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▶ サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】電極アセンブリおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/42 20060101AFI20220525BHJP
   H01J 49/06 20060101ALI20220525BHJP
   H01J 49/28 20060101ALI20220525BHJP
   H01J 49/30 20060101ALI20220525BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20220525BHJP
【FI】
H01J49/42 550
H01J49/06 200
H01J49/06 800
H01J49/28 200
H01J49/30
H01J49/42 400
G01N27/62 E
【請求項の数】 40
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020087870
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2020191282
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】1907139.8
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508306565
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー マカロフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルコ バルシュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン-ペーター ハウシルト
(72)【発明者】
【氏名】デニス チェルヌイシェフ
(72)【発明者】
【氏名】エドゥアルト デニソフ
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0228467(US,A1)
【文献】特表2017-516270(JP,A)
【文献】特開2019-049554(JP,A)
【文献】特開2018-073837(JP,A)
【文献】米国特許第09536722(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/06
H01J 49/42
H01J 49/36
H01J 49/28
H01J 49/30
G01N 27/62
G01N 31/00-31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオントラップ、イオンフィルター、イオンガイド、反応セル、またはイオン分析器のための電極アセンブリであって、
誘電体材料に機械的に結合されたRF電極と、前記誘電体材料と前記RF電極との間に配置された少なくとも1つのDC電極と、を含み、
前記RF電極が、前記RF電極と前記誘電体材料との間のギャップを画定するように離間して、構成される複数のセパレーターによって前記誘電体材料に機械的に結合され、前記RF電極を前記誘電体材料に結合するとき、各セパレーターの突出部が、誘電体材料の対応する受け部内に受容されるように、前記複数のセパレーターのそれぞれが、前記突出部を含み、前記誘電体材料が前記対応する受け部を含み、
前記RF電極が、前記誘電体材料に対向する表面を有し、
前記DC電極が、前記DC電極の少なくとも一部が前記RF電極の表面と前記誘電体材料との間に直接位置するように、前記誘電体材料を横切って延在し、
前記DC電極によって前記誘電体材料からシールドされる前記RF電極の表面の表面積の割合が、少なくとも50%である、
電極アセンブリ
【請求項2】
前記セパレーターにより画定される前記ギャップが、前記誘電体材料に対向する前記RF電極の表面と前記誘電体材料との間にある、請求項1に記載の電極アセンブリ
【請求項3】
前記DC電極によって前記誘電体材料からシールドされる前記RF電極の表面の表面積の割合が、少なくとも80%である、請求項1または請求項2に記載の電極アセンブリ
【請求項4】
前記DC電極によって前記誘電体材料からシールドされる前記RF電極の表面の表面積の割合が、少なくとも95%である、請求項3に記載の電極アセンブリ
【請求項5】
前記DC電極がセグメント化されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項6】
前記複数のセパレーターが導電性である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項7】
前記複数のセパレーターが、前記RF電極の表面に沿って離間している、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項8】
各突出部が、前記誘電体材料に対向する前記RF電極の表面から延在する、請求項1に記載の電極アセンブリ
【請求項9】
各対応する受け部が、前記誘電体材料内に形成された開口部を含む、請求項8に記載の電極アセンブリ
【請求項10】
各開口部が、前記誘電体材料を貫通して延在する貫通孔であり、それにより前記RF電極を前記誘電体材料に結合するとき、各突出部が、対応する貫通孔を通って延在する、請求項9に記載の電極アセンブリ
【請求項11】
DC電極が、前記RF電極に対向する前記誘電体材料の表面上に配置される、請求項1~10のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項12】
前記DC電極が、前記誘電体材料の露出部分を除いて、前記RF電極に対向する前記誘電体材料の表面全体に沿って延在し、前記露出部分が、前記RF電極が前記誘電体材料に結合されたとき、各セパレーターに接触および/または隣接する前記誘電体材料の領域を含む、請求項11に記載の電極アセンブリ
【請求項13】
前記露出部分が中に溝を有する、請求項12に記載の電極アセンブリ
【請求項14】
前記RF電極、DC電極および前記誘電体材料が平行である、請求項1~13のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項15】
前記誘電体材料がガラス、セラミックまたはプリント回路基板である、請求項1~14のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項16】
各セパレーターが前記RF電極に永久的に固定される、請求項1~15のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項17】
各セパレーターが前記RF電極に溶接されている、請求項16に記載の電極アセンブリ
【請求項18】
各セパレーターが、前記突出部が延在するヘッド部分を含み、前記ヘッド部分が、前記突出部よりも直径が大きい、請求項1~17のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項19】
前記対応する受け部の直径が、前記突出部の直径と同じかそれより大きく、および前記ヘッド部分の直径より小さい、請求項18に記載の電極アセンブリ
【請求項20】
各突起部が、前記RF電極を前記セパレーターに結合するとき、対応するレセプタクル内に受容されるように、前記RF電極は複数の突起部を含み、前記セパレーターの各々は前記対応するレセプタクルを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項21】
イオントラップ、イオンフィルター、イオンガイド、反応セルまたはイオン分析器のための電極アセンブリであって、
誘電体材料に機械的に結合されたRF電極を含み、
前記RF電極が、前記RF電極と前記誘電体材料との間のギャップを画定するように離間して、構成された複数のセパレーターによって前記誘電体材料に機械的に結合され、前記RF電極は複数の突起部を含み、前記セパレーターの各々は対応するレセプタクルを含み、それにより各突起部が、前記RF電極を前記セパレーターに結合するとき、対応するレセプタクル内に受容される、電極アセンブリ
【請求項22】
各突起部が、前記RF電極の平面内の第1のセクションと、前記RF電極の平面に対してある角度にある第2のセクションとを含み、前記第2のセクションの少なくとも一部が、前記対応するレセプタクル内に受容される、請求項20または請求項21に記載の電極アセンブリ
【請求項23】
各突起部が、前記第1のセクションと前記第2のセクションとの間に湾曲セクションを含む、請求項22に記載の電極アセンブリ
【請求項24】
前記セパレーターが、前記RF電極の主表面と重ならないように、前記セパレーターが、前記RF電極の主表面から横方向にオフセットしている、請求項20~23のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項25】
前記レセプタクルが、前記RF電極を前記セパレーターに結合するとき、各突起部が、対応する開口部内に延在するように、貫通して延在する前記開口部を含む、請求項20~24のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項26】
前記レセプタクルが前記セパレーターのヘッド部分の一部を形成する、請求項20、または請求項18または請求項19に従属するときの請求項22~25のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項27】
前記RF電極を前記誘電体材料に結合するとき、各突出部が、前記RF電極の各開口部内に受容されるように、前記RF電極が、前記複数のセパレーターの前記突出部に対応する複数の開口部を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項28】
イオントラップ、イオンフィルター、イオンガイド、反応セル、またはイオン分析器のための電極アセンブリであって、
誘電体材料に機械的に結合されたRF電極を含み、
前記RF電極が、前記RF電極と前記誘電体材料との間のギャップを画定するように離間して、構成される複数のセパレーターによって前記誘電体材料に機械的に結合され、前記RF電極を前記誘電体材料に結合するとき、各セパレーターの突出部が、誘電体材料の対応する受け部内に受容されるように、前記複数のセパレーターのそれぞれが、前記突出部を含み、前記誘電体材料が前記対応する受け部を含み、
前記RF電極を前記誘電体材料に結合するとき、各突出部が、前記RF電極の各開口部内に受容されるように、前記RF電極が、前記複数のセパレーターの前記突出部に対応する複数の開口部を含む、電極アセンブリ
【請求項29】
各セパレーターが、RF電圧源に接続されるように構成される、請求項1~28のいずれか1項に記載の電極アセンブリ。
【請求項30】
イオントラップ、イオンフィルター、イオンガイド、反応セル、またはイオン分析器のための電極アセンブリであって、
誘電体材料に機械的に結合されたRF電極を含み、
前記RF電極が、前記RF電極と前記誘電体材料との間のギャップを画定するように離間して、構成される複数のセパレーターによって前記誘電体材料に機械的に結合され、前記RF電極を前記誘電体材料に結合するとき、各セパレーターの突出部が、誘電体材料の対応する受け部内に受容されるように、前記複数のセパレーターのそれぞれが、前記突出部を含み、前記誘電体材料が前記対応する受け部を含み、
各セパレーターが、RF電圧源に接続されるように構成される、電極アセンブリ
【請求項31】
前記誘電体材料に結合された第2のRF電極をさらに含み、前記第2のRF電極が、前記第2のRF電極と前記誘電体材料との間のギャップを画定するように構成され、かつ離間している第2の複数のセパレーターによって前記誘電体材料に結合される、請求項1~30のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項32】
電極アセンブリが、第1のそのような電極アセンブリであり、前記第1のそのような電極アセンブリから離間して、平行な第2のそのような電極アセンブリがあり、前記第1および前記第2のそのような電極アセンブリが、多重極を形成し、イオン光軸が、前記第1および前記第2のそのような電極アセンブリの間に画定される、請求項1~31のいずれか1項に記載の電極アセンブリ
【請求項33】
請求項1~32のいずれか1項に記載の電極アセンブリを含むイオンガイド。
【請求項34】
請求項1~32のいずれか1項に記載の電極アセンブリを含むイオンフィルター。
【請求項35】
請求項1~32のいずれか1項に記載の電極アセンブリを含むイオン分析器。
【請求項36】
請求項1~32のいずれか1項に記載の電極アセンブリを含むイオントラップ。
【請求項37】
前記イオントラップが、cトラップ、線形イオントラップ、3Dイオントラップ、磁気トラップ、静電トラップまたは反応セル、特にHCDセルである、請求項36に記載のイオントラップ。
