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特許7079392誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置
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  • 特許-誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置 図1
  • 特許-誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置 図2
  • 特許-誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】誘い水サイフォン管によるルーフドレン補助装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20220526BHJP
   E04F 15/02 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
E04D13/04 A
E04D13/04 J
E04F15/02 R
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020150069
(22)【出願日】2020-09-07
(65)【公開番号】P2022044444
(43)【公開日】2022-03-17
【審査請求日】2020-09-08
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】716004604
【氏名又は名称】合同会社物理工学研究社
(72)【発明者】
【氏名】黒田和明
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110965627(CN,A)
【文献】特開2005-256406(JP,A)
【文献】特開平10-096310(JP,A)
【文献】特開2005-264652(JP,A)
【文献】特開昭62-215737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸屋根等のルーフドレンで完全に排出されずに残る滞留水を自動で排出するためのルーフドレン補助装置であって、雨水を貯める水圧塔と、逆止め弁と、サイフォン管と、を有し、前記逆止め弁は、水圧塔から滞留水側への雨水流出を防止して、水圧塔の水位をルーフドレンを超える高さまで上げるためのものであり、前記サイフォン管が、前記水圧塔に貯めた雨水を誘い水としてサイフォン動作を開始する、ルーフドレン補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建物の陸屋根やベランダ、バルコニー等に滞る雨水を自動的にサイフォンで排出する装置技術に関する分野
【背景技術】
【0002】
建物の陸屋根などに滞る雨水は毛細管現象により未防水の箇所を経由して天井への漏水や劣化した防水シートを通しての漏水を誘発する弊害をもたらすと同時に空中の塵埃を堆積させ、コケや草木の温床ともなるため、降雨中や雨上がり後の速やかな排水が望まれる。また、経年したバルコニー床の変形では雨水が排出されにくいことによる生活上の不便も起きることになり、雨上がり後の雨水の排出作業は欠かせないものである。このように滞った雨水を排出するためには、建築の立場からすれば、屋根の勾配を改修するとか、防水シートを張り替えるとかして雨水が滞りにくい状況に改善する方策がある。このような大掛かりな改修には費用がかさむため、水を吸い出して排水管へ吐き出す電動ポンプなどを設置する方法も考えられるが、雨水の全量はバケツ数杯にもならないことが多く、電気設備を設置して排水設備を設けるにはあまりに大袈裟すぎ、費用対効果が受容できるものではない。このため、従来陸屋根に溜まった雨水を自動で排出させる技術は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】滞る雨水を効率よく排出する施工技術に関する文献はあるが、後付けで自動で排出する装置や技術に関する文献は見当たらない。
【非特許文献】
【0004】
【文献】陸屋根に滞留する雨水排出のために申請人が創作したルーフドレン補助吸水キャップを出願中である(意願2020-014294)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物の陸屋根やバルコニーに滞る雨水を効率よく自動的に排出させる。ただし、屋根には風で飛んで来る枯葉や塵埃、鳥の糞などが堆積して水流を阻むことがあり、また、強い風を受けやすい高所で使用することを考慮する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
