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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20220525BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20220525BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20220525BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
G06F1/16 312M
G06F1/16 312F
G06F1/16 312T
H05K5/02 V
H05K7/00 B
F16C11/04 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021027577
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】恩田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】渡村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】堀越 正太
【審査官】佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-232849(JP,A)
【文献】特開2018-121149(JP,A)
【文献】特表2018-521384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16- 1/18
H05K 5/02
H05K 7/00
F16C 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボード装置を搭載した第1筐体とディスプレイを搭載した第2筐体とが各連結縁部分で回動可能に連結された電子機器であって、
前記連結縁部分と隣接し、前記第1筐体と前記第2筐体との回動動作によって前記第2筐体との相対角度が変化する第3筐体と、
前記第3筐体に設けられ、前記ディスプレイの表示制御をするディスプレイ制御部品と、
前記連結縁部分を経由して前記ディスプレイ制御部品と前記ディスプレイとを接続する第1フレキシブル基板と、
を備え、
前記第1フレキシブル基板は、前記第2筐体と前記第3筐体との相対角度の変化にともなって前記ディスプレイ制御部品と前記ディスプレイとの経路長の変化を吸収するために屈曲した余長部を有し、
前記余長部は前記第3筐体に配置されていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記第3筐体は箱形状であって、厚みが前記第1筐体および前記第2筐体よりも厚いことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器であって、
前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように配置される0度姿勢と、互いの面方向が直交する90度姿勢を越えた所定角度姿勢との間で相対的に回動可能に連結する第1ヒンジと、
前記第3筐体を前記第1筐体に対して相対的に回動可能に連結する第2ヒンジと、
を有し、
前記第2ヒンジの回動軸となる第2ヒンジ軸中心は、前記第1ヒンジの回動軸となる第1ヒンジ軸中心に対して、前記第1筐体の前後方向で前方であって、且つ前記第1筐体の上下方向で下方となる位置にあることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記第3筐体は、前記第1筐体と前記第2筐体との回動動作に連動して前記第2ヒンジ軸を中心として回動し、
前記第1筐体と前記第2筐体との回動による角度変化量よりも前記第2筐体と前記第3筐体との角度変化量の方が小さいことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記第1フレキシブル基板は、前記連結縁部分に沿って複数設けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記第1筐体にはプリント基板が設けられ、
前記連結縁部分を経由して前記ディスプレイ制御部品と前記プリント基板とを接続する第2フレキシブル基板を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記第3筐体には電気部品が設けられ、
