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  • 特許-受動脱気によるインクフィルタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】受動脱気によるインクフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220525BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20220525BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B41J2/175 201
B41J2/18
B41J2/19
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020500724
(86)(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2018067853
(87)【国際公開番号】W WO2019011705
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】62/530,764
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512193425
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マコーリフ,パトリック
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-107453(JP,A)
【文献】特開2008-213314(JP,A)
【文献】特開2018-058255(JP,A)
【文献】特開2016-141063(JP,A)
【文献】特表2015-525691(JP,A)
【文献】国際公開第2016/014077(WO,A1)
【文献】特開2003-019816(JP,A)
【文献】特開2009-126086(JP,A)
【文献】米国特許第6481837(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク送達システムのためのインクフィルタにおいて、
フィルタ入口ポートと、フィルタ出口ポートと、ベントポートとを有するフィルタチャンバであって、前記ベントポートが前記フィルタチャンバの屋根に位置付けられている、フィルタチャンバと、
前記フィルタ入口ポートと前記フィルタ出口ポートとの間に位置付けられたフィルタ材と、
前記ベントポートに接続された閉じたベントチャンバと
を備え、
前記ベントチャンバが、前記ベントポートに接続された一端と、覆われた反対端と、大気に露出された少なくとも1つの壁とを有する空気透過性ポリマーチューブからなる
ことを特徴とするインクフィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載のインクフィルタにおいて、
前記ポリマーチューブが、前記ベントポートから略上方へ延在し、前記ベントチャンバの側壁を画定する
ことを特徴とするインクフィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクフィルタにおいて、
前記ベントポートが、前記フィルタチャンバにおいて未濾過のインクから気泡を除去するために位置付けられている
ことを特徴とするインクフィルタ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のインクフィルタにおいて、
前記空気透過性ポリマーが、5~50Barrer(16.74~167.4×10-19kmol m/(m s Pa))の酸素透過性を有する
ことを特徴とするインクフィルタ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のインクフィルタにおいて、
前記ベントチャンバが、拡散チューブを介して前記ベントポートに接続されている
ことを特徴とするインクフィルタ。
【請求項6】
請求項に記載のインクフィルタにおいて、
前記拡散チューブが空気不透過性の側壁を有する
ことを特徴とするインクフィルタ。
【請求項7】
請求項6に記載のインクフィルタにおいて、
前記拡散チューブが1~10cmの長さを有する
ことを特徴とするインクフィルタ。
【請求項8】
インクジェットプリンタにおいて、
所定のインクレベルを有するインクを含むインクタンクと、
前記所定のインクレベルより下に位置付けられた請求項1乃至7の何れか一項に記載のインクフィルタと、
前記所定のインクレベルより上に位置付けられたインクジェット印刷ヘッドと
を備え
ことを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項9】
請求項に記載のプリンタにおいて、
前記ベントチャンバが、前記プリンタのアイドル期間中、正の静圧でインクを含む
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のプリンタにおいて、