【請求項38】
請求項1~32のいずれか1項に記載の電極アセンブリを製造する方法であって、順に、
(i)RF電極と誘電体材料との間にギャップが画定されるように、離間した複数のセパレーターを使用して、前記RF電極を前記誘電体材料に機械的に結合するステップと、
(i)前記RF電極を再形成するために、前記RF電極が前記誘電体材料に結合されつつ、前記RF電極を切断するステップと、を含む、方法。
【請求項39】
前記RF電極を前記切断するステップの前に、少なくとも1つのDC電極が前記誘電体材料の表面上に設けられる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記RF電極の前記切断するステップが、ワイヤ侵食プロセスを含む、請求項38または請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンガイド、イオンフィルター、イオントラップ、イオン貯蔵装置、イオン反応セル、特にイオン衝突セル、またはイオン分析器、特に質量分析器のための改良された電極配置に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析は、化学的および生物学的サンプルの分析のための重要な技術である。一般に、質量分析計は、サンプルからイオンを生成するためのイオン源、さまざまなレンズ、イオンガイド、質量フィルター、イオントラップ/貯蔵装置、および/または反応セル、ならびに1つまたは複数の質量分析器を含む。
【0003】
反応セルは、衝突セルおよび/またはフラグメンテーションセルとすることができる。反応セル内の反応は、電子捕獲解離、高エネルギー衝突解離(HCD)、電子移動解離、酸化、ハイブリダイゼーション、クラスタリング、または複雑な反応である可能性がある。反応セルは、四重極、または六重極、八重極、またはより高次の多極デバイスを含み得る。
【0004】
イオンガイド、イオントラップ/貯蔵装置および反応セルの既知の電極配置は、通常、イオンの径方向閉じ込めのためのRF電極と、イオンガイド/イオントラップ/貯蔵装置/反応セルの軸に沿ってイオンをドライブするためのDC電極を含む。そのような電極配置は、多重極または質量フィルターを形成するように配置された円形または双曲線断面を有するロッドの形態のRF電極を含み得る。これらの電極は、GB2554626、US5616919、US7348552に示されているように誘電体スペーサーに取り付けることができる。電極配置はまた、イオンガイド、イオントラップ、貯蔵装置または反応セルの軸に沿ってDCフィールドを提供するように配置されたDC電極を含み得る。
【0005】
イオンガイド用の電極配置の製造を簡略化するために、US9536722B2で論じられているような平面構成が設計されている。平面構成は、DCフィールドの設計により大きな柔軟性を提供する。そのような平面構成は、平面RFおよびDC電極が接続されるプリント回路基板(PCB)で実装され得る。PCBは、非導電性材料、通常はガラス繊維などの強化可能な誘電体材料で形成されている。典型的には、平面RF電極は、RF多極を形成する配置でイオンガイドの長さに沿って軸方向に延在する。DC電極はまた、イオンガイドの長さに沿って軸方向に延在し、それによってその軸に沿ってDCフィールドを提供する。平面RF電極は、接着剤、またははんだ付けによってPCBの表面に固定できる。PCBとRF電極との間の平面RF電極の長さに沿って、PCBの誘電体材料から作製されたスペーサーを設けることができる。DC電極はPCB表面にエッチングされる。通常、DC電極は、DC電極が誘電体(PCB)材料によってRF電極から分離されるように、RF電極に隣接するPCB表面の部分に設けられる。
【0006】
ただし、このような平面設計の結果として、RF電極によって作成されたRFフィールドは、DC電極によってシールドされていない領域でPCBの誘電体材料を透過する。この透過により、誘電損失によってPCBが加熱される。より具体的には、PCBの材料を透過するRFフィールドは、誘電体(PCB)材料の分子が絶えず変化するRFフィールドと整列しようとするときに、エネルギーを散逸させる。この誘電損失は、詳細な説明でさらに詳しく説明される誘電正接Dfによって説明される。PCBの加熱により、PCBの材料が蒸発する(ガス放出)。RF電極をPCBに固定するために使用される接着剤も蒸発する場合がある。蒸発した材料(および接着剤)は、イオンガイド内に含まれるイオンを汚染する可能性がある。これらの汚染物質は、分光計を通って検出器に運ばれる可能性があるため、汚染物質に対応するピークが、結果として得られる質量スペクトルに生成される可能性がある。汚染物質はまた、イオンガイド内に含まれる検体に望ましくない変化を引き起こす可能性がある。例えば、汚染物質は、検体分子と結合し、それにより付加物を形成し、および/または検体分子と反応し、それらの電荷の一部を除去する(電荷減少)。検体に対するこれらの望ましくない変化は両方とも、結果として得られる質量スペクトルに誤ったピークを生成する。イオンガイド/イオントラップ/貯蔵装置/衝突セルはまた、その中に緩衝ガスを有し得る。誘電体(PCB)材料で生成された熱は、緩衝ガス分子に十分なエネルギーを提供し、それにより、検体と緩衝ガス分子との反応を引き起こす。例えば、緩衝ガス分子は、付加物を形成する検体分子と反応して結合することがある。緩衝ガス分子と検体分子との反応は、検体分子の電荷を減らすこともできる。したがって、これらの反応は、検体分子に望ましくない変化を引き起こす。衝突セルでは、イオンはより長い期間(例えば、数ミリ秒)保管され、イオンガイドと比較してより強いRFフィールドに曝される。実際、衝突セルは、通常、通常1000V未満で動作するイオンガイドの電圧よりもはるかに高い電圧である1200~1500VのRF電圧で動作する。したがって、PCBの加熱とその結果としての望ましくない影響は、衝突セルで特に顕著である。
【0007】
図1は、既知の第1および第2の電極配置2、2’を有する既知の電極アセンブリー1の概略図である。第1および第2の電極配置2、2’は、長手方向に延在する平面RF電極3を有する。RF電極は、平面RF電極3の長さに沿って設けられる導電性接着剤/接着物によって誘電体材料4に取り付けられる。平面RF電極3は、治具を形成する長手方向に延在する溝5によって整列状態に維持される。DC電極6は、平面RF電極3の片側の誘電体材料4の表面に設けられる。
【0008】
図1aは、既知の電極アセンブリー1のRF電極3の断面を示す。RF電極の周りの溝5は、DC電極へのトラッキング距離を増加させるために設けられる。このアセンブリーでは、誘電体(PCB)材料4が支持体に埋め込まれている。
【0009】
図1に示されている既知の電極アセンブリー1を備えたHCD(高エネルギー衝突解離)セルで500msの間トラップされる多価ユビキチンイオンの1つの分離した電荷状態(+11)を含む、本明細書で実験1と呼ぶ実験の結果が、図2~4に提供されている。実験では、時刻0:00(0時間0分)で、高RF電圧(約1,250Vpp)が、1:12(1時間と12分)の間HCDセルのRF電極3に印加された。次に、HCDセルから、分離およびトラップされたユビキチンイオンをCトラップに移し、CトラップからOrbitrap(登録商標)質量分析器に注入して質量分析を行った。Cトラップは、湾曲した線形イオントラップであり、時間内にイオンパケットを格納し、次に、イオンパケットを、例えば、特許出願WO2002/078046、WO2008/081334、WO2005/124821に記載されている質量分析器の中に加速する。HCDセルに隣接するCトラップのRF電極に約3,000VppのRF電圧を印加した。
【0010】
この実験では、2つの温度センサー(例えば、室温で100オームの抵抗を持つプラチナ抵抗器、以下PT100と呼ぶ)を使用した。第1の温度センサー(PT100)は、平面RF電極3が取り付けられたHCDセルのPCBの誘電体材料4に配置された。第1の温度センサーおよびRF電極は、温度センサーが誘電体材料4のRF電極3に対し反対の表面に取り付けられたことを除いて、誘電体材料4の平面内の同じ位置に配置された。したがって、RF電極3および第1の温度センサーは、誘電体材料4の厚さによってのみ分離された。第1の温度センサーをRF電極3の近くに配置することにより、第1の温度センサーによって測定された温度は、RF電極3によって生成されたRFフィールドの透過による誘電体材料4の加熱に関して正確な結果を提供した。
【0011】
第2の温度センサー(OTブロックPT100)はHCDセルに配置されなかった。代わりに、第2の温度センサーは、HCDセルの近くのOrbitrap質量分析器のハウジング内に配置された。したがって、第2の温度センサーは、HCDセルのRFフィールドによって引き起こされるOrbitrap質量分析器の温度上昇に関するさらなる結果を提供した。
【0012】
図2は、実験1の経過中の、時間に対する、HCDセルの電荷状態ごとの抽出イオン電流および温度のグラフである。図2に示すように、HCDセルに最大RF電圧を1時間12分印加した後、Orbitrap質量分析器によって測定された分離した電荷状態(+11)の抽出イオン電流は、約19arb.u./秒から約5arb.u./秒に減少した。したがって、分離した電荷状態(+11)の強度は、実験中に約4分の1に減少した。Orbitrap質量分析器によって測定された電荷状態(+10)の抽出イオン電流は、2arb.u./秒から6.25arb.u./秒に増加した。Orbitrap質量分析器で測定された同位体(+9)の抽出イオン電流は、0arb.u./秒から3.75arb.u./秒に増加した。したがって、減少した電荷を有する減少した電荷状態のイオン強度は、実験の過程で著しく増加した。最大RF電圧を1時間12分印加した後、減少した電荷状態の合計イオン電流は約5arb.u./秒であり、分離した電荷状態(+11)の合計イオン電流は約4arb.u./秒であった。電荷減少は、分離した電荷状態(+11)の合計イオン電流に対する、分離した電荷状態(+11)の合計イオン電流を除く全てのピークの抽出イオン電流の合計の比率として定義される。したがって、最大RF電圧がHCDセルに1時間12分印加されたときの電荷減少は、100%を超えた。最大RF電圧をHCDセルに1時間12分印加した後、HCDセルの温度が第1の温度センサーによって測定され、20℃上昇した。HCDセルのこの温度上昇により、電極アセンブリー1内の接着剤および誘電体(PCB)材料4の脱着および蒸発の速度が増加したことが理解される。その結果、HCDセルの汚染が増加し、電荷減少が増大した。
【0013】
図3(a)は、実験1の開始時、つまりHCDセルへの最大RF電圧の印加の開始時(時間0:00)に取得された質量スペクトルの図である。図3(a)に示すように、時刻0:00にm/z値777.966で電荷状態(+11)を有する分離した主同位体の相対存在量は100%であり、他の各同位体の相対存在量は5%未満である。同位体の相対存在量は、この同位体の存在量の、存在量が最も多い同位体の存在量(100%の存在量の同位体)との比によって与えられる。図3(b)は、最大RF電圧が1時間12分間印加された場合の、実験1の最後に取得された質量スペクトルの図である。図3(a)と3(b)を比較すると、実験期間中に、電荷状態(+11)を有する分離した主同位体の相対存在量が100%から80%に減少したことがわかる。他の(分離されていない)減少した電荷状態の相対存在量は大幅に増加している。例えば、電荷状態(+9)を有する主同位体の相対存在量は50%であり、電荷状態(+10)を有する主同位体の相対存在量は100%である。したがって、実験1の過程で大幅な電荷減少が発生した。
【0014】
図4は、図1の電極アセンブリー1を有する既知のHCDセルの赤外線写真である。写真は、電極アセンブリー1の長手方向が写真の上から下に延在するように、HCDセルの上から撮られている。この写真は、実験1の完了後、HCDセルがオフにされてから10分後に撮影された。この写真のこの時点では、HCDセルの圧力は大気圧と平衡化された。この写真は、最高温度でのHCDセルの領域(最も明るい色の部分)が、平面RF電極3が誘電体材料4に接着されている場所であることを示している。実験1の場合のように、高振幅のRF電圧がRF電極3に印加されると、HCDセルの加熱が特に発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】英国特許第2554626号
【文献】米国特許第5616919号
【文献】米国特許第7348552号
【文献】米国特許第9536722号
【文献】国際公開第2002/078046号
【文献】国際公開第2008/081334号
【文献】国際公開第2005/124821号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
著しい熱の発生なしに動作することができるRF電極が取り付けられたPCBを含む電極配置を提供し、これにより、特に高振幅のRF電圧がRF電極3に印加される場合、検体分子へのガス放出と望ましくない変化を最小限に抑えることが望ましいであろう。実際、そのような電極配置を設けることにより、初めて、RF電極が取り付けられたPCBを含む電極配置を有する、HCDセルなどの信頼性の高い衝突セルを設けることが可能である。
