(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】潤滑構成を備えたシェービングユニット
(51)【国際特許分類】
B26B 19/40 20060101AFI20220525BHJP
B26B 19/16 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
B26B19/40
B26B19/16
(21)【出願番号】P 2020563493
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2019061772
(87)【国際公開番号】W WO2019219467
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-09
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ホドリーブ ロベルト
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-129089(JP,A)
【文献】国際公開第2015/128181(WO,A1)
【文献】特表2007-516804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 19/40
B26B 19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェービングユニットであって、
筐体と、
前記筐体に対して固定されたガードと、
前記ガードから距離をおいて配置され、前記筐体に対して固定された、切断端と、
前記ガード及び前記切断端により境界付けられた毛入口開口と、
前記筐体内に配置され、長軸のまわりに回転可能に駆動されるよう構成されたドラムと、
前記毛入口開口に入る毛を剪断又は切断するため、前記長軸のまわりの前記ドラムの回転の間、前記切断端と協働するため前記ドラム上に配置された、少なくとも1つのカウンタ切断端と、
潤滑構成と、
を有し、前記潤滑構成は、
潤滑剤を受容するよう構成された液体槽と、
前記少なくとも1つのカウンタ切断端に潤滑膜を提供するため、前記長軸のまわりの前記ドラムの回転の間、前記少なくとも1つのカウンタ切断端と係合する位置において、
前記液体槽のなかに、前記ドラムに隣接して配置された排出パッドを含む供給機構と、
を有する、シェービングユニット。
【請求項2】
前記排出パッドの位置は、前記長軸のまわりの前記ドラムの回転の間、前記カウンタ切断端が前記切断端を通過した後、前記通過の後且つ前記切断端の次の通過の前に前記カウンタ切断端が皮膚に接触する前に、前記排出パッドが前記少なくとも1つのカウンタ切断端に係合するような位置である、請求項1に記載のシェービングユニット。
【請求項3】
前記液体槽は、前記潤滑剤に浸漬されるよう構成されたパッドを有する、請求項1又は2に記載のシェービングユニット。
【請求項4】
前記排出パッドは、前記液体槽に接触し、前記液体槽からの前記潤滑剤に浸漬されるよう構成された芯を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシェービングユニット。
【請求項5】
前記芯は、前記長軸のまわりの前記ドラムの回転の間、前記少なくとも1つのカウンタ切断端によって追従される経路に向けて前記液体槽から延在する、請求項4に記載のシェービングユニット。
【請求項6】
前記潤滑構成は、前記排出パッドを前記ドラムに向けて付勢するよう構成された付勢ばねを有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシェービングユニット。
【請求項7】
前記供給機構は、前記ドラムの回転の間、前記排出パッドと前記少なくとも1つのカウンタ切断端との間の摩擦の程度に依存して、前記潤滑剤の供給を調整するための手段を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシェービングユニット。
【請求項8】
前記芯は、前記ドラムの回転の間、前記芯が前記カウンタ切断端に係合する位置において、前記ドラムの接線方向に対して鋭角で配置された、請求項4又は5に記載のシェービングユニット。
【請求項9】
前記潤滑構成は更に、前記芯を前記ドラムに向けて付勢するための芯支持ばねを有する、請求項4、5又は8に記載のシェービングユニット。
【請求項10】