前記ベントチャンバの少なくとも一部が、前記所定のインクレベルより上に位置付けられている
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項11】
請求項8乃至10の何れか一項に記載のプリンタにおいて、
前記ベントチャンバの少なくとも一部が、前記所定のインクレベルより下に位置付けられている
ことを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタのインク送達システムで使用するためのインクフィルタに関する。本発明は、主として、気泡でブロックされたインクフィルタを再生するために開発された。
【背景技術】
【0002】
スモールオフィス/ホームオフィス(「SOHO」)プリンタ、ラベルプリンタ、デジタルインクジェットプレス、及び大判プリンタを含む、Memjet(登録商標)技術を採用したインクジェットプリンタは、複数の様々な印刷フォーマット用に市販されている。Memjet(登録商標)プリンタは通常、使用者が交換可能な1つ又は複数の静止したインクジェット印刷ヘッドを備える。たとえば、デスクトッププリンタは、単体の使用者交換式多色又はモノクロ印刷ヘッドを備えてもよく、高速のデジタルプレスは、媒体供給方向に沿って一列に整列した複数の使用者交換式モノクロ印刷ヘッドを備えてもよく、大判プリンタは、大判ページ幅にわたるように、互い違いに重なった配列の複数の使用者交換式印刷ヘッドを備えてもよい。
【0003】
インクはインク送達システムを介してインクジェット印刷ヘッドに供給され、インク送達システムは主として、所定の静圧で印刷ヘッドにインクを送達するために設計されている。インク送達システムは通常、インクから微粒子を濾過するためのインクフィルタも含む。インクフィルタは、入口及び出口を有するチャンバに収容された任意の適切なフィルタ材を備えてもよい。
【0004】
気泡は、インクジェットプリンタの長年の問題である。インクジェットノズルに到達した気泡は、ノズルをブロックする可能性があり、破局的なデプライムイベントを引き起こす可能性がある。気泡は、フィルタ材の微小な孔をブロックすることによって、インク送達システムにおけるインクフィルタの有効性を低下させる可能性もある。
【0005】
気泡に関連する問題は、閉じたインク送達システムにおいて脱ガスインクを使用することによってある程度は軽減することができる。しかしながら、脱ガスインクが採用されるときでさえ、このようなインク送達システムは気泡の問題の影響を受けないというわけではない。たとえば、印刷ヘッドを交換できるように印刷ヘッドを通して空気が吸い込まれるとき、印刷ヘッドデプライミング作動によってインク送達システムに意図的に空気を導入することがある。この導入された空気は、インク送達システムを循環し、インクフィルタに捕捉される可能性があり、それによって、インクフィルタの有効性が低下し、印刷品質に悪影響を与える。インクフィルタが気泡によって破局的にブロックされる場合、使用者によって、面倒であり時間も浪費する交換が必要となる。
【0006】
先行技術に記載のいくつかのインク送達システムにおいて、インクフィルタは、フィルタ材を収容するフィルタチャンバから空気を除去する脱気ポンプに接続されている。脱気ポンプは、インクフィルタで捕捉された気泡を、気泡の連続的増加による長期的な問題を引き起こすことなく、大気中に逃がすことができることを保証する。しかしながら、脱気ポンプは、インク送達システムのコスト及び複雑さを増加させる。
【0007】
したがって、脱気ポンプに頼ることなく気泡の除去が可能であるインクフィルタを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様において、インク送達システムのためのインクフィルタが提供され、当該インクフィルタは、
フィルタ入口ポートと、フィルタ出口ポートと、ベントポートとを有するフィルタチャンバであって、ベントポートがフィルタチャンバの屋根に位置付けられている、フィルタチャンバと、
フィルタ入口ポートとフィルタ出口ポートとの間に位置付けられたフィルタ材と、
ベントポートに接続された閉じたベントチャンバと
を備え、
ベントチャンバは、空気透過性ポリマーからなる、大気に露出された少なくとも1つの壁を有する。
【0009】
任意の空気がフィルタチャンバに入る場合、第1の態様によるインクフィルタは有利なことには、インクフィルタの受動的再生を可能にする。
【0010】
好ましくは、ベントチャンバは、ベントポートに接続された一端と、覆われた反対端とを有する空気透過性ポリマーチューブからなる。
【0011】
好ましくは、ポリマーチューブは、ベントポートから略上方へ延在し、ベントチャンバの側壁を画定する。
【0012】
好ましくは、ベントポートは、フィルタチャンバにおいて未濾過のインクから気泡を除去するために位置付けられている。
【0013】
好ましくは、空気透過性ポリマーは、5~50Barrer(16.74~167.4×10-19kmol m/(m s Pa))の酸素透過性を有する。
【0014】
1つの実施形態において、ベントチャンバは、拡散チューブを介してベントポートに接続されている。拡散チューブは通常、空気不透過性の側壁と、1~10cmの長さとを有する。
