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特許7079252ローリングブロックを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ローリングブロックを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジ
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/08 20060101AFI20220525BHJP
   B62K 5/05 20130101ALI20220525BHJP
   B62K 5/10 20130101ALI20220525BHJP
   B60G 17/005 20060101ALI20220525BHJP
   B62D 7/18 20060101ALI20220525BHJP
   B60G 21/05 20060101ALI20220525BHJP
   B60G 21/00 20060101ALN20220525BHJP
【FI】
B62K5/08
B62K5/05
B62K5/10
B60G17/005
B62D7/18
B60G21/05
B60G21/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019532953
(86)(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2017058221
(87)【国際公開番号】W WO2018116212
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】102016000129497
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512185877
【氏名又は名称】ピアッジオ・エ・チ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】PIAGGIO & C. S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Viale Rinaldo Piaggio, 25, I-56025 Pontedera, PI,Italy
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・ラッファエッリ
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-286266(JP,A)
【文献】特開昭57-175483(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046280(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0175184(US,A1)
【文献】特開2012-81784(JP,A)
【文献】特開2015-229490(JP,A)
【文献】実開昭59-87392(JP,U)
【文献】登録実用新案第3196974(JP,U)
【文献】特開2004-359232(JP,A)
【文献】特開2005-313876(JP,A)
【文献】特開2014-237362(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第2953184(FR,A1)
【文献】欧州特許第2345576(EP,B1)
【文献】特表2019-503929(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 1/00- 11/14
B60G 17/005
B62D 7/18
B60G 21/05
B60G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三つ又は四つのホイールを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジ(8)であって、
前記前部キャリッジ(8)は、
前部キャリッジフレーム(16)と、
第1フロントホイール(10’)及び第2フロントホイール(10”)と、
前記第1フロントホイール(10’)と前記第2フロントホイール(10”)を互いに連結するとともに、前記第1フロントホイール(10’)と前記第2フロントホイール(10”)を前記前部キャリッジフレーム(16)に回転可能に連結するローリング機構(20)とを有し、
前記前部キャリッジフレーム(16)は、第1アンカー部(60)及び第2アンカー部(60)と、前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)を前記第1フロントホイール(10’)と前記第2フロントホイール(10”)にそれぞれ連結する第1ピン(68)と第2ピン(68)を有し、
前記前部キャリッジ(8)はまた、
第1端部(111)と第2端部(112)を有するロッド(110)を備えており、前記ロッド(110)の前記第1端部(111)と前記第2端部(112)はそれぞれ、第1ローリングヒンジ(101’)と第2ローリングヒンジ(102’)を有するヒンジ手段(101’、102’)によって、前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)を互いに直接連結する、アンチローリングシステム(100)を有し、
前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)の少なくとも一方は、前記第1フロントホイール(10’)と前記第2フロントホイール(10”)のローリング運動に追従し、
前記アンチローリングシステム(100)は、前記ロッド(110)のローリング角に対応する回転角(α)を規制する第1ブロッキング装置を備えており、
前記第1ブロッキング装置は、連結ロッド(210)とクランク(220)を有する連結ロッドとクランクの運動機構(210,220)を備えており、
前記連結ロッドとクランクの運動機構(210,220)は、関節接合された四辺形を形成するように、前記ロッド(110)と前記第1アンカー部(60)に連結されており、
前記第1ブロッキング装置はさらに、
前記関節接合された四辺形が三角形になって前記ロッドの前記回転角を規制するストラットを形成するブロック状態と、前記関節接合された四辺形が四辺形を維持して前記ローリング運動を許可する少なくとも一つの自由状態との間を変化するように、前記連結ロッドとクランクの運動機構(210,220)を動作させるアクチュエータ(230)と、
前記自由状態と前記ブロック状態との間の経路上にあって前記ブロック状態に対応する位置で前記クランク(220)の回転を停止する停止手段(240)を有する、前部キャリッジ(8)。
【請求項2】
前記連結ロッドとクランクの運動機構(210,220)は、第1円筒ヒンジ(201)を介して前記連結ロッド(210)が前記ロッド(110)に連結され、第2円筒ヒンジ(202)を介して前記クランク(220)が前記第1アンカー部(60)に連結されており、
前記第1ローリングヒンジ(101’)は前記第1フロントホイール(10’)及び前記第2フロントホイール(10”)のローリング面に垂直なヒンジ軸を有し、
前記連結ロッド(210)は、円筒関節ヒンジ(203)によって前記クランク(220)に連結されており、
前記第1円筒ヒンジ(201)、前記第2円筒ヒンジ(202)及び前記円筒関節ヒンジ(203)はそれぞれが、前記第1ローリングヒンジ(101’)の前記ヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有する、請求項1の前部キャリッジ(8)。
【請求項3】
前記連結ロッド(210)は第1端部(210a)と第2端部(210b)を有し、
前記連結ロッド(210)は、
前記連結ロッド(210)の前記第1端部(210a)が、前記円筒関節ヒンジ(203)の前記ヒンジ軸にオフセットした位置で、支持ブラケット(231)によって、前記第1円筒ヒンジ(201)と前記円筒関節ヒンジ(203)の一方に連結され、
前記連結ロッド(210)の前記第2端部(210b)が、前記第1円筒ヒンジ(210)と前記円筒関節ヒンジ(203)の他方に連結されており、
前記第1円筒ヒンジ(201)に対して、前記連結ロッド(210)が前記連結ロッド(210)の軸方向に移動できるようになっている、請求項2の前部キャリッジ。
【請求項4】
前記アクチュエータ(230)は、前記第1円筒ヒンジ(201)又は前記円筒関節ヒンジ(203)に対して前記連結ロッド(210)を軸方向に移動させて、前記円筒関節ヒンジ(203)と前記第1円筒ヒンジ(201)との間の距離(H)を変化させ、
