(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-24
(45)【発行日】2022-06-01
(54)【発明の名称】冷却水系統設備、冷却水系統設備の制御装置
(51)【国際特許分類】
F28F 27/00 20060101AFI20220525BHJP
F28B 9/06 20060101ALI20220525BHJP
F28C 1/00 20060101ALI20220525BHJP
【FI】
F28F27/00 501A
F28F27/00 501B
F28B9/06
F28C1/00
(21)【出願番号】P 2022046392
(22)【出願日】2022-03-23
(62)【分割の表示】P 2021070851の分割
【原出願日】2020-02-07
【審査請求日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019025354
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391019658
【氏名又は名称】株式会社中部プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 真哉
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 嘉朋
(72)【発明者】
【氏名】小島 久幸
(72)【発明者】
【氏名】大西 紀行
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-25730(JP,A)
【文献】特開昭60-49786(JP,A)
【文献】特開2006-275323(JP,A)
【文献】特開昭58-122452(JP,A)
【文献】特開2017-3135(JP,A)
【文献】特開2011-144745(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103994548(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
F28B 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水系統設備の制御装置であって、
前記冷却水系統設備は、
冷却水を循環させる循環ポンプと、
熱を放散する冷却ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より供給する冷却塔と、を含み、
前記制御装置は、前記冷却ファンの回転数又は稼働台数を、前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数△Tqに基づいて、プログラム制御し、
前記循環ポンプの回転数を、所定の制御対象について制御目標値に対する偏差が小さくなるように、フィードバック制御し、
前記制御装置は、各乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTabの関係を示す1次近似式を用いて、乾球温度Taと相対湿度xの計測値から大気の湿球温度Tbを演算する、演算部を有し、
前記演算部は、
乾球温度Taの計測値からその乾球温度Taに対する前記1次近似式の1次項Pを演算する1次項演算部と、
乾球温度Taの計測値からその乾球温度Taに対する前記1次近似式の定数項Qを演算する定数項演算部と、
相対湿度xの計測値と、前記1次項演算部にて演算した1次項Pと、前記定数項演算部にて演算した定数項Qとから乾湿温度差ΔTabを演算する温度差演算部と、
乾球温度Taの計測値から、前記温度差演算部にて演算した乾湿温度差ΔTabを減算することにより、大気の湿球温度Tbを算出する差分器と、を含み、
前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数△Tqは、冷却塔入口冷却水温度Twと大気の湿球温度Tbの温度差Tw-Tbであり、
前記制御装置は、冷却塔入口冷却水温度Twから前記演算部の演算する大気の湿球温度Tbを減算することにより、前記温度差Tw-Tbを算出する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
前記制御装置は、前記温度差Tw-Tbが大きいほど、回転数を小さくする温度差-回転数相関線に基づいて、前記冷却ファンの回転数指令値を決定する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
前記制御装置は、前記温度差Tw-Tbが大きいほど、前記冷却ファンの稼働台数を少なくする、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項4】
冷却水系統設備の制御装置であって、
前記冷却水系統設備は、
冷却水を循環させる循環ポンプと、
熱を放散する冷却ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より供給する冷却塔と、を含み、
前記制御装置は、前記循環ポンプの回転数を、前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数△Tqに基づいて、プログラム制御し、
前記冷却ファンの回転数を、所定の制御対象について制御目標値に対する偏差が小さくなるように、フィードバック制御し、
前記制御装置は、各乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTabの関係を示す1次近似式を用いて、乾球温度Taと相対湿度xの計測値から大気の湿球温度Tbを演算する、演算部を有し、
前記演算部は、
乾球温度Taの計測値からその乾球温度Taに対する前記1次近似式の1次項Pを演算する1次項演算部と、
乾球温度Taの計測値からその乾球温度Taに対する前記1次近似式の定数項Qを演算する定数項演算部と、
相対湿度xの計測値と、前記1次項演算部にて演算した1次項Pと、前記定数項演算部にて演算した定数項Qとから乾湿温度差ΔTabを演算する温度差演算部と、
乾球温度Taの計測値から、前記温度差演算部にて演算した乾湿温度差ΔTabを減算することにより、大気の湿球温度Tbを算出する差分器と、を含み、
前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数△Tqは、冷却塔入口冷却水温度Twと大気の湿球温度Tbの温度差Tw-Tbであり、
前記制御装置は、冷却塔入口冷却水温度Twから前記演算部の演算する大気の湿球温度Tbを減算することにより、前記温度差Tw-Tbを算出する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の冷却水系統設備の制御装置であって、
前記制御装置は、前記温度差Tw-Tbが大きいほど、回転数を小さくする温度差-回転数相関線に基づいて、前記循環ポンプの回転数指令値を決定する、冷却水系統設備の制御装置。
【請求項6】
冷却水系統設備であって、
冷却水を循環させる循環ポンプと、
熱を放散する冷却ファンを有し、復路管を通って帰還する戻り冷却水を、大気と熱交換することにより冷却して、往路管より供給する冷却塔と、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の制御装置と、を備えた、冷却水系統設備。
【請求項7】
請求項6に記載の冷却水系統設備であって、汽力発電設備の蒸気タービンから復水器に排気される蒸気を冷却する、冷却水系統設備。
【請求項8】
請求項7に記載の冷却水系統設備であって、