【0015】
好ましくは、ベントチャンバは、インクフィルタを組み込むプリンタの寿命の大部分にわたって、正の静圧でインクを含む。
【0016】
好ましくは、ベントチャンバは、インクフィルタを組み込むプリンタのアイドル期間中、正の静圧でインクを含む。
【0017】
第2の態様において、
所定のインクレベルを有するインクを含むインクタンクと、
所定のインクレベルより下に位置付けられたインクフィルタと、
所定のインクレベルより上に位置付けられたインクジェット印刷ヘッドと
を備え、
インクフィルタが、
インクタンクからインクを受け取るためのフィルタ入口ポートと、印刷ヘッドにインクを送達するためのフィルタ出口ポートと、ベントポートとを有するフィルタチャンバであって、ベントポートがフィルタチャンバの屋根に位置付けられている、フィルタチャンバと、
フィルタ入口ポートとフィルタ出口ポートとの間に位置付けられたフィルタ材と、
ベントポートに接続された閉じたベントチャンバと
を備え、
ベントチャンバが、空気透過性ポリマーからなる、大気に露出された少なくとも1つの壁を有する、
インクジェットプリンタが提供される。
【0018】
好ましくは、空気透過性ポリマーは、所定の正の静圧で20日以内、より好ましくは10日以内のインクフィルタの再生を可能とする十分な透過性を有する。
【0019】
好ましくは、ベントチャンバの少なくとも一部は、所定のインクレベルより上に位置付けられている。
【0020】
好ましくは、ベントチャンバの少なくとも一部は、所定のインクレベルより下に位置付けられている。
【0021】
第1の態様に関連して記載された好ましい実施形態は、当然、第2の態様に等しく適用可能である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「インク」という用語は、インクジェット印刷ヘッドから印刷することができる任意の印刷流体を意味するものとする。インクは、着色剤を含んでもよく、又は含まなくてもよい。したがって、「インク」という用語は、従来のダイベース又は顔料ベースのインク、赤外線インク、媒染剤(たとえば、プレコート又はフィニッシャ)、3D印刷流体などを含んでもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、「プリンタ」という用語は、従来のデスクトッププリンタ、ラベルプリンタ、複製装置、複写機、デジタルインクジェットプレスなどの、印刷媒体に印をつけるための任意の印刷装置を指す。1つの実施形態において、プリンタは枚葉給紙印刷装置である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
添付図面を参照して、本発明の実施形態が単なる例として以下に説明される。
【0025】
図1図1は、第1の態様によるインクフィルタを組み込むプリンタインク送達システムを概略的に示す。
図2図2は、第1の態様によるインクフィルタの斜視図である。
図3図3は、図3に示されたフィルタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
重力送りインク送達システム
重力送りインク送達システムは、第1の態様によるインクフィルタの1つの例示的な使用として以下で説明される。しかし、当然のことながら、第1の態様によるインクフィルタは、インクフィルタが大部分の時間、正の静圧でその中に含まれるインクを有する任意のインク送達システムでの使用に等しく適している。
【0027】
図1を参照すると、印刷ヘッド4にインクを供給するためのインク送達システムを有するプリンタ1が概略的に示されている。インク送達システムは、米国特許出願公開第2011/0279566号明細書及び米国特許出願公開第2011/0279562号明細書に記載のシステムと同様の機能を有する重力送りシステムであり、これらの特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
インク送達システムは、第1のインクライン10を介して印刷ヘッド4の印刷ヘッド入口ポート8に接続されたインク出口ポート106を有する中間インクタンク100を備える。中間インクタンク100のインク戻りポート108は、インクフィルタ200を組み込む第2のインクライン16を介して印刷ヘッド4の印刷ヘッド出口ポート14に接続されている。よって、中間インクタンク100と、第1のインクライン10と、印刷ヘッド4と、インクフィルタ200を組み込む第2のインクライン16とは、閉じた流体ループを画定する。通常、第1のインクライン10及び第2のインクライン16は、特定の長さの可撓性チューブで構成されている。
【0029】
印刷ヘッド4は、印刷ヘッド入口ポート8と第1のインクライン10とを解放可能に相互接続する第1の連結部3と、印刷ヘッド出口ポート14と第2のインクライン16とを解放可能に相互接続する第2の連結部5とを用いる使用者交換式である。印刷ヘッド4は通常、ページ幅印刷ヘッドであり、たとえば、米国特許出願公開第2011/0279566号明細書、又は、2016年5月2日に出願された「Monochrome Inkjet Printhead Configured for High-Speed Printing」と題される米国特許出願第62/330,776号明細書に記載の印刷ヘッドであってもよく、これらの特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
