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特許7079297ディレードコーカーユニットにおける廃プラスチックの同時変換のためのプロセス及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ディレードコーカーユニットにおける廃プラスチックの同時変換のためのプロセス及び装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 9/02 20060101AFI20220525BHJP
   C10G 1/10 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
C10G9/02
C10G1/10
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020139364
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2021050325
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】201921038366
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515012077
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】プラディープ, ポノリー ラマチャンドラン
(72)【発明者】
【氏名】プラサド, テラパリ ハリ ヴェンカタ デヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ディグジット, シヴァム アショック
(72)【発明者】
【氏名】モンダル, プランティック
(72)【発明者】
【氏名】コティヤス, ヴィマル カッカラッカル
(72)【発明者】
【氏名】ダス, サティエン クマール
(72)【発明者】
【氏名】チョプラ, アンジュ
(72)【発明者】
【氏名】サウ, マドゥスダン
(72)【発明者】
【氏名】カプール, ガープリート シン
(72)【発明者】
【氏名】ラマクマール, サンカラ スリ ヴェンカタ
(72)【発明者】
【氏名】シン, サンジーヴ
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0179493(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101230284(CN,A)
【文献】特開2004-010690(JP,A)
【文献】特開平06-080970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 9/02
C10G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックをより軽質の留分生成物に、炭化水素とともに同時変換するためのプロセスであって、
a.フレッシュ炭化水素フィードストックを主分留装置カラムの底部セクションに送り込み、内部リサイクル留分と混合した後に、前記主分留装置カラムから二次炭化水素フィードを引き出すステップであって、前記炭化水素フィードストックのコンラドソン残留炭素分が3wt%~30wt%の範囲にあり、密度が0.95g/cc~1.08g/ccの範囲内にあるステップと、
b.炉内で加熱した後の前記二次炭化水素フィードをディレードコーカードラムに給送するステップと、
c.前記廃プラスチックを供給容器に装填するステップであって、前記廃プラスチックが、重合体成分としてポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びPETを含む金属添加多層プラスチックであり、前記金属添加多層廃プラスチックの金属が、アルミニウム又はカルシウムから選択され、前記廃プラスチックが、前記フレッシュ炭化水素フィードストックの0.01wt%~50wt%の範囲にあるステップと、
d.前記廃プラスチックを前記供給容器から前記ディレードコーカードラムに搬送し、その後、前記二次炭化水素フィード及び前記廃プラスチックの混合物を熱分解し、前記ディレードコーカードラム内部で複合生成物蒸気を取得するステップと、
e.前記複合生成物蒸気を前記主分留装置カラムに送り、蒸気留分とともに、軽質コーカーガス油、重質コーカーガス油及びコークス燃料油を取得するステップと、
f.前記蒸気留分を、燃料ガス、LPG及びナフサに分離するためのガス濃縮(GASCONセクション)及び分離セクションに送るステップであって、前記廃プラスチックをより軽質の留分生成物にするための前記変換が、470℃~520℃の範囲内の温度、及び0.5Kg/cm~5Kg/cmの範囲内の圧力において行われるステップと、
を含み、
前記廃プラスチックの残留金属留分が、ディレードコーキングプロセス中に生成される、前記ディレードコーカードラムに堆積した固体石油コークス内に堆積するプロセス。
【請求項2】
前記廃プラスチック供給容器から前記ディレードコーカードラムへの前記廃プラスチックの搬送が、圧気輸送、押し出し若しくは溶融注入又はその組み合わせから選択された手段によって実行される請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
