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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】インク圧力を調整するインクタンク
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220525BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220525BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B41J2/175 141
B41J2/175 121
B41J2/175 171
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/175 501
B41J2/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019545326
(86)(22)【出願日】2018-02-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2018053367
(87)【国際公開番号】W WO2018153703
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-03
(31)【優先権主張番号】62/463,440
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193425
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マコーリフ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】マリンソン,サムエル
(72)【発明者】
【氏名】マクベイン,ジョーディー
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-525690(JP,A)
【文献】特開2002-166572(JP,A)
【文献】特許第3939297(JP,B2)
【文献】特開2013-111967(JP,A)
【文献】特開平09-226139(JP,A)
【文献】実開昭62-015939(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0231401(US,A1)
【文献】特開平11-348300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタ用のインク送出システムにおいて、
インク入口ポート及びインク出口ポートを有する第1のインク室と、
大気に開放されている気体ポートを有する第2のインク室であって、前記第1のインク室よりも大きい体積を有する第2のインク室と、
前記第1及び第2のインク室を相互接続する拡散管と、
を含む中間インクタンクと、
前記インク入口ポートに接続されているインク供給貯蔵庫と、
前記インク出口ポートに接続されている印字ヘッド入口ポートを有するインクジェット印字ヘッドと、
前記インクジェット印字ヘッドに送出されるインクのインク圧力を制御する前記中間インクタンクと協調する制御システムと、
を含み、
前記中間インクタンクは、前記インクジェット印字ヘッドの下に位置決めされており、
前記第1のインク室は、前記第2のインク室の下に位置決めされていることを特徴とするインク送出システム。
【請求項2】
請求項1に記載のインク送出システムにおいて、
前記制御システムは、前記第2のインク室におけるインクのレベルを検出する1つ又は複数のセンサーと、インク供給線を通るインクの流量を制御する流量制御機構と、前記センサー及び前記流量制御機構に接続されている制御器とを含むことを特徴とするインク送出システム。
【請求項3】
請求項2に記載のインク送出システムにおいて、
前記第1のインク室は、インク戻りポートを含み、前記インクジェット印字ヘッドは、前記インクジェット印字ヘッドと前記第1のインク室との間の閉流体ループを与えるインク戻り線を介して前記インク戻りポートに接続されている印字ヘッド出口ポートを含むことを特徴とするインク送出システム。
【請求項4】
請求項3に記載のインク送出システムにおいて、
