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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】接触角測定方法及び接触角測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 13/04 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
G01N13/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018028908
(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公開番号】P2019144130
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(1)平成27年、28年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 マッチングプランナープログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 (2)平成29年度 国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業ニーズ対応タイプ 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(73)【特許権者】
【識別番号】593011036
【氏名又は名称】海和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173495
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 高正
(72)【発明者】
【氏名】森 隆昌
(72)【発明者】
【氏名】椿 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 克彦
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-207303(JP,A)
【文献】特表2004-503741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通液自在な端部を有するセルに粉体を充填するステップと、
前記粉体を充填した前記セルの通液自在な端部と反対側の端部を密閉するステップと、
前記セルの通液自在な端部に液体を接触させるステップと、
前記セル内に充填された粉体層に、前記液体を鉛直浸透させることにより発生するセル内圧力を測定するステップと、
当該セル内圧力から前記液体と前記粉体表面がなす接触角を算出するステップと、
を備える接触角測定方法。
【請求項2】
前記接触角を下記式(7)により算出する請求項1に記載の接触角測定方法。
【数1】
[但し、式(7)中、θ:接触角(°)、r:毛細管半径(m)、γ:表面張力(N・m-1)、ρ:液密度(kg・m-3)、μ:液粘度(Pa・s)、β:屈曲率(-)、P:大気圧(Pa)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、p:セル内圧(Pa)、t:時間(s)、H:リザーバー液深さ(m)]
【請求項3】
更に、複数の粉体層充填率における、それぞれのセル内圧平衡値を測定するステップと、
測定された前記セル内圧平衡値から、粉体層充填率による補正係数を算出するステップと、
当該補正係数を用いて、前記液体と前記粉体表面がなす接触角を算出するステップと、を備える請求項2に記載の接触角測定方法。
【請求項4】
前記粉体層充填率による補正係数nを下記式(8)により算出し、当該補正係数nを用いて、下記式(9)により前記接触角を算出する請求項3に記載の接触角測定方法。
【数2】
[但し、式(8)中、n:補正係数、p∞2:粉体層充填率φの場合のセル内圧平衡値(Pa)、P:大気圧(Pa)、ρ:液密度(kg・m-3)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、p∞1:粉体層充填率φの場合のセル内圧平衡値(Pa)、φ:粉体層充填率、φ:粉体層充填率]
【数3】
[但し、式(9)中、θ:接触角(°)、γ:表面張力(N・m-1)、S:粉体比表面積(m-1)、φ:粉体層充填率、n:補正係数、ρ:液密度(kg・m-3)、p:セル内圧平衡値(Pa)、P:大気圧(Pa)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、H:リザーバー液深さ(m)]
【請求項5】
前記粉体を前記セル内に充填する際、当該粉体に圧縮力を付与すると共に、剪断力を付与する請求項1~4のいずれか1項に記載の接触角測定方法。
【請求項6】
前記粉体がそれ以上圧縮されなくなるまで、当該粉体に圧縮力を付与すると共に、剪断力を付与する請求項5に記載の接触角測定方法。
【請求項7】
内部に粉体が充填される空間と、通液自在な端部とを有するセルと、
当該セル内の前記粉体に前記通液自在な端部から浸透させる液体を収納するリザーバーと、