廃プラスチックの物理的形態が、顆粒、粉末、破砕塊、スラリー、溶解物及びその組み合わせからなる群から選択される請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記炭化水素フィードストックが、原油、減圧残油、常圧残油、脱歴ピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイド重油、残油、重質含ろう油、ろう下油、スロップ油及びその混合物から選択される請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(ii)の前記二次フィードが、470℃~520℃の範囲内の温度に加熱される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
廃プラスチックを軽質留分生成物に、炭化水素とともに同時変換するための装置であって、
(a)主分留装置カラムであって、フレッシュ炭化水素フィードを内部リサイクル留分とともに送り、二次フィードを取得する主分留装置カラムと、
(b)前記主分留装置カラムに接続される炉であって、前記二次フィードを加熱し、高温フィードを取得する炉と、
(c)廃プラスチック供給容器であって、流動廃プラスチック材料をディレードコーカードラムに供給する廃プラスチック供給容器と、
(d)前記炉及び前記廃プラスチック供給容器に接続される前記ディレードコーカードラムであって、
前記炉から前記高温フィードを受け取り、
前記プラスチック供給容器から前記廃プラスチック材料を受け取り、
前記高温フィード及び前記廃プラスチック材料の混合物を熱分解し、複合生成物蒸気を取得し、
前記廃プラスチックが、重合体成分としてポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びPETを含む金属添加多層廃プラスチックであり、前記金属添加多層廃プラスチックの金属が、アルミニウム又はカルシウムから選択され、前記廃プラスチックが、前記フレッシュ炭化水素フィードストックの0.01wt%~50wt%の範囲にあり、
前記複合生成物蒸気を前記主分留装置カラムに送り、蒸気留分とともに、軽質コーカーガス油、重質コーカーガス油及びコーカー燃料油を取得するディレードコーカードラムと、
(e)前記主分留装置カラムに接続されるガス濃縮及び分離セクションであって、前記蒸気留分を燃料ガス、LPG及びナフサに分離するガス濃縮及び分離セクションと、
を備え、
前記廃プラスチック供給容器が、前記廃プラスチックが前記ディレードコーカードラムまで澱みなく流動できるように、前記ディレードコーカードラムよりも高い高さに位置し、
前記廃プラスチックが、前記廃プラスチック供給容器に対して低い高さに位置する別のアンロード容器から前記廃プラスチック供給容器の中に圧気輸送を通して、又はコンベアベルトを通して搬送され、
前記廃プラスチック供給容器からの前記廃プラスチックが、圧気輸送、スクリューフィーダ、溶融注入又はその組み合わせによって前記ディレードコーカードラムに搬送される装置。
【請求項7】
前記廃プラスチック供給容器が、攪拌用ガス注入及びパージングのための設備を有する請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記廃プラスチック供給容器が、任意選択で、廃プラスチックの加熱及び溶融のための設備を有する請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記廃プラスチック供給容器からの前記廃プラスチック供給速度が、回転式エアロック弁又はポンプによって制御される請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記廃プラスチック供給容器が、前記コークスドラムよりも高く、圧力制御弁によって制御され、0.1Kg/cmg~1Kg/cmgの範囲内にある圧力に保持される請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製所において利用されるディレードコーカーユニットにおいて石油残留物フィードストックとともに廃プラスチックを変換するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
廃ブラスチック処分の問題は、世界中で、そして特にインドにおいて深刻な懸念になっており、インドでは、毎年、600万トンもの膨大な廃プラスチックが生成されている。埋立地のような処分方法の使用は、地下水汚染、土地利用パターンなどの問題に関して難点があり、プラスチックの焼却は大気汚染を引き起こし、動植物の健康を阻害する。具体的には、金属含有ポリエチレン及びポリプロピレン多層プラスチックフィルムに関して実効的なリサイクル又は処理の選択肢は存在しない。公共の場の清潔感及び廃棄物の分離に関して公衆の意識が高くなっており、今では、廃棄物の残部から廃プラスチックを収集し、分離することが次第に実現可能になりつつある。また、廃プラスチックの熱分解の液体及び気体生成物が、ガソリン、ディーゼルなどの最終生成物の完全な仕様を満たさず、更なる処理を必要とすることもわかっている。原油から生成された他の炭化水素生成物とともに、プラスチック変換の生成物を生成物分離及び処理ユニットに送り込むことができるので、この態様によれば、石油精製所は廃プラスチック変換のための理想的な場所になる。本発明を使用するとき、収集された廃プラスチックは、ディレードコーカーユニット内で残留炭化水素とともに同時処理することができ、有用な、より軽質の生成物に変換することができる。