前記潤滑構成は、前記シェービングユニットから脱着されることができ、前記シェービングユニットのユーザにより新たな潤滑構成によって効果されることができる、交換可能な部分として構成された、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のシェービングユニット。
【請求項11】
前記潤滑構成は、交換可能なカートリッジの一部であり、好適には交換可能なカートリッジは、前記ガード又は前記切断端を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のシェービングユニット。
【請求項12】
前記ドラムは、それぞれが前記ドラムの長軸に平行に延在する、又はそれぞれが前記ドラムの長軸のまわりに螺旋状に延在する、複数のカウンタ切断端を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシェービングユニット。
【請求項13】
前記ドラムは、前記ドラムから突出する自立カテナリ構造又は片持ち梁構造上に配置された複数のカウンタ切断端を有する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシェービングユニット。
【請求項14】
前記少なくとも1つのカウンタ切断端は、前記ドラム上に配置された隆起部として構成された、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシェービングユニット。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載のシェービングユニットを有する、シェービング機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑を備えて構成された回転カッタを備えたシェービングユニットに関する。本発明は更に、シェービングユニットを有するシェービング機器に関する。
【0002】
シェービング中、摩擦は刺激を与えるものであり、望ましくない。この理由のため、ユーザの肌へのシェービングユニットの摩擦を軽減するための特徴を持つシェービングユニットが設計されている。
【背景技術】
【0003】
米国特許US2600880Aは、手動操作の剃刀上の刃端部の前方にある水分パッドを開示している。
【0004】
摩擦を低減するための特徴を含む他の剃刀は、米国特許US2600880A及び米国特許US4170821から知られている。
【0005】
ドラムカッタを有する剃刀は、米国特許US489995A又は米国特許US2216994Aのように、当技術分野で周知である。しかしながら、潤滑は提供されていない。
【0006】
国際特許出願公開WO2015/128181A1によれば、互いに平行に配置された2つのドラムカッタを有するシェービングユニットが知られている。しかしながら、潤滑は提供されていない。
【0007】
国際特許出願公開WO2014/191844A1によれば、シェービングユニットは、結合された潤滑要素を持つ回転カッタを有する。切断ユニットは、毛を切断するための固定刃と協働する複数の切り欠きを持つドラムとして構成される回転カッタを有する。ドラムの外側面には、潤滑剤で浸漬された繊維材料を有することができる複数の潤滑要素が配置される。潤滑要素は、更なる流体供給のために、流体槽と流体的に接続されても良い。また、流体槽から潤滑要素によって失われた流体を手動で又は自動的に置換するために、再充填溶液が提供されても良い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、公知のシェービングユニットは効果的ではない。潤滑剤が切断に使用されるものと同じ滑らかなドラム表面に置かれると、潤滑剤は固定切断刃によって急速に「削り落とされる」ことになる。その結果、急速に排出されるか、効果がなくなる。また、潤滑剤は肌の快適さにあまり効果がない。ドラム内の潤滑要素に潤滑剤を塗布すると、固定刃は潤滑剤を削り落とす。ドラムが次いで皮膚に触れると「乾燥する」ことになる。潤滑剤が皮膚に向かって浸出するのを可能にするために、柔らかく濡れた肌に接触する必要がある。この実施例では、皮膚に触れる前に潤滑剤が必要であるため、既に不快感が生じる。また、槽から潤滑要素に更に潤滑剤を手動又は自動で供給することを可能にする再充填溶液を用いても、潤滑剤を「削り落とす」効果は回避されない。依然として、問題を更に複雑にしている。
【0009】
米国特許US9156175B2から、後壁と反対側の弾性前部フラップとを持つバッフルを有する流体供給器を備えたパーソナルケア機器用の流体供給カートリッジが知られている。バッフルは、少なくとも1つの出口ポートを画定する。弾性前部フラップは、第1の位置で後壁の部分に接触し、第2の位置で該部分から離間している。流体供給器は、刃端部に平行に延在する複数の細長い凹部を含み、刃前部のガード又は皮膚に流体を供給する。しかしながら、回転カッタに関連する用途は示されていない。