前記連結縁部分を経由して前記電気部品と前記第1筐体内の電気部品制御部とを接続するケーブルを備え、
前記ケーブルは、前記第1筐体と前記第3筐体との回動中心を通る経路に配策されていることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の筐体を連結した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCは、本体筐体とディスプレイ筐体とがそれぞれの連結縁部分に設けられたヒンジを介して回動可能に構成されている。ノート型PCのディスプレイ筐体には、ディスプレイとその周りを囲う枠体とが設けられている。ディスプレイの表示制御部品は、一般的に特許文献1のように枠体分に設けられている。
【0003】
特許文献2には、キーボード装置を搭載した第1筐体及びディスプレイを搭載した第2筐体に加えて、さらにバッテリ装置を搭載した第3筐体を備えた構成が開示されている。第1筐体及び第2筐体がいずれも第3筐体に対して相対的に回動可能に連結されている。すなわち第3筐体は、実質的に第1筐体と第2筐体との間のヒンジブロックとして機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-075492号公報
【文献】特開2012-173878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスプレイの表示制御部とディスプレイとは多くの信号線で結線されることからフレキシブル基板を用いる場合がある。
【0006】
ところで、ノート型PCは、いわゆる大画面化・ナロー化によって枠体が狭くなりつつあり、特許文献1のように表示制御部品を枠体内に収納することが困難になり、該表示制御部をディスプレイ筐体以外の箇所に設けることが検討される。しかしながら、上記のとおり表示制御部とディスプレイとの接続にはフレキシブル基板を用いる場合があり、ディスプレイ筐体が回動することにともなってフレキシブル基板も屈曲されることになる。フレキシブル基板は可撓性があるが、多数回の屈曲に十分に対応するためには適切な配策経路を設ける必要がある。
【0007】
また、表示制御部品を特許文献2における第3筐体に配置することも検討され得る。しかしながら、第2筐体と第3筐体との相対角度の変化にともなってディスプレイ制御部品とディスプレイとの経路長の変化が生じるためフレキシブル基板はにはその変化を吸収するための余長部を設けることが望ましいが、特許文献2記載の構成では第3筐体内にバッテリ装置が配置されており、空間的余裕がない。
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、表示制御部をディスプレイ筐体以外の箇所に設けるとともに、表示制御部とディスプレイとを接続するフレキシブル基板を適切に配置することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係る電子機器は、キーボード装置を搭載した第1筐体とディスプレイを搭載した第2筐体とが各連結縁部分で回動可能に連結された電子機器であって、前記連結縁部分と隣接し、前記第1筐体と前記第2筐体との回動動作によって前記第2筐体との相対角度が変化する第3筐体と、前記第3筐体に設けられ、前記ディスプレイの表示制御をするディスプレイ制御部品と、前記連結縁部分を経由して前記ディスプレイ制御部品と前記ディスプレイとを接続する第1フレキシブル基板と、を備え、前記第1フレキシブル基板は、前記第2筐体と前記第3筐体との相対角度の変化にともなって前記ディスプレイ制御部品と前記ディスプレイとの経路長の変化を吸収するために屈曲した余長部を有し、前記余長部は前記第3筐体に配置されている。
【0010】
このような電子機器では、ディスプ制御部品を第3筐体に配置するとともに、第1フレキシブル基板の余長部を配置するための適度に広いスペースが第3筐体内に設けられ、該フレキシブル基板を適切に配置することができる。
【0011】
前記第3筐体は箱形状であって、厚みが前記第1筐体および前記第2筐体よりも厚くてもよい。これにより、余長部を配置するスペースを一層大きくすることができる。
【0012】
前記第1筐体と前記第2筐体とを、互いに面方向で重なるように配置される0度姿勢と、互いの面方向が直交する90度姿勢を越えた所定角度姿勢との間で相対的に回動可能に連結する第1ヒンジと、前記第3筐体を前記第1筐体に対して相対的に回動可能に連結する第2ヒンジと、を有し、前記第2ヒンジの回動軸となる第2ヒンジ軸中心は、前記第1ヒンジの回動軸となる第1ヒンジ軸中心に対して、前記第1筐体の前後方向で前方であって、且つ前記第1筐体の上下方向で下方となる位置にあってもよい。これにより、第2ヒンジが余長部を配置するスペースよりも離れた位置になり、該スペースを一層大きくすることができる。