中間インクタンク100は、タンクの上部に位置付けられたエアベント109の形態のガスポートを介して大気に通じている。したがって、通常の印刷中に、インクは、負の静圧(「背圧」)で重力を受けて印刷ヘッド4に供給される。換言すれば、印刷ヘッド4の下に位置付けられた中間インクタンク100からのインクの重力送りにより、所定の負の静圧で印刷ヘッドにインクを柔軟にするための圧力調整システムが形成されている。印刷ヘッド4のノズルプレート19で受ける背圧の大きさは、中間インクタンク100内のインクのレベル20からのノズルプレートの高さhによって決まる。
【0031】
示される実施形態において、中間タンク100は、インク入口ポート110と、インク出口ポート106と、戻りポート108とを有する下方チャンバ120を備える。下方チャンバ120は、上方チャンバの空気にさらされたインクから下方チャンバを保護し、同時に、圧力の重力制御をさらに可能にするタンク拡散チューブ124を介して上方チャンバ122に接続されている。タンク拡散チューブ124を組み込む中間タンク100は、2017年2月24日に出願された「Ink tank for regulating ink pressure」と題される、同時係属の米国仮特許出願第62/463,330号明細書にさらに詳細に記載されており、この特許の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0032】
インクは、インクカートリッジ24に収容された折たたみ可能なインクバック23を備える大容量インク貯蔵器から、中間インクタンク100のインク入口ポート110に供給される。インクカートリッジ24は、カートリッジベント25を介して大気に通じており、インクがシステムによって消費されると、折たたみ可能なインクバック23は折りたたむことができる。折たたみ可能なインクバック23は通常、インク供給ライン28を介してインク入口ポート110に供給される脱ガスインクを含む空気不透過性フォイルバッグである。インクカートリッジ24は通常、使用者交換式であり、適切なインク供給連結部32を介してインク供給ライン28に接続されている。インク供給ライン28は、中間タンク100に到達する前に、インクを濾過するためのインラインインクフィルタ(図示せず)を備えてもよい。
【0033】
制御システムは、中間インクタンク100内のインクの略一定のレベル、したがって、一定の高さh及び対応する背圧を維持するために使用される。図1に示されるように、制御弁30は、インク供給ライン28に位置付けられて、カートリッジ24から中間インクタンク100へのインクの流れを制御する。制御弁30は、中間インクタンク100の上方チャンバ122の側壁に位置付けられた「高」センサ102及び「低」センサ104(たとえば、光センサ)からのフィードバックを受信する第1の制御装置107の制御下で作動する。インクのレベル20が「低」センサ104を下回ったとき、第1の制御装置107は弁30を開ける信号を送信し、インクのレベルが「高」センサ102に到達すると、制御装置は弁を閉じる信号を送信する。このように、中間インクタンク100内のインクのレベル20は、比較的一定に維持することができる。
【0034】
中間インクタンク100と、第1のインクライン10と、印刷ヘッド4と、第2のインクライン16とを組み込んだ、閉じた流体ループは、プライミング、デプライミング、及び他の必要な流体作動を容易にする。第2のインクライン16は、インクに流体ループを循環させる可逆回転型ぜん動ポンプ40を含む。単なる慣例として、第1のポンプ40の「順」方向は、インク出口ポート106から戻りポート108への(すなわち、図1で示される時計方向の)インクのポンプ圧送に対応し、ポンプの「逆」方向は、戻りポート108からインク出口ポート106への(すなわち、図1に示される反時計方向の)インクのポンプ圧送に対応する。
【0035】
ポンプ40は、様々な流体作動を調整するために、ピンチ弁装置42と協働する。ピンチ弁装置42は、第1のピンチ弁46と、第2のピンチ弁48とを備え、たとえば、米国特許出願公開第2011/0279566号明細書、米国特許出願公開第2011/0279562号明細書、及び米国特許第9180676号明細書に記載のピンチ弁装置のいずれかの形態をとることができ、これらの特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
第1のピンチ弁46は、第1のインクライン10から分岐した空気管50を通る空気の流れを制御する。空気管50は、大気に通じ、閉じた流体ループ用の吸気口として機能する空気フィルタ52で終端している。
【0037】
空気管50により、第1のインクライン10は、インク出口ポート106と空気管50との間の第1の部分10aと、印刷ヘッド入口ポート8と空気管50との間の第2の部分10bとに分割されている。第2のピンチ弁48は、第1のインクライン10の第1の部分10aを通るインクの流れを制御する。