前記閉流体ループは、ポンプと、少なくとも1つの弁とを含むことを特徴とするインク送出システム。
【請求項5】
請求項に記載のインク送出システムにおいて、
前記第1のインク室の天井は、前記拡散管の方へ向かって先細にされていることを特徴とするインク送出システム。
【請求項6】
請求項に記載のインク送出システムにおいて、
前記拡散管は、前記第2のインク室のベースと前記第1のインク室の前記天井との間に延在することを特徴とするインク送出システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のインク送出システムにおいて、
前記第2のインク室は、前記第1のインク室よりも大きい断面積を有することを特徴とするインク送出システム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のインク送出システムにおいて、
前記拡散管は、泡耐性内部断面形状を有し、前記泡耐性内部断面形状は、星形、三角形、「T」形、十字形、クローバー形、及び切り欠き部分を有する多角形のうちのいずれか1つの形状であることを特徴とするインク送出システム。
【請求項9】
請求項1乃至8何れか1項に記載のインク送出システムにおいて、
前記拡散管は、空気不透過性側壁を有することを特徴とするインク送出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェットプリンタのインク送出システム用のインクタンクに関する。本発明は、インク圧力の重力調整を用いて脱気インクを印字ヘッドに供給するために主に開発されている。
【背景技術】
【0002】
Memjet(登録商標)技術を用いたインクジェットプリンタは、小規模事業所(「SOHO(ソーホー)」)プリンタ、ラベルプリンタ及びワイドフォーマットプリンタを含む、多くの異なる印刷フォーマットに商業的に利用できる。Memjet(登録商標)プリンタは典型的に、ユーザが交換可能である1つ又は複数の固定インクジェット印字ヘッドを含む。例えば、SOHOプリンタは、単一のユーザ交換可能な多色印字ヘッドを含み、高速ラベルプリンタは、媒体送り方向に沿って整列された複数のユーザ交換可能な単色印字ヘッドを含み、ワイドフォーマットプリンタは、ワイドフォーマットのページ幅間にわたるように千鳥重複配置で複数のユーザ交換可能な印字ヘッドを含む。
【0003】
高速印字ヘッドへのインクの供給は、高いインク流れ要件、及び所定の圧力範囲内で供給インクを維持する必要性のために、問題になることがある。典型的に、インクジェット印字ヘッドは、インクが負インク圧力(即ち、大気圧未満)で供給されることを必要とし、様々なインク送出システムは、安定した負インク圧力を印字ヘッドに与えるために開発されている。
【0004】
重力送りインク送出システムにおいて、圧力調整タンクは、印字ヘッドの高さの下に位置決めされ、大気に開放されている気体ポートを有する。このタンクのインクのレベルは、例えば、タンクへのインクの供給を制御することによって、比較的一定に維持される。圧力調整タンクにおけるインクの上部と印字ヘッドとの間の高さの差は、印字ヘッドにおける背圧を制御する。圧力調整タンクにおけるインクのレベルの制御を、任意の適切な手段によって達成してもよい。例えば、内容がここに参照として取り込まれる米国特許第8066359号明細書に記載のように、フロート弁機構を使用して、タンクへのインクの供給を制御してもよい。代わりに、センサーを使用して、圧力調整タンクにおけるインクのレベルを検出してもよく、弁及び/又はインクポンプ構成を使用して、適切なフィードバック及び制御システムを介してタンクへのインクの流量を制御してもよい。
【0005】
他のインク送出システムにおいて、圧力調整タンクの気体ポートをポンプに接続することによって、負圧を与える。ポンプは、タンクの上部空間における可変圧力、例えば、通常印刷に対する一定負上部空間圧力を与えるように動作できる。このようにして、インク圧力は、タンクの高さと無関係であり、これによって、プリンタ設計の柔軟性を一層高めることができる。
【0006】
