図4(a)に示す中央ゲートウェイECUを介さない同一のバス上でのCAN通信の場合には、先ず、送信側ECUにおける遅延時間として、第1のECUの信号送信周期Tcでの信号送信タイミングの後に、ジッタである遅延時間Tjが付加される。
【0018】
受信側ECUである第2のECUでは、信号送信タイミングの後に遅延時間Tjが付加された時点より後の最初のサンプリングタイミングで信号受信が行われる。
【0019】
従って、この場合には、送信側ECUの信号送信から受信側ECUの信号受信までに要する時間である遅延時間は、最大でも1×Tc以下、即ち、信号送信周期Tcの1周期以下となる。
【0020】
一方、図4(b)に示す複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介した従来のCAN通信の場合、即ち、図3に示すCAN通信システムの構成における従来のCAN通信の場合には、先ず、送信側ECUにおける遅延時間として、第1のECU10の信号送信周期Tcでの信号送信タイミングの後に、ジッタである遅延時間Tjが付加される。この点は、図4(a)の場合と全く同様である。
【0021】
ただし、第1のバス1から入力された信号を中央ゲートウェイECU30が信号中継し
て第2のバス2に出力する際に、中央ゲートウェイECU30における遅延時間Tgwが発生することとなる。
【0022】
受信側ECUである第2のECU20における信号受信タイミングは、以下のようになる。即ち、信号送信タイミングの後に遅延時間Tjが付加され、さらに中央ゲートウェイECU30の遅延時間Tgwが付加された時点より後の最初のサンプリングタイミングにおいて、受信側ECUである第2のECU20による信号受信が行われる。
【0023】
従って、この場合には、送信側ECUの信号送信から受信側ECUの信号受信までに要する時間である遅延時間は、中央ゲートウェイECU30の遅延時間Tgwによって変動するが、当該遅延時間Tgwと、送信側Tcと受信側Tsとのタイミング差の和が最大で送信側ECUの信号送信周期Tcと同程度であると想定すると、全体としての遅延時間は、最大で約2×Tc、即ち、信号送信周期Tcの約2周期相当の時間に達する可能性がある。
【0024】
このように、中央ゲートウェイECUを介した従来のCAN通信の場合には、中央ゲートウェイECUの遅延時間Tgwが全体としての遅延時間に加わるために、信号送受信過程全体としての遅延時間が過大となり、その結果、受信側ECUにおいて使用される各種ソフトウェアに、遅延時間の変化に対応した変更即ち更新や、遅延時間が制御に与える影響の検証が必要となり、ソフトウェアの開発負荷が過大になるという問題点があった。
【0025】
従って、本発明の目的は、複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介したCAN通信を行う場合にも、受信側ECUにおける設計変更を最小限に抑制し得るCAN通信方法及びCAN通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係るCAN通信方法は、中央ゲートウェイECUを介して中継接続される複数のバスを含むCAN通信システムにおけるCAN通信方法において、
第1のバスに接続される送信側ECUの信号送信周期をTcとし、第2のバスに接続される受信側ECUの信号受信サンプリング周期をTsとし、前記第1のバスと前記第2のバスとの間の前記中央ゲートウェイECUを介した信号中継の際の遅延時間をTgwとするとき、以下の不等式
Ts+Tgw<Tc (1)
を満たすように、前記受信側ECUの前記信号受信サンプリング周期Tsを設定する、
ことを特徴とする。
【0027】
本発明に係るCAN通信システムは、信号伝送のための第1のバスと、前記第1のバスに接続された第1のECUと、信号伝送のための第2のバスと、前記第2のバスに接続された第2のECUと、前記第1のバス及び前記第2のバスに接続されて、前記第1のバスと前記第2のバスとの間での信号の送受信の際における信号中継を行う中央ゲートウェイECUと、を含むCAN通信システムにおいて、
送信側ECUとしての前記第1のECUの信号送信周期をTcとし、受信側ECUとしての前記第2のECUの信号受信サンプリング周期をTsとし、前記第1のバスと前記第2のバスとの間の前記中央ゲートウェイECUを介した信号中継の際の遅延時間をTgwとするとき、以下の不等式
Ts+Tgw<Tc (1)
を満たすように、前記受信側ECUの前記信号受信サンプリング周期Tsを設定する、
ことを特徴とする。
【0028】
本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムの上記態様において、
前記受信側ECUの前記信号受信サンプリング周期Ts、前記中央ゲートウェイECUの前記遅延時間Tgwが、正数x、y、z(x>0、y>0、z>0)を用いて、それぞれ、Ts=z×Tc,Tgw=x+y×Tcと表されるとき、以下の不等式
z<1-y-(x/Tc) (2)
