(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】3D印刷用の光硬化不透明な材料及びその調製方法、3D印刷製品及び3Dプリンター
(51)【国際特許分類】
B29C 64/106 20170101AFI20220525BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20220525BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20220525BHJP
B29C 64/357 20170101ALI20220525BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220525BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220525BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220525BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220525BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20220525BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20220525BHJP
C08F 220/34 20060101ALI20220525BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B29C64/106
B29C64/264
B29C64/314
B29C64/357
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y70/00
B33Y80/00
C08F220/26
C08F220/30
C08F220/34
C08F290/06
(21)【出願番号】P 2020543873
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 CN2018120365
(87)【国際公開番号】W WO2020037888
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-09-03
(31)【優先権主張番号】201810950258.6
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519314847
【氏名又は名称】チューハイ セイルナー スリーディー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHUHAI SAILNER 3D TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン、リークン
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-210951(JP,A)
【文献】特開2017-213812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/106,64/264,64/314,64/357,64/393
B33Y 30/00,70/00,80/00
C08F 220/26,220/30,220/34,290/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D印刷用の光硬化性不透明な材料であって、
30~70重量部の第1のアクリレート成分、20~60重量部の第2のアクリレート成分、0.5~5重量部の光開始剤、0.5~8重量部の補助剤及び0~4重量部の着色剤の成分を含み、
前記第1のアクリレート成分が極性アクリレート成分であり、前記第2のアクリレート成分が弱い極性アクリレート成分と非極性アクリレート成分の少なくとも1種から選択され、
前記第1のアクリレート成分の誘電率が3.6より大きいか又は3.6に等しく、前記第2のアクリレート成分の誘電率が3より小さいか又は3に等しく、
前記第2のアクリレート成分と第1のアクリレート成分間の重量比が2:1より小さく、
前記3D印刷用の光硬化性不透明な材料をインクとして3Dインクジェット印刷を行い、得られる厚さ2mmのテストブロックの光通過率は80%より小さいであることを特徴とする3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項2】
前記第1のアクリレート成分は極性アクリレートオリゴマーと極性アクリレートモノマーの少なくとも1種から選択され、
前記第2のアクリレート成分は誘電率が3より小さいか又は3に等しいアクリレートオリゴマー、及び誘電率が3より小さいか又は3に等しいアクリレートモノマーの少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項1に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項3】
前記極性アクリレートオリゴマーは脂肪族ポリウレタンアクリレートオリゴマーとエポキシアクリレートオリゴマーの少なくとも1種から選択され、
前記極性アクリレートモノマーはヒドロキシアルキルアクリレートモノマー、アルコキシル化アクリレートモノマー及び複素環構造を有するアクリレートモノマーの少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項2に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項4】
前記極性アクリレートオリゴマーはシアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アセトアミド、アミノ及びメルカプトの少なくとも1つが載せられる脂肪族ポリウレタンアクリレートオリゴマー及び/又はエポキシアクリレートオリゴマーから選択されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項5】
前記ヒドロキシアルキルアクリレートモノマーは2-ヒドロキシルエチルアクリレート、2-ヒドロキシルプロビルアクリレート及び4-ヒドロキシルブチルアクリレートの少なくとも1種から選択され、
前記アルコキシル化アクリレートモノマーは2-アクリル酸-2-メトキシエチル、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメチルアクリレート及びアルコキシル化ノニルフェノールアクリレートの少なくとも1種から選択され、