前記セルの通液自在な端部に当該リザーバーを接近させる駆動手段と、を備え、
前記セルは、通液自在な端部と反対側の端部に圧力検知部を有し、
当該圧力検知部は、前記セル内の空間に充填された粉体に液体が鉛直浸透するのに伴って上昇する前記セル内の空間内圧力を検知し、
当該空間内圧力から接触角を算出する接触角算出部とをさらに備える接触角測定装置。
【請求項8】
前記セルの通液自在な端部側の内部に濾紙が設置されている請求項7記載の接触角測定装置。
【請求項9】
前記濾紙が液体に濡れやすい材質である請求項8記載の接触角測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接触角測定方法、接触角測定装置及び粉体充填装置に関するものである。更に詳しくは、粒子状物質である粉体と各種液体との濡れ性を評価するために、接触角を測定する接触角測定方法、接触角測定装置及び粉体充填装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体を各種液体に分散させてスラリーを調製する際、粉体の液体に対する濡れ性が悪いと、粉体が継子になって、粉体が均一に分散したスラリーを得ることができない。スラリー調製においては、このような粉体が継子となることを防止するために、濡れ性の良い液体を選択することが重要である。
【0003】
従来、粉体の液体に対する濡れ性を評価する手法として浸透速度法が採用されている。このような浸透速度法に使用される装置として、液体を貯留した容器の上方に、粉体を保持して重量測定装置に吊下げ支持した粉体保持具を配置し、容器を駆動装置によって上昇させて、容器の液体に粉体の下端を接触させ、粉体に液体が浸透するのに伴って粉体の重量が増加するのを重量測定装置で経時的に測定し、その測定データから浸透速度を演算するよう構成されたものが開示されている(特許文献1、特許文献2)。また、浸透速度法においては、筒状の試料保持具にタッピングで粉体を充填し、この試料保持具を鉛直に保持した状態でその下端を液体表面に浸漬させて一定時間経過すると、毛細管現象により、試料保持具内の粉体は、液体を吸い上げ質量が増加する。この際の測定時間と質量変化を計測し、横軸を時間、縦軸を質量とするグラフを得る。解析時には、グラフを図1に示すように、横軸を時間、縦軸を質量の2乗とするグラフへと変換し、接線の傾きを算出する。この接線の傾きは、下記浸透速度式の左辺に等しい、浸透速度係数(W /t)と称され、この値が大きいほど浸透速度が大きいとされる。
【0004】
/t=(Sερ・(rγcosθ/2η
【0005】
:液体の浸透質量、t:時間、S:粉体層断面積、ε:空間率、ρ:液体密度、r:粉体層内の粒子が形成する毛細管半径、γ:液体表面張力、η:液体粘度、θ:液体と固体表面が成す接触角
【0006】
また、算出した浸透速度係数(W /t)を用いて、上記浸透速度式から粉体の接触角を算出する(特許文献3)。
【0007】
更に、試料保持具に粉体を充填する際、押圧棒を試料保持具内に挿入し、粉体を押圧棒で押圧して圧縮後、液体を粉体に浸透させ、試料保持具の重量変化を測定し、浸透速度を算出する。得られた浸透速度を用いて、浸透速度式から、粉体の接触角を算出する(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第2672696号公報
【文献】特許第2721416号公報
【文献】特開2014-55827号公報
【文献】特開2011-122960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1、2、3、4に記載の技術は、液体を粉体に浸透させ、液体の浸透に伴う重量変化を測定するため、液体と粉体の使用量を多くする必要があり、少量サンプルでの測定が困難である。
【0010】
また、特許文献1、2、3、4に記載の技術は、試料保持具を鉛直に保持した状態でその下端を液体表面に浸漬させて一定時間経過すると、毛細管現象により、試料保持具内の粉体層が、液体を吸い上げる鉛直浸透に関するものである。そして、特許文献1、2、3、4に記載の技術は、鉛直浸透の測定データを用いて、水平浸透の場合にしか適用できない浸透速度式を用いている。ここで鉛直浸透と水平浸透について説明する。図2は、鉛直浸透を説明するための図である。図3は、水平浸透を説明するための図である。浸透推進力は静水圧ρgHと毛細管力πdγcosθであり、抵抗力は、自重ρghと流動抵抗8πμβhdh/dtなので、鉛直浸透の運動方程式は下記式(1)に示される。
【数1】
[但し、式(1)中、d:毛細管直径(m)、ρ:液密度(kg・m-3)、H:液深(m)、γ:液表面張力(N・m-1)、θ:前進接触角(°)、μ:液粘度(Pa・s)、β:屈曲率(-)、h:浸透距離(m)、t:時間(s)]
【0011】
また、水平浸透の運動方程式は下記式(2)に示される。
【数2】
[但し、式(2)中、d:毛細管直径(m)、ρ:液密度(kg・m-3)、H:液深(m)、γ:液表面張力(N・m-1)、θ:前進接触角(°)、μ:液粘度(Pa・s)、β:屈曲率(-)、h:浸透距離(m)、t:時間(s)]
【0012】
図2及び図3において、Hを0とすると、式(1)、式(2)は、それぞれ、下記式(3)、式(4)となる。