【0003】
PCT出願の特許文献1は、ディレードコーカープロセスにおいて廃プラスチックを処分するためのプロセスを記述する。このプロセスでは、廃プラスチックが、容器内でフルフラールのような高芳香族溶剤内に溶解され、プラスチック溶液がフィードストックと混合され、通常の処理経路においてディレードコーカードラム内で処理される。
【0004】
特許文献2は、水素処理経路を通して廃プラスチックを変換するためのプロセスを記述する。廃プラスチックが重質原油及び減圧残油と混合され、結果として生じた混合物が水素処理され、より軽質の炭化水素生成物が生成される。
【0005】
特許文献3は、廃プラスチック材料がすり潰されてスラリー状態になり、分留装置、炉及びコークスドラムを通して、ディレードコーカーユニットの通常のプロセス方式において処理されているフィードストックと混合されるプロセスを記述する。
【0006】
従来技術の方式では、廃プラスチック材料は、試薬又は溶融による微粉化又は溶解にかけられ、炉に通され、その後、コークスドラムに入れられることがわかっている。これらの方式はある特定の種類のプラスチックにおいて有利な場合があるが、これらの方式は、金属添加プラスチックのような全てのタイプのプラスチックに適しているとは限らない場合がある。様々な融点及び金属含有量からなる異なるタイプのプラスチックを含む、廃プラスチックの混合物の場合、ディレードコーカー煙管内でコークス形成が高まるだけでなく、成分の混合が不均一になる可能性がある。金属成分がマトリックスの残部から分離し、ディレードコーカー炉の管壁に堆積する場合があるか、又は煙管内部のコークス形成のための活性部位としての役割を果たす場合がある。更に、重合体が溶融され、フィードストックと混合される方式では、炭化水素フィードストックに比べて、重合体溶解物の粘度が高く、密度が異なるという問題が生じる可能性がある。炭化水素フィードストック及び重合体溶解物のレオロジー特性のこのばらつきが、ディレードコーカーの煙管内の2つのフローパターンのばらつきを引き起こす可能性があり、煙管の閉塞(choking)問題及びコーキング問題を引き起こす可能性がある。それゆえ、従来技術の懸念に対処するプロセス及び装置を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第95/14069号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2018/0201847号明細書
【文献】米国特許第4118281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、ディレードコーカーユニットにおいて、価値が低いプラスチック廃棄物を、価値が高いより軽質の留分生成物に変換する熱分解プロセスを提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、有価なより軽質の留分生成物への熱分解を利用して、石油残留物とともに廃プラスチックを同時変換するためのプロセスを提供することである。
【0010】
本発明の更なる目的は、ディレードコーカーユニットにおいて廃プラスチックを処理する独自のハードウェアシステム/装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は廃プラスチックをより軽質の留分生成物に熱分解するための方法を提供する。
1.1つの特徴では、本発明は、廃プラスチックをより軽質の留分生成物に変換するためのプロセスを提供し、このプロセスは、
i.フレッシュ炭化水素フィードストックを主分留装置カラムの底部セクションに送り込み、内部リサイクル留分と混合した後に、カラムから二次炭化水素フィードを引き出すことと、
ii.炉内で加熱した後の二次炭化水素フィードをディレードコーカードラムに給送することと、
iii.廃プラスチックを供給容器に装填することと、
iv.廃プラスチックを供給容器からディレードコーカードラムまで搬送し、その後、二次フィード及び廃プラスチックの混合物を熱分解し、コークスドラム内で複合生成物蒸気を取得することと、
v.複合生成物蒸気を主分留装置カラムに送り、蒸気留分とともに、軽質コーカーガス油、重質コーカーガス油及びコークス燃料油を取得することと、
vi.蒸気留分を、燃料ガス、LPG及びナフサに分離するためのガス濃縮(GASCONセクション)及び分離セクションに送ることとを含む。
【0012】
本発明の別の特徴では、廃プラスチックは、スクリューコンベアなどのコンベアを使用することによって、プラスチックフィーダ容器からコークスドラムに供給される。
【0013】
本発明の別の好ましい特徴では、廃プラスチック材料は、熱を加えることによって溶融状態でプラスチックフィーダ容器内に保持され、液体状態でコークスドラムに供給される。
【0014】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器からコークスドラムへの廃プラスチック輸送は、圧気輸送、押し出し若しくは溶融注入又はその組み合わせから選択された手段によって実行される。
【0015】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチックは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、金属添加多層プラスチックを含むPET又はその組み合わせからなるグループから選択される。