所定の前記制御対象は、前記復水器の器内温度である、冷却水系統設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却水系統設備の動力を削減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止に向けたCO2削減や持続社会の実現に向けたエネルギー自給率の向上のためには、再生可能エネルギー、特に森林資源の豊富なわが国では木質バイオマス発電の拡大が期待されている。国内森林資源を有効に活用するためには、燃料となる森林資源の輸送コストを考慮すると、地産地消の小型木質バイオマス発電を内陸部に設置することが効果的である。内陸型の汽力発電設備では、蒸気タービンで仕事を終えた蒸気を復水器で水に戻すための冷却水系統設備の冷却方式として「冷却塔方式」が広く用いられている。
【0003】
蒸気タービンの発電効率を維持するには、復水器の真空度を維持することが必要である。下記特許文献1には、復水器真空度の制御に関し、次の記載がある。復水器に圧力発信器を設けて、復水器の真空度を検出する。そして、真空度が規定真空度となるように、復水器入口の水温を求め、それに見合うように、運転ファンの台数を選定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
冷却水系統設備に「冷却塔方式」を用いた場合、冷却塔の冷却能力は大気状態によって大きく変化する。
【0006】
冷却塔の冷却能力に応じて冷却水系統設備を運転することにより、冷却水系統設備の動力を削減することが課題となっていた。
【0007】
本発明は、冷却水系統設備の動力を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
火力およびバイオマスなどの汽力発電設備の蒸気タービンから復水器に排気される蒸気を冷却する冷却水系統設備の制御装置であって、前記冷却水系統設備は、前記復水器に排気される蒸気を冷却する冷却水を循環させる循環ポンプと、熱を放散する冷却ファンを有し、前記復水器で蒸気と熱交換した戻り冷却水を冷却する冷却塔と、を含み、前記制御装置は、第1制御部を有し、前記第1制御部は、前記復水器の器内温度が目標器内温度と一致するように、復水器入口冷却水の目標温度を設定し、復水器入口冷却水の温度が、設定した目標温度と一致するように、前記循環ポンプ及び前記冷却ファンの2つの補機のうち、いずれか一方の補機の回転数をフィードバック制御する。
【0009】
火力およびバイオマスなどの汽力発電設備の蒸気タービンから復水器に排気される蒸気を冷却する冷却水系統設備の制御装置であって、前記冷却水系統設備は、前記復水器に排気される蒸気を冷却する冷却水を循環させる循環ポンプと、熱を放散する冷却ファンを有し、前記復水器で蒸気と熱交換した戻り冷却水を冷却する冷却塔と、を含み、前記制御装置は、第1制御部を有し、前記第1制御部は、前記復水器の器内温度が目標器内温度と一致するように、前記循環ポンプ及び前記冷却ファンの2つの補機のうち、いずれか一方の補機の回転数をフィードバック制御する。
【0010】
復水器の器内は飽和蒸気であり、復水器の器内圧力(=復水器真空(絶対圧))と復水器の器内温度(=排気温度)は安定した運転状態では1対1となる。上記構成では、絶対圧真空計や大気圧計などの高価な計器を使用することなく、復水器の真空を所望の状態に制御することが出来る。
【0011】
制御装置の実施態様として、以下の構成でもよい。
前記第1制御部は、前記復水器の器内温度の目標器内温度に対する偏差に基づいて、復水器入口冷却水温度の目標温度を演算する第1演算部と、前記循環ポンプ及び前記冷却ファンの2つの補機のうち、フィードバック制御される一方の補機に対する回転数の制御指令値を、前記第1演算部にて演算した目標温度に対する復水器入口冷却水温度の偏差に基づいて演算する第2演算部と、を備えてもよい。この構成では、第1制御部を2つの演算部から構成することが出来る。
【0012】
制御装置の実施態様として、以下の構成でもよい。
前記制御装置は、前記第1制御部と第2制御部とを有し、前記第2制御部は、前記循環ポンプ及び前記冷却ファンの2つの補機のうち、他方の補機の回転数を、前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数に基づいてプログラム制御する。
【0013】
循環ポンプと冷却ファンの2つの補機を、同じ制御対象(復水器真空値)で同時にフィードバック制御すると、互いに干渉し、制御の外乱が懸念される。この構成では、一方の補機をフィードバック制御し、他方の補機をプログラム制御するので、2つの制御が干渉することを抑制できる。また、他方の補機は、冷却塔の冷却能力を示す冷却指数を用いたプログラム制御を行うことで、冷却塔の冷却能力に応じた運転が可能となり、冷却水系統設備の動力を削減することが出来る。
【0014】
制御装置の実施態様として、以下の構成でもよい。
前記第2制御部は、冷却塔入口冷却水温度と大気の湿球温度に基づいて、前記冷却塔の冷却能力を示す冷却指数を演算する第3演算部と、前記循環ポンプ及び前記冷却ファンの2つの補機のうちプログラム制御される他方の補機に対する回転数の制御指令値を、前記第3演算部より演算される冷却指数に基づいて演算する第4演算部を備える。この構成では、第2制御部を2つの演算部から構成することが出来る。
【0015】
制御装置の実施態様として、以下の構成でもよい。
前記冷却指数は冷却塔入口冷却水温度から大気の湿球温度を差し引いた値であり、前記第3演算部は、冷却塔入口冷却水温度から大気の湿球温度を減算する差分器でもよい。冷却塔の冷却能力は、温度を下げる対象である戻り冷却水と気化する先である大気の湿球温度の差にほぼ比例して高くなる。本構成により、簡単な演算で、冷却指数を算出することが出来る。
【0016】
制御装置の実施態様として、以下の構成でもよい。
冷却塔入口冷却水温度の設定温度を増減する設定部を有し、前記第3演算部は、前記設定部より出力される冷却塔入口冷却水温度から大気の湿球温度を減算してもよい。冷却塔入口冷却水温度の設定温度を増減することで、循環ポンプと冷却ファンの分担比率を調整することが出来る。
【0017】
制御装置の実施態様として、以下の構成でもよい。
前記第2制御部は、前記循環ポンプ及び前記冷却ファンの2つの補機のうち、他方の補機の回転数を、前記冷却塔の冷却能力を表す冷却指数に対応してそれぞれ定められ、2つの補機の合計動力を最小とする回転数にプログラム制御してもよい。この構成によれば、2つの補機の合計動力を最小にすることができる。
【0018】
制御装置の実施態様として、以下の構成でもよい。
前記復水器の目標器内温度を調整する調整部を備えてもよい。この構成によれば、前記復水器の目標器内温度を運転員が任意に変更することが出来る。これにより、例えば、タービン効率よりも経済性を優先した運転を行うことが可能となる。
【0019】
本技術は、冷却水系統設備の制御方法に適用することが出来る。また、冷却水系統設備に適用することが出来る。
【発明の効果】
【0020】
冷却水系統設備の動力を削減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1における冷却水系統設備のブロック図
【
図3】実施形態2における冷却水系統設備のブロック図
【
図7】乾球温度に対する相対湿度と乾湿温度差の関係を示すグラフ
【
図8】1次近似した場合の湿球温度に対する1次項と定数項の図表
【
図9】乾球温度と1次項の関係、乾球温度と定数項の関係を示すグラフ
【
図11】実施形態3における第1制御部、第2制御部のブロック図
【
図12】実施形態4における第1制御部、第2制御部のブロック図
【
図13】冷却指数と循環ポンプの回転数指令値の関係を示す図