【数3】
[但し、式(3)中、d:毛細管直径(m)、γ:液表面張力(N・m-1)、θ:前進接触角(°)、ρ:液密度(kg・m-3)、h:浸透距離(m)、μ:液粘度(Pa・s)、β:屈曲率(-)、t:時間(s)]
【数4】
[但し、式(4)中、d:毛細管直径(m)、γ:液表面張力(N・m-1)、θ:前進接触角(°)、μ:液粘度(Pa・s)、β:屈曲率(-)、h:浸透距離(m)、t:時間(s)]
【0013】
式(3)、式(4)を解析的に解くと、鉛直浸透に対しては、下記式(5)が得られ、水平浸透に対しては、下記式(6)が得られる。
【数5】
[但し、式(5)中、t:時間(s)、μ:液粘度(Pa・s)、β:屈曲率(-)、d:毛細管直径(m)、ρ:液密度(kg・m-3)、h:浸透距離(m)、γ:液表面張力(N・m-1)、θ:前進接触角(°)]
【数6】
[但し、式(6)中、t:時間(s)、μ:液粘度(Pa・s)、d:毛細管直径(m)、γ:液表面張力(N・m-1)、θ:前進接触角(°)、β:屈曲率(-)、h:浸透距離(m)]
【0014】
特許文献1、2、3、4に記載の技術は、そもそも、水平浸透の場合にしか適用できない前記式(6)を用いて浸透速度を算出している。従って、接触角を算出するに際し、h>0の範囲では原理的な誤りが存在し、測定結果も直線関係を示さず、これらの技術によって得られたデータを接触角と認めることはできない。
【0015】
粉体を充填するために、セルに衝撃を与えつつ、粉体の充填を行うタッピングが行われている。しかし、タッピングによる粉体の充填は、充填状態の再現性に乏しく、充填状態にばらつきが生じやすく、このばらつきが原因となって、同一条件でも算出される浸透速度が異なってしまうという問題があった。更に、比重の軽い粉体の場合、充填時に浮遊したりしやすいため、タッピング回数を増加させても、ばらつきのない均一な充填状態とするのが困難であるという問題があった。
【0016】
従って、本発明の目的は、装置を小型化できるとともに、粉体の前進接触角と接触角(平衡値)を、少量のサンプルで迅速に測定することが可能な接触角測定方法、接触角測定装置及び粉体充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、鋭意検討の結果、密閉空間で粉体層に液体を浸透させた際の圧力上昇の測定値を用いることにより、従来達成できなかった、粉体の前進接触角と接触角(平衡値)を算出できることを見出した。本発明によれば、以下に示す接触角測定方法、接触角測定装置及び粉体充填装置が提供される。
【0018】
[1]通液自在な端部を有するセルに粉体を充填するステップと、前記粉体を充填した前記セルの通液自在な端部と反対側の端部を密閉するステップと、前記セルの通液自在な端部に液体を接触させるステップと、前記セル内に充填された粉体層に、前記液体を鉛直浸透させることにより発生するセル内圧力を測定するステップと、当該セル内圧力から前記液体と前記粉体表面がなす接触角を算出するステップと、を備える接触角測定方法。
【0019】
[2]前記接触角を下記式(7)により算出する[1]に記載の接触角測定方法。
【数7】
[但し、式(7)中、θ:接触角(°)、r:毛細管半径(m)、γ:表面張力(N・m-1)、ρ:液密度(kg・m-3)、μ:液粘度(Pa・s)、β:屈曲率(-)、P:大気圧(Pa)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、p:セル内圧(Pa)、t:時間(s)、H:リザーバー液深さ(m)]
【0020】
[3]更に、複数の粉体層充填率における、それぞれのセル内圧平衡値を測定するステップと、測定された前記セル内圧平衡値から、粉体層充填率による補正係数を算出するステップと、当該補正係数を用いて、前記液体と前記粉体表面がなす接触角を算出するステップと、を備える[2]に記載の接触角測定方法。
【0021】
[4]前記粉体層充填率による補正係数nを下記式(8)により算出し、当該補正係数nを用いて、下記式(9)により前記接触角を算出する[3]に記載の接触角測定方法。
【数8】
[但し、式(8)中、n:補正係数、p∞2:粉体層充填率φの場合のセル内圧平衡値(Pa)、P:大気圧(Pa)、ρ:液密度(kg・m-3)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、p∞1:粉体層充填率φの場合のセル内圧平衡値(Pa)、φ:粉体層充填率、φ:粉体層充填率]
【数9】
[但し、式(9)中、θ:接触角(°)、γ:表面張力(N・m-1)、S:粉体比表面積(m-1)、φ:粉体層充填率、n:補正係数、ρ:液密度(kg・m-3)、p:セル内圧平衡値(Pa)、P:大気圧(Pa)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、H:リザーバー液深さ(m)]
【0022】
[5]前記粉体を前記セル内に充填する際、当該粉体に圧縮力を付与すると共に、剪断力を付与する[1]~[4]のいずれかに記載の接触角測定方法。
【0023】
[6]前記粉体がそれ以上圧縮されなくなるまで、当該粉体に圧縮力を付与すると共に、剪断力を付与する[5]に記載の接触角測定方法。
【0024】
