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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】補聴器用フレキシブル・イヤーピース
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20220525BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
H04R25/00 G
H04R1/10 104Z
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019566239
(86)(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 EP2018065344
(87)【国際公開番号】W WO2018228988
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2019-11-29
(31)【優先権主張番号】62/520,772
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500011045
【氏名又は名称】ヴェーデクス・アクティーセルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】110001830
【氏名又は名称】東京UIT国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マアカ・イブ
(72)【発明者】
【氏名】ラスムスン・カスペア・ホルクヴェド
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-007478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0049896(US,A1)
【文献】特表2013-514017(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1535916(KR,B1)
【文献】欧州特許出願公開第02991381(EP,A1)
【文献】登録実用新案第3161011(JP,U)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0010390(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの外耳道内に挿入され,上記外耳道の内側部分と周囲の間の音響分離を提供するように構成されるイヤーピースであって,
ステムおよびシュラウドを備えるイヤーチップを備え,上記ステムは音供給手段に係合するアダプタおよび音出力口を備える音導管を規定するものであり,上記シュラウドは柔軟な弾性材料からなる概略球形の中空のバルブを有しており,上記バルブが,外耳道への挿入が意図される方向に概略的に沿う軸を有しており,上記シュラウドが上記軸に沿う方向から見て楕円形であり,上記バルブが上記音導管の軸周りで上記音供給手段に対して回転可能であ上記楕円形のシュラウドが,上記外耳道に挿入されたときに外耳道への進入の程度に応じて上記アダプタ上でねじられるように構成されている,
イヤーピース。
【請求項2】
上記ステムが,スピーカ用音導管の取付けに適合している,請求項1に記載のイヤーピース。
【請求項3】
上記バルブが,上記音出力口に隣接する上記バルブ内に開口するベントを備えている,請求項1に記載のイヤーピース。
【請求項4】
上記シュラウドが上記音導管軸に沿う方向において楕円形であり,短軸の長さの少なくとも1.1倍の長さの長軸を備えている,請求項1に記載のイヤーピース。
【請求項5】
上記シュラウドが上記音導管軸に沿う方向において楕円形であり,短軸の長さの1.7倍以下の長さの長軸を備えている,請求項1に記載のイヤーピース。
【請求項6】
上記アダプタおよび上記音供給手段が,嵌合および回転可能な取付けのためのスパウトおよびソケットの組合せを備えている,請求項1に記載のイヤーピース。
【請求項7】
上記ステムおよび上記シュラウドが弾性材料から作られており,上記シュラウドの材料が上記ステムの材料よりも柔らかい,請求項1に記載のイヤーピース。
【請求項8】
上記ステムが60~90ショアAの範囲の硬さを持つシリコンゴムから構成されている,請求項1に記載のイヤーピース。
【請求項9】
上記シュラウドが20~50ショアAの範囲の硬さを持つシリコンゴムから構成されている,請求項1に記載のイヤーピース。
【請求項10】
上記シュラウドが,滑らかな外表面を備える概略環状の第1の端部ゾーン,内側表面ゾーンと反対側の滑らかな外表面を備える概略環状の第2の端部ゾーン,ならびに上記第1の端部ゾーンおよび第2の端部ゾーンの中間の中央ゾーンを備え,上記中央ゾーンが,適切な構造設計によって,第1の端部ゾーンおよび第2の端部ゾーンよりも,外耳道壁に接触することによる圧縮に対して柔軟性を持つように構成されている,請求項1に記載のイヤーピース。
【請求項11】