前記複素環構造を有するアクリレートモノマーはテトラヒドロフランアクリレート、アクリル酸-2-フェノキシエチル、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソリル-4-イル)アクリレート及びアクリロイルモルホリンの少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項3に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項6】
前記誘電率が3より小さいか又は3に等しいアクリレートモノマーはビスフェノールAアクリレートモノマー、アルキル(メチル)アクリレートモノマー及びシクロアルキル(メチル)アクリレートモノマーの少なくとも1種から選択され、
前記誘電率が3より小さいか又は3に等しいアクリレートオリゴマーはビスフェノールAアクリレートオリゴマー、アルキル(メチル)アクリレートオリゴマー及びシクロアルキル(メチル)アクリレートオリゴマーの少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項2に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項7】
前記ビスフェノールAアクリレートオリゴマーはジフェノールプロパン構造を持つアクリレートオリゴマーから選択され、
前記アルキル(メチル)アクリレートオリゴマーは前記アルキル(メチル)アクリレートモノマーを構造単位とするホモポリマー又はコポリマーであり、
前記シクロアルキル(メチル)アクリレートオリゴマーは前記シクロアルキル(メチル)アクリレートモノマーを構造単位とするホモポリマー又はコポリマーであることを特徴とする請求項6に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項8】
前記ビスフェノールAアクリレートモノマーはジフェノールプロパン構造を持つアクリレートモノマーから選択され、
前記アルキル(メチル)アクリレートモノマーはアクリル酸ブチル、N-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクタデシルアクリレート、イソノニルアクリレート、ラウリン酸アクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ステアリン酸アクリレート、ドデシルメタクリレート及びイソトリデシルメタクリレートの少なくとも1種から選択され、
前記シクロアルキル(メチル)アクリレートモノマーはイソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルの少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項6に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項9】
前記光開始剤はフリーラジカル系の紫外光開始剤から選択されることを特徴とする請求項1に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項10】
前記補助剤は、強化剤、消泡剤、安定剤及びレベリング剤の少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項1に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項11】
前記着色剤は染料と顔料の少なくとも1種から選択されることを特徴とする請求項1に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料。
【請求項12】
前記光開始剤以外の成分を混合させ、第1の混合物を得るステップと、この後、前記光開始剤が完全に溶けるまで前記第1の混合物に前記光開始剤を添加し、第2の混合物を得るステップと、
前記第2の混合物を濾過し、濾液を回収し、前記3D印刷用の光硬化性不透明な材料を得るステップと、を含むことを特徴とする請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料の調製方法。
【請求項13】
微孔性ろ過膜を利用して前記第2の混合物を少なくとも2回濾過し、前回濾過で利用される微孔性ろ過膜のポアー直径が次回濾過で利用される微孔性ろ過膜のポアー直径より大きくて、且つ最終回濾過で利用される微孔性ろ過膜のポアー直径が3Dインクジェットプリンターの印刷ノズルのジェットホールのポアー直径より小さいであることを特徴とする請求項12に記載の調製方法。
【請求項14】
回収した濾液を脱気処理するステップをさらに含むことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の調製方法。
【請求項15】
3D印刷製品の製造における請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料
の使用。
【請求項16】
インクジェットプリントヘッド、材料保管容器及び前記インクジェットプリントヘッドと材料保管容器を接続するための接続装置を含む3Dプリンターにおける請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の3D印刷用の光硬化性不透明な材料
の使用。
【請求項17】
前記3Dプリンターはコントローラーをさらに含み、前記コントローラーは材料保管容器がインクをインクジェットプリントヘッドに供給するように制御することを特徴とする請求項16に記載の
使用。
【請求項18】
前記3Dプリンターは紫外線光源をさらに含むことを特徴とする請求項16又は請求項17に記載の
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D印刷技術に関し、具体的に、3D印刷用の光硬化不透明な材料及びその調製方法、3D印刷製品及び3Dプリンターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の3D印刷技術、例えば3Dインクジェット印刷技術、ステレオリソグラフィー技術(SLA技術と略称)、プロジェクターデジタル光処理技術(DLP技術と略称)などで用いられた材料(又はインクと称される)は、印刷テストブロックの透明度に応じて区別され、透明な材料と不透明な材料の2種に分けられ得る。そのうち、透明な材料は、無色透明な材料と着色透明な材料(三原色C、M、Yで調合された色である)を含む。不透明な材料は、白い材料と着色不透明な材料を含む。
【0003】
実際の応用では、不透明な材料を使用して作られた3D印刷製品は着色された色の表現能力がより正確であるため、現在、不透明な材料に対する需要量は比較的に大きいである。
【0004】