[7]内部に粉体が充填される空間と、通液自在な端部とを有するセルと、当該セル内の前記粉体に前記通液自在な端部から浸透させる液体を収納するリザーバーと、前記セルの通液自在な端部に当該リザーバーを接近させる駆動手段と、を備え、前記セルは、通液自在な端部と反対側の端部に圧力検知部を有し、当該圧力検知部は、前記セル内の空間に充填された粉体に液体が鉛直浸透するのに伴って上昇する前記セル内の空間内圧力を検知し、当該空間内圧力から接触角を算出する接触角算出部とをさらに備える接触角測定装置。
【0025】
[8]前記セルの通液自在な端部側の内部に濾紙が設置されている[7]記載の接触角測定装置。
【0026】
[9]前記濾紙が液体に濡れやすい材質である[8]記載の接触角測定装置。
【0027】
[10]基台と、当該基台に載置されたセルとを備え、当該セルは、内部空間に粉体が充填され、前記セルの内部空間に挿入されて、充填された粉体に圧縮力及び剪断力を付与する剪断圧縮部材と、当該剪断圧縮部材を、その圧縮方向に沿った方向に移動させる移動部材と、前記剪断圧縮部材の圧縮方向に沿った方向の位置を計測する計測部材と、をさらに備える粉体充填装置。
【0028】
[11]前記剪断圧縮部材は、前記セルの内周径と略同じ直径となる軸状部を有し、その軸状部の中心軸が前記セルの中心軸と一致させるように配置され、中心軸を中心に回転するように構成されている[10]記載の粉体充填装置。
【発明の効果】
【0029】
本発明の接触角測定方法、接触角測定装置及び粉体充填装置は、装置を小型化できるとともに、粉体の前進接触角と接触角(平衡値)を少量のサンプルで迅速に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来の浸透速度測定法における粉体に対する液体の浸透質量の2乗と時間との関係を示す図である。
図2】鉛直浸透を説明するための図である。
図3】水平浸透を説明するための図である。
図4】本発明の接触角測定装置の実施形態を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の粉体充填装置の実施形態を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の粉体充填装置における、剪断圧縮部材がセル内に挿入される様子を説明する図である。
図7】本実施形態の粉体充填装置において、剪断圧縮部材が粉体に圧縮力と剪断力を付与する様子を模式的に示す図である。
図8】セル深さLのセルに粉体を粉体層充填率φで充填し、液体深さHで、セルの通液自在な端部を、液体を収容したリザーバーに浸漬させ、粉体層が液体を液体浸透高さhまで吸い上げセル内圧pとなる状態の一例を示す図である。
図9図8において、充填された粉体層の微細空間を一様な毛細管と仮定した場合の毛細管現象が発揮されている状態の一例を示す図である。
図10】本実施形態の粉体充填装置を示す写真である。
図11】粉体をセル内に充填する様子の一例を示す写真である。
図12】本実施形態の接触角測定装置を用いて測定した時間とセル内圧力の関係を示す図である。
図13】本実施形態の接触角測定装置を用いて算出した時間と接触角の関係を示す図である。
図14】本実施形態の接触角測定装置を用いて算出した液界面の上昇速度と前進接触角の関係を示す図である。
図15】本実施形態の粉体充填装置を用いて粉体を充填した場合の時間とセル内圧の関係を示す図である。
図16】本実施形態の粉体充填装置を用いて粉体を充填した場合の時間と接触角の関係を示す図である。
図17】従来のタッピングにより粉体を充填した場合の時間とセル内圧の関係を示す図である。
図18】従来のタッピングにより粉体を充填した場合の時間と接触角の関係を示す図である。
図19】充填率と平衡接触角の関係を示す図である。
図20】充填率と平衡接触角の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0032】
(1)接触角測定装置
本実施形態の接触角測定装置は、内部に粉体が充填される空間と、通液自在な端部とを有するセルと、セル内の粉体に通液自在な端部から浸透させる液体を収納するリザーバーと、セルの通液自在な端部にリザーバーを接近させる駆動手段と、を備えるものである。セルは、通液自在な端部と反対側の端部に圧力検知部を有する。圧力検知部は、セル内の空間に充填された粉体に液体が鉛直浸透するのに伴って上昇するセル内の空間内圧力を検知する。本実施形態の接触角測定装置は、空間内圧力から接触角を算出する接触角算出部を備えるものである。
【0033】
図4は、本発明の接触角測定装置の実施形態を模式的に示す断面図である。図4に示されるように、本実施形態の接触角測定装置1は、セル11と、リザーバー13と、リザーバーを接近させる駆動手段(図示しない)とを備えている。セル11は、内部に粉体が充填されており、セル11の上部にセンサーホルダ18が外嵌連結される。センサーホルダ18には圧力検知部15が設置されており、セル11の粉体が充填された内部の圧力を検知できるように構成されている。センサーホルダ18の中心上部には、架台のフック(図示しない)等に係止される連結孔等が備えられており、セル11が架台により吊り下げ支持される。センサーホルダ18の内周には、セル11との間にOリング19が装着されている。準備段階として、粉体に浸透させる液体を貯留したリザーバー13は、吊り下げられたセル11の略直下に位置するよう、下降待機位置にある昇降台等の駆動手段(図示しない)に載置される。測定開始時には、ジャッキ等の駆動手段が上昇を開始する。なお、駆動手段の上昇速度は、リザーバー13に貯留された液体の液面が波立つことがないように低速であり、速度変化が生じないようにするのが好ましい。