前記アクチュエータ(230)は、前記円筒関節ヒンジ(203)と前記第2円筒ヒンジ(202)との間の前記第2円筒ヒンジ(202)の前記ヒンジ軸に関して前記連結ロッド(210)を整列させずに、前記第2円筒ヒンジ(202)を中心に前記クランク(220)を回転することによって前記距離(H)を変化させる、請求項の前部キャリッジ(8)。
【請求項5】
前記ブロック状態において、前記クランク(220)は、前記第1円筒ヒンジ(201)と前記第2円筒ヒンジ(202)の間を通るブロック軸に対して整列し、
前記自由状態において、前記クランク(220)は、前記ブロック軸に対して整列しない、請求項3又は4の前部キャリッジ(8)。
【請求項6】
前記停止手段は端部ストローク要素を有する、請求項3~5のいずれかの前部キャリッジ。
【請求項7】
前記端部ストローク要素は、フェアバーン機構(240)を有し、
前記フェアバーン機構(240)は、前記第1円筒ヒンジ(201)と前記第2円筒ヒンジ(202)を斜めに連結し、前記第1円筒ヒンジ(201)と前記第2円筒ヒンジ(202)を連結する長軸方向のスロット連結部(241)を介して前記第1円筒ヒンジ(201)に対して前記長軸方向にスライド可能で、
前記フェアバーン機構(240)は、前記円筒関節ヒンジ(203)が係合する係合座部(242)を形成しており、
前記係合座部(242)は、前記第1円筒ヒンジ(201)と前記第2円筒ヒンジ(202)の間で軸方向に整列している、請求項6の前部キャリッジ(8)。
【請求項8】
前記連結ロッド(210)は、前記第1円筒ヒンジ(201)又は前記円筒関節ヒンジ(203)の支持本体(201a)に回転可能に係合するウォームギヤを有し、
前記アクチュエータ(230)は、前記第1円筒ヒンジ(201)又は前記円筒関節ヒンジ(203)に対して前記連結ロッド(210)を軸方向に移動するように、前記ウォームギヤ(210)を前記ウォームギヤ(210)の軸を中心に回転する、請求項3~7のいずれかの前部キャリッジ(8)。
【請求項9】
前記ウォームギヤ(210)は、前記連結ロッド(210)の前記第2端部(210b)において前記第1円筒ヒンジ(201)の前記支持本体(201a)に回転自在にかみ合い、前記連結ロッド(210)の前記第1端部(210a)において前記支持ブラケット(231)を介して前記円筒関節ヒンジ(203)に連結されており、
前記支持ブラケット(231)は、前記円筒関節ヒンジ(203)に対して前記ウォームギヤ(210)をオフセットした状態で保持する、請求項8の前部キャリッジ(8)。
【請求項10】
前記クランク(220)は、前記連結ロッドとクランクの運動機構(210,220)が前記ブロック状態に置かれたときに前記ローリング運動が急激にブロッキングされないように、前記クランク(220)の軸に沿って配置されたダンパを有し、
前記前部キャリッジには、前記ダンパを作動させずに前記第2円筒ヒンジ(202)と前記円筒関節ヒンジ(203)とを連結する前記クランク(220)の軸に沿った振動を防止するダンパ停止手段が設けられている、請求項3~9のいずれかの前部キャリッジ(8)。
【請求項11】
前記第2ローリングヒンジ(102’)は、前記第1フロントホイール(10’)及び前記第2フロントホイール(10”)のローリング面に垂直なヒンジ軸を有し、
前記アンチローリングシステム(100)は、前記ロッド(110)の前記第2端部(112)において前記ロッド(110)の前記回転角をブロッキングする第2ブロッキング装置を備えており、
前記第2ブロッキング装置は、前記ロッド(110)の前記第1端部(111)に設けられた前記第1ブロッキング装置と同じである、請求項1~10のいずれかの前部キャリッジ(8)。
【請求項12】
前記ロッド(110)は、前記ロッド(110)の前記第1端部(111)と前記第2端部(112)との間で前記ロッド(110)の長手方向に伸長可能である、請求項1~11のいずれかの前部キャリッジ(8)。
【請求項13】
前記前部キャリッジは、前記ローリング機構(20)に対して前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)のばねサスペンションの動作を保証するサスペンション手段(90)を有する、請求項1~12のいずれかの前部キャリッジ(8)。
【請求項14】
前記ローリング機構は、中央ヒンジ(28)で前記前部キャリッジフレーム(16)にヒンジされた一対の横部材(24’、24”)と、サイドヒンジ(52)によって前記横部材(24’、24”)の両端(40,41)にピボット回転可能に連結された一対の垂直部材(48)を備えており、
前記一対の横部材と前記一対の垂直部材は、関節接合された四辺形の機構を形成している、請求項1~13のいずれかの前部キャリッジ(8)。
【請求項15】
前記モータビークルの後部に設けられた駆動ホイールと、請求項1~14のいずれかの前部キャリッジ(8)を有する、モータビークル。
【請求項16】
請求項1~14のいずれかの前部キャリッジを有する、三つ又は四つのホイールを有するモータビークルのローリング運動をブロッキングする方法であって、前記方法は、
少なくとも前記第1ブロッキング装置の前記アクチュエータ(230)を作動して、前記停止手段(240)が係り合う前記ブロック状態まで前記クランク(220)を回転させ、前記関節接合された四辺形を三角形にして、前記ロッドの前記ローリング角をブロッキングする前記ストラットを形成する、ローリングブロッキング工程と、
少なくとも前記第1ブロッキング装置の前記アクチュエータ(230)を作動して、前記クランク(220)が前記停止手段(240)と係り合わない少なくとも一つの自由状態まで前記クランク(220)を回転し、前記関節接合された四辺形が四辺形を回復して前記第1フロントホイール(10’)と前記第2フロントホイール(10”)の前記ローリング運動を許可する状態を回復する、ローリング解除工程、とを有する、方法。
【請求項17】
三つ又は四つのホイールを有するローリング式モータビークルの前部キャリッジ(8)のアンチローリングシステムであって、前記前部キャリッジ(8)は、
前部キャリッジフレーム(16)と、
ローリング機構(20)によって、互いに連結されると共に、前記前部キャリッジフレーム(16)に連結された、少なくとも一対のフロントホイール(10’、10”)とを備えており、
前記アンチローリングシステム(100)は、第1端部(111)と第2端部(112)を有するロッド(110)を有し、
前記ロッド(110)は、前記前部キャリッジ(8)に取り付けられた状態で、ヒンジ手段(101’、101”;102’、102”)によって、前記前部キャリッジ(8)の第1アンカー部(60)と第2アンカー部(60)を連結し、
前記第1アンカー部(60)と前記第2アンカー部(60)の少なくとも一方は、前記少なくとも一対のフロントホイール(10’、10”)のローリング運動を受け、
前記アンチローリングシステム(100)は、前記ロッドのローリング角に対応する回転角(α)をブロッキングする第1ブロッキング装置を有し、
前記第1ブロッキング装置は、関節接合された四辺形を形成するように、前記ロッド(110)と前記第1アンカー部(60)に連結された連結ロッドとクランクの運動機構(210,220)を有し、
前記第1ブロッキング装置はさらに、
前記関節接合された四辺形が実質的に三角形になって前記ロッドの前記ローリング角をブロッキングするストラットを形成するブロック状態と、前記関節接合された四辺形が前記ローリング運動を許可する四辺形を維持する少なくとも一つの自由状態との間で前記連結ロッドとクランクの運動機構(210,220)の形状が変化するように、前記連結ロッドとクランクの運動機構(210,220)を軸方向に移動させるアクチュエータ(230)と、
前記自由状態と前記ブロック状態との間で前記ブロック状態に対応する位置で前記クランク(220)の回転を停止する停止手段(24)を有する、アンチローリングシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローリングブロックを備えたローリング式のモータビークル(原動機付き車両)の前部キャリッジに関する。
【0002】
特に、本発明に係るビークル(車両)は、前部に2つのステアリング及びローリングホイールを備え、後部に固定車軸を有する後部ドライブホイールを備えた、モータビークルである。
【背景技術】
【0003】
モータビークルの分野では、操作性に関してモータサイクルの特性に四輪ビークルの安定性を組み合わせた「ハイブリッド」ビークルの供給が伸びている。
【0004】
これらのハイブリッドビークルは、例えば、二つのステアリングホイールを備えた三輪モータビークルや四輪バイク(QUAD)として知られている四輪モータビークルによって代表される。
【0005】