【0017】
PCBを有する既知の電極配置に関する別の課題は、正確な製造を保証することである。したがって、標準のPCB製造プロセスによって可能になるよりも高いレベルの精度でRF電極が取り付けられたPCBを含む電極配置を製造する方法を提供することも望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、イオントラップ、イオンフィルター、イオンガイド、反応セルまたはイオン分析器のための電極配置が提供され、電極配置は、誘電体材料に機械的に結合されたRF電極を含み、RF電極が、RF電極と誘電体材料との間のギャップを画定するように離間して、構成される複数のセパレーターによって誘電体材料に機械的に結合され、RF電極を誘電体材料に結合するとき、各セパレーターの突出部が、誘電体材料の対応する受け部内に受容されるように、複数のセパレーターのそれぞれが、突出部を含み、誘電体材料は対応する受け部を含む。複数のセパレーターは、以下に説明するピンセパレーター、レセプタクル付きセパレーター、または突出セパレーターのいずれか1つまたはそれらの組み合わせであり得る。
【0019】
請求項1に記載の電極配置は、誘電体材料に機械的に結合されたRF電極を含む。RF電極は、RF電極と誘電体材料との間のギャップを画定するように離間して、構成された複数のセパレーターによって誘電体材料に結合される。RF電極と誘電体材料の間にギャップを設けることにより、この領域の強いRFフィールドによるRF電極の近くの誘電体材料の透過が回避される。
【0020】
複数のセパレーターのそれぞれは、突出部を含み、誘電体材料は、対応する受け部を含む。各セパレーターの突出部は、誘電体材料の対応する受け部内に受容される。誘電体材料の結合は、この接続にほぼ限定される。対応する各受け部は、突出部を受容するように、セパレーターの突出部に相補的な形状を有することができる。
【0021】
さらに、誘電体材料とRF電極との間に配置されたDC電極は、RF電極によって生成されるRFフィールドから誘電体材料をシールドする。このシールドは、RFフィールドが誘電体材料を透過するのを防ぎ、誘電損失による誘電体材料内部での熱の発生を防ぐ。誘電体材料へのRFフィールドの唯一の透過は、各セパレーターと誘電体材料の間の接点で発生する。
【0022】
一定の高さのギャップは、RF電極と誘電体材料との間の最小の接触面積で達成され得るので、ギャップを生成するために複数のセパレーターを使用することは有利である。実際、間隔をあけた複数のセパレーターを使用することにより、DC電極、したがってDCフィールドは、RF電極の真上または真下にある誘電体材料の表面の大部分を覆い、シールドすることができる。
【0023】
これは、DC電極がRF電極の真上または真下にある誘電体表面の大部分に沿って延在することができない既知の電極配置とは対照的である。実際、既知の従来技術では、RF電極の真上または真下にある誘電体表面の大部分は、接着剤、またははんだ、またはスペーサーで覆われている。
【0024】
さらに、US7348552などの既知の構成では、通常、誘電体材料で作られたスペーサーは、PCBの表面とRF電極の間に配置され、PCBとRF電極の間に、したがって、PCBの表面に配置されたDC電極とRF電極の間にギャップを設ける。しかしながら、RF電極に非常に近いスペーサーの誘電体材料は、RF電極のRFフィールドによって加熱される。この加熱が、イオンガイド、イオンフィルター、イオン分析器、イオントラップまたは電極配置を含む反応セルにおける汚染および電荷減少の問題を引き起こす。
【0025】
したがって、特許請求される本発明の電極配置の動作は、熱の発生を大幅に低減し、その結果、ガス放出(誘電体(PCB)材料の蒸発)を低減する。したがって、生成される汚染物質が少なくなり、検体に望ましくない変化が発生しにくくなる。その結果、結果として得られる質量スペクトルにおいて誤ったピークが少なくなる。
【0026】
好ましくは、電極配置は、誘電体材料とRF電極との間に配置された少なくとも1つのDC電極を含む。上述のように、DC電極、したがってDCフィールドは、RF電極の真上または真下にある誘電体材料の表面の大部分を覆い、シールドすることができる。このシールドは、RFフィールドが誘電体材料を透過するのを防ぎ、誘電損失による誘電体材料内部での熱の発生を防ぐ。誘電体材料へのRFフィールドの唯一の透過は、各セパレーターと誘電体材料の間の接点で発生する。
【0027】
好ましくは、DC電極の少なくとも一部がRF電極の面と誘電体材料との間に直接位置するように、RF電極は誘電体材料に対向する面を有し、DC電極は誘電体材料を横切って延在する。DC電極によって誘電体材料からシールドされるRF電極の面の表面積の割合は、少なくとも50%、好ましくは80%、最も好ましくは95%である。「シールド」という用語は、シールドの導入により、所与の点で帯電電極によって生成される電界フラックス(少なくとも一桁のオーダで)の大幅な減少を指す。本発明では、RF電極によって生成されるRFフィールドは、DC電極をシールドとして使用することによってシールドされる。RF電極の面と誘電体材料との間に直接DC電極の一部を設けることにより、シールドが、そうでなければ最も強いRFフィールドを経験するであろう誘電体材料の領域に設けられる。したがって、誘電体材料内でのRFフィールドの透過および熱の発生が最小限に抑えられる。
【0028】
好ましくは、特許請求される本発明では、複数のセパレーターは導電性であり、より好ましくは金属製である。次に、RF電極のRFフィールドは、セパレーターの周囲の誘電体材料のみに透過する。しかし、これはRF電極の非常に限られた領域である。一般にセパレーターによって、RF電極と誘電体材料の間にギャップがあり、DC電極によってシールドされることが好ましい。これは、誘電損失を有する誘電体材料で形成された、上述の既知のスペーサーとは対照的である。これらのスペーサーは、RF電極に近いRF電極の全領域に配置されているため、RFフィールドによって透過(および加熱)される。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、先行する請求項のいずれかの電極配置を含むイオンガイドが設けられる。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、請求項1~30のいずれか1項に記載の電極配置を含むイオンフィルターが設けられる。
【0031】
本発明の第4の態様によれば、請求項1~30のいずれか1項に記載の電極配置を含むイオン分析器が設けられる。
【0032】
本発明の第5の態様によれば、請求項1~30のいずれか1項に記載の電極配置を含むイオントラップが設けられる。
【0033】
本発明の第6の態様によれば、請求項1~30のいずれか1項に記載の電極配置を含む反応セルが設けられる。
【0034】
本発明の第7の態様によれば、請求項36に記載されているように、請求項1~30の電極配置を製造する方法が提供される。
【0035】
本発明は、いくつかの方法で実施することができ、いくつかの特定の実施形態が、例としてのみ、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、既知の電極アセンブリーの概略図であり、既知の電極アセンブリーは、第1および第2の既知の電極配置を有する。
図1a図1aは、図1の既知の電極アセンブリーの断面を示している。
図2図2は、実験1の過程にわたる時間に対する、図1の電極アセンブリーを有するHCDセルの電荷状態ごとの抽出イオン電流および温度のグラフである。
図3(a)】図3(a)は、実験1の開始時(時間0:00)に取得された質量スペクトルである。
図3(b)】図3(b)は、実験1(時間1:12)の最後に取得された質量スペクトルである。
図4図4は、図1の電極アセンブリーを有するHCDセルの赤外線写真である。
図5図5は、本発明の実施形態による、第1および第2の電極配置を有する電極アセンブリーの斜視図の概略図である。
図5a図5aは図5の拡大図である。
図6図6は、本発明の実施形態による、図5の電極アセンブリーの縦断面の概略図である。
図7図7は、本発明の実施形態による、図5および6の第1の電極配置の分解図の概略図である。
図8図8は、本発明の実施形態による、図5~7の電極アセンブリーの断面の概略図である。
図9図9は、本発明の実施形態による、図5~8の電極アセンブリーの縦断面の一部の概略図である。
図10図10は、本発明の実施形態による、図5~9の電極アセンブリーの分解図の概略図である。
図10a図10aは、図10に示される線AA’に沿った、図5~10の電極アセンブリーの断面を示す。
図10b図10bは、図10に示される線BB’に沿った、図5~10の電極アセンブリーの断面を示す。
図11図11は、実験2の過程にわたる時間に対する図5~10の電極アセンブリーを有するHCDセルの電荷状態ごとのイオン電流のグラフである。
図12図12は、図11のデータのグラフであり、抽出イオン電流は、各時点で電荷状態(+11)を有する同位体の抽出イオン電流によって正規化されている。
図13図13は、実験2の時間に対する電荷減少のグラフである。
図14(a)】図14(a)は、実験2の開始時(時間0:00)に取得された質量スペクトルである。
図14(b)】図14(b)は、実験2(時間2:30)の終わりに取得された質量スペクトルである。
図15図15は、第1の電極配置の第2の実施形態の概略図である。
図16図16は、本発明の第2の実施形態による図15の第1の電極配置の縦断面の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書では、RF電極という用語は、RF電圧源が接続される電極を指す。本明細書では、DC電極という用語は、DC電圧源が接続される電極を指す。本明細書における表面に関して「内側」という用語は、電極アセンブリー100の中心に向かって面している表面を指す。本明細書における表面に関して「外側」という用語は、電極アセンブリー100の中心から離れて面している表面を指す。
【0038】
図5は、本発明による電極アセンブリー100の斜視図の概略図である。電極アセンブリー100の長手方向軸は、長手方向を画定する。電極アセンブリー100は、第1の端部100aから第2の端部100bまで長手方向に延在する。電極アセンブリー100の第1および第2の端部100a、100bは、そこを通るイオンの輸送のために開放/露出される。
【0039】
電極アセンブリー100は、第1の端部100aから第2の端部100bまで長手方向に延在する第1および第2の電極配置10、10’を有する。実際、「電極アセンブリー」という用語は、第1および第2の電極配置10、10’の両方を有する、請求項20の電極配置のような電極配置を指す。第1および第2の電極配置10、10’は、電極アセンブリー100の中心長手方向軸で対応する対称軸を有する第1および第2の電極配置が実質的に互いの鏡像であるように、互いに離間し、平行である。第1および第2の電極配置10、10’は、第1および第2の副側壁101、102によって離間している。実際、図5に示すように、第2の電極配置10’は、第1および第2の副側壁101、102によって第1の電極配置10の上に支持されている。第1および第2の副側壁101、102は、互いに平行であり、電極アセンブリー100の主縁に沿って延在する。本開示では、用語「副」は、小さい寸法(例えば、面積または長さ)を示すために使用され、用語「主」は、より大きい寸法を示すために使用される。副側壁は、第1および第2の電極配置10、10’の間の機械的接続を設けるように構成された、ナットおよびボルトなどのコネクタ103を含む。
【0040】
図5に示すように、各電極配置10、10’は、電極配置10、10’の構成要素への電気的接続を設けるように構成されたプリント回路基板(PCB)を形成する誘電体材料11を有する。誘電体材料11は平面である(すなわち、平面の誘電体表面に平行なそれらの長さおよび幅の寸法は、それらの厚さの寸法よりも大きい)。第1および第2の電極配置10、10’は、各電極配置10、10’の平面誘電体材料11の平面が互いに平行に配置され、互いに向き合うように配置される。各誘電体材料11は、電極アセンブリー100の中心に向いた内側主表面を有する。各誘電体材料11は、電極アセンブリー100の中心から離れる方向を向く外側主表面を有する。誘電体材料11は、電極アセンブリー100の全幅にわたって(横方向に)かつ電極アセンブリー100の第1の端部100aと第2の端部100bとの間に(長手方向に)延在する。したがって、誘電体材料11はまた、各電極配置10、10’の全幅にわたって延在する。好ましくは、誘電体材料11は、誘電損失が低いため、メグトロン6で形成される。
【0041】
