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特許7079306ラマン分光法による経皮インビボ測定方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】ラマン分光法による経皮インビボ測定方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220525BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20220525BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
A61B5/00 M
G01N21/65
A61B10/00 E
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020176381
(22)【出願日】2020-10-21
(62)【分割の表示】P 2017512769の分割
【原出願日】2015-08-24
(65)【公開番号】P2021035508
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】1415671.5
(32)【優先日】2014-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511220474
【氏名又は名称】アールエスピー システムズ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バンケ、ステファン オヴェセン
【審査官】樋口 祐介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0091322(US,A1)
【文献】特表2006-520987(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0049809(US,A1)
【文献】特開2011-019785(JP,A)
【文献】特表2013-514520(JP,A)
【文献】特開2002-005835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/01
G01N21/62-21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置に経皮的に受信されたラマン信号のスペクトルであって、皮膚の表面下のラマン信号の発生点での皮膚成分の濃度を表す強度を有することが予期される少なくとも1つの成分を有する前記ラマン信号のスペクトルが、前記濃度を正確に表すかどうかを予測する方法であって、該方法が、
前記濃度が測定されるべき前記皮膚成分以外の皮膚成分に関連するスペクトルの特徴を分析するステップと、
それにより前記ラマン信号が、主に角質層内で発生しており、したがって前記スペクトルが前記濃度を正確に表す可能性が低いか、または主に角質層よりも下で発生しており、したがって前記スペクトルが前記濃度を正確に表す可能性が高いかを判定するステップとを含む、前記方法において、
前記方法が、前記信号を分析して第1の皮膚成分から発生するラマン信号と第2の皮膚成分から発生するラマン信号との相対強度を比較するステップを含み、前記相対強度は、前記ラマン信号が主に角質層内で発生しているか、または主に角質層よりも下で発生しているかを示す、方法。
【請求項2】
前記第1の皮膚成分が、883~884cm-1で前記ラマンスペクトルのピークを生成する、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記第2の皮膚成分が、893~896cm-1で前記ラマンスペクトルのピークを生成する、請求項1に記載された方法。
【請求項4】
前記第1の皮膚成分がコラーゲンI型である、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項5】
前記第2の皮膚成分がDNAであり、リン酸ジエステル結合から個別の信号が生じる、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項6】
前記第1の皮膚成分が、883~884cm-1でラマンスペクトルの第1のピークを生成し、前記第2の皮膚成分が、893~896cm-1でラマンスペクトルの第2のピークを生成する、請求項1に記載された方法。
【請求項7】
前記第1のピークと第2のピークの強度を比較するステップと、
前記第1のピークのサイズを前記第2のピークのサイズで除した値が選択値Rよりも大きい場合、前記信号が前記角質層よりも下から生じていることを示す出力を生成するステップと
をさらに含む、請求項6に記載された方法。
【請求項8】
Rが0.75に選択される、請求項7に記載された方法。
【請求項9】
Rが0.95に選択される、請求項7に記載された方法。
【請求項10】
Rが1.0に選択される、請求項7に記載された方法。
【請求項11】
第1の皮膚成分から発生するラマン信号と第2の皮膚成分から発生するラマン信号との相対強度の比較により、前記ラマン信号が主に角質層よりも下から生じていることが示された場合、前記方法が、
角質層に一般に存在する皮膚成分に関する前記スペクトルの他のピークのサイズが、同様のスペクトルの統計的に有効な試料のそのピークのサイズの平均値よりもy標準偏差を超えて大きいかどうかを判定するステップをさらに含み、大きいとの判定の場合は、前記ラマン信号が結局、主に角質層よりも下から生じていない可能性を示し、
yは0.5~2の範囲の事前選択値である、請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項12】
前記ラマン信号が主に角質層から生じるという結果に応答して、経皮的に作動する前記検出装置を調整するステップをさらに含み、該調整により、深度が角質層内であると判定されないように、前記ラマン信号の発生源の深度を変更する、請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項13】
経皮的に作動する前記検出装置が、焦点距離を有する対物レンズを備え、前記ラマン信号の発生源の深度を変更する方法が、前記対物レンズの交換によって、または前記対物レンズの調整によって、前記対物レンズの焦点距離を変更するステップを含む、請求項12に記載された方法。
【請求項14】
経皮的に作動する前記検出装置が、少なくとも第1の素子および前記第1の素子から間隔を置かれた第2の素子を備える複合対物レンズを備え、前記ラマン信号の発生源の深度を変更する方法が、2つ以上の素子の間隔を変更して、前記複合対物レンズの焦点距離を調整するステップを含む、請求項13に記載された方法。
【請求項15】
請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載された方法を使用した、対象の皮膚内に存在する皮膚成分の濃度のラマン分光による非侵襲的インビボ測定のための経皮的に作動する検出装置であって、該検出装置が、
光源、
前記光源から測定位置までの光路を規定する光学部品、
スペクトル分析ユニット、
前記測定位置から前記スペクトル分析ユニットまでの、ラマン信号を有するラマン散乱光の復路を規定する光学部品
を備え、
前記スペクトル分析ユニットが、濃度測定される前記皮膚成分以外の皮膚成分に関するラマン散乱光の特徴を分析し、それにより前記ラマン信号が主に角質層から生じたか、または主に角質層よりも下から生じたかを判定することによって、前記検出装置に受信された前記ラマン信号の発生源が角質層内かまたは角質層よりも下にあるかを判定するように作動するようになっている、検出装置。
【請求項16】
前記スペクトル分析ユニットが、前記ラマン信号を分析し、第1の皮膚成分から発生するラマン信号と第2の皮膚成分から発生するラマン信号との相対強度を比較することによって作動し、前記相対強度は、前記ラマン信号が主に角質層内から生じたか、または主に角質層よりも下から生じたかを示す、請求項15に記載された装置。
【請求項17】
前記スペクトル分析ユニットが、前記第1の皮膚成分によって生成される883~884cm-1での前記ラマンスペクトルのピークのサイズを判定する、請求項16に記載された装置。
【請求項18】
前記スペクトル分析ユニットが、前記第2の皮膚成分によって生成される893~896cm-1での前記ラマンスペクトルのピークのサイズを判定する、請求項16に記載された装置。
【請求項19】
前記スペクトル分析ユニットが、883~884cm-1での前記ラマンスペクトルの第1のピークのサイズと、893~896cm-1での前記ラマンスペクトルの第2のピークのサイズとの比率を判定する、請求項16に記載された装置。
【請求項20】
前記第1のピークのサイズを前記第2のピークのサイズで除した値が選択値Rよりも大きい場合、前記スペクトル分析ユニットが、前記ラマン信号が角質層よりも下から生じていることを示す出力を生成するようになっている、請求項19に記載された装置。
【請求項21】
Rが0.75に事前設定された、請求項20に記載された装置。
【請求項22】
Rが0.95に事前設定された、請求項20に記載された装置。
【請求項23】
Rが1.0に事前設定された、請求項20に記載された装置。
【請求項24】
前記スペクトル分析ユニットが、第1の皮膚成分から発生するラマン信号と第2の皮膚成分から発生するラマン信号との相対強度の比較により、前記ラマン信号が主に角質層よりも下から生じたことが示されると判定した場合、前記スペクトル分析ユニットが、角質層に一般に存在する皮膚成分に関する前記スペクトルの他のピークのサイズが、同様のスペクトルの統計的に有効な試料のそのピークのサイズの平均値よりもy標準偏差を超えて大きいかどうかをさらに判定し、大きいとの判定の場合は、前記ラマン信号が結局、主に角質層よりも下からで生じていない可能性を示し、yは0.5~2の範囲の事前選択値である、請求項16から請求項23までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項25】
経皮的に作動する前記検出装置が、調整可能な焦点距離を有する対物レンズを備える、請求項15から請求項24までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項26】
前記対物レンズが、少なくとも第1の素子、および前記第1の素子から間隔を置かれた第2の素子を備える複合対物レンズであり、前記レンズが、2つ以上の素子の前記間隔を変更して、前記複合対物レンズの前記焦点距離を調整することによって調整可能になっている、請求項25に記載された装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚内に存在するグルコースまたは他のラマン検出可能種のラマン分光法による経皮インビボ(生体内)測定の方法に関するものである。検出される成分は、間質液に存在するものとできる。
【背景技術】
【0002】