さらに具体的に説明すると、上述の三輪モータビークルは、前部に二つのステアリング及びローリング(すなわち、傾斜)ホイールが設けられ、後部に固定車軸を有する後部ドライブホイールが設けられている。リアホイール(後輪)は駆動トルクを提供して牽引力を生み出すためのものである。一方、フロントホイール(前輪)は、対になって、ビークルの方向性を制御する。前部キャリッジの対のホイールは、ステアリングに加えて、前後左右の傾きを制御する。そのために、後部に二つのホイールを有する三輪モータビークルに比べて、前部キャリッジに二つのホイールを備えたモータビークルは、モータサイクルと同様にカーブで傾斜するため、実際のモータサイクルに近いものである。しかし、二輪モータサイクルに比べて、前部キャリッジに二つの対をなすホイールを備えたビークルは、二つの前輪によって地面を二か所で支えるために、車両と同等の高い安定性が得られる。
【0006】
前輪は、運動系機構によって(例えば関節接合された四辺形構造の中間介在物を介して)互いに運動学的に連結されている。これにより、前輪は同期して鏡面反射式に回転する。これらのビークルはさらに、二つの前輪のそれぞれに対して一つの、2つの独立したダンパ付きサスペンションを備えている。
【0007】
したがって、三輪のローリング式モータビークルは、二輪モータサイクルの操作性と、四輪モータビークルの安定性と安全性を同時に兼ね備えるように設計されている。
【0008】
この種の三輪ローリング式モータビークルは、本件出願人の例えばイタリア特許出願IT2003MIA001108に記載されている。
【0009】
この種のビークルの構造的特徴により、ある条件(例えば、非常に低速度、又は停止中)で、モータビークルは、不測の動作をするか、制御不能なローリング動作を生じる可能性がある。
【0010】
この問題は、ユーザがマニュアル操作する制御システム及び/又は自動制御システムによって動作されるローリング防止システムを上述のビークルに設けることにより解消されてきた。
【0011】
ローリングの防止は、種々の方法によって行うことができる。しかし、それらの方法は、一方又は両方のローリングホイールのローリング動作に追随するように構成されたコンポーネントを可逆的にブロッキング(阻止)することを必要とするものである。そのようなコンポーネントによるローリング動作のブロッキングは、運動学的に、直接または間接的に、モータビークルの二つの前輪のローリングをブロッキングすることである。
【0012】
可逆的にブロッキングされるコンポーネントは、モータビークルのローリング構造にすでに存在している要素であってもよい。例えば、きわめて一般的な方法では、ブロッキングされるコンポーネントは、ローリング運動系機構を形成する関節接合された四辺形機構の一つの構成要素であってもよい。ただし、二つの直立要素のうちの一つであることが好ましい。四辺形機構の一つの直立要素の動きをブロッキングすれば、四辺形機構の変形が防止され、これにより、二つの車輪のローリングが直接的に防止される。仮に連結された四辺形機構が二つのローリングホイールの軸受ジャーナルにサスペンションを介して連結されていれば、ダンパの非対称なばねの動きによるローリング動作はブロッキングされず、個別に管理されなければならない。
【0013】
そのようなシステムが、例えば、本件特許出願人のイタリア特許出願IT2004A000171に記載されている。このアンチローリングシステムは、連結された四辺形構造と二つの独立したフロントサスペンションを備えたステアリングシステムが設けられたローリング式モータビークルに関連して説明されている。アンチローリングシステムは、前記四辺形機構における上部垂直部材の、前記フレームの直立部材を接続するヒンジ周りの回転をブロッキングするように構成された機械クランプと、二つのホイールの非対称なばね運動に起因するローリングを防止するために、ダンパに平行に配置されたロッドに作用する電気モータによって同時に動作される二つの油圧クランプを有する。
【0014】
代わりに、ローリングを防止するために可逆的にブロッキングされるコンポーネントは、その目的のために特に設計された、モータビークルのローリング構造に付加された要素で構成してもよい。
【0015】
特に、この追加要素は、四辺形機構における可逆的ブロッキングとして、関節接合された四辺形機構に関連している。この解決手法は、例えば、欧州特許出願EP2810861A1、フランス特許FR2953184、および欧州特許EP2345576B1に記載されている。
【0016】
代わりに、この追加要素は、モータビークルのフレームから機械的に分離された、二つのローリングホイールの軸受ジャーナル間の直接連結要素で構成してもよい。ホイールの「軸受ジャーナル」は、ホイールの回転軸を支持するモータビークルの機械部部分であって、サスペンション、ステアリング装置、及び特別な場合ではローリング機構に運動学的に連結されている。軸受ジャーナルは、ホイールピンに対して全く自由度が無く、そのためにホイールピンと運動学的に一体的に駆動する。軸受ジャーナルはホイールピンと一体的に構成してもよいし、それらは一つの部品を形成するように機械的に拘束してもよい。このようなローリングをブロッキングする技術的解決方法は、運動学的にはサスペンションによって生じる影響が無いので、そのような追加要素だけの作用ですべてのローリング動作(二つのローリングホイールの非対称なばね動作によって生じるローリング動作を含む)を防止できる。このような技術的解決策を提供することが、本件特許出願人のイタリア特許出願第102015000088087の目的である。その出願に記載された特定のアンチローリングシステムは、伸長可能なロッドを有する。このロッドは、その両端で、ボールジョイントと同等のヒンジ手段によって、前輪の2つの軸受ジャーナルを直接的に互いに連結している。 ローリングは、専用アクチュエータ(例えば、バンドブレーキ又はドラムブレーキ)によってローリング面上にあるロッドの少なくとも一端において、該ロッドの回転角度をブロッキングすることによって防止される。このようにして回転がブロッキングされたロッドは、二つの車輪のローリング動作を防止する。「ローリング面」は、モータビークルの長軸方向又は走行方向を横断する平面を意味し、モータビークルの中心線を通る面と交差する。
【0017】
代わりに、上述した追加の要素は、二つのローリングホイールの一方の軸受ジャーナルとモータビークルのフレームとの間を直接連結する要素からなる。このような技術的解決手法は、本件出願人のイタリア特許出願第102015000088091に記載されている。特に、アンチローリングシステムは、そのロッドの両端で、ボールジョイントと同等のヒンジ手段によって、一方のホイールの軸受ジャーナルをフレームに直接連結する伸長可能なロッドを有する。ローリングは、専用アクチュエータ(例えば、バンドブレーキ又はドラムブレーキ)によってローリング面上にあるロッドの少なくとも一端において、該ロッドの回転角度を阻止することによって防止される。このようにして回転がブロッキングされたロッドにより、二つのホイールのローリング動作が防止される。この場合、ロッドによってフレームに連結されていないホイールのばね性は、ロッドがブロッキングされたことによって影響を受けることがないので、非対称な両ホイールのばねサスペンションに起因するローリング動作が阻止される。
【0018】
一般に、連結ロッドが、ボールジョイントと同等のヒンジ手段によって両端がヒンジされるとともに、ローリング面上での回転角度が専用アクチュエータによって少なくとも一端でブロッキングされることにより、アンチローリングシステムは、その他の解決手段に比べて、簡単にモータビークルに搭載され、専有面積が小さい、という利点を有する。
【0019】
また、そのようなロッドは、モータビークルの動作中(特に、ローリング、ステアリング、又は非対称なばねサスペンション)ではなく、距離が変化する箇所を連結しているか否かに応じて、伸長可能である(ただし、それ自体の長さが伸びるわけではない。)したがって、そのシステムはまた、運転中に実質的に意識されることがないように構成できる。
【0020】
ベルトブレーキ又はドラムブレーキを採用すれば、ロッドのヒンジ手段に直接的にアクチュエータを一体化できる。この場合、取り付けが容易である、という利点がある。
【0021】
しかし、この種の技術的解決方法は、パワーアクチュエータの使用に制約が加わる。パワーアクチュエータは、ローリング動作を阻止することによってモータビークルにおけるバランスを維持するだけでなく、モータビークルの重量が片側に偏ることによってバランスが変わるのを防止するために、十分なトルクを提供するために十分な大きさを有するものでなければならない。単一のアクチュエータは、30kgmの範囲のトルクを提供し得るものでなければならない。これは、大型のベルトブレーキ又はドラムブレーキを必要とし、そのためにロッドによって得られる省スペースの利点を実質的に損なうことになる。ディスクブレーキを採用した場合もで、同様の問題が発生する。
【0022】