【
図14】冷却指数と冷却ファン台数指令値の関係を示す図
【
図15】実施形態5における第1制御部のブロック図
【
図16】実施形態6における第1制御部のブロック図
【
図17】実施形態7において、冷却指数と、冷却指数と冷却ファン回転数の積との関係を示す図
【
図18】冷却指数と、冷却ファン回転数との関係を示す図
【
図19】実施形態8において、冷却指数と冷却ファンの回転数の積と、冷却指数との関係を示す図
【
図21】プログラムとして保持されたデータを示す図
【
図22】冷却指数と補機の合計動力との関係を示す図
【
図23】実施形態9における冷却水系統設備のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
1.冷却水系統設備の構成
図1は、汽力発電設備1の復水器20を冷却する冷却水系統設備30の構成を示すブロック図である。汽力発電設備1は、例えば、定格出力7000[kw]程度の小型バイオマス発電設備である。
【0023】
汽力発電設備1は、蒸気を発生するボイラ(図略)と、蒸気タービン10と、復水器20と、復水器20に冷却水を供給する冷却水系統設備30を含む。
【0024】
蒸気タービン10から復水器20の器内に排出された蒸気は、復水器20を流れる冷却水と熱交換して水に戻ることで、復水器20の器内は真空に維持される。復水器20の真空を維持することで、蒸気タービン10の回転が安定し、発電効率の維持が可能である。
【0025】
復水器20は器内温度計21と復水器真空計22を有している。器内温度計21は、復水器20の器内温度T1、つまり復水器内の排蒸気温度を計測する。復水器真空計22は、復水器20の真空度を計測する。復水器真空計22により計測される真空度は、ゲージ圧(大気圧を基準として計測した圧力)である。
【0026】
冷却水系統設備30は、冷却塔31と、往路管32と、復路管33と、開閉弁49と、2つの補機として冷却ファン41及び循環ポンプ45を含む。
【0027】
冷却水は、冷却塔31から往路管32を通って、復水器20に供給される。復水器20で蒸気と熱交換した戻り冷却水は、復水器20から復路管33を通って、冷却塔31に戻る。
【0028】
冷却塔31に戻った戻り冷却水は、気化しやすいように、冷却塔内にてシャワーリングされ、大気と熱交換して一部が蒸発する。水分蒸発に伴い発生する気化熱を外気に放出することで、戻り冷却水は冷却される。その際に、水分蒸発を促進するため、冷却塔31は、熱を放散する冷却ファン41を有している。
【0029】
冷却ファン41を駆動する駆動モータ42は、VVVF(可変電圧可変周波数制御装置)43により、回転数を制御することが出来る。駆動モータ42の回転数制御により、冷却ファン41の風量を任意に調整することが出来る。
【0030】
循環ポンプ45は往路管32に位置する。循環ポンプ45を駆動する駆動モータ46は、VVVF47により、回転数を制御することが出来る。駆動モータ46の回転数制御により、冷却水流量Fを任意に調整することが出来る。
【0031】
冷却塔31には、大気温度計51と相対湿度計52とが設けられている。大気温度計51は乾球温度計であり、大気の乾球温度Taを計測し、相対湿度計52は、相対湿度xを計測する。
【0032】
また、往路管32のうち復水器20の入口部分には、水温計53が設けられている。水温計53は、復水器入口冷却水温度T2を計測する。これら各計器の計測値は、以下に説明する制御装置100Aに入力される。
【0033】
2.復水器の真空度制御
冷却水系統設備30は制御装置100Aを備えている。制御装置100Aは、第1制御部110を有している。第1制御部110は、復水器20の器内温度T1が、目標真空値に対応する目標器内温度と一致するように、復水器入口冷却水の目標温度を設定する。例えば、タービン効率を最大とする真空値7kPa(絶対圧)に対応する器内温度39℃を目標器内温度とする。第1制御部110は、復水器20の器内温度T1が、目標器内温度39℃と一致するように、復水器入口冷却水の目標温度を設定する。そして、復水器入口冷却水温度T2が、設定した目標温度と一致するように、冷却ファン41をフィードバック制御する。つまり、駆動モータ42を介して、冷却ファン41の風量を制御する。この例では、循環ポンプ45による冷却水流量Fは一定とする。
【0034】
復水器20の器内は飽和蒸気であり、復水器器内圧力(=復水器真空(絶対圧))と復水器の器内温度T1(=排蒸気温度)は、安定した運転状態(定常運転時)では、1対1の関係である。そのため、上記フィードバック制御を行うことで、復水器20の真空度を目標値に維持することが出来る。
【0035】
図2は、第1制御部110のブロック図である。第1制御部110は、第1演算部120と、第2演算部130を有している。
【0036】
第1演算部120は、復水器20の器内温度T1の目標器内温度に対する偏差に基づいて、復水器入口冷却水温度T2の目標温度を演算する。
【0037】
第1演算部120は、例えば、シグナルジェネレータ121と、差分器122と、比例積分器123と、手動入力器124と、メモリ125と、切換器127とから構成することが出来る。
【0038】
シグナルジェネレータ121は、器内温度T1の目標値である目標器内温度を出力する。差分器122は、シグナルジェネレータ121より出力される目標器内温度と器内温度計21により計測された復水器20の器内温度T1から、器内温度T1の目標器内温度に対する偏差を算出する。比例積分器123は、差分器122の出力する偏差に基づいて、復水器入口冷却水温度T2の目標温度を生成する。具体的には、偏差に比例した修正値と偏差を積分した修正値とから、復水器入口冷却水温度T2の目標温度を生成する。
【0039】
手動入力器124、メモリ125、切換器127は、復水器入口冷却水温度T2の目標温度をオペレータが手動設定するために付加的に設けられている。メモリ125は、手動入力器124により入力された目標温度を記憶する。
【0040】
切換器127は、第2演算部130に対して、手動入力器124で入力した目標温度と比例積分器123で演算した目標温度のどちらを出力するのか、切り換えるために設けられている。尚、手動入力器124、メモリ125、切換器127は、無くてもよい。
【0041】
第2演算部130は、第1演算部120にて演算した目標温度に対する、復水器入口冷却水温度T2の偏差に基づいて、冷却ファン41に対するフィードバック制御信号、つまり回転数指令値(制御指令値)を演算する。
【0042】
第2演算部130は、例えば、差分器131と、比例積分器133とから構成することが出来る。差分器131は、第1演算部120にて演算した復水器入口冷却水温度T2の目標温度と水温計53により計測された復水器入口冷却水温度T2から、目標温度に対する復水器入口冷却水温度T2の偏差を算出する。比例積分器133は、差分器131の出力する偏差に基づいて、冷却ファン41に対するフィードバック制御信号を生成する。具体的には、偏差に比例した修正値と偏差を積分した修正値とからフィードバック制御信号、つまり回転数指令値(制御指令値)を生成する。生成した回転数指令値は、VVVF43に出力される。
【0043】
第2演算部130より出力されるフィードバック制御信号に基づいて、冷却ファン41の風量をVVVF43により調整することで、復水器20の器内温度T1を目標器内温度に一致させることが出来る。
【0044】
3.効果説明
本実施形態によれば、絶対圧真空計や大気圧計などの高価な計器を使用することなく、復水器20の真空度を制御することが出来る。
【0045】
<実施形態2>
1.制御装置100Bの説明
冷却ファン41と循環ポンプ45を、同じ制御対象(復水器入口冷却水温度)で同時制御すると、互いに干渉し制御の外乱が懸念される。