上述のインク送出システムに関する問題は、インクが空気に必ず暴露されることである。しかし、幾つかの印字ヘッドは、長期印刷中に印字ヘッドの性能に影響を及ぼす気泡の危険性を最小化する脱気インクが供給された場合、最適に実行する。インク(特に、乱流インク)は、空気と接触するとすぐに再ガス化され、これによって、脱気インクを用いた利益が無効になるので、空気への脱気インクの暴露は、問題になる。従って、インクを空気に暴露するインク送出システムは、脱気インクでの使用に適していると通常考えられない。
【0007】
圧力調整のために脱気インクが空気に暴露された場合でも脱気インクでの使用に適しているインク送出システム及びインクタンクを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
1.インク入口ポート及びインク出口ポートを有する第1のインク室と、
大気に開放されている気体ポートを有する第2のインク室と、
第1及び第2のインク室を相互接続する拡散管と、
を含む、インク送出システム用のインクタンクにおいて、
第1のインク室は、第2のインク室よりも小さい体積を有することを特徴とするインクタンク。
【0009】
第1の態様によるインクタンクは、重力送りインク送出システムにおける中間タンクとしての使用に適している。使用中、入口ポートを介して第1のインク室に脱気インクを供給することができ、第1のインク室は、出口ポートを介して印字ヘッドにこの脱気インクを供給することができる。しかし、第2のインク室は、拡散管によって第1のインク室から比較的拡散的に分離されているので、第1のインク室における任意の暴気インクは、プリンタの通常動作中に脱気インクと混合しない。それにもかかわらず、第2のインク室と第1のインク室との間の流体連通は、第1のインク室におけるインク圧力の重力制御を可能にする。従って、有利なことに、インクタンクは、インクの再ガス化無しで重力を用いて脱気インクの供給でインク圧力を調整する。
【0010】
幾つかの実施形態において、拡散管は、第1のインク室の天井から第2のインク室のベースに延在する。他の実施形態において、拡散管は、第1のインク室から第1のインク室の内部空間に延在する。好ましくは、第1のインク室は、第2のインク室よりも小さい体積を有する。
【0011】
好ましくは、第1のインク室の天井は、拡散管の方へ先細にされている。有利なことに、この構成は、拡散管を介して第2のインク室の方へ浮上するように気泡を促進する。
【0012】
好ましくは、第2のインク室は、第1のインク室よりも大きい断面積を有する。有利なことに、この構成は、第2のインク室におけるインクのレベルの高さ変動を抑制する。
【0013】
好ましくは、拡散管は、泡耐性内部断面形状を有する。
【0014】
好ましくは、内部断面形状は、泡閉塞に耐性を持つ1つ又は複数の液流区分を含む。例えば、内部断面形状は、星形、三角形、「T」形、十字形、クローバー形、及び切り欠き部分を有する多角形からなる群から選択されてもよい。これら及び他の泡耐性管のタイプは、当業者に周知であり、例えば、内容がここに参照として取り込まれる米国特許第8118418号明細書に記載されている。
【0015】
好ましくは、インクは、0.5μm/msから1.0μm/msの範囲にある拡散率を有する。例えば、インクは、0.6μm/msから0.9μm/msの範囲にある拡散率を有してもよい。インクは、染料ベース又は顔料ベースのインクであってもよい。
【0016】
好ましくは、拡散管は、空気不透過性側壁を有する。
【0017】
好ましくは、拡散管は、1cmから10cmの範囲にある長さを有する。例えば、拡散管は、3cmから6cmの範囲にある長さを有してもよい。
【0018】
好ましくは、拡散管は、少なくとも3対1、少なくとも4対1、又は少なくとも5対1のアスペクト比を有する。
【0019】
好ましくは、拡散管は、第2のインク室に含まれるインクに分散されている空気が、5日間を超える拡散時間スケールで拡散管の長さに沿って伝搬するように構成されている。好ましくは、拡散時間スケールは、10日間を超える、20日間を超える、又は50日間を超える。
【0020】
第2の態様において、
インク供給貯蔵庫と、
上述のような中間インクタンクと、
第1のインク室の出口ポートに接続されている印字ヘッド入口ポートを有するインクジェット印字ヘッドと、
印字ヘッドに送出されるインクのインク圧力を制御する中間インクタンクと協調する制御システムと、
を含むことを特徴とする、インクジェットプリンタ用のインク送出システムを提供する。
【0021】
