(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】防水通音部材とこれを備える電子機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20220525BHJP
H04M 1/02 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H04R1/00 321
H04R1/00 311
H04M1/02 C
(21)【出願番号】P 2019552360
(86)(22)【出願日】2018-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2018041408
(87)【国際公開番号】W WO2019093394
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2017216121
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】平井 文太
(72)【発明者】
【氏名】井上 健郎
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090246(WO,A1)
【文献】特開2016-213829(JP,A)
【文献】国際公開第2015/064028(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0006369(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音の通過を許容しつつ水の侵入を防止する防水通音膜と、
前記防水通音膜の主面に接合された支持層と、を備え、
前記防水通音膜の通気度が、ガーレー数で表示して1万秒/100mL以上であり、
前記支持層は、樹脂発泡体により構成されるとともに、厚さ方向に延びる、前記防水通音膜を透過する音の経路となる貫通孔を有し、
前記支持層における、当該支持層を厚さ方向に圧縮率20%で圧縮した際の前記貫通孔と外周側面との間の側面通気度が、前記支持層の単位体積あたりの値にして0.1mL/(分・mm
3)以上である、防水通音部材。
【請求項2】
前記側面通気度が50mL/(分・mm
3)以下である請求項1に記載の防水通音部材。
【請求項3】
前記側面通気度が1mL/(分・mm
3)以下である請求項1に記載の防水通音部材。
【請求項4】
前記支持層の厚さ方向に対する20%圧縮荷重が、0.05N/mm
2以下である請求項1~3のいずれかに記載の防水通音部材。
【請求項5】
前記樹脂発泡体が有機系樹脂の発泡体である請求項1~4のいずれかに記載の防水通音部材。
【請求項6】
前記樹脂発泡体がオレフィン系発泡体またはウレタン系発泡体である請求項1~4のいずれかに記載の防水通音部材。
【請求項7】
前記支持層における前記防水通音膜との接合面とは反対側の面が露出面である請求項1~6のいずれかに記載の防水通音部材。
【請求項8】
有効面積が4.9mm
2のときに、周波数1kHzの音に対する挿入損失が26dB以下である請求項1~7のいずれかに記載の防水通音部材。
【請求項9】
電気信号と音声との変化を行う、通音口を有する音声変換部と、
前記音声変換部を収容しており、前記音声変換部と外部との間に位置する開口を有する筐体と、
前記開口を覆うように前記筐体の内部に配置されて、前記開口を介した音の通過を許容しつつ水の侵入を防止する防水通音膜と、を備える電子機器であって、
前記防水通音膜の通気度が、ガーレー数で表示して1万秒/100mL以上であり、
前記防水通音膜の前記開口側の主面とは反対側の主面に支持層が接合されており、
前記支持層は、
樹脂発泡体により構成され、
厚さ方向に延びる、前記防水通音膜を透過する音の経路となる貫通孔を有し、
前記貫通孔および前記防水通音膜が前記通音口を覆うように、前記筐体と前記音声変換部との間に厚さ方向に圧縮された状態で配置されており、
前記支持層における前記貫通孔と外周側面との間の側面通気度が、前記支持層の単位体積あたりの値にして0.1mL/(分・mm
3)以上である、電子機器。
【請求項10】
前記音声変換部がマイクロフォンである請求項9に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水通音部材とこれを備える電子機器とに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン、電子手帳、デジタルカメラ、ゲーム機器等の電子機器は、音声機能を備えている。音声機能を備えた電子機器の筐体の内部には、スピーカー、ブザー、マイクロフォン等の音声変換器が収容されている。筐体には、外部から音声変換器に、および/または音声変換器から外部に、音声を導くための開口が設けられている。防水性能を謳う電子機器では、筐体の内部への水の侵入を防止するために、開口を覆うように防水通音膜が配置されることがある。防水通音膜は、音の透過を許容しつつ水の侵入を防止する膜である。特許文献1には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜から構成される防水通音膜が開示されている。特許文献2には、PTFE等の樹脂の無孔膜により構成される防水通音膜が開示されている。
【0003】
特許文献3には、PTFE多孔質膜から構成される防水通音膜と、当該膜の主面に両面粘着テープを介して接合された音響ガスケットとを備える音響保護カバーアセンブリが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-81881号公報
【文献】特開2011-78089号公報
【文献】特表2003-503991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無孔膜により構成される防水通音膜は、PTFE多孔質膜から構成される防水通音膜に比べて高い防水性を有しうる。また、無孔膜により構成される防水通音膜によれば、外部から音声変換部への水蒸気の透過を防ぐことができ、例えば、透過した水蒸気の結露による音声変換部の性能低下および故障を防止できる。高い防水性能が求められる電子機器において、無孔膜により構成される防水通音膜の需要がある。
【0006】
筐体の上記開口を覆うように防水通音膜を配置することにより、電子機器として必要な防水性が達成される。しかし、防水通音膜と音声変換器の通音口との間の空間が開放空間であると、当該空間における音の反射、吸収および共鳴等により、電子機器の良好な音声性能を必ずしも確保できない。音声変換器がマイクロフォンである場合、当該空間に受音部が近接していることから、音声性能の低下が特に顕著となる。音声性能の向上のために、例えば、防水通音膜と音声変換部との間に、音の経路を有する弾性部材を双方に密着するように圧縮して配置して、防水通音膜と音声変換部の通音口との間の空間を上記経路を含む囲まれた空間とし、筐体内の他の空間と音響的に絶縁する手法が考えられる。弾性部材は、例えば、特許文献3の音響ガスケットである。なお、防水通音膜の薄さ、および電子機器の製造工程を考慮すると、上記弾性部材は、防水通音膜に接合された状態で、すなわち、防水通音膜と当該膜に接合された上記弾性部材とを備える防水通音部材として、供給するのがよい。防水通音部材とすることにより、筐体の内部に配置する際の防水通音膜と上記弾性部材とのずれ等の発生を抑制できる。
【0007】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、無孔膜により構成される防水通音膜と上記弾性部材とを備える防水通音部材とした場合、筐体の内部への配置後に、当該通音部材の通音特性のバラツキが大きくなる。近年の電子機器、特にスマートフォン等のソフトウェアによる各種機能の実装が容易である電子機器では、防水通音膜の透過による音の特性劣化をソフトウェアで補正することが一般的である。しかし、防水通音部材の通音特性のバラツキが大きいと補正が困難であり、電子機器として本来得られるはずの設計された音声性能の確保が難しくなる。