【0010】
米国特許2270800Aは、回転カッタを備えた電気剃刀を開示している。剃刀は、ロータカッタに通じる油導管を備えた給油芯を含み、更に、モータシャフトに通じるフェルト封止部及び油導管を含む。螺旋状ドラムカッタは、外側の管状ステータガード内に完全に収容されている。給油芯は、当時の電動シェーバで一般的であったように、ステータガード内のロータカッタのジャーナル軸受や、カッタの他の部分への油供給に使用される。
【0011】
公知の剃刀には潤滑構成が設けられているが、単にカッタを油で潤滑するために用いられるだけである。潤滑剤を皮膚係合面又は切断要素自体に向けるための備えはない。
【0012】
国際特許出願公開US98/08660A1は、ポンプを使用して潤滑剤が皮膚に供給されて流体出口に至る別個の流体槽を有する回転カッタを備えた剃刀を開示している。流体出口はカッタとは別個であり、皮膚を横切って剃刀を移動させることによって潤滑剤を分散させる必要がある。
【0013】
固定切断端と協働するカウンタ切断端を提供するローラ又はドラムを有する従来技術によるシェービングユニットは、幾つかの重大な欠点を有する。その1つは、ローラによって皮膚に加えられる動きの量である。皮膚は、ローラ要素が毛を切断端に向けて案内するので、ローラ要素からの比較的多量の操作及び滑動作用を受ける。このことは、このような皮膚接触ローラを有さない従来の切断端と比較した場合、皮膚刺激の高い危険性を引き起こす。このことはまた、切断端に対して剪断作用で毛を押しつける危険性を引き起こすだけでなく、皮膚を包含して皮膚の傷付け及びつまみを引き起こす危険性も引き起こす。
【0014】
この点に鑑みて、シェービングユニットの全体的な設計に悪影響を及ぼすことなく、また、付随する皮膚の伸張及び皮膚の流れの案内に悪影響を及ぼすことなく、任意の能動的な皮膚操作及び能動的な滑動システムにおける摩擦低減が必要とされている。
【0015】
従来技術では、上述の国際特許出願公開WO2014/191844A2から知られているように、ローラの外側に潤滑ストリップを適用することができる。このことは、皮膚の滑動及び係合面の幾何学的形状を損なうという欠点を有する。潤滑剤を注入したマトリクスの代わりに流体供給を使用すること、又は潤滑剤を注入したマトリクスを再供給することは、回転部材上への流体経路の複雑さを付加するという欠点を有する。
どちらの方法でも、摩擦を減らすために必要な瞬間とその瞬間の後に、余分の潤滑剤を塗布する必要がある。もう1つの問題は、ローラ又はドラム上の潤滑剤が、切断端によって除去されないようにするために、有効表面から離間される必要があることである。
【0016】
この観点から、本発明の目的は、上述の欠点の少なくとも幾つかを克服する改良されたシェービングユニットを開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、本目的は、シェービングユニットであって、
筐体と、
前記筐体に対して固定されたガードと、
前記ガードから距離をおいて配置され、前記筐体に対して固定された、切断端と、
前記ガード及び前記切断端により境界付けられた毛入口開口と、
前記筐体内に配置され、長軸のまわりに回転可能に駆動されるよう構成されたドラムと、
前記毛入口開口に入る毛を剪断又は切断するため、前記長軸のまわりの前記ドラムの回転の間、前記切断端と協働するため前記ドラム上に配置された、少なくとも1つのカウンタ切断端と、
潤滑構成と、
を有し、前記潤滑構成は、
【0018】
潤滑剤を受容するよう構成された液体槽と、
前記少なくとも1つのカウンタ切断端に潤滑膜を提供するため、前記長軸のまわりの前記ドラムの回転の間、前記少なくとも1つのカウンタ切断端と係合する位置において、前記ドラムに隣接して配置された潤滑要素を含む供給機構と、
を有する、シェービングユニットによって達成される。
【0019】
本発明によれば、従来技術から知られているように、皮膚に潤滑膜を塗布するのとは対照的に、移動する皮膚係合カウンタ切断端に連続的に薄い潤滑膜が塗布される。潤滑剤は、それが皮膚に接触する前に、カウンタ切断端の急速に移動する皮膚滑動表面領域に塗布され、従って、カウンタ切断端と切断端との間の切断プロセスの直前に膜を補充する。
【0020】
