(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】電気化学センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 27/28 20060101AFI20220525BHJP
G01N 27/36 20060101ALI20220525BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G01N27/28 341A
G01N27/36 Z
G01N27/416 353Z
(21)【出願番号】P 2019530686
(86)(22)【出願日】2017-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2017081993
(87)【国際公開番号】W WO2018104510
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-11-11
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599082218
【氏名又は名称】メトラー-トレド ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】リモン・ピーターセン,フアン
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ,アンドレアス
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-542733(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102009001632(DE,A1)
【文献】特開昭61-120958(JP,A)
【文献】特開昭61-079154(JP,A)
【文献】特開2012-073113(JP,A)
【文献】特開2000-356619(JP,A)
【文献】特開2004-233302(JP,A)
【文献】特開2001-215208(JP,A)
【文献】特開平08-304378(JP,A)
【文献】特開平11-271259(JP,A)
【文献】特表2003-505664(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012111811(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用中に測定媒体(5)に面する測定面(8、108)を持つセンサ素子(15、115)であり、平面の測定要素(2、102)を備えるセンサ素子(15、115)と、
使用中に前記測定媒体(5)に面するその端部に、ベゼル(11、111)を持つ開口(13、113)を含むセンサ軸(4、104)であり、内部で、前記開口(13、113)の領域に前記センサ素子(15、115)が設置される、センサ軸(4、104)と、
前記センサ素子(15、115)と前記ベゼル(11、111)との間に配置される環状の封止要素(9、109)と、を備える電気化学センサ(1、101)であって、
前記センサ素子(15、115)が、前記測定面(8、108)を露出させながら前記測定要素(2、102)と堅固かつ不可分に接続される絶縁体要素(10、110)を備え、
前記封止要素(9、109)が、前記測定媒体(5)の進入から前記電気化学センサを保護し、前記絶縁体要素(10、110)と前記ベゼル(11、111)との間に密封して配置され、
前記測定要素(2、102)が、電気化学的に活性なpHガラスの扁平で平面の円板を備えるか、または、
前記測定要素(2、102)が、電気化学的に活性なpHガラスから成る扁平で平面の層または層構造を備えることを特徴とする、電気化学センサ。
【請求項2】
前記絶縁体要素(10、110)が、熱膨張係数が前記測定要素(2、102)のそれに適合され、耐熱性かつ耐薬品性絶縁体ガラスから成ることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学センサ(1、101)。
【請求項3】
前記絶縁体要素(10、110)が、物理的または化学的析出工程を用いて形成される絶縁体層を備えることを特徴とする、請求項1に記載の電気化学センサ(1、101)。
【請求項4】
前記センサ軸(4、104)が円筒状であること、および前記開口(13、113)が前記センサ軸(4、104)の端面に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の電気化学センサ(1、101)。
【請求項5】