適切な構造設計による上記中央ゾーンの構成が,壁厚のテーパリング,プリーツまたはベローズの形状,または適切な柔らかさの材料の選択のいずれか一つによって提供される,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項12】
上記中央ゾーンが,上記軸に概略平行にのびるプリーツを備える壁部を備えている,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項13】
上記プリーツが,上記第1の端部ゾーンと上記第2の端部ゾーンの間の中間地点において最も深く,上記第1の端部ゾーンおよび上記第2の端部ゾーンに近づくにつれて次第に浅くなっている,請求項12に記載のイヤーピース。
【請求項14】
上記第1の端部ゾーンと上記第2の端部ゾーンの間の中間地点において上記プリーツ中の谷部の間のスペースが閉じられている,請求項13に記載のイヤーピース。
【請求項15】
上記バルブが,円周状の低い隆起部であるウエストバンドを上記中央ゾーンに備えている,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項16】
上記バルブの第2の端部ゾーンが下部開口を規定しており,上記バルブが上記下部開口周囲において構造的に補強されている,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項17】
上記ステムがスピーカ用音導管の取付けに適合している,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項18】
上記バルブが,上記音出力口に隣接する上記バルブ内に開口するベントを備えている,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項19】
上記バルブが10~90ショアAの範囲の硬さを持つシリコンゴム材料から構成されている,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項20】
上記バルブが30~50ショアAの範囲の硬さを備えるシリコンゴム材料から構成されている,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項21】
上記バルブのステムが70~90ショアAの範囲の硬さを持つシリコンゴム材料から構成されている,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項22】
上記バルブのシュラウドが10~40ショアAの範囲の硬さを持つシリコンゴム材料から構成されている,請求項10に記載のイヤーピース。
【請求項23】
上記ステムが上記バルブのコアにおいて上記音供給手段としてのスピーカを保持するように構成されかつ上記第1の端部ゾーンに隣接して上記バルブに取り付けられており,上記ステムが上記第2の端部ゾーンの軸方向の上記スピーカの動きを制限しないように構成されている,請求項10に記載のイヤーピースを備えるイヤープラグ。
【請求項24】
請求項1または10に記載のイヤーピースを備えている,補聴器。
【請求項25】
請求項1または10に記載のイヤーピースを備えている,通信装置用構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,イヤーピース(an ear piece)に関する。より詳細にはこの発明は,補聴器用イヤーピースに関する。この発明はさらに,フレキシブル・イヤーチップを備えるイヤープラグを有する補聴器に関する。この発明はまた,イヤーピースを備える通信装置に関する。より詳細には,この発明は,耳内型(In-the Ear style)補聴器用,レシーバ耳内型(Receiver-In-The-Ear)補聴器用,耳掛け型(Behind-The-Ear)(BTE)補聴器用,または通信装置用フレキシブル・イヤーチップに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の開示において,イヤーピースは,人の耳内に挿入されるのに適しており,かつ外耳道内に音響力(acoustic power)を伝え,かつ周囲からの音に対して上記外耳道を遮蔽(シールド)するように構成されるプラグまたは同様の構造として理解される。上記音響力は典型的にはイヤーピース内に配置される,またはイヤーピースから離れて配置される電気音響トランスデューサから導出される。音響信号は,聴覚の増強,コミュニケーションまたはたとえば音楽再生等の娯楽を目的とすることができる。
【0003】
本願の開示において,補聴器は,聴覚障がい者によって人の耳の後ろにまたは耳の中に装着されるように設計された,小さい,電池駆動の,小型電子機器として理解される。補聴器は,一または複数のマイクロフォン,電池,ユーザのニーズに沿うように適合された増幅を提供するように構成される信号処理装置を備える小型電子回路,および音響出力トランスデューサ(補聴器用語において多くの場合レシーバと呼ばれるもの)を備える。上記信号処理装置は好ましくはデジタル信号処理装置である。補聴器は人の耳の後ろにまたは耳の中にフィットするのに適するケース内に収められる。
【0004】
