(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20220525BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B6/03 360G
(21)【出願番号】P 2019529083
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2018025380
(87)【国際公開番号】W WO2019013070
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2017136540
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】本間 康之
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-167802(JP,A)
【文献】特開2011-123045(JP,A)
【文献】特開2005-058535(JP,A)
【文献】特開2015-119768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 ー 8/15
A61B 6/00 ー 6/14
A61B 5/055
G06T 7/00 ー 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の立体構造を示す三次元構造情報の入力を受け付ける情報入力部と、
前記三次元構造情報で示される前記心臓の房室の内壁を、正積図法に基づいて二次元画像に展開し、該二次元画像を前記内壁の前壁、後壁、左側壁および右側壁に分けて断裂した展開画像を生成する画像生成部と、を備え、
前記画像生成部は、立体構造を彩度および明度で表現する図法により、前記三次元構造情報に示される心臓の房室内の立体構造を前記展開画像上にマッピングすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記画像生成部は、前記展開画像上で、乳頭筋に相当する立体構造のマッピングの有無を切り替え可能であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置において、
前記画像生成部は、前記展開画像上で、腱索に相当する立体構造のマッピングの有無を切り替え可能であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記情報入力部は、前記心臓の拡張期および収縮期を含む時系列的な三次元構造情報の入力を受け付け、
前記画像生成部は、前記時系列的な三次元構造情報に基づき、前記拡張期および前記収縮期それぞれについて前記展開画像を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理装置において、
前記画像生成部は、前記心臓における関心部位を前記展開画像上にマッピングし、前記拡張期の展開画像と前記収縮期の展開画像とに基づき、前記関心部位の位置を補正し、
前記関心部位は、前記心臓の梗塞部位であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記画像生成部は、前記三次元構造情報に基づき、前記内壁の壁厚を求め、該求めた壁厚を前記展開画像上にマッピングすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記情報入力部は、前記内壁の心電位を示す心電位情報の入力をさらに受け付け、
前記画像生成部は、前記心電位情報に基づき、前記内壁の心電位を前記展開画像上にマッピングすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
前記画像生成部は、前記三次元構造情報に基づき、前記内壁の壁運動の状態を取得し、該取得した壁運動の状態を前記展開画像上にマッピングすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像処理装置において、
前記情報入力部は、前記内壁の心電位を示す心電位情報の入力をさらに受け付け、
前記画像生成部は、前記内壁の壁運動の状態および前記内壁の心電位が所定の条件を満たす部位を特定し、該特定した部位を前記展開画像上にマッピングすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
操作入力を受け付ける操作入力部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記生成した展開画像を表示部に表示し、前記操作入力部が前記表示部に表示された展開画像上の位置を指示する操作入力を受け付けると、該操作入力により指示された位置を示すマーカーを前記展開画像に重畳して表示することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の画像処理装置において、
操作入力を受け付ける操作入力部をさらに備え、
前記画像生成部は、前記生成した展開画像を表示部に表示し、前記三次元構造情報に基づき、前記内壁の壁厚を求め、前記操作入力部が前記表示部に表示された展開画像上の位置を指示する操作入力を受け付けると、該操作入力により指示された位置での壁厚を前記表示部に表示することを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
画像処理装置を用いて実行される画像処理方法であって、
心臓の立体構造を示す三次元構造情報の入力を受け付ける工程と、
前記三次元構造情報で示される前記心臓の房室の内壁を、正積図法に基づいて二次元画像に展開し、該二次元画像を前記内壁の前壁、後壁、左側壁および右側壁に分けて断裂した展開画像を生成する工程と、
立体構造を彩度および明度で表現する図法により、前記三次元構造情報に示される心臓の房室内の立体構造を前記展開画像上にマッピングする工程と、を含む画像処理方法。
【請求項13】
コンピュータを請求項1から11のいずれか一項に記載の画像処理装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、画像処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心不全などの治療において、細胞などの生体物質またはバイオマテリアルなどの被投与物を、大腿動脈などを介して心臓の房室内に挿入したカテーテルなどの器具を用いて、房室の周囲の組織(例えば、左心室の周囲の心筋)に注入し、治療効果を期待する治療が検討されている。また、不整脈などの治療として、心臓の房室内に挿入したカテーテルにより、不整脈の原因となる部位を焼灼するアブレーション治療がある。
【0003】
上述したような治療においては、X線断層撮影装置、磁気共鳴撮影装置などにより得られるデータに基づき、冠動脈の閉塞あるいは狭窄により心筋が壊死した梗塞部位などの関心部位の位置が特定される。そして、特定した部位を含む心臓の二次元あるいは三次元画像が生成、表示される。例えば、特許文献1には、心筋の局所的な運動情報を示す三次元心機能情報と冠動脈の三次元形状とをブルズアイマップ上に二次元的にマッピングする技術が開示されている。また、特許文献2には、心臓壁の表面全体をグード図法により二次元に展開し、その展開図に対して心臓の冠動脈を避けて断裂を入れた心臓壁の二次元表面画像を形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-119768号公報