分光法は、光の使用によって分子規模での情報を得る方法である。この情報は、プローブされる分子の回転状態、振動状態、および/または電子状態、ならびに解離エネルギー等に関連するものとできる。所与の分子の回転スペクトルおよび/または振動スペクトルは、その分子に特異的である。そのため、特有の回転および/または振動の分子ペクトルは、多くの場合、特定の分子に関する「指紋」とされる。そのため、分子の回転状態、振動状態、および/または電子状態に関する情報を使用して、未知の分子成分を含む試料を分析し、それにより試料中の分子成分に関する知識を得ることができる。
【0003】
分光機構の基本は、試料の照射に使用される光源、例えばレーザーである。光源からの光(入射光)は、試料と相互作用し、多くの場合、光は、試料を透過する、試料から放射される、反射される、および/または散乱される。この変質した光を収集し、そのスペクトル分布を分析することによって、入射光と分子試料との間の相互作用に関する情報を得ることができ、それにより分子成分に関する情報を得ることができる。
【0004】
スペクトル分布は、通常は分光光度計を使用して測定される。分光光度計は、光学装置に方向付けられた光線を異なる周波数成分に分離し、続いて、例えば、CCD検出器、CCDアレイ、フォトダイオード等を使用してこれらの成分の強度を測定する動作を行なう光学装置である。
【0005】
入射光と分子試料との間の相互作用を反映する変質した光は、概ね、試料に進入する進路とは逆方向の進路で光が収集される場合、おおまかに放射または散乱と特徴付けることができる。放射信号は、通常はかなり狭いスペクトル線を示す散乱光信号と比較して、比較的広い分光プロファイルを有する。一方のプロセスは他方よりも優位であることが多いが、両方のプロセスは同時に生じる可能性があり、そしてほとんどの場合、同時に生じる。散乱光の強度に対する放射光の強度は、とりわけ、入射光の周波数および力、試料中の測定点における入射光の強度、ならびに試料中の分子成分に左右される。
【0006】
光の散乱は、弾性または非弾性のいずれかに分類することができ、これらは分光的に非常に狭い信号であることを特徴とする。弾性散乱はレイリー(Rayleigh)と称され、周波数シフトが存在しない。このため、レイリー散乱は、入射光の周波数と同じ周波数を有する。
【0007】
非弾性散乱の最も一般的に知られている例は、分子と入射光の光子との間でエネルギー交換が生じるラマン散乱である。ラマン散乱光の周波数、すなわち分光分布は、入射光のものとは異なり、分子の特定の振動準位を特異に反映する。したがて、それは指紋スペクトルである。これは、プローブされる物質の分子構成および/または物質中の特定の分子の濃度の同定に使用できる。
【0008】
ラマン散乱は、例えばレイリー散乱および蛍光と比べて比較的弱いプロセスである。このため、ラマン散乱光を収集する際には、これらの他のプロセスからの寄与を低減することが望ましい。さらに、ラマン散乱光の強度は、入射光の周波数および強度に強く左右される。このため、これらが可変である場合、収集されるラマン散乱光の分析に基づく異なる試料および/または試料スポットの分子成分の分布に関する信頼性のある情報を受信することが目的であるならば、必要とされる精度に応じて、入射光の強さの変動を監視することが必須である。試料および/または異なる試料スポットの分子成分の分析が放射スペクトルに基づく場合も同じことが言える。
【0009】
皮膚は、異なる特性を有し、異なる種類の細胞および構造を含有する、いくつかの層を含む。皮膚内のグルコースまたは他の成分を測定するためにラマン分光法を使用する種々の提案が行われたが、これらのいずれも任意の所与の個体中で収集される光信号が、良好な測定を提供する幅で角質層の下から発生していることを確実にするシステムをこれまでに提供していない。
皮膚表面は、角化し、死んだ、扁平な皮膚細胞で主に構成され、個体間で、および身体の領域間で厚さが異なる角質層によって形成される。角質層内部のグルコース等の成分の濃度は、角質層の下の間質液と均衡状態にない。
指先は容易に好適な器具の光路に入れることができるため、しばしば指先上で経皮測定を行うことが望まれる。しかしながら、この領域における角質層の厚さの個々のばらつきは、比較的大きい。このように、角質層は、身体のほとんどの領域において一般的に10~15μmの厚さを有するが、掌蹠では10倍以上も厚いことがある。指紋パターンも、指先の表面上に角質層の厚さのばらつきをもたらす。
【0010】
国際公開第2011/083111号は、通常は200~300μmの範囲内の深度で入射光を合焦させることによって、皮膚表面下の60~400μmの深度のラマン信号を導出するように設定される、グルコースの経皮測定のラマン分光計ベースの装置を記載する。これは広範囲にわたって申し分ないことが分かっているが、時折存在する、測定部位の角質層が大き過ぎる対象においては失敗する。
【0011】
Caspers et al;Biophysical Journal,Vol 85,July 2003は、グルコースの測定に有用であると言われているインビボ共焦点ラマン分光法および装置を記載する。しかしながら、グルコース測定においてラマン散乱が収集されるべき深度に関する指示を含まず、装置はこの目的のために実際に試みられておらず、この教示から推論可能な有力な提案はない。
【0012】
国際公開第2008/052221号は、皮膚および組織等の試料表面を通して試料内の焦点面に光を透過して、例えばグルコースを測定するコヒーレントラマン分光法の方法および装置を記載する。しかしながら、焦点面または焦点面であるべき場所に対する特定の深度の選択の重要性に関する教示は示されていない。実際に、皮膚温度および水和の効果によって分析物濃度が一定であるとき、記載される装置を使用して検出される信号のばらつきが生じることが具体的に認知されている。測定が行われる深度の注意深い選択によってそのような影響を避けることができるという提案は示されていない。
【0013】
国際公開第97/36540号は、ラマン分光法および人工ニューラルネットワーク弁別器を使用した、例えばグルコースの濃度の判定を記載する。しかしながら、ラマン信号は特定の深度から選択的に得られず、500μm超の深度に侵入する信号から生じる非直線性を補正する必要性が考察されている。
【0014】
国際公開第00/02479号は、眼の前房の眼房水の共焦点ラマン分光法による非侵襲的グルコース測定の方法および装置を開示する。当然ながら、皮膚内の最適な測定を行う点の深度の教示はない。
【0015】
国際公開第2009/149266号は、Ermakov IV,Ermakova MR,McClane RW,Gellermann W.Opt Lett.2001 Aug 1;26(15):1179-81、「Resonance Raman detection of carotenoid antioxidants in living human tissues.」を戻って参照する。これは、健康な志願者の生身ヒト組織中のカロテノイド抗酸化物質を測定するための新規の非侵襲的光学技術としての共鳴ラマン散乱の使用を記載する。青色-緑色レーザー励起を使用して、蛍光バックグラウンド上に重なり合う、はっきりと区別可能なカロテノイドラマンスペクトルが得られると言われている。
【0016】
Chaiken et al(Noninvasive blood analysis by tissue modulated NIR Raman spectroscopy,J.Chaiken et.al.,Proc.of SPIE optical Eng.,2001,vol.4368,p.134-145)は、いくつかの個体にわたるラマンベースの測定と指先穿刺血糖測定との間で0.63の相関しか得られなかったが、単一個体に対しては0.90の相関を得ることができた。Chaiken et alによって利用される設定は、平行な励起ビームを含み、そのため当然ながら、それらは任意の最適な焦点深度を開示しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2011/083111号
【文献】国際公開第2008/052221号
【文献】国際公開第97/36540号
【文献】国際公開第00/02479号
【文献】国際公開第2009/149266号
【非特許文献】
【0018】
【文献】カスパーズ他(Caspers et al)、Biophysical Journal、第85巻、7月、2003年
【文献】エルマコフIV(Ermakov IV)、エルマコファMR(Ermakova MR)、マクレーンRW(McClane RW)、ゲラーマン(Gellermann)「人間の生態細胞からのカロテノイド抗酸化物の共鳴ラマン検出」W.Opt Lett.2001、8月1日、第26巻(15)、1179頁-1181頁
【文献】チャイケン他(Chaiken et al)「細胞変調NIRラマン分光による非侵襲的血液分析」、Proc.of SPIE optical Eng、2001年、第4368巻、134頁-145頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、経皮的に作動する共焦検出装置に受信されるラマン信号の発生源が角質層内にあるか、またはその下にあるかを判定するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この方法は、上記信号を分析して第1の皮膚成分から発生するラマン信号および第2の皮膚成分から発生するラマン信号の相対強度を比較することを含み、この相対強度によりラマン信号が角質層内で、または角質層よりも下で発生しているかが示される。
【0021】
換言すれば、本発明は、共焦検出装置に経皮的に受信され、皮膚の表面下のラマン信号の発生点での皮膚成分の濃度を表す強度を有することが予期される少なくとも1つの成分を有する上記ラマン信号のスペクトルが、その濃度を正確に表すかどうかを予測するための方法を提供する。この方法は、その濃度が測定された皮膚成分以外の皮膚成分に関連するスペクトルの特徴を分析し、それによりラマン信号が、主に角質層内で発生し、したがってスペクトルが濃度を正確に表す可能性が低いか、または主に角質層よりも下で発生し、したがってスペクトルが濃度を正確に表す可能性が高いかを判定することを含む。
【0022】
以下に記載される好ましい特徴は、本発明のこれらの態様のいずれかに適用される。
好ましくは、本方法は、信号を分析して第1の皮膚成分から発生するラマン信号および第2の皮膚成分から発生するラマン信号の相対強度を比較することを含み、この相対強度は、ラマン信号が主に角質層内で、または主に角質層よりも下で発生しているかを示す。
【0023】
好ましくは、第1の皮膚成分は、883~884cm-1の波数でラマンスペクトルのピークを生成する。これは、I型コラーゲンをはじめとするタンパク質に由来する(Movasaghi他「生物組織のラマン分光(Raman Spectroscopy of Biological Tissues)」、Applied Spectroscopy Reviews 第42巻、493頁-541頁,2007年を参照されたい)。
【0024】
好ましくは、第2の皮膚成分は、893~896cm-1でラマンスペクトルのピークを生成する。これは、デオキシリボースリン酸ジエステルに由来する。このため、第2の皮膚成分は、DNAであり得る。
【0025】