不透明な材料の製造、特に、光硬化不透明な材料の製造について、現在、最も一般的な作り方は、材料組成物に二酸化チタンを添加して白い材料を得るか、または、二酸化チタンや赤い顔料、青い顔料、黄色い顔料などの着色された顔料を同時に添加し、対応する色の着色不透明な材料を得ることである。かつ、3D印刷製品の透明度は、主に二酸化チタンの添加量に依存し、一般的に、二酸化チタンの添加量の増加につれて、3D印刷製品の透明度はそれに応じて低下する。
【0005】
二酸化チタンは、二酸化チタン粒子を主成分としている白い顔料である。二酸化チタンの密度は、一般的に材料組成物における他の成分の密度より高いため、沈降が発生しやすく、さらに、材料の安定性が悪くなり、特に、3Dインクジェット印刷技術の場合、二酸化チタンの沈降によってプリントヘッドのジェットホールの詰まりや、印刷中の断線が極めて発生しやすくなり、これは、3D印刷製品の品質に支障を与えるだけではなく、3Dプリンターの運用とメインテナンスのコストも増加させる。
【0006】
したがって、3D印刷の流暢さ及び3D製品の品質が保証されるような安定性のよい光硬化不透明な材料を開発することは、現在、解決する必要のある急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の技術における上記欠陥に対して、3D印刷用の光硬化不透明な材料を提供し、二酸化チタンなどの白い顔料を添加しない状況で、3D印刷用の不透明な材料を取得できるため、高い安定性と良好な印刷流暢さの特徴を有する。
【0008】
本発明に係る上記3D印刷用の光硬化不透明な材料の調製方法は、調製工程が簡単で実行可能であるという特徴を有する。
【0009】
本発明は、3D印刷製品を提供し、上記3D印刷用の光硬化不透明な材料を利用して印刷するため、該3D印刷製品が良い品質を有する。
【0010】
本発明は、3Dプリンターを提供し、その材料保管容器に上記3D印刷用の光硬化不透明な材料が収容されているため、印刷流暢さが良く、プリントヘッドのジェットホールが詰まりにくいという特徴を有する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を実現するために、3D印刷用の光硬化不透明な材料を提供し、前記光硬化不透明な材料は、
30部~70部の第1のアクリレート成分、20部~60部の第2のアクリレート成分、0.5部~5部の光開始剤、0.5部~8部の補助剤及び0部~4部の着色剤のような重量部の成分を含み、
そのうち、第1のアクリレート成分が極性アクリレート成分であり、第2のアクリレート成分が弱い極性アクリレート成分と非極性アクリレート成分の少なくとも1種から選択される。
【0012】
本発明に係る3D印刷用の光硬化不透明な材料は、光硬化された前に均一で透明であり、マクロ的には、層状化現象が見えない。それに対して、光硬化過程中には、ミクロ相分離の原理のため、極性の第1のアクリレート成分と弱い極性/非極性の第2のアクリレート成分が架橋によって共重合され、得られたポリマー分子鎖には極性ブロック及び弱い極性及び/又は非極性ブロックが同時に含まれている。異なる極性のブロック間の相容れない反発効果により、コポリマーシステムの相分離が発生したため、最終的に得られた3D印刷製品が不透明であると同時に、コポリマーシステムの相分離が発生したため、3D印刷製品の衝撃強度と靭性を向上させる。
【0013】
上記原因のため、該3D印刷用の光硬化不透明な材料には二酸化チタンなどの白い顔料を添加する必要もなく、3D印刷製品を不透明にすることができる。したがって、白い材料を得る必要がある場合、着色剤を添加しないように選択することができる。着色不透明な材料を得る必要がある場合、着色剤を相応的に適量添加することができる。このように、従来の技術において添加された二酸化チタンの沈降による不透明な材料の安定性低下の問題を解決でき、これにより、印刷の流暢さを向上させ、3D印刷過程中に、伝統的な不透明な材料のプリントヘッドのジェットホールの詰まり又は断線による印刷精度の低下、ひいては構造の一部が印刷されない問題が回避される。特に、着色製品を印刷する場合、印刷精度の向上、及び製品自身の不透明性により、演色がより正確であるようになり、光通過による隣接する色の干渉がないので、最終的に得られた3D印刷製品も品質が非常に高い。
【0014】
現在、業界では、材料硬化した後に得られた印刷テストブロックの透明度に基づいて透明な材料と不透明な材料を区別するのが一般的である。通常、厚さ2mmのテストブロックを印刷し、その光通過率が80%より大きいか又は80%に等しいである場合、透明なものと見なされ、光通過率が80%より小さいである場合、不透明なものと見なされることができる。不透明な材料は、さらに完全に不透明な材料(光通過率が0又は0に近いである)、半透明な材料(光通過率が50%である)及び透明な材料と完全に不透明な材料の間の他の材料を含み得る。
【0015】
本発明に記載の3D印刷用の光硬化不透明な材料も同様に上記業界基準に遵い、光硬化された前に透明にして、光硬化された後の光通過率が80%より小さい。
【0016】
本発明では、極性、非極性及び弱い極性は誘電率の大きさに従って区別され、本分野の通常の定義に従うと、誘電率3.6を極性と弱い極性との分離点とし、非極性物質と弱い極性物質とは明確な定義がおらず、誘電率2.8を分離点とするのが一般的である。
【0017】
上記定義に従い、本発明では、第1のアクリレート成分の誘電率が3.6より大きいか又は3.6に等しいであり、同様に、第2のアクリレート成分の誘電率が3.6より小さい。
【0018】
おおざっぱにいうと、一定の範囲内に、2種のアクリレート成分間の極性差が大きければ大きいほど、光通過率の低い3D印刷製品の取得が有利になり、これは、極性差とコポリマーシステムの相分離の程度にかかわる可能性があると推測されており、したがって、適宜な極性がある第1のアクリレート成分と第2のアクリレート成分を選択することにより、3D印刷製品の光通過率の調整を実現することができる。本発明の具体的な実施過程において、通常、用いられた第2のアクリレート成分の誘電率が3より小さいか又は3に等しい。
【0019】
適宜な極性がある第1のアクリレート成分と第2のアクリレート成分を合理的に選択する方法以外、また、2種のアクリレート成分間の比率を調整することにより、3D印刷製品の透明度を調整してもよい。一般的に、第2のアクリレート成分と第1のアクリレート成分間の重量比が2:1より小さいであるように制御する。
【0020】
おおざっぱにいうと、第2のアクリレート成分と第1のアクリレート成分間の重量比≦1:2である場合、完全に不透明な材料、即ち、光通過率が0又は0に近いである材料を得ることができる。第2のアクリレート成分と第1のアクリレート成分間の重量比>1:2且つ<2:1である場合、透明な材料と完全に不透明な材料の間の材料、即ち、光通過率>0且つ<80%である材料を得て、例えば、極性アクリレート成分と弱い極性アクリレート成分の重量比が1:1程度である場合、半透明な材料、即ち、光通過率が50%である材料を得ることができる。