二つのローリングホイールにおいてローリングを対称に防止するためにロッド両端における該ロッドの回転を防止する場合、その制約が一層強まる。この場合、一つのアクチュエータでは不十分で、二つのアクチュエータを設ける必要があり、これにより全体の大きさと製造コストが倍増する。二つのホイールは運動学的ローリング機構によって互いに連結されているので、ローリングを左右で対称に防止することはそれ自体が重要なことではないが、コンポーネントの一連の許容誤差と弾性を抑えるためには適当であり得る。
【0023】
ベルトブレーキとドラムブレーキの代替手段は、ヒンジ領域の近傍で、ロッドとそれにヒンジされる部材に斜めに連結する伸長可能なストラット(筋交い)を有し、すでに引用したイタリア特許出願第102015000088087に記載されている。この伸長可能なストラットには、これが長手方向に伸びるのを防止する手段が設けられている。そのように長手方向の伸びが防止されることにより、ストラットはロッドの回転を防止する。しかし、この技術は、取り付けが複雑で、全体の寸法が大きくなるという問題を大幅に解消するものでない。
【0024】
したがって、アンチローリングシステムを備え、ローリングをブロッキングする要素として一端にロッドを設けることによって上述の問題を全体的に又は部分的に解消する、ローリング式モータビークルを開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0025】
したがって、本発明は、ローリングをブロッキングする要素としてロッドを簡単に取り付けできかつシステム全体を小型にできるアンチローリングシステムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することによって、上述の問題を解消又は低減することを目的とする。
【0026】
本発明の別の目的は、従来のアクチュエータよりも小さくて安価なアクチュエータを使用できるアンチローリングシステムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、ローリングを緩やかに阻止し得るアンチローリングシステムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、システムの全体寸法とコストを大幅に増加させることなく、両ローリングホイールのローリングを対称に阻止し得る、アンチローリングシステムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することである。
【0029】
本発明のさらに別の目的は、構造が簡単で、ビークルに安価に搭載されるアンチローリングシステムを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の技術的特徴は以下に記載する請求の範囲の内容から明らかである。また、本発明の利点は、本発明の実施形態を示す添付図面を参照した以下の詳細な説明から容易に明らかになる。なお、図示する実施形態は、単なる例示であって、限定的なものではない。
【0031】
また、本発明の特徴と利点は、非制限的な好適な実施例の説明からさらに明らかになる。
【0032】
図1図1は、本発明の好適な実施形態に係るローリングブロッキングシステムを備えた前部キャリッジを有するモータビークルの、一部を除いた斜視図を示す。
図2図2は、図1に示すモータビークルの前部キャリッジの拡大図を示す。
図3図3は、前部キャリッジから分離して表された、アンチローリングシステムに関連して表された、自由状態のブロッキング装置を備えた、図1のモータビークルの前部キャリッジの細部の拡大斜視図を示す。
図4図4は、図3に示す細部の正面図を示す。
図5図5は、ブロッキングされた形状のブロッキング装置とともに示された、図3のアンチローリングシステムの斜視図を示す。
図6図6は、図5に示す細部の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図面を参照すると、符号4は本発明に係るモータビークル(原動機付き車両)の全体を示す。
【0034】
発明の目的上、「モータビークル」の用語は、広義には、少なくとも三つのホイール(すなわち、以下に説明する二つのフロントホイールと少なくとも一つのリアホイール)を有するあらゆるモータビークルを含む。したがって、モータビークルの定義は、前部キャリッジに二つのホイールを有し、後部キャリッジに二つのホイールを有する、いわゆる四輪バイクも含む。
【0035】
モータビークル4は、少なくとも二つのフロントホイール10を支持する前部キャリッジ8から、一つ又は複数のリアホイール14を支持する後部キャリッジ12に伸びる、フレーム6を有する。左側のフロントホイール10’と右側のフロントホイール10”は区別することができ、左側と右側のフロントホイール10’、10”の定義は単に形式的なものであって、ビークルのドライバとの関係を意味している。これらのホイールは、ビークルを運転するドライバの視点から見て、モータビークルの中心線M-Mの左側と右側に配置されている。
【0036】
本発明の目的から、モータビークルのフレーム6は、任意の形状と大きさを有し、例えば格子型、箱型、シングルクレードル型、又はデュアルクレードル型等のいずれであってよい。モータビークルフレーム6は、一つの部品であってもよいし、複数の部品で構成してもよい。例えば、モータビークルのフレーム6は、リアフレーム13と連結されている。リアフレーム13は、一つ又は複数のリアドライブホイール14を支持する後部の振動揺動アーム(図示せず)を有する。後部の揺動アームは、ヒンジによって直接、又はクランク機構及び又は中間フレームを介して、フレーム6に連結される。
【0037】
本発明の実施形態によれば、モータビークルの前部キャリッジ8は、前部キャリッジフレーム16と、互いに運動学的に連結されるとともに運動学的ローリング機構20によって前部キャリッジフレーム16に運動学的に連結された一対のフロントホイール10’、10”を有する。ローリング機構20は、一対のフロントホイールを同期して鏡面反射式にローリングさせる。
【0038】
モータビークル前部キャリッジ8は、アンチローリングシステム100を有する。アンチローリングシステムはロッド110を有する。ロッド110は、両側に第1端部111と第2端部112を有する。第1端部と第2端部は、ヒンジ手段101’、101”;102’、102”によって、前部キャリッジ8の第1アンカー部(固定部)60と第2アンカー部(固定部)60に直接連結する。
【0039】
好ましくは、第1アンカー部60と第2アンカー部60の少なくとも一方は、二つのフロントホール10’、10”のローリング動作の影響を受ける。特に、以下に詳細に説明するように、第1アンカー部60と第2アンカー部60は共に、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受ける、または第1アンカー部と第2アンカー部の一方だけが、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受け、他方のアンカー部は前部キャリッジフレーム16の一部である。
【0040】
好ましくは、ヒンジ手段101’、101”及び102’、102”は、第1アンカー部60と第2アンカー部60の動きに受動的に追従するように構成されている。
【0041】
好ましくは、ロッドの第1端部111に対するヒンジ手段1011’、101”は、少なくとも第1ローリングヒンジ101’を有する。第1ローリングヒンジは、二つのフロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直なヒンジ軸を有し、第1アンカー部60に連結されている。
【0042】
アンチローリングシステム100は、好ましくは、ロッド110の第1端部111において、第1ローリングヒンジ101’に対して、ロッド110の回転角αを可逆的にブロック(防止)するために適した第1ブロッキング装置を有する。
【0043】
「ローリング面」は、モータビークルの長手方向又は移動方向Yを横断する面を意味し、モータビークルの中心面M-Mと交差する。
【0044】
ロッド110の少なくとも一端において、ローリング面に対するロッド110の回転を防止することは、ロッド110に連結された前部キャリッジのローリング動作をブロックし、結果的に、二つのフロントホイール10’、10”のローリング運動をブロッキングすることを意味する。
【0045】
添付図に示す好適な実施形態によれば、各フロントホイール10’、10”は運動学的ローリング機構20に軸受ジャーナル60によって連結されている。ホイールは、回転ピンが回転軸の周りでホイールを回転可能に支持するように、ホイールの回転ピン68に機械的に連結されている。前部キャリッジはさらに、各軸受ジャーナル60がローリング機構20に対する少なくとも一方のばねサスペンション動作を保証するために、サスペンション手段を有する。
【0046】