【0008】
本発明の目的は、無孔膜により構成される防水通音膜を備えながらも、電子機器等の筐体の内部への配置後における通音特性のバラツキが抑えられた防水通音部材の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
音の透過を許容しつつ水の侵入を防止する防水通音膜と、
前記防水通音膜の主面に接合された支持層と、を備え、
前記防水通音膜の通気度が、ガーレー数で表示して1万秒/100mL以上であり、
前記支持層は、樹脂発泡体により構成されるとともに、厚さ方向に延びる、前記防水通音膜を透過する音の経路となる貫通孔を有し、
前記支持層における、当該支持層を厚さ方向に圧縮率20%で圧縮した際の前記貫通孔と外周側面との間の側面通気度が、前記支持層の単位体積あたりの値にして0.1mL/(分・mm3)以上である、防水通音部材を提供する。
【0010】
別の側面において、本発明は、
電気信号と音声との変化を行う、通音口を有する音声変換部と、
前記音声変換部を収容しており、前記音声変換部と外部との間に位置する開口を有する筐体と、
前記開口を覆うように前記筐体の内部に配置されて、前記開口を介した音の通過を許容しつつ水の侵入を防止する防水通音膜と、を備える電子機器であって、
前記防水通音膜の通気度が、ガーレー数で表示して1万秒/100mL以上であり、
前記防水通音膜の前記開口側の主面とは反対側の主面に支持層が接合されており、
前記支持層は、
樹脂発泡体により構成され、
厚さ方向に延びる、前記防水通音膜を透過する音の経路となる貫通孔を有し、
前記貫通孔および前記防水通音膜が前記通音口を覆うように、前記筐体と前記音声変換部との間に厚さ方向に圧縮された状態で配置されており、
前記支持層における前記貫通孔と外周側面との間の側面通気度が、前記支持層の単位体積あたりの値にして0.1mL/(分・mm3)以上である、電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0011】
無孔膜により構成される防水通音膜と、特許文献3の音響ガスケット等の弾性部材とを備える防水通音部材を、弾性部材が防水通音膜と音声変換部との間に位置するように筐体の内部に配置すると、防水通音膜が通気性を有するPTFE多孔質膜である場合とは異なり、防水通音膜と音声変換部の通音口との間の空間は密閉された空間となる。この状態で、弾性部材を防水通音膜および音声変換部の双方に密着するように圧縮すると、当該空間内の圧力が上昇して防水通音膜が筐体の開口の方向に膨らむ。この膨らみが、上述した防水通音部材の通音特性のバラツキを引き起こす。
【0012】
これに対して、本発明の防水通音部材では、筐体の内部への配置時に防水通音膜と音声変換部との間に位置する支持層が、一定の側面通気度を有している。このため、防水通音膜と音声変換部の通音口との間の空間の圧力は、支持層を防水通音膜および音声変換部の双方に密着するように圧縮しても側面通気により過度に上昇することなく、防水通音膜の上記膨らみが抑制される。これにより、無孔膜により構成される防水通音膜を備えながらも、電子機器等の筐体の内部への配置後における通音特性のバラツキが抑えられた防水通音部材が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本発明の防水通音部材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1Aおよび
図1Bに示す防水通音部材の電子機器の筐体内部への配置の一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の防水通音部材が備える支持層の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の防水通音部材の別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の防水通音部材のまた別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の防水通音部材のさらにまた別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の防水通音部材のさらにまた別の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、実施例において実施した、支持層の側面通気度の評価方法を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、実施例において実施した、通音膜の膨らみの評価方法を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、実施例において実施した、通音部材の挿入損失の評価方法を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、実施例において実施した、通音部材の挿入損失の評価方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0015】
[防水通音部材]
図1Aおよび
図1Bに、本発明の防水通音部材の一例を示す。
図1Bは、
図1Aの防水通音部材(以下、単に「通音部材」ともいう)1の断面A-Aを示す断面図である。
図1Aおよび
図1Bの通音部材1は、防水通音膜(以下、単に「通音膜」ともいう)2および支持層3を備える。支持層3は、防水通音膜2の一方の主面に接合されている。
【0016】
図1Aおよび
図1Bの通音部材1が備える支持層3は、当該層3の厚さ方向に延びる、通音膜2を透過する音の経路となる貫通孔4を有する。筐体の内部に配置されたときに、筐体の上記開口と音声変換部の通音口との間を伝播する音は、通音膜2および貫通孔4を通過する。通音膜2は、貫通孔4の一方の開口を覆うように支持層3に接合されている。
【0017】
図1Aおよび
図1Bの通音部材1を電子機器の筐体の内部に配置した状態の一例を
図2に示す。
図2に示すように、通音部材1は、通音膜2が筐体51の開口52を覆うように筐体51の内部に配置されている。より具体的に、通音膜2における支持層3が接合した主面(下面)とは反対側の主面(上面)に配置された接着層6によって、通音部材1は、筐体51の内面に固定されている。接着層6は、通音部材1の一部でありうる。通音膜2により、開口52を介した筐体51の内部への水の侵入が防がれる。また、通音部材1は、音55の経路となる支持層3の内部の空間8(貫通孔4)および防水通音膜2が音声変換部54の通音口を覆うように筐体51の内部に配置されている。支持層3は、通音膜2の開口52側の主面とは反対側の主面に接合されており、すなわち、通音膜2の音声変換部54側に位置している。支持層3における通音膜2が接合した面(上面)とは反対側の面(下面)は、音声変換部54を有する内部部材53に接している。筐体51の開口52と音声変換部54の通音口との間を伝播する音55は、通音膜2および貫通孔4を通過する。換言すれば、当該音は、支持層3によって筐体51の内部の空間9とは分離された空間8を通過する。これにより、空間9による当該音55の不必要な反射、吸収および共鳴等が抑制され、音声変換部54によりもたらされる電子機器の音声性能を向上できる。音声変換部54がマイクロフォンである場合、当該マイクロフォンに近接した空間9における上記反射等は音声性能(受音性能)を著しく損ねることから、通音部材1による音声性能の向上が特に大きくなる。通音部材1は、マイクロフォン用通音部材でありうる。
【0018】
筐体51の内部において、支持層3は、厚さd(