【0034】
セル11は、円筒状の筒部と、筒部の下端部に設置される濾紙ホルダ17と、濾紙ホルダ17によって保持される濾紙16を備え、筒部の内部に粉体12が充填される。また、セル11は、濾紙ホルダ17が設置された筒部の下端部と反対側の端部に圧力検知部15を有する。濾紙ホルダ17は、筒部の下端部とその外周近傍を覆う構造となっている。濾紙ホルダ17には開口が形成されていて、この開口からリザーバー13に収容された液体14が侵入し、濾紙16を介して粉体12に浸透する。圧力検知部15は、各種圧力センサーを用いることができる。
【0035】
リザーバー13の液面が濾紙ホルダ17の下端に到達し、液面が濾紙16に接触すると、液体は濾紙16に浸透して拡散し、次第にセル11の内部に充填された粉体層に浸透する。このように、粉体層に液体が浸透すると粉体同士の間に存在する微小空間の空気が液体により圧縮されるので、空間内圧力が増加する。この空間内圧力の変化を圧力検知部15が検知するので、リザーバー13の液面が濾紙16に接触したことを認識できる。
【0036】
セル11の材料は、特に制限されない。ステンレス鋼、鉄、銅等の金属、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の樹脂や、ガラス等を使用することができる。濾紙ホルダ17の材料も特に制限されない。濾紙16は、測定対象の液体に濡れやすい材質であれば特に制限されない。すなわち、親液性を有する材質であればよい。このような濾紙16として、ガラス繊維、紙等から構成されるものを用いることができる。リザーバー13は、測定前後の液面の高さが変化しない断面積が十分大きなものであることが好ましい。液面高さの変化が1mm以内となる断面積のものがより好ましい。リザーバー13の形状は、リザーバー13に貯留した液体中にセル11を浸漬させることができるのであれば特に形状は制限されない。また、その材質も、特に制限されず、ガラス、ステンレス鋼等を用いることができる。
【0037】
(2)粉体充填装置
次に、本発明の粉体充填装置の実施形態を説明する。本実施形態の粉体充填装置は、基台と、基台に載置されたセルとを備える。セルは、内部空間に粉体が充填される。本実施形態の粉体充填装置は、セルの内部空間に挿入されて、充填された粉体に圧縮力及び剪断力を付与する剪断圧縮部材と、剪断圧縮部材を、その圧縮方向に沿った方向に移動させる移動部材と、剪断圧縮部材の圧縮方向に沿った方向の位置を計測する計測部材と、をさらに備える。
【0038】
図5は、本発明の粉体充填装置の実施形態を模式的に示す断面図である。図5に示されるように、本実施形態の粉体充填装置2は、基台20と、基台20に載置されたセル21とを備える。図5では、基台20とセル21との間にジャッキ24が設けられている。セル21は、円柱であり、その内部空間に粉体22が充填されている。セル21は、通液自在な端部を上にし、圧力検知部を有する側の端部を下にして設けられている。通液自在な端部は、濾紙等が外されて開口となっており、圧力検知部を有する側の端部には、圧力検知部を保護するための蓋30が設けられている。剪断圧縮部材23は、セル21の内部空間に挿入されて、充填された粉体22に圧縮力及び剪断力を付与する。剪断圧縮部材23は、錘27が吊り下げられたアーム26に設けられた押圧部材28を介して錘27、アーム26、押圧部材28及び剪断圧縮部材23の合計重量による圧縮力を粉体22に付与する。錘27は、特に制限されないが、その材質が鉛、ステンレス、鉄、銅等の金属であるものが好ましい。アーム26は、特に制限されないが、ステンレス、鉄等の金属から構成された棒状のものを使用できる。押圧部材28は、付与された力によって変形しないのであれば、その材質は特に制限されないが、アーム26と同じ材料であるのが好ましく、ステンレス、鉄等の金属、宝石等の無機材料等を用いることができる。押圧部材28の形状は、剪断圧縮部材23と点接触する観点から、球状のものが好ましい。剪断圧縮部材23は、その自重により粉体22に圧縮力を効果的に付与するため、ステンレス、鉄、銅等の金属材料から構成されているのが好ましい。
【0039】
図6は、本発明の粉体充填装置における、剪断圧縮部材がセル内に挿入される様子を説明する図である。図6に示されるように、剪断圧縮部材23は、セル21の内周径と略同じ直径となる軸状部32を有し、その軸状部32の中心軸がセル21の中心軸と一致させるように配置され、中心軸を中心に回転するように構成されている。剪断圧縮部材23の軸状部32の一端は、セル21内に挿入され、軸状部32の端面によって内部の粉体22に圧縮力を付与するとともに、中心軸を中心とした回転により剪断力も付与する。また、扱いやすさの観点から、剪断圧縮部材23は、セル21に対向する端面と反対側の端面側にセル21の内周径よりも大きな直径を有する円柱状の鍔部29が設けられていてもよい。なお、圧縮力をセル21内の粉体22に均一に付与する観点から、鍔部29は、その中心軸を、セル21の中心軸と一致させるように設けられているのが好ましい。