前記センサ軸(4、104)が円筒状であること、および前記開口(13、113)が前記センサ軸(4、104)の円筒外装の偏平領域(112)に配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の電気化学センサ(1、101)。
【請求項6】
前記測定要素(2、102)の前記測定面(8、108)が円または楕円または矩形形状であることを特徴とする、請求項5に記載の電気化学センサ(1、101)。
【請求項7】
前記センサ軸(4、104)が耐熱性かつ耐薬品性金属材料または耐熱性かつ耐薬品性プラスチック材料でできることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の電気化学センサ(1、101)。
【請求項8】
前記封止要素(9、109)が弾性ポリマー材料またはエラストマのリングを備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の電気化学センサ(1、101)。
【請求項9】
前記絶縁体要素(10、110)が、熱膨張係数が前記測定要素の熱膨張係数と実質的に同一である耐熱性かつ耐薬品性絶縁体ガラスから成ることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の電気化学センサ(1、101)。
【請求項10】
使用中に測定媒体(5)に面する平面の測定面(8、108)を持つ電気化学センサ(1、101)を生産するための方法であって、
・少なくとも2層のウエハを形成するために、感応材料から成るウエハの絶縁体材料との不可分の接合を生産するステップ(20)と、
・前記感応材料のみ、または前記感応材料および前記感応材料に接合された前記絶縁体材料の両方を処理することによって所定の厚さを生成するステップ(30)と、
・測定要素(2、102)を形成するために、前記感応材料において測定面を露出させながら前記絶縁体材料を構造化するステップ(40)と、
・接合された感応材料および構造化された絶縁体材料の前記少なくとも2層のウエハを現存の絶縁体材料の領域で、絶縁体要素(10、110)が設けられたセンサ素子(15、115)へ切断するステップ(50)と、
・このように生産されたセンサ素子のセンサ軸(4、104)への設置のステップ(60)であり、使用中に前記測定媒体(5)に面する前記センサ軸(4、104)の端部で前記絶縁体要素(10、110)とベゼル(11、111)との間に封止要素(9、109)が密封して導入されるステップとを含み、
前記センサ軸(4、104)は、使用中に前記測定媒体(5)に面するその端部に、前記ベゼル(11、111)を持つ開口(13、113)を含み、前記センサ素子(15、115)は、前記センサ軸(4、104)の内部で、前記開口(13、113)の領域に設置され、
前記測定要素(2、102)が、電気化学的に活性なpHガラスの扁平で平面の円板を備えるか、または、前記測定要素(2、102)が、電気化学的に活性なpHガラスから成る扁平で平面の層または層構造を備える、方法。
【請求項11】
前記感応材料が電気化学的に活性なpHガラスを有し、かつ前記絶縁体材料が、前記感応材料に適合された熱膨張係数を持つ耐熱性かつ耐薬品性絶縁体ガラスを有し、少なくとも2層のウエハを形成するために、前記絶縁体材料が「直接接合」または「融着」を用いて前記感応材料に不可分に接合される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記絶縁体材料が、少なくとも2層のウエハを形成するために物理的または化学的析出工程を用いて前記感応材料に
形成されてそれと接合される絶縁体層を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
物理的または化学的析出工程を用いて形成される前記絶縁体層が、スクリーンによって析出中に直接かつ絶縁体要素の形態で構造化された様式で生産される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記絶縁体材料が、エッチング技術を用いて前記感応材料上で構造化される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、電気化学センサおよびそれを製造するための方法に関する。特に、本発明は、電気化学センサを使用するときに測定媒体と接触する領域におけるセンサの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]従来の電気化学または電位差測定センサ、特に測定媒体のpH値を測定するものは、いわゆるガラス電極として設計される。これらは通常ガラス軸を有し、その一端部が使用中に測定媒体に面しているまたは浸漬され、かつガラス軸のその端部に、ほぼ球形または半球形の電気化学的に活性なpHガラス膜が測定要素として堅固に接続、すなわち融着される。このようにして形成される測定ロッドには緩衝液が充填される。測定媒体のpH値に応じて、ガラス膜にわたって電位差が生じ、これが、基準電極の平衡電位に対して導体要素として緩衝液に浸漬される金属電極によって基準点として測定される。