本発明によれば、用語「切断端」は、カウンタ切断端と協働して毛を切断することを可能にする曲率半径を有する表面として解釈されるべきであり、切断端は、良好な切断結果を得るために「鋭利」でなければならない。特に、切断端の曲率半径は、30マイクロメートル以下、より好適には20マイクロメートル以下、最も好適には15マイクロメートル以下である。更に、用語「カウンタ切断端」は、切断端と協働し、切断端の曲率半径にある程度適合した曲率半径を有するドラムの外側面として解釈されるべきである。通常、ドラム上には複数のカウンタ切断端が存在する。しかしながら、ドラムの周りに巻かれたただ1つの対向する切断端であっても良い。
【0021】
本発明によれば、皮膚が潤滑されるのではなく、移動する皮膚係合部材、即ち、カウンタ切断端又は複数のカウンタ切断端が潤滑される。
【0022】
本発明の好ましい実施例は、従属請求項に定義される。
【0023】
本発明の実施例において、潤滑要素の位置は、ドラムの長軸を中心とする回転の間、潤滑要素は、カウンタ切断端が切断端を通過した後、及びカウンタ切断端が前記通過した後に次の切断端を通過する前に、皮膚に接触する前に、少なくとも1つのカウンタ切断端と係合するようになっている。
【0024】
このことは、切断端とカウンタ切断端との間の切断線を通過した後、カウンタ切断端の1つに塗布された潤滑膜が、皮膚に接触するまでその上に残るという利点を提供する。それ故、切断工程中に潤滑膜が剪断除去されることが回避される。斯くして、切断端が皮膚に接触すると、潤滑膜は直接新鮮になる。
【0025】
本発明の一実施例では、液体槽は、潤滑剤に浸漬されるように構成されたパッドを含む。
【0026】
このことは、潤滑剤を貯蔵し、輸送するための非常に有効な方法である。
【0027】
全体の槽の寸法と比較すると、露出領域を減らすことができる。パッドは、典型的にはドラムの全幅にわたって延在する(典型的には32mmのオーダー)。
【0028】
本発明の一実施例では、潤滑要素は、液体槽と接触し、液体槽からの潤滑剤に浸漬されるように構成された芯を含む。
【0029】
このようにして、露出の角度を最小限に制限することができる。該芯は、接続された液体槽から潤滑剤を引き出す。この場合、液体槽内のパッドを省略することができる。しかしながら、依然としてパッドを液体槽内で使用することもできる。
本発明の一実施例では、芯は、長軸の周りのドラムの回転中に、液体槽から、少なくとも1つのカウンタ切断端がたどる経路に向かって延在する。
【0030】
本発明の一実施例では、芯は、少なくとも1つのカウンタ切断端上で転動するように配置されたロールとして構成されても良い。
【0031】
本発明の実施例において、潤滑構成は、潤滑要素をドラムに向かって付勢するように構成された付勢ばねを有する。
【0032】
ばね付勢により、十分な量の潤滑が容易になる。当然、パッド又は芯は、ドラムの回転中にパッドが切断端と少なくとも1つのカウンタ切断端との間で付勢されるのを回避するのに十分に堅く、かつ幅広い、少なくとも1つのカウンタ切断端と係合する表面を持つべきである。
【0033】
本発明の実施例において、供給機構は、ドラムの回転中に、潤滑要素と少なくとも1つのカウンタ切断端との間の摩擦の程度に応じて潤滑剤の供給を調節する手段を有する。
【0034】
これにより、潤滑剤供給の自動調整を簡単な方法で確実に行うことができる。
【0035】
本発明の一実施例では、芯は、ドラムの回転中に芯がカウンタ切断端と係合する位置で、ドラムの接線方向に対して鋭角に配置される。
【0036】
芯が回転ドラムの少なくとも1つのカウンタ切断端に対してこのように配置されると、芯はベルト破断として機能する。芯に対する回転部分の摩擦は、芯を変形させ、該芯を回転部分に押しつける。このことは、潤滑剤の流れ及び移動を開始及び/又は刺激する。潤滑剤が放出されると、摩擦が減少し、回転部材に対する芯の圧力が減少するため、潤滑剤の供給が減少する。
【0037】
同様に、弾性部分又は可動部分に対するドラムの摩擦を使用して、潤滑剤の流れを調節又は開放することができる。
【0038】
本発明の一実施例では、潤滑構成は、芯をドラムに向かって付勢する芯支持ばねを更に有する。
【0039】
このことは、芯からドラムへの潤滑剤の供給を調節するのに役立つ。
【0040】
本発明の実施例において、潤滑構成は、シェービングユニットから取り外し、シェービングユニットのユーザによる新しい潤滑構成に置き換えることができる、交換可能な部品として構成される。
【0041】
好適には、潤滑構成は、交換可能なカートリッジの一部であり、好適には、ガード又は切断端を有する交換可能なカートリッジである。
【0042】
ガード自体は必ずしもそのようなシステムの交換可能な部分ではないが、ガードはガード内に収容されることが好ましいので、ガードを潤滑構成と一緒に交換することが便利である。