を満たすように、係数zを設定するものとするとよい。
【0029】
前記受信側ECUは、車両におけるエンジンECUであり、前記送信側ECUは、前記車両における任意のECUであるものとするとよい。
【0030】
逆に、前記送信側ECUは、車両におけるエンジンECUであり、前記受信側ECUは、前記車両における任意のECUであるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介した本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムによる通信過程を示すフローチャート。
図2】複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介した本発明によるCAN通信の場合の遅延時間を模式的に表した説明図。
図3】中央ゲートウェイECUを介して中継接続される複数のバスを含むCAN通信システムの構成を示すブロック図。
図4】(a)中央ゲートウェイECUを介さない同一のバス上でのCAN通信の場合の遅延時間と、(b)複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介した従来のCAN通信の場合の遅延時間とを模式的に表した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムは、図3のブロック図に示すCAN通信システムの構成、即ち、中央ゲートウェイECUを介して中継接続される複数のバスを含むCAN通信システムの構成を前提とするものである。
【0033】
当該CAN通信システムの構成において、送信側ECUの信号送信周期をTcとし、受信側ECUの信号受信サンプリング周期をTsとし、中央ゲートウェイECUを介した信号中継の際の遅延時間をTgwとするとき、本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムは、以下の不等式
Ts+Tgw<Tc (1)
を満たすように、受信側ECUの信号受信サンプリング周期Tsを設定することを特徴的構成として備えるものである。受信側ECUの信号受信サンプリング周期Ts、中央ゲートウェイECUの遅延時間Tgwは、信号送信周期Tc、正数x、y、z(x>0、y>0、z>0)を用いて、それぞれ、
Ts=z×Tc
Tgw=x+y×Tc
と表すことができる。
【0034】
従って、上記不等式(1)は、
z×Tc+x+y×Tc<Tc
と表すことができる。これをzについて解くと、以下の不等式(2)になる。
z<1-y-(x/Tc) (2)
受信側ECUの信号受信サンプリング周期Ts=z×Tcは、受信側ECUとしての第2のECU20により設定されるものであり、従って、係数zは、第2のECU20により設定されるものである。車両におけるCAN通信システムの場合には、受信側ECUとしての第2のECU20を、例えば、エンジンECUとし、送信側ECUとしての第1のECU10を、他の任意のECUとすることができる。ただし、逆に、送信側ECUとし
ての第1のECU10を、エンジンECUとし、受信側ECUとしての第2のECU20を、他の任意のECUとすることもできる。
【0035】
一方、中央ゲートウェイECU30の遅延時間Tgwは、中央ゲートウェイECU30の製造者によって予め決定されるものである。従って、遅延時間Tgw=x+y×Tcの方程式に含まれる定数x及び係数yも、中央ゲートウェイECU30の製造者によって予め決定されるものである。
【0036】
本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムは、中央ゲートウェイECU30の遅延時間Tgw=x+y×Tcが予め決定されていることを前提として、上記不等式(1)を満たすように、受信側ECUの信号受信サンプリング周期Tsを設定するものである。
【0037】
受信側ECUの信号受信サンプリング周期TsがTs=z×Tcという方程式によって表されることが受信側ECUの構成によって予め決まっている場合には、本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムは、上記不等式(1)から導出される上記不等式(2)を満たすように、係数zを設定することになる。
【0038】
上記特徴的構成を備える本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムの実施形態について、図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0039】
図1は、複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介した本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムによる通信過程を示すフローチャートである。
【0040】