補聴器は多くの場面でスタイルによって区分され,特に耳の後ろにフィットする筐体内に電子回路およびスピーカを有し,音響力をイヤーピースにガイドする音管を備える補聴器であるBTE(Behind-The-Ear)型,耳の後ろにフィットする筐体内に電子回路を有しており,出力トランスデューサを収納するイヤーピースにケーブルによって接続される補聴器であるRITE(Receiver-In-The-Ear)型,耳内たとえば外耳内または外耳道内にフィットする集積筐体であるITE(In-The-Ear)型がある。これらそれぞれの補聴器スタイルは,外耳道の入り口に正しく音出力口を保持するためのなんらかのイヤーチップを必要とする。
【0005】
使用に先立ち,補聴器は,処方にしたがって補聴器フィッタによって調整される。上記処方は聴覚テストに基づき,その結果は聴覚障がい者の裸耳聴能を示すオージオグラムにおいてあらわされる。上記処方は,ユーザが聴覚欠損を蒙っている可聴周波数範囲部分の周波数の音を増幅することによって補聴器が聴覚損失を緩和することができる設定に達するように構築される。
【0006】
上記音響出力は出力トランスデューサによって再生され,導管(conduit)または開口を通じて外耳道内に放出される。イヤーチップは導管を所定の位置に保持(維持)し,これによって導管が外れてしまうことを防止し,かつ外耳道内の壁に接触することによって開口が塞がれてしまうのを防止するのに役立つ。イヤーチップは,可能な限り音響導管を開いた状態で,トランスデューサの内部への耳垢および湿気の侵入をトラップまたはブロックするのに役立つ,音出力部におけるたとえばグリッドまたは回旋形状といった特定の手段(方策)を特徴とすることができる。
【0007】
イヤーチップはさらに,外耳道の内側部分と周囲との間の音響分離(acoustic insulation)を提供すべきである。しかしながら,さまざまな理由(非増幅音を聞くことができるようにするバイパス,圧力調整,湿度制御および一般的なユーザの快適さ)のために,プラグに意図的に組み込まれる,通常は通路の形状のベント(通気口)を含むことがある。理想的にはベントは特定ユーザのニーズに対して慎重に校正されるべきである。ベントは増幅された音響力を必然的に失わせ,かつ増幅音が補聴器のマイクロフォンにループバックする突発的なリスクを有する音漏れを引き起こし,さらに増幅されると不安定なフィードバック状況につながる可能性がある。
【0008】
軽度(mild)の聴覚損失のユーザ,したがって低いゲイン設定のユーザは,自分自身の話し声による圧力蓄積を軽減しかつ直接音を聞くことができるようにするために大きなベントを好むことがあり,これは周波数範囲の一部において良好な聴覚を維持する場合に有用である。重度(profound)の聴覚損失のユーザ,したがって高いゲインを持つユーザは,不安定なフィードバックを回避し,音響力の損失を避けるために,小さなベントさらには閉じたベントを好む傾向があり,高ゲイン設定の場合,過剰な自分の音声レベルが作り出される問題は適切な自動ゲイン調整によって十分に処理される。
【0009】
イヤープラグが完成すると通常はベントが固定されるので,特定ユーザ用に通路長さと通路ルーメン(管腔)(the length and lumen of the passage)に関する設計選択を行って,これらを考慮した最適バランスをとらなければならない。最新の補聴器は,特定のベントサイズおよびフィードバックゲイン制限におけるその影響,音響力の損失,近傍者への音漏れ,ならびに直接音と増幅音との混合(mixing)を考慮して調整することができる。
【0010】
WO-A1-2006094502は,音出力開口を有する本体部を備える補聴器用イヤープラグを開示する。上記イヤープラグはまた,外耳道の壁に係合して上記本体部を取り囲むように構成されるカラーを有している。
【0011】
US3935401は,管状ハブを有し,上記ハブの端部において中央通路の周りにフランジを備えるイヤーピースを提供するもので,放射スロットまたはウェブによって互いに分離された放射リブを備えている。
【0012】
EP-A1-1594340は,基部および上記基部に取り付けられた側壁を備え,実質的に上記基部からイヤーピースの開口に伸びるエッジを有するフレキシブル・イヤーモールド・フィッティングを提供する。
【0013】
US-B2-9094756は,ユーザの耳内に挿入されて用いられる柔軟要素を含み,柔軟要素が変形してユーザの耳内にイヤーピースを保持するイヤーピースを提供する。上記柔軟要素は,イヤピース・ハウジング上に折り畳まれる外側部分を含むことができる。
【0014】
US7602033は,ユーザの外耳道にフィットするように寸法づけられる柔軟材料から作られた概略円錐形物を含むイヤーピース装置を提供する。上記イヤーピースを通じてのびるカナルが,人の内耳と上記人の耳の外側環境の間の通信を提供する。上記イヤーピースは十分な外圧が加えられたときに,コーンを可逆的に折り畳んで星状構成するのを容易にするために設けられた複数の折り線を有している。
【0015】
WO-A2-02078392は,シェルを備える補聴器ハウジングを作成する方法を提供するもので,上記シェルは外耳道に対してカスタマイズされ,さらに上記シェルを少なくとも部分的に取り囲む締付け輪郭を備えている。