【文献】特開2008-167802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような治療においては、梗塞部位などの関心部位および治療部位(被投与物の注入部位など)を正確に特定するために、心臓の内壁の様子を直感的かつ正確に把握する必要がある。ここで、ブルズアイマップは、心基部から心尖部までの長軸方向に垂直な複数の単軸断面における三次元データを、中心が心尖部に相当し、辺縁が心基部に相当する円に投影した画像である。ブルズアイマップでは、長さおよび面積を正確に表現することができない。そのため、特許文献1に開示されている技術においては、長さおよび面積が正確に表現されないので、心臓の様子を直観的かつ正確に把握することが困難である。また、特許文献2に開示されている技術では、心臓壁の表面全体をグード図法により二次元に展開した展開図を、冠動脈を避けて断裂するため、断裂後の形状と心臓壁の表面全体との関係が複雑になり、直観的な把握が困難である。また、特許文献2に開示されている技術は、心臓壁の表面全体を二次元的に表現するものであり、心臓の房室の内壁の様子を如何にして直感的かつ正確に把握するかについては考慮されていない。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題を解決し、心臓の内壁の様子を直感的かつより正確に把握することができる画像処理装置、画像処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様としての画像処理装置は、心臓の立体構造を示す三次元構造情報の入力を受け付ける情報入力部と、前記三次元構造情報で示される前記心臓の房室の内壁を、正積図法に基づいて二次元画像に展開し、該二次元画像を前記内壁の前壁、後壁、左側壁および右側壁に分けて断裂した展開画像を生成する画像生成部と、を備え、前記画像生成部は、立体構造を彩度および明度で表現する図法により、前記三次元構造情報に示される心臓の房室内の立体構造を前記展開画像上にマッピングする。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記画像生成部は、前記展開画像上で、乳頭筋に相当する立体構造のマッピングの有無を切り替え可能である。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記画像生成部は、前記展開画像上で、腱索に相当する立体構造のマッピングの有無を切り替え可能である。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記情報入力部は、前記心臓の拡張期および収縮期を含む時系列的な三次元構造情報の入力を受け付け、前記画像生成部は、前記時系列的な三次元構造情報に基づき、前記拡張期および前記収縮期それぞれについて前記展開画像を生成する。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記画像生成部は、前記心臓における関心部位を前記展開画像上にマッピングし、前記拡張期の展開画像と前記収縮期の展開画像とに基づき、前記関心部位の位置を補正し、前記関心部位は、前記心臓の梗塞部位である。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記画像生成部は、前記三次元構造情報に基づき、前記内壁の壁厚を求め、該求めた壁厚を前記展開画像上にマッピングする。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記情報入力部は、前記内壁の心電位を示す心電位情報の入力をさらに受け付け、前記画像生成部は、前記心電位情報に基づき、前記内壁の心電位を前記展開画像上にマッピングする。
【0014】
本発明の1つの実施形態として、前記画像生成部は、前記三次元構造情報に基づき、前記内壁の壁運動の状態を取得し、該取得した壁運動の状態を前記展開画像上にマッピングする。
【0015】
本発明の1つの実施形態として、前記情報入力部は、前記内壁の心電位を示す心電位情報の入力をさらに受け付け、前記画像生成部は、前記内壁の壁運動の状態および前記内壁の心電位が所定の条件を満たす部位を特定し、該特定した部位を前記展開画像上にマッピングする。
【0016】
本発明の1つの実施形態として、操作入力を受け付ける操作入力部をさらに備え、前記画像生成部は、前記生成した展開画像を表示部に表示し、前記操作入力部が前記表示部に表示された展開画像上の位置を指示する操作入力を受け付けると、該操作入力により指示された位置を示すマーカーを前記展開画像に重畳して表示する。
【0017】
本発明の1つの実施形態として、操作入力を受け付ける操作入力部をさらに備え、前記画像生成部は、前記生成した展開画像を表示部に表示し、前記三次元構造情報に基づき、前記内壁の壁厚を求め、前記操作入力部が前記表示部に表示された展開画像上の位置を指示する操作入力を受け付けると、該操作入力により指示された位置での壁厚を前記表示部に表示する。
【0018】
本発明の第2の態様としての画像処理方法は、画像処理装置を用いて実行される画像処理方法であって、心臓の立体構造を示す三次元構造情報の入力を受け付ける工程と、前記三次元構造情報で示される前記心臓の房室の内壁を、正積図法に基づいて二次元画像に展開し、該二次元画像を前記内壁の前壁、後壁、左側壁および右側壁に分けて断裂した展開画像を生成する工程と、立体構造を彩度および明度で表現する図法により、前記三次元構造情報に示される心臓の房室内の立体構造を前記展開画像上にマッピングする工程と、を含む。
【0019】
本発明の第3の態様としてのプログラムは、コンピュータを上記のいずれかの画像処理装置として機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る画像処理装置、画像処理方法およびプログラムによれば、心臓の内壁の様子を直感的かつより正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示す制御部による展開画像の生成について説明するための図である。
【
図3】
図1に示す制御部が生成する展開画像の一例を示す図である。
【
図4】
図1に示す画像処理装置を適用した画像処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示す画像処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図4に示す画像処理装置が行う目標部位特定処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図7A】
図4に示す画像処理装置が行う目標部位特定処理について説明するための図である。
【
図7B】
図4に示す画像処理装置が行う目標部位特定処理について説明するための図である。
【
図7C】
図4に示す画像処理装置が行う目標部位特定処理について説明するための図である。
【
図8】
図4に示す画像処理装置が行う浸透領域推定処理で推定される浸透領域Sの一例を示す模式図である。
【
図9】
図4に示す画像処理装置が行う目標注入点決定処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図10A】
図4に示す画像処理装置が行う目標注入点決定処理で決定される目標注入点の一例を示す模式図である。
【
図10B】
図4に示す画像処理装置が行う目標注入点決定処理で決定される目標注入点の一例を示す模式図である。
【
図11】注入部材による治療の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置10の構成例を示す図である。本実施形態に係る画像処理装置10は、被検者の心臓の内壁を二次元に展開した画像を生成し、表示するものである。
【0024】
図1に示す画像処理装置10は、被検者の体外に位置し、コンピュータなどの情報処理装置によって構成される。画像処理装置10は、情報入力部11と、操作入力部13と、表示部14と、記憶部15と、制御部16とを備える。制御部16は、画像生成部の一例である。
【0025】