【0013】
前記第3筐体は、前記第1筐体と前記第2筐体との回動動作に連動して前記第2ヒンジ軸を中心として回動し、前記第1筐体と前記第2筐体との回動による角度変化量よりも前記第2筐体と前記第3筐体との角度変化量の方が小さくてもよい。これにより、第1フレキシブル基板が屈曲する角度変化量を抑制して高寿命化を図ることができる。
【0014】
前記第1フレキシブル基板は、前記連結縁部分に沿って複数設けられていてもよい。このような電子機器では、第3筐体に長いディスプレイ制御部品を収納し、複数の第1フレキシブル基板を容易に接続可能となる。
【0015】
前記第1筐体にはプリント基板が設けられ、前記連結縁部分を経由して前記ディスプレイ制御部品と前記プリント基板とを接続する第2フレキシブル基板を備えていてもよい。このようにして、第3筐体に配置したディスプレイ制御部品と第1筐体のプリント基板とを接続できる。
【0016】
前記第3筐体には電気部品が設けられ、前記連結縁部分を経由して前記電気部品と前記第1筐体内の電気部品制御部とを接続するケーブルを備え、前記ケーブルは、前記第1筐体と前記第3筐体との回動中心を通る経路に配策されていてもよい。これにより、ケーブルの屈曲が抑えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記態様によれば、ディスプレイ表示制御部をディスプレイ筐体以外の箇所に設けるとともに、表示制御部とディスプレイとを接続するフレキシブル基板を適切に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係る電子機器の斜視図である。
図2図2は、第1筐体と第2筐体とを閉じて0度姿勢とした状態での斜視図である。
図3A図3Aは、0度姿勢での各筐体の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面図である。
図3B図3Bは、135度姿勢での各筐体の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面図である。
図3C図3Cは、180度姿勢での各筐体の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面図である。
図4A図4Aは、0度姿勢での各筐体の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面断面図である。
図4B図4Bは、135度姿勢での各筐体の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面断面図である。
図4C図4Cは、180度姿勢での各筐体の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面断面図である。
図5図5は、0度姿勢での各筐体の連結部分及びその周辺部を下方から見た斜視図である。
図6図6は、第3筐体の分解斜視図である。
図7図7は、電子機器の電気部品にかかるブロック図である。
図8図8は、底面側の構成するカバー部材を取り外した状態の第1筐体の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0020】
図1は、一実施形態に係る電子機器10の斜視図である。図1に示すように、電子機器10は、第1筐体11と、第2筐体12と、第3筐体13とを備える。第2筐体12及び第3筐体13は、それぞれ第1筐体11と相対的に回動可能に連結されている。電子機器10は、第1筐体11と第2筐体12とが一般的なクラムシェル型のノート型PCの外観を構成し、第3筐体13がこのノート型PCのデバイス収容部兼スタンドとして機能する。
【0021】
図2は、第1筐体11と第2筐体12とを閉じて0度姿勢とした状態での斜視図である。以下では、特に説明する場合を除き、電子機器10について、図2に示す0度姿勢における各筐体11~13の奥行き方向を前後、幅方向を左右、厚み方向を上下、と呼んで説明する。これらの方向は説明の便宜上のものであり、実際の方向は電子機器10の使用時や収納時の姿勢によって変化し、或いは視認する方向によっても変化する。
【0022】
先ず、各筐体11~13の全体構成を説明する。
【0023】
図3A図3B、及び図3Cは、それぞれ0度姿勢、135度姿勢、及び180度姿勢での各筐体11~13の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面図である。