【0016】
WO-A1-2014146702は,耳掛け部,外耳道部およびケーブルを備える補聴器を提供する。上記ケーブルは上記外耳道部の側壁に取り付けられ,かつ上記側壁から軸に対して20~70°の間の角度でのびている。上記外耳道部の外端は耳珠部において外耳に当接し,他方,上記ケーブルは耳甲介,耳珠または耳輪において外耳に当接する。これによって外耳道部分の非常に安定した位置決めが達成され,咀嚼または会話のときの外耳道部分の横方向の移動が防止される。
【0017】
EP-A2-2192789は,本体ユニットの貫通孔の方向に形成された切断部分を有するキャップ部分を有するイヤーピースを提供する。上記イヤーピースの切断部分が上記キャップ部分に貫通孔を形成する。
【0018】
人の外耳道(ear canal)(external auditory meatus)は,外耳道の開口(aperture)(opening)から鼓膜(tympanic membrane)(eardrum)まで延びている。外耳道は,鼓膜に近い内端から外端道(lateral outer meatus)に向かって徐々に広がっている。上から見るとわずかにS字形である。断面は楕円形でわずかに下向きである。壁の一部は顎の骨の動きに関連する動きの影響を受ける。しかしながら,サイズと形状において個々人間に大きなばらつきがある。一部の研究者は,外耳道の骨の多い領域において(in the bony region of the ear canal),長軸(主軸)(the major axis)は,鼓膜に近づくにつれて,水平方向にねじれる傾向があると報告している。しかしながら,多くの補聴器ユーザに関する研究に基づいて,発明者は,楕円の長軸は,垂直から水平に至るまで実質的にあらゆる姿勢をとることができる(the major axis of the oval can assume practically any attitude from vertical to horizontal)ことを発見した。
【0019】
イヤーピースの分野おいて,サイズの選択,およびさほどではないが形状の選択が標準的なやり方である。カスタマイズされていないピースは一般にインスタントフィット(instant-fit)と呼ばれている。
【0020】
ぴったり合うようにするために,個々人の外耳道の型(impression)に基づいてカスタマイズされた形状(カスタムフィット)を提供することも標準的なやり方である。カスタムフィットのイヤーピースの提供には,インスタントフィットのイヤーピースを提供するよりも複雑な工程を必要とする。それでも,外耳道は固定的構造ではないので,カスタムフィットのイヤープラグはすべての問題に対応できるわけではない。
【0021】
発明者は,インスタントフィットのプラグの性能が予想よりも低い可能性があることを発見した。問題は様々な原因に関連する。外耳道のトリッキーな形状,たとえばねじれ,または多少の明白な楕円形が円形のプラグ形状によって密封することを本質的に困難にする。プラグの半径方向に突出するスカートは,外耳道壁によって圧縮されると,不規則なプリーツまたは折り目を形成しやすく,空気漏れを引き起こすことがあり,取り外すときには後ろ向きに折り畳まれやすく,取り外すときに不快感を引き起こし,再度挿入する前にスカートを真っ直ぐにすることをユーザに強いる。
【0022】
未制御の漏れは,たとえばフィードバック,音響パワーの損失,増幅音と直接音の不十分な混合など,問題を引き起こすことがある。
【0023】
スカートにスリットを付けたり,放射状のリブに分割したりすることで,幅広い範囲の外耳道サイズに対応可能であるが,リブの間のスリットやスペースは音響シールの効果を無くすオープンスペースを残すことがある。さらに,折り目,リブおよびエッジは,かゆみ感またはくすぐり感を生じさせる危険のために好まれないことがある。これらの感覚は,外耳道壁が顎の骨とともに動くこととの兼ね合いでイラつかせることがあり,外耳道に挿入されるあらゆる物体に作用する。
【0024】
上記外耳道のS字形によってイヤーピースの先端が斜めになり,音声出力口が狭くなったり(obscured),突出するフランジ・シールが外耳道壁を適切にシールしなくなったりすることがある。突出するフランジを備えるイヤーピースはフランジの一部が折りたたまれた状態で外耳道に入るとバイパス開口を残すことがある。
【発明の開示】
【0025】
第1の観点において,この発明は請求項1に記載のイヤーピースを提供する。
【0026】
上記シュラウドを楕円形にすることによって,人の外耳道は一般に楕円形であるので,外耳道への適応性が向上する。さらに,回転機能によって,外耳道にイヤープラグを挿入するときに楕円形シュラウドをアダプタ上でねじることができ(permits the oval shroud to twist on the adapter),人の外耳道の楕円形断面の長軸の様々な姿勢に対して非常に適応する。このことは,人間の耳は長軸の方向に大きなばらつきがあり,さらに外耳道への進入の程度に応じてねじれ方向を提示することが分かったので,非常に重要である。イヤーピースのステムとシュラウドとを異なる材料(素材)で作ることによって,スピーカをしっかりと掴むための頑丈なコアと,優れた快適さのための柔軟なシュラウドとを組み合わせることができる。