【0016】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチックの物理的形態は、顆粒、粉末、破砕塊(crushed chunk)、スラリー、溶解物又はその組み合わせからなるグループから選択される。
【0017】
本発明の別の特徴では、供給される炭化水素フィードストックに対する廃プラスチックのパーセンテージは、0.01wt%~50wt%の範囲にあり、好ましくは、0.5wt%~10wt%である。
【0018】
本発明の1つの特徴では、炭化水素フィードストックは、原油、減圧残油、常圧残油、脱歴ピッチ(deasphalted pitch)、シェール油、コールタール、クラリファイド重油、残油、重質含ろう油(heavy waxy distillate)、ろう下油、スロップ油又はその混合物から選択される。
【0019】
請求項1において特許請求されるようなプロセスでは、炭化水素フィードストックのコンラドソン残留炭素分は3wt%~30wt%の範囲にあり、密度は0.95g/cc~1.08g/ccの範囲内にある。
【0020】
本発明の別の特徴では、プロセスの熱分解セクションはより過酷な条件下で動作し、望ましい動作温度は470℃~520℃の範囲にあり、好ましくは480℃~500℃であり、望ましい動作圧力は0.5Kg/cm(g)~5Kg/cm(g)の範囲にあり、好ましくは0.6Kg/cm(g)~3Kg/cm(g)である。
【0021】
本発明の更に別の特徴では、ステップ(ii)における二次フィードは、470℃~520℃の範囲内の温度に加熱される。
【0022】
本発明の更なる特徴では、コークスドラムのコーキング及びデコーキングのサイクル時間は、10時間よりも長い。
【0023】
本発明の別の特徴では、コークスドラムからの生成物蒸気は、軽質コーカーガス油、重質コーカーガス油及びコーカー燃料油などの異なる生成物留分に分離するための主分留装置カラムに送られる。
【0024】
本発明の更なる特徴では、蒸気留分は、燃料ガス、LPG及びナフサに分離するためのガス濃縮及び分離セクションに送られる。
【0025】
本発明の別の特徴では、本発明は廃プラスチックを軽質留分生成物に変換するためのシステムを備え、このシステムは、ディレードコーキングプロセス内のコークスドラムと、コークスドラムに接続される分留装置カラムと、1つ又は複数の追加セクション/供給容器とを備える。
【0026】
また、本発明は、廃プラスチックを軽質留分生成物に変換するための装置を提供し、このシステムは、
(a)主分留装置カラムであって、
・フレッシュ炭化水素フィードを内部リサイクル留分とともに送り、二次フィードを取得する、主分留装置カラムと、
(b)主分留装置カラムに接続される炉であって、
・二次フィードを加熱し、高温フィードを取得する炉と、
(c)廃プラスチック供給容器であって、
・流動廃プラスチック材料をディレードコーカードラムに供給する廃プラスチック供給容器と、
(d)炉及び廃プラスチック供給容器に接続されるディレードコーカードラムであって、
・炉から高温フィードを受け取り、
・プラスチック供給容器から廃プラスチック材料を受け取り、
・高温フィード及び廃プラスチック材料の混合物を熱分解(thermal decomposition/cracking)し、複合生成物蒸気を取得し、
・複合生成物蒸気を主分留装置カラムに送り、蒸気留分とともに、軽質コーカーガス油、重質コーカーガス油及びコーカー燃料油を取得するディレードコーカードラムと、
(e)主分留装置カラムに接続されるガス濃縮及び分離セクションであって、
・蒸気留分を燃料ガス、LPG及びナフサに分離するガス濃縮及び分離セクションとを備える。
【0027】
本発明の1つの特徴では、廃プラスチック供給容器は、プラスチックがコークスドラムまで澱みなく流動できるように、コークスドラムよりも高い高さに位置する。
【0028】
本発明の別の特徴では、廃プラスチックは、廃プラスチック供給容器に対して低い高さに位置する別のアンロード容器(unloading vessel)から廃プラスチック供給容器の中に圧気輸送を通して、又はコンベアベルトを通して搬送される。
【0029】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器からの廃プラスチックは、圧気輸送、スクリューフィーダ、溶融注入又はその組み合わせによってコークスドラムに搬送される。
【0030】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器は、攪拌用ガス注入及びパージングのための設備を有する。
【0031】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器は、任意選択で、廃プラスチックの加熱及び溶融のための設備を有する。
【0032】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器からの廃プラスチックの供給速度は、回転式エアロック弁又はポンプによって制御される。
【0033】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器は、コークスドラムよりも高く、圧力制御弁によって制御され、0.1Kg/cmg~1Kg/cmgの範囲内にある圧力に保持される。