図1Aおよび
図1Bを参照)の方向に圧縮された状態で配置されている。内部部材53の表面は必ずしも平坦であるとは限らないし、支持層3の下面に平行な面であるとも限らないが、この圧縮により、内部部材53の表面への支持層3の下面の追従性が高くなり、空間8の空間9からの分離が確実となる。
【0019】
筐体51の内部における支持層3の圧縮率(厚さ方向の圧縮率)は、筐体51の内部に通音部材1が配置される前の支持層3の厚さdおよび配置後の支持層3の厚さd1(
図2参照)を用いて、式(d-d1)/d×100%により表すことができる。支持層3の圧縮率は、例えば10~90%であり、15~70%、20~60%でありうる。ここで、通音膜2は無孔膜により構成され、ガーレー数で表示される通気度(膜厚方向の通気度)は1万秒/100mL以上である。すなわち、通音膜2は、膜厚方向の通気性をほとんど有していない。一方、支持層3は、貫通孔4(空間8)と外周側面10との間に、厚さ方向に圧縮率20%で圧縮した際にも所定の値以上の通気度により表される側面通気性Sを有している。これにより、通音部材1を筐体51の内部に配置する際、より具体的に、支持層3を厚さ方向に圧縮する際に、空間8の圧力が過度に上昇することなく、通音膜2の上方への膨らみが抑制される。このため、通音部材1によれば、無孔膜により構成される通音膜2を備えながらも、筐体51の内部への配置後における通音特性のバラツキが抑えられる。なお、本発明者らの検討によれば、筐体の内部に配置する際の支持層の圧縮において、圧縮率20%までの空間8の圧力上昇速度が特に大きく、圧縮率20%超では当該速度が大きく緩和する傾向を示す。このため、圧縮率20%で圧縮した際に支持層3が側面通気性Sを有することにより、支持層3を厚さ方向に圧縮する際の空間8の圧力の過度の上昇を抑制できる。
【0020】
支持層3は、樹脂発泡体により構成される。したがって、支持層3は厚さ方向に圧縮可能である。ただし、支持層3は所定の値以上の側面通気度を有している。このため、支持層3を構成する樹脂発泡体は、独立した気泡のみから構成される発泡体ではなく、貫通孔4(空間8)と外周側面10との間をつなぐ連通孔を有する発泡体である。また、支持層3は、筐体51の内部に通音部材1が配置される際に破壊されることなく、所望の圧縮率で厚さ方向に圧縮することが可能な材料から構成される。
【0021】
支持層3を構成する樹脂発泡体の種類は限定されない。支持層3は、有機系樹脂の発泡体でありうる。有機系樹脂の発泡体である支持層3は、シリコーン樹脂の発泡体(シリコーンフォーム)により構成される場合に比べて、加工性が高く、例えば、上面および下面の加工精度を向上できることで、支持層3と通音膜2とをより確実に接合したり、内部部材53の表面への支持層3の追従性を向上できる。
【0022】
有機系樹脂の発泡体は、例えば、オレフィン系樹脂の発泡体(オレフィン系発泡体)、およびウレタン系樹脂の発泡体(ウレタン系発泡体)であり、ウレタン系樹脂の発泡体が好ましい。すなわち、支持層3は、例えば、オレフィン系発泡体またはウレタン系発泡体から構成され、好ましくはウレタン系発泡体から構成される。オレフィン系樹脂は、ポリオレフィンを、例えば50質量%以上含む樹脂(樹脂組成物)である。オレフィン系樹脂におけるポリオレフィンの含有率は、80質量%以上、90質量%以上、さらには100質量%でありうる。ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンであり、ポリプロピレンでありうる。オレフィン系樹脂は、ポリオレフィンに代わって、あるいはポリオレフィンに加えて、エチレン-プロピレンゴムを含みうる。エチレン-プロピレンゴムは、例えば、エチレン-プロピレンコポリマーゴム、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーゴムである。ウレタン系樹脂は、ポリウレタンを、例えば50質量%以上含む樹脂(樹脂組成物)である。ウレタン系樹脂におけるポリウレタンの含有率は、80質量%以上、90質量%以上、さらには100質量%でありうる。材料としてのポリウレタンは限定されず、公知のポリウレタン材料を採用できる。
【0023】
支持層3の側面通気度は、圧縮率20%で圧縮した際に、当該支持層の単位体積あたりの値(以下、通音部材1の説明について、当該値を単に「側面通気度」という)にして0.1mL/(分・mm3)以上である。側面通気度が0.1mL/(分・mm3)未満であると、通音部材1を筐体51の内部に配置する際に十分な側面通気性Sが得られず、配置後における通気部材1の通音特性のバラツキが大きくなる。なお、特許文献3の音響ガスケットの側面通気度は、気体やオイル等の流体が流出できないようにし、これにより気密を保持するために2つの表面間に配置される部材として定義される「ガスケット」との名称から明らかであるように、ほぼゼロであり、当然に0.1mL/(分・mm3)未満となる。
【0024】
支持層3の側面通気度の上限は、例えば、50mL/(分・mm3)以下であり、10mL/(分・mm3)以下、5mL/(分・mm3)以下、さらには1mL/(分・mm3)以下でありうる。支持層3の側面通気度の上限がこれらの範囲にある場合、上記通音特性のバラツキの抑制に加えて、さらに、通音部材1の挿入損失自体を低減できる。すなわち、この場合、通音部材1の通音特性をさらに向上できる。これは、支持層3の内面を壁面として有する空間8を音55が通過する際に、当該壁面における音55の反射と吸収とのバランスについて挿入損失が上昇しにくい状態になることに基づくと推定される。支持層3の側面通気度が上記上限の範囲を超える場合、および支持層3の側面通気度が0.1mL/(分・mm3)未満である場合には、このようなバランスが成立せず、通音部材1の挿入損失は大きくなる傾向にある。
【0025】
なお、支持層3の側面通気度を、支持層3の単位体積(mm3)あたりの値で規定する理由は、支持層3の厚さ、および外周面と内周面との距離等、支持層3の形状による影響をできるだけ排除するためである。
【0026】
樹脂発泡体により構成される支持層3について、厚さ方向に対する20%圧縮荷重(支持層3を厚さ方向に圧縮率20%で圧縮したときに生じる反発力)は、0.05N/mm2以下でありうるし、0.03N/mm2以下、さらには0.02N/mm2以下でありうる。このような柔軟な支持層3は、筐体51の内部に通音部材1を配置する際の内部部材53の表面に対する追従性が高い。また、厚さ方向に対する20%圧縮荷重が上記範囲にあるとともに、側面通気度の上限が上記範囲にある場合、特に1mL/(分・mm3)以下である場合、に、通音部材1の挿入損失をより確実に低減できる。さらにこの場合、高音、例えば周波数3kHzの音、に対する挿入損失を特に低減できる。これは、支持層3の内面を壁面として有する空間8を音55が通過する際に、当該壁面における音55の反射と吸収とのバランスについて挿入損失がさらに上昇し難い状態になることに基づくと推定される。支持層3の20%圧縮荷重の下限は限定されず、例えば、0.001N/mm2以上であり、0.005N/mm2以上でありうる。
【0027】
支持層3の厚さdは限定されず、例えば0.1~15mmであり、0.5~3mm、1.5~2mmでありうる。厚さdは、0.5mm以上でありうる。
【0028】
図1Aおよび
図1Bの通音部材1が備える支持層3を
図3に示す。
図3に示す支持層3は、厚さ方向に垂直な方向の断面が貫通孔4を囲むリング状の形状を有する。当該形状は、通音膜2との接合時に、円形の通音膜2の周縁部に接合する形状でもある。通音膜2との接合時に、支持層3の外周面と通音膜2の外縁とは、通常、一致する。
図3に示す支持層3は、その上面5aが通音膜2の周縁部に対応する形状を有している。
【0029】
支持層3の形状は、
図1Aおよび