【0027】
いくつかの実施態様では,上記シュラウドは,音導管に沿う方向において楕円形であり,長軸が短軸の長さの少なくとも1.1倍,好ましくは1.7倍以下である。柔軟な弾性材料によって,上記バルブは様々な形状の外耳道に対して広く適合するものになる。人間の耳は,しばしば約170%の範囲の偏心度(degree of eccentricity)を示すと推定され,すなわち長軸は短軸の長さの約1.7倍である。しかしながら,偏心度が170%のバルブは,かなり極端な形状の外耳道にも適応できると推定される。
【0028】
一実施態様では,上記アダプタおよび音供給手段は,嵌合しかつ回転可能な取付けのためのスパウトおよびソケットの組み合わせを含む。これは製造およびパフォーマンスにおいて便利な設計である。
【0029】
一実施態様では,上記ステムおよびシュラウドは弾性材料から作られ,上記シュラウドの材料は上記ステムの材料よりも柔軟である。これによって,上記ステムはスパウト上でしっかりしたグリップを維持することができ,上記シュラウドに優れた快適性を提供することができる。
【0030】
一実施態様では,上記シュラウドは,滑らかな外面を備える概略環状の第1の端部ゾーン,上記内側表面ゾーンと反対側の滑らかな外面を備える概略環状の第2の端部ゾーン,および第1の端部ゾーンおよび第2の端部ゾーンの中間の中央ゾーンを備え,上記中央ゾーンが,適切な構造設計によって,第1の端部ゾーンおよび第2の端部ゾーンよりも,外耳道壁に接触することによる圧縮に対して柔軟性を持つように構成されている。
【0031】
本願の開示において,内側(medial)および外側(lateral)という用語は,人の耳に挿入されたときのイヤーチップの方向を意味する。すなわち,内側は頭部の中心面(median plane)に向かう方向,つまり鼓膜に向かう方向であり,他方,外側は頭部の中心面から離れる方向である。イヤーチップの中央ゾーン(mid zone)の柔らかい特性は,適切な構造設計,たとえば壁厚のテーパリング,プリーツやベロー形状の配置,または適切な柔らかさの材料(素材)の選択によって達成することができる。
【0032】
圧縮に対して上記中央ゾーンを柔らかくする(柔軟性を持たせる)ことは,外耳道壁にかかる圧力に対してイヤーチップが非常に柔らかく,したがって挿入時および通常着用時にユーザにとって快適であることを意味する。内側ゾーンおよび外側ゾーン(これらをまとめて端部ゾーンと言う)は中央ゾーンよりも圧縮に対して柔らかくない(less soft to compression)。しかしながら,バルブ(bulb)が概略球形であるので,端部ゾーンに小さい直径を持たせることができ,したがって中央ゾーンほどには圧縮する必要はなく,これにより外耳道に不快な圧力がかかる可能性は低くなる。端部ゾーンのやや頑丈な構造には,イヤーチップの挿入を容易にし,被験者パネルによって裏付けられた所見では,外耳道のねじれや曲がりを通じてイヤーチップを快適にナビゲートする傾向があると報告されている。被験者はさらに,この新しいイヤーチップは装着中に外れにくく,外耳道へのしっかりとした収まりを達成すると報告している。
【0033】
上記バルブは,内側ゾーン,中央ゾーン,外側ゾーン,またはこれらの任意の組み合わせにおいて,外耳道壁に対してシール(密閉)することができる。
【0034】
一実施形態では,上記軸に概略平行に延びるプリーツ(ひだ)(pleats)を備える中央ゾーンが提供される。これによって上記バルブは上記中央ゾーンの実質的な圧縮を受け入れることができる。
【0035】
中央ゾーンにおいてプリーツを最も深くし,かつ両端部ゾーンに向かって浅くする(先細りにする)(テーパリング・オフ)ことによって,急激な変化を示さないように圧縮に対する復元力が較正される。
【0036】
プリーツ中の谷間にウェブを掛け渡す(making webs across the valleys in the pleats)ことによって,最適な遮音性(optimal acoustic insulation)のために,空気の軸方向の通路(axial passage of air)に対して上記谷間がシールされる。
【0037】
一実施態様では,上記バルブは,外耳道壁に対してシールするための円周状の低い隆起部(a circumferential low ridge)を中央ゾーンに備えている。これによって円周方向のシーリングゾーンが確立され,両端部ゾーンによるシーリング効果が補完される。人の外耳道は通常曲がっており,シーリング領域の一部がイヤーピースの軸に対して斜めに方向付けられることで耳道壁に対して漏れが生じやすくなるので,3つの円周方向のシーリングゾーンを有することは重要である。
【0038】
一実施態様では,上記バルブは外側開口の周囲において補強される。上記補強は,壁厚を増すことによって,支柱(struts)を追加することによって,または他の構造的手段によって実施することができ,外側ゾーンの圧縮柔軟性を低下させる。これによってこの部分が開口を有している,すなわちコア構造に固定されていないまたは補強されていず,軸方向に自由に膨張して空気用の通路を残す場合でも,適切な弾力性が外側ゾーンに確保される。上記補強はまた,外耳道からイヤーチップを取り外すときにシュラウド(shroud)が後方に曲がるのを防止する。