【0003】
[0003]更には、いわゆるイオン感応電界効果トランジスタセンサ(ISFET)が公知であり、ここではトランジスタのソースドレイン電流を変化させることによって、測定媒体のpH値、またはセンサが感応層を有する対象となる或るイオンの濃度が測定される。
【0004】
[0004]従来の電位差測定センサと対照的に、ISFETセンサは、使用中に測定媒体に面する、大部分は水平または平面の測定要素をその感応領域として有する。
[0005]米国特許第6,464,940(B1)号が、微量の測定媒体、すなわち一滴の大きさを判定するように設計されるpH測定セルの設計、製造および測定原理を記載している。測定媒体のための貯留部として、パイレックス(登録商標)ガラスの環状壁が、半導体基板に塗布された絶縁体層に配置され、そして測定媒体に金属電極が接触するように、後者で被覆される。貯留部に面する基板の表面は同様に、金属電極で被覆される。したがって、1MHz程度の周波数で、使用中に測定媒体と接触する電極と半導体基板の裏面に取り付けられた電極との間で容量電圧特性が測定されることができ、この特性は測定媒体のpH値に応じて異なる。
【0005】
[0006]たとえ従来の電気化学ガラスセンサの製造が複雑であり、かつガラス測定セルが個々に生産される必要があるとしても、それらは、それにもかかわらず高感度および長期安定性を有する一方、ISFETセンサまたは、米国特許第6,464,940(B1)号に開示されるような、扁平もしくは平面の測定要素を持つセンサの製造は、ウエハ技術を使用して大規模に行われることができる。しかしながら、攻撃的な媒体に対するそれらの安定性および耐性に関しては、ISFETセンサは、電気化学ガラスセンサに固有の同じ値を達成しない。電気化学ガラスセンサと比較して、ISFETセンサは、良好でないドリフト安定性を有し、かつ工程測定技術の点で適切でない。
【0006】
[0007]測定要素、例えば、電気化学ガラスセンサにおけるpH感応ガラス膜が平面の測定要素として設計される、電気化学センサが、したがって、そのような測定要素を備えるセンサ素子がウエハ技術を使用して大規模に生産されることができるという点で望ましい。
【0007】
[0008]センサ素子と関連してセンサ軸内に設置される平面の測定要素を持つ電気化学センサにおいて、媒体-通常は測定または洗浄媒体-の浸透を防止する封止要素が使用中に測定要素の測定面に直接位置付けられる場合、測定誤差が発生する可能性があることが証明された。そのような測定誤差は、緩和された勾配または長い応答時間の形態で発生することがある、すなわち、電気化学センサの安定性および再現性が損なわれ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0009]本発明の目的は、大きさおよび/または面積範囲の点で区切られた領域、すなわち正確に画定された測定面を持つ電気化学センサを提案することである。したがって、センサが使用中に測定または洗浄媒体に浸漬される場合、センサの測定要素は、媒体に接触する正確に画定された表面を有する一方、同時にセンサと測定または洗浄媒体との間の良好な封止を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0010]この目的は、請求項1に記載の電気化学センサおよび、センサ軸へのセンサ素子の設置を含む、請求項11に記載の電気化学センサのための製造方法によって達成される。有利な実施形態が従属請求項で説明される。
【0010】
[0011]電気化学センサは、使用中に測定媒体に面する測定面を持つセンサ素子を備え、センサ素子が平面の測定要素を備える。更には、電気化学センサは、使用中に測定媒体に面するその端部にベゼルを持つ開口を有するセンサ軸が備えられ、センサ軸内で、開口の領域にセンサ素子が設置される。電気化学センサは、センサ素子とベゼルとの間に配置される環状の封止要素を備える。センサ素子の測定要素に絶縁体要素が堅固かつ不可分に接続されて、測定面を露出または凹設させておく。封止要素は、測定媒体の進入からセンサを保護するが、絶縁体要素とベゼルとの間に密封して配置される。
【0011】
[0012]ここで、平面の測定要素が、例えば感応材料としての感応層の形態の測定面を形成する平坦な感応領域を片側に持つ基板、または大部分はどちらの側も平坦である、感応材料でできた円板形状の測定要素であると理解される。