【0043】
このことは、消費者が十分な液体を供給するシェービングユニットを常に使用するための簡単で容易な方法である。同様に、ドラムのような摩耗を受けるシェービングユニットの他の部分も交換可能にすることができ、潤滑構成と一体化されても良い。
【0044】
固定切断端と協働するドラム上に配置されたカウンタ切断端の基本概念の多くのバリエーションが存在する。
【0045】
例えば、ドラムは、各々がドラムの長軸に平行に延在する、又は各々がドラムの長軸の周りに螺旋状に延在する、複数のカウンタ切断端を有しても良い。
【0046】
更に、ドラムは、ドラムから突出する自立カテナリ構造又は片持ち梁構造上に配置された複数のカウンタ切断端を有することができる。
【0047】
更に、少なくとも1つのカウンタ切断端は、ドラム上に配置された隆起部として構成されても良い。
【0048】
また、カウンタ切断端は、中空管内の様々な形状の開口の端部であっても良い。カウンタ切断端に加えて、ドラムは、皮膚操作、駆動系要素、歯車装置等の付加的な特徴及び機能を含むことができる。
【0049】
同様に、ガード要素は、切断端及び隣接するキャップ領域を持つといった、多数の形状を有することができる。
【0050】
ガードは、閉じたガードであっても、開いた歯付きガードであっても良い。
【0051】
皮膚の流れを最適化するために、従来のシェービングユニットで一般的に知られているように、キャップ上に低摩擦領域を設け、ガード上に比較的高い摩擦を設けても良い。
【0052】
本発明の別の態様によれば、上述のシェービングユニットを有するシェービング機器が開示される。
【0053】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施例から明らかになり、それを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明によるシェービングユニットを含むシェービング機器の簡略化された側面図を示し、ここで表現の容易さのため、カウンタ切断端を備えたドラムが、通常は2つの軸端を隠す外側筐体なしで示されている。
【
図2】皮膚上を動かされるガード、キャップ及びドラムを備えたシェービングユニットを示す。
【
図3】
図1及び2には示されていないカウンタ切断端の少なくとも1つを潤滑させるための本発明による潤滑構成を含む
図2のシェービングユニットを示す。
【
図4】
図3のシェービングユニットの僅かに変更された実施例を示す。
【
図5】カウンタ切断端の1つに潤滑膜を供給する芯の一部の拡大表現を示す。
【
図6】
図4によるシェービングユニットの他の変更を示す。
【
図7】1つのカウンタ切断端の端部に対して静置された芯の幾つかのフェーズを示し、a)は通常の動作を示し、b)は増大された摩擦を示し、c)は高い摩擦に起因する増大された液体供給を示す。
【
図8】ドラム上の隆起部として構成された螺旋状に延在するカウンタ切断端を備えたドラムを示す。
【
図9】ドラムの外側面のまわりに螺旋状に巻かれたカテナリ構造又は片持ち梁構造を備えたドラムの斜視表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1において、シェービング機器は、剃刀として構成され、全体が参照番号10で示されている。
【0056】
シェービング機器10は、概ね長手方向に延在する筐体12を有する。シェービング機器10は、その後部13において片手で保持され得る。
【0057】
図1によれば、シェービングユニット16は、基本的に、筐体内に静止したガード20と切断端22と、その上に配置された4つのカウンタ切断端28を担持するドラム24とを有する。
【0058】
筐体12の下部前端には、切断端22を支持し、シェービングユニット16を皮膚の上に案内するように構成されたガード20が配置されている。切断端22及びガードは、毛入口開口23を画定する。ドラム24は、ガード20と切断端22とによって区画された空洞内に配置され、その長軸26の周りを回転可能に駆動されても良い。筐体12の下部中央部にはキャップ18が配置される。
【0059】
ドラム24の表面からは、それぞれがカウンタ切断端28として構成された外側端部を有する4つの自立翼状カテナリ構造又は片持ち梁構造29が延在している。これらのカウンタ切断端28は、ドラム24に面するキャップ18の端部に設けられた切断端22と協働して、毛の切断又は剪断を行う。
【0060】
図1には、ドラム24を回転駆動するように構成された、参照番号14を単に付した駆動装置が示されている。コントローラ等の更なる特徴は、表現を容易にするために示されていない。