【0034】
また、本発明は、廃プラスチックを軽質留分生成物に変換するための装置を提供し、このシステムは、
(a)主分留装置カラム(2、41、101、201)であって、
・フレッシュ炭化水素フィード(1、40、100、200)を内部リサイクル留分とともに送り、二次フィード(3、42、102、202)を取得する主分留装置カラムと、
(b)主分留装置カラムに接続される炉(4、43、103、203)であって、
・二次フィードを加熱し、高温フィード(5、44、104、204)を取得する炉と、
(c)廃プラスチック供給容器(13、22、52、81、108、207)であって、
・流動廃プラスチック材料をディレードコーカードラム(9、10、48、49、90、105、106、205、206)に供給する廃プラスチック供給容器と、
(d)炉(4、43、103、203)及び廃プラスチック供給容器(13、22、52、81、108、207)に接続されるディレードコーカードラム(9、10、48、49、90、105、106、205、206)であって、
・炉から高温フィードを受け取り、
・プラスチック供給容器から廃プラスチック材料を受け取り、
・高温フィード及び廃プラスチック材料の混合物を熱分解し、複合生成物蒸気(21、63、92、107、214)を取得し、
・複合生成物蒸気を主分留装置カラムに送り、蒸気留分(35、67、113、215)とともに、軽質コーカーガス油(31、66、110、216)、重質コーカーガス油(32、65、111、217)及びコーカー燃料油(33、64、112、218)を取得するディレードコーカードラムと、
(e)主分留装置カラムに接続されるガス濃縮及び分離セクションであって、
・蒸気留分を燃料ガス、LPG及びナフサに分離するガス濃縮及び分離セクションとを備える。
【0035】
本発明の1つの特徴では、廃プラスチック供給容器(13、22、52、81、108、207)は、プラスチックがコークスドラムまで澱みなく流動できるようにするために、コークスドラムよりも高い高さに位置する。
【0036】
本発明の別の特徴では、廃プラスチックは、廃プラスチック供給容器に対して低い高さに位置する別のアンロード容器(71)から廃プラスチック供給容器(13、22、52、81、108、207)の中に圧気輸送を通して、又はコンベアベルトを通して搬送される。
【0037】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器(13、22、52、81、108、207)からの廃プラスチックは、圧気輸送、スクリューフィーダ、溶融注入又はその組み合わせによってコークスドラムに搬送される。
【0038】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器(13、22、52、81)は、攪拌用ガス注入及びパージングのための設備を有する。
【0039】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器(108、207)は、任意選択で、廃プラスチックの加熱及び溶融のための設備を有する。
【0040】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器(13、22、52、81)からの廃プラスチックの供給速度は、回転式エアロック弁又はポンプによって制御される。
【0041】
本発明の更に別の特徴では、廃プラスチック供給容器(13、22、52、81、108、207)は、コークスドラムよりも高く、圧力制御弁によって制御され、0.1Kg/cmg~1Kg/cmgの範囲内にある圧力に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の1つのプロセス方式を示す図である。
図2】本発明の第2のプロセス方式を示す図である。
図3】本発明の別の特徴に係るディレードコーカーユニット内の廃プラスチックの同時変換のためのプロセスを示す図である。
図4】本発明の別の特徴に係るディレードコーカーユニット内の廃プラスチックの同時変換のためのプロセスを示す図である。
図5】本発明の別の特徴に係るディレードコーカーユニット内の廃プラスチックの同時変換のためのプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
したがって、本発明は、炭化水素フィードストックとともに、ディレードコーカーユニット内で価値が低いプラスチック廃棄物を熱分解することによって、価値が低いプラスチック廃棄物を、固体石油コークスとともに、燃料油、LPG、ナフサ、軽質コーカーガス油(LCGO)、重質コーカーガス油(HCGO)及びコーカー燃料油(CFO)などの価値が高いより軽質の留分生成物に変換するプロセスに関する。
【0044】
詳細には、本発明のプロセスは、加熱されたフィードストック内に金属、粒子などの不純物が存在する場合に、ファウリングを受けやすい、炉などの他の重要なハードウェアの動作に影響を与えることなく、廃プラスチックをコークスドラムに直接送り込む独自のプロセスハードウェア方式を利用する。破砕された廃プラスチック材料が流動フィーダ容器に装填され、ドラム加熱ステップが完了した後に、圧気搬送機構を通して、空気圧によってコークスドラムに供給される。コークスドラム内部で、廃プラスチック材料は、コークスドラムの底部から供給されつつある高温の石油残留物流とともに同時変換を受ける。
