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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】分析ユニット及び分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 525W
G01N33/543 525U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018034282
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019148529
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】辻田 公二
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅之
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】糸長 誠
(72)【発明者】
【氏名】堀越 勝恵
【審査官】白形 優依
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040595(JP,A)
【文献】特開2010-014613(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134906(WO,A1)
【文献】特開2014-219384(JP,A)
【文献】特開2007-147539(JP,A)
【文献】特開2007-240349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
G01N 35/00 - 35/10
G01N 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴形状を有し、かつ、前記穴形状における底面に対応する第1の面と、前記穴形状における内側の側面に対応する第2の面とを有するウェルを備え、
前記ウェルは、前記第1の面と前記第2の面とに異なる抗体が固定されている
析ユニット。
【請求項2】
前記第1の面には、生体試料液に含まれている検出対象物質と抗原抗体反応により特異的に結合する第1の抗体が固定されており、
前記第2の面には、前記検出対象物質と抗原抗体反応せず、前記生体試料液に含まれている夾雑物が抗原抗体反応しない状態で非特異的に吸着する第2の抗体が固定されている
求項1に記載の分析ユニット。
【請求項3】
貫通孔を有するカートリッジと、
試料分析用ディスクと、
を備え、
前記ウェルは前記カートリッジの貫通孔と前記試料分析用ディスクの表面とによって形成され、
前記第1の面は前記試料分析用ディスクの表面に対応し、
前記第2の面は前記貫通孔の内側の面に対応し、
前記第1の面に対応する前記試料分析用ディスクの表面には前記第1の抗体が固定され、
前記第2の面に対応する前記貫通孔の内側の面には前記第2の抗体が固定されている
求項2に記載の分析ユニット。
【請求項4】
穴形状を有し、かつ、前記穴形状における底面に対応する第1の面と、前記穴形状における内側の側面に対応する第2の面とを有し、前記第1の面と前記第2の面とに異なる抗体が固定されているウェルを備えた分析ユニットを用い、
前記ウェルに検出対象物質を含む生体試料液を注入し、
前記検出対象物質を前記第1の面に固定されている抗体と抗原抗体反応により特異的に結合させ、
前記第1の面に固定されている抗体と特異的に結合している検出対象物質を分析する
分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原または抗体等の生体物質を分析するための分析ユニット及び分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液、血清、または血漿等の生体試料に含まれるタンパク質などの生体物質(例えば生体細胞から分泌されるエクソソームなどの小胞顆粒)を分析する免疫検定法(immunoassay)が知られている。
【0003】
一般的に、生体試料中には、生体物質である検出対象物質以外に夾雑物が含まれている。夾雑物は、例えば検出対象物質以外の種々のタンパク質、脂質、または糖鎖化合物等である。夾雑物は、1次抗体、2次抗体、または1次抗体をウェル等の支持体に固相化するための固相化層(固相化支持体)等に、抗原抗体反応しない状態で非特異的に吸着する。夾雑物は、蛍光標識体が結合することにより、夾雑物に起因する非特異シグナルが発生し、バックグランドノイズの原因となっている。
【0004】
特許文献1には、糖鎖を有する測定試薬が用いられる免疫測定法において、非特異反応を低減させる糖鎖化合物を用いることが記載されている。特許文献1に記載されている免疫測定法は、糖鎖を有する測定試薬の反応点を添加した別の糖鎖化合物を用いて非特異的吸着をブロックすることにより、ノイズを低減するものである。
【0005】
特許文献2には、生体試料として用いる血清が由来する動物とは異なる動物に由来する血清をブロッキング材として用いることが記載されている。ブロッキング材は、非特異的吸着をブロックすることにより、ノイズを低減するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-60293号公報