図1Bに示す例に限定されない。例えば、通音膜2が、その主面に垂直な方向から見て矩形、または矩形の角が丸められた形状を有する場合、支持層3は、厚さ方向に垂直な方向の断面が、通音膜2の周縁部に対応した額縁状の形状を有しうる。上記断面がリング状または額縁状である場合の当該断面における外周面と内周面との距離(断面がリング状である場合には、外径と内径との差の1/2)は、例えば1.0~3.0mmであり、1.5~2.5mm、1.8~2.3mmでありうる。上記断面の形状は、支持層3の上面5a(通音膜2との接合面)から下面5bに至るまで、一定であっても変化していてもよい。
【0030】
支持層3における貫通孔4の数および形状は限定されない。
図3に示す支持層3は、一つの貫通孔4を、上面5aまたは下面5bから見て、中心に有している。また、
図3に示す支持層3の貫通孔4は、支持層3の厚さ方向に中心軸を有する円柱状である。
【0031】
支持層3の厚さ方向に垂直な断面において、支持層3(貫通孔4を除く)の面積Aと貫通孔4の面積Bの比B/Aは、例えば、0.03~0.2であり、0.05~0.15でありうる。
【0032】
支持層3の上面5aと下面5bとは互いに平行な面でありうる。この場合、筐体51の内部への通音部材1の配置がより確実となる。なお、通音部材1が配置される内部部材53の表面の形状に応じて、支持層3の下面5bの形状は変化しうる。
【0033】
支持層3の形成方法は限定されない。公知の樹脂成形手法および発泡手法を応用して支持層3を形成できる。
【0034】
通音膜2は、無孔膜により構成される。通音膜2は、単層膜であっても、2以上の膜の積層体である積層膜であってもよい。積層膜である通音膜2は、少なくとも1層の無孔膜を含む。無孔膜は、典型的には樹脂により構成される。
【0035】
「無孔」とは、膜の一方の主面と他方の主面とを連通する細孔が存在しない、または当該細孔の数が極めて少ないことを意味する。本明細書では、ガーレー数で表示される通気度(膜厚方向の通気度)が1万秒/100mL以上の膜を無孔膜とする。少なくとも1層の無孔膜を含む通音膜2の通気度は、ガーレー数で表示して1万秒/100mL以上である。上記通気度から明らかであるように通音膜2は膜厚方向の通気性をほぼ有さず、音は、通音膜2の振動によって当該膜を透過する。本明細書において、「ガーレー数」は、日本工業規格(JIS)P8117:2009に定められた王研式試験機法に準拠して測定される透気抵抗度(ガーレー通気度)である。なお、通音膜のサイズが王研式試験機法の試験片の推奨寸法(50mm×50mm)に満たない場合にも、測定冶具の使用により、王研式試験機法に準拠した透気抵抗度の評価が可能である。
【0036】
測定冶具は、王研式試験機の透気度測定部に配置可能な形状及び大きさを有し、透気抵抗度の測定時に試験片に加えられる差圧によって変形しない厚さ及び材質とする。測定冶具の一例は、厚さ2mm、直径47mmのポリカーボネート製円板である。測定冶具の面内の中心には、評価対象の膜よりも小さいサイズの開口を有する貫通孔を設けておく。貫通孔の断面は典型的には円形であり、評価対象の膜によって貫通孔の開口が完全に覆われる直径とする。貫通孔の直径としては、例えば、1mm又は2mmを採用できる。次に、上記開口を覆うように、測定冶具の一方の面に評価対象である膜を固定する。固定は、透気抵抗度の測定中、開口及び評価対象である膜の有効試験部(固定した膜の主面に垂直な方向から見て開口と重複する部分)のみを空気が通過し、かつ膜の有効試験部における空気の通過を固定部分が阻害しないように行う。膜の固定には、開口の形状と一致した形状を有する通気口が中心部に打ち抜かれた両面粘着テープを利用できる。両面粘着テープは、通気口の周と開口の周とが一致するように測定冶具と膜との間に配置すればよい。次に、膜を固定した測定冶具を、膜の固定面が測定時の空気流の下流側となるように王研式試験機の透気度測定部にセットして、王研式試験機法による試験を実施し、試験機が示す透気抵抗度指示値tを記録する。次に、記録した透気抵抗度指示値tを、王研式試験機法に定められた有効試験面積6.452[cm2]あたりの値tKに、式tK={t×(膜の有効試験部の面積[cm2])/6.452[cm2]}により換算し、得られた換算値tKを、王研式試験機法に準拠して測定した膜の透気抵抗度(ガーレー通気度)とすることができる。
【0037】
通音膜2が含みうる無孔膜を構成する材料は限定されない。材料は、例えば、PTFE;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル;ポリカーボネート;ポリエチレン等のポリオレフィン;ポリイミド;エラストマーである。エラストマーは、ゴム状弾性体(熱硬化性ゴム)であっても熱可塑性エラストマーであってもよく、ゴム状弾性体が好ましい。ゴム状弾性体は、好ましくは、JIS K6253:2012に規定のタイプAの硬度にして20~80の硬度を有する。ゴム状弾性体は、例えば、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーゴム、アクリルゴムであり、耐熱性および耐薬品性に優れる観点からはシリコーンゴムが好ましい。無孔膜を構成する材料は、好ましくはPTFE、ポリエステル、シリコーンゴムであり、より好ましくはPTFE、シリコーンゴムである。PTFEにより構成される無孔膜およびシリコーンゴムにより構成される無孔膜は、質量と強度とのバランスが良好である。単層膜である通音膜2は、これらの材料から構成されうる。
【0038】
通音膜2が含みうる無孔膜は、配向したPTFEにより構成されうる。配向したPTFEにより構成される無孔膜は、質量と強度とのバランスが特に良好となる。当該無孔膜は、MD方向(流れ方向)およびTD方向(MD方向に垂直な面内方向)の両方向に配向した構造を有することが好ましい。なお、「配向」とは、ポリマーの分野で一般的である分子鎖(ここではPTFE鎖)の配向を意味する。PTFEが配向しているかどうかは、例えば、X線回折測定(XRD測定)によって確認できる。より具体的に、広角X線回折測定で得られた回折像の円周方向強度プロファイルにおいてピークの存在を確認できる場合、PTFEが配向していると判断できる。
【0039】
通音膜2の厚さは、例えば、1~25μmであり、1~20μmでありうる。通音膜2の面密度は、例えば、1~30g/m2であり、1~25g/m2でありうる。通音膜2の面密度および厚さが上述の範囲にあると、通音膜2の耐水性および通音性を両立させやすい。面密度は、単位面積あたりの膜の質量を意味し、膜の質量をその膜の面積(主面の面積)で除することによって算出される。
【0040】
通音膜2の形状は限定されない。
図1Aおよび
図1Bに示す通音膜2は、その主面に垂直な方向から見て円形である。通音膜2は、他の形状を有することができ、例えば、主面に垂直な方向から見て楕円形、矩形、矩形の角が丸められた形状等を有しうる。
【0041】
通音膜2の耐水圧は、例えば、50kPa以上である。耐水圧は、100kPa以上、500kPa以上でありうる。耐水圧の上限値は特に限定されず、例えば、1000kPa以下である。耐水圧は、JIS L1092:2009に規定されている耐水度試験のB法(高水圧法)に従って測定されうる。なお、測定時の膜の変形が大きすぎる場合には、ステンレスメッシュを膜の加圧面の反対側に配置してもよい。
【0042】
通音膜2の通音特性は、例えば、周波数1kHzでの挿入損失(周波数1kHzの音に対する挿入損失)によって評価できる。通音膜2の1kHzの音に対する挿入損失は、有効面積が4.9mm2のときに、例えば30dB以下であり、20dB以下、さらには15dB以下でありうる。
【0043】