【0021】
本発明で使用される第1のアクリレート成分は、具体的に、1種又は多種の極性アクリレートオリゴマーであってもよく、または、1種又は多種の極性アクリレートモノマーであってもよく、さらに、少なくとも1種の極性アクリレートオリゴマーと少なくとも1種の極性アクリレートモノマーの混合であってもよい。
【0022】
そのうち、極性アクリレートオリゴマーは、具体的に、脂肪族ポリウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマーなどの1種又は多種であってもよく、特に、シアノ(-CN)、カルボキシル(-COOH)、ヒドロキシル(-OH)、アセトアミド(-NHCOCH3)、アミノ(-NH2)、メルカプト(-SH)などの極性基の少なくとも1つが載せられた脂肪族ポリウレタンアクリレートオリゴマー及び/又はエポキシアクリレートオリゴマーであってもよい。
【0023】
本発明の具体的な実施過程において、使用される脂肪族ポリウレタンアクリレートオリゴマーは、サートマーのCN9021 NS、CN963B80、CN966J75 NS、CN985B88、CN991 NS、CN9167、CN970A60 NSなど、台湾長興公司のポリウレタンアクリレートオリゴマー6101、6103、6153-1、6155W、6185、5104D、DR-U011、DR-U012、DR-U250、DR-U381など、潤奥化工のUnicryl R-7162、鋭昴(Rahn AG)のGenomer 1122、Genomer 4297、Greatech GT8010、Greatech GT8440、Greatech GT-8220、Greatech GT-8270などを含むが、それらに限定されない。
【0024】
具体的には、エポキシアクリレートオリゴマーは、具体的に、ビスフェノールAエポキシアクリレート、フェノールエポキシアクリレートなどの1種又は多種から選択されてもよい。本発明の具体的な実施過程において、エポキシアクリレートオリゴマーは、長興公司の623-100、6231A-80、625C-45など、サートマーのCN104、フェノールCN112C60などを含むが、それらに限定されない。
【0025】
具体的に、極性アクリレートモノマーは、ヒドロキシアルキルアクリレートモノマー、アルコキシル化アクリレートモノマー及び複素環構造を有するアクリレートモノマーの少なくとも1種から選択されてもよい。
【0026】
そのうち、上記ヒドロキシアルキルアクリレートモノマーは、具体的に、2-ヒドロキシルエチルアクリレート(アクリル酸-2-ヒドロキシエチル)、2-ヒドロキシルプロビルアクリレート(2-アクリル酸-2-ヒドロキシプロピルエステル)、4-ヒドロキシルブチルアクリレートなどの少なくとも1種から選択されてもよい。アルコキシル化アクリレートモノマーは、具体的に、2-アクリル酸-2-メトキシエチル、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメチルアクリレート、アルコキシル化ノニルフェノールアクリレートなどの少なくとも1種から選択されてもよい。複素環構造を有するアクリレートモノマーは、具体的に、テトラヒドロフランアクリレート、アクリル酸-2-フェノキシエチル、(2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソリル-4-イル)アクリレート、アクリロイルモルホリンなどの少なくとも1種から選択されてもよい。
【0027】
本発明で使用される第2のアクリレート成分は、具体的に、非極性アクリレートモノマー、非極性アクリレートオリゴマー、弱い極性アクリレートモノマー及び弱い極性アクリレートオリゴマーの少なくとも1種から選択されてもよい。特に、誘電率が3より小さいか又は3に等しいアクリレートオリゴマー及び/又は誘電率が3より小さいか又は3に等しいアクリレートモノマーから選択されてもよい。
【0028】
誘電率が3より小さいか又は3に等しいアクリレートモノマーについては、具体的に、ビスフェノールAアクリレートモノマー、アルキル(メチル)アクリレートモノマー、シクロアルキル(メチル)アクリレートモノマーなどの少なくとも1種を選択してもよい。該ビスフェノールAアクリレートモノマーは、具体的に、ジフェノールプロパン構造を持つアクリレートモノマーから選択されてもよい。例えば、選択できる商品は、日本共栄社のBP-2EMK、BP-4EM、BP-10EA、BP-4PA、サートマー会社のSR601 NS、SR602 NSなどを含む。アルキル(メチル)アクリレートモノマーは、具体的に、アクリル酸ブチル、N-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクタデシルアクリレート、イソノニルアクリレート、ラウリン酸アクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ステアリン酸アクリレート、ドデシルメタクリレート、イソトリデシルメタクリレートなどの少なくとも1種から選択されてもよい。シクロアルキル(メチル)アクリレートモノマーは、具体的に、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、1-アダマンチルメタクリレート、アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどの少なくとも1種から選択されてもよい。
【0029】
誘電率が3より小さいか又は3に等しいアクリレートオリゴマーについては、具体的に、ビスフェノールAアクリレートオリゴマー、アルキル(メチル)アクリレートオリゴマー、シクロアルキル(メチル)アクリレートオリゴマーなどの少なくとも1種から選択されてもよい。そのうち、ビスフェノールAアクリレートオリゴマーは、具体的に、ジフェノールプロパン構造を持つ少なくとも2つのモノマーの付加重合の生成物であるアクリレートオリゴマーから選択されてもよく、具体的な商品は、日本共栄社の3000A、3000MKなどがある。アルキル(メチル)アクリレートオリゴマーは、具体的に、上記アルキル(メチル)アクリレートモノマーを構造単位とするホモポリマー又はコポリマー、例えば、上記挙げられたいずれか1種のアルキル(メチル)アクリレートモノマーのホモポリマー、また、例えば、上記挙げられた2種又は多種のアルキル(メチル)アクリレートモノマーのコポリマーから選択されるものであってもよい。具体的な商品は、Bomar会社の疎水性アクリレートポリマーBR-643、BRC-841、BRC-843、BRC-843D、BR-952、BR-970BT、BR-970Hなどがある。シクロアルキル(メチル)アクリレートオリゴマーは、具体的に、上記シクロアルキル(メチル)アクリレートモノマーを構造単位とするホモポリマー又はコポリマー、例えば、上記挙げられたいずれか1種のシクロアルキル(メチル)アクリレートモノマーのホモポリマー、また、例えば、上記挙げられた2種又は多種のシクロアルキル(メチル)アクリレートモノマーのコポリマーから選択されるものであってもよい。具体的な商品は、韓国Miwon会社のシクロヘキシルエポキシトリアクリレートMEA-3、シクロヘキシルエポキシペンタアクリレートMEA-4などがある。