一実施形態において、制御システムは、第2のインク室におけるインクのレベルを検出する1つ又は複数のセンサーと、インク供給線を通るインクの流量を制御する流量制御機構と、センサー及び流量制御機構に接続されている制御器とを含む。
【0022】
代替の実施形態において、制御システムは、第2のインク室の上部空間における気体圧力を検出する1つ又は複数のセンサーと、気体ポートに接続されている真空ポンプとを含む。
【0023】
第1のインク室は、インク戻りポートを含んでもよく、印字ヘッドは、印字ヘッドと第1のインク室との間の閉流体ループを与えるインク戻り線を介してインク戻りポートに接続されている印字ヘッド出口ポートを含んでもよい。
【0024】
好ましくは、閉流体ループは、ポンプと、少なくとも1つの弁とを含む。
【0025】
好ましくは、第1のインク室に含まれるインクは、比較的動きやすく、第2のインク室に含まれるインクは、比較的静止している。
【0026】
ここで使用されるように、用語「インク」は、インクジェット印字ヘッドから印刷される任意の印刷流体を意味するものとする。インクは、着色剤を含んでもよく、又は含まなくてもよい。従って、用語「インク」は、従来の染料ベース又は顔料ベースのインク、赤外線インク、定着剤(例えば、プレコート、フィニッシャー)、三次元印刷流体などを含んでもよい。
【0027】
ここで使用されるように、用語「プリンタ」は、印刷媒体に印を付ける任意の印刷デバイス、例えば、従来のデスクトッププリンタ、ラベルプリンタ、複写機、コピー機、デジタルインクジェットプレス機などを意味する。一実施形態において、プリンタは、枚葉印刷デバイスである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
これより本発明の実施形態について、添付図面を参照してほんの一例として説明する。
【0029】
図1図1は、第2の態様によるインク送出システムを概略的に示す。
図2図2は、第1の態様によるインクタンクの斜視図である。
図3図3は、図2に示すインクタンクの正面図である。
図4図4は、図2に示すインクタンクの斜視正面図である。
図5図5は、図2に示すインクタンクの斜視上面図である。
図6図6は、第1の態様による代替のインクタンクの斜視図である。
図7図7は、図6に示すインクタンクの斜視正面図である。
図8図8は、図6に示すインクタンクの斜視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
重力送りインク送出システム
重力送りインク送出システムについて、第1の態様によるインクタンクの1つの例示的な使用として、以下説明する。しかし、第1の態様によるインクタンクは、中間インクタンクを空気に暴露する任意のインク送出システムでの使用に等しく適していることが分かる。
【0031】
図1において、インクを印字ヘッド4に供給するインク送出システムを有するプリンタ1を概略的に示す。インク送出システムは、内容がここに参照として取り込まれる米国特許出願公開第2011/0279566号明細書及び米国特許出願公開第2011/0279562号明細書に記載のインク送出システムと機能が同様の重力送りシステムである。
【0032】
インク送出システムは、第1のインク線10を介して印字ヘッド4の印字ヘッド入口ポート8に接続されているインク出口ポート106を有する中間インクタンク100を含む。中間インクタンク100のインク戻りポート108は、第2のインク線16を介して印字ヘッド4の印字ヘッド出口ポート14に接続されている。従って、中間インクタンク100、第1のインク線10、印字ヘッド4及び第2のインク線16は、閉流体ループを規定する。典型的に、第1のインク線10及び第2のインク線16は、幾つかの可撓管の長さ分含まれる。
【0033】
印字ヘッド4は、印字ヘッド入口ポート8及び第1のインク線10を解除可能に相互接続する第1の連結器3と、印字ヘッド出口ポート14及び第2のインク線16を解除可能に相互接続する第2の連結器5とによってユーザが交換可能である。印字ヘッド4は、典型的にページ全体の印字ヘッドであり、例えば、内容がここに参照として取り込まれる米国特許出願公開第2011/0279566号明細書、又は「Monochrome Inkjet Printhead Configured for High-Speed Printing」と称する2016年5月2日に出願の米国特許出願第62/330,776号明細書に記載のような印字ヘッドであってもよい。