情報入力部11は、被検者の心臓の立体構造を示す三次元構造情報の入力を受け付ける。情報入力部11は、例えば、コンピュータ断層撮影(CT:Computed Tomography)装置、磁気共鳴画像生成(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置、三次元超音波診断(3D-US:Three-Dimension Ultrasonography)装置などにより得られる心臓の立体構造を示す情報を三次元構造情報として入力を受け付ける。情報入力部11は、例えば、有線通信または無線通信により、これらの装置から情報を受信するインターフェースを含む。情報入力部11は、入力された情報を制御部16に出力する。
【0026】
操作入力部13は、使用者からの操作入力を受け付ける。操作入力部13は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどを含む。操作入力部13がタッチパネルを含む場合、タッチパネルは表示部14と一体に設けられていてもよい。操作入力部13は、入力された操作に応じた信号を制御部16に出力する。
【0027】
表示部14は、制御部16の制御に従い、制御部16が生成する画像などを表示する。表示部14は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示デバイスを含む。
【0028】
記憶部15は、制御部16に特定の機能を実行させるための種々の情報およびプログラムを記憶する。また、記憶部15は、例えば、後述する制御部16が生成した画像を記憶する。記憶部15は、例えば、RAM(Random Access Memory)またはROM(Read Only Memory)などの記憶装置を含む。
【0029】
制御部16は、画像処理装置10を構成する各構成部の動作を制御する。制御部16は、特定のプログラムを読み込むことにより特定の機能を実行する。具体的には、制御部16は、情報入力部11が取得した三次元構造情報に示される心臓の房室(左心房、右心房、左心室、右心室)の内壁を正積図法に基づいて二次元画像に展開し、その二次元画像を内壁の前壁、後壁、左側壁および右側壁に分けて断裂した展開画像を生成する。制御部16は、生成した展開画像を表示部14に表示させ、また、記憶部15に記憶させる。制御部16は、例えばプロセッサを含む。
【0030】
次に、制御部16による展開画像の生成についてより詳細に説明する。
【0031】
制御部16は、三次元構造情報で示される被検者の心臓の房室の内壁を、正積図法に基づいて二次元画像に展開する。正積図法は、地球上の面積と対応する地図上の面積との比(面積縮尺)が等しい図法である。正積図法としては、モルワイデ図法、サンソン図法、ランベルト正積図法など種々の図法を用いることができるが、以下では、特に、グード図法(ホモロサイン図法)を用いる例について説明する。
【0032】
グード図法とは、
図2に示すように、地球を高緯度地方と低緯度地方とに分け、高緯度地方をモルワイデ図法で表現し、低緯度地方をサンソン図法で表現し、これらを結合する図法である。高緯度地方と低緯度地方との境界は、モルワイデ図法とサンソン図法とで面積縮尺が同じである場合に緯線長が一致する所定の緯度40度44分である。モルワイデ図法およびサンソン図法が正積図法であるため、グード図法も正積図法となる。
【0033】
制御部16は、例えば、心臓の左心室の内壁の展開画像を生成する場合、左心室の内壁全体を地球の地表面とし、三次元の左心室の内壁の位置データをグード図法に基づき、二次元の位置データにマッピングした二次元画像を生成する。具体的には、制御部16は、
図3に示すように、例えば、心臓の心尖部を地球の南極点に対応させ、グード図法に基づき、南極点から北緯40度44分までに相当する領域に左心室の内壁を展開する。ここで、制御部16は、南極点に対応する心尖部を下端とする4つの領域をそれぞれ、左心室の前壁、後壁(下後壁)、左側壁(側壁)、右側壁(中隔)に対応させる。
図3では、左側の領域から順に、後壁、左側壁、前壁、右側壁に対応させている。このように、制御部16は、三次元構造情報に示される心臓の房室(
図3の例では左心室)の内壁を、正積図法であるグード図法に基づき二次元画像に展開し、その二次元画像を房室の前壁、後壁、左側壁および右側壁に分けて断裂した展開画像を生成する。
【0034】
心臓の房室の内壁を正積図法に基づき二次元画像に展開することで、関心部位(梗塞部位など)および治療部位(被投与物の注入部位など)のサイズ、内壁に占める割合などを正確に把握することができる。また、心臓の房室の前壁、後壁、左側壁および右側壁に分けて(断裂して)展開するため、断裂後の展開画像上の各部と、房室の前壁、後壁、左側壁および右側壁それぞれとの関係を直感的に把握することができる。その結果、関心部位および治療部位の房室内での位置などを直感的かつより正確に把握することができる。
【0035】
さらに、本実施形態においては、制御部16は、立体構造を彩度および明度で表現する図法により、三次元構造情報に示される心臓の房室内の立体構造を展開画像上にマッピングする。このようにすることで、
図3に示すように、房室内面を、展開画像でありながら立体的に表示することができる。心臓の心室内には筋状に延びる乳頭筋(肉柱)が存在しており、心室内は複雑な立体構造(凹凸構造)を有している。制御部16は、例えば、
図3に示すように、乳頭筋Dなどの立体構造を展開画像上にマッピングしてもよい。こうすることで、心臓の房室の内壁の様子をさらに直感的かつ正確に把握することができる。また、制御部16は、特定の凹凸構造、例えば、乳頭筋に相当する凹凸構造については、展開画像上にマッピングしないようにすることもできる。すなわち、画像生成部としての制御部16は、展開画像上で、乳頭筋に相当する立体構造のマッピングの有無を切り替え可能である。また、制御部16は、腱索に相当する凹凸構造を展開画像上にマッピングする、あるいは、しないようにしてもよい。つまり、画像生成部としての制御部16は、展開画像上で、腱索に相当する立体構造のマッピングの有無を切り替え可能な構成であってもよい。
【0036】
立体構造を彩度および明度で表現する図法としては、地表面の立体構造を彩度および明度で表現した赤色立体地図を作成する図法を用いることができる。この図法では、局所領域での盛り上がりおよび沈み込みの度合い(例えば、地形図の尾根谷度)を、二次元面上の対応する領域に、明度に関する階調により表示する。また、この図法では、ベクトル場(地表面を表わす地形データの集合)を三次元座標空間に写像した座標点列を連結する面の斜度分布を、(好ましくは赤色系の色で)彩度に関する色調により表示する。このような図法により、方向依存性が無く、すべての方向の地形(立体構造)が同時に観察可能な画像を得ることができる。なお、上述した図法については、例えば、特許第3670274号などに記載されているため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0037】
また、制御部16は、展開画像上で、関心部位の態様(例えば、色)を、他の部位の態様と異ならせてもよい。例えば、制御部16は、関心部位としての梗塞部位の色を、他の部位としての正常な部位の色と補色関係にある色とすることができる。こうすることで、関心部位を他の部位と区別して容易に把握することができる。関心部位としては、上述の梗塞部位に限らず、慢性虚血により運動量が低下した冬眠心筋、および急性虚血により運動量が低下した気絶心筋などが挙げられる。制御部16は、これらのうちいずれかのみを関心部位として、他の部位とは異なる態様で表現してもよいし、これらを全て関心部位として、他の部位とは異なる態様で表現してもよい。なお、関心部位は、三次元構造情報に基づき、制御部16が特定してもよいし、三次元構造情報に基づき、例えば、治療従事者が特定してもよい。
図3においては、梗塞部位Qと、冬眠心筋および気絶心筋に相当し、治療の対象の部位である目標部位Rと、を関心部位としている。なお、目標部位Rとは、異常部位R’としての低運動部位Pから、梗塞部位Qを除いた部位である。さらに、