誘い水を利用するサイフォン管を用いて排出させる。ここで想定するサイフォン管の本体は10ミリ以下の太さのビニール管であり、その形状は図1に示す通り上部に集雨皿を載せた円筒でその下部に図3で部品図を示す逆止め弁を備えた吸水孔が設けられた水圧塔て、逆止め弁の主体は小球でその上部には小球の飛び出しを防ぐ小円板にビニール管接続用のパイプを付け、そのパイプに接続したビニール管を円筒中腹から外に出す構造になっている。このサイフォン管の起点となる水圧塔は、図2に示すように、陸屋根などの滞った雨水の深さが最も深いところに置かれ、ビニール管が出ている円筒中腹の高さは建物の排水管入口の高さ(図2の水準1)よりも高い位置になるように設計されており、引き出されたビニール管は陸屋根の排水用縦管(陸屋根の4隅などにある)の中に陸屋根の最下部より下まで差し込まれる。集雨皿からの雨水により円筒内の水位が陸屋根の水面より上がって内圧が高まると円筒内から外部へ流出する水流で小球が吸水孔に密着して水流を止め、円筒内の水位が上昇して行く。その水位が図2の水準1を上回り、サイフォン管の水流を止める事態(サイフォン管のつまりや毛細管現象による抵抗など)がなければ、この水流が誘い水となってサイフォンの原理で円筒内の水が自動的に排出される。円筒内の水位が陸屋根の水面より下がれば、逆止め弁の小球が密着しなくなり、吸水孔が開かれ周囲の雨水が円筒内に流入し、サイフォン作用で吸い出されて排出され続ける。これは周囲の水位が吸水のための小孔の位置あるいは逆止め弁の小球の飛び出しを防ぐ小円板下に来るまで継続される。
【発明の効果】
【0007】
降雨があると、陸屋根の雨水のレベルが陸屋根排水のための格子入口高さ(図2水準1)を超えて排水用縦管に流れ込む。しかし、格子の入口高さは特別に排水管位置が設計された構造でない陸屋根の場合、陸屋根より数センチメートル高くならざるを得ず、降雨後どうしても排出されない滞留水が生じてしまうが、本申請のサイフォン管を設置すれば、陸屋根の滞留する水位を水圧塔吸水孔の低さ近くまで下げることができる。集雨皿に溜まる水が少なく、誘い水が発生しなれば、本申請のサイフォン管は動作しないが、年間を通して見ると、その効果が頻繁に現れることは明らかであり、陸屋根に滞留する雨水の持続時間がより短くなることが期待でき、雨漏り発生の恐れが減少すると同時に、空気中の塵埃を集める作用のもとが主として滞留水であることを考えれば、陸屋根が泥で覆われる頻度も減少することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本申請の誘い水サイフォン管の本体である集雨皿付水圧塔である。図3に部品図を示す逆止め弁付き吸水孔1に円筒管2とフィルター5を設けた集雨皿4が付けられ、逆止め弁を備えた吸水孔の上側に接続されたビニール管が円筒上部中腹から外部に伸びている。この水圧塔は陸屋根に設置され、支持棒6で倒れないように支持される(図では省略のため支持棒は1本のみ描かれている)。
図2】陸屋根のへこみ3の滞留水の起こる場所に置かれた集雨皿付きの水圧塔1の上部中腹から伸びるサイフォン管2が格子4を経由して建物排水用縦管5の内部に陸屋根のへこみよりも深く挿入されている。水圧塔の支持棒は省略されている。
図3】逆止め弁付き吸水孔の部品図である。図1の円筒にぴったりはまる直径の本体部1には、下部円周部に複数(ここでは12個)の吸水孔4が設けられ、その一つ一つに内側の水圧が上がって外向きの水流が発生すると吸水孔を塞ぐ小球2が置かれており、その小球は接続用パイプ3に付けられた小円板で飛び出さないようになっている。接続用パイプ付き小円板はねじ5で本体部1と密着しないように固定される。サイフォン管で吸い出される水は、集雨皿で集められた雨水と吸水孔から流入する雨水である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
陸屋根等に滞る雨水の排出を促進するために図2に示すように陸屋根表面に設置する。上部にある集雨皿のため重心が上にあり、倒壊を防ぐために支持棒による固定は必須である。新築の建物屋上にははじめは塵埃の堆積による汚泥は存在せず、雨水が長期間滞留することがなければ堆積汚泥は発生しないと考えられる。このため、本申請の誘い水サイフォン管の吸水孔には特段のごみ除けフィルターは装着していないが、空気中を舞う塵埃が入り込み逆止め弁の機能を失わせる可能性は皆無ではないため、定期的な点検整備が必要となる。この点検以外には特段の手当ては必要としない。なお、吸水孔の高さを底辺に近ずければ近ずけるほど滞留水はより完全に排水されるが、陸屋根に堆積する可能性のある塵埃がより侵入しやすくなるため、最適値を探す余地は残っている。また、逆止め弁としてここでは小球を提案しているが、小球の材質は比重が1に近いものが水圧に対して余計な力を及ぼさないので適している。また、小球でなくフラップ状の弁を採用しても良い。水圧塔の円筒中腹上部から取り出すサイフォン管の位置は、水圧塔から建物排水用縦管に至るまでのサイフォン管を充てんできる水量が確保できるようにし、格子の下部高さを超える位置にする必要がある。サイフォン管として細いビニール管を使用する場合には、毛細管現象による抵抗力がサイフォン効果を減殺することがあるので注意が必要である。サイフォン管として太い管を用いる場合、負圧による座屈が起きないように配慮する必要がある。
【実施例
【0010】
実施の形態で記述した問題を一つずつクリヤーできるようにすれば直ちに実施例を得られるのでここでは詳述は避ける。
【産業上の利用可能性】
【0011】
この発明の基本は誘い水を自動で導入するサイフォン管であり、この基本に則れば数多くの応用が可能となるが、ここでは陸屋根やバルコニーの滞留水を取り除く目的への応用だけに限定する。
【符号の説明】
【0012】
図 1
1 逆止め弁付き吸水孔
2 円筒
3 サイフォン管
4 集雨皿
5 フィルター
6 支持棒
7 陸屋根等の接地面

図 2
1 集雨皿付水圧塔
2 サイフォン管
3 陸屋根のへこみ
4 格子
5 排水用縦管
6 建物外壁
7 水準1
8 水準2

図 3
1 逆止め弁付き吸水孔本体
2 小球
3 ビニール管接続用パイプ
4 吸水孔
5 接続用パイプ止めねじ
図1
図2
図3