【0030】
本発明では、用いられた光開始剤は、具体的に、紫外光開始剤であってもよい。特に、フリーラジカル系の紫外光開始剤であってもよく、それにより、フリーラジカルが紫外線照射で生成し、第1のアクリレート成分と第2のアクリレート成分との重合反応が誘発されることができればよい。
【0031】
さらに、上記紫外光開始剤は、具体的に、水素引き抜きのフリーラジカル光開始剤及び/又はクラッキングのフリーラジカル光開始剤であってもよい。そのうち、水素引き抜きのフリーラジカル光開始剤がベンゾフェノン/第三級アミンとチオキサントン/第三級アミンの1種又は多種から選択される。クラッキングのフリーラジカル光開始剤がα-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、アシルホスフィンオキシド及びオキシムエステルの1種又は多種から選択される。
【0032】
チオキサントン/第三級アミンの水素引き抜きのフリーラジカル光開始剤については、チオキサントンは、ITX(イソプロピルチオキサントン)が好ましく、第三級アミン共開始剤は分子構造で水素引き抜きのフリーラジカル光開始剤の水素供与体とされている少なくとも1つのα-Hを含む。常用の第三級アミン共開始剤は、例えば、安息香酸第三アミン、活性アミンなどであってもよい。そのうち、安息香酸第三アミンはN,N-ジメチル安息香酸エチル、2-エチルヘキシルN、N-ジメチルベンゾエート、安息香酸ジメチルアミノエチルなどがある。活性アミンがアクリロイルオキシ基を持つ第三級アミンであり、架橋反応に参与でき、市販品は長興の反応性の第三級アミン共開始剤6420、Rahn AGのGenomer 5142、SolvayのEBECRYL 7100などがある。
【0033】
クラッキングのフリーラジカル光開始剤については、例えば、α-ヒドロキシケトン光開始剤、例えば、商品名が1173(2-ヒドロキシル-2-メチル-1-フェニルアセトン)、184(1-ヒドロキシル-シクロヘキシルベンゾフェノン)、2959(2-ヒドロキシル-2-メチル-1-p-ヒドロキシエチルエーテルフェニルアセトン)などである製品であってもよく、α-アミノケトン、例えば、907(2-メチル-1-[4-メチルチオフェニル]-2-モルホリニル-1-アセトン)、369(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリンフェニル)-1-ブタノン)などの製品であってもよく、また、アシルホスフィンオキシド、例えば、商品名がTEPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-エトキシ-フェニルホスフィンオキシド)、TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド)、819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)などである製品であってもよく、さらに、オキシムエステル光開始剤、例えば、BASFのIrgacure OXE 01及びIrgacure OXE 02であってもよい。
【0034】
本発明では、使用される補助剤は、具体的に、強化剤、消泡剤、安定剤、レベリング剤の少なくとも1種から選択されてもよく、また、実際のニーズに応じて他の補助剤を選択してもよい。そのうち、強化剤は、具体的に、ポリカプロラクトントリオール及びポリオール製品、例えば、易生公司の305T、205N、古迪公司のGreatech GT8003などであってもよい。消泡剤は、現在の従来の消泡剤であってもよく、本発明ではその具体的な種類を特に限定せず、3D印刷用の光硬化不透明な材料製造過程及び印刷中に発生した気泡を排除することができ、発生した気泡によって印刷の流暢さに支障が与えられないようにすることができればよい。選択できる消泡剤は、例えば、BYK会社の有機シリコーンとポリマー消泡剤BYK-088など、変性ポリシロキサン共重合体溶液BYK-1798など、TEGOの有機シリコーンが含まれていない消泡剤TEGO Airex 920、TEGO Airex 921などである。レベリング剤の主な役目は、印刷インク表面のレベリングを促進し、収縮穴や跡などの欠陥を減らし、これにより、滑らかで平らな表面を得ることである。本発明で利用されるレベリング剤は、具体的に、BYK会社のBYK-333、BYK-371、BYK-377などであってもよい。安定剤は、即ち、重合禁止剤であり、3D印刷用の光硬化不透明な材料の沈積をさらに防止し、3D印刷用の光硬化不透明な材料保管中の安定性を確保することができる。常用の安定剤は、例えば、Rahn AGのGENORAD 16、GENORAD 18、GENORAD 20、GENORAD 22などであってもよい。
【0035】
本発明に係る3D印刷用の光硬化不透明な材料はさらに、実際の要求に応じて、着色剤を選択的に添加することができ、具体的に、染料と顔料の少なくとも1種から選択されてもよい。
【0036】
上記に述べたように、不透明な材料については、印刷テストブロックが呈する色に基づき、白い材料と着色不透明な材料に分けられることができる。具体的に、本発明の技術的解決手段については、着色剤の添加量と添加種類に基づき、白い材料又は着色不透明な材料を得ることができ、したがって、実際の要求に応じて着色剤を添加又は添加しないように選択することができる。
【0037】
例えば、白い材料を得るように要請される場合、該3D印刷用の光硬化不透明な材料に着色剤が含まれなくてもよく、材料は印刷前に無色で透明にして、即ち、可視光線(380~780nm)全体の範囲内に非常に高い通過率があるが、印刷硬化した後に白い3D印刷製品が得られる。
【0038】
また、例えば、着色不透明な材料を得るように要請される場合、該3D印刷用の光硬化不透明な材料に適量の青い、赤い、黄色いなどの色の着色剤が含まれてもよく、材料は印刷前に着色で透明にしているが、印刷硬化した後に着色された不透明な3D印刷製品が得られる。
【0039】
かつ、また、第1のアクリレート成分と第2のアクリレート成分間の比率を調整し、及び/又は適宜な極性がある2種のアクリレート成分を選択することにより、上記白い3D印刷製品及び着色された不透明な3D印刷製品は要請された透明度があるようになる。