【0024】
第1筐体11と第2筐体12とは、互いに面方向で重なるように配置される0度姿勢(図2及び図3A参照)から、互いの面方向が直交する90度姿勢を越えて、互いに面方向と垂直する方向に並んで平板状に配置される180度姿勢(図3C参照)まで相対的に回動可能である。第3筐体13は、第1筐体11に対して回動する第2筐体12によって押され、或いは引き寄せられることで第1筐体11に対して相対的に回動する。図1及び図3Bは、第1筐体11と第2筐体12との間を135度姿勢とした状態を示している。この場合、第2筐体12と第3筐体13との間は、例えば95度となり、第1筐体11と第3筐体13との間は、例えば130度となる。
【0025】
第1筐体11は、薄い箱状の筐体である。第1筐体11の内部には、CPUやメモリを実装したマザーボード(プリント基板)17(図4A参照)やバッテリ装置46(図8参照)等が収容されている。第1筐体11の表面11a(0度姿勢時には上面)には、キーボード装置14やタッチパッド16が露出している。第1筐体11は、表面11aにタッチパネル式のディスプレイを設置し、これにソフトウェア式のキーボード装置を表示してもよい。
【0026】
第2筐体12は、第1筐体11よりもさらに薄い箱状の筐体である。第2筐体12の表面12a(0度姿勢時には下面)には、ディスプレイ20が露出している。ディスプレイ20は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。ディスプレイ20の周囲は枠状のベゼル21で囲まれている。ベゼル21の四辺のうち、図1に示す角度姿勢時に上側に位置する部分(上ベゼル21a)には、カメラ22a、マイク22b、ToFセンサ22c、リッドセンサ22d等のサブデバイス22が設置されている。マイク22bは、例えば4つがほぼ等間隔に設けられ、マイク孔は第2筐体12の縁に開口している。リッドセンサ22dは、例えばホールセンサであり第1筐体11における対応する位置の磁石に反応する。ディスプレイ20はタッチパネル式である。ベゼル21は、第2筐体12の表面12aを覆うカバーガラスで兼用されてもよい。
【0027】
第3筐体13は、筐体11,12よりも厚く、前後方向寸法が短い箱状の筐体である。第3筐体13の板厚は、例えば筐体11,12の板厚の合計値と略同一である(図3A参照)。第3筐体13は、0度姿勢時に各筐体11,12の後端部11b,12bから後方に突出した姿勢となる。第3筐体13は、主に2つの機能を有する。第1の機能は、ディスプレイ20の表示制御をするディスプレイコントローラ20a(ディスプレイ制御部品、図4A参照)、スピーカーモジュール23等を収容するデバイス収容部としての機能である。第3筐体13に収納される電気部品についてはさらに後述する。第2の機能は、第2筐体12を第1筐体11から開いて当該電子機器10を使用する際のスタンドとしての機能である。
【0028】
次に、各筐体11~13の連結部分の具体的な構成を説明する。
【0029】
図4A図4B、及び図4Cは、それぞれ0度姿勢、135度姿勢、及び180度姿勢での各筐体11~13の連結部分及びその周辺部を拡大した模式的な側面断面図である。図5は、0度姿勢での各筐体11~13の連結部分及びその周辺部を下方から見た斜視図であり、第1筐体11の下面を構成するカバー部材を取り外して第1筐体11の内部構造を模式的に図示したものである。
【0030】
図4A図5に示すように、第1筐体11及び第2筐体12は、互いの後端部(連結縁部分)11b,12b同士が第1ヒンジ24を用いて相対的に回動可能に連結されている。第1筐体11及び第3筐体13は、互いの後端部11bと前端部13aとが第2ヒンジ25を用いて相対的に回動可能に連結されている。なお、第2筐体12及び第3筐体13は、ヒンジによる直接的な連結はされていないが、相互間に配線や牽引部材26等が亘っている。
【0031】
図4A図5に示すように、第1ヒンジ24は、第1ヒンジ軸24aと、第1ブラケット24bと、トルク機構部24cとを有する。本実施形態の第1ヒンジ24は、左右一対で設置され、互いに左右対称構造である。
【0032】
第1ヒンジ軸24aは、筐体11,12間の回動軸となる金属シャフトである。第1ブラケット24bは、第1ヒンジ24の第1筐体11に対する取付用の金属プレートであり、第1筐体11に固定される。トルク機構部24cは、第1ヒンジ24による筐体11,12間の回動に所定の回転トルクを付与する機構である。
【0033】
図4A図5に示すように、第2ヒンジ25は、第2ヒンジ軸25aと、第2ブラケット25bとを有する。第2ヒンジ25は、左右一対で設置され、互いに左右対称構造である。