【0045】
熱同時変換中に生成され、コークスドラム内部で蒸気状態にあるより軽質の留分が、炭化水素フィードストックの熱分解から生成された生成物蒸気と混合され、複合生成物蒸気が、その後、軽質コークスガス油、重質コークスガス油及びコークス燃料油などの所望の液体生成物留分に分離するために主分留装置カラムに送られる。分留装置カラム頂部セクションからのオフガスは、ナフサ、燃料ガス及びLPGの分離のためのGASCONセクションに送られる。廃プラスチックの変換中に生成される残留コークス材料が、炭化水素フィードストックの熱分解に起因してコークスドラム内部に形成される固体石油コークスとともに堆積する。廃プラスチック内の金属は、大部分の場合に有機金属の形をとらないので、コークスドラム内部の固体石油コークス内に優先的に堆積する。
【0046】
フィードストック
プロセスにおいて使用されることになる液体炭化水素フィードストックは、抜頭原油、減圧残油、常圧残油、脱歴ピッチ、シェール油、コールタール、クラリファイド重油、残油、重質含ろう油、ろう下油、スロップ油又はそのような炭化水素の混合物などの重質炭化水素フィードストックから選択される。フィードストックのコンラドソン残留炭素分は3wt%よりも高く、最小密度は0.95g/ccである。
【0047】
廃プラスチック
プラスチックは重合によって形成され、適正量の熱及び圧力又は別の形の力を加えることによって形作ることができる高分子である。プラスチックは、原油の高度に精製された留分を用いて生成される広範な重合体、又は単量体として知られる、原油から取り出される化学物質に関する総称である。重合体は、これらの単量体の反応によって形成され、反応の結果として、数十、数百又は数千の炭素原子からなる鎖長が生成される。重合体の中には酸素を含むものもあり(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、一方、塩素を含むものもある(ポリ塩化ビニル(PVC))。非生分解性に起因して、プラスチック廃棄物は、廃棄物管理の問題の大きな一因となる。
【0048】
プラスチックは、その物理的特性に応じて、熱可塑性プラスチック材料又は熱硬化性プラスチック材料に分類することができる。
・熱可塑性材料(再生可能プラスチック):これらのプラスチックは熱及び圧力を加えながら所望の形状に形成することができ、加熱すると固体になる。その例が、ポリエチレン、ポリスチレン及びPVCである。
・サーモスタット(Thermostats)又は熱硬化性材料(非再生可能プラスチック):これらのプラスチックは、一度成形されると、熱を加えても軟化/再成形することはできない。その例が、フェノールホルムアルデヒド及び尿素ホルムアルデヒドである。
本発明のプロセスにおいて同時転換することができる廃プラスチックは、金属添加多層プラスチックを含む、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、PETを含む様々なプラスチックを含む。プロセスにおいて使用されることになるこれらの廃プラスチックは、プラスチックフィーダ容器からコークスドラムに移送できるようにするために、洗浄、乾燥、押し出し成形、ペレット化などからなるステップによって前処理することができる。廃プラスチックは、圧気輸送を可能にするために流動化可能な状態にできるように、選択された大きさ及び形状の仕様で準備することができる。
【0049】
本発明の1つの特徴では、廃プラスチックは、スクリューコンベアなどのコンベアを使用することによって、プラスチックフィーダ容器からコークスドラムに供給される。
【0050】
本発明の別の特徴では、廃プラスチック材料は、熱を加えることによって溶融状態でプラスチックフィーダ容器内に保持され、液体状態でコークスドラムに供給される。本発明の更に別の特徴では、本発明のプロセスにおいて処理するために使用される廃プラスチックは、粉砕された形又は塊とすることができ、コンベアベルトなどの他の手段を通して輸送することができる。
【0051】
プロセス条件
プロセスの熱分解セクションにおける反応器ドラムはより過酷な条件で動作することができ、所望の動作温度範囲は470℃~520℃、好ましくは480℃~500℃であり、所望の動作圧力範囲は0.5Kg/cm(g)~5Kg/cm(g)、好ましくは0.6Kg/cm(g)~3Kg/cm(g)である。コークスドラムのコーキング及びデコーキングサイクルのサイクル時間は、10時間より長く保持される。廃プラスチック材料は、供給される炭化水素フィードストックに対する廃プラスチックのパーセンテージが0.01wt%~50wt%の範囲、好ましくは0.5wt%~10wt%になるように、コークスドラムに送り込むことができる。
【0052】
プロセス説明