図5に最もよく示されているように、各電極配置10、10’は、誘電体材料11の内側主表面に取り付けられた第1および第2のRF電極12a、12b、12a’、12b’を含む。RF電極12a、12b、12a’、12b’は細長く、各電極配置10、10’の長手方向に第1の端部100aから第2の端部100bまで延在する。実際、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、誘電体材料11の全長にわたって延在する。RF電極12a、12b、12a’、12b’は平面である(つまり、平面の誘電体表面に平行である長さと幅の寸法は、平面の誘電体表面に直交しているそれらの厚さ寸法よりも大きい)。第1の電極配置10のRF電極12a、12bは、第2の電極配置10’のRF電極12a’、12b’と平行に、向かい合って、離間して配置される。各電極配置10、10’では、第1のRF電極12a、12bは、第2のRF電極12a’、12b’から離間している。RF電極12a、12b、12a’、12b’は導電性である。RF電極12a、12b、12a’、12b’は金属であり、典型的にはステンレス鋼またはニッケルで形成される。
【0042】
図5~10に示される実施形態では、各RF電極12a、12b、12a’、12b’は、互いに離間した複数(少なくとも2つ)のピンセパレーター13によってそれぞれの誘電体材料11に機械的に結合される。ピンセパレーター13は、好ましくは、等間隔で離間している。ピンセパレーター13は、RF電極と誘電体材料11との間のギャップを画定するように構成される。ギャップは、誘電体材料11の平面と直交する方向に設けられている。ピンセパレーター13は導電性であり、典型的には銅またはRF電極と同じ材料で形成される。図5~10の実施形態では、図6に最もよく示されているように、各RF電極12a、12b、12a’、12b’は、4つのピンセパレーター13によって誘電体材料11に結合されている。
【0043】
各ピンセパレーター13は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の主(平面)表面に取り付けられる。好ましくは、ピンセパレーター13は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の表面に永久的に取り付けられる。典型的には、ピンセパレーター13は、溶接によりRF電極の表面に取り付けられる。各ピンセパレーター13は、ヘッド部分13aと突出部13bとを含む。
【0044】
ヘッド部分13aは、突出部13bが、ヘッド部分13aから、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面に直交しかつ誘電体材料11の平面に直交する方向に延在するように、RF電極12a、12b、12a’、12b’の外側主表面(それぞれの誘電体材料11に近接して対向するRF電極12a、12b、12a’、12b’の平面表面)に取り付けられる。ヘッド部分13aは、RF電極12a、12b、12a’、12b’と少なくとも電気的接触を有する。
【0045】
誘電体材料11は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の誘電体材料11への結合時に突出部を受容するように構成された対応する受け部11aを有する。図5~10に示される実施形態では、図7~10に最もよく示されるように、対応する受け部11aは、誘電体材料11の厚さを通って延在する貫通孔である。突出部13bの径は、突出部13bが貫通孔11aに受容され、保持される径である。ヘッド部分13aの直径は、RF電極12a、12b、12a’、12b’と誘電体材料11との結合時にヘッド部分13aが誘電体材料11に当接するように、貫通孔11aの直径より大きいことが好ましい。ヘッド部分13aは、好ましくは平面であり、その厚さ寸法は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面に直交する。RF電極12a、12b、12a’、12b’と、それが機械的に接続される誘電体材料11との間のギャップの高さは、主にヘッド部分13aの厚さによって決定される。実際、図8および9に示すように、RF電極12a、12b、12a’、12b’とそのそれぞれの誘電体材料11との間のギャップの高さは、ヘッド部分13aの厚さとほぼ同じである。したがって、互いに離間した少なくとも2つのそのようなピンセパレーター13を設けることにより、各RF電極12a、12b、12a’、12b’とそれぞれの誘電体材料11との間のギャップは一定の高さである。典型的には、ヘッド部分13aの厚さ、したがってギャップの高さは、1~2mm、好ましくは1.5mmである。図5~10の実施形態では、図10に最もよく示されているように、ヘッド部分13aはディスク形状である。
【0046】
図5~10の実施形態では、図10に最もよく示されているように、突出部13bは円筒形であり、誘電体材料11の厚さよりも大きい長さを有する。したがって、RF電極12a、12b、12a’、12b’と誘電体材料11がピンセパレーター13によって機械的に結合されているとき突出部13bの、ヘッド部分13aから遠い方の端部は、誘電体材料11の外側平面表面を越えて延在する。
【0047】
各ピンセパレーター13の各突出部13bは、RF電圧源に電気的に接続され、それぞれのRF電極12a、12b、12a’、21b’にRF電圧を供給する。この接続は、RF電圧源への電気的接続を設けるように構成されたコネクタによって提供され得る。各コネクタは、それぞれの突出部13bを受容するように構成された開口部/凹部を有することができる。誘電体材料11上のトラックを使用する代わりに、ピンセパレーター13をRF電圧源に直接接続することにより、誘電損失および誘電体材料11の加熱が低減され得る。
【0048】
突出部13bとRF電圧源との間の電気的接続を設けるように構成されたコネクタは、例えば、ワイヤであり得る。確実な電気的接触を確保するために、ワイヤの端にスプリング式の接点を有してもよい。例えば、ワイヤが、ワイヤの端に、はんだ付け、または圧着された金のコーティングが施されたばねのチューブを有し得る。チューブの内径は、ワイヤの端の外径よりもわずかに大きくなっている。各チューブ内の溝内に小さな円形ばねが設けられており、ワイヤの端に確実に冷間溶接で電気的に接触する。
【0049】
必要に応じて、それぞれのヘッド部分13aから遠位の突出部13bの端部が、コネクタに力が加わっても、RF電極12a、12b、12a’、12b’が曲がることはないように、誘電体材料の外側主表面にはんだ付けすることができる。
【0050】
各電極配置10、10’では、少なくとも1つのDC電極14が、誘電体材料11の内側主表面の大部分に設けられる。図5図10に示す実施形態では、横方向に形成された溝によってセグメント化された1つのDC電極14が、各誘電体材料11上に設けられている。溝は、溝の間に画定されたセグメントよりもはるかに狭くなっている。各溝の厚さは、好ましくは0.5mm未満である。DC電極14は、電極アセンブリー100の第1の端部100aから第2の端部100bまで、および電極アセンブリー100の第1の副側壁101から第2の副側壁102まで延在する。実際、各DC電極14は、露出部分(すなわち、DC電極14がその上にない誘電体材料11の内側主表面の部分)を除いて、第1および第2の副側壁101、102との間に延在する誘電体材料11の内側主表面の全体に設けられる。
【0051】
露出部分は、RF電極12a、12b、12a’、12b’とDC電極14との間の電気的接触を防止する。図7~9に最もよく示されているように、各露出部分は、RF電極12a、12b、12a’、12b’が、誘電体材料11(すなわち、ピンセパレーター13のヘッド部分13aが誘電体材料11の内側主表面と接触する領域)に結合されるとき、ピンセパレーター13と直接接触する誘電体材料11の内側主表面の領域である接触領域11bを含む。各露出部分はまた、好ましくは、接触領域11bを取り囲む溝11cを含む。各ピンセパレーター13の周囲に形成された溝11cは、トラッキング距離を増加させ、故障を回避する。図5~10に示す特定の実施形態では、図8および9に最もよく示されているようにピンセパレーター13のヘッド部分13aは、RF電極12a、12b、12a’、12b’が誘電体材料11に結合されるときディスクが誘電体材料11の内側主表面に接触するように、形成される。したがって、接触領域11bは、円形であり、ヘッド部分13aとほぼ同じ直径を有し、貫通孔11aを取り囲んでいる。接触領域11bを取り囲むのは、誘電体材料11の内側主表面に形成された溝11cである。溝11cは環状であり、ヘッド部分13aよりも直径が大きい。
【0052】
したがって、DC電極14は、接触領域11bおよび溝11cを除いて、第1および第2の副側壁101、102の間に延在する誘電体材料11の内側主表面の全体にわたって延在する。実際、DC電極14は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の外側平面表面と誘電体材料11の内側主表面の間に直接配置されている(ピンセパレーター13が配置されている露出部分を除く)。実際、第1の電極配置10のDC電極14は、第1の電極配置10のRF電極12a、12bの真下に延在する。第2の電極配置10’のDC電極14は、第2の電極配置10’のRF電極12a’、12b’の真上に延在する。
【0053】
上述のように、ピンセパレーター13は、RF電極12a、12b、12a’、12b’と誘電体材料11との間のギャップを画定するように構成される。ギャップは、誘電体材料11の平面と直交する方向に設けられている。したがって、RF電極12a、12b、12a’、12b’の外側表面と誘電体材料11の内側主表面上に形成されたDC電極14との間にもギャップが延在する。ギャップは、典型的には、ピンセパレーター13のヘッド部分13aの高さによって画定され、誘電体材料11の内側表面上に配置されたDC電極14の厚さによって低減される。
【0054】
好ましくは、本発明の電極配置では、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、ピンセパレーター13の上に張り出す。特に好ましい実施形態では、ピンセパレーター13とDC電極14上に張り出したRF電極12a、12b、12a’、12b’の領域間に、誘電体材料11の平面に直交する方向に見通し線がある。
【0055】
(製造と組み立て)
電極アセンブリー100の部分分解図の概略図である図10に最もよく示されるように、第1の電極配置10は、コネクタ103によってそれらの主縁で第2の電極配置10’に接続される。コネクタは、例えば、ナットおよびボルトであり得る。ナットは、電極アセンブリー100の主縁に沿って設けられた副側壁101、102を通って延在することができる。
【0056】
貫通孔11aは、標準的なPCB製造プロセスによって誘電体材料11の厚さを貫通して形成される。貫通孔11aは、RF電極12a、12b、12a’、12b’上のピンセパレーター13の位置に対応する離間した位置に形成されている。好ましくは、貫通孔11aは、誘電体材料11の長さに沿って等間隔で配置される。
【0057】
DC電極14は、上述の露出部分を除いて、誘電体材料11の表面上にエッチングされる。誘電体材料11およびコネクタ20、例えばモレックスコネクタによって形成されたPCB上の供給ラインを介して、DC電極14に電圧を供給することができる。
【0058】
各露出部分の環状溝11cは、レーザーまたは機械的切削によって誘電体材料11に形成される。DC電極14は、上述のように、エッチングによって誘電体材料11に形成された溝によって横方向にセグメント化される。
【0059】
特定のDC電圧がDC電極14の各セグメントに印加されて、電極アセンブリーを通るイオンの動きを、特に電極アセンブリーの長手方向に制御する。
【0060】
複数のピンセパレーター13のヘッド部分13aは、RF電極12a、12b、12a’、12b’が第1の長さを有するとき、各RF電極12a、12b、12a’、12b’に溶接される。ピンセパレーター13は、誘電体材料11の貫通孔の位置に対応するように、RF電極12a、12b、12a’、12b’の長さに沿って、配置される。好ましくは、ピンセパレーター13は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の長さに沿って等間隔で配置される。
【0061】
第1の長さを有する各RF電極12a、12b、12a’、12b’は、複数のピンセパレーター13によってそれぞれの誘電体材料11に結合される。上述のように、各RF電極12a、12b、12a’、12b’とそれぞれの誘電体材料11とを機械的に結合するために、各ピンセパレーター13の突出部13bは、誘電体材料11の厚さを貫通して延在する対応する貫通孔11a内に挿入されて保持される。これは、図6および10に最もよく示されている。次に、各突出部13bは、誘電体材料11の外側主表面にはんだ付けされる。典型的には、各突出部13bは、誘電体材料11の外側主表面上に設けられた導電性パッドにはんだ付けされる。このはんだ付けは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の、特に誘電体材料11の平面に直交する方向の曲げを低減し、好ましくは回避する。RF電極12a、12b、12a’、12b’の第1の長さは、(電極アセンブリー100の第1の端部100aから第2の端部100bまでの)誘電体材料11の長さよりも長い。したがって、互いに結合されると、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、誘電体材料11を超えて(長手方向に)延在する。好ましくは、RF電極12a、12b、12a’、12b’が誘電体材料11の長さよりも大きい第1の長さを有しつつ、第1の電極配置10が、第2の電極配置10’に機械的に結合される。