図3においては、被投与物を注入する目標位置である目標注入点U、および、実際に被投与物が注入された位置である、治療部位としての注入点T、を示すマーカーAを示している。制御部16による関心部位の特定の詳細について後述する。
【0038】
また、制御部16は、三次元構造情報に基づき、心臓弁の位置を特定し、特定した心臓弁を展開画像上の対応する位置にマッピングしてもよい。房室への血液の入出を制御する心臓弁を、展開画像上の対応する位置にマッピングすることで、関心部位および治療部位などを直感的かつより正確に把握することができる。また、心臓弁を展開画像上の対応する位置にマッピングすることで、心臓が拡張した疾患(拡張型心筋症)および心臓が肥大した疾患(肥大型心筋症)であっても、解剖学的な位置関係を正確に把握することができる。制御部16は、例えば、心臓の左心室の内壁の展開画像を生成する場合、
図3に示すように、心臓弁Bとして、大動脈弁及び僧帽弁の少なくとも一方、を展開画像状の対応する位置にマッピングすることが好ましい。また、制御部16は、心臓弁の開閉状態を展開画像上で表示してもよい。心臓弁の開閉状態を展開画像上で表示することで、心臓が拡張期であるか、収縮期であるか、あるいは、心臓の拡張期および収縮期のタイミングを正確に把握することができる。
【0039】
また、情報入力部11は、心臓の拡張期および収縮期を含む時系列的な三次元構造情報の入力を受け付けてもよい。この場合、制御部16は、拡張期の展開画像と収縮期の展開画像とを生成し、これらの展開画像に基づき、例えば関心部位の一部としての梗塞部位Q(
図3参照)の位置を補正してもよい。梗塞部位Qは、心臓の拡張期でも収縮期でも位置が大きく変化しない。そのため、制御部16は、例えば、拡張期の展開画像と収縮期の展開画像とで、位置が大きく変化する領域がある場合には、その領域は梗塞部位Qではない可能性が高いため、その領域を関心部位から除外するなどして、関心部位の位置を補正してもよい。こうすることで、関心部位の位置をより正確に特定することができる。
【0040】
また、制御部16は、三次元構造情報に基づき、心臓の房室に面する内壁の壁厚を求めてもよい。但し、情報入力部11が、コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴画像生成装置、三次元超音波診断装置などの装置が取得した心臓壁の厚さ情報などのスケール情報の入力を、その他の心臓の三次元構造情報と共に受け付けるようにしてもよい。制御部16が心臓の房室に面する内壁の壁厚を求める場合には、例えば、予め測定され、情報入力部11又は操作入力部13を通じて取得された被検者の胸囲などの体形情報を利用することができる。制御部16は、例えば、心臓の房室に面する内壁の所定領域ごとに、その所定領域における壁厚の平均値、最小値、又は最大値を算出してもよい。また、制御部16は、例えば、心臓の房室に面する内壁の複数箇所についてのみ壁厚を算出してもよい。心臓の房室に面する内壁の複数箇所については、例えば、心臓を輪切りにした一断面画像において、心臓の外形に沿う周方向に等間隔で設定された複数の箇所とすることができる。換言すれば、心臓の一断面画像において、中心角が所定の角度となるように設定された複数箇所で壁厚を算出してもよい。
【0041】
制御部16は、算出した又は取得した、心臓の房室に面する内壁の壁厚を展開画像上にマッピングしてもよい。すなわち、制御部16は、内壁のそれぞれの位置について求めた壁厚を、展開画像上の対応する位置に、壁厚に応じた階調などを用いて表現してもよい。また、制御部16は、生成した展開画像を表示部14に表示し、表示された展開画像上の位置を指示する操作入力を操作入力部13が受け付けると、
図3に示すように、指示された位置を示す矢印とともに、その位置の壁厚を表示(例えば、ポップアップ表示)してもよい。制御部16は、例えば、心臓の房室に面する内壁の所定領域ごとに、その所定領域における壁厚情報として、壁厚の平均値、最小値及び最大値の少なくとも1つを表示してもよい。また、制御部16は、例えば、心臓の房室に面する内壁の複数箇所についてのみ壁厚を表示してもよい。
【0042】
このように、展開画像上で内壁の壁厚をマッピングすることで、内壁から心筋内への被投与物の注入の際に、被投与物を注入すべき深さなどを事前に把握することができる。また、被投与物を注入する際に利用する針状の注入部材が心臓壁を貫通することを抑制できる。
【0043】
また、情報入力部11は、心臓の内壁の心電位を示す心電位情報を取得してもよい。このような心電位情報は、例えば、先端に電極が設けられたカテーテルを心臓の内壁に接触させることで取得することができる。制御部16は、情報入力部11が取得した心電位情報に示される心臓の内壁の各部の心電位を、展開画像上にマッピングしてもよい。例えば、制御部16は、心電位情報に示される内壁の各部の心電位を、展開画像上の対応する位置に、心電位に応じた階調などを用いて表現してもよい。また、制御部16は、表示部14に表示された展開画像上の位置を指示する操作入力を操作入力部13が受け付けると、
図3に示すように、指示された位置を示す矢印とともに、その位置の心電位を表示(例えば、ポップアップ表示)してもよい。
【0044】
一般に、梗塞部位では、心電位が7.0mV未満であり、正常部位では、心電位が7.0mV以上であることが知られている。そのため、心臓の内壁のうち、心電位が所定の閾値未満(例えば7.0mV未満)の位置を、例えばその他の位置とは異なる色で表現する等して、マッピングしてもよい。このように、展開画像上で内壁の心電位をマッピングすることで、心臓の内壁における梗塞部位Q(
図3参照)の把握が容易になる。
【0045】
また、制御部16は、時系列的な三次元構造情報に基づき、心臓の房室の内壁の壁運動の状態(変位量、変位方向、変位速度など)を求めてもよい。制御部16は、例えば、心臓の中心点Cから心臓の外側に向けて直線を延ばし、その直線が内壁と交わる1点を点N(t)とし、その直線が数秒後に位置が変化した内壁と交わる1点を点N(t+1)とし、中心点Cから点N(t)までの距離(線分CN(t))から、中心点Cから点N(t+1)までの距離(線分CN(t+1))を引くことにより、内壁の変位量を算出する。制御部16は、例えば、心臓の房室に面する内壁の領域ごとに、その領域における壁運動の状態の平均値、最小値、又は最大値を算出してもよい。また、制御部16は、例えば、心臓の房室に面する内壁の複数箇所についてのみ壁運動の状態を算出してもよい。心臓の房室に面する内壁の複数箇所については、例えば、心臓を輪切りにした一断面画像において、心臓の外形に沿う周方向に等間隔で設定された複数の箇所とすることができる。換言すれば、心臓の一断面画像において、中心角が所定の角度となるように設定された複数箇所で壁運動の状態を算出してもよい。
【0046】
制御部16は、算出した心臓の房室の内壁の壁運動の状態を展開画像上にマッピングしてもよい。例えば、制御部16は、表示部14に表示された展開画像上の位置を指示する操作入力を操作入力部13が受け付けると、
図3に示すように、指示された位置を示す矢印とともに、その位置の壁運動の状態を表示(例えば、ポップアップ表示)してもよい。
図3においては、心臓の拡張期と収縮期とにおける、心臓の二点間の距離の変化率を、壁運動の状態として示す例を示している。異常部位(梗塞部位、慢性虚血により運動量が低下した冬眠心筋および急性虚血により運動量が低下した気絶心筋など)では、正常な心筋と比べて壁運動が低下することが知られている。したがって、展開画像上で内壁の壁運動の状態をマッピングすることで、心臓の内壁における異常部位の把握が容易になる。なお、壁運動が低下している低運動部位の具体的な導定手法の例については後述する(
図7A~
図7C参照)。
【0047】
また、制御部16は、内壁の壁運動の状態および内壁の心電位が所定の条件を満たす部位を特定し、特定した部位を展開画像上にマッピングしてもよい。