本発明のプロセスが、限定はしないが、図1によって例示される。図1に示されるプロセスでは、精製所からの炭化水素フィード(40)が、主分留装置カラム(41)の底部に入り、内部リサイクル留分と混合され、二次フィード(42)が生成される。二次フィードが、その後、炉(43)において所望の温度まで加熱される。高温フィード(44)が、その後、適切な弁(45、46、47)の動作を通して、いずれも炭化水素給送サイクル内にあるディレードコーカードラム(49、48)に送られる。一方、流動プラスチック供給容器(52)からの廃プラスチック材料が、給送サイクル下で空気圧によってコークスドラムに送られる。高温残留物フィードが、コークスドラム内に供給される廃プラスチック材料と混合され、残留物フィードストック及び廃プラスチック材料に関する熱変換が起こる。プラスチック材料が、より軽い分子に熱分解される。分散器(53)を通して送られる空気(54)などの流動化媒体を供給することによって、供給容器(52)内の廃プラスチックが流動状態に保持される。スタンドパイプ(69、59)を通してのプラスチック材料の流れが制御弁(68、56)によって制御され、制御弁は回転式エアロック弁とすることができる。プラスチック材料がどのドラムに送られることになるかによって、弁(68、69、62、59)が動作する。圧気搬送を支援するために、廃プラスチック用のリフト線(58、61)内に流体輸送媒体(60、57)が与えられる。軽質コーカーガス油(66)、重質コーカーガス油(65)及びコーカー燃料油(64)などの異なる生成物留分に分離するために、コークスドラムからの生成物蒸気(63)が主分留装置カラム(41)に送られる。蒸気留分(67)が、燃料ガス、LPG及びナフサを分離するためのガス濃縮及び分離セクションに送られる。
【0053】
本発明のプロセスの実施形態が、限定はしないが、図2によって例示される。図2に示されるプロセスでは、精製所からの炭化水素フィード(1)が、主分留装置カラム(2)の底部に入り、内部リサイクル留分と混合され、二次フィード(3)が生成される。二次フィードが、その後、炉(4)において所望の温度まで加熱される。高温フィード(5)が、その後、適切な弁(6、7、8)の動作を通して、いずれも炭化水素給送サイクル内にあるディレードコーカードラム(9、10)に送られ、弁は回転式エアロック弁とすることができる。一方、流動プラスチック供給容器(13、22)からの廃プラスチック材料が、給送サイクル下で空気圧によってコークスドラムに送られる。高温残留物フィードが、コークスドラム内に供給される廃プラスチック材料と混合され、残留物フィードストック及び廃プラスチック材料に関する熱変換が起こる。プラスチック材料が、より軽い分子に熱分解される。分散器(14、23)を通して送られる空気(15、24)などの流動化媒体を供給することによって、供給容器(13、22)内の廃プラスチックが流動状態に保持される。スタンドパイプ(16、27)を通してのプラスチック材料の流れが制御弁(17、26)によって制御され、制御弁は回転式エアロック弁とすることができる。プラスチック材料がどのドラムに送られることになるかによって、弁(17、20、26、30)が動作する。圧気搬送を支援するために、廃プラスチック用のリフト線(19、29)内に流体輸送媒体(18、28)が与えられる。軽質コーカーガス油(31)、重質コーカーガス油(32)及びコーカー燃料油(33)などの異なる生成物留分に分離するために、コークスドラムからの生成物蒸気(21)が主分留装置カラム(2)に送られる。蒸気留分(35)が、燃料ガス、LPG及びナフサを分離するためのガス濃縮及び分離セクションに送られる。
【0054】
プラスチック処理ハードウェア及びプロセスを図示する本発明の一実施形態が図3に与えられる。この図に示されるプロセス及びハードウェアセクションでは、ホッパ(70)を通してアンロード容器(71)の中に廃プラスチック顆粒が投入され、アンロード容器内には、ヘッダ(73)を通して攪拌用ガス(72)が供給される。プラスチックは、制御された速度で回転式エアロック弁(74)を通して引き出され、搬送用ガス(75)によって水平搬送線(76)を通して押し出され、その後、搬送用ガスが垂直に移動し(79)、アンロード容器(71)に対して高い高さに位置する供給容器(81)の中にプラスチック顆粒を搬送する。更なるパージング及び輸送のために、搬送用ガス線内に隔離弁(77)及びパージ(78、80)が設けられる。その内部には、ヘッダ(73)を通して攪拌用ガス(72)が供給される。供給容器(81)は、PCV(89)を通して、制御された圧力に保持される。プラスチックは、制御された速度において、回転式エアロック弁(84)を通して供給容器(81)から引き出され、搬送用ガス(85)によって水平搬送線(86)を通して押し出され、プラスチック顆粒がコークスドラム(90)の中に搬送される。搬送線内にパージ流(87)を与えることができ、搬送線内に隔離弁(88)が設けられる。廃プラスチック顆粒が高温液体プール(91)の中に落下し、より軽質の生成物に分解し、生成物蒸気が蒸気線(92)を通って外へ出る。
【0055】
プラスチック処理ハードウェア及びプロセスを図示する本発明の別の実施形態が図4に与えられる。図に示されるプロセス及びハードウェアセクションでは、廃プラスチックが顆粒又は粉砕された形でプラスチック供給容器(108)の中に搬送され、そこから、プラスチックは、加熱されたスクリューコンベア(109、113)の中に搬送され、プラスチック粒子は溶融し、給送サイクル内にあるコークスドラム(105、106)の中に供給される。フレッシュフィード(100)が分留装置カラム(101)の中に供給され、二次フィード(102)が引き出され、炉(103)を経由して送られ、高温フィード(104)が得られる。高温フィードが、その後、いずれも給送サイクル内にあるコークスドラム(105、106)に送られる。給送サイクル内のコークスドラム内部で、炭化水素高温フィード、及びスクリュー搬送を通して供給されたプラスチックが混合し、廃プラスチックが、より軽質の炭化水素分子に熱分解される。生成物蒸気が頂部生成物蒸気線(107)を通って分留装置カラム(101)に送られ、分留装置カラムにおいて、生成物が、安定していないナフサ(113)を伴うオフガス、LCGO(110)、HCGO(111)及びCFO(112)に分離される。コークスドラム内部に堆積したコークスは、メンテナンスサイクルにおいてフランジを開いた後に、高圧ウォータージェットを用いて切削することによって除去される。