【0039】
さらなる有利な特徴は従属請求項から明らかにされる。
【0040】
第2の観点において,この発明は請求項23に記載のイヤープラグを提供する。
【0041】
第3の観点において,この発明は請求項24に記載の補聴器を提供する。
【0042】
第4の観点において,この発明は請求項25に記載の通信装置用構成要素(a component)を提供する。
【0043】
この発明のさらに他の目的は,この発明をより詳細に説明する以下の記載から当業者に明らかにされよう。
【0044】
一例として,この発明の実施態様を示しかつ記載する。当然ではあるが,この発明は他の様々な実施態様が可能であり,そのいくつかの詳細は,この発明から逸脱することなく,さまざまな,明白なすべての観点において修正可能である。すなわち,図面および明細書は本質的に例示にすぎず,限定をするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】外耳道を通る人の頭部の一部水平断面図を,従来技術によるイヤーピースとともに示す。
図2】外耳道を通る人の頭部の一部水平断面図を,この発明の一実施態様によるイヤーピースとともに示す。
図3】この発明の第1の実施態様によるイヤーピースを示すもので,側面および上面を示す。
図4図3に示すイヤーピースを示すもので,側面および底面を示す。
図5】この発明の一実施態様によるイヤーピースを,接続されたケーブルとともに示す。
図6】軸を通るイヤーピースの平面断面図であり,ケーブルも示す。
図7】イヤーピースを備える補聴器を示す。
図8】この発明の第2の実施態様によるイヤーピースの平面断面図を,接続されたケーブルとともに示す。
図9】この発明の第2の実施態様によるイヤーピースを,イヤーピースの軸に沿う平面断面図で示す。
図10】この発明の第2の実施態様によるイヤーピースの,イヤーピースの上面から見た平面図である。
図11】この発明の第2の実施態様によるイヤーピースの斜視図である。
図12】この発明の第3の実施態様によるイヤーピースの,イヤーピースの軸に沿う平面断面図を,接続されたケーブルとともに示す。
図13】この発明の第3の実施態様によるイヤーピースの,イヤーピースの軸に沿う平面断面図である。
図14】この発明の第3の実施態様によるイヤーピースの,イヤーピースの上部から見た平面図である。
図15】この発明の第3の実施態様によるイヤーピースの斜視図である。
【実施例
【0046】
はじめに図1を参照して,図1は,外耳道を通る人の頭部の一部水平断面図を,一般的な従来技術によるイヤーピース5とともに示している。図示するイヤーピースは,2つの環状コーン(annular cones)6を有するコア(core)を備えている。外耳道2は外耳3と鼓膜4の間においてS字形を有している。図1は,S字形の曲がりによって,内側のシュラウド(inner shroud)が外耳道の片側に強く押し付けられ,他方反対側の外耳道壁に接触していない状態を示している。外側のシュラウドは大きく圧縮されてコーンは符号7において折り畳まれている。コーンのエッジにおける圧力点は,たとえば咀嚼中にユーザに不快感を引き起こす可能性がある。接触圧の欠如または折り畳みは漏れを生じさせる可能性がある。
【0047】
外耳道には様々なサイズおよび形状がある。サイズ選択したインスタントフィットのイヤーピースを供給することが標準的なやり方である。フィットは様々な結果になる場合がある。しかしながら,発明者は問題が拡大していることを発見したものである。
【0048】
図2を参照して,図2は外耳道を通る人の頭部の一部水平断面を,この発明の一実施態様によるイヤーピース8とともに示している。上記イヤーピースはイヤーチップ9およびコア固定具またはハブ(core fixture or hub)15を備え,コア固定具またはハブがケーブル18によって補聴器(図示略)に接続される。上記イヤーチップ9はシュラウド(shroud)21を有している。上記シュラウドは鋭いエッジのない丸く膨らんだ形状(bulbous shape without sharp edges)を有しており,外耳道に柔軟に適応する。
【0049】
次に図3を参照して,図3はこの発明の第1の実施態様によるイヤーチップ9を示すもので,ここでは外耳道の内側に向けられることが意図された側部および端部を示しており,ここではこれを上端部(top end)と略称することにする。図3には,シュラウド21,ウエストバンド(waistband)27,音出力口11,ラグ(取っ手)12およびベント(複数)(vents)13が示されている。上記シュラウドは概略球状のもので,ウエストバンド27の両側にのびるバンド中にプリーツ(pleats)32を備えている。
【0050】
図4を参照して,図4もこの発明の第1の実施態様によるイヤーチップ9を示すもので,ここには外耳道内にあるときに外側に向けられることが意図された側部および端部を示しており,ここではこれを下端(bottom end)と略称することにする。図4には,ラグ12,シュラウド21,ウエストバンド27,およびバルブ下部開口30が示されている。