本発明の方法は、第1および第2のピークのサイズを比較するステップと、第1のピークのサイズを第2のピークのサイズで除した値が選択値R未満の場合、信号が角質層内から生じていることを示す出力を生成するステップとをさらに含むことができる。Rの値は、達成することが望まれる披検信号の発生源の判定の選択性に従って選ぶことができる。一般に、ピークサイズの測定値としてピーク高さを使用することが好都合であるが、面積等の別の測定値サイズを用いてもよい。
【0026】
Rが大きい場合、より多くの候補測定値が拒絶される可能性が高く、異なる測定部位で測定を繰り返すか、または使用される装置の合焦距離を調整するか、またはこの形態の測定から患者を完全に拒絶する必要性が増加することになる。
【0027】
Rがより小さい場合、信頼性がないと判定される測定値はより少なくなるが、実際の分析物濃度と実際には十分に相関しない測定値が受け入れられる可能性が増加する場合がある。
【0028】
Rは、好ましくは少なくとも0.75、より好ましくは少なくとも0.95
に選択され、任意選択で、Rは1.0以上に、例えば、最大1.25に設定される。
【0029】
Rが1.0に設定されるとすると、883~884cm-1ピークが893~896cm-1ピークよりも高い場合、これは、正確な間質液中の分析物皮膚成分の測定に対して、信号が角質層よりも十分に下から生じていることの良好な指標である。一方で、高さの順が逆であり、893~896cm-1ピークが883~884cm-1ピークよりも高い場合、これは、正確な間質液中の分析物皮膚成分の測定に対して、信号が角質層よりも十分に下から生じていない可能性があることの指標である。しかしながら、1.0の値は安全域内にあり、Rはより低く設定できることが予期される。
【0030】
したがって、本方法は、第1のピークと第2のピークとのサイズを比較するステップと、第1のピークが第2のピークよりも小さいサイズである場合、信号が角質層内から生じていることを示す出力を生成する、および/または第2のピークが第1のピークよりも小さいサイズである場合、信号が角質層よりも下から生じていることを示す出力を生成するステップとを含むことができる。
【0031】
信号の発生源の深度を示す類似の指標を提供する、ラマンスペクトルの他のピークを選んでもよい。
【0032】
上記方法は、第1のライン試験を提供する。しかし、883~884cm-1ピークおよび893~896cm-1ピークのサイズ関係が十分なものであるとしても、すべての場合において十分な確信を提供するとは言えず、第2のラインチェックが望ましい場合がある。この目的のため、第3の皮膚成分に由来するラマンピークのサイズおよび/または第4の皮膚成分もしくは他の皮膚成分に由来するラマンピークのサイズが、既定のサイズよりも大きいかどうかを調査することができる。この場合もやはり、高さを、好都合なサイズの尺度として用いることができる。
【0033】
使用される各ラマンピークに対するこの目的のための既定のサイズは、1つまたは好ましくは複数の被検体の試験集団の皮膚の複数の異なる測定部位上で同じ装置を使用して測定されたそれぞれのピークの平均サイズよりもx標準偏差だけ上回ってもよい。好適に、xは、0.5~2、例えば0.75~1.5とできるが、1が好ましい。
【0034】
このように例えば、第1の皮膚成分から発生するラマン信号と第2の皮膚成分から発生するラマン信号との相対強度の比較により、ラマン信号が主に角質層よりも下で発生していることが示される場合、本発明の方法は、角質層内に一般に存在し得る皮膚成分に関するスペクトルの他のピークのサイズが、同様のスペクトルの統計的に有効な試料のそのピークのサイズの平均値よりも1標準偏差を超えて大きいかどうかを判定するステップをさらに含むことができ、大きいとの判定は、ラマン信号が結局のところ主に角質層よりも下で発生していないという可能性を示す。
【0035】
同様のスペクトルを得るために、統計的に有効な測定の標準偏差を提供するのに十分多い複数の測定部位が適切に選ばれる。好ましくは5~20の被検体から選ばれる100~300の試験部位、例えば、20個体の各々の10の部位が適切に使用できる。被検体は、好ましくは、互いにおよび分析物測定の対象と、民族性、年齢、および/または職業の性質(肉体労働者であるかどうか等)が一致すべきである。
【0036】
この第2のラインチェックに使用するための好適なピークは、1445cm-1および1650cm-1におけるピークだろう。前者は、コラーゲン中のCHおよびCH基に関する種々の屈曲モードから生じ、後者は、タンパク質アミド基に由来し得る。
【0037】
第1のライン試験が失敗した場合、またはこれらの選ばれたピークのいずれかが選ばれたカットオフサイズよりも大きい場合、分析物測定の有効性は不確かであり、代替の測定部位を選ぶべきであるか、またはラマン信号が発生する深度を適切に変更すべきであり、これは概して増大されるべきであることを意味する。
【0038】
本発明の方法を使用して、経皮的に作動する共焦検出装置が、角質層よりも下で発生するラマン信号を測定することによって標的の皮膚成分の濃度を首尾よく測定するかどうかを判定できる。この判定は、不適当な患者を測定から単純に除外するか、または角質層が厚過ぎない異なる測定部位の選択を誘導するか、または角質層よりも下から発生するラマン信号を測定するようにさせるために、経皮的に作動する共焦検出装置の調整を誘導するために使用できる。
【0039】
したがって、本発明のいずれかの観点による方法は、ラマン信号が角質層内から発生しているという結果に応答して、経皮的に作動する共焦検出装置を調整することをさらに含んでもよい。この調整は、新たな深度が十分であると判定されるように、具体的には深度が角質層内であるともはや判定されないように、ラマン信号の発生源の深度を変更する。
【0040】
これは、ラマン信号が受信される深度を変更するように、光が測定部位に放射され、その測定部位から受信される、対物レンズの皮膚表面からの距離の調整によって行なうことができる。
【0041】
代替的にまたは追加的に、経皮的に作動する共焦検出装置は、焦点距離を有する対物レンズを備えることができ、ラマン信号の発生源の深度の変更方法は、対物レンズの交換によって、または対物レンズの調整によって対物レンズの焦点距離を変更することを含むことができる。
【0042】
この目的のため、経皮的に作動する共焦検出装置は、少なくとも第1の素子および第1の素子から間隔を置かれた第2の素子を備える複合対物レンズを備えてもよく、ラマン信号の発生源の深度の変更方法は、2つ以上の素子の間隔を変更して、複合対物レンズの焦点距離を調整することを含むことができる。これは、間隔の異なるレンズとのレンズの交換を含むことができる。
【0043】
任意選択で、レンズ位置または焦点距離の調整は、印加される電圧の変更によって対物レンズと皮膚表面との間、またはレンズ素子どうし間の圧電性スペーサの厚さを変更することによって行われてもよい。
【0044】
任意選択で、レンズ位置または焦点距離の調整は、複合レンズの少なくとも1つの素子を保有する環状ネジが設けられたカラーの回転位置を変更することによって行われてもよい。
【0045】
本発明の他の観点によれば、対象の皮膚内に存在する皮膚成分の濃度のラマン分光による非侵襲的インビボ測定のための経皮的に作動する共焦検出装置が提供される。この共焦検出装置は、光源、光源から測定位置までの光路を規定する光学部品、スペクトル分析ユニット、測定位置からスペクトル分析ユニットまでのラマン散乱光の復路を規定する光学部品を備える。スペクトル分析ユニットは、濃度が測定される皮膚成分以外の皮膚成分に関するラマン散乱光の特徴を分析し、それにより、ラマン信号が主に角質層内から生じたかまたは主に角質層よりも下から生じたかを判定することによって、共焦検出装置に受信されたラマン信号の発生源が角質層内かまたは角質層よりも下にあるかを判定するように作動する。
【0046】
別の表現では、本観点によれば、本発明は、対象の皮膚内に存在する皮膚成分の濃度のラマン分光による非侵襲的インビボ測定のための経皮的に作動する共焦検出装置が提供される。この共焦検出装置は、光源、光源から測定位置までの光路を規定する光学部品、スペクトル分析ユニット、測定位置からスペクトル分析ユニットまでのラマン散乱光の復路を規定する光学部品を備える。対象の皮膚内に存在する皮膚成分の濃度のラマン分光法によるスペクトル分析ユニットは、信号を分析し、第1の皮膚成分から発生するラマン信号と第2の皮膚成分から発生するラマン信号との相対強度を比較することによって、共焦検出装置に受信されたラマン信号の発生源が角質層内にあるかまたは角質層よりも下にあるかを判定するように作動し、この相対強度は、ラマン信号が角質層内で発生しているか、または角質層よりも下で発生しているかを示す。
【0047】
好ましくは、スペクトル分析ユニットは、第1の皮膚成分によって生成される883~884cm-1でのラマンスペクトルのピークのサイズを判定する。
【0048】
好ましくは、スペクトル分析ユニットは、第2の皮膚成分によって生成される893~896cm-1でのラマンスペクトルのピークのサイズを判定する。
【0049】
スペクトル分析ユニットは、883~884cm-1でのラマンスペクトルの第1のピークのサイズと893~896cm-1でのラマンスペクトルの第2のピークのサイズと比率を判定できる。ピークサイズの好適な尺度として高さが使用できる。
【0050】
したがって、スペクトル分析ユニットは、第1のピークの高さを第2のピークの高さで除した値が選択値R未満の場合、信号が角質層内から生じていることを示す出力を生成することが好ましい。Rは、0.75、より好ましくは0.95、およびさらにより好ましくは1.0に事前設定できる。
【0051】
好ましくは、Rは、1.25以下である。
【0052】
任意選択で、信号分析ユニットが、第1の皮膚成分から発生するラマン信号と第2の皮膚成分から発生するラマン信号との相対強度の比較により、ラマン信号が主に角質層よりも下で発生していることが示されると判定する場合、信号分析ユニットは、角質層内に一般に存在する皮膚成分に関するスペクトルの他のピークのサイズが、同様のスペクトルの統計的に有効な試料のそのピークのサイズの平均値よりもx標準偏差を超えて大きいかどうかをさらに判定し、大きいとの判定は、ラマン信号が結局のところ主に角質層よりも下で発生していないという可能性を示す。xの値は、上記の語論のとおりである。
【0053】
経皮的に作動する共焦検出装置は、焦点距離の異なる1組の交換可能な対物レンズまたは調整可能な焦点距離を有する対物レンズを備えることができる。この目的のため、対物レンズは、少なくとも第1の素子および第1の素子から間隔を置かれた第2の素子を備える複合対物レンズであってもよく、その結果、レンズは、2つ以上の素子の間隔を変更して、複合対物レンズの焦点距離を調整することによって調整可能である。間隔調整は、好ましくは、上述のように作動する圧電物質またはネジであってよい。交換可能なレンズは、そのようなレンズ素子の間隔を異なるものとすることができる。
【0054】