【0034】
第2ヒンジ軸25aは、筐体11,13間の回動軸となる金属シャフトである。第2ブラケット25bは、第2ヒンジ25の第1筐体11に対する取付用の金属プレートであり、第1筐体11に固定される。
【0035】
第2ヒンジ25は、第2ヒンジ軸25aと第2ブラケット25bとが一体に形成されている。第2ヒンジ軸25aの一端部は、第3筐体13の軸受13bに相対回転可能に挿入される(図5参照)。第2ヒンジ軸25aの他端部は、第2ブラケット25bと一体である。
【0036】
第2ヒンジ25は、第1ヒンジ24のように、筐体11,13間の回動に回転トルクを発生させるための意図的なトルク機構部、つまり機械的或いは構造的なトルク発生のための機構を有していない。このため、第2ヒンジ軸25aと第3筐体13の軸受13bとの間は、実質的に回転トルクがない状態で相対回転する。このため、図5からも明らかな通り、第2ヒンジ25は、トルク機構部24cを持つ第1ヒンジ24に比べて、構造の簡素化及び小型化が図られている。
【0037】
但し、第2筐体12を開き、後述するように牽引部材26が撓みを生じた場合(図4B及び図4C参照)、第3筐体13はこの撓み分だけがたつきを生じ得る。このため、電子機器10は、第2筐体12をある程度以上に開いた状態で持ち上げると、第3筐体13ががたつき分だけ動いてしまう。この点につき、実際の製品では、第2ヒンジ軸25aと軸受13bとの間には、部材間の摺動抵抗に起因した回転トルクは当然生じ得る。この摺動抵抗による回転トルクは第1ヒンジ24のトルク機構部24cが発生するトルクに比べて微小である。しかしながら、この摺動抵抗による回転トルク、さらには第3筐体13と筐体11,12との間に通されている配線による抵抗等の効果もあり、第3筐体13が製品品質を損なうほどの自由ながたつきを生じることは抑えられている。さらに、第2ヒンジ軸25aの外周面にダンパーグリス等の潤滑剤を塗布し、第2ヒンジ軸25aの回転に微小な回転トルクを付与する構成としてもよい。そうすると、第3筐体13のがたつきを一層抑制することができる。勿論、グリスが第2ヒンジ25の構造の簡素化及び小型化に悪影響を及ぼすことはない。
【0038】
図4Aに示すように、第2ヒンジ軸25aの軸中心は、第1ヒンジ軸24aの軸中心に対して、第1筐体11の前後方向で前方であって、且つ第1筐体11の上下方向で下方となる位置に配置されている。
【0039】
ところで、上記の通り、第2ヒンジ25はトルク機構部を持たない。このため、第3筐体13は、第1筐体11に対しては回転トルクなしに回動し、第2筐体12に対しては回転トルクなしに旋回するように相対移動する。そこで、当該電子機器10は、第2筐体12と第3筐体13との間に、牽引部材26と、ロック部28とを備える。
【0040】
図4A図4Cに示すように、牽引部材26は、第2筐体12と第3筐体13との間に亘って延在したシート状或いはワイヤ状の部材である。本実施形態の牽引部材26は、ステンレス等の金属で形成された薄く可撓性を有するシート状部材である。牽引部材26は、実質的に伸縮性がない部材である。牽引部材26は、伸縮性を持った部材でもよい。但し、このような牽引部材26は、第2筐体12が第1筐体11に対して135度姿勢から0度姿勢に向かう方向に回動された際、いずれかの角度(例えば40度姿勢)では伸び切った状態となることが好ましい。これにより伸縮性を持った牽引部材26でも第3筐体13を第2筐体12によって円滑に牽引することができる。また伸縮性を持った牽引部材26が0度よりも大きな角度(例えば上記した40度姿勢)で伸び切った状態となることで、40度を通過して0度に向かう際、牽引部材26が収縮する反力が筐体12,13間に作用する。このため、40度を過ぎた後、0度までの第3筐体13の回動が一層円滑となる。さらに、牽引部材26が0度姿勢時に第3筐体13を第2筐体12側に引き寄せる効果も得られ、第3筐体13の姿勢が安定する。
【0041】
牽引部材26の一端部は、第2筐体12の後端部12bに形成された後向きの開口部を通して第2筐体12内に挿入され、例えば第2筐体12の背面カバー部材に固定されている。牽引部材26の他端部は、第3筐体13の前端部13aに形成された前向きの開口部13dを通して第3筐体13内に挿入され、例えばスピーカーモジュール23に固定されている。なお、ディスプレイ20からディスプレイコントローラ20aへの配線や牽引部材26はこの開口部13dを通過して筐体12,13間に延在している。また、ディスプレイコントローラ20aやスピーカーモジュール23からマザーボード17への配線もこの開口部13dを通過して筐体11,13間に延在している。
【0042】
