(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】屋根補修シート
(51)【国際特許分類】
E04G 21/28 20060101AFI20220525BHJP
【FI】
E04G21/28 B
(21)【出願番号】P 2022033990
(22)【出願日】2022-03-05
【審査請求日】2022-03-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522088852
【氏名又は名称】久保田 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100103986
【氏名又は名称】花田 久丸
(72)【発明者】
【氏名】久保田悦司
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6739853(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3235638(JP,U)
【文献】特開平8-60871(JP,A)
【文献】特開2021-59958(JP,A)
【文献】特開2003-97051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/24-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の補修箇所を一時的に被覆するために用いる屋根補修シートおいて、防水性の上シート(10)と下シート(20)の2枚のシート間のシート内部空間(11)中に吸水材(30)をサンドイッチ状に重ね合わせ、上シートと下シートで構成された各々の吸水材保持部(14)の側縁部(14a)を縫合もしくは圧着溶融して吸水材を内部に封止し、上縁部(12)の一端には吸水材へ吸水させる水を注入する注水部(13)、および下縁部(16)には吸水材へ吸水させた水を排水する排水部(17)を付加し、該屋根補修シートを修理すべき屋根上に被覆後に開閉可能な注水部から水を注入して前記吸水材(30)に吸水させ、該吸水した水の重りで修理すべき屋根と前記下シートが面接触することで安定して修理すべき屋根を被覆するように構成したことを特徴とする屋根補修シート(1)。
【請求項2】
前記重ね合わせた上シート(10)と下シート(20)を筒状または升目状に縫合もしくは圧着溶融することにより、前記シート内部空間(11)を1または複数のコンパートメントに区切って吸水材保持部(14)を形成し、該吸水材保持部に前記吸水材(30)を安定的に封止配置するように構成したことを特徴とする請求項1記載の屋根補修シート(1)。
【請求項3】
前記上シート(10)を、水を透過させる材質または網目状の構造にするように構成したことを特徴とする請求項1記載の屋根補修シート(1)。
【請求項4】
前記重ね合わせた上シート(10)と下シート(20)を筒状または升目状に面ファスナーによって接着することにより、前記シート内部空間(11)を1または複数のコンパートメントに区切って吸水材保持部(14)を形成し、上シート(10)と下シート(20)を分離させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の屋根補修シート(1)。
【請求項5】
前記シート内部空間(11)に封入する吸水材(30)をシート形状とし、上シート(11)と下シート(20)に縫合、圧着溶融した構成したことを特徴とする請求項1記載の屋根補修シート(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は屋根を補修するための屋根補修シートに加え、建設途中における屋根を覆うシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自然災害や雨漏りにおいてブルーシートと一般に呼称されるビニールシートが屋根の補修に用いられる。その際、シートを固定するため屋根の上に土嚢を載せる、または紐によって固定するという方法が取られてきた。しかし、屋根に上り作業することが危険であることを問題視し、シートを簡便に固定するともに風によって飛びにくくするという技術的課題をシート自体の材質や形状により解決を図っている。
【0003】
先述の屋根補修シート自体の新規形状によって上記技術的課題を解決しようとする従来技術については、例えば引例1として特許6739853に土嚢の代わりに水を使用した補修用シートが記載されている。この引例1において、土嚢を運ぶ労力を低減したものではあるが、その構造としてシートの縁部分にのみ重さが偏っていることから風に対する飛ばされやすさが課題としてあげられる。また、補修シートが棟の有無や屋根の形状によって補修できる屋根が制限されるという課題がある。
【0004】
次にシートを紐によって固定する方法で上記技術的課題を解決しようとする従来技術については、例えば以下の引例2がある。
【0005】
引例2としての特許6936999では、また、引例2で取り上げた、シートを固定する部分が局所的であるために負荷がかかるという課題を、シートの縁部分に紐を通して解決を図っている。しかし、こちらの引例も補修シートが屋根の形状等によって補修箇所が限られるという共通の課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許6739853
【文献】特許6936999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来技術に係る屋根補修シートでは補修する屋根の箇所によってシート構造を変化させることが必要となる。また、補修の際には危険が伴う。
【0008】