【0048】
上述したように、異常部位では、壁運動が低下する。ここで、梗塞部位での壁運動の低下は不可逆的である。一方、気絶心筋および冬眠心筋での壁運動の低下は可逆的である。また、上述したように、梗塞部位では、心電位が7.0mV未満であり、正常部位、気絶心筋および冬眠心筋では、心電位が7.0mV以上であることが知られている。
【0049】
したがって、心臓の内壁における心電位および壁運動が所定の条件を満たす部位、すなわち、心電位が所定の閾値以上(例えば、7.0mV以上)であり、かつ、壁運動が所定の閾値以下である部位は、気絶心筋および冬眠心筋である。なお、壁運動が所定の閾値以下である低運動部位の具体的な導定手法の例については後述する(
図7A~
図7C参照)。
【0050】
また、制御部16は、生成した展開画像を表示部14に表示し、表示された展開画像上において治療部位の位置を指示する操作入力を操作入力部13が受け付けると、
図3に示すように、操作入力により指示された位置(治療部位の位置)を示すマーカーAを展開画像に重畳してもよい。こうすることで、治療部位を展開画像上に表示し、また、心臓の内壁における治療部位を正確に記憶することができる。
【0051】
また、制御部16は、三次元構造情報に基づき、心臓を取り囲むように心臓外壁上に位置する冠動脈の三次元的な位置を抽出し、
図3に示すように、冠動脈Cの位置を二次元に展開して展開画像上にマッピングしてもよい。なお、
図3においては、冠動脈Cを二点鎖線で示している。上述したように、展開画像は、心臓の房室の内壁を二次元に展開した画像である。制御部16は、あたかも心臓壁を透過して見たかのように、冠動脈に対応する展開画像上の内壁の位置に、その冠動脈をマッピングする。
【0052】
冠動脈を展開画像上にマッピングすることで、展開画像上の各所と冠動脈との位置関係を直感的かつ正確に把握することができる。
【0053】
また、制御部16は、三次元構造情報に基づき、冠動脈の血流量を求め、求めた血流量を展開画像上の冠動脈にマッピング、例えば、テクスチャマッピングしてもよい。冠動脈の血流量は、例えば、三次元構造情報に示される冠動脈の短軸断面から求めることができる。
【0054】
また、制御部16は、時系列な三次元構造情報に基づき、例えば、所定のタイミング毎に展開画像を生成し、生成した展開画像を時系列順に順次、表示および記憶してもよい。また、制御部16は、展開画像上に上述した各種の情報(心臓弁の位置、内壁の壁厚、心電位、壁運動の状態、心電位および壁運動の状態が所定の条件を満たす部位、立体構造など)を、適宜組み合わせて表示してもよい。また、制御部16は、上述した各種の情報を
適宜、切り替えて表示してもよい。
【0055】
図4は、本実施形態に係る画像処理装置10を含む画像処理システム1の概略構成を示すブロック図である。
図4に示すように、画像処理システム1は、画像処理装置10と、第1撮像装置としての超音波画像生成装置20と、第2撮像装置としての放射線画像生成装置30と、心拍取得装置40と、を備える。なお、
図4において、
図1と同様の構成には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0056】
第1撮像装置としての超音波画像生成装置20は、被検者の体外に位置し、被検者の体外から心臓の第1断層画像としての超音波画像を撮像する。超音波画像生成装置20は、超音波を発信する超音波発信部21と、超音波を受信する超音波受信部22と、超音波受信部22が受信した超音波に基づいて第1断層画像を形成する画像形成部23と、を備える。超音波画像生成装置20は、超音波発信部21および超音波受信部22を被検者の体表面に接触させた状態で、超音波発信部21から被検者の心臓に向けて超音波を発信し、被検者の心臓から反射した超音波を超音波受信部22で受信する。超音波画像生成装置20は、超音波受信部22で受信した超音波を画像形成部23で処理することで、超音波の進行面に沿った断層画像を第1断層画像として得る。超音波画像生成装置20は、撮像した第1断層画像を含む心臓の三次元構造情報を、画像処理装置10の情報入力部11に出力する。
【0057】
超音波画像生成装置20は、超音波発信部21および超音波受信部22の位置または向きを変更させて異なる面に沿って撮像した複数の断層画像に基づいて、三次元画像を第1断層画像として生成してもよい。すなわち、第1断層画像は、1つの面に沿って撮像された断層画像でもよいし、複数の面に沿って撮像された複数の断層画像に基づいて生成された三次元画像でもよい。
【0058】
第2撮像装置としての放射線画像生成装置30は、被検者の体外に位置し、被検者の体外から心臓の第2断層画像としての放射線画像を撮像する。放射線画像生成装置30は、例えば、コンピュータ断層撮影装置である。放射線画像生成装置30は、放射線を射出する放射線射出部31と、放射線を検出する放射線検出部32と、放射線検出部32が検出した放射線に基づいて第2断層画像を形成する画像形成部33と、を備える。放射線画像生成装置30は、被検者の周囲で互いに対向する位置に放射線射出部31および放射線検出部32を備え、放射線射出部31および放射線検出部32を被検者の周囲で回転させながら、放射線射出部31から被検者の心臓に向けてX線などの放射線を射出し、被検者の心臓を通過した放射線を放射線検出部32で検出する。放射線画像生成装置30は、放射線検出部32で検出した放射線を画像形成部33で処理することで、心臓の三次元画像である放射線画像を第2断層画像として得る。放射線画像生成装置30は、撮像した第2断層画像を含む心臓の三次元構造情報を、画像処理装置10の情報入力部11に出力する。
【0059】
第2撮像装置は、放射線画像生成装置30に代えて、磁気共鳴画像生成(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置であってもよい。磁気共鳴画像生成装置は、被検者の体外に位置し、被検者の体外から心臓の第2断層画像としての磁気共鳴画像を撮像する。磁気共鳴画像生成装置は、磁場を発生させる磁場発生部と、核磁気共鳴信号を受信する信号受信部と、信号受信部が受信した核磁気共鳴信号に基づいて三次元画像である磁気共鳴画像を第2断層画像として形成する画像形成部と、を備える。
【0060】
第2断層画像が第2撮像装置としての放射線画像生成装置30または磁気共鳴画像生成装置によって撮像されるより所定時間前に、造影剤が被検者の心臓に投与される。これにより、第2撮像装置によって撮像される第2断層画像は、遅延造影像を含む。
【0061】
第2撮像装置は、放射線画像生成装置30または磁気共鳴画像生成装置に代えて、シンチグラフィ検査、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)検査、PET(Positron Emission Tomography)検査などを行う核医学検査装置であってもよい。核医学検査装置は、被検者の体外に位置し、被検者の体外から心臓の第2断層画像としての放射性同位元素(RI:ラジオアイソトープ)分布画像を取得する。核医学検査装置は、予め被検者に投与された放射性同位元素で標識された薬剤の分布を画像化することで、第2断層画像を取得する。
【0062】
心拍取得装置40は、被検者の心臓の拍動情報を取得する。心臓の拍動情報は、心臓の拍動の時間変化の情報を含む。心拍取得装置40は、第1断層画像または第2断層画像の撮像と同時に拍動情報を取得し、当該画像と対応付けてもよい。心拍取得装置40は、例えば、被検者の胸部または手足に装着した電極を介して心臓活動電位の時間変化を計測し、心電図波形を連続して表示する心電図モニタである。
【0063】
画像処理装置10は、上述したように、被検者の体外に位置し、コンピュータなどの情報処理装置によって構成される。
図4に示す画像処理装置10は、
図1に示す画像処理装置10が備える情報入力部11、操作入力部13、表示部14、記憶部15および制御部16に加えて、心拍入力部12をさらに備える。