ホイールの「軸受ジャーナル」は、モータビークルにおける機械部分で、ホイールの回転軸を支持し、該回転軸をサスペンションとステアリング装置と運動学的ローリング機構20に運動学的に連結するものである。軸受ジャーナルは、軸受ジャーナルを介してホイールを支持するホイールの回転軸に運動学的に一体的にしてもよい。その場合、軸受ジャーナルは、ホイール回転軸に一体的に構成するか、又は一つの部品を形成するために機械的に拘束してもよい。軸受ジャーナルは、軸受ジャーナルを介してホイールを支持するホイールの回転軸に運動学的に一体的にしてもよい。
【0047】
添付図に示す好適な実施形態によれば、第1アンカー部と第2のアンカー部60は、二つのフロントホイール10’、10”の軸受ジャーナル60からなり、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受ける。この場合、ローリング面に対するロッド110の回転がブロッキングされると、二つのフロントホイールの軸受ジャーナルと二つのホイールのローリング動作がブロッキングされる。
【0048】
代わりに、添付図に図示されていない実施形態によれば、ロッド110は二つのフロントホイールの一方の軸受ジャーナルを前部キャリッジフレーム16に直接連結する。この場合、第1のアンカー部と第2のアンカー部の一方だけが、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受ける。この場合、ローリング面に対するロッドの回転は、フロントホイールだけで行われる。しかし、動作上、上述した運動学的ローリング機構の連結機構によって与えられた運動学的連結により、一方のフロントホイールのローリングをブロックすれば、他方のフロントホイールのローリングが自動的に防止される。
【0049】
好ましくは、ロッド110が軸受ジャーナルの一方又は両方に連結される実施形態では、ロッドの第1端部のヒンジ手段101’、101”は、第1の円筒状ステアリングヒンジ101’を有する。ステアリングヒンジは、軸受ジャーナルに対するステアリング動作を許可する、ローリング面に平行なヒンジ軸を有する。第1のローリングヒンジ101’は、円筒状のステアリングヒンジ101”に連結されている。
【0050】
上述の運動学的ローリング機構20は、フロントホイールが同期して鏡面反射式にローリングすることが保証される限り、任意の構造を取り得る。
【0051】
添付図に示す実施形態によれば、運動学的ローリング機構20は、連結された四辺形システム(四辺形機構)である。
【0052】
さらに詳細に説明すると、このような連結された四辺形システムは、中央ヒンジ28で前部キャリッジフレーム16にヒンジされた一対の横部材24’、24”を有する。横部材24’、24”は、サイドヒンジ52の横方向端部で回転可能に連結された垂直部材48によって、横方向両端部で、互いに連結されている。横部材24’、24”と垂直部材48は、上述した連結された四辺形20を形成する。
【0053】
好ましくは、この場合、垂直部材48は、フロントホイール10’、10”の一方の軸受ジャーナルを案内し支持する。
【0054】
添付図面に示されていない実施形態では、垂直部材はフロントホイールの軸受ジャーナルを、その延長軸に同軸的に案内し支持する。この場合、各フロントホイールのサスペンション手段は、垂直部材に一体化され、垂直軸の延長軸に沿って軸受ジャーナルの直線ばね運動を保証する。
【0055】
代わりに、添付図に示されているように、連結された四辺形の運動学的ローリング機構20は、垂直部材48がそれぞれ、並進運動型の運動学的連結機構を介して、それぞれのフロントホイール10’、10”の軸受ジャーナル60を案内し支持する。
【0056】
添付図面に示されていない実施形態によれば、運動学的ローリング機構が関節接合された四辺形システムの場合、第1アンカー部と第2アンカー部は、上述した関節接合された四辺形システムの垂直部材と横部材から選択された二つの部材からなり、それらは二つのフロントホイール10’、10”のローリング運動の影響を受ける。動作上、ローリング面に対するロッド110の回転がブロッキングされると、関節接合された四辺形システムが制止され、その結果、連結された四辺形システムによって得られるローリング動作が禁止される。
【0057】
代わりに、添付図面に示されていない別の実施形態によれば、ロッド110は関節接合された四辺形システムの垂直部材と水平部材から選択された部材を前部キャリッジ16に接続してもよい。この場合、第1アンカー部と第2アンカー部の一方のみが、二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作を受ける。
【0058】
好ましくは、関節接合された四辺形システムの二つの部材、又はその部材と前部キャリッジとの間をロッド110で連結するいずれの実施形態であっても、ロッド110の第1端部111におけるヒンジ手段は、第1ローリングヒンジ101’からなる。関節接合された四辺形は、実際上、様々な構造において、ローリング面に常に平行で、前部キャリッジフレーム等のステアリング動作において明らかである。
【0059】
都合良く、前部キャリッジ8は、フロントホイール10’、10”のそれぞれのステアリング軸を中心とする軸受ジャーナルの回転を制御するステアリング装置が設けられる。ステアリング装置は、軸受ジャーナルに直接作用してサスペンションの動作を受けてもよいし、サスペンションの動作の影響を受けることなく、軸受ジャーナルに間接的に作用してもよい。
【0060】
本発明の第1形態によれば、添付図面に示すように、第1ブロッキング装置は連結ロッドとクランクの運動機構(システム)210,220を有する。この機構は、第1円筒ヒンジ201によって好ましくは連結ロッド210でロッド110に連結され、また、第2円筒ヒンジ202によって好ましくはクランク220で第1アンカー部60に連結され、関節接合された四辺形を形成する。
【0061】
好ましくは、連結ロッド210は、円筒関節ヒンジ203によって、クランク220に連結される。
【0062】
好ましくは、上述の連結ロッド210は、第1端部210aで、支持ブラケット231によって、ヒンジ軸に対してオフセットした位置で、円筒関節ヒンジ203又は第1円筒ヒンジ201に係合され、第2端部210bで、軸方向移動カップリングでもって、第1円筒ヒンジ201又は円筒関節ヒンジ203に係合される。
【0063】
好ましくは、第1円筒ヒンジ201、第2円筒ヒンジ202及び円筒関節ヒンジ203は、第1ローリングヒンジ101’のヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有し、関節接合された四辺形の頂点を構成している。そして、一方の二つの辺は、クランク220と、第1ローリングヒンジ101’と第1円筒ヒンジ201の間に設けられたロッド110の第1端部111の一部とによって形成されている。他方の二つの辺は、第1アンカー部と(又は添付図面に示されるように、第1アンカー部60に連結された円筒ステアリングヒンジ101”によって)、支持ブラケット231と連結ロッド210によって形成されたアセンブリによって、形成される。
【0064】
機能上、二つのフロントホイールのローリング動作によってロッド110の第1端部111のローリング角αが変化すると、関節接合された四辺形が変化する。
【0065】
本発明の他の形態によれば、上述した第1ブロッキング装置はアクチュエータ230を有する。アクチュエータは、連結ロッドとクランクの運動機構210,220にシフト動作を与えるために適当なもので、関節接合された四辺形が実質的に三角形をなして、図5,6に示すように、ロッドのローリング角αのブロックストラット(筋交い)を形成するブロック状態と、図3,4に示すように自由なローリング動作が行われる関節接合された四辺形が三角形まで変形していない、少なくとも一つが自由なローリング動作が行える自由状態(自由形状)との間で、連結ロッドとクランクの運動機構210,220が形状を変える。
【0066】
アクチュエータ230は、第1円筒ヒンジ201又は円筒関節ヒンジ203に対して連結ロッド210を軸方向シフト運動させて、第1円筒関節ヒンジ203と第1円筒ヒンジ201の間の距離Hを変化させるものが好ましい。
【0067】
動作上、アクチュエータ230は、第2円筒ヒンジ202を中心にクランク220を回転するとともに、円筒関節ヒンジ203と第2円筒ヒンジ202との間の軸に連結ロッド210を整列させることなく距離Hを変化させ、これにより、連結ロッドとクランクの運動機構210,220の形状を、ブロック状態(図5,6に示すように、クランク220が、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202の間を通るブロック軸に対して整列し、関節接合された四辺形が実質的に三角形となり、ロッドローリング角αのブロックストラットを形成する形状)と、少なくとも一つの自由状態(クランク220がブロック軸に整列せず、関節接合された四辺形が三角形とならず、自由なローリング動作が行える形状)との間で変化するように動作する。