【0046】
実施形態2では、冷却ファン41と循環ポンプ45のうち、一方の補機をフィードバック制御し、他方の装置をプログラム制御する。
【0047】
以下、冷却水系統設備30の制御装置100Bについて、
図3、
図4を参照して説明する。
図3に示すように、制御装置100Bは、第1制御部110と、第2制御部150を有している。
【0048】
第1制御部110は、復水器20の器内温度T1が目標器内温度に一致するように、循環ポンプ45の回転数をフィードバック制御する。第1制御部110は、実施形態1と同様の構成であり、第1演算部120と、第2演算部130を有している。
【0049】
第1演算部120は、復水器20の器内温度T1の目標器内温度に対する偏差に基づいて、復水器入口冷却水温度T2の目標温度を演算する。第2演算部130は、第1演算部120にて演算した目標温度に対する、復水器入口冷却水温度T2の偏差に基づいて、循環ポンプ45のフィードバック制御信号、つまり回転数指令値(制御指令値)を演算する。
【0050】
第2演算部130より出力される回転数指令値に基づいて、循環ポンプ45の回転数を調整、つまり冷却水流量Fを調整することで、復水器20の器内温度T1を目標器内温度に一致させることが出来る。
【0051】
第2制御部150は、冷却塔31の冷却能力に基づいて、冷却ファン41をプログラム制御する。第2制御部150は、第3演算部160と、第4演算部170と、第5演算部180を含む。
【0052】
第5演算部180は、大気の乾球温度Taと相対湿度xから、大気の湿球温度Tbを演算する回路である。第5演算部180の詳細回路は、後に説明する。
【0053】
第3演算部160は、(1)式で示すように、冷却塔入口冷却水温度Tw(戻り冷却水の温度)から大気の湿球温度Tbを減算して、冷却指数ΔTqを算出する。第3演算部160は、例えば、差分器より構成することが出来る。
【0054】
ΔTq=Tw-Tb (1)
【0055】
尚、冷却塔入口冷却水温度Tw(戻り冷却水の温度)は、温度計による実測値が好ましいが、実測値に限らず、予測値としてもよい。理由は以下の通りである。
【0056】
汽力発電設備1が定格出力している状態では、蒸気タービン排気熱量は一定である。蒸気タービン排気熱量が一定の条件で、復水器20の器内温度(真空)を一定に制御するには、復水器20の熱交換量Qを一定に制御する必要がある。復水器20の熱交換量Qは、復水器出入口冷却水温度差ΔT32(出口冷却水温度T3と入口冷却水温度T2の差)と冷却水流量Fの積に比例する。
【0057】
復水器20の器内温度T1を一定に制御する場合、復水器出口冷却水温度T3は概ね一定となる。例えば、器内温度T1が39℃の時に、復水器出口冷却水温度T3は概ね36℃となる。
【0058】
以上のことから、蒸気タービン排気熱量が一定の条件において、復水器20の器内温度T1を一定に制御する場合、復水器出口冷却水温度T3は、器内温度T1から、2つの温度T1、T3の温度差ΔT13を引いた値になる。そのため、冷却塔入口冷却水温度Twは、計測値に代えて、器内温度T1から温度差ΔT13を引いた予測値を用いてもよい。尚、ΔT13=T1-T3、T3≒Twである。
【0059】
ところで、冷却塔31では、冷却塔入口冷却水(戻り冷却水)を気化させて気化熱を奪い、冷却水温度を下げている。温度を下げる対象である冷却塔入口冷却水(戻り冷却水)と、気化する先である大気の湿球温度Tbの差が大きいほど、気化しやすくなり、冷却塔31の冷却能力は向上する。
【0060】
そのため、(1)式で示したように、冷却塔入口冷却水温度Tw(戻り冷却水の温度)から湿球温度Tbを差し引いた値を冷却指数△Tqと定義して、冷却塔31の冷却能力を特定する。
【0061】
図5は、冷却水流量Fが一定で、復水器20の器内温度T1を一定に制御する時の冷却指数△Tqに対する冷却ファン41の回転数を示す。
【0062】
先に説明したように、汽力発電設備1が定格出力一定で運転しており、蒸気タービン排気熱量が一定の条件下で、復水器20の器内温度T1(真空)を一定に制御する場合、復水器出口冷却水温度T3は概ね一定となると共に、復水器出入口冷却水温度差△T32と冷却水流量Fの積△T32×Fは一定となる。したがって、復水器入口冷却水温度T2が低いほど、復水器出入口冷却水温度差△T32は高くなり、冷却水流量Fが少なくてもよい。
【0063】
冷却指数△Tqが大きいほど、冷却塔31の冷却能力は向上するため、復水器入口冷却水温度T2は低くでき、冷却水流量Fを少なくしても、復水器20の器内温度T1を一定に制御できる。
【0064】
逆に、冷却指数△Tqが小さくなると、冷却塔31の冷却能力は低下するため、復水器入口冷却水温度T2は高くなり、冷却水流量Fを増加させないと、復水器20の器内温度T1を一定に制御できない。
【0065】
図6に、冷却ファン41の回転数指令値と、冷却指数ΔTqとの関係を示す相関曲線Lvの例を示す。相関曲線Lvは、ミニマム回転から定格回転数(100%)までの冷却ファン41の回転数指令値を定めるものであり、冷却指数ΔTqが大きい程(冷却能力が高い程)、回転数指令値を小さくすることが出来る。
【0066】
本例では、冷却水の最大流量F1時において、冷却ファン41の回転数を最大とする冷却指数△Tq1時に、冷却ファン41の回転数指令値を100%に設定している。また、冷却水の最小流量F4時において、冷却ファン41の回転数を最小とする冷却指数△Tq2時に、冷却ファン41の回転数指令値を、ミニマム回転数に設定している。
【0067】
第4演算部170は、冷却指数ΔTqに対する冷却ファン41の回転数指令値Nを、相関曲線Lvから算出するプログラムを保持している。つまり、
図6に示すように、冷却指数ΔTqが「A」である時、回転数指令値Naを算出するプログラムをメモリ等によって保持している。第4演算部170は、第3演算部160により算出した冷却指数ΔTqから、保持するプログラムに従って、冷却ファン41の回転数指令値Nを算出する(プログラム制御)。
【0068】
第4演算部170より出力される回転数指令値Nに基づいて、冷却ファン41の回転数を調整することで、冷却塔31の冷却能力に応じて、冷却ファン41を制御することが出来る。つまり、冷却能力が高い場合、冷却ファン41の回転数を落とすことで、冷却水系統設備30の動力を削減することが出来る。
【0069】
2.湿球温度Tbの演算原理
図7は、乾球温度Taに対する相対湿度xと乾湿温度差ΔTabの関係を示すグラフであり、横軸は相対湿度x[%]、縦軸は乾湿温度差ΔTab[℃]である。乾湿温度差ΔTabは、乾球温度Taから湿球温度Tbを引いた値である。
【0070】
ΔTab=Ta-Tb・・・・(2)式
【0071】
図7に示すL1~L7は、各乾球温度5℃~35℃について、相対湿度xと乾湿温度差ΔTabの関係を示す近似直線である。各近似直線L1~L7は、以下の1次近似式で表すことができる。
【0072】
ΔTab=Px+Q・・・(3)式
Pは近似直線Lの1次項(直線の傾き)、Qは近似直線の定数項、xは相対湿度である。
【0073】
(2)式と(3)式より、湿球温度Tbは、以下の(4)式で算出することができる。
Tb=Ta-ΔTab=Ta-(Px+Q)・・・・・(4)式
【0074】
図8は、各乾球温度Taについて、1次近似式ΔTabの1次項Pと定数項Qをまとめた図表である。1次項Pは負の値であり、大きさ(絶対値)は乾球温度が高い程、大きい。また、定数項Qは正の値であり、大きさ(絶対値)は乾球温度が高い程、小さい。
【0075】
図9は、乾球温度Taと1次項Pの関係、乾球温度Taと定数項Qの関係を示すグラフであり、横軸は乾球温度Ta[℃]、右縦軸は1次項P[℃/%]、左縦軸は定数項Q[℃]である。