本発明は、このような諸問題を解決するために本願発明は、シート全体に重りを分散させることにより、風によってシートが吹き飛ぶことを防止するための屋根補修シートを提供することを目的とする。更に本願発明は、2枚の重なったシートの内部に吸水性の材料を封入し、水を蓄える構造を持たせることでより簡易にシートを屋根に固定することができる屋根補修シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明に係る屋根補修シートとして、第1の発明は屋根を補修するための二枚のシートが重なった屋根補修シートであって、屋根の上面を被覆するためのシート本体と、2枚のシートの間に設けられた吸水材を備えている。この吸水材は、水を溜めシート本体の重りとして機能するために設けられ、その吸水材をシート内部に保持する1つまたは複数の吸水材保持部を備えている。
【0010】
この様な構造を持つ屋根補修シートは、シート全体に水を含んだ吸水材を分散させるため、シート全体を屋根と密着させることができ、風によって吹き飛ばされにくくなる。このことにより、シート内部に封入する水の量を減らすことができ、建物への負荷を減らすことができる。したがって、地震等の災害時であれば建物の強度が低減している事による二次的な災害を減らすことができる。
【0011】
更に本願発明に係る屋根補修シートは、従来の屋根補修シートと異なり、棟のない屋根など屋根の形状が、屋根の部分的な被覆に対してもシート全体に重りを分散させていることで使用可能となる。つまり、シートの形状を変化させる必要なく、適用可能な屋根が多いため、災害時に備えて備蓄しておくことでより多くの屋根に対して補修することができる。
【0012】
第2の発明として、第1の発明において、シート内部の吸水材保持部が、屋根に設置後に水を封入するためのシート内部空間に均一に分散する様、シート内部空間を複数の袋状に区分けするように縫合、または面ファスナーによって水が通過するように接合された構造を備えている。また、吸水材をシート内部空間に封入するための入り口を線ファスナー等によって開閉でき、水を注入することも簡易になる構造をとる。
【0013】
この構造によってシート全体に、面ファスナーの隙間から重りとしての水を一箇所又は少ない箇所から注入することができ、全ての吸水材保持部に水を行き渡らせることを可能にする。そして、重りとして土嚢などを屋根に運ぶ必要なく安全に作業することができる。また、シートの縁部分に線ファスナーを用いることで過剰に入れた水や屋根補修シートとして使用後に水を排出できる様にする。
【0014】
更に吸水材保持部を区分けする部分を封止配置した場合、屋根を部分的に補修する際に修正できるメリットを有する。一方で、面ファスナー等によって吸水材保持部を封止せずに配置した場合、注入部を一部にだけのみ設けることで注水することができるメリットを有する。また、シート使用後、撤去する際に水を吸収した吸水材をより簡易的に、シート外に出して天日干しする等で水分を気化させ、シートを再利用可能にするというメリットも有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1実施例1に係る屋根補修シート1の構成を示す概観図である。
【
図2】
図2は、
図1における切断面A-Aに沿った断面図である。
【
図3】
図3は、実施例3に係る屋根補修シートの構成を示す概観図である。
【
図5】
図5は、実施例3に係る屋根補修シート1の構成を示す展開図である。
【
図6】
図6は、実施例3に係るシート1の構成を示す概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施例に係る屋根補修シート1の構成を示す概観図である。この屋根補修シート1は、防水性の上シート10、下シート20の2枚のシートをサンドイッチ状に重ね合わせてシート内部空間11を形成し、このシート内部空間内に吸水材30を封止する構成となっている。すなわち上シート10と下シート20を重ね合わせた袋状のシート内部空間11中に、吸水材30が封止されている。より具体的には、上シート10と下シート20で構成される吸水材保持部14の各々は、その側縁部(14a)は縫合もしくは圧着溶融され各吸水材保持部14は吸水材30を内部に封止している。また、上縁部12には、重りとなる水を注入するための注水部13が設けられ、また下縁部16には吸水材へ吸水させた水を排水する排水部17が設けられている。またシートの重りとして機能する吸水した吸水材30をシート内部空間11に均等に配置するために、各吸水材は、筒状または升目状の1つまたは複数のコンパートメントに区切って吸水材保持部14内に封止配置されている。なお、注水部13および排水部17は例えば封水ファスナーや簡便なバルブ等で構成することができる。
【0017】
屋根補修時には、この屋根補修シート1で屋根を被覆し、屋根の破損箇所の広さに応じて、個別の吸水材保持部14の注水部13から水を注入して、吸水材30に注入した水を吸収させて重りとして機能させる。この場合引例1が液体を封入した筒状の筒状部で屋根表面と線接触する構成とは異なり、本願発明に係る屋根補修シート1は屋根表面に対して面接触する構成であるため、たとえ屋根の破損個所が比較的大きい場合にも一か所に荷重が集中せず、防水シートを屋根の破損個所に安定して応急被覆することが可能となる利点を有する。更に引例では筒状部に液体が封入されているため、例えば屋根の破損個所はもとより屋根上の不知の箇所から突出した釘等により筒状部に穴があく可能性もあり、これにより液体漏れの危険性がある。これに対し本願発明では、吸水材30に吸水保持された水重による重りを利用するため屋根修理の現場対応力が高いという利点も併せて有する。
【0018】