装置は、ラマン散乱光の分析に基づいて間質液または血液中のグルコースもしくは別の分析物成分の濃度を計算するための手段を含むことができる。ラマンスペクトルは、ピーク強度をグルコースまたは他の分析物の濃度と関係させる熟練した統計モデルを適用することによって分析できる。これは、エム・エー・アーノルド(M.A.Arnold)「血中グルコース濃度を変化させたラットの皮膚細胞の生体内近赤外分光(In Vivo Near-Infrared Spectroscopy of Rat Skin Tissue with Varying Blood Glucose Levels)」、Anal.Chem.2006年、第78巻、215頁-223頁、およびエー・エム・ケー・エネジャー(A.M.K.Enejder)他「非侵襲的グルコース測定のためのラマン分光(Raman Spectroscopy for Non-invasive Glucose Measurements)」、Jnl of Biomedical Optics、第10(3)巻、031114、 2005年、5/6月、における参考文献に詳細に記載される部分最小二乗回帰(PLS)を使用して実施できる。例えば、エー・ジー・ライダー(A.G.Ryder)、ジー・エム・コナー(G.M.Connor)、ティー・ジェイ・グリン(T.J.Glynn)「ラマン分光及びケモメトリクス法による固体混合物中のコカインの定量分析(Quantitative Analysis of Cocaine in Solid Mixtures using Raman Spectroscopy and Chemometric Methods)」、Journal of Raman Spectroscopy、第31巻、221頁-227頁、2000年またはジー・ティー・オレスバーグ(J.T.Olesberg)、エル・リウ(L.Liu)、ヴイ・ヴイ・ジー(V.V.Zee)、エム・エー・アーノルド(M.A.Arnold)「血中グルコース濃度を変化させたラットの皮膚細胞の生体内近赤外分光(In Vivo Near-Infrared Spectroscopy of Rat Skin Tissue with Varying Blood Glucose Levels)」、Anal.Chem.、2006年、第78巻、215頁-223頁に記載されるものに類似している様式で主成分分析(PCA)を含む、多変量検量の他の形態が使用できる。概ね、吸収スペクトルからの分析物の検出の較正に有用なスペクトル分析の統計法は、ラマンスペクトルの分析にも有用である。
【0055】
装置は、深度を角質層よりも下に設定するように、ラマン信号の強度のほとんどが発生している皮膚表面下の深度を変更するために調整可能であることができる。光収集は、さまざまな深度からであり、装置は、所望の割合の光が角質層よりも下から発生するように調整可能にできる。
【0056】
好ましくは、この割合は、少なくとも55%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも90%である。また好ましくは、光検出ユニットで受信されるラマン散乱光の少なくとも90%は、皮膚表面下600μm未満の深度で発生している。また好ましくは、スペクトル分析ユニットで受信されるラマン散乱光の25%未満、より好ましくは10%未満が、皮膚の表面下100μm未満の深度で発生している。
【0057】
スペクトル分析ユニットに達する光の好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%は、皮膚の表面下200~400μmで発生している。
【0058】
任意選択で、この調整は自動化される。このようにして、スペクトル分析ユニットは、記載されるようにラマン信号の発生源を判定するように作動でき、信号が角質層内から発生しているという判定の場合には、スペクトル分析ユニットは、信号の発生源が角質層よりも下であることを判定するまで、ラマン信号が受信される共焦点深度位置を調整するように作動する調整手段に制御信号を出力できる。このような調整手段は、用いられる皮膚に対する少なくとも1つのレンズ素子の位置を変えるために、圧電性アクチュエータに印加される電圧の形態で制御信号を生成できる。代替的に、制御信号はモーターを駆動させ、回転可能なレンズ調整機構を回転させて、レンズ構成素子の間隔を変更できる。
【0059】
このようにして、調整手段は、十分な結果が得られるまで共焦点深度を反復して増加させることによって十分な共焦点深度を探索できる。好適には、10~50μm、例えば20~30μmの共焦点深度を漸進的に増加させることを伴うことができる。
【0060】
スペクトル分析ユニットは、光ファイバーを通る光の伝達を用いずに、またはそのようなファイバーを用いて、皮膚の表面から光を受信できる。後者の場合、本発明による装置は、用いられる測定位置を規定する構成要素を有し皮膚へ当てるためのハンドピース、ならびに光源およびスペクトル分析ユニットにハンドピースを接続する1つ以上の光ファイバーを備えることができ、光検出ユニットから受信された信号を分析してその測定値を提供する。
【0061】
測定位置の皮膚係合部材の遠位位置は、任意選択で調整可能である。例えば、皮膚係合部材の遠位表面を60~400μm超えるように調整可能であるか、または皮膚の表面下50~400μm、より好ましくは200~300μmであるように調整できる。しかしながら、代替的に、測定位置の皮膚係合部材の遠位の位置は、好適に上記で考察された数値パラメータが達成されるように固定される。
【0062】
このようにして、光路を規定する光学部品および/または復路を規定する光学部品の焦点の深度は、調整可能ではなくむしろ固定できる。したがって、この場合、スペクトル分析ユニットが共焦点深度が満たされていないと判定する場合、代替の測定部位が選ばれるべきであるか、またはその患者は除外されるべきであるという結果になる。
【0063】
本発明は、対象の皮膚内の間質液中に存在する成分(グルコースであることができる)のラマン分光法による非侵襲的インビボ測定方法を含む。いずれかの順序で、(a)光源から皮膚の測定位置への光路を規定する光学部品を用いて光を光源から対象の皮膚へ方向付け、そのようにして皮膚から戻ってくるラマン信号を生成し、この信号を分析して第1の皮膚成分から発生するラマン信号と第2の皮膚成分から発生するラマン信号との相対強度を比較することによって、その戻ってくるラマン信号の発生源が角質層内にあるかまたは角質層の下にあるかどうかを判定する。相対強度は、ラマン信号が角質層内で発生したか、または角質層よりも下で発生したかを示すこと、(b)光源から皮膚内の測定位置への光路を規定する光学部品を用いて光を光源から対象の皮膚に方向付け、測定位置から光検出ユニットへのラマン散乱光の復路を規定する光学部品を用いて皮膚から戻るラマン散乱光を光検出ユニットで受信し、ラマン散乱光から濃度を判定することを含む。上述のステップ(a)の好ましい特徴は、前述の通りであり得る。
【0064】
本方法は、ラマン信号が角質層よりも下から発生していると判定されるように、光学部品を調整することをさらに含むことができる。
【0065】
この方法は、本発明による装置を使用して実施されることが好ましい。
【0066】
本方法は、対象への測定の前に測定される皮膚成分の既知の濃度に関する出力を提供する装置の使用によって、装置の出力を較正することを含むことができる。いったん較正されると、装置は、少なくとも一週間、より好ましくは一か月の間、再び較正されないことが好ましい。既知の物質濃度に関する出力を提供する較正ステップは、対象の装置を使用して行われないことが好ましい。
【0067】
このため、較正は、その成分の濃度が既知である異なる対象で行われるか、または測定位置に置かれた一滴の成分溶液もしくは成分溶液を模倣する固体模型等の標準試料を使用して行わることができる。
【0068】
本明細書に記載される任意の装置が、このような方法において使用できる。
【0069】
光源は、好ましくはレーザーである。光源として使用するためのレーザーの好ましい形態は、300~1500nmの範囲の波長を有するダイオードレーザーである。好適な好ましい波長は、785、830、または850nmである。好適な電力範囲は、50~1000mWである。例えば、RGB Laseの830nm、500mW、FC-830レーザーを使用してもよい。
【0070】
この装置は、光信号を測定するための光学プローブを備えることでき、光学プローブでは、光源から測定位置までの光路を規定する光学部品が、光源からの入射光を誘導する第1の光ファイバーと、測定位置に向かって、すなわちその中にまたはその上に入射光を合焦させるレンズとを備える。ラマン散乱光の復路を規定するための光学部品は、レンズと、変質した光をスペクトル分析ユニットに誘導する他の光学部品を備えることができる。他の光学部品は、第2の光ファイバーを有することができるが、第2の光ファイバーを用いる代わりに、分光光度計がハンドピース中に直接一体化されてもよい。任意選択で、入射光の強度変動を測定する他の光検出ユニット(または光ロギング装置)が存在してもよく、この他の光検出ユニットは、有利には、第1の光ファイバーの後に位置付けることができ、それにより他の光検出ユニットは、第1のファイバーからの入射光の一部を受信する。
【0071】
入射光の強度を表す光ロギング装置からの電気出力は、強度のばらつきを補正するようにスペクトル分析ユニットの強度測定値を調整するために使用できる。
【0072】
少なくとも1つの光ファイバーの使用は以下の点で有利である。すなわち、顕微鏡が使用できるとしても、顕微鏡による光学プローブは容易に動かせる物体ではなく、ユーザの身体部分を測定が行われる位置に位置させるのは扱いにくいことがあるという点において、有利である。患者は、その指または腕を顕微鏡の顕微鏡対物レンズの下または上に直接差し入れることになる可能性があるだろう。残念ながら、これはほとんどの顕微鏡で不可能ではないにしても、煩雑である。
【0073】
顕微鏡全体ではなく、例えば、テーブル上に別個に置かれた顕微鏡対物レンズ(複数可)のみを用いる光学プローブは、プローブと試料との間のより良い近接性を可能にする。インビボでの患者の血糖値または他の皮膚成分の測定は、それほど苦労せずに患者の腕または指を顕微鏡対物レンズ(複数可)の前に置くことができるため、より便利になる。しかしながら、選ばれた試料が脚である場合、顕微鏡対物レンズ(複数可)の前に適切に置くことがより難しいであろう。
【0074】
光学プローブの内部で、光ロギング装置は、通常はダイクロイックミラーの後に位置付けられ、入射光の小部分が、ダイクロイックミラーを通過して光ロギング装置上に進むか、またはダイクロイックミラーによって光ロギング装置上に反射することを可能にする。代替的に、分割装置が第1のファイバーとダイクロイックミラーとの間に位置付けられてもよく、分割装置は、入射光の小部分を光ロギング装置上に反射する。
【0075】
光ロギング装置を使用することの1つの利点は、強度のばらついた入射光の正確な測定を常に可能にすることである。これは、試料のばらつきではなく入射光のばらつきによる変質した光の強度のばらつきが補正できることを確実にする。
【0076】
本発明の具体例では、試料に入射光を合焦させるレンズは、測定中、レンズが皮膚と直接接触するように光学プローブの表面に配置される。
【0077】