【0012】
[0013]本発明に係る電気化学センサの測定要素と、絶縁材料から成る絶縁体要素が接合構造を形成する、すなわち、それは前者と不可分に接続される。
[0014]測定要素および絶縁体要素は、必ずしもそれ自体が均質であるわけではない。それらは多層であってもよく、例えば、測定要素は、1つまたは複数の感応層を備えてもよい。
【0013】
[0015]測定要素および絶縁体要素は、任意選択で電気化学センサの動作のために必要とされるが、本発明によって網羅されない他の要素を含んで、センサ素子を形成する。
[0016]測定または洗浄媒体に対して電気化学センサのセンサ軸の内部を封止するために封止要素が使用され、それによってセンサの一端部が使用中に浸漬される。封止要素は、耐薬品性かつ耐熱性ポリマーまたはエラストマ材料を有する。
【0014】
[0017]センサの測定環境に面しかつ使用中に測定媒体に接触する領域は、測定要素の測定面の露出領域または凹部であると理解される。
[0018]本発明に係る電気化学センサの設計は、ウエハ技術を使用することによる、センサ素子の大規模製造の他に、センサ軸への設置に適する形状を見込む。特に、絶縁体要素は、測定媒体との接触の領域で測定要素と不可分に接続されるが、その範囲の点で正確に画定され、そして使用中に測定媒体と接触する、すなわち媒体接触面である、測定面を確保する。更には、絶縁体要素は、環状の封止要素と共に、測定媒体が封止要素と測定面との間に入るのを防止することによって良好な封止を提供する。最終結果は、改善されたセンサ勾配および向上された長期安定性である。
【0015】
[0019]更なる実施形態において、本発明に係る電気化学センサのセンサ素子は、その測定要素として、電気化学的に活性なpHガラスの扁平で平面の円板を備える。しかしながら、測定要素は、扁平な電気化学的に活性なpHガラスから成る層または層構造として設計されてもよい。
【0016】
[0020]電気化学センサの有利な発展において、絶縁体要素は、熱膨張係数が測定要素のそれに適合され、特に測定要素の熱膨張係数と同一である耐熱性かつ耐薬品性絶縁体ガラスから成る。同一の膨張係数は、絶縁体ガラスとpHガラスとの間の5e-7/K未満の偏差を有するものであるとここでは理解される。
【0017】
[0021]代替的に、絶縁体要素は、物理的または化学的析出工程を用いて塗布される、特に窒化ケイ素の絶縁体層を備えてもよい。この場合、そのような絶縁体層の小さな層厚のため、絶縁体要素の熱膨張係数は、測定要素のそれと一致する必要はない。
【0018】
[0022]更なる実施形態において、センサ軸は円筒状であり、そして開口および、したがって、露出領域または凹部はセンサ軸の端面に配置される。結果的に、容易に取り扱われる電気化学センサが形成される。
【0019】
[0023]更なる実施形態において、センサ軸は円筒状であり、そして開口はセンサ軸の円筒外装の偏平領域に配置される。
[0024]開口の配置に応じて、したがって露出領域および/または凹部がセンサ軸の端面にあるかまたは円筒外装の偏平領域にあるかに応じて、測定要素の測定面は異なる形状にされてもよい。それは、円形、楕円形または矩形であってもよい。測定面が、一般にセンサ軸の端面に設置されるセンサ素子の場合であるような、円形の測定面より大きいための要件が、測定面の楕円または矩形状を支持してもよい。しかしながら、封止と作動中の測定面との間の直接接触を回避するために、露出面が封止面よりわずかに小さいことが常に要件である。
【0020】
[0025]センサ軸が耐熱性かつ耐薬品性金属材料またはプラスチックでできた、本発明の電気化学センサの実施形態は、苛酷な化学的環境で使用されることもでき、かつオートクレーブ可能である、ロバストで、ほとんど壊れない電気化学センサを可能にする。
【0021】
[0026]使用中に測定媒体に面する平坦な感応測定面を持つ本発明に係る電気化学センサを製造するための方法は、
・少なくとも2層のウエハを形成するための、感応材料から成るウエハの絶縁体材料との不可分の接合の製造のステップと、
・感応材料および該当する場合は、それに接合された絶縁体材料を処理することによって所定の厚さを生成するステップと、
・1つまたは複数の測定要素を形成するために、感応材料において測定面を露出させながら絶縁体材料を構造化するステップと、
・接合された感応材料および構造化された絶縁体材料の少なくとも2層のウエハを現存の絶縁体材料の領域で、絶縁体要素が設けられたセンサ素子へ切断するステップと、
・このように生産されたセンサ素子の軸への設置のステップであり、これによって使用中に測定媒体に面するセンサ軸の端部で絶縁体要素とベゼルとの間に封止要素が密封して導入されるステップとを含む。
【0022】