図4Aに示す0度姿勢において、牽引部材26は、筐体12,13間で突っ張り、弛みのない引張状態となる。図4Bに示す135度姿勢において、牽引部材26は、筐体12,13間で弛んで撓んだ状態となる。図4Cに示す180度姿勢において、牽引部材26は、筐体12,13間で135度姿勢時と同程度に撓んだ状態、或いは135度姿勢時よりも多少引っ張られてはいるがある程度は撓んだ状態となる。これにより牽引部材26は、筐体11,12間が180度姿勢から0度姿勢に向かって閉じ動作する際、第3筐体13を第2筐体12側に引き寄せることができる。
【0043】
次に、第3筐体13に収納されている電気部品と、これらの電気部品と第1筐体11および第2筐体12とを接続する電線類について説明する。図6は第3筐体13の分解斜視図である。図7は、電子機器10の電気部品にかかるブロック図である。上記のとおり、第3筐体13にはディスプレイコントローラ20aおよびスピーカーモジュール23が設けられている。
【0044】
図6に示すように、第3筐体13はさらに、3つのアンテナモジュール30と、オーディオ基板31と、タッチパネル基板32と、カメラ基板33とを有する。アンテナモジュール30には、合計で5つのアンテナが含まれる。オーディオ基板31にはオーディオジャックが含まれる。
【0045】
ディスプレイコントローラ20aは、ディスプレイ20に関して少なくともその一部の制御を行う部品である。ディスプレイコントローラ20aは、例えばディスプレイ20の表示を行うためのタイミングコントローラである。表示制御に必要なグラフィックス機能部や表示メモリ等は第1筐体11のマザーボード17に備えられていてもよいし、ディスプレイコントローラ20aに備えられていてもよい。ディスプレイコントローラ20aは左右方向に沿って長く薄い部品である。
【0046】
タッチパネル基板32は、ディスプレイ20に設けられたタッチパネルの制御を行う基板である。電子機器10ではベゼル21の部分には少なくともディスプレイコントローラ20aおよびタッチパネル基板32が配置されないため、該ベゼル21を細くすることができる。
【0047】
電子機器10では、アンテナモジュール30における5つのアンテナは左右方向に分散して設けられて相互の電波干渉を抑制し、良好な通信環境が得られる。アンテナモジュール30を第3筐体13に設けると、第2筐体12内に設ける場合と比較して第1筐体11のマザーボードまでの距離が短く配策の短縮化が図られる。また、第1筐体11にはさらに別のアンテナを設けてもよい。第1筐体11に設けるアンテナは第3筐体13に設けたアンテナに対して相当離間しており、電波干渉を一層抑制できる。カメラ基板33はカメラ22aを制御する基板である。
【0048】
さらに、電子機器10ではスピーカーモジュール23やアンテナモジュール30等が第1筐体11ではなく第3筐体13に設けられていることから、それだけ第1筐体11のレイアウトスペースの余裕があり、バッテリ装置46(図8参照)やファン49(図8参照)等を大型化することができる。
【0049】
図7に示すように、第1筐体11と第3筐体13とは第1配線群34で接続されており、第2筐体12と第3筐体13とは第2配線群35で接続されている。第1配線群34は第1筐体11の後端部11bと第3筐体13の前端部13aとの間を通っている。第2配線群35は、第2筐体12の後端部12bと、第3筐体13の前端部13aとの間を通っている。第2配線群35と上記の牽引部材26とは干渉しない位置に設けられている。なお、第1配線群34および第2配線群35は便宜上の呼称であり、構成する配線は実際上は「群」ではなく独立的なものであって、例えば左右方向に分かれて配置されている。
【0050】
図6に示すように、第2配線群35には3本の分岐ディスプレイFPC(第1フレキシブル基板)36と、1本の第2タッチセンサFPC37と、1本のセンサFPC38が含まれる。
【0051】
分岐ディスプレイFPC36は、ディスプレイコントローラ20aとディスプレイ20とを接続するものであり、左右方向両端寄りの箇所と略中央部分とに分散して設けられている。このように、分岐ディスプレイFPCは後端部12bおよび前端部13aに沿って複数設けることにより、ディスプレイ20を左右方向両端および中央部分でバランスよく表示することができる。また、上記のとおりディスプレイコントローラ20aは左右方向に沿った長い部品であり、分散した3本の分岐ディスプレイFPC36が容易に接続可能となっている。
【0052】