【0062】
全てのRF電極12a、12b、12a’、12b’が、複数のピンセパレーター13を使用してそれぞれの誘電体材料11に機械的に結合されると、および好ましくは、第1の電極配置10が第2の電極配置10’に結合されると、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、余分な材料を除去するために切断される。RF電極12a、12b、12a’、12b’は、切断プロセスによって再成形され得る。特に、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の長さを第1の長さから第2の長さに減らすために切断される。RF電極12a、12b、12a’、12b’の第2の長さは、誘電体材料11の長さと同じである。RF電極12a、12b、12a’、12b’の4つ全てが、第1の長さから第2の長さに同時に切断される。RF電極12a、12b、12a’、12b’の切断は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の長手方向に直交して延在するワイヤを用いたワイヤ侵食プロセスによって実行される。必要に応じて、ワイヤ侵食プロセスを長手方向に平行に延在するワイヤで使用して、幅を正確に減少させ、および/またはRF電極12a、12b、12a’、12b’を再形成し得る。RF電極12a、12b、12a’、12b’を同時に切断することにより、いったん誘電体材料11に結合されると、製造および組み立ての精度が向上する。実際、このプロセスにより、RF電極12a、12b、12a’、12b’の製造と組み立てが可能になり、互いの相対誤差は10μm未満であるが、PCB製造の許容誤差は通常50~200μmの範囲内である。したがって、RF電極12a、12b、12a’、12b’を製造および組み立てるこのプロセスは、優れた機械的精度をもたらし、電極配置10、10’が使用されるシステム間のばらつきを低減する。さらに、RF電極12a、12b、12a’、12b’を使用して達成されるイオン透過およびイオンの集束の精度が改善される。
【0063】
特に、RF電極が誘電体材料に結合される新しい構成により、RF電極12a、12b、12a’、12b’の改善された切断プロセスが可能である。それらはピンセパレーター13によってのみ配置されるため、RF電極12a、12b、12a’、12b’の輪郭は、特にピンセパレーター13の上にぶら下がっているときに正確に再形成できる。
【0064】
次に、各RF電極12a、12b、12a’、12b’に結合されたピンセパレーター13の少なくとも1つが、RF電圧がピンセパレーター13によってRF電極12a、12b、12a’、12b’に供給されるように、RF電圧源に電気的に接続される。好ましくは、各ピンセパレーター13の突出部13bの遠位端は、RF電圧源に電気的に接続される。これは、ピンセパレーター13の遠位端を、RF電圧を供給するように構成されたワイヤにはんだ付けすることによって達成され得る。
【0065】
(使用時)
使用時には、RF電圧源からRF電極12a、12b、12a’、12b’にRF電圧が印加される。RF電極12a、12b、12a’、12b’は、多重極(この場合は四重極)を形成する。実際に、RF電圧は、多極の隣接するRF電極12a、12b、12a’、12b’が反対の位相を有するように印加される。したがって、それらが互いに同じ位相を持っているように、電極12aと12b’は1セットとして接続される一方で、互いに同じ位相を有するが、12aと12b’の位相とは反対であるように、電極12bと12a’が別のセットとして接続される。したがって、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、電極アセンブリー100の長手方向に平行に延在するイオン光軸の形でイオン流路を画定する疑似ポテンシャル井戸を生成する。
【0066】
使用時には、DC電圧がDC電極14に印加され得る。DC電極セグメントが、好ましくは電極アセンブリーの第1の端部100aから第2の端部100bまで単調に増加するDC電位を提供するように、DC電圧が、DC電極セグメントに印加される。好ましくは、増加するDC電位は、コネクタ22によって各DC電極セグメントに接続され、等しい抵抗器を有する誘電体材料11の外側表面に配置された抵抗分割器を使用することによって設けられる。好ましくは、線形電圧分布が定義されるが、より複雑で時間依存の分布を使用して、イオン電極アセンブリー内でのイオン操作を可能にすることもできる。例えば、イオンは、質量分析のさらなる段階と同期して、電極アセンブリー100の第1の端部100aまたは第2の端部100bのいずれかにドライブされ得る。また、ガスで満たされたガイドでのイオン移動度の分離が可能になる。これは、ドリフト速度が電極アセンブリーのDC勾配によって提供されるときに達成できる。好ましくは、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、それぞれに独自のDC電圧が印加される複数のセグメントにセグメント化され得る。DC電圧は、例えば、DC電極セグメントを供給するために使用されるものと同じ抵抗分割器によって供給され得る。RF電極12a、12b、12a’、12b’を複数のセグメントに分割することにより、DC電極セグメントに加えて、それぞれに独自のDC電圧が印加され、電極アセンブリーでより強い軸方向勾配を生成できる。
【0067】
図10aおよび10bは、図10に示される線AA’およびBB’に沿った図5~10の電極アセンブリーの断面を示す。図10aおよび10bはまた、破線として、RF電極12aおよび12bに印加されるRF電圧の75%の等電位27およびRF電極12aおよび12bに印加されるRF電圧の25%の等電位28を示す。
【0068】
RF電極12a、12b、12a’、12b’と誘電体材料11との間のギャップは、それらの間に直接設けられたDC電極14が、RF電極12a、12b、12a’、12b’によって生成されるRFフィールドから誘電体材料11をシールドすることを可能にする。このシールドは、図10bの等電位線27、28によって示されるように、RFフィールドが誘電体材料11を透過することを防ぎ、したがって誘電損失による誘電体材料11内の熱の発生を防ぐ。誘電体材料11へのRFフィールドの唯一の透過は、露出領域で発生する(露出領域には、各ピンセパレーター13と誘電体材料11の間の接触領域11b、接触領域11bを囲む溝11c(電極12bについて図10aに示すように)、およびそして各DC電極14のセグメント間の溝が含まれる)。本発明では、RF電極12a、12b、12a’、12b’の長さに沿って離間した位置に複数のセパレーターを設けることにより、露出領域が最小化されている。
【0069】
これは、図1および図1aに示される既知の電極アセンブリー1とは著しく異なる。図1aはまた、破線として、RF電極3に印加されるRF電圧の75%の等電位24およびRF電極3に印加されるRF電圧の25%の等電位26を示す。この既知の電極アセンブリー1では、RFフィールドは、RF電極3の全長に沿ってRF電極の下/上の誘電体材料4を透過する。したがって、RFフィールドの透過は、特許請求される本発明の電極アセンブリーにおけるRFフィールドの透過と比較して、既知の電極アセンブリー1の誘電体材料4のより広い領域にわたる。既知の電極アセンブリー1のより広い領域にわたるRFフィールドの透過は、誘電体材料4のより大きな加熱を引き起こす。
【0070】
本発明の電極配置10、10’は、図5~10に示すように、反応セル、特に、衝突誘起解離(CID)、電子捕獲解離(ECD)、電子移動解離(ETD)、光解離などの方法を採用する衝突セルまたはフラグメンテーションセルで使用できる。ETDの場合、RF電極12a、12b、12a’および12b’は、長手方向に形成された溝によって長手方向セグメントにセグメント化され得る。例えば、US7145139において、当技術分野で既知であるように、長手方向セグメントは、独立して制御されたDCオフセットおよびそれに印加されるRF電圧を有することができる。
【0071】
本発明の電極配置10、10’は、図5~10に示されるように、イオンガイド、四重極質量フィルターなどのイオンフィルター、イオン移動度分光計、線形イオントラップなどのイオントラップ、イオン貯蔵装置、または質量分析器などのイオン分析器で使用され得る。実際、電極配置10、10’は、誘電体材料に接続された平面RF電極を使用してRF多極を生成する任意のデバイスで使用され得る。イオントラップ、イオンガイド、イオンフィルター、反応セル、イオン貯蔵装置およびイオン分析器におけるRF電極の使用は、当業者にはよく理解されているであろう。
【0072】
好ましい実施形態では、図5~10に示されるような電極配置10、10’を有する電極アセンブリー100は、HCD(高エネルギー衝突解離)セルなどの衝突セルで使用される。衝突セルは、通常、四重極とOrbitrap質量分析器を含む質量分析計などの質量分析計のイオン経路に配置される。電極アセンブリー100が衝突セル内に配置される場合、電極アセンブリー100は、電極アセンブリー100の第1および第2の端部100a、100bに第3および第4の副側壁をさらに有する。開口部が、電極アセンブリー100の第1の端部100aで第3の副側壁に設けられ、必要に応じて、開口部が、電極アセンブリー100の第2の端部100bで第4の副側壁にも設けられる。使用中、前駆体イオンと呼ばれるイオンが、第1の端部100aでの開口部を介して電極アセンブリー100に入り、第1および第2の電極配置10、10’の間の空間に入る。空間は、窒素、アルゴン、またはイオンの衝突冷却および/またはフラグメンテーションのための他の適切な衝突ガスで満たされ得る。フラグメンテーションが必要な場合、衝突セルと衝突セルの上流の構成要素間のDCオフセットを調整するために、DC電極に印加されるDC電圧を調整することにより、前駆体イオンが希望の衝突エネルギーで、衝突セルに加速される。あるいは、前駆体イオンをそのままにしておく場合は、DCオフセットを調整して、流入するイオンのエネルギーをフラグメンテーションが発生しないか、最小限に抑えられるレベルに維持する。次に、前駆体イオン/フラグメントは、第2の端部100bの開口部を介して電極アセンブリー100を出ることができる。あるいは、電極アセンブリー100を有する衝突セルは、「行き止まり」構成を有し得る。そのような構成では、第2の端部100bには開口部がなく、前駆体/フラグメントイオンは、第1の端部100aでの開口部を介して電極アセンブリー100を出る。
【0073】
図5~10に示されるように、第1および第2の電極配置10、10’を有する電極アセンブリー100が、代わりに、曲がったフラッタポールなどのイオンガイドで使用される場合、イオンは、第1の端部100aを介して電極アセンブリー100に入り、電極アセンブリー100内に閉じ込められて、長手方向軸に沿って移動する。DC電極14は、電極アセンブリー100を通して長手方向に沿ってイオンをドライブするDC電界を生成するように構成され得る。次に、イオンは、第2の端部100bを介してイオンガイドを出る。
【0074】
図15および16は、本発明の第1の電極配置10の第2の実施形態を示す。第1の電極配置10のみが示されているが、第2の電極配置10’が同様に構成され得ることが理解されよう。図15および16に示される第2の実施形態と図5~10に示される第1の実施形態との違いは、第2の実施形態がピンセパレーター13の代わりにレセプタクル付きセパレーター13’および突出セパレーター13’’を含むことである。レセプタクル付きセパレーター13’を図16にさらに詳しく示す。
【0075】
レセプタクル付きセパレーター13’とピンセパレーター13の違いは、レセプタクル付きセパレーター13’の場合、各ヘッド部分13aは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の本体から延在する突起部12cを受容するためのレセプタクル13dを含むことである。図5~10の他の構成要素の説明は、同じ参照番号が付けられた図15および16の同等の構成要素に等しく適用される。図5~10に関するピンセパレーター13の突出部13bの説明は、図15および16のレセプタクル付きセパレーター13’の突出部13bにも同様に当てはまる。
【0076】