【0040】
次に、本実施形態の粉体充填装置が粉体に圧縮力と剪断力を付与する様子について図面を用いて説明する。図7は、剪断圧縮部材が粉体に圧縮力と剪断力を付与する様子を示す模式図である。図7に示されるように、剪断圧縮部材23は粉体22に圧縮力(以下、圧密と称す)を付与すると共に、剪断圧縮部材23を、その中心軸を軸として回転させることにより粉体22に剪断力(以下、剪断と称す)を付与する。
【0041】
図5に示される粉体充填装置を用いて、粉体の充填を行うと、セル21内の粉体層の厚みが圧縮により、次第に薄くなる。アーム26は、粉体層の厚みが薄くなるにつれて、計測手段25側の端部が下がるように可動部31が設けられている。粉体層の圧縮による厚み変位を、アーム26の計測手段25側の端部の変位とみなして、この変位を計測手段25により測定する。計測手段25として、セル21の圧縮方向に沿った方向におけるアーム26の移動距離を検知するスケール等を用いることができる。粉体の充填操作によるバラツキをなくすため、剪断圧縮部材23による剪断圧縮操作を繰り返し、計測手段25により、アーム26が移動しなくなった時点において、粉体の充填操作を終了させるのが好ましい。本実施形態の粉体充填装置により、従来のタッピング方式よりも均質、緻密な粉体の充填層を形成でき、再現性、精度の高い測定が可能となる。また、微粉など、タッピング方式では均質な充填が困難な粉体も測定が可能となる。
【0042】
(3)接触角測定方法:
本発明の接触角測定方法の実施形態は、通液自在な端部を有するセルに粉体を充填するステップと、粉体を充填したセルの通液自在な端部と反対側の端部を密閉するステップと、セルの通液自在な端部に液体を接触させるステップと、セル内に充填された粉体層に、液体を浸透させることにより発生するセル内圧力を測定するステップと、セル内圧力から液体と粉体表面がなす接触角を算出するステップと、を備えるものである。
【0043】
このような、接触角測定方法によれば、セル内に充填された粉体層に、液体を浸透させることにより発生するセル内の圧力変化を測定するため、測定に供する粉体や液体等のサンプル量を少なくすることができる。また、セル内において圧力は装置サイズに依存しないため測定装置を小型化することもできる。更に、セル内圧が大気圧よりも高くなるため、接触角の平衡値に達するまでの時間が短いので測定時間を短縮することができ、前進接触角、接触角(平衡値)のいずれについても測定することが可能となり、正確な接触角を測定できる。
【0044】
本実施形態の接触角測定方法は、上記構成により、液体と粉体表面がなす接触角を算出するものである。以下、本実施形態の接触角測定方法を詳細に説明する前に、セル内圧力から液体と粉体表面がなす接触角を算出する方法について説明する。
【0045】
本実施形態の接触角測定方法は、通液自在な端部を有するセルに粉体を充填する。セル内に粉体を所定量充填した後、通液自在な端部と反対側の端部を密閉する。本実施形態は、セル内を密閉する。通液自在な端部から液体が、セル内の粉体層に鉛直浸透すると、粉体層内に形成された微細な空間が浸透する液体によって狭められる。セル内は密閉されているので、液体の浸透により粉体層内の微細空間が狭められるにつれて、内圧が上昇する。上昇した内圧を測定し、鉛直浸透式を利用して、液体と粉体表面がなす接触角を算出できる。
【0046】
図8は、セル深さLのセルに粉体を粉体層充填率φで充填し、液体深さHで、セルの通液自在な端部を、液体を収容したリザーバーに浸漬させ、粉体層が液体を液体浸透高さhまで吸い上げセル内圧pとなる状態の一例を示す図である。図9は、図8において、セル内の粉体層の微細空間を毛細管半径rの一様な毛細管と仮定した場合の表面張力γの液体と粉体表面との接触角θとの関係を示す図である。毛細管内の液面に関する運動方程式は下記式(10)に示される。
【数10】
[但し、式(10)中、r:毛細管半径(m)、ρ:液密度(kg・m-3)、h:液体浸透高さ(m)、μ:液粘度(Pa・s)、β:屈曲率(-)、t:時間(s)、dh/dt:液体浸透速度(m・s-1)、p:セル内圧(Pa)、γ:表面張力(N・m-1)、θ:接触角(°)、H:リザーバー液深さ(m)、P:大気圧(Pa)]
【0047】
図8において、セルは密閉されているのでボイルの法則より、下記式(11)に示される関係を有する。
【数11】
[但し、式(11)中、P:大気圧(Pa)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、h:液体浸透高さ(m)、p:セル内圧(Pa)、t:時間(s)、dh/dt:液体浸透速度(m・s-1)]
【0048】
これらの式を変換して、下記式(12)に示されるように、セル内圧(p)から接触角(θ)を算出することができる。
【数12】
[但し、式(12)中、θ:接触角(°)、r:毛細管半径(m)、γ:表面張力(N・m-1)、ρ:液密度(kg・m-3)、μ:液粘度(Pa・s)、β:屈曲率(-)、P:大気圧(Pa)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、p:セル内圧(Pa)、t:時間(s)、H:リザーバー液深さ(m)]