測定中、皮膚と直接接触するレンズを有することの利点は、試料侵入深さおよびそれにより光学プローブから試料焦点までの距離が、レンズの焦点距離により規定されることによって正確に分かることである。
【0078】
本発明の別の具体例では、光学プローブは窓をさらに備え、測定中、窓が皮膚と直接接触するように、窓はレンズと皮膚との間に位置付けられる。窓の厚さはレンズの焦点距離よりも小さい。
【0079】
窓をレンズと皮膚との間に挿入することの利点は、洗浄に敏感な壊れやすいレンズが使用される場合に、光学プローブのより容易な洗浄を提供できることである。
【0080】
窓をレンズと皮膚との間に挿入することの別の利点は、侵入深さを窓の厚さに応じて変えられることである。これは、測定されるラマン信号が角質層よりも下で発生しているという判定をもたらす値に侵入深さを設定する1つの方法を提供する。
【0081】
同様に、固体窓を有する代わりに、レンズと皮膚との間に窓アパーチャが提供されてもよい。アパーチャは皮膚係合部材内に形成される。
【0082】
本発明による光学プローブは、第1の光ファイバーの後に位置付けられるダイクロイックミラーをさらに備えることができる。ダイクロイックミラーは、re_in=0~100(例えば90%)の任意の割合で入射光を反射し、tr_in=0~100(例えば10%)の任意の割合で入射光を透過し(re_in+tr_in=100パーセントである(損失を無視する))、re_se=0~100(例えば30%)の任意の割合で変質した光を反射し、tr_se=0~100(例えば70%)の任意の割合で変質した光を透過する(re_se+tr_se=100パーセントである(損失を無視する))。よって、ダイクロイックミラーは、入射光のほとんどを反射し、変質した光のほとんどを透過できる。
【0083】
ダイクロイックミラーは、通常は、第1の光ファイバーからの入射光の伝播方向に対して45度の角度で位置付けられる。
【0084】
ダイクロイックミラーによって入射光のほとんどが反射される具体例では、光ロギング装置は、ダイクロイックミラーの後に位置付けられることができ、それにより光ロギング装置は、ダイクロイックミラーを通して透過される入射光の強度変動を測定する。
【0085】
ダイクロイックミラーによって入射光のほとんどが反射される別の具体例では、分割装置は、第1の光ファイバーとダイクロイックミラーとの間に位置付けることができ、それにより光ロギング装置は、分割装置によって反射される入射光の強度変動を測定する。
【0086】
本発明の具体例では、ダイクロイックミラーは、入射光のほとんど(例えば90%以上)を透過する一方、ほんの一部(例えば10%以下)を通過させ、変質した光のほとんど(例えば70%以上)を反射する一方、より少ない量(例えば30%以下)を通過させる。
【0087】
ダイクロイックミラーによって入射光のほとんどが透過される具体例では、光ロギング装置は、ダイクロイックミラーの後に位置付けられることができ、それにより光ロギング装置は、ダイクロイックミラーによって反射される入射光の強度変動を測定する。
【0088】
ダイクロイックミラーの直後に位置する光ロギング装置を有する利点は、ダイクロイックミラーによって反射されず、さもなければ失われていただろう入射光の一部を利用することである。その結果として、入射光の変動の測定のための光を収集するために、光学プローブの内部に挿入される任意の追加の光学部品を必要としない。
【0089】
本発明の一具体例では、第1の光ファイバーからの光の方向と第2の光ファイバーに進入する光の方向との間の角度αは、実質的にα=90度である。この角度は、α=80~100度の範囲ともできる。
【0090】
本発明の一具体例では、光学プローブは、少なくとも第1のアパーチャをさらに備え、第1のアパーチャは、皮膚内の焦点からの変質した光のみがスペクトル分析ユニットに達することを可能にし、それにより深度の共焦点性を確実にする。アパーチャは別個の素子であってもよいが、第2のファイバーの狭い開口部は、第2のファイバーが使用される場合、アパーチャとして同様に十分に機能することができる。
【0091】
スペクトル分析ユニットの前に位置付けられた光学アパーチャを使用することの利点は、この光学アパーチャが、共焦点深度、すなわち、試料の焦点スポットの外側で生成される光学信号を排除する3Dデプスフィルターとして作動することである。共焦点光学プローブを使用することの利点は、スペクトル分析ユニットに進入する変質した光が、焦点深度での入射光と皮膚との間の相互作用のみから生じ、このため、焦点スポットの上下の円錐状の領域からの寄与が最小化または排除されることである。
【0092】
本発明の別の具体例では、z(深度)方向のより鋭いコントラストを得るために1つ以上のアパーチャをさらに用いることができる。第2のアパーチャは、好ましくは、皮膚と、試料内で光を合焦させるレンズとの間に位置付けられる。この第2のアパーチャは別個の素子であってもよいが、光が出る/レンズによって収集される点における光学プローブの狭い開口部は、アパーチャとして同様に十分に機能することができる。
【0093】
本発明による装置は、皮膚内の光学信号をインビボ測定するために設計および構成されるが、例えば、血液試料中に浸すことによって光学信号を測定し、それによりインビトロ測定を行うために用いることもできる。
【0094】
概して、本発明による装置の光学プローブ内部にある光学素子は、カバーによって囲まれる。好ましい光学プローブは、光学プローブ内および任意選択で光学プローブ外に光を誘導するための可撓性ファイバーの使用により、自由に動かすことができるものである。これにより、腕、指、脚等の異なる身体部分を使用して、例えば、患者の血糖値の容易なインビボ測定が可能になる。しかしながら、装置は、測定を実施するための指先の腹を置く特定の場所を設けた筐体内に光学部品が収容されるように構成してもよい。
【0095】
指先の腹の角質層の厚さは、通常は10~40μmである(Marks,James G;Miller,Jeffery(2006).Lookingbill and Marks’Principles of Dermatology(4th ed.).Elsevier Inc.Page 7.ISBN 1-4160-3185-5およびThickness of the Stratum Corneum of the Volar Fingertips H.FRUHSTORFER,U.ABEL,C.-D.GARTHE,AND A.KNU¨TTELを参照されたい。したがって、200~300μmの好ましい測定深度は、角質層よりも下に160~190μm、最大260~290μmである。すべての皮膚領域に対する測定の深度は、好ましくは角質層よりも下50~390μm、より好ましくは190~290μmである。
【0096】
装置の主な用途は、一般的に、患者の血糖値を測定することである。グルコースの血中レベルは、選択される深度での間質液中のレベルと相関する。同じ方法で測定できる他の分析物は、乳酸、ヘモグロビン、コレステロール、アルコール、尿素、および/または薬物を含むだろう。
【0097】
添付の図面を参照して、本発明をさらに説明および例示する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】本発明による装置の概略図。
図2図1の装置の部分を形成する光学プローブの第1の具体例。
図3図1の装置の部分を形成する光学プローブの第2の具体例。
図4図1の装置の部分を形成する光学プローブの第3の具体例。
図5図2図4の光学プローブのいずれかでの使用に好適なレンズ素子間に可変の間隔を有する対物レンズの第1の例を通る断面図。
図6図2図4の光学プローブのいずれかでの使用に好適なレンズ素子間に可変の間隔を有する対物レンズの第2の例を通る断面図。
図7】患者番号によって識別されるいくつかの異なる測定対象から得られるラマンスペクトル。600cm-1のラマン波数シフト値において、スペクトル曲線の降順にスペクトルに関連する患者番号は、患者番号127、126、115、114、107である。
図8】多数の患者の血液の化学分析によって測定された実際のグルコース濃度(横軸)に対する本装置によって予測されるグルコース濃度(縦軸)のプロット。黒色の点は、患者番号127からのものである。
図9】多数の反復測定において患者114の血液の化学分析によって測定された実際のグルコース濃度(横軸)に対する本装置によって予測されるグルコース濃度(縦軸)のプロット。
図10】患者17から得られた第1の患者導出ラマンスペクトル(上部掃引線)、および患者107から得られた第2の患者導出ラマンスペクトル(下部掃引線)。両方ともに、883:893の波数でのピーク高さの比率が1を超えることを特徴とするが、上部掃引線は、波数1445cm-1でのピークが正規ピークよりも高いことも特徴とする。
図11】皮膚内の信号の発生源の深度に対する、図2図4で見られるような好適に調整されたプローブに受信されたラマン信号の相対強度のプロット。
図12】空気中で160μmの非常に短い焦点深度に設定された装置を使用して、指腹および母指球の異なる位置での測定により得られたラマンスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0099】
図1は、グルコース(または別の皮膚物質)の濃度をインビボ(生体内)で測定するために使用される本発明による装置の概略図を示す。光学プローブ101は、光源103から入射光ファイバー105を通して光を受信する。本発明のこの具体例では、光源103はレーザーである。入射光は、皮膚107を照射し、皮膚107と相互作用する。皮膚から帰ってきた変質した光は、光学プローブ101によって収集されてプローブ内の分光光度計により分析され、後続のスペクトル成分の分析のため、接続体109を介してコンピュータ111に送信される電気出力を生成する。分光光度計内には、光検出ユニットが存在する。代替的に、当然のことながら、分光光度計機能はハンドピースの外部で実施されてもよく、光は、第2の光ファイバーを介してハンドピースからスペクトル分析ユニットに通信してもよい。
【0100】
本発明のこの具体例では、光学プローブは患者の腕に当てられているが、指または別の身体部分でもよい。同様に、測定はインビボで行われるように表示されるが、光学プローブ101は、例えば、血液試料に浸すことによって光学信号を測定し、それによりインビトロでの測定を行うために用いてもよい。
【0101】
通常、本発明による装置の光学プローブ101内部で見られる光学素子は、カバーにより囲まれ、カバーは、入射光ファイバー105および出射電気信号接続体109用の少なくとも1つの開口部、ならびに試料を照射するために用いられる出射光用の開口部を有する。後者の開口部は、試料からの変質した光を収集するためにも使用できる。光学プローブ101は、光学プローブ内に光を誘導するための可撓性のファイバーの使用により、自由に動かすことができる。これにより、腕、指、脚等の異なる身体部分を使用して、例えば、患者の血糖値の容易なインビボ測定が可能になる。
【0102】
光学プローブ101の主な用途は、患者の血糖値を測定することである。しかしながら、プローブは、例えば、血中の乳酸ヘモグロビン、コレステロール、アルコール、尿素、および/もしくは薬物のレベル、または血中の温度および/もしくは温度のばらつきを測定するためにも使用できる。