レセプタクル付きセパレーター13’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’に機械的に結合される。RF電極12a、12b、12a’、12b’はそれぞれ、細長く、電極アセンブリー10の長手方向に延在する本体を有する。RF電極12a、12b、12a’、12b’の本体は、上記の主表面および副表面を含む。上述のように、RF電極12a、12b、12a’、12b’の主表面は、誘電体表面11の平面に平行である。RF電極12a、12b、12a’、12b’の副表面は、平面の誘電体表面11に直交する。第2の実施形態では、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、本体と、本体から延在する複数の突起部12cとを含む。各突起部12cは、それぞれのレセプタクル13dによって受容される。各RF電極12a、12b、12a’、12b’の各突起部12cは、レセプタクル付きセパレーター13’の対応するレセプタクル13dに挿入され、その中に保持される。
【0077】
各レセプタクル13dは、突起部12cを受容するための開口部13eを含む。開口部13eは、対応する突起部12cと相補的な形状を有し得る。開口部13eは、貫通孔であってもよく、または代わりに、レセプタクル13dを部分的に貫通して延在するのみの凹部であり得る。レセプタクル13dおよびその開口部13eは、誘電体材料11の平面に直交する方向に延在する長手方向軸を有する。開口部13eは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面に直交する方向に延在する。レセプタクル13dに形成された開口部13eの直径は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の突起部12cの直径と同じか、それより大きくてもよい。好ましくは、レセプタクルは、突起部12cに保持力を及ぼして突起部12cをレセプタクル13dの開口部13e内に保持する円形ばね(図示せず)を含む。レセプタクル13dは、RF電極12a、12b、12a’、12b’のための機械的支持および整列を提供し得る。
【0078】
ピンセパレーター13に関して上述したように、レセプタクル付きセパレーター13’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’と誘電体材料11との間のギャップを画定するように構成される。ギャップは、誘電体材料11の平面と直交する方向に設けられている。したがって、RF電極12a、12b、12a’、12b’の外側(主)表面と誘電体材料11の内側(主)表面上に形成されたDC電極14との間にもギャップが延びる。これは、図5~10に示される実施形態におけるピンセパレーター13に関して上記でさらに詳細に論じられ、図15および16に示される実施形態のレセプタクル付きセパレーター13’にも同様に当てはまる。
【0079】
各突起部12cは、好ましくは、レセプタクル13dの底壁13fと、各RF電極12a、12b、12a’、12b’の本体から遠位の突起部12cの端部との間にギャップが形成されるように、開口部13e内に部分的にのみ延在する。このギャップは、レセプタクルの長手方向軸に沿って(すなわち、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面に直交して)設けられる。レセプタクル13dの開口部13eに突起部12cを挿入することにより、電極の振動や屈曲が回避される。
【0080】
突起部12cは、好ましくは、RF電極12a、12b、12a’、12b’と一体的に形成され、その一部である。各突起部12cは、それぞれのRF電極12a、12b、12a’、12b’の本体の副表面から延在する。各突起部12cは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の副表面をセパレーター13に接続する。各突起部12cは、第1の平面に第1のセクションを有し、第2の平面に第2のセクションを有する。第1の平面は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の本体の平面であり、すなわち、第1のセクションは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面に延在する。第1のセクションは、それぞれのRF電極12a、12b、12a’、12b’の本体から離れる方向に(すなわち、RF電極12a、12b、12a’、12b’の長手方向軸に対してゼロでない角度の方向に)延在する。最も好ましくは、第1のセクションは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の長手方向軸に垂直な方向にRF電極12a、12b、12a’、12b’の平面内に延在する。第2のセクションの少なくとも一部は、レセプタクル13d内に受容される。第2のセクションは、レセプタクル13dに入るように、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面に対してある角度で延在する(すなわち、第2のセクションは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面の外に延在する)。第2の平面は、第1の平面に対してある角度になっている。好ましい実施形態では、第2の平面は第1の平面に直交する。好ましくは、各突起部は、第1のセクションと第2のセクションとを接続し、したがって突起部を第1の平面から第2の平面に移行させる湾曲セクションを有する。しかしながら、代替配置では、突起部12cは湾曲セクションを有さなくてもよく、その代わりに、第1のセクションは、第1のセクションが第2のセクションと非ゼロ角度で交差するように、第2のセクションに直接接続し得る。
【0081】
図5図10に示す実施形態に関する上記のピンセパレーター13の突出部13bの説明は、図15および図16に示す第2の実施形態のレセプタクル付きセパレーター13’の突出部13bにも同様に当てはまる。実際、図15および16において、各突出部13bは、ヘッド部分13aから、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面に直交し、誘電体材料11の平面に直交する方向に延在する。各突出部13bは、上で詳細に論じたように、誘電体材料11の対応する受け部11a内に受容され、保持される。
【0082】
RF電極12a、12b、12a’、12b’の各突起部12cは、RF電極12a、12b、12a’、12b’と一体的に形成され、したがって、RF電極12a、12b、12a’、12b’の一部として説明される。好ましくは、RF電極12は、平板として、例えば、レーザー切断またはプレスにより、作られ、次に突起部12cを専用治具上で平板から下向きに曲げる。この場合、突起部12cの断面は、通常、正方形である。あるいは、あまり好ましくないが、突起部12cは、RF電極12a、12b、12a’、12b’と一体的に形成されるのではなく、レーザーまたは電子ビーム溶接によってRF電極12a、12b、12a’、12b’に取り付けられてもよい。
【0083】
レセプタクル13dは、正方形の断面を有するものとして示され、その開口部13eは、円形の断面を有する。もちろん、他の形状が使用され得ることが理解されるであろう。例えば、レセプタクル13dは、円筒形の断面を有することができ、その開口部13eは、正方形の断面を有することができる。もちろん、突起部12cの断面は、図15および図16に示す四角形状とは異なる形状であり得る。
【0084】
上述のように、レセプタクル付きセパレーター13’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の主表面とレセプタクル付きセパレーター13’との間に重なりがないように、RF電極12a、12b、12a’、12b’からオフセットされている。代わりに、レセプタクル付きセパレーター13’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の主表面とレセプタクル付きセパレーター13’との間にいくらかの重なりがあるように、オフセットされ得る。
【0085】
レセプタクル付きセパレーター13’は、それぞれのRF電極12a、12b、12a’、12b’の同じ側に配置されるように示されている。代わりに、レセプタクル付きセパレーター13’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’のいずれかの側に配置され得る。
【0086】
突起部12cは、第1および第2のセクションを有するものとして示され、好ましくは平坦なシートから製造される。代わりに、各突起部12cは、RF電極の長手方向軸に対してある角度で、RF電極の平面内でRF電極12a、12b、12a’、12b’から延在し得る。突起部12cは、直線状であり得る。1つの配置では、各レセプタクル13dは、線形である突起部12cが、レセプタクル13d内に受容されるように、RF電極の長手方向軸に対してある角度でRF電極12a、12b、12a’、12b’の平面内に延在することができる。突出部13bは、RF電極の平面に延在し、レセプタクル13dに接続される第1の部分と、RF電極の平面に対してある角度で延在し、誘電体材料11の受け部11a内に受容される第2の部分とを有し得る。第1および第2の部分は、湾曲部分によって接続され得る。第2の部分は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面から外れる方向に、好ましくはRF電極12a、12b、12a’、12b’の平面に直交する方向に延在することができる。あるいは、各突起部12cは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の主表面から、RF電極12a、12b、12a’、12b’の平面から外れる方向に、そしてレセプタクル13d内に延在することができる。この配置では、レセプタクル付きセパレーター13’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の中心長手方向軸と一列に、または近位に配置され得る。
【0087】
この第2の実施形態では、レセプタクル付きセパレーター13’に加えて、必要に応じて、複数の突出セパレーター13’’も設けられる。複数の突出セパレーター13’’は、互いに離間している。複数の突出セパレーター13’’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’に沿った複数の点、好ましくは2つまたは3つの点に配置され得る。図15に示すようにそれらは、RF電極12a、12b、12a’、12b’に沿った2つの点に配置される。
【0088】
ピンセパレーター13およびレセプタクル付きセパレーター13’と同様に、突出セパレーター13’’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’と誘電体材料11との間のギャップを画定し得る。各突出セパレーター13’’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の主平面表面を誘電体材料11に接続する。突出セパレーター13’’は、各突出セパレーター13’’が突出部13bよりも大きな直径のヘッド部分13aを有しないという点で、図5~10に示される実施形態のピンセパレーター13とは異なる。代わりに、各突出セパレーター13’’は、セパレーター13’’の長手方向軸、すなわち、誘電体材料11の主平面表面およびRF電極12a、12b、12a’、12b’の主平面表面に直交する方向に沿って第1の端部13gと第2の端部13hとの間に延在する突出部13bで形成される。突出部13bの第1の端部13gは、誘電体材料11の対応する受け部11a内に受容される。突出部13bの第2の端部13hは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の開口部12d内に受容される。したがって、突出セパレーター13’’は、誘電体材料11の平面に直交する方向に、誘電体材料11の内側表面とRF電極12a、12b、12a’、12b’との間に延在する。突出部13bは、円筒状であり、断面が円形である。しかしながら、正方形のような他の断面形状が採用され得る。
【0089】
誘電体材料11の各受け部11aおよびRF電極12a、12b、12a’、12b’の各開口部12dは、突出部13bの第1の端部13gおよび第2の端部13hと相補的な形状を有し得る。各受け部11aおよび/または各開口部12dは、貫通孔であってもよく、または代わりに凹部であり得る。好ましくは、受け部11aは、貫通孔であり、第1の端部13gが誘電体材料11の外側表面を越えて延在するように、突出部13bの第1の端部13gは、受け部11aを貫通して延在する。好ましくは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の開口部12dは、貫通孔であり、第2の端部13hがRF電極12a、12b、12a’、12b’の内側表面を越えて延在するように、突出部13bの第2の端部13hは、RF電極の開口部12dを貫通して延在する。