通音膜2の有効面積とは、通音膜2が防水通音膜として筐体の内部に配置された際に、実際に音が当該膜に入力し、当該膜を伝わって当該膜から音が出力される部分(有効部分)の面積である。有効面積には、例えば、通音膜2を配置するために当該膜の周縁部に配置、接合された支持層3および接着部等の面積分を含まない。有効面積は、典型的には、支持層3の開口部の面積、より具体的には、支持層3の上面5aにおける貫通孔4の開口面積、でありうる。なお、通音膜の挿入損失は、同じ膜であっても有効面積が小さくなるほど大きくなる。
【0044】
通音膜2は、少なくとも1層の無孔膜を含み、通気度がガーレー数で表示して1万秒/100mL以上である限り、任意の部材を有しうる。当該部材は、例えば、無孔膜に積層された通気性支持材である。通気性支持材は、無孔膜を支持する機能を有する。通気性支持材は、典型的には、金属、樹脂またはこれらの複合材料で形成された、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォームまたは多孔体である。樹脂は、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、フッ素樹脂、超高分子量ポリエチレンである。通気性支持材は、熱ラミネート、加熱溶着、超音波溶着等の接合方法によって無孔膜に積層されうる。通気性支持材の形状は限定されず、例えば、主面に垂直な方向から見て通音膜2と同じ形状であっても、支持層3と同じ形状(リング状の形状)であってもよい。
【0045】
通音膜2には、着色処理が施されていてもよい。通音膜2を構成する材料の種類によるが、着色処理を施していない通音膜2の色は、例えば、透明または白色である。このような通音膜2が電子機器の筐体の開口を塞ぐように配置された場合、当該膜2が目立つことがある。目立つ膜は、電子機器のユーザーの好奇心を刺激し、針等による突き刺しによって防水通音膜としての機能が損なわれることがある。通音膜2に着色処理が施されていると、例えば、筐体の色と同色または近似の色を有する膜2とすることにより、相対的にユーザーの注目を抑えることができる。また、電子機器のデザイン上、着色された防水通音膜が求められることがあり、着色処理により、このような機器デザインの要求に応えることができる。
【0046】
着色処理は、例えば、通音膜2を染色処理したり、通音膜2に着色剤を含ませたりすることで実施できる。着色処理は、例えば、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光が吸収されるように実施してもよい。すなわち、通音膜2は、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する着色処理が施されていてもよい。そのためには、例えば、通音膜2が、波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する能力を有する着色剤を含む、あるいは波長380nm以上500nm以下の波長域に含まれる光を吸収する能力を有する染料によって染色されている。この場合、通音膜2を、青色、灰色、茶色、桃色、緑色、黄色などに着色できる。通音膜2は、黒色、灰色、茶色または桃色に着色処理されていてもよい。
【0047】
着色剤の一例は、カーボンブラックである。カーボンブラックを含む通音膜2は、その含有量によって、グレーまたは黒色の色合いを有する。一般的には、JIS Z8721:1993に規定された黒色度で、1~4を「黒」、5~8を「グレー」、9以上を「白」と判断する。
【0048】
通音膜2には、撥油性を付与する撥油処理、または撥油および撥水性を付与する撥液処理が施されていてもよい。撥液処理により、油滴または水滴が通音膜2の表面に付着したときに、通音膜2の表面からの油滴または水滴の除去が容易となる。撥液処理の方法は限定されない。撥液処理は、例えば、フッ素系化合物等の撥液性物質のコーティングにより実施でき、当該コーティングには公知の方法を適用できる。
【0049】
通音膜2の形成方法は限定されない。通音膜2の形成には公知の方法を適用できる。
【0050】
通音膜2と支持層3との接合方法は限定されない。
図1Aおよび
図1Bに示す通音部材1では、通音膜2と支持層3とが直接、接合されている。通音膜2と支持層3とは、例えば、熱溶着、レーザー溶着等の溶着法により、直接、接合できる。
図4に示すように、接着層7により、通音膜2と支持層3とが接合されていてもよい。接着層7は、例えば、粘着剤(接着剤)により構成される層、または両面粘着テープにより構成される層である。両面粘着テープは、例えば、基材と、基材の一方の面に塗布された粘着剤層(接着剤層)と、基材の他方の面に塗布された粘着剤層(接着剤層)とを含む。粘着剤(接着剤)は、例えば、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系の各粘着剤(接着剤)である。
【0051】
接着層7の形状は限定されず、例えば、通音膜2の周縁部の形状である。接着層7の形状は、通音膜2への接合面である支持層3の上面5aの形状でありうる。
【0052】
図1Aおよび
図1Bに示す通音部材1では、通音膜2の上面および支持層3の下面5bの双方の面が露出面である。通音部材1による防水性がより確実となることから、通音部材1を筐体51の内部に配置したときに、通音膜2の上面は筐体51の内面に接合していることが好ましい。通音膜2と筐体51とは、例えば、熱溶着、レーザー溶着等の溶着法により、直接、接合できる。
図2に示すように、接着層6により、通音膜2と筐体51とが接合されていてもよい。接着層6は、例えば、接着層7と同様の構成を有しうる。
【0053】
一方、支持層3の下面5bと内部部材53とが接合されているか否かは、通音膜2と筐体51との接合ほど、通音部材1による防水性に影響を与えない。この観点からは、支持層3と内部部材53とは接合されていてもいなくてもよい。したがって、支持層3における通音膜2との接合面とは反対側の面(下面5b)は露出面でありうるし、
図5に示すように、下面5bに、接着層7と同様の構成を有しうるさらなる接着層6bが配置されていてもよい。なお、支持層3と内部部材53とが接合されていない場合、例えば、電子機器の修理のための筐体51の取り外しおよび交換が容易となる。
【0054】
通音部材1は、接着層6、接着層6bおよび接着層7から選ばれる少なくとも1つの接着層を有しうる。
【0055】
図1Aおよび
図1Bに示す通音部材1では、通音膜2の一方の側にのみ支持層3が配置されている。本発明の防水通音部材は、通音膜2の双方の側に支持層3が配置されていてもよい。
図6Aおよび
図6Bに示す通音部材1は、通音膜2の双方の側に支持層3(3a,3b)が配置されている。
【0056】
図6Aおよび
図6Bに示す通音部材1において、支持層3a,3bの構成および/または特性は同一であっても、互いに異なっていてもよい。例えば、支持層3a,3bの厚さdは互いに異なっていてもよい。支持層3a,3bの厚さdが互いに異なる通音部材1は、例えば、厚さdが大きい支持層3が内部部材53と接合し、厚さdが小さい支持層3が筐体51と接合するように電子機器の内部に配置されうる。
図6Bに示す通気部材1は、支持層3aの下面および支持層3bの上面に、接着層7と同様の構成を有しうる接着層6bが配置されている。
【0057】
通音部材1の耐水圧は、通音膜2の耐水圧と同様でありうる。
【0058】
通音部材1の通音特性は、通音膜2の通音特性と同様に、例えば、周波数1kHzでの挿入損失によって評価できる。通音部材1の1kHzの音に対する挿入損失は、通音膜2の有効面積が4.9mm2のときに、例えば26dB以下であり、20dB以下、15dB以下、10dB以下、さらには8dB以下でありうる。
【0059】
通音部材1は、マイクロフォン用通音部材でありうる。マイクロフォン用通音部材は、マイクロフォンまたはマイクロフォンを備える電子機器に使用される。マイクロフォン用通音部材は、マイクロフォンまたはマイクロフォンを備える電子機器の外部から上記通音口への音の透過を許容しつつ、水の侵入を防止する。