【0049】
ここで、毛細管半径rは、下記式(13)により算出される。
【数13】
[但し、式(13)中、r:毛細管半径(m)、φ:粉体層充填率、S:粉体比表面積(m-1)]
【0050】
本実施形態の接触角測定方法は、鉛直浸透を利用しているので、セル内の粉体に浸透する液体の自重が推進力(毛細管吸引力)に等しくなった時点でセル内の液体上昇が停止し平衡に達する。接触角は、液体の上昇速度の影響を受けるので、液体上昇が停止し、平衡に到達した状態でセル内圧を測定し、式(12)より接触角(平衡値)を算出することができる。また、本実施形態の接触角測定方法は、液体上昇中の前進接触角を算出することができる。なお、前進接触角とは、液滴を水平な固体表面上に着適させ、この固体表面を徐々に傾けていった際、とどまっていた液滴が下方へ滑り出す際の固体表面との接触角をいう。このような前進接触角を測定することが可能なので、土壌への薬剤注入等への応用が可能となる。
【0051】
本実施形態の接触角測定方法においては、2通りの粉体層充填率における、それぞれのセル内圧力の上昇値を測定し、粉体層充填率の差に基づく補正係数を求め、接触角の代表値(平衡値)を算出できる。本実施形態の接触角測定方法は、更に、2通りの粉体層充填率における、それぞれのセル内圧平衡値を測定するステップと、測定されたセル内圧平衡値から、粉体層充填率による補正係数を算出するステップと、この補正係数を用いて、液体と粉体表面がなす接触角を算出するステップと、を備えることができる。
【0052】
粉体層充填率φと粉体層充填率φのそれぞれにおけるセル内圧平衡値p∞,1、セル内圧平衡値p∞,2を用いて、鉛直浸透式を変形すると下記式(14)の関係が得られる。
【数14】
[但し、式(14)中、n:補正係数、φ:粉体層充填率、φ:粉体層充填率、p∞,1:粉体層充填率φにおけるセル内圧平衡値、p∞,2:粉体層充填率φにおけるセル内圧平衡値、P:大気圧(Pa)、ρ:液密度(kg・m-3)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)]
【0053】
式(14)を変形して下記式(15)が得られる。
【数15】
[但し、式(15)中、n:補正係数、p∞,1:粉体層充填率φにおけるセル内圧平衡値、p∞,2:粉体層充填率φにおけるセル内圧平衡値、P:大気圧(Pa)、ρ:液密度(kg・m-3)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、φ:粉体層充填率、φ:粉体層充填率]
【0054】
式(15)で算出された補正係数nを下記式(16)に代入して接触角の代表値(平衡値)を算出できる。
【数16】
[但し、式(16)中、θ:接触角(°)、γ:表面張力(N・m-1)、S:粉体比表面積(m-1)、φ:粉体層充填率、n:補正係数、ρ:液密度(kg・m-3)、p:粉体層充填率φにおけるセル内圧平衡値、P:大気圧(Pa)、L:セル深さ(粉体層厚さ)(m)、H:リザーバー液深さ(m)]
【実施例
【0055】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
本発明の実施形態に係る接触角測定装置の性能を、図4の装置を用いて評価した。
【0057】
セルとしては、外周径50mm、長さ18mmの円柱形状のテフロン製のセルを用いた。セル内部に内周径10mm、長さ10mmの空間を設けた。次に、図10に示す粉体充填装置を用いてセル内に粉体を充填した。圧力検知部が設けられた側の端面を下側となるようにし、濾紙が設けられた側の端面を上側となるようにセルをジャッキ上に載置した。なお、圧力検知部が設けられた側の端面は、圧力検知部を衝撃等から保護するために蓋を設けた。濾紙が設けられた側の端面は、剪断圧縮部材が挿入されるように開口とした。アームに1000gのステンレス製錘を吊り下げ、球状の押圧部材を介して、剪断圧縮部材により、セル内の粉体に圧縮力17.2[N](0.2MPa)を付与した。剪断圧縮部材は、セル内に挿入される軸状部が外径10mm、長さ10mmの円柱形状であり、セル内に挿入する側と反対側の端部に、中心軸を軸状部と共通にする外周径20mm、長さ20mmの鍔部を設けた。鍔部とアームの押圧部材の間に軸状部を中心軸の周りに回転させるため、ハンドルを設けた。図11に示されるように、手でハンドルを回し、粉体に圧縮力と剪断力を付与しながら粉体をセルに充填した。計測手段であるスケールの目盛の数値が下がり続けるときは図11に示される操作を50回繰り返しても目盛の数値が変化しない場合を充填終了とした。
【0058】
セル内空間に充填する粉体として、アルミナ(昭和電工社製の商品名[アルミナ(丸み状/AS)]、平均粒子径9μm)を用いた。セル内の粉体容量は、1cm程度となるようにし、粉体層充填率0.45~0.47の範囲で粉体を充填した。粉体を充填したセルの上部にホルダを外嵌連結した。ホルダには圧力センサ(センシズ社製、小型高精度圧力センサ、HXシリーズ、HXV-500KPa-02-V)を設置し、セル内部の圧力を測定できるようにした。セル底部に濾紙として、ガラス濾紙(ADVANTEC製、GC-50)を用い、キムワイプ製の濾紙ホルダにより含水させた濾紙を固定した。リザーバーとして、直径150mm、長さ27mmの円柱状のガラス製容器を用いた。リザーバーには、イオン交換水を貯留した。リザーバーはジャッキ上に載置し、上下方向に駆動できるようにした。