【0038】
ポンプ40、第1のピンチ弁46、及び第2のピンチ弁48は、様々な流体作動を調整する第2の制御装置44によって制御される。前述から、図1に示されるインク送達システムが、多彩な流体作動を提供するのは当然のことである。表1は、プリンタ1で使用されるいくつかの例示的な流体作動に対する様々なピンチ弁及びポンプの状態を示している。当然ながら、これらの例示的な流体作動の様々な組合せを採用することができる。
【0039】
通常印刷(「印刷」モード)時、印刷ヘッド4は、負の背圧で重力を受けてインクを中間インクタンク100から抽出する。このモードでは、ぜん動ポンプ40は遮断弁として機能し、一方、第1のピンチ弁46は閉じ、第2のピンチ弁48は開いて、インク出口ポート106から印刷ヘッド4の第1のポート8へのインクの流れを可能にする。印刷時、インクは、第1の制御装置107の制御下で、中間インクタンク100のインク入口ポート110に供給されて、比較的一定のインクレベル20、及び結果的に、印刷ヘッド4のための比較的一定の背圧を維持する。
【0040】
印刷ヘッドのプライミング又はフラッシング時(「プライム」モード)、インクは、閉じた流体ループを順方向(すなわち、図1に示される時計方向)に循環し、制御弁30は閉じられている。このモードでは、ぜん動ポンプ40は、ポンプ圧送順方向に駆動され、一方、第1のピンチ弁46は閉じ、第2のピンチ弁48は開いて、印刷ヘッド4を介したインク出口ポート106からインク戻りポート108へのインクの流れを可能にする。このようにプライミングを使用して、デプライミングされた印刷ヘッドをインクでプライミングする、印刷ヘッド4から気泡を一掃する、且つ/又は、インクから微粒子を濾過することができる。
【0041】
「待機」モードでは、ポンプ40は停止され、一方、第1のピンチ弁46は閉じ、第2のピンチ弁48は開く。「待機」モードは、中間タンク100のインクレベル20より下に位置付けられたインクフィルタ200の正の静インク圧、及び、インクレベルより上に位置付けられた印刷ヘッド4の負の静インク圧を維持する。印刷ヘッド4の負のインク圧は、インクがノズルプレート19に溢れるのを防ぎ、並びに、プリンタがアイドル状態のときに、色の混合を最小限にする。一方、インクフィルタ200の正のインク圧は、以下でさらに詳細に説明される気泡除去を支援する。通常、印刷ヘッドは、待機モードにおいて、ノズルからのインクの蒸発を最小限にするために蓋をされる(たとえば、米国特許出願公開第2011/0279519号明細書を参照のこと。この特許の内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0042】
印刷ヘッド4の各ノズルがインクで十分にプライミングされるのを保証し、且つ/又は、詰まった任意のノズルから障害物を取り除くために、「パルス」モードを使用することができる。「パルス」モードでは、第1のピンチ弁46及び第2のピンチ弁48は閉じられ、ポンプ40は、逆方向(すなわち、図1に示される反時計方向)に駆動されて、インクを印刷ヘッド4のノズルプレート19のノズルに強制的に通す。制御弁30は、パルスプライミングの間、閉じられ、中間インクタンク100は、パルスプライミングのために必要なインクの貯蔵器を提供する。
【0043】
使用済みの印刷ヘッド4を交換するために、プリンタから印刷ヘッドを取り外すことができるようにするには、その前に印刷ヘッドをデプライミングする必要がある。「デプライム」モードでは、第1のピンチ弁46は開き、第2のピンチ弁48は閉じ、第1のポンプ40は順方向に駆動されて、空気管50を介して大気から空気を吸い込む。印刷ヘッド4をデプライミングした後、プリンタは、印刷ヘッドをインク供給源から切り離す「無効」モードにセットされ、それにより、インクこぼれを最小限にして、印刷ヘッドを安全に取り外すことができるようになる。
【0044】
インクフィルタ
前述から、複数の流体作動が、図1に関連して上で説明されたインク送達システムを使用して実行されてもよいことが理解されるであろう。しかしながら、脱ガスインクを採用するインク送達システムでは、印刷ヘッドのデプライミング時、システムに空気を導入することは好ましくないことがさらに理解されるであろう。溶存空気は、インク送達システムを循環し、印刷によって除去されてもよい。しかしながら、非溶解気泡は、微粒子と同様にふるまい、通常、インクフィルタ200によって捕捉される。
【0045】