【0040】
本発明に係る3D印刷用の光硬化不透明な材料は、25℃での粘度が30~65cpsであり、表面張力が20~35dyn/cmであり、40~60℃での粘度が10~15cpsであり、表面張力が20~35dyn/cmであることにより、該材料はプリントヘッドの噴射に適用された粘度があるようになり、これは、印刷に有利であるだけではなく、エネルギー消費を節約した上に、プリントヘッドの耐用年数をも効果的に延長させる。
【0041】
本発明は、上記3D印刷用の光硬化不透明な材料の調製方法をさらに提供し、光開始剤以外の成分を混合させ、第1の混合物を得るステップと、この後、光開始剤が完全に溶けるまで第1の混合物に光開始剤を添加し、第2の混合物を得るステップと、第2の混合物を濾過し、濾液を回収し、3D印刷用の光硬化不透明な材料を得るステップと、を含む。
【0042】
そのうち、第2の混合物に対する上記濾過は、複数回濾過で行われることができ、特に、段階的に濾過することができる。具体的に、微孔性ろ過膜を利用して第2の混合物を少なくとも2回濾過することができる。そのうち、前回濾過で利用される微孔性ろ過膜のポアー直径が次回濾過で利用される微孔性ろ過膜のポアー直径より大きく、且つ、最終回濾過で利用される微孔性ろ過膜のポアー直径が3Dインクジェットプリンターの印刷ノズルのジェットホールのポアー直径より小さいであることにより、製造された3D印刷用の光硬化不透明な材料の印刷流暢さが確保され、プリントヘッドのジェットホールの詰まりが回避される。
【0043】
本発明の具体的な実施過程において、二次濾過で第2の混合物を処理し、そのうち、第一次の濾過ではポアー直径が0.45μmであるガラス繊維膜が利用され、第二次の濾過ではポアー直径が0.22μmであるポリプロピレンフィルムが利用されている。
【0044】
さらに、回収した濾液を脱気処理することができる。濾液を脱気処理することにより、使用過程中に材料が良い流暢さを有することをさらに確保し、材料中の気泡の干渉による印刷断線の発生、さらに、3D物体の成型精度に支障を与えるようなことを回避する。
【0045】
具体的に、脱気処理の操作方式は、真空脱気、大気圧脱気又は加熱脱気であってもよく、そのうちの任意の2種又は多種の脱気方式を選択してもよい。一般的に、脱気処理の時間が5時間を超えないように制御し、本発明の具体的な実施過程において、一般的に、脱気時間を1~3時間内に制御する。
【0046】
本発明の3D印刷用の光硬化不透明な材料の調製は、選択された光開始剤の開始波長範囲以外の環境で行う必要があり、これにより、環境中の光誘発材料組成物における成分の重合反応を回避すると理解できる。
【0047】
本発明はさらに、3D印刷製品を提供し、上記3D印刷用の光硬化不透明な材料を利用して3D印刷によって得られたものである。
【0048】
上記に述べたように、本発明は、不透明な材料を提供しているため、得られた3D印刷製品が白い製品又は着色された非透明な製品である。
【0049】
かつ、上記3D印刷用の光硬化不透明な材料は安定性がよく、印刷中にプリントヘッドのジェットホールの詰まりがなく、印刷流暢さがよいであるため、精度の高い3D印刷製品を得ることが可能である。また、該3D印刷用の光硬化不透明な材料を利用することにより、3D印刷製品は印刷収縮率が低く、機械性能、特に、耐衝撃強度と靭性が優れたという利点があるようになり、3D印刷製品の品質がさらに保証される。
【0050】
本発明はさらに、3Dプリンターを提供し、インクジェットプリントヘッド、材料保管容器及びインクジェットプリントヘッドと材料保管容器を接続するための接続装置を含み、そのうち、材料保管容器に上記3D印刷用の光硬化不透明な材料が収容されている。
【0051】
具体的に、上記材料保管容器の数は光硬化不透明な材料の種類に基づいて配置されることができ、本発明はここで特に限定しない。上記接続装置は、具体的に、上記機能を実現することができれば、接続管又は他の形の接続装置であってもよい。インクジェットプリントヘッドは、具体的に、シングルチャネルプリントヘッド又はマルチチャネルプリントヘッドであってもよく、さらにシングルチャネルプリントヘッドとマルチチャネルプリントヘッドの組み合わせであってもよい。
【0052】
さらに、上記3Dプリンターは、コントローラーをさらに含んでもよく、該コントローラーは材料保管容器がインクをインクジェットプリントヘッドに供給するように制御し、即ち、該コントローラーを介し、材料保管容器中に収容された3D印刷用の光硬化不透明な材料が接続装置によってインクジェットプリントヘッドに供給され、最終的にインクジェットプリントヘッドのジェットホールから噴射され、印刷を実現することができる。
【0053】
さらに、上記3Dプリンターは、紫外線光源をさらに含んでもよく、該紫外線光源は、具体的に、紫外線発光ダイオードであってもよい。
【0054】
一般的に、コントローラーを介して紫外線光源を制御し、紫外線光源が3D印刷用の光硬化不透明な材料で形成された層を照射するようになり、硬化を実現することができる。
【発明の効果】
【0055】
本発明に係る3D印刷用の光硬化不透明な材料は、以下のような利点がある。
【0056】
1、該不透明な材料の成分には二酸化チタンなどの白い顔料を添加する必要もなく、不透明な材料を得ることができ、これにより、二酸化チタンの沈降によって不透明な材料の安定性に不利な影響が与えられるようなことが回避され、印刷の流暢さを向上させ、3D印刷過程に、伝統的な不透明な材料のプリントヘッドのジェットホールの詰まり、断線による印刷精度の低下、ひいては構造の一部が印刷されない問題が解決されたため、品質の高い3D印刷製品を得ることができ、3Dプリンターの運用及びメインテナンスコストを低下させる。
【0057】
2、第1のアクリレート成分と第2のアクリレート成分間の比率を柔軟に調整し、及び/又は適切な極性がある2種のアクリル酸成分を選択することにより、異なる光通過率がある3D印刷製品を得ることができ、これは、不透明な材料を二酸化チタンなどへの依存からさらに脱却させるだけではなく、不透明な材料の適用範囲をも広める。
【0058】
3、低い作業温度、例えば、40℃~60℃での通常のインクジェット印刷を実現し、エネルギーを効果的に節約し、プリントヘッドの耐用年数を延長させることが可能となる。
【0059】
4、該3D印刷用の光硬化不透明な材料を使用して印刷された3D印刷製品は精度が高く、サイズ収縮率が5%より小さいであり、且つ、ショア硬度が90%以上であり、曲げ強度が75MPa以上であり、曲げ弾性率が2100MPa以上であり、衝撃強度(単純支持梁のノッチ付き衝撃強度)が20KJ/m2以上であるため、3D印刷製品は機械性能が良好であり、実際の要求を満たすようになる。
【0060】