【0064】
情報入力部11は、第1撮像装置としての超音波画像生成装置20からの第1断層画像、および、第2撮像装置としての放射線画像生成装置30からの第2断層画像の入力を、心臓の三次元構造情報の入力として受け付ける。
【0065】
心拍入力部12は、心拍取得装置40から心臓の拍動情報の入力を受け付ける。心拍入力部12は、例えば、有線通信または無線通信により、心拍取得装置40から情報を受信するインターフェースを含む。心拍入力部12は、入力された心臓の拍動情報を、制御部16に出力する。
【0066】
表示部14は、制御部16の制御に従い、第1断層画像および第2断層画像などの心臓の三次元構造情報に基づいて制御部16が生成する、心臓の内壁の展開画像などを表示する。
【0067】
記憶部15は、制御部16に特定の機能を実行させるための種々の情報およびプログラムを記憶する。記憶部15は、例えば、心臓の三次元構造情報としての心臓の三次元画像を記憶する。心臓の三次元画像は、第1断層画像、第2断層画像である。また、記憶部15は、制御部16が生成する心臓の展開画像を記憶する。心臓の展開画像は、関心部位としての、梗塞部位Q及び目標部位R、を含む。心臓の関心部位の一部としての心臓の目標部位R(
図7C参照)は、上述したように、異常部位R’としての低運動部位P(
図7A参照)から梗塞部位Q(
図7B参照)を除いた部位であり、慢性虚血により運動量が低下した冬眠心筋、および、急性虚血により運動量が低下した気絶心筋、である。但し、関心部位は、梗塞部位Q及び目標部位Rに限らず適宜設定可能である。例えば、梗塞部位Q(
図7B参照)のみ、又は、目標部位Rのみ、を関心部位として設定してもよい。記憶部15は、例えば、異なる時刻に撮像された複数の断層画像に基づく複数の展開画像を記憶する。記憶部15は、例えば、後述する注入部材を用いた治療で異常部位R’に注入される被投与物の投与量および物性情報を記憶する。記憶部15は、例えば注入部材の形状情報を記憶する。
【0068】
制御部16は、画像処理装置10を構成する各構成部の動作を制御する。制御部16は、特定のプログラムを読み込むことにより特定の機能を実行する。例えば、制御部16は、第1断層画像および第2断層画像などの心臓の三次元構造情報に基づいて展開画像を生成する。制御部16が展開画像を生成する際に利用する心臓の三次元構造情報は、上述の第1断層画像および第2断層画像に限らず、制御部16は、他の心臓の三次元構造情報を利用して展開画像を生成することもできる。制御部16は、生成した展開画像を表示部14に表示させる。制御部16は、生成した展開画像を外部の表示装置に出力してもよい。制御部16は、例えばプロセッサを含む。
【0069】
制御部16は、第2断層画像が放射線画像生成装置30または磁気共鳴画像生成装置によって撮像される場合、第1断層画像を第2断層画像に基づいて補正してもよい。例えば、制御部16は、第1断層画像中の特徴点および第2断層画像中の特徴点をそれぞれパターン認識などで検出し、第1断層画像中の特徴点を含む領域を対応する特徴点を含む第2断層画像中の領域で置換することで、第1断層画像を第2断層画像に基づいて補正することができる。これにより、第1断層画像をより高精細な第2断層画像で補正することができるため、心臓の構造や形状の情報をより正確に示すことができる。
【0070】
図5は、画像処理装置10の動作の一例示すフローチャートである。なお、以下では、画像処理装置10が、心臓の三次元構造情報としての第1断層画像および第2断層画像に基づき、目標部位R(
図7C参照)を特定する処理を行う例について説明する。また、以下では、画像処理装置10が、心臓の内壁の所定の位置に被投与物を注入した場合に、被投与物が浸透する浸透領域を推定する処理、および、被投与物を注入する目標注入点を決定する処理を行う例を説明する。ただし、本実施形態においては、画像処理装置10がこれらの処理を行うことは必須ではない。目標部位の特定、浸透領域の推定、目標注入点の決定などは、事前に得られた心臓の三次元構造情報に基づき、医療従事者などにより予め行われてもよい。
【0071】
図5に示すように、画像処理装置10は、まず、目標部位Rを特定する目標部位特定処理を行う(ステップS10)。画像処理装置10は、次に、心臓の内壁の所定の位置に被投与物を注入した場合に、被投与物が浸透する浸透領域を推定する浸透領域推定処理を行う(ステップS20)。画像処理装置10は、最後に、被投与物を注入する目標注入点を決定する目標注入点決定処理を行う(ステップS30)。
【0072】
図6は、画像処理装置10が行う目標部位特定処理の詳細を示すフローチャートである。
図7A~7Cは、画像処理装置10が行う目標部位特定処理を説明するための図であり、心臓の左心室LVの断面を示す図である。
図7Aに示すように、制御部16は、情報入力部11を介して入力された第1断層画像を読み出し、第1断層画像に基づいて心臓の低運動部位Pを推定する(ステップS11:低運動部位推定工程)。具体的には、情報入力部11は、所定時間ごとに撮像された複数の第1断層画像の入力を受け付ける。そして、制御部16は、複数の第1断層画像の時間変化に基づいて低運動部位Pを推定する。更に詳細には、制御部16は、まず、第1断層画像中で輝度が所定値以上である複数の点を特徴点として抽出する。制御部16は、心筋が最も拡張した拡張期と、最も収縮した収縮期とを含む異なる時刻に撮像された複数の第1断層画像について、それぞれ複数の特徴点を抽出する。制御部16は、ある任意の特徴点と、隣接する他の特徴点との距離を、拡張期の第1断層画像および収縮期の第1断層画像でそれぞれ測定した変化率を算出する。制御部16は、変化率が所定の閾値以下である領域に対応する心臓の部位を低運動部位Pであると推定する。変化率の所定の閾値は、例えば12%であるが、設定によって適宜変更することが可能であってよい。
【0073】
図7Bに示すように、制御部16は、情報入力部11を介して入力された第2断層画像を読み出し、第2断層画像に基づいて心臓の梗塞部位Qを推定する(ステップS12:梗塞部位推定工程)。梗塞部位Qは、心筋が虚血状態になり壊死した部位である。梗塞部位Qは、上述の変化率が所定の閾値以下であり、低運動部位Pに含まれる。具体的に、制御部16は、第2断層画像が遅延造影像を含む場合、第2断層画像の遅延造影像に基づいて梗塞部位Qを推定する。詳細には、制御部16は、遅延造影像が写り込んだ部位を梗塞部位Qであると推定する。制御部16は、第2断層画像が放射性同位元素分布画像である場合、放射性同位元素の分布に基づいて梗塞部位Qを推定する。詳細には、制御部16は、放射性同位元素が集積していない集積欠損部位を梗塞部位Qであると推定する。制御部16は、梗塞部位推定工程(ステップS12)を、上述の低運動部位推定工程(ステップS11)よりも先に実行してもよい。
【0074】
図7Cに示すように、制御部16は、低運動部位推定工程(ステップS11)で推定した低運動部位Pのうち、梗塞部位推定工程(ステップS12)で推定した梗塞部位Q以外の部位を、目標部位Rとして特定する(ステップS13:目標部位特定工程)。目標部位Rは、上述の変化率が所定の閾値以下であるが、壊死してはいない部位であり、冬眠心筋および気絶心筋である。制御部16は、特定した目標部位Rを関心部位の一部として展開画像上にマッピングする。なお、制御部16は、目標部位Rに加えて、関心部位の一部として梗塞部位Qを展開画像上にマッピングする(
図3参照)。なお、関心部位として、梗塞部位Q及び目標部位Rを区別することなく、異常部位R’である低運動部位Pを、展開画像上にマッピングしてもよい。目標部位Rは、冬眠心筋と気絶心筋とを含むが、互いに独立して存在する。冬眠心筋は慢性的な虚血状態である。気絶心筋は急性的な虚血状態である。気絶心筋は血流再開による過負荷により生じる。そのため、過負荷の状態を生じさせて、それを解消させることによって、気絶心筋の部位を特定することができる。それにより、気絶心筋と冬眠心筋とを選定することができる。