【0076】
図9に示すLpは乾球温度Taと1次項Pの関係を示す近似直線であり、Lqは乾球温度Taと定数項Qの関係を示す近似直線である。(5)式は、1次近似直線Lpを数式で示したものであり、(6)式は、1次近似直線Lqを式で示したものである。
【0077】
P=-0.0034Ta-0.05・・・・(5)
Q=0.3398Ta+4.9253・・・(6)
Pは1次項、Qは定数項、Taは乾球温度を示す。
【0078】
図9に示す近似直線Lpを用いて、(3)式の1次項Pを求めることが出来る。また、
図9に示す近似直線Lqを用いて、(3)式の定数項Qを求めることが出来る。
【0079】
以下、(4)式を用いた湿球温度Tbの計算例を示す。
乾球温度Taが25℃、相対湿度xが54%の場合、(5)式と(6)式から、乾球温度Taに対応する1次項Pと定数項Qを求めることが出来る。
【0080】
P=-0.0034×25-0.05=-0.135
Q=0.3398×25+4.9253=13.4203
【0081】
そして、求めた1次項P、定数項Q、乾球温度Ta、相対湿度xを(4)式に代入することにより、湿球温度Tbを算出することが出来る。
Tb=25-(-0.135×54+13.4203)=18.8697℃
【0082】
図10は、湿球温度Tbを演算する第5演算部180のブロック図である。第5演算部180は、1次項演算部181と、定数項演算部183と、温度差演算部185と、差分器187とから構成されている。
【0083】
1次項演算部181は、大気温度計51による大気の乾球温度Taの計測値から1次項Pを演算する。1次項演算部181は、例えば、比例器181aと、差分器181bと、シグナルジェネレータ181cとから構成することが出来る。比例器181aは、乾球温度Taに比例した出力をする。比例定数は、(5)の近似式の比例定数、つまり、-0.0034である。シグナルジェネレータ181cは定数を出力する。定数は、(5)の近似式の定数、つまり、0.05である。差分器181bは比例器181aの出力からシグナルジェネレータ181cの出力を減算し、その結果を1次項Pとして出力する。
【0084】
定数項演算部183は、大気温度計51による大気の乾球温度Taの計測値から定数項Qを演算する。定数項演算部183は、例えば、比例器183aと、加算器183bと、シグナルジェネレータ183cとから構成することが出来る。比例器183aは、乾球温度Taに比例した出力をする。比例定数は、(6)の近似式の比例定数、つまり、0.3398である。シグナルジェネレータ183cは定数を出力する。定数は、(6)の近似式の定数、つまり、4.9253である。加算器183bは比例器183aの出力にシグナルジェネレータ183cの出力を加算し、その結果を定数項Qとして出力する。
【0085】
温度差演算部185は、相対湿度計52による相対湿度xの計測値と、1次項演算部181にて演算した1次項Pと、定数項演算部183にて演算した定数項Qとから乾湿温度差ΔTabを演算する。温度差演算部185は、例えば、乗算器185aと、加算器185bと、から構成することが出来る。乗算器185aは、相対湿度xに1次項演算部181にて演算した1次項Pを乗算して出力する。加算器185bは、乗算器185aの出力に定数項演算部183にて演算した定数項Qを加算して乾湿温度差ΔTabを算出する。
【0086】
差分器187は、大気温度計51による大気の乾球温度Taの計測値から、温度差演算部185にて演算した乾湿温度差ΔTabを減算して、大気の湿球温度Tbを算出する。
【0087】
3.効果説明
この構成では、冷却ファン41をプログラム制御し、循環ポンプ45をフィードバック制御するので、2つの制御が干渉することを抑制できる。また、冷却ファン41は、冷却指数△Tqを用いたプログラム制御を行うことで、冷却塔31の冷却能力に応じた運転が可能となり、冷却水系統設備30の動力を削減することが出来る。
【0088】
<実施形態3>
実施形態3は、実施形態2に対して、冷却水系統設備30を制御する制御装置100Cの構成が一部相違している。
図11は、制御装置100Cのブロック図である。制御装置100Cは、第1制御部110と第2制御部150と、冷却塔入口冷却水(戻り冷却水)の設定温度を調整する設定部200を備える。
【0089】
第1制御部110は、実施形態2と同様に、第1演算部120と、第2演算部130を有している。第1制御部110は、復水器20の器内温度T1が目標器内温度と一致するように、循環ポンプ45をフィードバック制御する。
【0090】
第2制御部150は、実施形態2と同様に、第3演算部160と、第4演算部170と、第5演算部180と、を含む。
【0091】
第5演算部180は、乾球温度Taと相対湿度xから、湿球温度Tbを演算する回路である。第3演算部160は、設定部200により設定された冷却塔入口冷却水の設定温度から湿球温度Tbを減算して、冷却指数ΔTqを算出する。
【0092】
第4演算部170は、第3演算部160により算出した冷却指数ΔTqに基づいて、
図5の相関曲線Lvの関数から冷却ファン41の回転数指令値を算出する(プログラム制御)。
【0093】
設定部200は、手動入力器201、メモリ203とからなる。手動入力器201は、冷却塔入口冷却水の設定温度を、初期値(器内温度T1から温度差ΔT13を引いた予測値)から調整することが出来る。メモリ203は、調整後の設定温度を記憶する。
【0094】
冷却塔入口冷却水の設定温度を初期値から増減することで、冷却ファン41と循環ポンプ45の出力分担を調整することが出来る。
【0095】
つまり、冷却ファン41をプログラム制御し、循環ポンプ45をフィードバック制御する場合、冷却塔入口冷却水(戻り冷却水)の設定温度を、初期値から上げることで、冷却指数△Tqは大きくなる。冷却指数△Tqの増加により、冷却ファン41の動力は減少し、循環ポンプ45の動力が増加する。
【0096】
一方、冷却塔入口冷却水の設定温度を、初期値から下げることで、冷却指数△Tqは小さくなる。冷却指数△Tqの減少により、冷却ファン41の動力は増加し、循環ポンプ45の動力が減少する。
【0097】
このように冷却塔入口冷却水の設定温度を、初期値から調整することで、冷却ファン41と循環ポンプ45の出力分担を調整することが出来る。
【0098】
そのため、冷却水系統設備30の動力(冷却ファン41と循環ポンプ45の合計動力)が最小となるように出力分担を決めることで、冷却水系統設備30の動力が最小となるように設備を運転することが出来る。
【0099】
<実施形態4>
上記実施形態2では、第1制御部110にて、復水器20の器内温度T1が目標器内温度に一致するように循環ポンプ45をフィードバック制御し、第2制御部150にて、冷却塔31の冷却指数ΔTqに基づいて、冷却ファン41をプログラム制御した。
図12に示すように、制御対象を入れ替えて、第1制御部110にて、復水器20の器内温度T1が目標器内温度に一致するように冷却ファン41をフィードバック制御し、第2制御部150にて、冷却塔31の冷却指数ΔTqに基づいて、循環ポンプ45をプログラム制御してもよい。
図13は、循環ポンプ45をプログラム制御する場合の、冷却指数ΔTqと循環ポンプの回数数の関係を示す。
【0100】
また、上記実施形態2では、第2制御部150にて、冷却塔31の冷却指数ΔTqに基づいて、冷却ファン41をプログラム制御した。具体的には、冷却ファン41の回転数をプログラム制御した。回転数に代えて、冷却ファン41の台数をプログラム制御してもよい。この場合、
図14に示すように、冷却指数ΔTqが高い程、冷却ファン41の稼働台数を少なくするようにプログラム制御するとよい。