【0103】
図2は、光を光学プローブ201内に誘導するための入射光用光ファイバー203を備える光学プローブ201の第1の具体例を示す。本発明のこの具体例によれば、光源は、通常はレーザーである。第1のファイバー203から出ると、入射光205は、対物レンズである第1のレンズ207を使用して平行にされ、レーザー周波数/波長以外の周波数/波長の0~100パーセントの任意の割合、例えば75~100パーセントを遮断する第1のフィルター209を通過することによって光学的に選別される。レーザー周波数外の周波数を遮断することにより、例えば、第1のファイバー203内部で生成されるラマン散乱が、入射光205から除去されることを確実にする。第1のフィルター209は、レーザー周波数の0~100パーセントの任意の割合、例えば0~50パーセントも遮断できる。これは、試料の要件に対して入射光205の強度が大きすぎる場合に有利である。第1のフィルター209は、帯域フィルター、ノッチフィルター、エッジフィルター等であることが好ましい。
【0104】
光学プローブ201は、光の0~100の任意の割合を反射または透過するダイクロイックミラー211をさらに備える。反射光および透過光の割合は、ダイクロイックミラー211上のコーティング、光がダイクロイックミラー211に衝突する角度、および光の周波数に左右される。ダイクロイックミラー211は、例えば、ダイクロイックミラー211が入射光205の方向に対して所与の角度で位置付けられるとき、最も高い割合の入射光205を反射するようにコーティングできる。したがって、ダイクロイックミラー205と入射光205との角度を変えることは、ダイクロイックミラー211によって反射される入射光205の割合を低減させる。
【0105】
本発明のこの具体例では、入射光205のほとんどが、ダイクロイックミラー211によって反射され、対物レンズ215である第2のレンズによって対象の皮膚213の内部に合焦する。入射光205の焦点217は、第2のレンズ215の焦点距離218、およびレンズの遠位側の皮膚係合部材219の距離、具体的には用いられる皮膚と係合するその遠位表面によって規定される。皮膚係合部材は、示されるように窓の形態をとってもよい。代替的に、対物レンズの周りのカラーであってもよい。任意に、カラーの皮膚係合表面が対物レンズ自体を超えて広がる範囲は、カラーおよびレンズを接続するネジ山によって好適に調整可能であってもよい。これは、入射光が合焦する皮膚下の深度を調整するために使用できる。代替的に、カラーの皮膚係合表面が対物レンズ自体を超えて広がる範囲が各々異なるカラーを有する1組の対物レンズを提供できる。それにより一方の対物レンズを他方と交換することによって、所望の焦点の深度が得られる。他の選択肢では、皮膚係合部材は、対物レンズ自体の遠位表面であってもよい。第2のレンズ215は、好ましくは凸面であるが、非球面または平面であってもよい。特に図5を参照して、以後より詳細に記載されるように、レンズ215の焦点距離は可変であり、スペクトル分析ユニットの出力にしたがって制御できる。
【0106】
この具体例では、ダイクロイックミラー211は、入射光205の伝播方向に対して45°の角度で位置付けられる。その結果、入射光205の大半は、90°の角度で反射される。ダイクロイックミラー211は、同様に0~90°の角度で位置付けできる。
【0107】
本発明の一具体例では、ダイクロイックミラー211によって反射される入射光205の割合(re_in)および透過される入射光205の割合(tr_in)は、re_inが(re_in+tr_in)の90%以上であり、tr_inが(re_in+tr_in)の10%以下である。
【0108】
本発明の別の具体例では、ダイクロイックミラー211によって反射および透過される入射光205の割合は、それぞれ、re_inが(re_in+tr_in)の98%以上であり、tr_inが(re_in+tr_in)の2%以下である。
【0109】
例示される光学プローブ201は、第2のレンズ215と皮膚213との間に位置付けられる任意の薄い窓219をさらに備える。窓219の厚さは、第2のレンズ215の焦点距離よりも小さい、すなわち第2のレンズ215から皮膚213内部の焦点217への距離よりも小さい。窓219は、第2のレンズ215を保護するように作用することができ、それにより皮膚213と接触した後の光学プローブ201の洗浄を容易にできる。窓219は、皮膚係合部材として作用し、その皮膚係合表面からレンズ215の焦点までの距離は、ラマン信号が生成される皮膚の表面下の深度220を決定する。これは理想的に、レーザー光強度のほとんどが、皮膚表面下250μmおよび/または角質層の底部の下少なくとも100μm、例えば角質層の底部の下100μm~150μmで合焦するように、設定される。装置が他の用途に適応できることが望まれる場合、異なる厚さの窓219を挿入し、それにより試料の侵入深さ220を変更するための事前準備を行ってもよい。典型的な代替の試料の侵入深さ220は、第2のレンズ215の焦点距離218および窓219の厚さに応じて150~500μmの範囲である。より短い、およびより長い侵入深さ220を得ることもできる。
【0110】
本発明の別の具体例では、窓は存在せず、第2のレンズ215は皮膚213と直接接触する。その結果、皮膚を通過する光に対するレンズの焦点距離は、理想的に200~300μmである。装置が同様に他の用途に適応できることが望まれる場合、レンズは、他の焦点距離のレンズと交換可能に作製できる。
【0111】
入射光205を皮膚213内で合焦させることに加えて、第2のレンズ215は、焦点217からの変質した光221を平行にする。この具体例では、ダイクロイックミラー211は、変質した光221の大半を透過させるが、入射光205の後方散乱を反射する。これにより、望ましくない周波数、すなわち、後方反射される入射光205の周波数を、皮膚213との相互作用の結果として生成された変質した光221から選別する。
【0112】
本発明の一具体例では、ダイクロイックミラー211によって反射(re_se)および透過(tr_se)される変質した光221の割合は、それぞれ、re_seが(re_se+tr_se)の30%以下であり、tr_seが(re_se+tr_se)の70%以上である。
【0113】
本発明の別の具体例では、ダイクロイックミラー211によって反射および透過される変質した光221の割合は、それぞれ、re_seが(re_se+tr_se)の10%以下であり、tr_seが(re_se+tr_se)の90%以上である。
【0114】
変質した光221は、第3のレンズ225によってスペクトル分析ユニットとして作用する分光光度計227内に合焦する前に、第2のフィルター223を通過することによってさらに光学的に選別される。第2のフィルター223は、好ましくは帯域フィルター、ノッチフィルター、エッジフィルター等であり、第2のレンズ215によって収集された変質した光221の30~100%の任意の割合、例えば75~100%を透過すること、および入射光の周波数に近いまたは同等の周波数の例えば75~100%の任意の割合を遮断することを特徴とする。これは、例えば、皮膚213から散乱されたほぼすべてのラマン光が通過することを可能すると同時に、第2のフィルター223を通過する望ましくないレイリー散乱の割合がごく少量であることを保証することができる。
【0115】
レーザー波長に近い直接反射される光をさらに遮断する一方、レイリー散乱放射が通過することを可能にする第2のフィルター223を設けることができる。
【0116】
本発明のこの具体例では、ダイクロイックミラー211は、入射レーザー光205のすべてを反射するものではない。むしろ、光229の一部がダイクロイックミラー211を通過し、ダイクロイックミラー211を通過した後、光229の強度および/または力を検出する光強度測定装置/ロギング装置231に進むことができる光強度測定装置/ロギング装置231は、出力電圧等の電気信号の形態で測定出力を提供する。光ロギング装置231は、フォトダイオード、CCD検出器、熱トランジスタ、またはそのような装置に誘導するファイバー等とできる。
【0117】
光ロギング装置231を使用することの1つの利点は、入射光の強度のばらつきの正確な測定を常に可能にすることである。これは、レーザー光の強度のドリフトによる変質した光221の強度のばらつきを補正することができる。さもなければ入射光強度のばらつきによって引き起こされていただろう見かけの分析物濃度のばらつきを防ぐことを確実にする。分光光度計中の光検出ユニットによって記録される信号は、主な光の強度の測定値を使用して正規化される。正規化は、リアルタイムではなく、データが分析されるときにソフトウェア中で行われてもよい。
【0118】
レーザー光をファイバー中に結合するプロセスは、レーザー光がファイバー内で合焦する角度、およびレーザーがファイバー内で合焦するレンズの焦点とファイバー自体との距離の両方に敏感であるため、光ロギング装置231を光学プローブ201内に組み込むこと、およびそれを第1のファイバー203からの入射光205を結合した後に位置付けることは、明らかに有利である。このため、ファイバーから出る光の強度のばらつきは、レーザー光がファイバー内に結合する効率性の結果として変化する。したがって、レーザーとファイバーとの間に位置付けられる光ロギング装置を使用することは、皮膚内で合焦する光の強度のばらつきを正確に測定しない。しかしながら、光源での、または光源と皮膚との間の任意の点での入射光強度のばらつきの測定は、この具体例および他の具体例において、本発明内に含まれる。
【0119】
上述の光学素子に加えて、光学プローブ201は、分光光度計227の前に位置付けられる少なくとも第1の光学アパーチャ233も備えてもよい。第1の光学アパーチャ233は、共焦点領域、すなわち焦点217の外で生成される光学信号を排除する3Dデプスフィルターとして作動する。共焦点光学プローブを使用することの利点は、分光光度計227に進入する変質した光221が、焦点217での入射光205と皮膚213との間の相互作用のみから生じ、このため、焦点スポット217の上下の円錐状の領域からの寄与が排除されることである。
【0120】
本発明の第1の具体例によれば、第1のアパーチャ233は、別個の素子として構成される。しかしながら、分光光度計227に接続する第2のファイバー(存在する場合)の狭い開口部は、第1のアパーチャ233として同様に十分に機能することができる。
【0121】
第1のアパーチャ233に加えて、z(深度)方向のより鋭いコントラストを得るために1つ以上のアパーチャを備えることができる。第2のアパーチャ235は、第2のレンズ215と皮膚213との間に位置付けられることが好ましい。窓219が存在せず、第2のレンズ215が凸面または平凸面である好ましい具体例では、皮膚213と第2のレンズ215との間に位置付けられる薄い第2のアパーチャ235を用いる場合であっても、第2のレンズ215は、依然として皮膚213と直接接触する。
【0122】
本発明のこの具体例では、第2のアパーチャ235は、別個の素子として構成される。しかしながら、光が出る点/第2のレンズ215によって収集される点における光学プローブ201の狭い開口部は、第2のアパーチャ235として同様に十分に機能することができる。