【0090】
誘電体材料の各受け部11aおよびRF電極12a、12b、12a’、12b’の各開口部12dは、機械加工、パンチング、またはレーザーカットされ得る。突出セパレーター13’’の第1の端部13gおよび第2の端部13hは、例えば、ナットとネジ、円形クリップ、はんだ付け、接着物、または溶接によって、誘電体材料11およびRF電極12a、12b、12a’、12b’にそれぞれ固定され得る。上述のように、各突出部13bは、誘電体材料11の外側主表面にはんだ付けされ得る。典型的には、各突出部13bは、誘電体材料11の外側主表面上に設けられた導電性パッドにはんだ付けされる。突出セパレーター13’’の各突出部13bは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の内側主表面にはんだ付けされ得る。
【0091】
図15に示すように、突出セパレーター13’’は、RF電極の1つまたは複数の端部部分12eに機械的に結合されることが好ましい。上述の開口部12dは、各突出部13bの第2の端部13hを受けるための1つまたは複数の端部部分12eに形成され得る。各端部部分12eは平面であり、誘電体材料11に平行であり、対向する主平面表面を有する。上述のように、RF電極12a、12b、12a’、12b’の本体は細長く、電極アセンブリーの長手方向に延在する。好ましくは、各端部部分12eは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の本体の平面内に、かつそれから横方向に延在する。より好ましくは、各端部部分12eは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の本体の平面内に延在し、RF電極12a、12b、12a’、12b’の本体の長手方向軸から垂直である。したがって、突出セパレーター13’’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の本体からオフセットされており、重ならない。言い換えれば、突出セパレーター13’’は、電極アセンブリー10の長手方向に沿って延在するRF電極12a、12b、12a’、12b’の主表面からオフセットされており、重ならない。
【0092】
図15に示す実施形態では、第1の突出セパレーター13’’は、第1の端部部分12eに機械的に結合され、第2の突出セパレーター13’’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の第2の端部部分12eに機械的に結合される。好ましくは、第1の端部部分12eは、電極アセンブリー10の長手方向に沿って第2の端部部分12eから離間している。
【0093】
ピンセパレーターの突出部13bに関して上述したように、突出セパレーター13’’の突出部13bの第1の端部13gは、それぞれのRF電極12a、12b、12a’、21b’にRF電圧を供給するために、RF電圧源に電気的に接続され得る。この接続は、RF電圧源への電気的接続を設けるように構成されたコネクタによって提供され得る。コネクタについては上記で説明した。
【0094】
上記のように、レセプタクル付きセパレーター13’に加えて突出セパレーター13’’を含めることは任意である。同様に、突出セパレーター13’’に加えて、レセプタクル付きセパレーター13’を含めることは任意である。図15では、レセプタクル付きセパレーター13’と突出セパレーター13’’の両方が存在する。レセプタクル付きセパレーター13’および突出セパレーター13’’の両方を設けることにより、各RF電極12a、12b、12a’、12b’と誘電体材料11の内側表面との間のギャップのサイズをより正確に画定および維持することができる。レセプタクル付きセパレーター13’と突出セパレーター13’’の両方が存在する場合、次に、突出セパレーター13’’は、第1の端部13gと第2の端部13hとの間の距離(つまり、セパレーター13’’の高さ)によって、RF電極12a、12b、12a’、12b’間のギャップを画定し得る。上述のように、レセプタクル付きセパレーター13’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’と誘電体材料11との相対的な整列を維持し、RF電極12a、12b、12a’、12b’の振動または湾曲を防止し得る。各レセプタクル付きセパレーター13’のレセプタクル13dの底壁13fの厚さは、ギャップの調整を可能にするように選択され得る。例えば、輸送中の大きな力による電極12a、12b、12a’、12b’の動きは、レセプタクルの突起部12cと底壁13fとの当接によって制限され得る。
【0095】
図15~16には示されていないが、第2の実施形態では、図5~10と同様に、少なくとも1つのDC電極14が誘電体材料の内側主表面の大部分に設けられる。図5~10に関連する上記のDC電極14の説明は、図15および16にも同様に当てはまる。
【0096】
図15および16に示す実施形態では、電極アセンブリーの長手方向に平行に延在するRF電極の主表面に対向する誘電体材料11の平面表面の全てを、DC電極14で覆うことができる。通常、誘電体11の表面の90~95%までの被覆を達成することができる。図15および16に示される実施形態では、電極アセンブリーの長手方向軸に平行に延在するRF電極の主表面の全てと誘電体材料11上のDC電極14との間に誘電体材料11の平面に直交する方向に見通し線がある。言い換えれば、電極アセンブリーの長手方向軸に平行に延在するRF電極12a、12b、12a’、12b’の主表面と、レセプタクルまたは突出セパレーター13’、13’’との間に重なりはない。電極アセンブリーの長手方向軸に平行に延在する電極12a、12b、12a’、12b’の主(平面)表面全体が、レセプタクル付きセパレーター13’の上に張り出している。したがって、電極の長手方向軸に平行に延在するRF電極12a、12b、12a’、12b’の主(平面)表面の表面積の90%より大きい面積は、DC電極14によって誘電体材料からシールドすることができる。
【0097】
ピンセパレーター13に関して上記で論じたように、レセプタクル付きセパレーター13’および突出セパレーター13’’はまた、導電性であり得、そして好ましくは金属であり得る。レセプタクル付きセパレーター13’および突出セパレーター13’’は、誘電体材料11の表面に沿って離間しており、好ましくは等間隔で離間している。レセプタクル付きセパレーター13’および突出セパレーター13’’は、典型的には、銅またはRF電極12a、12b、12a’、12b’と同じ材料で形成され得る。レセプタクル付きセパレーター13’および突出セパレーター13’’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の表面に永久的に取り付けられていなくてもよい。例えば、レセプタクル付きセパレーター13’の場合、RF電極12a、12b、12a’、12b’の突起部は、レセプタクル13d内に取り外し可能に受けられてもよい。突出セパレーター13’’については、突出部13bは、開口部12d内に取り外し可能に受容され得る。
【0098】
図5~10に示される第1の実施形態の電極配置10を含む電極アセンブリー1の使用の説明は、図15および16に示される第2の実施形態の電極配置を有する電極アセンブリーに等しく当てはまる。
【0099】
ギャップがRF電極と誘電体材料の間に画定され、RF電極を切断し、一方、RF電極は、RF電極を再形成するように誘電体材料に結合されるように、離間した複数のセパレーターを使用してRF電極を誘電体材料に機械的に結合することを含む、電極アセンブリー1の製造と組み立ては、図5~10および図15および16に示される両方の実施形態に適用される。
【0100】
(実験結果)
ここでは実験2と呼ぶ、図5図10に示す特許請求される本発明の電極アセンブリー100を有するHCD(高エネルギー衝突解離)セルでの実験1と同じ多価ユビキチンイオンの分離した電荷状態(+11)を含む、実験の結果が、図11~14に提供されている。実験1と同様に、分離およびトラップされたユビキチンイオンは、HCDセルからCトラップに転送され、CトラップからOrbitrap質量分析器に注入されて質量分析される。HCDセルは、CトラップがHCDセルの上流になるようにCトラップに隣接して配置された。多価ユビキチンイオンの電荷状態(+11)は、500ミリ秒のトラップ時間でHCDセルにトラップされた。時間0:00(つまり、実験の開始)で、HCDセルのRF電極12a、12b、12a’、12b’に高いRF電圧が印加され(約1,250Vpp)、隣接するCトラップのRF電極に約3,000Vppを印加した。RF電極12a、12b、12a’、12b’への最大RF電圧の印加は、2時間30分の間維持された。実験1と実験2の主な違いは、実験1ではHCDセルが図1の電極アセンブリー1を使用し、実験2ではHCDセルが図5~10の電極アセンブリー100を使用したことである。さらなる違いは、実験2では最大RF電圧がHCDセルに2時間30分間印加され、実験1では最大RF電圧が1時間12分間だけ印加されたことである。実験の残りの条件は実質的に同じであった。したがって、図11および13の電荷減少データは、図2のデータと直接比較できる。また、図14(a)および(b)の質量スペクトルは、図3(a)および(b)の質量スペクトルと直接比較できる。
【0101】
図11は、実験2の時間に対するHCDセルの電荷状態ごとのイオン電流のグラフである。HCDセルの電荷状態ごとのイオン電流は、500ミリ秒間トラップされた後にHCDセルからイオンが抽出されたときの、特定の電荷状態のユビキチンイオンの質量電流である。図11に示すように、抽出イオン電流は、実験の過程で変化する。これはおそらくイオン源の状態によるものである。この変動を考慮して、図12のグラフが提供された。図12は、時間に対する抽出イオン電流のグラフであり、図11のグラフからの抽出イオン電流は、各時点で電荷状態(+11)を有するイオンの抽出イオン電流によって正規化されている。したがって、データ上の総イオン強度の変化の影響は取り除かれた。図12からわかるように、電荷状態(+11)を有するイオンの強度は常に100%の強度である。第2に高い強度を持つイオンは、電荷状態(+10)のイオンである。電荷状態(+10)のイオンは、約10%の安定した強度を持っている。したがって、最大RF電圧が2時間30分というより長い時間にわたってHCDセルに印加されたが、電荷減少は安定し、約10%にすぎない。これは、実験1の100%を超える電荷減少と比較して大幅に削減される。
【0102】
図11および12のデータはさらに処理されて、図13に示すグラフが作成された。図13は、時間に対する電荷減少のグラフである。上述のように、電荷減少は、分離した電荷状態(+11)の抽出イオン電流の合計に対する、分離した電荷状態(+11)の抽出イオン電流の合計を除く、全てのピークの抽出イオン電流の合計の比によって定義される。図13は、実験開始時の電荷減少が平均で約8%から始まり、最初の1時間で約12%に達することを示している。残りの1時間24分の間、電荷減少のレベルは12%のままである。したがって、特許請求される本発明の電極配置10、10’を有するHCDセルを用いて実験が行われるとき、電荷減少は大幅に減少し、その減少したレベルで安定する。
【0103】
図14(a)は、実験2(時間0:00)の開始時に取得された質量スペクトルである。図14(a)に示すように、時刻0:00で分離した電荷状態(+11)を有する同位体の相対存在量は100%で、他の各同位体の相対存在量は5%未満である。図14(b)は、実験2の時間2:30(2時間30分)に取得された質量スペクトルである。したがって、図14(b)の質量スペクトルは、最大RF電圧が2時間30分間印加されたときに取得された。図14(a)と14(b)を比較すると、実験期間中、分離した電荷状態(+11)を有する同位体の相対存在量は変化していないことがわかる。実際、最大RF電圧が2時間30分間印加されているにもかかわらず、図14(a)と図14(b)の質量スペクトルは同一に見える。したがって、図5~10に示すとおり、特許請求される本発明の電極配置10、10’を有する電極アセンブリー100を使用するHCDセルの動作中に、分離された同位体(+11)の電荷減少はなかったことがわかる。
【0104】
特許請求される本発明の有利な電極配置10、10’に加えて、パナソニック1755Mの代わりに、PCBを形成する誘電体材料11としてメグトロン6を使用することにより、さらなる改善を提供することができる。既知の電極配置では、PCBを形成する誘電体材料は、通常、パナソニック1755Mを含む。特許請求される本発明において、誘電体材料11は、好ましくはメグトロン6である。メグトロン6を使用すると、誘電損失がさらに低減される。実際、メグトロン6の誘電正接Dfは0.0015~0.0020であるが、パナソニック1755Mの誘電正接Dfは0.014である。
【0105】