【0101】
要するところ、実施形態2-4では、汽力発電設備1の蒸気タービン10から復水器20に排気される蒸気を冷却する冷却水系統設備30に関し、制御装置100B、100Cの第1制御部110にて、循環ポンプ45及び冷却ファン41の2つの補機のうち、一方の補機の回転数を、復水器真空値や冷却塔出口冷却水温度など所定の制御目標値に対する偏差を小さくするようにフィードバック制御し、第2制御部150にて、他方の補機の回転数を、冷却塔31の冷却能力を表す冷却指数△Tqに基づいて、プログラム制御する技術を開示する。フィードバック制御は、制御目標値に対する偏差を小さくするように補機を制御するものであれば、カスケードタイプ(実施形態1)でもいいし、シングルタイプ(実施形態6)でもよい。
【0102】
この技術によれば、2つの補機41、45のうち一方の補機をフィードバック制御し、他方の補機をプログラム制御するので、2つの制御が干渉することを抑制できる。また、他方の補機は、冷却指数△Tqを用いたプログラム制御を行うことで、冷却塔31の冷却能力に応じた運転が可能となり、冷却水系統設備30の動力を削減することが出来る。
【0103】
<実施形態5>
実施形態5は、実施形態1に対して、第1制御部110の構成が一部相違している。以下、実施形態5の第1制御部を110Aとして、実施形態1との相違点を説明する。
【0104】
図15は、第1制御部110Aのブロック図である。第1制御部110Aは、第1演算部120Aと、第2演算部130を有している。
【0105】
第1演算部120Aは、復水器20の器内温度T1の目標器内温度に対する偏差に基づいて、復水器入口冷却水温度T2の目標温度を演算する。
【0106】
第1演算部120Aは、例えば、調整部141と、差分器122と、比例積分器123と、手動入力器124と、メモリ125と、切換器127とから構成することが出来る。
【0107】
第2演算部130は、第1演算部120にて演算した目標温度に対する、復水器入口冷却水温度T2の偏差に基づいて、冷却ファン41に対するフィードバック制御信号、つまり回転数指令値(制御指令値)を演算する。生成した回転数指令値は、VVVF43に出力される。
【0108】
第2演算部130は、実施形態1と同一の構成であり、例えば、差分器131と、比例積分器133とから構成することが出来る。
【0109】
第1演算部120Aにて、復水器20の器内温度T1が目標器内温度と一致するように、復水器入口冷却水の目標温度を設定し、第2演算部130にて、復水器入口冷却水温度T2が、設定した目標温度と一致するように、冷却ファン41の回転数(風量)をフィードバック制御することで、復水器20の器内温度T1を目標器内温度に制御することが出来る。
【0110】
第1演算部120Aは、実施形態1の第1演算部120と対比して、シグナルジェネレータ121に代えて、調整部141を有している点で、相違がある。
【0111】
調整部141は、器内温度T1の目標値である目標器内温度を調整するために設けられている。具体的には、調整部141は、手動入力器143と、メモリ145と、を備えており、手動入力器143を操作することで、運転員が、器内温度T1の目標値を調整(変更)することが出来る。メモリ145は、目標値の記憶用である。
【0112】
器内温度T1の目標値を固定値とせず、変更できるようにすることで、例えば、以下の運転が可能である。売電電力と燃料使用量の増減に伴う価格を考慮し、全体の経済性が最も良くなるように、復水器20の器内温度T1の目標値を設定し、その目標値に従って、冷却水系統設備30の補機(この例では、冷却ファン41)を制御することが出来る。
【0113】
器内温度T1の目標値を固定値(最適値)から変更することで、復水器真空値は悪化し、タービン効率は低下する場合がある。しかし、冷却水系統設備30の補機(この例では、冷却ファン)の動力は減少する。また、売電単価が安価な場合、器内温度T1の目標値をタービン効率が最大となる固定値として、燃料使用量を削減することが最も経済性がよい。一方、木質バイオマス発電のように、FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)で売電をする場合、売電単価が高価となるため、器内温度T1の目標値を固定値から変更して復水器真空値を悪化させる方が全体の経済性が向上する場合がある。
【0114】
また、大気の状態は、季節のみでなく、1日の中でも大きく変化する。冷却水系統設備30の補機41、45の制御範囲(回転数範囲)には上下限があり、夏季や昼間の高気温帯は上限となり、逆に、冬季や夜間の低気温帯では下限となる。
【0115】
昼間に上限となり、夜間に上限から外れて復水器真空値を一定にする制御が可能となる時期は、復水器真空目標値を低く(高真空度)設定すると、昼間と夜間の復水器真空値の変化幅が大きくなる。
【0116】
逆に、夜間に下限となり、昼間に下限から外れて復水器真空値の一定にする制御が可能となる時期は、復水器真空目標値を高く(低真空度)設定すると、昼間と夜間の復水器真空値の変化幅が大きくなる。
【0117】
復水器20の目標器内温度の調整機能を利用して、高気温時期は復水器真空目標値を高く設定(目標器内温度:高い)し、低気温時期は復水器真空目標値を低く設定(目標器内温度:低い)することで、1日の中の復水器真空変化幅を小さくし、蒸気タービン10の運転状態が安定することで、タービン効率の向上に繋がる。
【0118】
尚、この実施形態では、第1制御部110Aの制御対象を冷却ファン41としているが、制御対象は、循環ポンプ45でもよい。
【0119】
<実施形態6>
実施形態1、5では、復水器20の器内温度T1が目標器内温度と一致するように、復水器入口冷却水の目標温度を設定し、復水器入口冷却水の温度が、設定した目標温度と一致するように、冷却ファン41をフィードバック制御するカスケード制御を行った。
【0120】
実施形態6では、復水器20の器内温度T1が目標器内温度と一致するように、冷却ファン41をフィードバック制御する。つまり、温度の偏差に基づいて、冷却ファン41の回転数を直接制御する。
【0121】
以下、実施形態6の第1制御部を110Bとして、実施形態1との相違点を説明する。
図16に示すように、第1制御部110Bは、例えば、調整部141と、差分器122と、比例積分器123と、から構成することが出来る。
【0122】
調整部141は、復水器20の器内温度T1の目標値である目標器内温度を調整するために設けられている。具体的には、調整部141は、手動入力器143と、メモリ145と、を備えており、手動入力器143を操作することで、器内温度T1の目標値を調整(変更)することが出来る。メモリ145は、目標値の記憶用である。
【0123】
差分器122は、調整部141より出力される目標器内温度と器内温度計21により計測された復水器20の器内温度T1から、器内温度T1の目標器内温度に対する偏差を算出する。比例積分器123は、差分器122の出力する偏差に基づいて、冷却ファン41に対するフィードバック制御信号、つまり回転数指令値(制御指令値)を演算する。
【0124】
差分器122より出力されるフィードバック制御信号に基づいて、冷却ファン41の回転数(風量)を調整することで、復水器20の器内温度T1を目標器内温度に一致させることが出来る。この構成では、実施形態1と比較して、第1制御部110Bの構成を簡素化することが出来る。
【0125】
尚、この実施形態では、第1制御部110Bの制御対象を冷却ファン41としているが、制御対象は、循環ポンプ45でもよい。また、調整部141に代えて、シグナルジェネレータ121を設けてもよい。
【0126】
<実施形態7>