【0060】
通音部材1の用途は限定されない。通音部材1は、公知の防水通音部材と同様の用途に使用可能であり、電子機器が備える防水通音部材以外の用途にも使用可能である。
【0061】
[電子機器]
図2は、通音部材1を備える電子機器の一例を模式的に示す断面図でもある。当該電子機器は、電気信号と音声との変化を行う音声変換部54と、音声変換部54を収容する筐体51と、通音部材1とを備える。音声変換部54は、当該変換部からの、および/または当該変換部への音55が通過する通音口を有する。筐体51は、筐体51の外部と音声変換部54との間に位置する開口52を有する。開口52は、外部から音声変換部54への、および/または音声変換部54から外部への音55が通過する。通音部材1は、通音膜2が開口52を覆うとともに、支持層3の貫通孔4(空間8)および通音膜2が音声変換部54の通音口を覆うように、筐体51と音声変換部54との間に配置されている。支持層3は厚さ方向に圧縮された状態にある。支持層3の圧縮率は上述のとおりである。圧縮された状態の当該支持層3における貫通孔4と外周側面10との間の側面通気度は、支持層3の単位体積あたりの値にして0.1mL/(分・mm
3)以上である。圧縮された状態の支持層3の側面通気度は、通音部材1の説明において上述した「圧縮率20%で圧縮した際の、単位体積あたりの支持層3の側面通気度」の範囲をとりうる。
【0062】
この電子機器では、通音部材1の配置により、音声変換部54によりもたらされる音声性能のバラツキが小さい。また、音声性能のバラツキの小ささに基づき、例えばソフトウェアによる音声の補正を容易かつ効率的にできることで、音声性能のさらなる向上が可能である。
【0063】
電子機器における通音部材1の配置(通音膜2および支持層3の配置)は、通音膜2が開口52を覆うとともに、音55の経路を含む支持層3の貫通孔4(空間8)および通音膜2が音声変換部54の通音口を覆うように筐体51と音声変換部54との間に配置されている限り、また、支持層3が厚さ方向に圧縮された状態にある限り、限定されない。
【0064】
電子機器の構成は限定されない。支持層3が接する内部部材53は、例えば、音声変換部54を有する内部筐体または回路基板である。音声変換部54は、スピーカーおよびトランスデューサーのような発音部であっても、マイクロフォンであってもよい。上述のように、音声変換部54がマイクロフォンである場合、通音部材1による効果がより顕著となる。開口52の形状は限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、矩形の角が丸められた形状でありうる。
【0065】
電子機器は限定されず、例えば、スマートフォン等の携帯通信機器、ノートパソコン、電子手帳、デジタルカメラ、ゲーム機器、携帯用オーディオ、ウェアラブル端末等の音声機能を有する機器である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0067】
最初に、本実施例において準備または作製した支持層、通音膜および通音部材の評価方法を示す。
【0068】
[支持層の側面通気度]
実施例および比較例で準備した支持層の側面通気度の評価方法を、
図7を参照しながら説明する。
【0069】
最初に、以下のようにして、無孔膜である通音膜62を準備した。
【0070】
2液加熱硬化シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング製)をトルエンに希釈した後、カーボンブラック含有着色剤(大日精化工業製)を混合した。着色剤の混合量は、当該着色剤に含まれるカーボンブラックがシリコーン樹脂100重量部に対して0.2重量部となるようにした。次に、得られた混合溶液を、表面がシリコーン離型処理されたPETセパレータ(三菱樹脂製、MRS50)に流涎し、アプリケータを用いて塗布膜を形成した後、これを加熱乾燥して、厚さ100μmのシリコーンゴム膜を得た。次に、得られたシリコーンゴム膜を直径6.0mmの円形に打ち抜いて、通音膜62とした。準備した通音膜62の厚さ方向の通気度は、ガーレー数で表示して1万秒/100mL以上であった。
【0071】
次に、通音膜62の一方の主面に、当該膜62の周縁部に対応する形状を有するリング状の両面粘着テープ68(日東電工製、No.5303W、外径6mm、内径2.5mm、厚さ85μm)を貼り付けた。このとき、通音膜62の周と両面粘着テープ68の外周とが一致するように、かつ通音膜62と両面粘着テープ68との間に隙間ができないようにした。次に、側面通気度の測定対象である支持層63を両面粘着テープ68により通音膜62に接合して通音部材61を形成した。支持層63は、その上面から下面に至るまで、厚さ方向に垂直な断面が両面粘着テープ68と同じリング状(外径6mm、内径2.5mm)である形状を有する。支持層63を通音膜62に接合する際には、支持層63の外周側面と両面粘着テープ68の外周とが一致するように、かつ支持層63と両面粘着テープ68との間に隙間ができないようにした。支持層63の厚さは、実施例6を除き、1.5mmとした。実施例6における支持層63の厚さは2.0mmとした。
【0072】
次に、内径2.5mmの円形の開口64を有する、厚さ1.5mmのアクリル板65を準備し、開口64の壁面と支持層63の内周面とが一致するように、支持層63をアクリル板65の上に配置した。次に、通音膜62の他方の主面に、両面粘着テープ68と同じ形状を有するリング状の両面粘着テープ69(日東電工製、No.5303W、外径6mm、内径2.5mm、厚さ85μm)を配置した。このとき、通音膜62の周と両面粘着テープ69の外周とが一致するようにした。
【0073】
次に、両面粘着テープ69の上に、厚さ1.0mmおよび外径6mmの円形のアクリル板を、両面粘着テープ69の外周とアクリル板の周とが一致するように、かつ両者の間に隙間ができないように配置した(図示せず)。次に、アクリル板65の開口64を介して空気を吸引することにより、支持層63の内部の空間を周囲より10kPa減圧した状態を維持するとともに、開口64を通過する空気の流量を測定した。測定した流量から、支持層63の単位体積あたりの側面通気度を求めた。このとき、支持層63は厚さ方向にほぼ圧縮されていないため、当該側面通気度を0%圧縮側面通気度とした。
【0074】
次に、両面粘着テープ69上のアクリル板を除去した後、アクリル板65上の通音部材61の周囲に、スペーサー66として、PETフィルム66aの積層体を、スペーサー66の最上面が両面粘着テープ69の表面よりも高くなるように配置した。各々のPETフィルム66aは、外径45mmおよび内径25mmのリング状の一部に切り欠き部を設けたC字状とした。切り欠き部は、スペーサー66および重り67の配置後に、スペーサー66、重り67およびアクリル板65により囲まれた空間内に位置することになる通音部材61における支持層63の外周側面への、外部からの通気を確保するための部分である。
【0075】
次に、スペーサー66の上に、支持層63を厚さ方向に圧縮させるための重り67を配置した。重り67の質量は、1000gとした。重り67の配置時には、重り67と両面粘着テープ69との間に隙間が存在するようにした。
【0076】
次に、スペーサー66のPETフィルム66aを除去することで、重り67を両面粘着テープ69に接触させるとともに、重り67の質量により支持層63を厚さ方向に圧縮率20%で圧縮した。PETフィルム66aの除去は、重り67の質量による支持層63の圧縮の状態および圧縮率をダイヤルゲージを用いて確認しながら、段階的に行った。続いて、アクリル板65の開口64を介して空気を吸引することにより、支持層63の内部の空間を周囲より10kPa減圧した状態を維持するとともに、開口64を通過する空気の流量を測定した。測定した流量から支持層63の単位体積あたりの側面通気度を求め、当該通気度を、圧縮率20%での圧縮時の20%圧縮側面通気度とした。