【0068】
本発明によれば、ロッド110の第1端部111におけるローリングの防止(換言すれば、第1ローリングヒンジ101’を中心とするローリング角αが変化するのを防止するために適したトルクの適用)は、アクチュエータ230に依拠するのではなく、連結ロッドとクランクの運動機構210,220に依拠している。
【0069】
アクチュエータ230の機能は、連結ロッドとクランクの運動機構にシフト動作を与えるだけ(特に、距離Hを変化させるだけ)であって、第2ヒンジ202を中心にクランク220を回転させることによって関節接合された四辺形を三角形に変形させて、ブロッキングストラットを形成するものである。
【0070】
アクチュエータ230は、実際にブロック動作を行うのではなく、ヒンジの摩擦に打ち勝つために十分なパワーを備えていなければならない。
【0071】
ローリングブロッキング作用は、代わりに、第1ローリングヒンジ101’を中心とするロッド110の回転運動と運動学的に適合しない状態を作り出す、静的な機械的拘束手段によって達成される。ローリングを効果的に防止するために、連結ロッドとクランクの運動機構210、220の構成要素を、それらがローリングのブロッキングトルクに耐える大きさにすることで十分である。
【0072】
平均的に、この種のシステムは、700kgのオーダーの連結ロッドとクランクとの間のピーク荷重に対応する、約22kgmのトルクに耐えなければならない。この荷重は、主に、特に連結ロッドに影響を与える、連結ロッドとクランクの運動機構の部品に作用する。しかし、アクチュエータ230は、連結ロッドとクランクの運動機構の外部の荷重によって影響を受ける。
【0073】
そのため、アクチュエータを採用することにより、従来のシステムに比べて、アクチュエータが小さくなり、著しく電力が減少する。
【0074】
ヒンジの摩擦を最小化するために、ローラベアリングを使用したヒンジを採用してもよい。
【0075】
以上、本発明に係るローリング防止システムによれば、ブロッキング要素としてロッドが容易に取り付けできるとともに、システム全体の大きさが小さくなる。従来のシステムで必要なアクチュエータに比べて、非常に小さなアクチュエータを使用できる。アクチュエータの大きさが小さくなることにより、システム全体が小さくなり、コストが減少する。
【0076】
上述のように、連結ロッドとクランクの運動機構210,220をブロッキング状態にするために、円筒関節ヒンジ203又は第1円筒ヒンジ201に対して軸方向の移動動作を連結ロッド210に与えるようにアクチュエータ230が動作し、距離Hを漸次減少する。この軸移動が生じている間、支持ブラケット231の存在により、ロッド210は円筒関節ヒンジ203と第2円筒ヒンジ202の間の軸を結ぶ線と一列になっていない。
【0077】
その結果、クランク220が、第2円筒ヒンジ202を中心に回転し、連結された四辺形は次第に変形する。この関節接合された四辺形は、ロッド110に導入されるローリング運動に追随する能力を保持する。一方、それぞれの位置を中心とするローリング動作の幅が次第に減少する。クランクがブロッキング軸(この軸は、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202を通過する)に整列すると、システムは平衡状態となり、ロッド及びモータビークルのローリング動作を防止する。
【0078】
動作上、連結ロッドとクランクの運動機構210,220を非ロック状態にするためには、アクチュエータ230は円筒関節ヒンジ203又は第1円筒ヒンジ201に対して連結ロッド210を逆方向にシフト動作させ、次第に距離Hを増加し、クランク220を逆方向に回転する。
【0079】
これは、支持ブラケット231を通じて、連結ロッド210が常に、円筒関節ヒンジ203と第2円筒ヒンジ202の間の軸に整列しないように保たれることで、達成される。その結果、円筒関節ヒンジ203(又は、第2円筒ヒンジ202)と連結ロッド210の長軸との間に常にアームAが形成され、そのために、アクチュエータ230が連結ロッド210の軸に沿って軸方向に力を加えると、第2円筒ヒンジ202を中心にクランク220が回転する。
【0080】
以上のように動作することで、関節接合された四辺形の形状が変化する。これにより、アクチュエータ230は常に、距離Hを変化させてクランクを回転する。したがって、可逆的ブロッキング動作が常に保証される。以上の説明より、ブロッキングされた形状が得られたことは、アクチュエータ230から把握されるものでない。運動学的に、アクチュエータ230が起動すると、連結ロッドとクランクの運動機構の機械的変形限界にあたるロック状態に対応する位置を超えて、アクチュエータ230はクランク220を付勢できる。
【0081】
連結ロッドとクランクのシステムをブロック状態に対応する位置に位置付けるために、第1ブロッキング装置はさらに、自由状態とブロック状態との間にあるブロック状態に対応する位置で、第2円筒ヒンジ202に対するクランク220の回転を停止するために適した停止手段240を有する。
【0082】
好ましくは、停止手段は、機械的なエンドストローク要素240を有する。
【0083】
特に、添付の図面に示すように、機械的なエンドストローク要素は、フェアバーン機構240を有する。この機構240は、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202を斜めに連結する。特に、フェアバーン機構240は、長手方向のスロット241を有し、そこには第1円筒ヒンジが連結される。スロット241により、第1円筒ヒンジ201に対してスライド移動し、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202の間の軸に沿ってスライドする。
【0084】
フェアバーン機構240は、円筒関節ヒンジ203の係合着座部242を形成している。この係合着座部242は、第1円筒ヒンジ201と第2円筒ヒンジ202の間で軸方向に一列に配置されており、連結ロッドとクランクの運動機構のブロック状態に対応する位置にクランクを正しく位置決めする。フェアバーン機構240を用いることにより、高価で複雑なアクチュエータ制御システムを設けることなく、機械的に簡単な構成でかつ信頼性をもって、クランク220を正しい位置に位置決めできる。
【0085】
添付図面に示す実施形態によれば、ロッド210はウォームギヤを有する。このウォームギヤは、第1円筒ヒンジ201の支持本体201a又は円筒関節ヒンジ203の支持本体に回転可能にかみ合っている。アクチュエータ230は、ウォームギヤ210にその軸を中心とする回転運動を与えるように構成されており、これにより、第1円筒ヒンジ201又は円筒関節ヒンジ203に対して連結ロッド210が軸方向に移動する。
【0086】
好ましくは、添付図面に示すように、ウォームギヤ210は、該ウォームギヤの第2端部210bで、第1円筒ヒンジ201の支持本体201aと回転可能にかみ合っており、該ウォームギヤの第1端部210aで、支持ブラケット231によって、円筒関節ヒンジ203に第1端部210に連結されている。これにより、ウォームギヤは円筒関節ヒンジ203に対してオフセットした状態で保たれている。一つの実施形態では、ウォームギヤは、スライド摩擦の少ない循環式ボールねじである。
【0087】
添付図面に示す実施形態によれば、アクチュエータ230は、関節接合された四辺形の外側にある支持ブラケット231で支持されており、ウォームギヤ210の第1端部210aと回転自在に係合している。
【0088】
添付図面に図示しない実施形態によれば、クランク210は、連結ロッドとクランクの運動機構210,220がブロック状態にあるとき、ローリングを急激に阻止するように構成された、その長軸に沿って配置されたダンパ(緩衝部)を設けてもよい。機能的には、ブロック状態に達すると、ダンパの存在によって、ブロック軸(すなわち、クランク)に沿った振動が可能である。これにより、ローリングの急激なブロッキングが防止される。
【0089】
有利には、アンチローリングシステム100は、クランク220の軸に沿った振動を防止して静的ブロックを得るために、ダンパを無効化するように構成されたダンパ停止手段を有する。好ましくは、ダンパは二方向ダンパである。
【0090】
添付図面に示されていない実施形態によれば、アンチローリングシステム100は、第2ブロッキング装置を有する。第2ブロッキング装置は、第2端部111でロッド110の回転角を可逆的に防止するように構成されており、ロッド110の第1端部111に配置された第1ブロッキング装置と同じである。この場合、ロッド110の第2端部112に対するヒンジ手段102’、102”は第2ローリングヒンジ102’を有する。第2ローリングヒンジはヒンジ軸を有する。ヒンジ軸は、二つのフロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直なヒンジ軸を有し、第2アンカー部に連結されている。