[0027]本方法は、センサ素子の大規模製造を見込み、そして低コストの電気化学センサを提供する。
[0028]本方法の有利な実施形態において、感応材料は電気化学的に活性なpHガラスを有し、そして絶縁体材料は、感応材料に適合された熱膨張係数、特に同一の熱膨張係数を持つ耐熱性かつ耐薬品性絶縁体ガラスを有し、ここでは少なくとも2層のウエハを形成するために、絶縁体材料が「直接接合」または「融着」を用いて感応材料に不可分に接合される。
【0023】
[0029]本方法の代替の実施形態において、絶縁体材料は、物理的または化学的析出工程を用いて感応材料に塗布され、それと接合されて少なくとも2層のウエハを形成し、その後構造化される、特に窒化ケイ素でできた、絶縁体層を備える。更なる代替例において、物理的または化学的析出工程を用いて塗布される絶縁体層は、絶縁体要素の形態で析出中にスクリーンを使用することによって直接に構造化様式に生産されてもよい。
【0024】
[0030]感応材料上での絶縁体材料の構造化は、有利にはエッチング手法によって、特にフッ化水素酸で湿式化学的にまたはプラズマエッチングによって行われてもよい。
[0031]本発明は、極めて概略的な図面を参照しつつ以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】基準電極を伴うpH測定ロッドの形態の電気化学センサの全体図である。
【
図2】第1の実施形態におけるセンサ軸に設置されたセンサ素子を持つpH測定ロッドの形態の電気化学センサの部分図である。
【
図3A】センサ軸に設置されたセンサ素子を持つpH測定ロッドの形態の電気化学センサの更なる実施形態の部分図である。
【
図3B】
図3Aに係る絶縁体要素に接続されたセンサ素子の測定要素である。
【
図4】センサ素子を生産して、センサ軸に設置するステップである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0032]本発明は、例として、平坦な測定面、例えば、電気化学的に活性なpHガラスを持つセンサ素子を有するpHセンサを参照しつつ以下で説明されることになる。しかしながら、本発明は、米国特許第6,464,940(B1)号に開示されるような、基板、例えば、半導体素子の役割をする扁平なセンサ素子、またはISFET素子を持つ、更なる電気化学センサも含む。
【0027】
[0033]この点で電気化学センサの様々な実施形態の個々の部品が以下の図に一定の比率では描かれないことが留意されるべきである。
[0034]
図1は、極めて概略的な図で電気化学センサ1を図示する。図示される電気化学センサ1は、基準電極16と関連して使用されて測定媒体のpHを求める測定ロッドを形成する。センサ1および基準電極16は、電線(破線として図に示される)を介して送信器17に接続される。
【0028】
[0035]電気化学センサ1は、図中で下向きのその端部に開口13を有し、そこにセンサ素子15が配置される。センサ素子15は、測定要素2を備え、そして、例えば、平面層、すなわち、電気化学的に活性なpHガラスでできた平坦面または膜を有する。代替的に、測定要素2は、どちらの側も扁平なpHガラス枚から成ってもよい。センサ素子15は、センサ軸4に設置される。使用中、電気化学センサ1は、測定媒体5に部分的に、すなわち、少なくともセンサ素子15を持つ開口13を含む領域が浸漬され、それによって、媒体との接触面を形成する測定要素2の測定面8が測定媒体5に面する。センサ素子16の反対側のその端部に、電気化学センサ1は、センサエレクトロニクスの一部を含むセンサヘッド3を有する。後者は、測定信号の伝送のために電線7を介して接点6に接続される。センサ軸4内部で、センサ素子15に更なる組立品が配置されてもよく、この組立品が測定信号を取得する役割を果たす。しかしながら、これらは本発明の主題でなく、したがって以下で更に考慮されることはない。
【0029】
[0036]
図2は、使用中に(
図1を参照のこと)測定媒体5に面する電気化学センサ1の端部の部分断面図を示す。センサ軸4に設置されるセンサ素子15は、電気化学的に活性なpHガラスでできた測定要素2か、米国特許第6,464,940(B1)号に開示されるようなセンサ素子か、ISFETセンサなどかであってもよい。媒体と接触する測定要素2の表面が平面であることが重要である。有利には、測定要素2は、扁平な円板として設計される。電気化学センサ1は、弾性封止要素9によって測定媒体5に対して封止される。封止要素9は、好ましくは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの耐薬品性かつ耐熱性ポリマー、またはエラストマ、特にパーフルオロエラストマ(FFKM)でできた丸形または扁平断面を持つ封止リングとして形成されてもよい。封止要素9は、好ましくは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの耐薬品性かつ耐熱性ポリマー、またはエラストマ、特にパーフルオロエラストマ(FFKM)の丸形または扁平断面を持つ封止リングとして使用されてもよい。その円形状にかかわらず、そのような封止リングは、楕円または矩形などの他の形状を取ってもよい。