図11~14は、HCDセルにおける特許請求された電極配置10、10’およびアセンブリー100の使用に関するが、本発明の電極配置10、10’の利点は、他の反応セル、特に衝突セル、イオンガイド、イオントラップ、イオンフィルター、イオン分析器、または、誘電体材料に接続された平面RF電極を使用してRF多重極を生成する他のデバイスに等しく適用される。
【0106】
図5図10に関連して上述した実施形態は、例示のみを目的としており、本発明はそのように限定されないことが理解されよう。当業者は、特許請求の範囲に含まれるさまざまな修正および代替案を想定するであろう。
【0107】
本発明のさらなる実施形態は、本明細書で説明される異なる実施形態のいくつかの特徴を組み合わせることができる。例えば、異なる実施形態は、1つの電極配置において、ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’のいずれか1つまたは組み合わせを使用することができる。
【0108】
図5~10のRF電極12a、12b、12a’、12b’(および図15および16のRF電極12a、12b、12a’、12b’の本体)は、真っ直ぐで細長いが、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、代わりに円形または湾曲し得る。一部の実施形態では各電極は、平面の誘電体表面の平面にあり、いくつかの他の実施形態では、各RF電極12a、21b、12a’、12b’は、平面の誘電体表面に垂直な平面に配置され得る。RF電極12a、12b、12a’、12b’は、曲線または他の形状に曲げることができる。例えば、RF電極12a、12b、12a’、12b’は、イオンファンネルを形成するために使用される環状RF電極として実装され得る。この配置では、セパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’のいずれか1つであり得る)は、誘電体材料11を環状RF電極の外周に接続し得る。例えば、環状RF電極は、環状RF電極の外周から誘電体材料11に向かって径方向に延在する突起部12cを含むことができる。突起部12cは、レセプタクル付きセパレーター13’の対応するレセプタクル13e内に受容され得る。レセプタクル13eは、誘電体材料11の主平面表面上に配置され得る。
【0109】
第1および第2の副側壁101、102は、曲がっていても湾曲し得る。
【0110】
第1および第2の電極配置10、10’との間の空間のサイズは、変化し得る。例えば、誘電体材料11間の距離を変更することにより、または、各ピンセパレーター13のヘッド部分13aの厚さを変えることにより、または、各レセプタクル付きセパレーター13’の底壁13fの厚さを変えることにより、または、各突出セパレーター13’’の高さを変えることにより、変化し得る。
【0111】
DC電極14は、誘電体材料11の表面上でエッチングされるものとして説明されているが、代わりに他の方法によって形成され得る。例えば、DC電極14は、スタンピング、押し出し、レーザー切断または他の適切な組み立て方法によって形成され得る。
【0112】
RF電極12a、12b、12a’、12b’は、機械加工、スタンピング、レーザー切断、押し出し、エッチングなどによって形成され得る。
【0113】
図5~10、15、16は、四重極を形成するRF電極12a、12b、12a’、12b’を示しているが、六重極、八重極、十二重極などの高次多極も同じ方法で使用できる。
【0114】
図5~10に示される実施形態は4つのピンセパレーター13を有し、図15および16に示される実施形態は各RF電極12a、12b、12a’、12b’に対して4つのレセプタクル付きセパレーター13’および2つの突出セパレーター13’’を有する。本発明は、各RF電極12a、12b、12a’、12b’に対して、より少ないまたはより多い数のセパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)で使用することができる。好ましくは、各RF電極12a、12b、12a’、12b’のセパレーター13の数は、8以下であり、例えば、2、3、5、6、または8であり得る。さらに、(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’であり得る)セパレーター13の数を決定するときは、RF電極12a、12b、12a’、12b’の取り付けの安定性を考慮する必要がある。
【0115】
図5~10、15および16のセパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の長さに沿って優先的に等間隔に配置されているが、セパレーター13は、等間隔に配置されなくてもよい。セパレーター13、13’、13’’は、RF電圧がRF電極12a、12b、12a’および12b’に等しく供給されるように優先的に配置される。
【0116】
セパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)は、RF電極12a、12b、12a’、12b’に少なくとも電気的に接続される。セパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)は、RF電極12a、12b、12a’、12b’に恒久的に接続され、誘電体材料11の受け部11a内に受容され、誘電体材料11上の導電性パッドにはんだ付けされるものとして、記載されている。あるいは、セパレーター13、13’、13’’は、誘電体材料11の受け部11a内に取り外し可能に受容され得る。代替の実施形態では、セパレーター13、13’、13’’は、誘電体材料11に永久的に接続され、RF電極12a、12b、12a’、12b’の受け部内に受容され、RF電極12a、12b、12a’、12b’にはんだ付けされ得る。または、セパレーター13、13’、13’’は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の受け部内に取り外し可能に受容され得る。代替の実施形態では、セパレーター13、13’、13’’は、誘電体材料11およびRF電極12a、12b、12a’、12b’の両方に取り外し可能に接続され得る。
【0117】
図5~10、15および16において、各セパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)は、誘電体材料の厚さ11内の貫通孔11aを通って延在する突出部13bを有する。あるいは、各セパレーター13、13’、13’’は、誘電体材料11の開口部内に受容され得る。開口部は、誘電体材料11の厚さを部分的に貫通して延在し得る。例えば、セパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)は、誘電体材料11の内側表面(それぞれのRF電極12a、12b、12a’、12b’に近接し、対向する誘電体材料11の平面表面)の凹部内に受容され得る。図5~10および15は、RF電極12a、12b、12a’、12b’が誘電体材料11に結合されるとき、突出部13bが誘電体材料11の外側主表面を越えて延在することを示す。代替の実施形態では、セパレーター13、13’、13’’の突出部13b(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)は、RF電極12a、12b、12a’、12b’が誘電体材料11に結合されるとき、誘電体材料11と面一であり得る。
【0118】
図5図10では、DC電極14はセグメント化されているように示されている。ただし、DC電極14は、セグメント化されていなくてもよい。
【0119】
図5~10は、単一のセグメント化されたDC電極14が各誘電体材料11上に設けられることを説明している。あるいは、複数のDC電極14が各誘電体材料11上に設けられてもよい。そうである場合、複数のDC電極14は、抵抗分割器を介してそれらに印加される電圧勾配を有し得る。
【0120】
図5図10のピンセパレーター13は、ディスク形状のヘッド部分13aおよび円筒形の突出部13bを有するものとして説明されている。しかしながら、セパレーター13は、任意の他の適切な形状であり得る。例えば、ヘッド部分13aおよび/または突出部13bは、正方形または三角形の断面を有することができる。また、ヘッド部分13aは平面でなくてもよい。
【0121】
図5および8に示されるように、各ヘッド部分13aの直径は、それぞれのRF電極12a、12b、12a’、12b’の幅と同様である。通常、ヘッド部分13aの中心は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の中心長手方向軸に沿って直接配置される。あるいは、各ヘッド部分13aの直径は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の幅よりも小さくても大きくてもよい。実際、ヘッド部分13aがRF電極12a、12b、12a’、12b’の幅よりも小さい直径を有する場合、ヘッド部分13aの中心は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の中心長手方向軸に沿って配置されてもされなくてもよい。例えば、ヘッド部分13aの中心は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の中心長手方向軸のいずれかの側に配置され得る。
【0122】
図5~10に示される実施形態の場合、ピンセパレーター13は、ヘッド部分13aをRF電極12a、12b、12a’、12b’に溶接することによってRF電極12a、12b、12a’、12b’に接続されると説明されている。しかしながら、他の取り付け手段が考えられる。例えば、ピンセパレーター13は、RF電極12a、12b、12a’、12b’にはんだ付けされ得る。あるいは、ピンセパレーター13は、RF電極12a、12b、12a’、12b’の開口部/凹部に圧入され得る。
【0123】
図5~10、15、16に示す実施形態の場合、セパレーター13、13’、13’’の突出部13b(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)および/または貫通孔11aは、貫通孔11a内に突出部13bを維持するためにねじ切りされ得る。また、セパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)の突出部13bを貫通孔11aに圧入して突出部13bを貫通孔11a内に保持し得る。
【0124】
図5~10および図15および16に示される実施形態の両方について、ピンセパレーター13およびレセプタクル付きセパレーターの各突出部13bは、それぞれのヘッド部分13aの平面に対して直交/垂直に延在するものとして説明される。ただし、突出部13bは、ヘッド部分13aに対して斜めに延在し得る。
【0125】
セパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’’、または突出セパレーター13’’)は、スペーサー/スタンドオフであり得る。
【0126】
図5~10および図15および16に示す実施形態の場合セパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)は、セパレーターが、RF電極12a、12b、12a’、12b’によって生成されるRFフィールドの存在下で加熱されないように、誘電損失が小さい(低い誘電正接Df=tanδ)材料で形成することが好ましい。したがって、これにより、検体分子へのガス放出や望ましくない変化が回避される。セパレーター13、13’、13’’(ピンセパレーター13、レセプタクル付きセパレーター13’、または突出セパレーター13’’)は、好ましくは、電気的感受性が低い(したがって誘電損失が低い)材料で形成される。したがって、セパレーター13は、好ましくは導電性であり、より好ましくは金属製である。しかしながら、セパレーター13はまた、プラスチック、セラミック、石英、および低い誘電損失(低い誘電正接Df)を有する他の誘電体材料で形成され得る。好ましくは、セパレーター13は、δ<0.001、より好ましくはδ<0.0005、最も好ましくはδ<0.0003の誘電正接Dfを有する材料から形成される。例えば、石英の誘電正接は0.0002で、セパレーター13、13’、13’’の推奨材料である。導電性接続は、例えば、導電性コーティング、はんだ接続、有線接続、導電性接着物などのセパレーター13のそのような絶縁材料を介して、RF電源とRF電極12a、12b、12a’、12b’との間に設けられる。低誘電損失を有する材料を使用してセパレーターを形成することは、高RF電圧がRF電極12a、12b、12a’、12b’に印加される実施形態にとって特に好ましい。
図1
図1a
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5
図5a
図6
図7
図8
図9
図10
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14(a)】
図14(b)】
図15
図16