【0091】
ロッドの第1端部111と第2端部112にそれぞれ第1ブロッキング装置と第2ブロッキング装置を設けることにより、二つのフロントホイール10’、10”上で対称にローリングを防止できる。特に、ロッド110が二つのフロントホイール10’、10”の軸受ジャーナル60を互いに直接連結する場合、適用される。
【0092】
添付図面に示すように、ロッドの第1端部111に一つだけブロッキングシステムを設ける場合、ロッド110の第2端部112におけるヒンジ手段102’、102”は第2ローリングヒンジ102’を有する。第2ローリングヒンジは、二つのフロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直なヒンジ軸を有し、第2のアンカー部に連結されている。
【0093】
好ましくは、ロッド110は、第1端部111と第2端部112の間で長手方向に伸長可能である。これにより、ロッドは、その長軸Xに沿って、長手方向に伸びる。特に、ロッド110は、入り子式構造を設けることで伸長可能にできる。
【0094】
機能上、例えば、ホイールのローリング又はステアリングによって距離が変化する、前部キャリッジのその他の二つの部分にロッド110が接続する場合、ロッド110をその長手方向に伸長可能とすることが必要である。この場合、長手方向へ伸長できることは、ロッド110がモータビークルの操作性と干渉するのを防止するうえで必要である。
【0095】
特に、このような状況は、二つのフロントホイールの軸受ジャーナルを連結するためにロッド110が設けられ、これをそれぞれのステアリング軸以外で連結される場合、又は関節接合された四辺形の運動学的ローリング機構の垂直材と横部材を連結するためにロッド110が設けられる場合、発生する。
【0096】
逆に、例えば、通常形状(四角形)の関節接合された四辺形システムの二つの垂直材を二つの横部材に平行に連結するためにロッド110が設けられる場合、ロッドが伸長可能であることは必要ではない。実用上、この場合、ロッド110で連結される点の距離は決して変化することがない。同様に、ロッドが二つの軸受ジャーナルをステアリング軸と地面に対して同じ高さで連結する場合、伸長可能であることが必要ではない。
【0097】
好ましくは、すでに説明したように、ロッド110が二つの軸受ジャーナルの一方又は両方に接続される場合、ロッドの第1端部に対するヒンジ手段1017,101”は、軸受ジャーナルに対するステアリング運動を許可するために、ローリング面に平行なヒンジ軸を有する円筒ステアリングヒンジ101”を有する。
【0098】
さらに詳細に説明すると、添付図面に示すように、第1ローリングヒンジ101’は円筒ステアリングヒンジ101”に接続されている。第1アンカー部に対する接続(この場合、軸受ジャーナル60からなる)は、上述のステアリングヒンジ101’によって達成され、添付図面では、二つ又はそれ以上の支持アーム103を介して、軸受ジャーナル60に固定されている。この場合、添付図面に示すように、第2円筒ヒンジ202もまた、ステアリングヒンジ101”に接続され、これにより、連結ロッドとクランクの運動機構210,220はステアリング動作に追従する。
【0099】
本発明の目的は、本発明に係る前部キャリッジ8を有する三つ又は四つのホイールを有するモータビークルのローリング動作を可逆的に防止する方法である。
【0100】
この方法は、ローリングブロッキング工程であって、クランク220は、第2円筒ヒンジ202が、停止手段240が介入するブロック状態まで回転され、少なくとも第1ブロッキング装置のアクチュエータ240が作動し、連結された四辺形がほぼ三角形になり、ロッドのローリング角をブロッキングするストラットを形成する工程と、ローリングを開放する工程であって、クランク220がブロック状態から少なくとも一つの自由状態まで回転されてクランク220が停止手段240から解放され、少なくとも第1ブロッキング装置のアクチュエータ230を駆動して、連結された四辺形を四辺形状態(三角形でない状態)に回復させ、二つのフロントホイール10’、10”が自由にローリング運動を行う自由状態にする工程を含む。
【0101】
好ましくは、ローリングブロッキング工程において、クランク220は第2円筒ヒンジ202を中心に、停止手段240が係り合うブロック状態まで回転される。少なくとも第1ブロッキング装置のアクチュエータ240が駆動して第1円筒ヒンジ201と円筒関節ヒンジ203との間に形成される距離Hを減少し、第2円筒ヒンジ202と第1円筒ヒンジ201の間に形成されるブロッキング軸上にクランク220を整列させる。
【0102】
好ましくは、ローリング解除工程では、クランク220は、第1円筒ヒンジ201と円筒関節ヒンジ203との間の距離Hが大きくなるように、ブロック状態から、停止手段240からクランクを解除する少なくとも一つの自由状態まで回転される。少なくとも第1ブロッキング装置のアクチュエータを駆動し、ブロッキング軸に対してクランク220に整列しないようにする。
【0103】
本発明の目的は、本発明に係る、特に上述した、後部に駆動ホイールを有し、前部キャリッジ8を有するモータビークル4である。
【0104】
別の機能的特徴において、本発明に係るブロッキング機構は、以下に説明するように、従来のシステムとは異なる。
【0105】
解除工程のブロッキングステップは、反対に、摩擦ブレーキ(例えば、機械的ブレーキ、油圧クランプブレーキ、ベルトブレーキ等)を作動したときに発生するような過渡的な工程を含まない。
【0106】
詳細について説明すると、ブレーキのパッドがディスクに接触すると摩擦力が発生する。この摩擦力は、予め決められた値に発すると、ブロッキングを生じるまで次第に増加する。換言すれば、パッドに作用する負荷が予め決められた値に達すると、ブロッキングが起こる。このような理由から、ブロッキング動作と実際の機械的ブロッキングとの間の時間に相当する過渡期について説明する。
【0107】
したがって、過渡工程において、ビークルは依然として静的バランス状態を得ることができない。
【0108】
三つのホイールを備えたビークルに関してより詳しく説明すると、ローリングブロッキングを開始する電動モータの作動時間は約2秒と推定される。ビークルは、わずか1秒後にブロッキングを開始する。これは、軌道上の要求からビークルが傾くと、ドライバは自身の意識とは大きく異なる感覚を感じる。ビークルの片側が障害物に当たると、サスペンションは機能せず、ビークルは平坦な道をローリングすることがある。
【0109】
上述した実施形態の場合、過渡状態は存在しない。アクチュエータは、ヒンジが整列するまで作動される。したがって、システムに摩擦が生じることはないので、四角形は完全に自由である。この発明は、すでに説明した幾つかの利点を含む、いくつかの利点がある。
【0110】
本発明に係るローリング防止システムは、ローリングブロッキング要素として、ロッドを簡単に取り付けできる占有面積の小さなシステムを得ることができる。実際、従来のシステムで必要とされていたアクチュエータよりも非常に小型のアクチュエータを使用できる。小型のアクチュエータを利用できることから、結果的に、全体の寸法が小さくなるだけでなく、コストが低下する。本発明に係るローリングブロッキングシステムは、クランク連結ロッドシステムのクランクがダンパを有する場合、ローリングを急激にではなく緩やかにブロックできる。
【0111】
二つのフロントホイール10’、10”の軸受ジャーナルを接続するためにロッド110が設けられている場合、本発明に係るローリングブロッキングシステムは、ブロッキング装置をロッドの両端に設けることで、フロントホイール10’、10”を容易に対称化できる。このような構成は、小さなアクチュエータを使用できることから、システム全体の大きさや関連コストを著しく増加するものでない。本発明に係るローリングブロッキングシステムはまた、構造が簡単で、モータビークルに設けるのに費用対効果が良い。
【0112】
好適な実施形態によれば、三つ又は四つのホイールを備えたローリング式モータビークルの前部キャリッジ8が提供できる。このモータビークルは、
前部キャリッジフレーム16と、
フロントホイール10’、10”を同期して鏡面反射式にローリングさせる運動学的ローリング機構20によって、互いにかつ前部キャリッジフレーム16に運動学的に連結された少なくとも一対のフロントホイール10’、10”と、
ヒンジ手段101’、101”;102’、102”によって、前記前部キャリッジ8の第1アンカー部60と第2アンカー部60を直接互いに連結する第1の端部111と反対側の第2の端部112を有するロッドを備えたアンチローリングシステム100とを備えており、