【0030】
[0037]封止要素9と、使用中に測定媒体5と接触する電気化学センサ1の測定面8との間に、測定要素2と不可分に接続される絶縁体要素10が配置される。この絶縁体要素10は、使用中に媒体と接触する測定要素2の測定面8に露出領域を持つ構造を有し、この露出領域は、正確に画定された幾何学的範囲を有する。
図2に図示される配置では、絶縁体要素10は、好ましくは環状であり、したがって測定要素2の測定面8の円形の露出領域を形成する。絶縁体要素10は、直接接合または融着としても知られる、いわゆるウエハ接合工程を使用して測定要素2に不可分に接続される。この接合工程は、MEMS実装およびマイクロ流体分野から十分に周知であり、ここで更に記載されることはない。
【0031】
[0038]平面の測定要素2を持つpHセンサの場合、絶縁体要素は、pHガラスの熱膨張係数に適合された熱膨張熱電係数、特に実質的に同じ熱電膨張係数を持つ、同じ種類の材料からの電気化学的に活性なpHガラス、すなわち絶縁ガラスでできている。測定要素の材料、すなわち感応材料と絶縁体要素の材料、すなわち絶縁体材料との間の不可分の接続を考慮すると、センサは、少なくとも2層のウエハ材料でできている。
【0032】
[0039]センサ軸4は、好ましくは、金属、例えば、ステンレス鋼、チタンで、または耐薬品性かつ耐熱性硬質ポリマー材料、例えば、PEEK、PVDFもしくはPFA(パーフルオロアルコキシ)もしくは相当するフルオロポリマーで、または任意選択で複合材料でできている。使用中に測定媒体に浸漬されるその端部に、それは、軸の内部に向けて延びるベゼル11を有する。センサ軸4の寸法は、例えば、直径が12mm、壁厚が1mmであってもよく、そしてベゼル11は、軸の内部に向けてほぼ1mmを超えて延びてもよい。当然、異なる寸法を持つ電気化学センサも生産されてもよい。
【0033】
[0040]封止要素9は、ベゼル11と絶縁体要素10との間に密封して配置される、すなわち、ポリマーまたはエラストマリングは、ベゼル11と絶縁体要素10との間の圧力によりわずかに変形されて、使用中に測定または洗浄媒体に浸漬される、電気化学測定プローブ1のその端部での気密を確保する。
【0034】
[0041]封止要素9が、測定要素2に直接よりはむしろ、絶縁体要素10に完全に載るので、不定の測定面8を生じさせるであろう完全な封止効果の場合でさえ、測定面8と弾性封止要素9との間に測定媒体が存在することが防止される。本発明による解決策は、したがって、封止領域におけるエッジ効果および/または交換効果の干渉なくその範囲内に正確に画定された測定面8を提供する。
【0035】
[0042]絶縁、非感応ガラスででき、かつ電気化学的に活性なpHガラスの測定要素2に適合された熱膨張係数を持つ絶縁体要素10の代替例として、絶縁体要素10は、例えば、窒化ケイ素の、物理的または化学的析出工程によって生産される層によって形成されてもよい。約0.1~0.5マイクロメートルの通常の窒化ケイ素層厚のため、ここでは測定要素2の電気化学的に活性なpHガラスおよび絶縁体要素10の熱膨張係数を調節する必要がない。他の絶縁体材料、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどが、この様式で塗布される絶縁体要素のための追加材料と考えられてもよい。耐薬品性かつ耐熱性ポリマー材料の被覆も考え得る。
【0036】
[0043]
図3Aおよび3Bは、センサ軸104に設置されるセンサ素子115を持つ電気化学センサ101の更なる実施形態の部分図を表す、すなわち、
図3Aは、断面図でセンサ軸104を図示し、そして
図3Bは、平面図でアイソレータ要素110に接続される測定要素102を図示する。
【0037】
[0044]本実施形態において、センサ軸104は、使用中に測定媒体5に面するその端部の片側に開口113を持つ偏平領域112を有し、そこにセンサ素子115が配置される。このセンサ素子115は、取付装置14を用いてセンサ軸104の側壁に設置されるが、円形状以外の形状、例えば、卵形または丸コーナーを持つ矩形など、を持つ測定要素102を有してもよい。本実施形態は、センサ要素2がセンサ軸4の円筒軸に対して横断方向に設置される、
図2に図示される設計と比較して、大きい測定面108の存在を可能にする。
【0038】