【0061】
図2によるシェービングユニット16の全体的な構成は、毛を剪断又は切断するためにカウンタ切断端28を備えた回転ドラム24と共に皮膚30上を移動される切断端22からなる。切断端22を支持し、シェービングユニット16を皮膚上に案内するために、ガード20が設けられ、切断端22はキャップ領域内に延在する。カウンタ切断端28の1つが切断端22を横切って移動すると、交差線で切断線44が画定される。
【0062】
ガード20は、閉じた又は開いた歯付きガードであっても良い。皮膚の流れを改善するために、低摩擦領域をキャップ20に設けることができ、比較的高い摩擦をガード18に設けることができる。
【0063】
シェービング中、シェービングユニット16は、皮膚30上を矢印32の方向に移動させられ、一方、カウンタ切断端部28を有するドラム24は、矢印34の方向に回転する。この点まで、シェービングユニット16は従来の設計のものである。
【0064】
図9は、ドラム24の外側面の周りに螺旋状に配置される4つのカテナリ構造又は片持梁構造29を含むドラム24の斜視図を示す。カウンタ切断端28は、カテナリ構造体又は片持ち梁構造体29の外側面を表す。
【0065】
本発明によれば、全体が36で示された潤滑構成が提供される(
図3参照、
図1及び
図2には図示を容易にするために示されていない)。
【0066】
シェービング中、シェービングユニット16は、使用者によって皮膚30上を移動させられる。シェービングの速度は、個人間で大きく変化し、3~300mm/秒の間のいずれかであり得る。ドラム24は能動的に駆動される。切断機能のためには、それぞれのカウンタ切断端部28は、シェービング速度よりも大きい速度で操作されなければならない。従って、カウンタ切断端28及び回転ドラム24の任意の支持表面領域は、一般に、300mm/秒より大きい速度で滑動接触している。100mm/秒の典型的なシェービング速度では、皮膚30に対するカウンタ切断端28の相対速度は、200mm/秒を超え、典型的には500mm/秒の範囲である。
【0067】
密接なシェービングを達成するために、皮膚30は、切断端22の直前の領域において、カウンタ切断端28と密着し、ある程度の圧力でなければならない。典型的には、この面積は0.5mm以上であり、理想的にはより広い。
【0068】
図3によれば、潤滑構成36は、液体槽38を有し、その中に排出パッド39が配置されても良い。加えて、排出パッド39は、ばね要素40によってドラム24の方向にばねで付勢されても良い。更に、液体槽38からカウンタ切断端28の少なくとも1つに潤滑剤を供給するための、全体として41で示される供給機構がある。その最も単純な形態では、供給機構41は、排出パッド39をカウンタ切断端部28の方向に押し付けるばね要素40のみを有しても良い。
【0069】
切断端22は、カウンタ切断端28と協働して毛切断を可能にする曲率半径を有する。従って、該切断端は「鋭利」でなければならない。特に、切断端28の曲率半径は、30マイクロメートル以下、より好適には20マイクロメートル以下、最も好適には15マイクロメートル以下、又は1桁のマイクロメートルの範囲である。カウンタ切断端28は、切断端22(
図9参照)と協働し、切断端22の曲率半径まで幾分か延在するように適合された曲率半径を有するドラム24の外側の皮膚接触面である。
【0070】
図3及び
図4によれば、ドラム24の回転中に切断端22に達する前に、42で描かれた潤滑膜が、排出パッド39によって、排出パッド39と接触しているカウンタ切断端28の一方に設けられている。
【0071】
従って、潤滑膜42は、それぞれのカウンタ切断端28が皮膚30に接触する前に塗布される。その結果、切断線44に到達する直前に潤滑膜42が塗布される。これにより、切断加工が始まる前に直接の潤滑があることとなる。
【0072】
排出パッド39は、例えば、ポリエチレングリコールを含む潤滑剤が注入され、液体槽39内に保持された硬いフェルトのパッドであっても良い。
【0073】
潤滑構成36は、好適には、消費者が交換可能な部品である消耗品として構成される。
【0074】
該構成は、ガード20と共にカートリッジ21として構成されてもよく、それによって容易な交換を可能にする。前述したように、カートリッジ21は、切断端22又はドラム24のような異なる部品と一緒に交換可能であっても良い。
【0075】
図4では、シェービングユニットの僅かな変形例が示され、全体が参照番号16aで示されている。それとは別に、対応する部分には同じ参照番号が使用されている。
【0076】