【0059】
準備段階では、リザーバーに貯留したイオン交換水とセルが接触しないようにジャッキを最大限まで下げた。測定開始とともに、ジャッキを手動で駆動させリザーバーを上昇させた。リザーバー内のイオン交換水の液面が波立たないように緩やかにリザーバーを上昇させ、イオン交換水の液面をセルの下端から10mmの高さとなるまでリザーバーを上昇させた。セル内圧力が上昇し始めた時点を基準時間とした。測定されたセル内圧力等を用い、式(12)を用いて前進接触角、接触角(平衡値)を算出した。時間と圧力変化の関係を図12に示す。また、時間と接触角変化の関係を図13に示す。更に、液界面の上昇速度と前進接触角の関係を図14に示す。従来の方法では得ることができなかった前進接触角及び接触角(平衡値)を算出することができた。
【0060】
(実施例2)
セル内空間に充填する粉体として、炭酸カルシウム(一般社団法人日本粉体工業技術協会社製の商品名[JIS試験用粉体1(16種重質炭酸カルシウム)]、平均粒子径6μm)を用い、炭酸カルシウムをセル内に充填するに際し、圧力0.2MPaを付与した以外は、実施例1と同じ条件でセル内圧を測定し、同様な方法により前進接触角、接触角(平衡値)を算出した。時間と圧力変化の関係を図15に示す。また、時間と接触角変化の関係を図16に示す。図16より、接触角は、平均57.3°であり、最大誤差が5%であり、バラツキが小さいものであった。
【0061】
(比較例1)
炭酸カルシウムをタッピングによりセルに充填した以外は、実施例2と同一条件でセル内圧を測定し、接触角を算出した。時間と圧力変化の関係を図17に示す。また、時間と接触角変化の関係を図18に示す。充填率が0.25~0.27の範囲となり、実施例と比べても低い充填率であった。また、図18より、接触角は、平均40.3°であり、最大誤差が14%であり、実施例2(図16)と比べてバラツキが大きいものであった。
【0062】
(実施例3)
粉体の充填率を変化させてセル内圧を測定する以外は実施例1と同一条件とした。粉体に付与する圧縮力を0.2MPaとし、充填率0.619の場合のセル内圧は29.4[KPa]であった。粉体に付与する圧縮力を0.4MPaとし、充填率0.634の場合のセル内圧は29.8[KPa]であった。式(15)を用いて補正係数nとして0.206を算出した。式(16)を用いて平衡接触角として56.7°を算出することができた。充填率と平衡接触角の関係を図19に示す。充填率のバラツキも小さく、また平衡接触角のバラツキも小さいことが示されている。
【0063】
(比較例2)
アルミナをタッピングによりセルに充填した以外は、実施例3と同一条件とした。タッピング回数を100回とした場合と、300回とした場合について平衡接触角を算出した。結果を図19に示す。実施例3と比べて充填率が小さく、充填率のバラツキも大きく、平衡接触角のバラツキも大きかった。
【0064】
(実施例4)
粉体の充填率を変化させてセル内圧を測定する以外は実施例2と同一条件とした。粉体に付与する圧縮力を0.2MPaとし、充填率0.467の場合のセル内圧は34.5[KPa]であった。粉体に付与する圧縮力を0.4MPaとし、充填率0.507の場合のセル内圧は36.8[KPa]であった。粉体に付与する圧縮力を0.8MPaとし、充填率0.564の場合のセル内圧は36.4[KPa]であった。式(15)を用いて補正係数nとして0.399を算出した。式(16)を用いて平衡接触角の代表値として59.9°を算出することができた。充填率と平衡接触角の関係を図20に示す。充填率のバラツキも小さく、また平衡接触角のバラツキも小さいことが示されている。
【0065】
(比較例3)
炭酸カルシウムをタッピングによりセルに充填した以外は、実施例4と同一条件とした。タッピング回数を100回とした場合と、300回とした場合について平衡接触角を算出した。結果を図20に示す。実施例4と比べて充填率が小さく、充填率のバラツキも大きく、平衡接触角のバラツキも大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の接触角測定方法、接触角測定装置及び粉体充填装置は、装置を小型化することができると共に、少量のサンプルで迅速かつ正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0067】
1:接触角測定装置、11:セル、12:粉体、13:リザーバー、14:液体、15:圧力検知部、16:濾紙、17:濾紙ホルダ、18:センサーホルダ、19:Oリング、2:粉体充填装置、20:基台、21:セル、22:粉体、23:剪断圧縮部材、24:ジャッキ、25:計測手段、26:アーム、27:錘、28:押圧部材、29:鍔部、30:蓋、31:可動部、32:軸状部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20