【0075】
心臓は拍動に伴って収縮と拡張とを繰り返す。そのため、低運動部位推定工程(ステップS11)で用いる第1断層画像での心臓の伸縮状態、および、梗塞部位推定工程(ステップS12)で用いる第2断層画像での心臓の伸縮状態は、同じまたは近い状態であることが好ましい。そこで、制御部16は、第2断層画像での心臓の伸縮状態に対応する第1断層画像を、複数の第1断層画像から選択し、選択された第1断層画像を用いて目標部位Rを特定する。第1断層画像における心臓の伸縮状態は、第1断層画像から特徴点をパターン認識などで検出し、当該特徴点の位置情報に基づいて推定してもよい。同様に、第2断層画像における心臓の伸縮状態は、第2断層画像から特徴点をパターン認識などで検出し、当該特徴点の位置情報に基づいて推定してもよい。特徴点は、例えば心尖部APまたは大動脈弁AVなどを含む。第1断層画像および第2断層画像における心臓の伸縮状態は、心拍入力部12を介して入力された心臓の拍動情報に基づいて決定してもよい。詳細には、第1断層画像および第2断層画像には、撮像された時点での心臓の拍動情報が対応付けられており、第1断層画像および第2断層画像における心臓の伸縮状態は、それぞれ対応付けられた拍動情報によって決定される。
【0076】
上記のように、画像処理装置10は、目標部位Rとして、治療効果の比較的高い冬眠心筋および気絶心筋を特定することができるので、治療効果の向上に寄与することができる。
【0077】
図8は、画像処理装置10が行う浸透領域推定処理で推定される浸透領域Sの一例を示す模式図である。
図8は、心臓の左心室LVの心臓壁断面を示す図であり、異常部位R’内に位置する浸透領域Sの範囲を示している。制御部16は、心臓の展開画像に含まれる異常部位R’の任意の注入点Tに被投与物が注入されると仮定した場合に、当該被投与物が浸透する浸透領域Sを推定する(浸透領域推定工程)。制御部16は、推定した浸透領域Sを展開画像に重畳してもよい。本実施形態の浸透領域Sは、心臓の異常部位R’(
図7A参照)のうち上述の目標部位特定処理で特定された目標部位R(
図7C参照)内に含まれる。被投与物は、例えば、細胞などの生体物質またはバイオマテリアルなどの物質である。浸透領域Sは、被投与物が注入されてから被投与物の効果が得られる時間内で所定時間経過した後の領域である。
【0078】
制御部16は、例えば、三次元画像に基づいて心臓内の血管BVの位置を推定し、血管BVの位置に対する注入点Tの位置に基づいて浸透領域Sを推定する。目標部位Rに注入される被投与物は、血管BVの近くでは血流の影響により、血管BVの方向に浸透しやすいと考えられる。従って、
図8に示すように、制御部16は、注入点Tが血管BVに近いほど、浸透領域Sが血管BVの方向に延在するように推定する。制御部16は、例えば、三次元構造情報に基づいて梗塞部位Q(
図7B参照)の位置を推定し、梗塞部位Qの位置に対する注入点Tの位置に基づいて、浸透領域Sを推定する。目標部位Rに注入される被投与物は、梗塞部位Qの近くでは例えば血流または拍動などの心臓の活動が低下しているため、梗塞部位Qの方向に浸透しにくいと考えられる。従って、
図8に示すように、制御部16は、注入点Tが梗塞部位Qに近いほど、浸透領域Sが梗塞部位Qの方向への延在が妨げられると推定する。
【0079】
制御部16は、記憶部15に記憶された被投与物の投与量および物性情報に基づいて、浸透領域Sを推定してもよい。詳細には、制御部16は、被投与物の投与量が多いほど、浸透領域Sが大きくなると推定する。制御部16は、制御部16が算出した心臓壁の壁厚、又は、コンピュータ断層撮影装置等の装置から取得した心臓壁の壁厚、に基づいて、浸透領域Sを推定してもよい。詳細には、制御部16は、注入点T付近の壁厚が薄いほど、浸透領域Sが心臓壁に沿って広くなると推定する。制御部16は、記憶部15に記憶された複数の三次元画像の時間変化に基づいて、浸透領域Sを推定してもよい。詳細には、制御部16は、複数の三次元画像における特徴点の位置の時間変化を検出し、当該特徴点の位置の時間変化に基づいて、心臓壁の部位ごとの拍動などによる動きを推定する。そして、動きの大きい部位ほど、浸透領域Sが大きくなると推定する。逆に、ほとんど動かない梗塞部位Qでは浸透領域Sが小さくなると推定する。制御部16は、記憶部15に記憶された注入部材の形状情報に基づいて、浸透領域Sを推定してもよい。注入部材は、例えば針状の部材で構成され、周囲に被投与物を排出するための側孔が形成されている。注入部材の形状情報としては、例えば、注入部材の外形(直線形状、湾曲形状、らせん形状など)、径の大きさ、側孔の位置、側孔の大きさなどが挙げられる。
【0080】
上記のように、画像処理装置10は、異常部位R’の任意の注入点Tに注入された被投与物が浸透する浸透領域Sを事前に推定することができるので、治療を行う前に治療のシミュレーションを行うことができる。
【0081】
図9は、画像処理装置10が行う目標注入点決定処理の詳細を示すフローチャートである。
図10A、10Bは、画像処理装置10が行う目標注入点決定処理で決定される目標注入点Uの一例を示す模式図である。
図10A、10Bは、心臓の左心室LVを、大動脈弁AV(
図7A~
図7C参照)から心尖部AP(
図7A~
図7C参照)の方向に見た断面図である。制御部16は、記憶部15に記憶された展開画像を読み出して、表示部14に表示させる(ステップS31:展開画像表示工程)。制御部16は、心臓の三次元構造情報に基づき、異常部位R’に被投与物を注入すべき複数の目標注入点Uの位置を決定する(ステップS32:目標注入点決定工程)。制御部16は、決定した複数の目標注入点Uを、展開画像に重畳して表示部14に表示させる(ステップS33:目標注入点表示工程)。目標注入点Uの位置は、心臓壁の内面から壁厚方向に沿う深さの情報を含む。換言すると、目標注入点Uは、心臓壁の内面からどの位置にどれくらいの深さで被投与物を注入すべきかを示す。目標注入点Uの位置は、例えば、上述の浸透領域推定処理で推定された浸透領域Sに基づいて決定される。詳細には、制御部16は、複数の注入点Tについての浸透領域Sをそれぞれ推定し、推定された複数の浸透領域Sに基づいて、被投与物を注入すべき注入点Tを目標注入点Uに決定する。制御部16は、例えば、他の複数の浸透領域Sに内包される浸透領域Sに対応する注入点Tを特定する。そして、特定された注入点T以外の注入点Tを、目標注入点Uに決定する。これにより、目標注入点Uに被投与物を注入することで、目標注入点Uに注入された被投与物による浸透領域Sが異常部位R’をより効率的に埋め尽くすことになる。なお、被投与物を注入する部位は、梗塞部位Q(
図7B参照)を含む異常部位R’全体である低運動部位P(
図7A参照)としてもよく、低運動部位Pから梗塞部位Qを除く目標部位R(
図7C参照)のみとしてもよい。但し、上述したように、浸透領域Sの拡がりを考慮すれば、異常部位R’全体である低運動部位P(
図7A参照)の中で、梗塞部位Qよりも、目標部位R(
図7C参照)を中心に目標注入点Uを決定することが好ましい。
【0082】
制御部16は、複数の目標注入点Uの順番を決定する。制御部16は、異常部位R’および目標注入点Uを含む展開画像を作成し、表示部14に表示させる。そして、制御部16は、決定された順番に基づく態様で複数の目標注入点Uを表示部14に表示させる。制御部16は、例えば、
図10A、10Bに示すように、決定された順番を目標注入点Uに併記させる。制御部16は、例えば、次の順番の目標注入点Uのみを表示させる。制御部16は、被投与物を注入する注入部材の先端部が複数の目標注入点Uを経由して移動する移動経路Vを推定し、移動経路Vに基づいて目標注入点Uの順番を決定する。制御部16は、例えば、移動経路Vが最短となるように、目標注入点Uの順番を決定する。詳細には、制御部16は、互いに最も近い目標注入点Uが順番となるように決定する。制御部16は、推定した移動経路Vを展開画像に重畳して表示部14に表示させてもよい。これにより、医療従事者などの操作者は、目標注入点Uの順番に従った最適な注入部材の動かし方を把握することができる。