【0034】
中間インクタンク100は、タンクの天井に位置決めされている通気口109の形で気体ポートを介して大気に開放されている。従って、通常印刷中に、インクを、重力下での負静水圧(「背圧」)で印字ヘッド4に供給する。換言すれば、印字ヘッド4の下に位置決めされている中間インクタンク100からのインクの重力送りは、所定の負静水圧でインクを印字ヘッドに供給する圧力調整システムを提供する。印字ヘッド4のノズル板19で受ける背圧の量は、中間インクタンク100におけるインク20のレベルより上のノズル板の高さhで決まる。
【0035】
インクを、カートリッジ24によって収容された折り畳み式インク袋23を含むバルクインク貯蔵庫から中間インクタンク100のインク入口ポート110に供給する。インクをシステムによって消費する時に、折り畳み式インク袋23が折り畳めるように、カートリッジ24は、カートリッジ通気口25を介して大気に開放されている。折り畳み式インク袋23は、典型的に、インク供給線28を介してインク入口ポート110に供給される脱気インクを含む空気不透過性箔袋である。カートリッジ24は、典型的に、ユーザが交換可能であり、適切なインク供給連結器32を介してインク供給線28に接続されている。
【0036】
制御システムは、中間インクタンク100におけるインクの実質的に一定レベル、従って一定高さh及び対応する背圧を維持するために使用される。図1に示すように、制御弁30は、インク供給線28に位置決めされ、カートリッジ24から中間インクタンク100へのインクの流量を制御する。中間インクタンク100の側壁に位置決めされた「高い」及び「低い」センサー102及び104(例えば、光センサー)からフィードバックを受信する第1の制御器107の制御下で、制御弁30を動作させる。インク20のレベルが「低い」センサー104を下回った場合、第1の制御器107は、開くように弁30に合図し、インクのレベルが「高い」センサー102に到達した場合、第1の制御器107は、閉じるように弁30に合図する。このようにして、中間インクタンク100におけるインク20のレベルを、比較的一定に維持してもよい。中間インクタンク100の構成について、より詳細に後述する。
【0037】
中間インクタンク100、第1のインク線10、印字ヘッド4及び第2のインク線16を組み込む閉流体ループは、始動、停止及び他の必要な流体動作を容易にする。第2のインク線16は、この流体ループの周りにインクを循環させる可逆蠕動ポンプ40を含む。単に慣習の目的で、第1のポンプ40の「順」方向は、インク出口ポート106からインク戻りポート108へのインクの注入に対応し(即ち、図1に示すような時計回り)、ポンプ40の「逆」方向は、インク戻りポート108からインク出口ポート106へのインクの注入に対応する(即ち、図1に示すような反時計回り)。
【0038】
ポンプ40は、ピンチ弁装置42と協力して、様々な流体動作を協調させる。ピンチ弁装置42は、第1のピンチ弁46及び第2のピンチ弁48を含み、例えば、内容がここに参照として取り込まれる米国特許出願公開第2011/0279566号明細書、米国特許出願公開第2011/0279562号明細書、及び米国特許第9180676号明細書に記載のピンチ弁装置の何れかの形をとってもよい。
【0039】
第1のピンチ弁46は、第1のインク線10から分岐された空気路50を通る空気の流量を制御する。空気路50は、大気に開放され、閉流体ループに対する空気取り入れ口の機能を果たすエアフィルター52で終わる。
【0040】
空気路50によって、第1のインク線10を、インク出口ポート106と空気路50との間の第1の区分10aと、印字ヘッド入口ポート8と空気路50との間の第2の区分10bと分ける。第2のピンチ弁48は、第1のインク線10の第1の区分10aを通るインクの流量を制御する。
【0041】
ポンプ40、第1のピンチ弁46及び第2のピンチ弁48を、様々な流体動作を協調させる第2の制御器44によって制御する。上述から、図1に示すインク送出システムは、幅広い流体動作を与えることが分かる。表1は、プリンタ1で使用される流体動作の幾つかの例に対する様々なピンチ弁及びポンプ状態を表す。当然、流体動作のこれらの例の様々な組み合わせを使用してもよい。
【0042】