5、該3D印刷用の光硬化不透明な材料の使用中には揮発性溶剤がなく、添加された成分がほぼ硬化に参与し、VOC排出がなく、汚染もない。
【0061】
本発明に係る3D印刷用の光硬化不透明な材料の調製方法は、構成工程が簡単で実行可能であるという特徴があり、実際の生産での適用及び普及が容易である。
【0062】
本発明に係る3D印刷製品は、上記3D印刷用の光硬化不透明な材料を原料として利用するため、精度が非常に高く、収縮率が低く、及び機械性能が良好であるので、該3D印刷製品の品質がよい。
【0063】
本発明に係る3Dプリンターは、その材料保管容器に上記3D印刷用の光硬化不透明な材料が収容されているため、印刷流暢さがよく、プリントヘッドのジェットホールが詰まりにくいという特徴があり、低い作業温度(例えば、40℃~60℃)で順調に作業することができ、これにより、該3Dプリンターは使用性能がよく、耐用年数が長くようになるだけではなく、品質の高い3D印刷製品を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】本発明の実施例6に係る3Dプリンターの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明瞭にするために、以下、本発明の実施例に係る図面を参照しながら、その技術的解決手段について明瞭、且つ完全に説明し、当然のことながら、記載される実施例は本発明の実施例の一部にすぎず、そのすべての実施例ではない。当業者は、本発明における実施例に基づいて創造的な労働をすることなく、取得されたその他のすべての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0066】
実施例1
本実施例は、3D印刷用の光硬化不透明な材料を提供し、下記の表1のような構成を持っている。
【0067】
【0068】
該3D印刷用の光硬化不透明な材料の調製方法は以下の通りである。
(1)光開始剤以外の成分をいずれもガラス容器に置き、スターラーを利用してかき混ぜ、均一に混合された第1の混合物を得る。この後、第1の混合物に光開始剤を添加し、光開始剤が完全に溶けるまで引き続きかき混ぜ、第2の混合物を得る。
(2)0.45μmのガラス繊維膜で第2の混合物を一次濾過し、さらに、0.22μmのポリプロピレンフィルム(PP膜)で二次濾過し、濾液を得る。
(3)0.1MPa真空下で、1時間真空吸引濾過を行い、濾液中の気泡を除去し、最後に、3D印刷用の光硬化白い半透明な材料を得る。
【0069】
実施例2
本実施例は、3D印刷用の光硬化不透明な材料を提供し、下記の表2のような構成を持っている。
【0070】
【0071】
本実施例において、3D印刷用の光硬化不透明な材料の調製方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換し、且つ、ステップ(3)では、加熱脱気の方式を利用してステップ(2)で得られた濾液を40℃まで加熱して脱気処理し、脱気時間が50minであることだけが違っている。
【0072】
本実施例で得られたのは3D印刷用の光硬化白い材料、且つ完全に不透明な材料である。
【0073】
実施例3
本実施例は、3D印刷用の光硬化不透明な材料を提供し、下記の表3のような構成を持っている。
【0074】
【0075】
本実施例において、3D印刷用の光硬化不透明な材料の調製方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換し、且つ、ステップ(3)での真空脱気の具体的な時間を2時間に調整することだけが違っている。
【0076】
本実施例で得られたのは3D印刷用の光硬化赤い不透明な材料である。
【0077】
実施例4
本実施例は、3D印刷用の光硬化不透明な材料を提供し、その構成が下記の表4を参照する。
【0078】
該3D印刷用の光硬化不透明な材料の調製方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換し、且つ、ステップ(3)で大気圧静置脱気を利用して脱気処理し、静置時間が3hであることだけが違っている。
【0079】
本実施例で得られたのは3D印刷用の光硬化青い不透明な材料である。
【0080】
【0081】
実施例5
本実施例は、3D印刷用の光硬化不透明な材料を提供し、下記の表5のような構成を持っている。
【0082】
【0083】
本実施例において、3D印刷用の光硬化不透明な材料の調製方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換し、且つ、ステップ(3)では加熱脱気の方式を利用して、ステップ(2)で得られた濾液を50℃程度まで加熱して脱気処理し、脱気時間が30minであることだけが違っている。
【0084】
本実施例で得られたのは3D印刷用の光硬化黄色い不透明な材料である。
【0085】
比較例1
本比較例は、3D印刷用の光硬化材料を提供し、下記の表6のような構成を持っている。
【0086】
【0087】
比較例1において、3D印刷用の光硬化材料の調製方法は、実施例1と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換することだけが違っている。
【0088】
比較例1におけるアクリレート成分は、いずれも極性アクリレートモノマーと極性アクリレートオリゴマーを利用し、最終的に得られたのは3D印刷用の光硬化透明な材料である。
【0089】
比較例2
本比較例は、3D印刷用の光硬化材料を提供し、下記の表7のような構成を持っている。
【0090】
【0091】
比較例2において、3D印刷用の光硬化材料の調製方法は、実施例4と基本的に同じであり、用いられた成分を対応的に変換することだけが違っている。
【0092】
比較例2におけるアクリレート成分は、いずれも弱い極性/非極性アクリレートモノマー又はオリゴマーを利用し、最終的に得られたのは3D印刷用の光硬化透明な青い材料である。
【0093】
上記各実施例と比較例における3D印刷用の光硬化材料に対して性能テストをする。
【0094】
1、DV-Iデジタルディスプレイ粘度計とBZY-1全自動表面張力計を利用して室温と作業温度での本実施例におけるインク組成物の粘度と表面張力をテストする。
【0095】
2、本実施例のインク組成物を工業ノズルの3D光硬化インクジェットプリンターに適用し、紫外線光源の波長を395nmに設定し、適当な噴射温度でインクの流暢さテスト及び成型部品の精度テストをそれぞれ行い、該精度テストが主にボリューム収縮率によって反映され、テスト方法は、ピクノメーター法を利用し、水を基準とし、硬化前の感光性樹脂の密度ρ1及び完全硬化後の密度ρ2を25℃で測定し、下記の式でボリューム収縮率を計算する。
ボリューム収縮率%=(ρ2-ρ1)÷ρ2×100%
【0096】
3、光通過率のテスト