【0077】
[通音膜の膨らみの評価]
実施例および比較例で準備した通音部材について、支持層を厚さ方向に圧縮したときの通音膜の膨らみを評価した。評価方法を、
図8を参照しながら説明する。
【0078】
最初に、無孔膜である通音膜62として、支持層の側面通気度の評価に使用したシリコーンゴム膜を準備した。
【0079】
次に、通音膜62の一方の主面に、当該膜62の周縁部に相当する形状を有するリング状の両面粘着テープ68(日東電工製、No.5303W、外径6mm、内径2.5mm、厚さ85μm)を貼り付けた。このとき、通音膜62の周と両面粘着テープ68の外周とが一致するように、かつ通音膜62と両面粘着テープ68との間に隙間ができないようにした。次に、支持層63を両面粘着テープ68により通音膜62に接合して通音部材61を形成した。支持層63は、その上面から下面に至るまで、厚さ方向に垂直な断面が両面粘着テープ68と同じリング状(外径6mm、内径2.5mm)である形状を有する。支持層63を通音膜62に接合する際には、支持層63の外周側面と両面粘着テープ68の外周とが一致するように、かつ支持層63と両面粘着テープ68との間に隙間ができないようにした。支持層63の厚さは、実施例6を除き、1.5mmとした。実施例6における支持層63の厚さは2.0mmとした。
【0080】
次に、厚さ1.5μmのアクリル板75を準備し、支持層63をアクリル板75の上に配置した。次に、通音膜62の他方の主面に、両面粘着テープ68と同じ形状を有するリング状の両面粘着テープ69(外径6mm、内径2.5mm、厚さ200μm)を配置した。このとき、通音膜62の周と両面粘着テープ69の外周とが一致するようにした。
【0081】
次に、アクリル板75上の通音部材61の周囲に、スペーサー76として、PETフィルム76aの積層体を、スペーサー76の最上面が両面粘着テープ69の表面よりも高くなるように配置した。各々のPETフィルム76aは、外径45mmおよび内径25mmのリング状とした。
【0082】
次に、スペーサー76の上に、内径1.5mmの円形の開口74を有する、支持層63を厚さ方向に圧縮させるための重り77を配置した。重り77の質量は、1000gとした。重り77の配置時には、重り77と両面粘着テープ69との間に隙間が存在するとともに、開口74を介して上方から通音膜62を観察できるようにした。
【0083】
次に、開口74を介して通音膜62にレーザーを照射し、圧縮率0%の時点における当該膜62の初期位置を決定した。
【0084】
次に、スペーサー76のPETフィルム76aを除去することで、重り77を両面粘着テープ69に接触させるとともに、重り77の質量により支持層63を厚さ方向に圧縮率20%で圧縮した。PETフィルム76aの除去は、重り77の質量による支持層63の圧縮の状態および圧縮率をダイヤルゲージを用いて確認しながら、段階的に行った。続いて、開口74を介して通音膜62にレーザーを照射し、予め求めておいた圧縮率0%の時点における初期位置を基準に、通音膜62が膨らむことなく支持層63が圧縮率20%で圧縮されたと仮定した位置を算出し、当該算出した位置からの通音膜62の膨らみ(通音膜62表面の上方への最大変位量)を決定し、これを、支持層を厚さ方向に圧縮率20%で圧縮したときの通音膜の膨らみとした。
【0085】
[通音部材の挿入損失と挿入損失のバラツキ]
実施例および比較例で準備した通音部材について、挿入損失と挿入損失のバラツキとを評価した。評価方法を、
図9,10を参照しながら説明する。
【0086】
最初に、
図9(a),(b)に示すように、評価に使用したスピーカーユニット165を作製した。具体的には、次のとおりである。音源であるスピーカー161(スター精密製、SCC-16A)と、ウレタンスポンジからなり、スピーカー161を収容するとともにスピーカーからの音声を不必要に拡散させない(通音膜を透過することなく評価用マイクロフォンに入力する音声を発生させない)ための充填材163(163A,163B,163C)と、を準備した。充填材163Aには、直径5mmの円形の断面を有する通音孔164がその厚さ方向に設けられており、充填材163Bには、スピーカー161を収容する、スピーカー161の形状に対応する切り欠きと、スピーカーケーブル162を収容するとともにユニット165外へケーブル162を導出するための切り欠きとが設けられている。次に、充填材163Cおよび163Bを重ね、充填材163Bの切り欠きにスピーカー161およびケーブル162を収容した後、音声が通音孔164を介してスピーカー161からユニット165の外部に伝達されるように、充填材163Aを重ねてスピーカーユニット165を得た(
図9(b))。
【0087】
次に、
図9(c)に示すように、筐体151(ポリスチレン製、外形60mm×50mm×28mm)の内部に、上記作製したスピーカーユニット165を収容した。具体的には、次のとおりである。準備した筐体151は、2つの部分151A,151Bからなり、部分151A,151Bは互いに嵌め合わせることができる。部分151Aには、内部に収容したスピーカーユニット165から発せられた音声を筐体151の外部に伝達する通音孔152(内径2.5mmの円形の断面を有する)と、スピーカーケーブル162を筐体151の外部に導出する導出孔153とが設けられている。部分151A,151Bを互いに嵌め合わせることによって、筐体151内に、通音孔152および導出孔153以外に開口がない空間が形成される。作製したスピーカーユニット165を部分151B上に配置した後、さらに部分151Aを上から配置して部分151Bと嵌め合わせて、筐体151内にユニット165を収容した。このとき、ユニット165の通音孔164と部分151Aの通音孔152とを重ね合わせて、音声が双方の通音孔164,152を介してスピーカー161から筐体151の外部に伝達されるようにした。スピーカーケーブル162は導出孔153から筐体151の外部に引き出し、導出孔153はパテにより塞いだ(
図9(d))。
【0088】
これとは別に、無孔膜である通音膜62として、支持層の側面通気度の評価に使用したシリコーンゴム膜を準備した。
【0089】
次に、通音膜62の一方の主面に、当該膜62の周縁部に相当する形状を有するリング状の両面粘着テープ68(日東電工製、No.5303W、外径6mm、内径2.5mm、厚さ85μm)を貼り付けた。このとき、通音膜62の周と両面粘着テープ68の外周とが一致するように、かつ通音膜62と両面粘着テープ68との間に隙間ができないようにした。次に、支持層63を両面粘着テープ68により通音膜62に接合して通音部材61を形成した。支持層63は、その上面から下面に至るまで、厚さ方向に垂直な断面が両面粘着テープ68と同じリング状(外径6mm、内径2.5mm)である形状を有する。支持層63を通音膜62に接合する際には、支持層63の外周側面と両面粘着テープ68の外周面とが一致するように、かつ支持層63と両面粘着テープ68との間に隙間ができないようにした。支持層63の厚さは、実施例6を除き、1.5mmとした。実施例6における支持層63の厚さは2.0mmとした。
【0090】
次に、両面粘着テープ69(日東電工製、No.5303W、外径6mm、内径2.5mm、厚さ85μm)を介して、通音膜62を、上記作製した筐体151の上に配置した。このとき、通音膜62の周と両面粘着テープ69の外周とが一致するように、かつ、両面粘着テープ69の開口部が筐体151の通音孔152を完全に覆うようにした。また、通音膜62と両面粘着テープ69との間、および両面粘着テープ69と筐体151との間に隙間ができないようにした。通音部材61は、通音膜62を下、支持層63を上として、筐体151上に配置された。
【0091】