通常印刷(「PRINT」モード)中に、印字ヘッド4は、重力下での負背圧でインクを中間インクタンク100からくむ。このモードでは、蠕動ポンプ40は、遮断弁の機能を果たす一方、第1のピンチ弁46を閉じ、第2のピンチ弁48を開放して、インク出口ポート106から印字ヘッド4の第1のポート8にインクが流れることができる。印刷中に、インクを、第1の制御器107の制御下で、中間インクタンク100のインク入口ポート110に供給して、印字ヘッド4に対して比較的一定の背圧を維持する。
【0043】
印字ヘッドの始動又は洗浄(「PRIME」モード)中に、制御弁30を閉じた状態で順方向に(即ち、図1に示すような時計回りに)閉流体ループの周りに、インクを循環させる。このモードでは、蠕動ポンプ40を注入順方向に作動させる一方、第1のピンチ弁46を閉じ、第2のピンチ弁48を開放して、インク出口ポート106から印字ヘッド4を介してインク戻りポート108にインクが流れることができる。このようにして、始動を使用して、停止印字ヘッドにインクを与えてもよい。
【0044】
「STANDBY」モードでは、ポンプ40のスイッチを切る一方、第1のピンチ弁46を閉じ、第2のピンチ弁48を開放する。「STANDBY」モードは、印字ヘッド4で負静水圧インク圧力を維持し、プリンタがアイドル状態にある場合、ノズル板19上の色混合を最小化する。通常、このモードで、印字ヘッドにキャップを付けて、ノズル板からのインクの蒸発を最小化する(例えば、内容がここに参照として取り込まれる米国特許出願公開第2011/0279519号明細書を参照)。
【0045】
印字ヘッド4の各ノズルにインクを十分に与えることを保証する、及び/又は詰まっている任意のノズルを取り除くために、「PULSE」モードを使用してもよい。「PULSE」モードでは、第1及び第2のピンチ弁46及び48を閉じる一方、ポンプ40を、逆方向に(即ち、図1に示すような反時計回りに)作動させて、印字ヘッド4のノズル板19におけるノズルにインクを無理に通す。パルス始動中に、制御弁30を閉じ、中間インクタンク100は、パルス始動に必要なインクの蓄積を供給する。
【0046】
使用済みの印字ヘッド4を交換するために、印字ヘッドをプリンタから取り外す前に、印字ヘッドを停止する必要がある。「DEPRIME」モードでは、第1のピンチ弁46を開放し、第2のピンチ弁48を閉じ、第1のポンプ40を順方向に作動させて、空気路50を介して大気から空気を吸い込む。一旦印字ヘッド4のインクが停止されると、プリンタは、印字ヘッドをインク供給から分離する「NULL」モードに設定され、これによって、最小のインクこぼれで印字ヘッドを安全に取り外すことができる。
【0047】
上述から、図1に関連して上述のインク送出システムを用いて、多くの流体動作を実行することができることが分かる。
【0048】
中間インクタンク
図2図4において、上述の重力送りインク送出システムで使用されるタイプの中間インクタンク100を示す。インクタンク100は、内部室を収容する略段付き外部構造体を有する硬質プラスチックハウジング101を含む。ハウジング101の下部は、インク入口ポート110と、インク出口ポート106と、インク戻りポート108とを規定する側壁121を有する第1のインク室120を含む。上部の第2のインク室122は、大気に開放されている気体ポート109を有する第2のインク室天井123を含む。使用中、第2のインク室122は、印字ヘッド4で背圧を制御するインクの比較的一定のヘッドを有する。例えば、図1に示すセンサー102及び104を、第2のインク室122の側壁125に嵌合してもよく、第1の制御器107及び制御弁30と一緒に、センサー102及び104を使用して、第2のインク室におけるインクのレベルを調整してもよい。第2のインク室122は、第2のインク室におけるインクレベルの変動を効果的に抑制する、第1のインク室120よりも大きい体積及び断面積を有する。
【0049】
第2のインク室122を、第1のインク室と第2のインク室との間に延在する拡散管124を介して第1のインク室120に流体的に接続する。拡散管124は、硬質空気不透過性プラスチックで形成され、第2のインク室122に含まれるインクに分散されている空気が、少なくとも5日間の拡散時間スケールで第1のインク室120の方へ拡散管の長さに沿って伝搬するように構成されている。一次元チャネルに沿って拡散する溶質に対する拡散時間スケールは、下記のフィックの拡散法則によって与えられる。