前記第1アンカー部60と前記第2アンカー部60の少なくとも一方は、前記二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作の影響を受け、
前記ヒンジ手段101’、101”;102’、102”は前記第1アンカー部と前記第2アンカー部の動きに追従するように構成されており、
前記ロッドの前記第1端部111にある前記ヒンジ手段101’、101”;102’、102”は、前記二つのフロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直なヒンジ軸を有しかつ前記第1アンカー部60に連結された少なくとも第1ローリングヒンジ101’を有し、
前記第1端部111において、前記ロッドの前記ローリング角に対応した、前記第1ローリングヒンジ101’に対する前記ロッド110の回転角αを可逆的にブロッキングするために適した第1ブロッキング装置を有し、
前記第1ブロッキング装置は、関節接合された四辺形を形成するように、第1円筒ヒンジ201によって前記連結ロッド210において前記ロッド110に連結され、前記第2円筒ヒンジ202によって前記クランク220において前記第1アンカー部60に連結された、運動学的な連結ロッドとクランク210,220を有し、
前記連結ロッド210は、円筒関節ヒンジ203によって前記クランク220に連結され、
前記第1円筒ヒンジ201と前記第2円筒ヒンジ202と前記円筒関節ヒンジ203は、前記第1ローリングヒンジ101の前記ヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有し、
前記連結ロッド210は、前記第1端部210aで、前記第1円筒ヒンジ201又は前記円筒関節ヒンジ203に、軸方向に移動可能に係合され、また、前記第2の端部で、前記第1円筒ヒンジ201又は前記円筒関節ヒンジ203に、軸方向に移動可能に係合されており、
前記第1ブロッキング装置はさらに、
アクチュエータ230を備えており、
前記アクチュエータ230は、前記第1円筒ヒンジ201に対して又は前記円筒関節ヒンジ203に対して、前記連結ロッド210を軸方向にシフト移動させて、前記円筒関節ヒンジ203と前記第1円筒ヒンジ201との間の前記距離Hを変化させ、
前記アクチュエータ230は、前記第2円筒ヒンジ202を中心に前記クランク220を回転することによって前記距離を変化させるとともに、前記円筒関節ヒンジ203と前記第2円筒ヒンジ202との間の軸に前記連結ロッド210を一致させることなく保ち、
前記運動学的連結ロッドとクランクの運動機構210,220が、前記第1円筒ヒンジ201と前記第2円筒ヒンジ202との間のブロッキング軸に対して前記クランク220が整列しかつ前記関節接合された四辺形が実質的に三角形になって前記ロッドの前記ローリング角度をブロッキングするストラットを形成するブロック状態と、
前記クランク220が前記ブロッキング軸に対して整列せず、前記関節接合された四辺形が前記ローリング動作を行える四辺形を保つ、少なくとも一つの自由状態との間で、形状を変化し、
前記第1ブロッキング装置はさらにまた、前記自由状態と前記ブロック状態との間の経路上で、前記ブロック状態に対応する位置において、前記第2円筒ヒンジ202に対して前記クランク220の回転を停止する停止手段240を備えている。
【0113】
また、上述のように、三つ又は四つのホイールを備え、前部キャリッジ8を有するモータビークルのローリング動作をブロッキングする方法は、前記クランク220が前記円筒ヒンジ202を中心に前記停止手段240が介入する前記ブロック状態まで回転され、少なくとも一つの前記第1ブロッキング装置の前記アクチュエータ240を作動して、前記第1円筒ヒンジ201と前記円筒関節ヒンジ203との間の前記距離Hを減らし、前記第2円筒ヒンジ202と前記第1円筒ヒンジ201との間の前記ブロッキング軸にクランク220を整列し、前記関節接合された四辺形が実質的に三角形になって、前記ロッドの前記ローリング角をブロッキングするストラットを形成する、ローリングブロッキング工程と、前記クランク220が前記ブロック状態から前記少なくとも一つの自由状態まで回転されて前記クランク220を前記停止手段240との係合を解除し、少なくとも前記第1ブロッキング装置の前記アクチュエータ230を作動して、前記第1円筒ヒンジ201と前記円筒関節ヒンジ203との間の距離Hを増加して前記ブロッキング軸に対して前記クランク220を不整列とし、前記関節接合された四辺形を四辺形に戻し、前記二つのフロントホイール10’、10”がローリング動作を行えるようにするローリング解除工程を有する。
【0114】
また、好適な実施形態によれば、三つ又は四つのホイールを備えたローリングビークルの前部キャリッジ8のアンチローリングシステムは、前部キャリッジフレーム16と、互いに運動学的に連結され且つ前記ホイールを同期して鏡面反射式にローリングさせ得る運動学的ローリング機構20によって前記前部キャリッジフレーム16に連結された少なくとも一対のフロントホイール10’、10”とを備え、
前記アンチローリングシステム100は、第1端部111と反対側の第2端部112を有するロッド100を備えており、前記前部キャリッジ8に搭載された状態で、ヒンジ手段101’、101”;102’、102”によって、前記前部キャリッジ8の第1アンカー部60と第2アンカー部60を直接互いに連結し、前記第1アンカー部60と前記第2アンカー部60の少なくとも一つは前記二つのフロントホイール10’、10”のローリング動作を受け、
前記ヒンジ手段101’、101”;102’、102”は、前記第1アンカー部と前記第2アンカー部の動作に追従するように構成されており、
前記ロッドの前記第1端部111における前記ヒンジ手段101’、101”は、少なくとも第1ローリングヒンジ101’を有し、
前記第1ローリングヒンジは、前記フロントホイール10’、10”のローリング面にほぼ垂直なヒンジ軸を有し、前記第1アンカー部60に連結されており、
前記アンチローリングシステム100は、前記第1端部111において、前記第1ローリングヒンジ101’に対して前記ロッド110の回転角αを可逆的にブロックし、
前記回転角αは前記ロッドの前記ローリング角に対応しており、
前記第1ブロッキング装置は、前記連結ロッド210の位置で第1円筒ヒンジ201によって前記ロッドに連結され且前記第2クランクの位置で第2円筒ヒンジ202によって前記第1アンカー部60に連結されて関節接合された四辺形を形成するように構成されており、
前記第第1ヒンジ101の前記ヒンジ軸に平行なヒンジ軸を有する前記連結ロッド210は前記円筒関節ヒンジ203と前記第1円筒ヒンジ201と前記第2円筒ヒンジ202によって前記クランク220に連結され、
前記連結ロッド210は、支持ブラケット231によって、前記ヒンジ軸に対してオフセットした状態で第1端部210aにおいて前記円筒関節ヒンジ203又は前記第1円筒ヒンジ201に係合され、
第2端部210bにおいて、前記第1円筒ヒンジ201又は前記円筒関節ヒンジ203に、軸方向に移動可能な連結状態で、係合されており、
前記第1ブロッキング装置はさらに、
前記円筒関節ヒンジ203と前記第1円筒ヒンジ201との間の前記距離Hを変化させるように、前記第1円筒ヒンジ201又は前記円筒関節ヒンジ203に対して前記連結ロッド210を軸方向に移動させるアクチュエータ230を有し、
前記アクチュエータ230は、
前記運動学的連結ロッドとクランクの運動機構210,220の形状が、前記第1円筒ヒンジ201と前記第2円筒ヒンジ202との間を通る前記ブロッキング軸に対して前記クランク220が整列して前記関節接合された四辺形が実質的に三角形となって前記ロッドの前記ローリング角をブロッキングするストラットを形成するブロック状態と、前記ブロッキング軸に対して前記クランク220が整列しておらず前記関節接合された四辺形が四辺形を維持して前記ローリング移動を許可する少なくとも一つの自由状態との間を変化するように、前記第2円筒ヒンジ202を中心として前記クランク220を回転する一方で前記円筒関節ヒンジ203と前記第2円筒ヒンジ202との間の前記軸に関して前記連結ロッド210を整列させることなく動作可能であり、
前記第1ブロッキング装置はさらにまた、前記自由状態と前記ブロック状態との間の前記経路上の前記ブロック状態に対応する位置で、前記第2円筒ヒンジ202に対する前記クランク220の回転を停止する停止手段240を有する。
【0115】
このようにして本発明は上述の目的を達成する。
【0116】
当然、本発明は、実際の形態では、本発明の範囲から逸脱することなく、上述の形状および構造以外の形状および構造を取り得る。
【0117】
また、すべての構成は、必要に応じて、技術的に等価な要素、大きさ、形状、及び材料に置換してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6