図8は、底面側を構成するカバー部材を取り外した状態の第1筐体11の底面図である。図8に示すように、第1配線群34には、1本の主ディスプレイFPC(第2フレキシブル基板)40と、1本の第1タッチセンサFPC41と、1本のカメラFPC42と、複数のケーブル43,44,45,51とが含まれる。図8における符号46はバッテリ装置であり、符号48はSSD(Solid State Drive)であり、符号47はアンテナユニットである。アンテナユニット47は、例えばいわゆる5G通信システムに準拠したものである。
【0053】
主ディスプレイFPC40はマザーボード17とディスプレイコントローラ20aとを接続するものである。第1タッチセンサFPC41はマザーボード17とタッチパネル基板32とを接続するものである。第1タッチセンサFPC41には、例えばマイク22bの信号が含まれていてもよい。カメラFPC42はマザーボード17とカメラ基板33とを接続するものである。カメラFPC42には、例えばToFセンサ22cやリッドセンサ22dの信号が含まれていてもよい。主ディスプレイFPC40、第1タッチセンサFPC41、カメラFPC42は薄いフレキシブル基板であって、相互にほぼ重ならないように左右方向に沿って配列されている。
【0054】
ケーブル43は略中央部分に配策されている4本のケーブルであり、例えばスピーカーケーブルやmmWAVEアンテナケーブルである。ケーブル44は左寄り部分に配策されている2本のケーブルであり、例えばPセンサー同軸ケーブルやMIMOアンテナケーブルである。ケーブル45は左寄り部分に配策されており、例えばオーディオハーネスである。ケーブル51は右寄り部分に配策されている3本のケーブルであり、例えばWifiやMIMOのアンテナケーブルである。これらのケーブルは、第1筐体11の所定の電気部品制御部とアンテナモジュール30、スピーカーモジュール23およびオーディオ基板31等との間を接続するものである。
【0055】
図8における軸線Cは、第2ヒンジ25における第2ヒンジ軸25aを延長した線であり、換言すれば第1筐体11と第3筐体13との回動中心である。したがって、図8では軸線Cが第1筐体11と第3筐体13との境となっている。
【0056】
ケーブル43,44,45,51は、軸線Cを通る回動中心経路部43a,44a,45aおよび51aを含む経路に配策されている(図4A図4Cも参照)。回動中心経路部43a,44a,45a,51aは軸線Cに沿って適度な長さが確保されている。ケーブル43,44,45,51は、第1筐体11と第3筐体13との回動にともなって回動中心経路部43a,44a,45a,51aの部分である程度捻じれるが屈曲することはなく、高寿命化が図られる。
【0057】
第1配線群34はある程度本数が多いため配策のための左右方向の幅が必要となっているが、上記のとおり第1筐体11と第3筐体13との回動軸である第2ヒンジ25はトルク機構部を有していないことから小型であり、第1配線群34の経路スペースが確保される。
【0058】
図4A図4Cに戻り、分岐ディスプレイFPC36は余長部36aを有している。余長部36aは、第2筐体12と第3筐体13との相対角度の変化にともなってディスプレイコントローラ20aとディスプレイ20との経路長の変化を吸収するために屈曲した部分である。余長部36aは、第3筐体13における前方部分のスペース50に配置されている。図4A図4Cでスペース50は概念的に破線で示している。なお、スペース50は固定的な領域ではなく、第1筐体11と第3筐体13との相対角度によって多少変化するものであってもよい。
【0059】
0度姿勢(図4A参照)においては、余長部36aは適度に長く、スペース50内で複数の屈曲部が折り返すように形成されている。135度姿勢(図4B参照)においては、余長部36aは比較的短くなり、スペース50内の屈曲部も少なくなる。180度姿勢(図4C参照)においては、余長部36aはさらに短くなるが、ある程度の長さは確保されており張力が加わることはない。
【0060】
第3筐体13は、第1筐体11に対しては第2ヒンジ25によって接続されているが、第2筐体12に対しては薄い牽引部材26だけで接続されていることからスペース50の確保が容易である。また、第2ヒンジ25は意図的なトルク機構部を有していないことから小型で足り、スペース50を大きく確保することができる。さらに、第3筐体13は厚みが第1筐体11および第2筐体12よりも厚いことから、スペース50を一層大きく確保することができる。さらにまた、第2ヒンジ軸25aは、第1ヒンジ軸24aに対して、前方且つ下方となる位置であって、スペース50とはやや離間した位置にに配置されていることから、スペース50を確保しやすい。このように、電子機器10では、第3筐体13内で空間的余裕からスペース50を大きく確保し、適度に長い余長部36aを適切に収納することができる。これにより、分岐ディスプレイFPC36は多数回の屈曲に対応できるようになる。