次に、筐体151上の通音部材61の周囲に、スペーサー76として、PETフィルム76aの積層体を、スペーサー76の最上面が支持層63の表面よりも高くなるように配置した。各々のPETフィルム76aは、外径45mmおよび内径25mmのリング状とした。
【0092】
次に、スペーサー76の上に、マイクロフォン171(Knowles Acoustics製、Spm0405Hd4H-W8)が埋め込まれたアクリル板172(厚さ1.5mm)と、アクリル板173(厚さ1.5mm)との積層体を配置した。アクリル板172ではマイクロフォン171の受音面が露出しており、当該受音面が支持層63の内部の空間に面するように積層体を配置した。アクリル板172とアクリル板173とは、積層体の上にさらに配置する重り85による荷重が通音部材61にできるだけ均等に加わるように、パテを用いて、互いに接合した。次に、アクリル板172およびアクリル板173の積層体の上に、支持層63を厚さ方向に圧縮させるための重り85を配置した。重り85の質量は、1000gとした。積層体および重り85の配置時には、アクリル板172と支持層63との間に隙間が存在するようにした。
【0093】
次に、スペーサー76のPETフィルム76aを除去することで、アクリル板172を支持層63に接触させるとともに、重り85の質量により支持層63を厚さ方向に圧縮率20%で圧縮した。PETフィルム76aの除去は、重り85の質量による支持層63の圧縮の状態および圧縮率をダイヤルゲージを用いて確認しながら、段階的に行った。
【0094】
次に、スピーカー161およびマイクロフォン171を音響評価装置(B&K製、Multi-analyzer System 3560-B-030)に接続し、評価方式としてSSR(Solid State Response)モード(試験信号20Hz~20kHz、sweep up)を選択して実行し、通音部材の挿入損失を評価した。挿入損失は、音響評価装置からスピーカー161に入力された試験信号と、マイクロフォン171で受信された信号とから自動的に求められる。なお、通音部材の挿入損失を評価するにあたっては、通音膜62を破ることによって当該通音膜を取り除いた場合の挿入損失の値(ブランク値)を別に求めた。ブランク値は、周波数1000Hzにおいて-25.8dBであった。通音膜の挿入損失は、音響評価装置での測定値からこのブランク値を引いた値である。挿入損失の値が小さいほど、スピーカー161から出力された音声のレベル(音量)が維持されていることになる。この試験方法では、音の周波数に対する試験片の挿入損失の関係を示すグラフを得ることができ、このグラフより、例えば、特定の周波数における試験片の挿入損失を求めることができる。また、この試験方法では、マイクロフォンへの通音部材の使用が想定されている。
【0095】
挿入損失の測定は、一つのサンプルに対して10回実施した。10回の測定の平均値Avを評価対象である通音部材の挿入損失とし、平均値Avに対する、10回の測定における測定値の標準偏差σの比σ/Avを挿入損失のバラツキとした。
【0096】
[支持層の20%圧縮荷重]
最初に、実施例および比較例で準備した支持層63を用いて、支持層の側面通気度の評価に使用した通音部材61を準備した。
【0097】
次に、準備した通音部材61を、一軸圧縮試験機(テンシロン試験機;島津製作所製オートグラフAGS-X)の測定台に、通音膜62が測定台に接するように戴置した。次に、試験機の圧縮子を圧縮速度0.5mm/分で下げて、圧縮率20%となるまで支持層63をその厚さ方向に圧縮した。圧縮後、10秒経過した時点における、支持層63による反発力を求めて、これを支持層63の20%圧縮荷重とした。なお、測定雰囲気の温度は25℃とした。
【0098】
(実施例1~8、比較例1)
実施例1~8および比較例1として、以下の表1に示す支持層63を準備した。表1に、各支持層63の0%圧縮側面通気度、20%圧縮側面通気度、20%圧縮荷重を併せて示す。実施例1の樹脂発泡体は、オレフィン系発泡体(日東電工製、SCF200)である。実施例2の樹脂発泡体は、オレフィン系発泡体(日東電工製、P1500)である。実施例3の樹脂発泡体は、ウレタン系発泡体(イノアックコーポレーション製ML-32)である。実施例4の樹脂発泡体は、ウレタン系発泡体(イノアックコーポレーション製L-32)である。実施例5の樹脂発泡体は、ウレタン系発泡体(イノアックコーポレーション製H-32)である。実施例6の樹脂発泡体は、ウレタン系発泡体(イノアックコーポレーション製WP-32)である。実施例7の樹脂発泡体は、ウレタン系発泡体(イノアックコーポレーション製MH-32)である。実施例8の樹脂発泡体は、ウレタン系発泡体(富士ゴム産業製U0281SP)である。比較例1の樹脂発泡体は、シリコーンゴムシート(十川ゴム製K-124)である。
【0099】
【0100】
実施例5,6,8および比較例1の支持層を使用した場合の通音膜の膨らみを以下の表2に示す。
【0101】
【0102】
表2に示すように、20%圧縮側面通気度がゼロである比較例1の支持層を使用した場合、各実施例の支持層を使用したときに比べて、通音膜の膨らみが非常に大きくなった。
【0103】
各実施例および比較例の支持層を使用した通音部材が示す、周波数300Hz、1kHzおよび3kHzの音に対する挿入損失のバラツキおよび挿入損失を以下の表3に示す。なお、これらの通音部材における通音膜の有効面積は、4.9mm2である。
【0104】
【0105】
表1,2に示すように、支持層の20%圧縮側面通気度が0.1mL/(分・mm3)以上である実施例1~8では、電子機器の筐体の内部への配置後を想定した挿入損失のバラツキの評価において、20%圧縮側面通気度がゼロであるガスケットとしての支持層を用いた比較例1に比べて、バラツキを低減できた。また、支持層の20%圧縮側面通気度が50mL/(分・mm3)以下である実施例1~7では、当該側面通気度が大きい高通気の支持層を用いた実施例8に比べて、挿入損失の増加を抑えることができ、低い挿入損失を保つことができた。さらに、実施例1~7の間で比較すると、20%圧縮荷重が0.05N/mm2以下である実施例1,2,3および6において、より低い挿入損失を保つことができるとともに、実施例1,2,3および6のなかでは、20%圧縮側面通気度がより低く、1mL/(分・mm3)以下である実施例3,6において、特に低い挿入損失を保つことができた。
【0106】
本発明は、その意図及び本質的な特徴から逸脱しない限り、他の実施形態に適用しうる。この明細書に開示されている実施形態は、あらゆる点で説明的なものであってこれに限定されない。本発明の範囲は、上記説明ではなく添付したクレームによって示されており、クレームと均等な意味及び範囲にあるすべての変更はそれに含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の防水通音部材は、従来の防水通音部材と同様の用途に使用できる。用途は、例えば、電子機器の筐体の開口への配置による、音声性能を有する電子機器への防水性能の付与である。
【符号の説明】
【0108】
1 防水通音部材
2 防水通音膜
3 支持層
4 貫通孔
5a 上面
5b 下面
6 接着層
6b 接着層
7 接着層
8 空間
9 空間
10 外周側面
51 筐体
52 開口
53 内部部材
54 音声変換部
55 音
61 通音部材
62 通音膜
63 支持層
64 開口
65 アクリル板
66 スペーサー
66a PETフィルム
67 重り
68 両面粘着テープ
69 両面粘着テープ
74 開口
75 アクリル板
76 スペーサー
76a PETフィルム
77 重り
85 重り
151 筐体
151A,151B 部分
152 通音孔
153 導出孔
161 スピーカー
162 ケーブル
163,163A,163B,163C 充填材
164 通音孔
165 ユニット
171 マイクロフォン
172 アクリル板
173 アクリル板