【0056】
プラスチック処理ハードウェア及びプロセスを図示する本発明の更に別の実施形態が図5に与えられる。図に示されるプロセス及びハードウェアセクションでは、廃プラスチックがプラスチック供給容器(207)の中に入れられ、容器の中に供給されたプラスチック(209)が加熱源(208)を用いて加熱され、加熱源は、電気、又は過熱蒸気などの高温蒸気のいずれかとすることができる。また、プラスチック供給物(209)は、容易な溶融及び輸送を助長するために希釈剤流と混合することもできる。溶融した液体又はスラリーがポンプ(210)を用いて汲み出され、濾過器(211)を使用することによって濾過され、その後、供給線(219)を通してコークスドラム(205、206)の中に供給される。プラスチック供給線内に隔離弁(212、213)が設けられる。フレッシュフィード(200)が分留装置カラム(201)の中に供給され、二次フィード(202)が引き出され、炉(203)を経由して送られ、高温フィード(204)が得られる。高温フィードが、その後、いずれも給送サイクル内にあるコークスドラム(205、206)に送られる。給送サイクル内のコークスドラム内部で、炭化水素高温フィード、及びスクリュー搬送を通して供給されたプラスチックが混合し、廃プラスチックが、より軽質の炭化水素分子に熱分解される。生成物蒸気が頂部生成物蒸気線(214)を通って分留装置カラム(201)に送られ、分留装置カラムにおいて、生成物が、安定していないナフサ(215)を伴うオフガス、LCGO(216)、HCGO(217)及びCFO(218)に分離される。コークスドラム内部に堆積したコークスは、メンテナンスサイクルにおいてフランジを開いた後に、高圧ウォータージェットを用いて切削することによって除去される。
【実施例
【0057】
本発明のプロセスが、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【0058】
精油所から減圧残油フィードストックが準備され、特性評価が実行された。減圧残油フィードストックの特性が表1に与えられる。
【0059】
【表1】
【0060】
LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、ミックスプラスチック及び減圧残油からなる廃棄物顆粒を用いて、マイクロコーカーユニットにおいて実験が行われた。マイクロコーカー反応器内で廃プラスチック及び減圧残油フィードストックの混合が行われた。実験のためにメンテナンスされた反応セクションの動作条件が表2に与えられる。
【0061】
【表2】
【0062】
プラスチックと減圧残油との同時処理によって異なる実験において得られた生成物収率が表3に与えられる。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に与えられる実験データから、廃プラスチックが同時処理中に気体留分及び液体留分に変換されたことが明らかである。
【0065】
更に、日量1バレルのディレードコーカーパイロットプラントにおいて、表1の減圧残油フィードストックと、表4において与えられる特性を有する多層金属添加廃プラスチック顆粒とを用いて実験が実行された。
【0066】
【表4】
【0067】
実験条件が表5に与えられる。廃プラスチック顆粒が、炉を迂回して、コークスドラムに直接供給され、より軽質の炭化水素生成物に分解する。
【0068】
【表5】
【0069】
ドラムへの廃プラスチックの注入有り及び無しで、2つの実験が実行された。実験結果が表6に与えられる。廃プラスチックからの生成物形成のKg/サイクルから明らかであるように、更に入力された廃プラスチックが異なる生成物留分に変換されたことが明らかである。
【0070】
【表6】
【0071】
コークス特性の比較が表7に与えられる。ディレードコーキング反応中に形成されたコークス内に廃プラスチック内の金属含有量が堆積し、それゆえ、灰分が増加したことが明らかである。液体生成物は、廃プラスチック処理に起因して、いかなる付加的な金属も持っていない。
【0072】
【表7】
【0073】
本発明の利点
以下は上記で開示されたような、従来技術より優れた本発明の技術的利点である。
・廃プラスチックを有価な、より軽質の留分生成物に変換するために、既存のディレードコーカーユニットハードウェア内の追加ハードウェアセクションを用いて、廃プラスチックをコークスドラムの中に直接給送できること。
・コーカー炉を通しての炭化水素フィード処理量を削減することを必要とすることなく、精製業者が廃プラスチックを処理できること。
・精製業者が低コスト廃プラスチックから価値を生み出すことができ、加えて、廃プラスチック処分の環境的な懸念に対処できること。
・金属添加プラスチックを含む、廃プラスチックの処理に起因するディレードコーカー炉内部のコークス堆積物の増加がないのを確実にすること。
・金属添加プラスチックの残留金属留分が、ディレードコーキングプロセスにおいて生成される固体石油コークス内に堆積すること。
図1
図2
図3
図4
図5