【0061】
第3筐体13は、他の筐体11,12よりも大きな厚みを利用して、ディスプレイコントローラ20aと共に、スピーカーモジュール23、特にウーファーのような容積の大きな部品も容易に収容できる。その結果、第1筐体11は、スピーカーモジュール23等の収容が不要となり、或いは少なくともウーファーのような厚みのある部品の設置スペースが不要となり、その分薄型化できる。特にスピーカー部品のうち、ウーファーは薄型化が難しく、第1筐体11の厚さを決めるボトルネックにもなり得るため、第3筐体13に搭載できることで第1筐体11の厚みの低減がし易くなる。また、第2筐体12は、従来はディスプレイ20の裏側に配置していたディスプレイコントローラ20aが不要となり、その分薄型化できる。
【0062】
上記のとおり、第3筐体13は、第1筐体11と第2筐体12との回動動作に連動して第2ヒンジ軸25aを中心として回動する。このとき、第1筐体11と第2筐体12との回動による角度変化量よりも第2筐体12と第3筐体13との角度変化量の方が小さくなっている。
【0063】
具体的には、第1筐体11と第2筐体12との相対角度をθ1とし、第2筐体12と第3筐体13との相対角度をθ2としたとき、0度姿勢(図3A参照)では、θ1=0度であり、θ2=180度である。これに対して135度姿勢(図3B参照)では、θ1=135度であるから、0度姿勢時からの角度変化量も135度である。また、135度姿勢ではθ2=95度となっている。したがって、θ2の0度姿勢時からの角度変化量は180-95=85度であり、θ1の角度変化量よりも小さい。
【0064】
同様に、180度姿勢(図3C参照)では、θ1=180度であるから、0度姿勢時からの角度変化量も180度である。また、180度姿勢ではθ2=65度となっている。したがって、θ2の0度姿勢時からの角度変化量は180-65=115度であり、θ1の角度変化量よりも小さい。
【0065】
そうすると、仮にディスプレイコントローラ20aを第1筐体11内に配置した場合には分岐ディスプレイFPC36の動的な屈曲角度変化(つまりθ1の角度変化量)が相当に大きくなり寿命の低下が懸念される。これに対して本実施形態ではディスプレイコントローラ20aを第3筐体13内に配置していることから、1筐体12内に配置する場合と比較して分岐ディスプレイFPC36の動的な屈曲角度変化(つまりθ2の角度変化量)は適度に小さくなり高寿命化を図ることができる。
【0066】
上記のとおり、本実施の形態に係る電子機器10では、ディスプレイコントローラ20aを第3筐体13に配置することにより第2筐体12のベゼル21を細くすることができるとともに、分岐ディスプレイFPC36の余長部36aを配置するための適度に広いスペース50を第3筐体13内に設けることができる。
【0067】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
10 電子機器
11 第1筐体
12 第2筐体
13 第3筐体
11b,12b 後端部(連結縁部)
17 マザーボード(プリント基板)
20 ディスプレイ
20a ディスプレイコントローラ
21 ベゼル
23 スピーカーモジュール
24 第1ヒンジ
25 第2ヒンジ
30 アンテナモジュール
34 第1配線群
35 第2配線群
36 分岐ディスプレイFPC(第1フレキシブル基板)
36a 余長部
40 主ディスプレイFPC(第2フレキシブル基板)
43a,44a,45a,51a 回動中心経路部
50 スペース
【要約】
【課題】ディスプレイ制御部品をディスプレイ筐体以外の箇所に設けるとともに、ディスプレイ制御部品とディスプレイとを接続するフレキシブル基板を適切に配置する。
【解決手段】電子機器10は第1筐体11と第2筐体12とが後端部11b,12bを連結縁部分として回動する。第3筐体13は連結縁部分と隣接し、第2筐体12との相対角度が変化する。第3筐体13にはディスプレイコントローラ20aと、連結縁部分を経由してディスプレイコントローラ20aとディスプレイ20とを接続する分岐フレキシブルFPC36とを備える。分岐ディスプレイFPC36は、第2筐体12と第3筐体13との相対角度の変化にともなってディスプレイコントローラ20aとディスプレイ20との経路長の変化を吸収するために屈曲した余長部36aを有する。余長部36aは第3筐体13のスペース50に配置されている。
【選択図】図4B
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8