【0051】
次に図5を参照して,図5はこの発明の第1の実施態様によるイヤーチップ9をケーブル18とともに示している。図5にも,シュラウド21,ウエストバンド27,バルブ下部開口30,さらにはスピーカ17の一部が示されている。
【0052】
ここで図6を参照して,図6は軸19を通るイヤーピースの平面断面図である。図6には,シュラウド21,ウエストバンド27,音出力口11,ラグ12,ベント13,スピーカ17,ケーブル18およびバルブ下部開口30を備えるイヤーチップ9が示されている。
【0053】
上記音出力口11にはラグ12が掛け渡され(架橋され)(ブリッジされ)ており,ラグ12は両反対側に開口し,ブリッジ側面開口(bridge side openings)を外耳道壁から離間させる。ベント13は上記バルブの内部にまで開いており,そこから下部開口30を介して周囲に通じている。上記ベントはブリッジ側部開口から間隔をあけて配置されており,耳垢が蓄積して開口の共通封鎖(a common blockage of the openings)が確立されることで音響短絡が発生するリスクを回避する。
【0054】
イヤーチップの場合,軸19は一般に回転対称の軸を構成する。
【0055】
図6の断面はさらに,コア固定具またはステム15,耳垢ガード16,スピーカ17からの音導管の取付けおよび耳垢ガードを保持するように構成されたソケット10,イヤーチップ内端(ear tip medial end)22,およびイヤーチップ外端(ear tip lateral end)23といったいくつかの内部詳細を示している。
【0056】
イヤーチップに用いられる材料は,硬度(硬さ)が10~90ショアAの範囲,たとえば30~50ショアAの範囲にある,柔らかく弾力のあるシリコンゴムである。
【0057】
この実施態様の変形例では,上記バルブのステム部分は硬度が70~90ショアAのシリコンゴム材料から構成され,他方上記バルブのシュラウド部分は硬度が10~40ショアAのシリコンゴム材料から構成される。
【0058】
概略球形のイヤーチップは,地球に関連する命名法を用いておそらくは最も簡単に指定される複数のゾーンから構成される。この命名法では,イヤーチップのバルブの方向と混同しないように,北極は上向きであるとみなされ,対応する点は外耳道内にイヤーチップを挿入するときに鼓膜の方向において内側を指すラグである。
【0059】
上記ラグ12(完全な中心点)が北極を示す。次に北部温帯ゾーン24,熱帯ゾーン26および南部温帯ゾーン28が続き,他方においてさらに南の部分はあいている(open)。北部温帯ゾーンはバルブ上部平行線(北回帰線)によって熱帯ゾーンから区分される。南部温帯ゾーンはバルブ下部平行線(南回帰線)29によって熱帯ゾーンから区分される。
【0060】
外側において上記シュラウドは,北部温帯ゾーンおよび南部温帯ゾーンでは滑らかかつ球形であるが,熱帯ゾーンにはプリーツを有している。上記プリーツは軸に平行に走り,赤道において最大深さに達し,北および南に向かうにつれて浅くなり(先細りになり),上下の平行線において消滅する。上記シュラウドは上記熱帯ゾーンにおいて最も柔らかく,プリーツによって,外側の軸方向の圧力に対して,柔軟に,周辺的かつ放射状に,たわむことができる(the pleats permit it to yield softly, peripherally and radially, to external axial pressure)。上記シュラウドは南端において拘束されていず,この構造によって外部圧力の下において軸方向にも拡張可能である。
【0061】
北部熱帯ゾーンは弾力性があるが,北極ゾーン(the north polar zone)では上記コア固定具15によって補強されている。南平行線において,上記シュラウドは内部のビード20による壁構造によって補強されている。上記補強は,球状を維持するのに役立ち,かつ上記イヤーチップを取り外す操作中に,外耳道壁に対する摩擦によって上記シュラウドが後方に折り畳まれるのを防止する。
【0062】
次に図7を参照して,図7はイヤーチップ9を備えるイヤーピース8を有する補聴器1を示すもので,上記イヤーピースはケーブル18によって補聴器の残りの部分に接続されている。実際の実装は当業者には明らかであろう。
【0063】
次に図8を参照して,図8はこの発明の第2の実施態様によるイヤーピースの平断面を,その後端に接続されたケーブル18とともに示すものである。この断面は上記バルブ軸19に沿っている。上記イヤーピース62は概略的にはイヤーチップ36およびスピーカ17を備えている。図8は,ステム44ならびにプリーツ38およびリム27を備えるシュラウド37を示している。この図面には,一端にスパウト(出口)47を備え,他端49がやや太くなっているスピーカ17が示されている。上記太い端部は,上記スピーカおよび上記ステムの取外し操作をするときに良好なグリップを提供する。上記ステム44は音導管(sound conduit)48および上記スパウト47と噛み合う(嵌合する)(matingly receives)ソケット45を規定する。ソケットおよびスパウトは丸く(circular),スパウト47および音導管48の軸でもある軸46の周りに回転可能に係合するように構成されている。