図4による潤滑剤装置36は、液体槽38から延在する芯46を含む。このようにして、液体槽38の全体寸法と比較した場合に、露出面積を減少させることができる。
図3によるパッド39は、ドラム24の全幅にわたって(典型的には32mmのオーダーで)延在している。
図3によるパッド39を芯46に置き換えると、
図4に示すように、潤滑剤を槽38から引き出し、露出角は最小限に制限される。
【0077】
この場合、パッド39は、必要に応じて液体貯蔵部38内において省略されても良いし、又は依然として存在しても良い。
【0078】
図5に更に詳細に示すように、芯46の端部は、それに接触するカウンタ切断端28のそれぞれの表面上に潤滑膜42の形成に導き、一方、カウンタ切断端28は接線方向35に移動する。
【0079】
カウンタ切断端28上に送られる潤滑剤の量を調節するために、潤滑パッド39又は芯46の摩擦を用いて、芯46と接触する回転カウンタ切断端28上への芯46の圧力を調節しても良い。このことは、幾つかの方法で行うことができる。簡単な方法は、芯46を移動方向、即ちカウンタ切断端28の接線方向35に対して弾性的に角度を付けることである。
【0080】
この状況は、
図6に示されており、ここで、シェービングユニットは、全体が16bで示されている。
【0081】
図6において、芯46と接触しているカウンタ切断端28の接線方向は、線35で示されている。芯46と接線方向35との間には、鋭角αが含まれている。芯46は、芯支持ばね46によって、それに接触するカウンタ切断端28の表面に対してばね付勢されている。
【0082】
図6に示すように、回転方向34に対して配置されると、芯46は、ドラム24に対して、又はその長さの少なくとも一部にわたって、回転ドラム24の対向する切断端28のうちの1つに対して静置され、ベルトブレーキとして機能する。芯46に対する回転ドラム24又はカウンタ切断端28の摩擦は、芯46を変形させ、回転部品に押し付ける。このことは、潤滑剤の流れ及び移動を開始及び/又は誘発する。
【0083】
【0084】
図7a)は、初期通常状態を示す。
図7b)によれば、芯46は、その外側端部において、カウンタ切断端28に対して静置され変形される。変形により、芯46への圧力が増大する。このことは、液体の流れの強化につながり、
図7c)に示す潤滑膜42の強化につながる。
【0085】
従って、カウンタ切断端28に弾性的に押し付けられて少なくとも部分的に接触する芯46は、切断線44に接触する前に連続的な潤滑膜42を供給するための潤滑剤供給の自己調節に至る。
【0086】
同様に、弾性部分又は可動部分(図示せず)に対するドラム24の摩擦を使用して、潤滑剤の流れを調節又は開放することができる。また、潤滑剤の流れを制御する他の公知の方法を組み込むこともできる。例えば、流体又は他のシェービング関連の二次制御装置に係合するために皮膚接触圧力を必要とする方法が知られている。
【0087】
本発明を適用することができる潤滑構成36に関して上述した基本概念の多くの変形が存在する。これには、押しボタン又は同様の制御によるような純粋な手動制御も含まれる。例えば、ドラム24のカウンタ切断端28は、上述したように、自立カテナリ構造又は片持ち梁構造とすることができ、又は
図8に示すようにシリンダとして構成された中実ドラム上の隆起部50として構成することができる。
【0088】
カウンタ切断端28はまた、中空管内の様々な形状の開口の端部であっても良い。同様に、ガード20は、切断端領域及び隣接するキャップ領域を有するといった、多数の形状を有することができる。
【0089】
本発明は図面及び以上の記述において説明され記載されたが、斯かる説明及び記載は説明するもの又は例示的なものとみなされるべきであり、本発明は開示された実施例に限定されるものではない。図面、説明及び添付される請求項を読むことにより、請求される本発明を実施化する当業者によって、開示された実施例に対する他の変形が理解され実行され得る。
【0090】
請求項において、「有する(comprising)」なる語は他の要素又はステップを除外するものではなく、「1つの(a又はan)」なる不定冠詞は複数を除外するものではない。単一の要素又はその他のユニットが、請求項に列記された幾つかのアイテムの機能を実行しても良い。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に利用されることができないことを示すものではない。
【0091】
請求項におけるいずれの参照記号も、請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。