【0123】
第3のアパーチャ237は、好ましくは、この図面に示されるように第3のレンズ225の直後に位置付けることができる。これは、z方向でのコントラストをさらに改善できる。
【0124】
ファイバー203および分光光度計227は、通常は、第1のファイバー203から出る光の方向239と分光光度計227に進入する光の方向241とが、α=90°の角度となるように配置される。2つの構成要素の代替の配置、およびその結果として、α≠90°の角度をもたらす、そこから出る/そこに進入する光の方向(それぞれ、239および241)も理解され得る。
【0125】
ファイバー203、および第2のファイバー(存在する場合)は、多重モードのモードファイバーとすることが好ましいが、単一モードのファイバーであってもよい。
【0126】
対物レンズ215に関する1つの選択肢の詳細を図5に示す。ここで、レンズは、第1の素子510および第2の素子512を有する複合レンズであり、素子512は素子510に対して遠位に位置付けられる。2つのレンズ素子は、円筒形の筐体のそれぞれの領域514、516に設けられ、その領域の間には圧電性リング素子518が設けられる。電圧をリング素子518に印加して、領域516に対して領域514を動かすことによってその軸長を変化させるための手段が提供され(図示されない)、それによりレンズ215の焦点の位置が変更される。
【0127】
図6では、焦点距離を可変とする代替の形態が示される。領域514は、雌ネジがきられ、領域516に環状ヘッド522で固定された雄ネジがきられたシリンダー520上に置かれる。領域514および516は、可変の間隙524によって離間される。ネジ山のピッチは、焦点距離の必要な制御を行なうのに十分細かくなっている。領域514の回転により、領域514の軸方向位置をシリンダー520に沿って動かし、対物レンズの焦点距離を変更する。
【0128】
他の代替手段は、対物レンズを交換可能として、固定焦点距離の異なる複数の対物レンズを準備するか、または同じ焦点距離を有し、上記で言及されるように、異なる深度の焦点を規定するように各々が異なる皮膚係合部材を有する複数の対物レンズを準備することである。
【0129】
図11は、プローブ内で受信され分光光度計に進むラマン信号の発生源の望ましい深度プロファイルを示す。深度の発生源は、皮膚の表面である。相対強度は、所与の深度から生じる光子が分光光度計に達する確率を示す。皮膚の下200μm未満で生じる光子は、分光光度計検出器に達する可能性が低い。受信される光子のほとんどは、皮膚表面下250~400μmで発生している。そのため、間質液中のグルコース等の選ばれた分析物の濃度に関するラマンピークの強度は、正確な測定の基礎を提供する可能性が高い。
【0130】
測定されたグルコースラマン信号が、角質層内ではなく間質液中で発生していることを検証するために、本発明によれば、ラマンスペクトルの他のピークの強度が分析される。図7に典型的なスペクトルを示す。
【0131】
これらのスペクトルの多数において、883~884cm-1でのピークが、893-6cm-1でのピークよりも若干高いことが観察できる。これらのスペクトルに関して、グルコースに関するピークの高さが、血糖測定値の化学的性質と十分に相関することも分かっている。
【0132】
図7の最の上側にある患者番号127からのスペクトルは、そのような良好な相関を提供しなかった。この例において、893-6cm-1ピークの高さに対する883~884cm-1ピークの比率は0.75未満であり、いくつかの測定にわたって平均するとたった0.34であった。この患者は、測定部位では異常に厚い角質層を有していた。OCT測定では、この患者は、指腹領域の測定された角質層の厚さが350~500μmであったが、患者114は150~300μmであったことを示している。患者114では、いくつかの測定にわたるピーク高さ比の平均は1.23であった。患者127のスペクトルでは、これらの2つのピークの高さの順序は逆である。
【0133】
図8は、多数の患者に対して、化学的に測定されたグルコースに対する本発明を使用して得られた予測グルコースのプロットを示す。患者127から得られた測定値(黒点)は、ラマンと化学測定が概して良好な相関を共有しないことがわかる。
【0134】
図9は、1人の患者(患者114)において実施された、いくつかの異なる測定に対する同様の相関プロットを示す。これは、図8の黒の点と対照的比である。
【0135】
図7で見られるように、各患者に対するスペクトルは、波数が小さくなるほど上昇するバックグラウンドまたはベースラインを有する。局所的ベースラインレベルからのピーク高さが測定される。
【0136】
ピーク位置の決定後、ピークベースラインを、ピークの両側でのベースラインレベルから推定できる。両側でのベースライン高さを平均化して、ピークの最大強度からさし引き、ベースライン補正されたピーク高さを求める。代替的に、繰返し手法によって窓の付いた多項式ベースラインが推定されてもよく、ピークの周りの狭い特定領域中で減算されてもよい。これは、スペクトル領域のベースラインを0の辺りに移動させて、それによりピークよりも下のベースラインを取り除く。
【0137】
患者番号127からのスペクトルでは、波数1445cm-1および1650cm-1でのピークが異常に大きいことも顕著である。883~884cm-1でのピークが893-6cm-1でのピークよりも若干高いが、波数1445cm-1および1650cm-1でのピークが異常に大きい場合、測定深度の適合性を疑う理由となる。
【0138】
図10で見られるように、883~884cm-1ピークおよび893-6cm-1ピークのピーク高さの比率が1を超える場合であっても、1445cm-1および1650cm-1ピークの高さが異常に大きい可能性がある。図10では、患者17(上部)のスペクトルおよび患者107(下部)のスペクトルの両方でこの比率は1を超えるが、患者17に対する1445cm-1ピークの高さは、患者107に対するものよりも実質的に大きい。患者17の測定における予測交差検証の平均二乗誤差の平方根(RMSEPCV)は、10.7mmol/lであったのに対して、平均ではたった2.5mmol/lであることが分かっている。したがって、患者17のような患者に対する測定を拒否し、より良い測定部位を探すことが好ましい場合がある。
【0139】
これらのピークの一方または両方は、上で説明されるように、多数測定に基づいて、それらがそのような測定の平均よりも1標準偏差を超えて大きい場合、異常に大きいと見なすことができる。
【0140】
波数883~884cm-1および893-6cm-1でのピークの比率が0.75もしくは他の選択されるカットオフ数Rを下回るか、または波数1445cm-1および1650cm-1でのピークが異常に大きく、したがって披検皮膚成分の濃度を測定するための配置の適合性を疑う原因がある場合、代替の測定部位を選択できる。代替としては、プローブを、ラマン信号が発生する深度を変更するように手動で、または自動プロセスによって調整できる。これは、図11においてピークを正しい位置に近づける効果を有するだろう。このため、ユーザは、皮膚表面下のレンズが合焦する深度を上昇させるようにプローブを調整してもよく、ピーク高さの分析を繰り返してもよい。代替的に、プローブを、コンピュータ111からの入力によって調整して、要求されるピーク高さ関係が達成されるまで合焦深度を変更してもよい。
【0141】
これらのスペクトル分析およびレンズ調整の事前準備は、以下の修正された具体例のすべてに同様に適用される。
【0142】
図3は、本発明の第2の具体例を示す。光学プローブ301は、光を光学プローブ301に誘導するための入射光用光ファイバー203と、入射光205を平行にするための第1のレンズ207と、0~100の任意の割合の入射光の周波数外の周波数を遮断する第1のフィルター209と、入射光205を皮膚213内で合焦させ、皮膚213からの変質した光221を収集するための第2のレンズ215と、変質した光221を光学的に選別するための第2のフィルター223と、変質した光221を分光光度計227内で合焦させるための第3のレンズ225と、入射光の強度のばらつきを検出する光ロギング装置231とを備える。
【0143】
ファイバー203、および存在してもよい任意の第2のファイバーは、多重モードのモードファイバーであることが好ましいが、単一モードのファイバーであってもよい。ファイバー203および分光光度計227は、通常は、第1のファイバー203から出る光の方向と分光光度計227に進入する光の方向とが、垂直であるように配置される。これらの構成要素203および227の代替の配置、およびその結果として、そこから出る/そこに進入する光の方向も使用できる。
【0144】
2つのフィルター209および223は、通常は、帯域フィルター、ノッチフィルター、エッジフィルター等である。第2のレンズ215は、好ましくは凸面であるが、非球面または平面であってもよい。
【0145】
光学プローブ301は、0~100の任意の割合の光を反射または透過するダイクロイックミラー303をさらに備える。ダイクロイックミラー303は、この具体例では、入射光205の伝播方向に対して45°の角度で位置付けられるが、同様に0~90°の角度で位置付けられてもよい。
【0146】
本発明の第2の具体例によれば、ダイクロイックミラー303は、入射光205の大半がダイクロイックミラー303を通過するようにし、光ロギング装置231で検出される入射光のより少ない部分229のみを反射する。変質した光221は、約90度の角度でダイクロイックミラー303によって反射される。
【0147】
本発明の一具体例では、ダイクロイックミラー303によって反射および透過される入射光205の割合は、それぞれ、re_inが(re_in+tr_in)の30%以下であり、tr_inが(re_in+tr_in)の70%以上であり、ダイクロイックミラー303によって反射および透過される変質した光221の割合は、それぞれ、re_seが(re_se+tr_se)の70%以上であり、tr_seが(re_se+tr_se)の30%以下である。
【0148】
本発明の別の具体例では、ダイクロイックミラー303によって反射および透過される入射光205の割合は、それぞれ、re_inが(re_in+tr_in)の10%以下であり、tr_inが(re_in+tr_in)の90%以上であり、ダイクロイックミラー303によって反射および透過される変質した光221の割合は、それぞれ、re_seが(re_se+tr_se)の90%以上であり、tr_seが(re_se+tr_se)の10%以下である。
【0149】
任意で、光学プローブ301は、第2のレンズ215と皮膚213との間に位置付けられる皮膚係合部材を構成する薄い窓219と、第1の光学アパーチャ233、通常は第2のレンズ215と皮膚213との間に位置付けられる第2のアパーチャ235と、通常は第3のレンズ225の直前に位置付けられる第3のアパーチャ237とをさらに備えてもよい。本発明のこの第2の具体例によれば、アパーチャ233および235は、別個の素子で形成される。しかしながら、分光光度計227と通信する第2のファイバーの狭い開口部は、第1のアパーチャ233として同様に十分に機能することができ、光が出る/第2のレンズ215によって収集される点における光学プローブ301の狭い開口部は、第1のアパーチャ233として同様に十分に機能することができる。