ステップS1において、送信側ECUである第1のECU10は、第1のバス1を介して、信号即ちCANフレームを、信号送信周期Tcごとに、遅延時間Tjとなるジッタを伴って送信する。
【0041】
ステップS2において、中央ゲートウェイECU30は、第1のバス1から入力されるCANフレームを、遅延時間Tgwを伴って信号中継して、第2のバス2に出力する。
【0042】
ステップS3において、受信側ECUである第2のECU20は、第2のバス2を介してCANフレームを、サンプリング周期Tsごとのサンプリングによって受信する。
【0043】
上記ステップS3における第2のECU20によるCANフレームの受信のためのサンプリング周期Tsを、本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムにおいては、上記不等式(1)を満たすように設定する。
【0044】
また、受信側ECUの信号受信サンプリング周期Ts、中央ゲートウェイECUの遅延時間Tgwが、信号送信周期Tc、正数x、y、z(x>0、y>0、z>0)を用いて、それぞれ、Ts=z×Tc,Tgw=x+y×Tcと表される場合には、係数zを、上記不等式(2)を満たすように設定する。
【0045】
図2は、複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介した本発明によるCAN通信の場合の遅延時間を模式的に表した説明図である。
【0046】
複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介した本発明によるCAN通信の場合、即ち、図3に示すCAN通信システムの構成における本発明によるCAN通信の場合には、先ず、送信側ECUにおける遅延時間として、第1のECU10の信号送信周期Tcでの信号送信タイミングの後に、ジッタである遅延時間Tjが付加される。この点は、図4(b
)の場合と全く同様である。
【0047】
また、第1のバス1から入力された信号を中央ゲートウェイECU30が信号中継して第2のバス2に出力する際に、中央ゲートウェイECU30における遅延時間Tgwが発生することとなる。
【0048】
受信側ECUである第2のECU20における信号受信タイミングは、以下のようになる。即ち、信号送信タイミングの後に遅延時間Tjが付加され、さらに中央ゲートウェイECU30の遅延時間Tgwが付加された時点より後の最初のサンプリングタイミングにおいて、受信側ECUである第2のECU20による信号受信が行われる。
【0049】
受信側ECUである第2のECU20における信号受信タイミングを決定するサンプリング周期Tsを、本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムにおいては、上述のとおり、以下の不等式
Ts+Tgw<Tc (1)
を満たすように設定する。
【0050】
中央ゲートウェイECU30の遅延時間Tgwの値にもよるが、本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムにおける受信側ECUのサンプリング周期Tsは、受信側ECUのサンプリング周期Tsと送信側ECUの信号送信周期Tcとを同等とする従来の設定と比較すると、図2に示されるように、大幅に短く設定される。
【0051】
従って、本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムにおいては、図2に示されるように、中央ゲートウェイECU30から信号即ちCANフレームが第2のバス2に出力された後、極めて早いタイミングで第2のECU20による信号受信が行われる。
【0052】
図2図4(b)とを比較すると、受信側ECUのサンプリング周期Tsと送信側ECUの信号送信周期Tcとを同等とする従来の構成である図4(b)の場合に対して、図2に示す本発明によるCAN通信の場合には、信号送信周期Tcのほぼ1周期に相当する時間だけ、送信側ECUの信号送信から受信側ECUの信号受信までに要する時間である遅延時間を短縮できていることが分かる。
【0053】
従って、本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムにおいては、全体としての遅延時間を、最大でも1×Tc以下、即ち、信号送信周期Tcの1周期相当の時間以下に抑制することができる。即ち、中央ゲートウェイECUを介さない同一のバス上でのCAN通信の場合と比較しても遜色がない程度にまで、全体としての遅延時間を抑制することができる。
【0054】
その結果、本発明に係るCAN通信方法及びCAN通信システムにおいては、複数のバス及び中央ゲートウェイECUを介したCAN通信を行う場合にも、受信側ECUにおける設計変更を最小限に抑制することができ、特に、受信側ECUにおいて使用される各種ソフトウェアに、遅延時間の変化に対応した変更即ち更新や、遅延時間が制御に与える影響の検証を不要として、ソフトウェアの開発負荷を大幅に軽減することができる。
図1
図2
図3
図4