実施形態7では、循環ポンプ45をフィードバック制御し、冷却ファン41をプログラム制御する場合を例にとって、冷却ファン41の回転数指令値の算出方法を説明する。以下の説明において、冷却ファン41の回転数を「Frpm」、循環ポンプ45の回転数を「Prpm」として、2つの回転数を区別するものとする。
【0127】
フィードバック制御により復水器20の真空が目標値に制御され、冷却水流量が所定値に安定(循環ポンプ45の回転数Prpmが一定)している場合について、冷却指数△Tqと冷却ファン41の回転数Frpmの関係をまず求める。
【0128】
図17は、冷却水流量が所定値に安定している場合において、△Tq×Frpmの運転実績値の変化を示すグラフであり、横軸を△Tq、縦軸を△Tq×Frpmとしている。
図17から明らかな通り、冷却水流量が所定値に安定している場合、△TqとFrpmの積は、△Tqによらず、おおむね一定である。式にすると、以下の通りである。
【0129】
△Tq×Frpm=一定・・・・(7)
【0130】
(7)式は、冷却指数△Tqが、冷却塔31の冷却能力を想定する指標として適していることを示している。
【0131】
運転データまたは冷却塔仕様書により、△Tq×Frpmの値(定数)を求め、更に、(7)より、△Tqに対する冷却ファン41の回転数Frpmを求めることで、
図18の相関曲線Lwが得られる。相関計算値は、実測値とおおむね一致しており、(7)式から冷却ファン41の回転数指令値を算出する方法の妥当性が理解できる。
【0132】
本実施形態では、第2制御部150の第4演算部170に、冷却指数△Tqに対応する冷却ファン41の回転数指令値を、相関曲線Lwに基づいて算出するプログラムFXを保持しており、保持するプログラムFXに従って、冷却ファン41の回転数指令値を算出する。
【0133】
尚、この実施形態では、循環ポンプ45をフィードバック制御し、冷却ファン41をプログラム制御したが、制御対象を入れ替えた場合でも、△TqとPrpmとの間には、(7)式と同等の関係が成り立つので、冷却ファン41をフィードバック制御し、循環ポンプ45をプログラム制御してもよい。
【0134】
<実施形態8>
実施形態8では、冷却ファン41をフィードバック制御し、循環ポンプ45をプログラム制御する場合を例にとって、2つの補機41、45の合計動力を最小とする循環ポンプ45の回転数指令値の算出方法を説明する。
【0135】
冷却水流量(循環ポンプ45の回転数)が可変であり、かつ、冷却ファン風量(冷却ファン41の回転数)が可変の場合について、冷却指数△Tqと、循環ポンプ45の回転数Prpmおよび冷却ファン41の回転数Frpmの関係を求める。
【0136】
前述したように、汽力発電設備1が定格出力している状態では、蒸気タービン排気熱量は一定である。蒸気タービン排気熱量が一定の条件で、復水器20の器内温度(真空)を一定に制御するには、復水器20の熱交換量Qを一定に制御する必要がある。
【0137】
復水器20の熱交換量Qは、復水器出入口冷却水温度差ΔT32(出口冷却水温度T3と入口冷却水温度T2の差)と冷却水流量Fの積に比例するため、ΔT32×F=一定である。また、冷却水流量Fと循環ポンプ45の回転数Prpmは比例するため、下記の(8)式となる。
【0138】
ΔT32×Prpm=一定・・・(8)
【0139】
図19は、蒸気タービン排気熱量が一定の条件で、復水器20の器内温度(真空)を一定に制御している場合において、復水器出入口冷却水温度差ΔT32に対する△Tq×Frpmの運転実績値を示すグラフであり、縦軸をΔT32、横軸を△Tq×Frpmとしている。
【0140】
図19に示すように、ΔT32と、△Tq×Frpmは、おおむね比例するため、次式となる。
【0141】
k1×(△Tq×Frpm)=ΔT32・・・・・・(9)
k1は比例定数である。
【0142】
(8)式、(9)式より、(10)式が得られる。
ΔT32×Prpm=k1×(△Tq×Frpm)×Prpm=一定
△Tq×Frpm×Prpm=一定=定数A・・・・(10)
【0143】
運転データまたは冷却塔仕様書から、冷却ファン41の回転数Frpm=100%、循環ポンプ45の回転数Prpm=100%における冷却塔入口冷却水温度(=復水器出口冷却水温度)、湿球温度を基準値として、(10)式に代入して、定数Aを算出する。
【0144】
定数Aは、基準値における冷却指数△Tqとなり、これを△Tq0とする。△Tq0を、(10)式に代入すると、以下の(11)式が得られる。なお、(11)式において、Prpm=100%とすれば、(7)式となる。
【0145】
△Tq×Frpm×Prpm=△Tq0・・・・(11)
【0146】
同一の冷却指数△Tq1において、循環ポンプ45の回転数Prpmを制御範囲内で変化させ、(11)式が成立する冷却ファン41の回転数Frpmをそれぞれ算出する。その際に冷却ファン41の回転数Frpmを制御範囲内とする。
【0147】
補機41、45の動力[W]は、回転数の3乗に比例するため、各回転数Prpm、Frpmから、循環ポンプ45と冷却ファン41の動力をそれぞれ算出することが出来、算出した2つの動力の和により、冷却水系統設備30の補機(冷却ファン41と循環ポンプ45)の合計動力を求めることが出来る。
【0148】
制御範囲内で値を変化させた時の循環ポンプ45の回転数Prpmごとに合計動力を求め、その値を比較することで、合計動力を最小とする循環ポンプ45の回転数Prpmを求めることが出来、その値を、冷却指数△Tq1に対する循環ポンプ45の回転数指令値とする(
図20参照)。
【0149】
各冷却指数△Tqについて、上記の方法により、循環ポンプ45の回転数指令値を定め、循環ポンプ45の回転数を制御するプログラムFXとして設定する。つまり、第2制御部150の第4演算部170は、
図21に示すように、各冷却指数△Tqについて、2つの補機41、45の合計動力を最小とする循環ポンプ45の回転数指令値を対応させたデータをプログラムFXとして保持している。そのため、
図21に示すデータから、各冷却指数△Tqについて、合計動力を最小とする循環ポンプ45の回転数指令値を求めることが出来る。本方法は、ある程度の誤差が想定されるが、プログラム制御にずれが発生しても、フィードバック制御側で補正が加わる。
【0150】
また、冷却塔仕様書データから、事前に設定したプログラムFXが実運転と異なる場合は、フィードバック制御を実施した状態で、プログラム制御する側の補機の回転数を手動で変化させ、合計動力が最小となる回転数に調整することで、最適なプログラムFXを設定することも出来る。
【0151】
図22は、循環ポンプ45の回転数Prpmを、上記のプログラムFXに従って、運転した場合の合計動力の計算値と実測値を示す。横軸は冷却指数、縦軸は合計動力である。
【0152】
冷却ファン41はフィードバック制御を行っているため、合計動力にばらつきが発生するが、平均値は一致しており、本方法によるプログラムFXの設定は妥当である。
【0153】
尚、この実施形態では、循環ポンプ45をプログラム制御し、冷却ファン41をフィードバック制御したが、制御対象を入れ替えた場合でも、(11)式の関係が成り立つので、循環ポンプ45をフィードバック制御し、冷却ファン11をプログラム制御してもよい。
【0154】
冷却ファン41を台数制御する場合は、△Tqに対して、(11)式で求めた回転数Frpm(ファン風量)に相当する台数とするように制御させ、循環ポンプ側をフィードバック制御とする。冷却ファン41を台数制御する場合の動力は、冷却ファン1台あたりの動力と運転台数の積により求めることが出来る。
【0155】