【0083】
図10Aに示すように、制御部16は、移動経路Vが心臓の左心室LV内で大動脈弁AV(
図7A~
図7C参照)から心尖部AP(
図7A~
図7C参照)に向かう長軸Oの周囲で螺旋を描くように、目標注入点Uの順番を決定してもよい。これにより、移動経路Vは、左心室LV内で、周方向Mに沿って手前の大動脈弁AV側から奥の心尖部AP側に向かって途中で引き返すことなく進む経路となるので、注入部材の操作を行いやすくすることができる。
【0084】
図10Bに示すように、制御部16は、移動経路Vが心臓の左心室LV内で大動脈弁AVから心尖部APに向かう長軸Oに沿って往復するように、目標注入点Uの順番を決定してもよい。これにより、移動経路Vは、長軸Oに沿うため、左心室LV内に長軸Oに沿って位置する乳頭筋によって注入部材の移動が妨げられるおそれを低減することができ、僧帽弁に付随する腱索への引っ掛かりを低減することができる。
【0085】
図11は、注入部材による治療の様子を示す図である。
図11では、カテーテル50が大腿動脈FAから大動脈AOを通じて、心臓内腔の左心室LVの入口である大動脈弁AVまで延在した状態を示している。注入部材は、カテーテル50を通じて左心室LVまでデリバリーされる。なお、カテーテル50は、大腿動脈FAからに限らず、例えば手首の橈骨動脈などから大動脈弁AVまで延在していてもよい。
【0086】
図11に示すように、超音波画像生成装置20は、被検者の体表面に位置し、第1断層画像を随時撮影し、画像処理装置10に送信する。また、超音波画像生成装置20は、注入部材の先端部の位置情報を随時取得し、画像処理装置10に送信する。これにより、画像処理装置10の制御部16は、例えば注入部材の先端部の位置に追従した展開画像を表示部14に表示させることができる。また、超音波画像生成装置20は、体表面に限らず、食道、血管、心臓内腔(心房、心室)から撮影してもよい。ただし、超音波画像生成装置20は、非侵襲な処置が行える点で、体表面から撮影することが好ましい。
【0087】
制御部16は、複数の目標注入点Uのうち、注入部材による被投与物の注入処置が済んだ目標注入点Uを、未処置の目標注入点Uとは異なる態様で表示部14の展開画像に表示させてもよい。制御部16は、目標注入点Uが処置済であることを、例えば操作入力部13を介して処置済であることを示す信号が入力されたことに基づいて決定する。制御部16は、新たに入力された第1断層画像に基づいて、処置済の目標注入点Uを判別してもよい。
【0088】
上記のように、画像処理装置10は、異常部位R’に被投与物を注入すべき複数の目標注入点Uの位置を決定することができるので、治療を行う前により具体的な治療のシミュレーションを行うことができる。また、画像処理装置10は、処置を行うべき順番に基づく態様で目標注入点Uを表示するので、所定の順番での処置を操作者に誘導することができる。更に、異常部位R’の中で、治療効果の比較的高い冬眠心筋および気絶心筋で構成される目標部位Rを予め特定することで、目標注入点Uとして目標部位Rの位置を中心に決定することができ、治療効果を向上させることができる。
【0089】
なお、
図4から
図11においては、心臓の三次元構造情報の取得と、被投与物の心臓の壁内への注入とを並行して行う例を説明したが、術中に、心臓の立体的な構造を表示、記憶することは必ずしも容易ではない。例えば、術中のX線透視では、心室内部の乳頭筋(肉柱)のような複雑な凹凸構造まで把握することは困難である。また、三次元超音波診断装置により心臓の三次元構造情報を取得することも考えられるが、上述したような複雑な凹凸構造まで正確に把握することは困難である。そこで、例えばコンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴画像生成装置により、術前に心臓の三次元構造情報を取得し、その三次元構造情報に基づき展開画像を生成しておき、術中はその展開画像を表示部14に表示しながら、治療部位の入力を医療従事者から受け付けるといった利用態様も考えられる。この利用態様において、術中の心臓内のモニタリングは、従来のX線透視画像により行うことができる。つまり、医療従事者は、表示部14に表示される展開画像から、心臓内の異常部位R’の位置や大きさ、目標注入点Uの位置などの詳細情報を取得しつつ、従来のX線透視画像を確認しながら手技を実行することができる。そして、操作入力部13(
図1等参照)が、被投与物を注入した治療部位の入力を受け付けた場合に、制御部16は、治療部位を反映させた展開画像を表示部14に表示する。なお、術中の心臓内のモニタリングは、上述のX線透視画像に限らず、例えば、三次元超音波診断装置により行ってもよい。このように、画像処理装置10が取得する三次元構造情報は、術中にリアルタイムに得られたものであってもよいし、術前に得られたものであってもよい。
【0090】
以上のとおり、このように本実施形態においては、画像処理装置10は、心臓の立体構造を示す三次元構造情報の入力を受け付ける情報入力部11と、三次元構造情報で示される心臓の房室の内壁を、正積図法に基づいて二次元画像に展開し、その二次元画像を内壁の前壁、後壁、左側壁および右側壁に分けて断裂した展開画像を生成する画像生成部としての制御部16と、を備える。制御部16は、立体構造を彩度および明度で表現する図法により、三次元構造情報に示される心臓の房室内の立体構造を展開画像上にマッピングする。
【0091】
心臓の房室の内壁を正積図法に基づき二次元画像に展開することで、関心部位のサイズ、内壁に占める割合などを正確に把握することができる。また、心臓の房室の前壁、後壁、左側壁および右側壁に分けて(分断して)展開するため、断裂後の展開画像上の各部と、房室の前壁、後壁、左側壁および右側壁それぞれとの関係を直感的に把握することができる。その結果、関心部位および治療部位の房室内での位置などを直感的に把握することができる。したがって、心臓の内壁の様子を直感的かつより正確に把握することができる。また、立体構造を彩度および明度で表現する図法により、三次元構造情報に示される心臓の房室内の立体構造を展開画像上にマッピングすることで、心臓の内壁の様子を直感的かつより正確に把握することができる。
【0092】
なお、実施形態では特に触れていないが、画像処理装置10は、コンピュータとプログラムとによっても実現することができる。また、当該プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROMなどの記録媒体であってもよい。また、当該プログラムは、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0093】
本発明は、上述した各実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各構成部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部またはステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 画像処理システム
10 画像処理装置
11 情報入力部
12 心拍入力部
13 操作入力部
14 表示部
15 記憶部
16 制御部(画像生成部)
20 超音波画像生成装置
21 超音波発信部
22 超音波受信部
23 画像形成部
30 放射線画像生成装置
31 放射線射出部
32 放射線検出部
33 画像形成部
40 心拍取得装置
50 カテーテル
AO 大動脈
AP 心尖部
AV 大動脈弁
BV 血管
FA 大腿動脈
LV 左心室
A マーカー
B 心臓弁
C 冠動脈
D 乳頭筋
M 周方向
O 長軸
P 低運動部位
Q 梗塞部位
R 目標部位
R’ 異常部位
S 浸透領域
T 注入点
U 目標注入点
V 移動経路