図1~3を参照すると、インラインインクフィルタ200は、その屋根203にフィルタ入口ポート202を有するフィルタチャンバ201と、その基部205のフィルタ出口ポート204と、フィルタ入口と出口ポートとの間に位置付けられたフィルタ材206とを備える。フィルタ材206は通常、濾過面を最大化するためにフィルタ出口ポート204のまわりに位置付けられた折りたたみ式の側壁を有する円筒として構成されるが、フィルタ材の任意の適切な構成を採用してもよいことが理解されるであろう。インクフィルタ200は、主として、微粒子が印刷ヘッド4に到達する前に、インクから微粒子を濾過するために機能するが、インクから任意の非溶解気泡を濾過するためにも働く。たとえば、デプライミング作動後、非溶解気泡は、微粒子と同様にふるまい、フィルタ材206によってすぐに捕捉される。他方で、溶存空気を含有するインクは、フィルタ材206を通過し、印刷を介してインク送達システムから排出することができる。中間タンク100を介してインクカートリッジ24からインク送達システムに入る新鮮な脱ガスインクは、最終的にシステムのすべての残りの空気にさらされたインクを移動させる。
【0046】
インクフィルタ200は好ましくは、インク送達システムの交換可能ではない(又は少なくともまれに交換可能である)構成要素であり、フィルタ材206を通過しない非溶解気泡は、インクフィルタの寿命を制限する観点から、潜在的な問題である。これらの気泡は、フィルタ材206の上流で未濾過のインクに捕捉され、フィルタ材の孔をブロックすることによってインクフィルタ200の有効性を低下させることがある。インクフィルタ200があまりに多くの気泡でブロックされる場合、交換又は点検する必要がある。
【0047】
上記のように、脱気ポンプは、インクフィルタから空気を除去するために、いくつかの先行技術のインク送達システムで採用された。しかしながら、脱気ポンプは、インク送達システムのコスト及び複雑さに増加させる。図1に示されたインクフィルタ200において、フィルタチャンバ201の屋根203に画定されたベントポート208は、その形態で閉じたベントチャンバに接続される、屋根203から上方に延在する、ある長さの空気透過性チューブ210。空気透過性チューブ210は、一端211が覆われ、所定の正のインク圧で空気が壁を通って外部に拡散できるのに十分な透過性を有する空気透過性壁を有する。よって、アイドル期間中、気泡は、空気透過性チューブから拡散してもよく、それによって、専用の脱気ポンプを必要とすることなく、インクフィルタを受動的に維持する。効果的に作動するために、空気透過性チューブ210の少なくとも一部は、空気透過性チューブ210のインクが、大部分の時間(たとえば、アイドル期間中)、大気への空気の拡散を可能にする正のインク圧であるように、中間インクタンク100のインクレベル20より下に位置付けなければならない。
【0048】
効果的な空気除去のために、空気透過性チューブ210は通常、100Barrer(334.8×10-19kmol m/(m s Pa))未満、又は、好ましくは、5~50Barrer(16.74~167.4×10-19kmol m/(m s Pa))の酸素透過性を有する。ポリマーチューブは、1~2mmの壁厚と、2~5mmの内径とを有することができる。適切な空気透過性チューブの1つの種類は、Saint-Gobain Performance Plasticsから市販されている熱可塑性エラストマーである、Tygoprene(登録商標) XL-60である。しかしながら、他の空気透過性材料が等しく適していることが理解されるであろう。
【0049】
空気透過性チューブ210は、ベントポート208に直接接続されてもよい、又は、図1に示されるように、ベント拡散チューブ212を介してベントポート208に接続されてもよい。ベント拡散チューブ212は、拡散によって偶発的にシステムに入ることがある、空気透過性チューブ210の空気にさらされたインクから、インク送達システムを保護する。よって、インクフィルタ200の気泡は、気泡がチューブの壁を通る拡散によって除去される空気透過性チューブに浮上させることができる。しかしながら、空気透過性チューブ210の空気にさらされたインクは、ベント拡散チューブ212によるFickian拡散機構(少なくとも適切な時間尺度ではない)によって、インク送達システムに再び入ることはできない。ベント拡散チューブ212は、タンク拡散チューブ124と同様に機能し、したがって、同様の要件を有する。ベント拡散チューブ212は通常、剛性の空気不透過性プラスチックから形成され、通常、1~10cmの長さを有する。たとえば、4cmの長さを有するベント拡散チューブ210は、大部分のインクのための20日以上の拡散時間尺度に対応する。ベント拡散チューブ212は、気泡によって引き起こされる詰まりを回避するために、気泡に対して耐性のある内部断面(たとえば、星型)を有してもよい。
【0050】
インクフィルタ200は、第2のインクライン16のインラインフィルタとして説明されたが、任意の適切なインクラインで使用されてもよいことが理解されるであろう。たとえば、インクカートリッジの交換中、空気の進入の影響を受けやすいインク供給ライン28、又は、第1のインクライン10にインラインインクフィルタが位置付けられてもよい。インク送達システムが、大部分の時間、インクフィルタ200に正のインク圧を提供するように構成される場合、インクフィルタは、空気透過性チューブ210を介したフィルタチャンバ201からの気泡の除去による受動再生エアフィルタとして機能する。
【0051】
もちろん、本発明が、単なる例として説明され、添付の特許請求の範囲で規定された本発明の範囲内で、細部の修正を行うことができるのは当然のことである。

図1
図2
図3