要するところ、この実施形態では、汽力発電設備1の蒸気タービン10から復水器20に排気される蒸気を冷却する冷却水系統設備30に関し、制御装置100B、100Cの第1制御部110にて、循環ポンプ45及び冷却ファン41の2つの補機のうち、一方の補機の回転数を、復水器真空値や冷却塔出口冷却水温度など所定の制御目標値に対する偏差を小さくするようにフィードバック制御し、第2制御部150にて、他方の補機の回転数を、冷却塔31の冷却能力を表す冷却指数△Tqに対応してそれぞれ定められ、2つの補機41、45の合計動力を最小とする回転数にプログラム制御する技術を開示する。フィードバック制御は、制御目標値に対する偏差を小さくするように補機を制御するものであれば、カスケードタイプ(実施形態1)でもいいし、シングルタイプ(実施形態6)でもよい。
【0156】
尚、他方の補機の回数数指令値は、以下のシミュレーションを事前に行うことで求めることが出来る。例えば、循環ポンプ45をプログラム制御する場合、蒸気タービン10の出力一定の条件において、循環ポンプ45の回転数Prpmを制御範囲内で変化させる。蒸気タービン10の出力一定の条件では、(11)式の関係性があることから、この関係性を利用して、制御範囲内で変化させた循環ポンプ45の各回転数Prpmについて、それぞれ冷却ファン41の回転数Frpmを求める。回転数Prpmと回転数Frpmより、循環ポンプ45と冷却ファン41の動力をそれぞれ求めることが出来るので、それらの和により、合計動力が得られる。そして、
図20に示すように、制御範囲内で変化させた循環ポンプ45の各回転数Prpmを変化させた時の合計動力を比較することで、循環ポンプ45と冷却ファン41の合計動力を最小とする循環ポンプ45の回転数が得られる。こうした演算を、冷却指数△Tqについてそれぞれ行うことで、各冷却指数△Tqについて、循環ポンプ45と冷却ファン41の合計動力を最小とする循環ポンプ45の回転数指令値を得ることが出来る。
【0157】
この技術によれば、冷却水系統設備30において、2つの補機41、45の合計動力を最小とする運転が可能となり、使用電力量による省エネルギーの実現と電気料金の削減となる。また、2つの補機41、45の合計動力の削減量を事前試算することで、投資判断が可能となると言ったメリットもある。
【0158】
<実施形態9>
定格出力7000[kw]程度の小型バイオマス発電設備の場合、冷却塔31からの熱放散量は、燃料の保有するエネルギーの約60%に相当し、本エネルギーの有効活用が求められる。熱源として使用するためには、温度を安定させる必要があるが、従来の復水器冷却水系統の運転方法では、復水器出口冷却水温度T3は大気状態によって一定とならず、他の設備の熱源として使用し難い、という課題があった。
【0159】
復水器真空値の一定制御を導入することにより、蒸気タービン排気温度が一定となり、それにより、復水器出口冷却水温度T3は一定温度であることから、他の設備への熱源としての利用が期待できる。
【0160】
図23は、冷却水系統設備30Aのシステム構成図である。冷却水系統設備30Aは、復水器20からの戻り冷却水を低温熱源として活用する。
【0161】
冷却水系統設備30Aは、復水器20と、冷却塔31と、往路管32と、復路管35と、熱交換器60と、を有している。図中の矢印は冷却水の循環経路を示している。往路管32は、冷却塔出口と復水器入口とを接続する。往路管32には、循環ポンプ45が設けられている。冷却水は、冷却塔31から往路管32を通って、復水器20に供給される。
【0162】
復路管35は、第1復路管35Aと、第2復路管35Bを有する。第1復路管35Aは、復水器出口と熱交換器入口を接続する。第2復路管35Bは、熱交換器出口と冷却塔入口を接続する。
【0163】
復水器20で蒸気と熱交換した戻り冷却水は、復水器20から第1復路管35Aを通って、熱交換器60に入る。戻り冷却水は、熱交換器60にて、温水設備65に供給される循環水と熱交換する。
【0164】
復水器20からの戻り冷却水の熱量を、熱交換器60にて熱回収して、循環水を温めることで、温水設備65に温水を供給することが出来る。
【0165】
そして、熱交換後の戻り冷却水は、熱交換器60から第2復路管35Bを通って冷却塔31に戻り、熱交換器60で熱回収できなかった熱は、冷却塔31にて、熱放散する。
【0166】
また、冷却水系統設備30Aは、バイパス管37を有している。バイパス管37は、第2復路管35Bと往路管32とを接続する。
【0167】
熱交換器60による熱回収が十分な場合、第2復路管35Bの弁36を閉じ、バイパス管37の弁38を開けることで、熱交換器60からの戻り冷却水を、冷却塔31をバイパスして、復水器20に供給することが出来る。弁36、弁38の切り換えは、熱交換器60からの戻り冷却水の温度を検出して、運転員が手動で行うことも出来るし、温度を閾値と比較して、切り換えを自動制御にすることも出来る。
【0168】
冷却水系統設備30Aによれば、復水器20の戻り冷却水の廃熱を有効利用することが出来る。しかも、復水器20からの戻り冷却水温度は、30℃後半~40℃の一定温度であることから、陸上養殖、植物工場、温水プールなどの30℃前後の温度が必要となる温水設備65への熱源としての利用が期待できる。
【0169】
また、熱交換器60にて熱回収するので、戻り冷却水は、熱放散した状態で、冷却塔31に戻る。そのため、冷却塔31の設備容量を小さくしたり、冷却ファン41の回転数を下げる又は停止することが可能であり、冷却水系統設備30Aの動力削減に効果的である。
【0170】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0171】
(1)上記実施形態1では、汽力発電設備1として、バイオマス発電設備を例示した。汽力発電設備1は、蒸気タービンを有し、冷却塔を用いて復水器を冷却する設備であれば、バイオマス発電設備以外の火力発電設備でもよい、また、火力発電設備以外の発電設備でもよい。
【0172】
(2)実施形態1では、復水器20の真空度を維持するため、冷却ファン41をフィードバック制御したが、冷却ファン41に代えて循環ポンプ45をフィードバック制御し、復水器20に供給する冷却水流量Fを調整してもよい。また、双方をフィードバック制御してもよい。
【0173】
(3)上記実施形態2では、第1制御部110にて、復水器20の器内温度T1が目標器内温度に一致するように循環ポンプ45をフィードバック制御し、第2制御部150にて、冷却塔31の冷却指数ΔTqに基づいて、冷却ファン41をプログラム制御した。
第1制御部110は、復水器20の器内圧力を絶対圧真空計で検出し、絶対圧真空計の検出する器内圧力が目標真空値と一致するように、循環ポンプ45をフィードバック制御してもよい。つまり、絶対圧真空計の検出する器内圧力が目標真空値と一致するように、復水器入口冷却水の目標温度を設定し、復水器入口冷却水の温度が、設定した目標温度と一致するように、循環ポンプ45をフィードバック制御してもよい。
【0174】
この場合、循環ポンプ45をフィードバック制御し、冷却ファン41をプログラム制御するので、2つの制御が干渉することを抑制できる。また、冷却ファン41は、冷却指数△Tqを用いたプログラム制御を行うことで、冷却塔31の冷却能力に応じた運転が可能となり、冷却水系統設備30の補機の動力を削減することが出来る。また、第1制御部110と第2制御部150の制御対象を入れ替えて、冷却ファン41をフィードバック制御し、循環ポンプ45をプログラム制御する場合も同様である。
【符号の説明】
【0175】
1 汽力発電設備
10 蒸気タービン
20 復水器
30 冷却水系統設備
31 冷却塔
32 往路管
33 復路管
41 冷却ファン
45 循環ポンプ
100 制御装置
110 第1制御部
150 第2制御部