【0064】
上記シュラウドは,好ましくは,20~50ショアA,好ましくは30ショアAのシリコンゴムから作られ,30ショアAはユーザに良好な快適性をもたらすために柔軟かつしなやかにすることが分かったものである。上記ステムは60~90ショアA,好ましくは80ショアAのシリコンゴムから作られ,80ショアAは上記ステムに上記スパウトに対するしっかりとした保持を提供することが分かったものである。
【0065】
第1の実施態様と同様,上記シュラウドは,概略的にはラグ12,音出力口11,ベント13,上部ゾーン39(すなわちイヤーピースが外耳道内に押し込まれるときに先頭になるイヤーチップに隣接する領域),中央ゾーン40,および下部ゾーン41を備えている。プリーツを備える中央ゾーンは両端部ゾーンよりも半径方向の圧縮に対して柔らかく,上端ゾーンはラグ12の周囲構造によって支持され(buttressed),下端ゾーンは中央ゾーンと比べて半径が小さく,わずかにかさばる下部開口30の周囲の壁厚によって支えられる。
【0066】
図9はスピーカを持たないイヤーチップ36の断面を示している。
【0067】
図10は第2の実施態様のイヤーチップ36の平面図を示すもので,軸46の方向においてラグ12の方向からみたものである。図10には,短軸43の長さの約110%の長軸を備える楕円形のシュラウド37の輪郭が明確に示されている。
【0068】
次に図11を参照して,図11は第2の実施態様によるイヤーチップ36の斜視図である。図11にはシュラウド37,リム27,プリーツ32,ラグ12およびベント13が示されている。
【0069】
図12を参照して,図12はこの発明の第3の実施態様によるイヤーピース61の平断面を,スピーカ後端部に接続されたケーブルとともに示すものである。上述した実施態様と同様に,上記断面はバルブ軸19に沿っている。第3の実施態様によるイヤーピースは,概略的にはイヤーチップ50およびスピーカ17を備えている。図12はステム58およびシュラウド51を示している。この図面には,一端にスパウト47を備え,かつ他端49がわずかに太くなっているスピーカ17が示されている。上記太い端部は,上記スピーカおよびステムの取外し操作をするときに良好なグリップを提供する。上記ステム58は音導管48およびスパウト47と噛み合うソケット59を規定する。ソケットおよびスパウトは丸く,スパウト47および音導管48の軸でもあるバルブ軸19の周りに回転可能に係合するように構成されている。
【0070】
第3の実施態様は,上記シュラウドがプリーツを持たない点において,上記第1および第2の実施態様と異なっている。このデザインは,プリーツの成形が難しい非常に小さなサイズのイヤーピースに適している。材料の適切な選択および壁厚の注意深い設計によって,中央ゾーンの適切な柔らかさを得ることができる。
【0071】
上記シュラウドおよび上記ステムは,好ましくは第2の実施態様の同様の部材について説明したものと同様の材料からつくられる。
【0072】
第1の実施態様と同様,上記シュラウドは,概略的には,ラグ12,音出力口11,ベント13,上部ゾーン52(すなわちイヤーピースが外耳道内に押し込まれるときに先頭になるイヤーチップに隣接する領域),中央ゾーン53および下部ゾーン54を備えている。その大きな直径によって,上記中央ゾーンは,両端部ゾーンよりも半径方向の圧縮に対して柔らかく,上端ゾーンはラグ12の周囲構造によって支持され,下端ゾーンは中央ゾーンと比べて半径が小さいこと,わずかにかさばる下部開口30の周囲の壁厚によって,支えられる。
【0073】
図13はスピーカを持たないイヤーチップ50の断面を示している。
【0074】
図14は第3の実施態様のイヤーチップ50の平面図を示すもので,軸60の方向においてラグ12の方向から見たものである。図14には,短軸56の長さの約140%の長軸55を備える楕円形のシュラウドの輪郭が明確に示されている。
【0075】
次に図15を参照して,図15は第3の実施態様によるイヤーチップ50の斜視図である。図15にはシュラウド51,リム27,ラグ12およびベント13が示されている。
【0076】
他の偏心度(other degrees of eccentricity)を備えるさらなる変形例の実施態様を用いることができる。外耳道の楕円形は,その長軸が短軸の約170%に及ぶことが分かっている。
【0077】
外耳道は直径6~14mmの範囲と推定することができる。上記イヤーチップは,外耳道の特定の形状,圧力に対する個々人の感覚などの状況に応じて,定格フルサイズ直径(the rated full size diameter)の60ないし80%の直径までの外耳道サイズの範囲をカバーすると推定される。すなわち,適切にずらされた3から7個のサイズを選択することによって,ユーザを満足させることができる。
【0078】
変形例において,上記イヤーピースは,電話,通信装置,または音楽プレーヤ用のヘッドセットに関連して展開される。変形例の実装は当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15