なお隣り合った複数の吸水材保持部14での水の透過性は必要ないため、各吸水材保持部を区分けする吸水材保持接合部15も縫合、もしくは圧着溶融することで封水構造となるように構成されている。なおここで使用する吸水材は、傾斜した屋根を屋根補修シート1で被覆する場合でも、吸水した水が吸水材30の内部に一定期間安定的に滞留し、容易には傾斜移動し難い吸水性能を有する素材が用いられる。具体的にどの様な吸水性能が適当かは当業者であれば容易に選別可能であるため詳細は割愛する。
【0019】
図2は
図1に示す屋根補修シート1の切断線A-Aに沿った断面図である。上シート10と下シート20の間のシート内部空間11に一つまたは複数の吸水材保持部14を設けることでシート1の重りとなる吸水材30を分散させ、風に対して飛ばされにくくなることを可能にしている。
【0020】
図1の実施例1については吸水材保持部14が細長い形状となっているため、屋根の傾斜に対して吸水材保持接合部15が垂直になるように、シート1で屋根を被覆する必要がある。そのため、吸水材保持部14が升目になるように吸水材保持接合部15を交差させるようにして屋根に対して任意の方向でシート1を使用できるようにすることが考えられる。ただし、吸水材保持部32を升目にすると全ての吸水材30に水が行き渡らなくなり、屋根の重りとして機能しなくなる。
【0021】
さらに、第1実施例においてシート1使用後は、注水部13をファスナー等の開閉可能な構造を持たせ、吸水材30を吸水ポリマーにすると、塩化カルシウムによって吸水ポリマーから脱水させることができ、吸水材30から排水可能となり、処分が簡単となる。
【0022】
ここで実施例2として、上シート10を水を透過させ吸水材30は透過させない材質で、下シート20を水も吸水材30も透過させない材質を用いることで、上シート10全面からすべての吸水材保持部14に水を注入することが可能かつ、屋根を浸水させない構造を持つ。この場合では、上シート10と下シート20の上縁部12、下縁部16の四方を縫合、もしくは圧着溶融することで、水を注入するための水注入口40がない構造となる。第2実施例において、シート1に水を注入し続けない限りは天日干しで水を蒸発させてシート1を軽くして処分を容易にする。
【0023】
図3は、本発明の第3実施例に係る屋根補修シート1の構成を示す概観図である。実施例1との違いは吸水材保持接合部15に面ファスナーを用いている点である。これは先述の、吸水材保持部14を升目にするため、隣り合う複数の吸水材保持部14での水の透過性を保つことが目的である。また実施例1において、すべての吸水材30に水を注入するため、シート1の上縁部の1辺を注水部13としていたが、実施例3では吸水材保持接合部15が水を透過する性質を有するために上縁部12に注水部13を一つだけ設ければ注水可能であるため、簡便に注水作業を行うことができる。
図4は
図3における切断面B-Bに沿った断面図であり、吸水材保持部14が吸水材保持接合部15の面ファスナーによって仕切られていることを示している。
【0024】
図5は第3実施例に関しての展開図であり、谷折り線C―Cでシート1を折りたたむと
図3の外観図の形状となる。
図5に示すように、シート1の上、下縁部をファスナー等を用いて上シート10と下シート20を開放構造にすれば、例えば天日下で吸水材30を容易に乾燥させることができ、シートの廃棄が簡単になる。
【0025】
図6は、本発明の第4実施例に係る屋根補修シート1の構成を示す概観図である。実施例4は上シート10と下シート20の上下縁部以外の端部は実施例1と同様に縫合、もしくは圧着溶融され、その間のシート内部空間11に1枚のシート状の吸水材30を挟んだ構造を持つ。屋根の傾斜によってシート内部空間11でシート状の吸水材30が重力によって偏ってしまうのを防ぐために上シート10または下シート20、もしくはその両方にシート状の吸水材30を縫合、圧着溶融等によって固定した構造をとる。実施例4において吸水材30はスポンジ等を用いると、単純に絞ることで脱水が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上述べたように、本発明に係る屋根補修シートにおいては、上シート10と下シート20を縫合することによってシート内部空間11に袋状の吸水材保持部14を設けたため、シート1に封入する吸水材を全体に分散させることができ、屋根の形状を問わずシートを使用することが可能となっている。また本願発明に係る屋根補修シートでは、吸水材30に吸水ポリマーを使用した場合、塩化カルシウムによって脱水することができ、廃液として簡易に処理することが可能となる。また、吸水材30にスポンジを使用すれば水の出し入れが容易となることは明らかである。さらに、吸水材保持接合部15を面ファスナーで接合させ、シート内部空間11に吸水材保持部14を設けることも提案しており、屋根補修シートを使用後に片付ける際に、面ファスナーをはがして中に封入した吸水材を天日干しし、水を蒸発させることで使い勝手が向上するだけでなく、再利用可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 屋根補修シート
10 上シート
11 シート内部空間
12 上縁部
13 注水部
14 吸水材保持部
14a 側縁部
15 吸水材保持接合部
16 下縁部
17 排水部
20 下シート
30 吸水材
【要約】
【課題】屋根を補修するシートにおいて、シート全体に重りを封入することで土嚢や紐などを使用することなく、簡易かつ安全で風に飛ばされにくく、さまざまな形状の屋根に対応するように屋根に固定できる屋根補修シートを提供することを目的とする。
【解決手段】シートを固定する重りとなるシート内部の吸水材と、その吸水材を均一に分散させるための1つ又は複数の吸水材保持部で構成されたシートであり、吸水材に水を含ませることによりシートの重りとして機能させ、屋根とシートを密着させる様に設置することができ、風に対してより強い形状となり、これによって屋根にかかる重りの負荷を減らすことができ、シートがさまざまな形状の屋根に対応できる。
【選択図】
図1