【0150】
再び、皮膚の侵入深さ220は、理想的には200(または210)~300μmに設定される。さらに、他の用途に対して調整可能に作製されてもよく、この場合もやはり、それが光学プローブ301の一部である場合、典型的な試料の侵入深さ220は、結果として第2のレンズ215の焦点距離218および窓219の厚さに応じて150~500μmの範囲である。より短いおよびより長い、双方の侵入深さ220を得ることもできる。
【0151】
光学プローブ301の利点は、図2に示される光学プローブ201に関して記載されるものと同じである。
【0152】
図4は本発明の第3の具体例を示す。光学プローブ401は、光を光学プローブ301に誘導するための入射光用光ファイバー203と、入射光205を平行にするための第1のレンズ207と、0~100の任意の割合の入射光の周波数外の周波数を遮断する第1のフィルター209と、入射光205を皮膚213内で合焦させ、皮膚213からの変質した光221を収集するための第2のレンズ215と、変質した光221を光学的に選別するための第2のフィルター223と、変質した光221を分光光度計227内で合焦させるための第3のレンズ225と、入射光の強度のばらつきを検出する光ロギング装置231とを備える。
【0153】
前述の通り、ファイバー203、および任意の存在するさらなるファイバーは、多重モードのモードファイバーであることが好ましいが、単一モードのファイバーであってもよい。2つのファイバー203および227は、通常は、第1のファイバー203から出る光の方向と分光光度計227に進入する光の方向とが、垂直であるように配置される。2つのファイバー203および227の代替の配置、およびその結果として、そこから出る/そこに進入する光の方向も、理解できる。
【0154】
2つのフィルター209および223は、通常は、帯域フィルター、ノッチフィルター、エッジフィルター等である。第2のレンズ215は、好ましくは凸面であるが、非球面または平面であってもよい。
【0155】
光学プローブ401は、0~100の任意の割合の光を反射または透過するダイクロイックミラー403をさらに備える。ダイクロイックミラー403は、この具体例では、入射光205の伝播方向に対して45°の角度で位置付けられるが、同様に0~90°の角度で位置付けられてもよい。
【0156】
本発明の第3の具体例によれば、ダイクロイックミラー403は、入射光205の大半を皮膚213に対して90度の角度で反射し、変質した光221を通過させる。第1および第2の具体例とは反対に、光ロギングに使用される入射光のより少ない部分229は、ダイクロイックミラー403を通過した後、またはダイクロイックミラー403によって反射された後、収集されない。代わりに、第1のフィルター209とダイクロイックミラー403との間に位置付けられた光学分割装置405を用いて、入射光のより少ない部分229を光ロギング装置231上に方向付ける。分割装置405は、ビームスプリッター、入射光のほとんどを通過させるダイクロイックミラー、低密度フィルター等であることができる。
【0157】
本発明の一具体例では、ダイクロイックミラー403によって反射および透過される入射光205の割合は、それぞれ、re_inが(re_in+tr_in)の90%以上であり、tr_inが(re_in+tr_in)の10%以下であり、ダイクロイックミラー403によって反射および透過される変質した光221の割合は、それぞれ、re_seが(re_se+tr_se)の10%以下であり、tr_seが(re_se+tr_se)の90%以上である。
【0158】
任意で、光学プローブ401は、第2のレンズ215と皮膚213との間に位置付けられる薄い窓219と、第1の光学アパーチャ233と、通常は第2のレンズ215と皮膚213との間に位置付けられる第2のアパーチャ235と、通常は第3のレンズ225の直前に位置付けられる第3のアパーチャ237とをさらに備えてもよい。本発明のこの第2の具体例によれば、アパーチャ233および235は、各々別個の素子として形成される。しかしながら、分光光度計227と通信する第2のファイバーの狭い開口部は、第1のアパーチャ233として同様に十分に機能することができ、光が出る/第2のレンズ215によって収集される点における光学プローブ201の狭い開口部は、第1のアパーチャ233として同様に十分に機能することができる。
【0159】
典型的な試料の侵入深さ220は、それが光学プローブ401の一部である場合、第2のレンズ215の焦点距離218および窓219の厚さに応じて150~500μmの範囲である。より短いおよびより長い、双方の侵入深さ220を得ることもできる。
【0160】
光学プローブ401の利点は、図2に示される光学プローブ201に関して記載されるものと同じである。
【0161】
光学プローブ201、301、および401は、内部の光学素子が互いに極めて近接して位置付けられるようにすべて構成され、図2図4は、例示に過ぎず、異なる光学素子間の正確な距離を示すものではない。
【0162】
光学プローブ内部に光学素子を可能な限り近接して置くことの利点は、この特徴により、入射光および/または変質した光の回折による影響を低下させるため、試料の焦点での入射光の強度および変質した光が収集される効率の両方を向上させることである。
【実施例
【0163】
窓235はないが概ね図2を参照して説明された装置を、一連の志願者の指腹の皮膚と直接接触させられた対物レンズ215の下面から約250μmの深度に、光の出力を合焦させるように設定した。
【0164】
各患者からラマンスペクトルを得た。試料の結果を図7に示す。各患者から有意なグルコース濃度測定が得られたかどうかに留意した。1事例(患者127)では、可能な範囲で角質層が厚過ぎたことに留意した。図7では、883/4cm-1でのコラーゲンI型のピークが隣接する893/5/6cm-1のリン酸ジエステル、デオキシリボースのピークよりも小さく、883/4cm-1と893/4/5/6cm-1のピークの相対高さが他の患者と比較して反転していることがわかる。これは、角質層の底部の上下におけるコラーゲンI型およびDNAの異なる存在量に起因する。893-6cm-1ピークと比較して若干高さに欠けるか、またはより好ましくは、それよりも高い883/4cm-1ピークは、収集される信号が角質層よりも下の皮膚の部分から発生する状況と一致する。883/4cm-1ピークよりもほんのわずかに高さが低い、またはそれよりもさらに比較的高い893-6cm-1ピークは、通常よりも厚い角質層を有する異常値であり、信号が角質層内から発生していることを示す。
【0165】
1445cm-1および1650cm-1でのピークが比較的高いことも異常であり、すなわち、高い確率で角質層内に由来する信号をもたらす厚い角質層を有する患者を示す。
【0166】
これらのピークの相対高さを検出することによって、装置は、各患者の角質層が、良好なグルコース読取値が得られるために十分に薄かったかどうかを示す出力を提供することができた。
【0167】
さらなる安全策として、883/4cm-1と893-896cm-1ピークとの比率が選択された閾値を超え、したがって状況が角質層よりも下から生じる信号と一致する場合にも、1445cm-1および1650cm-1でのピークが同時に、他の部位や他の人物のその測定の統計的に適切な試料の平均サイズと比較して、比較的大きいかを調査することを選んでもよい。
【0168】
図12は、空気中で160μmの非常に短い焦点深度に設定される装置を使用して得られるラマンスペクトルを示す。この焦点深度は、皮膚内のグルコース測定を行うには短すぎる。図12のそれぞれのスペクトルは、各指および親指の指腹、さらに母指球から得た。角質層は、親指において最も厚く、母指球において最も薄い。1420cm-1でのピークは、親指において最大であり、母指球スペクトルにおいて最小であることが観察可能である。このピークは、DNAの成分である2-デオキシリボースから発生できる。スペクトルが角質層の上部から発生しているため、使用される焦点が短いため、これらの結果は、角質層の上部層におけるDNAの濃度が高いことを示すことができる。これは、水分含量がより少ないことに起因することがある。
【0169】
この位置での比較的大きいピークは、ラマンスペクトルが皮膚表面下の浅すぎる深度から得られていることの指標としても受け取ることができ、装置の再調整が必要であることを示す。具体的には、1420cm-1でのピークが1445cm-1でのピークのサイズの1/3よりも大きい場合、システムは、信頼性のある濃度測定に対して好適に設定されていないと見なされるべきであり、光の合焦の深度およびラマン信号が集合する深度を上昇させる必要がある。
【0170】
符号の一覧
101:光学プローブ
103:光源、例えばレーザー
105:入射光用光ファイバー
107:試料、すなわち患者の腕
109:電気信号接続
111:コンピュータ
201:第1の具体例による光学プローブ
203:入射光用光ファイバー
205:入射光
207:第1のレンズ
209:第1のフィルター
211:ダイクロイックミラー
213:皮膚
215:第2のレンズ
217:焦点
218:第1のレンズの焦点距離
219:窓
220:侵入深さ
221:変質した光
223:第2のフィルター
225:第3のレンズ
227:分光光度計
229:光ロギングに使用される入射光の小部分
231:光ロギング装置
233:第1のアパーチャ
235:第2のアパーチャ
237:第3のアパーチャ
301:第2の具体例による光学プローブ
303:ダイクロイックミラー
401:第3の具体例による光学プローブ
403:ダイクロイックミラー
405:光学分割装置
510 複合レンズの第1の素子
512 複合レンズの第2の素子
514 レンズ筐体の第1の区分
516 レンズ筐体の第2の区分
518 圧電性リング素子
520 ネジシリンダー
522 環状ヘッド
524 可変の間隙
【0171】
本明細書において、明示的に別途指示されない限り、「または(or)」という語は、その条件の一方のみが満たされることを必要とする演算子「排他的論理和」とは対照的に、定められる条件の一方または両方が満たされる場合、真の値を返す演算子という意味で使用される。「備える、含む(comprising)」という語は、「~からなる(consisting of)」という意味ではなく、むしろ「含む(including)」という意味で使用される。上記において示されたすべての先行技術は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における任意の先行の公開文書は、それらの教示が、本出願時点においてオーストラリアまたはその他において共通の一般的知識であったことの承認または表現として認められるべきではない。
図1
図2
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図10
図11
図12