本実施例のインク組成物を工業ノズルの3D光硬化インクジェットプリンターに適用し、紫外線光源の波長を395nmに設定し、噴射温度で50mm×50mm、厚さ2mmのブロックを印刷する。
【0097】
紫外線可視光線分光光度計を利用して光通過率、即ち、パーセンテージで表した、サンプルを透過した光束とサンプルに入射した光束の比率を測量する。具体的なテスト方法は、GB/T2410-2008 透明プラスチックの光通過率とヘイズの測定を参照する。
【0098】
4、ショア硬度のテスト
本実施例のインク組成物を工業ノズルの3D光硬化インクジェットプリンターに適用し、紫外線光源の波長を395nmに設定し、噴射温度で50mm×50mm、厚さ6.4mmのブロックを印刷し、ブロックのショア硬度をテストし、具体的なテスト方法は、GB/T2411-2008プラスチックと硬質ゴムの硬度計によるインデント硬度(ショア硬度)の測定を参照する。
【0099】
5、曲げ性能のテスト
曲げ性能は、材料の撓みと変形を抵抗する能力、またはテスト材料の剛性を示すためのものである。本実施例のインク組成物を工業ノズルの3D光硬化インクジェットプリンターに適用し、紫外線光源の波長を395nmに設定し、噴射温度で長さ×幅×厚さが80mm×10mm×4mmであるロングブロックを印刷し、その曲げ性能をテストし、具体的なテスト方法は、GB/T9341-2008プラスチックの曲げ性能の測定を参照する。
【0100】
6、耐衝撃強度のテスト
衝撃強度は、材料の靭性を量る指標であり、通常、衝撃荷重によってサンプルが折れた又は裂けられた時、断面面積単位あたりに吸収されるエネルギーとして定義されている。具体的なテスト方法は、GB/T1043.1-2008プラスチックの単純支持梁の衝撃性能の測定の第1部分である非器械的衝撃実験を参照する。
【0101】
上記各性能のテスト結果は下記の表8を参照する。
【0102】
【0103】
上記テスト結果からわかることは以下の通りである。
【0104】
1、本発明に係る3D印刷用の光硬化不透明な材料を利用する場合、テストブロックの光通過率の値が、いずれも80%未満である。かつ、第1のアクリレート成分と第2のアクリレート成分の比率及び2つの成分の極性を調整することにより、異なる光通過率がある非透明な物体を得ることが可能となる。成分には第1のアクリレート成分と第2のアクリレート成分が同時に含まれていない場合、例えば、極性アクリレート成分のみが含まれ、または、弱い極性/非極性アクリレート成分のみが含まれている場合、テストブロックの光通過率は、いずれも80%よりも大きくて、即ち、該光硬化材料は透明な材料である。
【0105】
2、本発明に係る3D印刷用の光硬化不透明な材料を利用する場合、印刷されたテストブロックのショア硬度が、いずれも90%以上であり、曲げ強度が75Mpa以上であり、曲げ弾性率が2100Mpa以上であり、衝撃強度が20KJ/m2であり、これは、該材料を使用して印刷された物体は硬度が高くて、曲げ性能がよく、特に、優れた耐衝撃強度と靭性を有するため、得られた3D印刷製品は機械性能が良好であり、実際の要求を満たすと分けられる。
【0106】
3、本発明に係る3D印刷用の光硬化不透明な材料は、印刷流暢さがよく、プリントヘッドのジェットホールの詰まり及び断線の状況がなく、且つ、印刷された物体の収縮率が5%未満であり、精度が高い。
【0107】
4、本発明に係る3D印刷用の光硬化不透明な材料は、室温及び作業温度(40~60℃)での粘度が低く、噴射温度が低く、3D印刷に適切であるだけではなく、3Dプリンターの耐用年数を延長させることも可能である。
【0108】
実施例6
本実施例は、3Dプリンターを提供し、具体的に、3Dインクジェットプリンターであり、その構造概略図は
図1に示するように、材料保管容器1、インクジェットプリントヘッド2及び接続装置3を含み、そのうち、材料保管容器1に実施例1~実施例5のいずれか1つに係る3D印刷用の光硬化不透明な材料が収容されている。接続装置3が材料保管容器1とインクジェットプリントヘッド2を接続するためのものであり、材料保管容器1に収容された3D印刷用の光硬化不透明な材料が該接続装置3を介してインクジェットプリントヘッド2に供給される。インクジェットプリントヘッド2から噴射された3D印刷用の光硬化不透明な材料がキャリアテーブル(図示せず)で硬化して光硬化層を形成した。
【0109】
具体的に、本実施例は材料保管容器1の数を特に制限せず、光硬化不透明な材料の種類に基づいて対応する数の材料保管容器1を配置することができる。上記接続装置3は、具体的に、上記機能を実現することができれば、接続管又は他の形式の接続装置であってもよい。インクジェットプリントヘッド2は、具体的に、シングルチャネルプリントヘッド又はマルチチャネルプリントヘッドであってもよく、シングルチャネルプリントヘッドとマルチチャネルプリントヘッドの組み合わせであってもよい。
【0110】
図1をさらに参照すると、本実施例に係る3Dプリンターは、コントローラー4と紫外線光源5をさらに含んでもよい。そのうち、コントローラー4は、3D印刷用の光硬化不透明な材料を材料保管容器1がインクジェットプリントヘッド2に提供するように制御することができ、コントローラー4はさらに、紫外線光源5が、キャリアテーブルに噴射された材料層6に対して紫外線硬化を行って光硬化層を形成するように制御することができる。具体的に、紫外線光源5が紫外線発光ダイオードであってもよい。
【0111】
実施例7
本実施例は、3D印刷製品を提供し、前記3D印刷製品は前述した各実施例1~5の3D印刷用の光硬化材料を使用して3D印刷によって得られたものである。
【0112】
具体的に、要求に応じて色が異なる3D印刷製品を印刷することができ、例えば、上記実施例1~実施例5の材料を賽納のJ501プリンター、または上記実施例6に係る3Dプリンターに適用することにより、白い物体、赤い不透明な物体、青い不透明な物体、黄色い不透明な物体をそれぞれ印刷することができる。当然ながら、また、上記実施例における材料を一定の比率で混合して調合し、他の色の不透明な3D印刷製品を得ることができる。
【0113】
最後に説明すべきものとして、以上の各実施例は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものであって、これを制限するものではなく、前述の各実施例を参照しながら本発明を詳細に説明するが、当業者であれば、依然として前述の各実施例に記載の技術的解決手段を修正するか、又はそのうちの一部又はすべての技術的特徴に対して同等置換を行うことができ、これらの修正又は置換は、対応する技術的解決手段の本質を本発明の各実施例の技術的解決手段の範囲から逸脱しないと理解すべきである。
【符号の説明】
【0114】
1 材料保管容器
2 インクジェットプリントヘッド
3 接続装置
4 コントローラー
5 紫外線光源
6 材料層