[0045]その上、
図3Aおよび3Bに図示される設計では、封止要素109と測定媒体5と接触する測定面108との間に、測定要素102に不可分に接続される絶縁体要素110が配置される。対応するアイソレータ要素110は、本実施形態において、卵形リングとして形成されても、または
図3Bに図示されるように、測定面108の卵形状の露出領域を除いて、測定要素102の縁領域全体を覆ってもよい。封止要素109が絶縁体要素110に完全に載ること、および露出領域に由来する測定面108がその大きさまたは範囲の点で正確に画定されることが重要である。
【0039】
[0046]
図4は、例として、
図2による電気化学センサの実施形態におけるセンサ素子15を生産して、センサ軸4に設置するためのステップ、およびウエハ技術を用いて測定要素2と接続される、耐薬品性かつ耐熱性絶縁体ガラスでできた絶縁体要素10を例示する。ステップ20で、0.3mm~1.2mm、好ましくは0.6mmの厚さを持つ電気化学的に活性なpHガラスでできた直径が約50~100mmのウエハが、調節された、特に同一の熱膨張係数を持つ耐薬品性かつ耐熱性絶縁体ガラスでできた等しい大きさのウエハに、直接接合または融着によって接続される。いわゆるウエハ接合の前述の方法は公知であり、したがって詳述されることはない。
【0040】
[0047]測定要素2および絶縁体要素10からそのような不可分に接続された、少なくとも2層のウエハを形成した後、ウエハの両方の層の厚さが、ステップ30で、絶縁体ガラスに対して約0.1mmおよびpHガラスに対して約0.1~0.2mmまで研削し、続いて研磨することによって減少される。
【0041】
[0048]続いて、絶縁体ガラスは、ステップ40で、湿式化学エッチング、乾式エッチング、またはパウダーブラストもしくは流体ジェット研磨などの機械的工程を用いて、かつスクリーンを使用して構造化され、ここではpHガラスの露出領域が画定された領域に作製され、したがって少なくとも2層のウエハにそれぞれの測定要素2のための正確に画定された測定面8を形成する。同時に、センサ素子15の分離後の部品としての絶縁体要素10を形成するために、絶縁体ガラスは縁領域に残存する。
【0042】
[0049]ステップ50で、付随するアイソレータ要素を持つ個々の形態のセンサ素子15への分離が行われる。それらは、好ましくは、レーザまたはダイヤモンド切断を用いて切断され、そして該当する場合は適切な形状へ研削される。切断は、現存の絶縁体材料の領域で、かつセンサ軸4への設置に適する形状、例えば、
図2によるセンサに対して円形または
図3Bによるセンサに対して矩形に行われる。
【0043】
[0050]任意選択で更なる処理またはセンサ1の運用性を確立するために必要とされる更なる部品の追加後、測定媒体5に浸漬してセンサ1を使用するときに絶縁体要素10が測定媒体5に面するように、センサ素子15が、ステップ60で、センサ軸4に設置される。したがって、封止要素9がベゼル11と絶縁体要素10との間に密封して配置される、すなわち、測定要素2および絶縁体要素10を持つセンサ素子15は、センサ軸4の内部(
図3Aを参照のこと)で取付装置14に制御圧力を加えることによって固締される。
【0044】
[0051]絶縁体要素として物理的または化学的析出工程によって生産される層、例えば、窒化ケイ素層を有するセンサの製造は類似した様式で行われる。被覆工程は好ましくはPECVD(プラズマ強化化学蒸着)である。露出領域を生産するためのエッチング工程はプラズマエッチングによって行われる。
【0045】
[0052]代替的に、露出領域の領域は、感応材料のウエハ上のスクリーンによって既に覆われていることもあり得、そして絶縁体材料-この場合、窒化ケイ素-は、例えば、PVD(物理蒸着)によって(蒸気)析出同様に構造化され得る。
【0046】
[0053]本発明は、好適な実施形態を参照しつつ開示および記載された。しかしながら、保護範囲は本発明の他の実施形態および発展も含むものとし、それらはここで詳述されることはない。例えば、ウエハの絶縁体材料を構造化するとき、露出領域の異なるパターン、例えば、島などが、考え得る限り作成されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1、101 電気化学センサ
2、102 測定要素
3 センサヘッド
4、104 センサ軸
5 測定媒体
6 接点
7 電線
8、108 測定面
9、109 封止要素
10、110 絶縁体要素
11、111 ベゼル
112 センサ軸104の偏平領域
13、113 開口
14 取付装置
15、115 センサ素子
16 基準電極
17 送信器
20 ウエハ接合
30 ウエハ厚調節
40 構造化
50 分離
60 設置