τ=L/D
但し、Lは、拡散管の長さであり、Dは、インク中の空気の拡散率である。
【0050】
空気は、インクの粘度、温度及び水質量分率などの要因によってインク中の所定の拡散率を有する。出願人のモデリングでは、様々なインク中の空気の拡散率Dを次式によって表すことができることが分かっている。
但し、
Tは、インク温度(ケルビン)であり、μinkは、インク粘度(mPa s)であり、ωは、インク中の水質量分率である。
【0051】
従って、長さLの不透過性管に沿った空気の拡散に対する特性時間スケールτを、下記のように表すことができる。
【0052】
更に、所与の期間τに対して第1のインク室120を保護するのに必要な不透過性管の長さは、次式によって与えられる。
【0053】
一例として、表1は、上述のモデリングを用いて、25℃での2つの顔料ベースのインクの拡散率を推定する。
【0054】
表2は、拡散管124の様々な長さに対する2つのインクの拡散率時間スケールτを推定する。
【0055】
4cmの拡散管長の場合、推定拡散時間スケールは、約25日間であり、中間インクタンクの設計制約と脱気インクの再ガス化期間との間の許容できる妥協点である。脱気インクが第1のインク室120で暴気した場合、このインクを、初期印刷中にシステムからすぐに洗浄して、新しい脱気インクで再び満たすことができる。典型的に、暴気インクは、気体放出が印字ヘッドで時間と共に増進することがある長期印刷中に最も問題になる。
【0056】
図3及び図4に最も良く示すように、第1のインク室天井128は、拡散管124の方へ先細にされ、拡散管124と接触する。この先細化は、拡散管124の方へ上昇して、浮上によって第2のインク室122に入るように、第1のインク室120に閉じ込められた任意の浮遊気泡を促進する。
【0057】
図5において、拡散管124は、星形内部断面130を有する。星形内部断面130は、泡耐性を持ち、気泡が星の中心部を閉塞する場合でも、星構造体の周辺点を通る液体の流れを可能にする。第1のインク室120が、第2のインク室122から上部圧力を常時受け、従って、インク送出システムで圧力調整を維持するように、拡散管124は泡耐性を持つことが好ましい。泡耐性管の他のタイプは、当業者に周知である。
【0058】
図6図8において、第1の態様による代替のインクタンク200を示す。関連する場合、同じ参照符号を使用して、インクタンク100及び200の同じ特徴を説明する。従って、代替のインクタンク200は、図2図5に関連して上述のインクタンク100と同様の機能特徴を有することが分かる。特に、ハウジング101は、第1のインク室天井128から第2のインク室の本体に延在する拡散管124を介して相互接続されている下部の第1のインク室120及び第2のインク室122を含む。第1のインク室は、インク入口ポート110、インク出口ポート106及びインク戻りポート108を有する一方、第2のインク室は、大気に開放されている気体ポート109を有する。インクタンク100と同様な方法で、第1のインク室天井128は、拡散管124の方へ先細にされて、第2のインク室122への気泡の浮上を促進する。上述のように、代替のインクタンク200の拡散管124は、第1のインク室120への暴気インクの侵入を最小化するように、第1のインク室120と第2のインク室122との間の拡散障壁の機能を果たす。
【0059】
しかし、インクタンク100と対照的に、代替のインクタンク200は、特定の始動動作のためにインクを必要とする場合にインクが第2のインク室122から出ることができる追加のドレン管202を有する。従って、第2のインク室122は、インクのレベルが拡散管124の上部を下回る場合、インク貯蔵庫の機能を更に果たすことができる。
【0060】
ドレン管202は、第2のインク室122のベースにおけるドレン入口204から第1のインク室120のベースの方へ延在し、拡散管124と同様な方法で、拡散を最小化するように寸法決定されている。
【0061】
当然、本発明はほんの一例として説明されており、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲内で、詳細の変更を加えることができることが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8