【文献】特開2009-229074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、検出対象物質が微量である場合、非特異的吸着をブロックするだけでは、検出対象物質を精度よく分析することが困難な場合がある。
【0008】
本発明は、検出対象物質を精度よく分析できる分析ユニット及び分析方法を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面として、穴形状を有し、かつ、前記穴形状における底面に対応する第1の面と、前記穴形状における内側の側面に対応する第2の面とを有するウェルを備え、前記ウェルは、前記第1の面と前記第2の面とに異なる抗体が固定されていることを特徴とする分析ユニットを提供する。
【0010】
また、本発明の一側面として、穴形状を有し、かつ、前記穴形状における底面に対応する第1の面と、前記穴形状における内側の側面に対応する第2の面とを有し、前記第1の面と前記第2の面とに異なる抗体が固定されているウェルを備えた分析ユニットを用い、記ウェルに検出対象物質を含む生体試料液を注入し、前記検出対象物質を前記第1の面に固定されている抗体と抗原抗体反応により特異的に結合させ、前記第1の面に固定されている生体分子と特異的に結合している検出対象物質を分析する分析方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の分析ユニット及び分析方法によれば、検出対象物質を精度よく分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態の分析ユニットを示す平面図である。
図2A図1のA-Aで切断した分析ユニットの断面図である。
図2B】カートリッジを試料分析用ディスクより取り外した状態を示す断面図である。
図3図1のB-Bで切断したウェルを示す拡大斜視図である。
図4】ウェルの底面に固定されている抗体とウェルの内周面に固定されている抗体との関係を示す図である。
図5】分析ユニットを用いた分析方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図6A】分析ユニットを用いた分析方法の一例を示す図である。
図6B】分析ユニットを用いた分析方法の一例を示す図である。
図7A】分析ユニットを用いた分析方法の一例を示す図である。
図7B】分析ユニットを用いた分析方法の一例を示す図である。
図8】分析ユニットを用いた分析方法の一例を示す図である。
図9A】分析ユニットを用いた分析方法の一例を示す図である。
図9B】試料分析用ディスクに形成された反応領域を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1図2A図2B図3、及び図4を用いて、一実施形態の分析ユニットを説明する。図1は一実施形態の分析ユニットをカートリッジ側から見た状態を示している。図2A図1のA-Aで切断した分析ユニットの断面を示している。図2Bはカートリッジを試料分析用ディスクより取り外した状態を示している。図3図1のウェルをB-Bで切断した状態を部分的に拡大して示している。
【0014】
図1に示すように、分析ユニット1は、試料分析用ディスク100とカートリッジ200とを備える。試料分析用ディスク100は、例えば、ブルーレイディスク(BD)、DVD、コンパクトディスク(CD)等の光ディスクと同等の円板形状を有する。
【0015】
試料分析用ディスク100は、例えば、一般的に光ディスクに用いられるポリカーボネート樹脂またはシクロオレフィンポリマー等の樹脂材料で形成されている。なお、試料分析用ディスク100は、上記の光ディスクに限定されるものではなく、他の形態または所定の規格に準拠した光ディスクを用いることもできる。
【0016】
図1図2A、または図2Bに示すように、試料分析用ディスク100は、中心孔101と切欠き部102とを有する。中心孔101は試料分析用ディスク100の中心部に形成されている。切欠き部102は試料分析用ディスク100の外周部に形成されている。切欠き部102は、試料分析用ディスク100の基準位置を識別するための基準位置識別部である。
【0017】
図3に示すように、試料分析用ディスク100の表面には、凹部103と凸部104とが半径方向に交互に配置されたトラック領域105が形成されている。凹部103と凸部104とは、試料分析用ディスク100の内周部から外周部に向かってスパイラル状に形成されている。凹部103は光ディスクのグルーブに相当する。凸部104は光ディスクのランドに相当する。光ディスクのトラックピッチに相当する試料分析用ディスク100のトラックピッチは例えば320nmである。
【0018】
図1図2A、または図2Bに示すように、カートリッジ200は、周方向に複数の円筒状の貫通孔201が形成されている。複数の貫通孔201は、それぞれの中心が同一円周上に位置するように等間隔に形成されている。カートリッジ200は、中心部に形成された凸部202と、外周部に形成された凸部203とを有する。
【0019】
オペレータは、カートリッジ200を試料分析用ディスク100に取り付ける場合、凸部202を試料分析用ディスク100の中心孔101に挿入し、凸部203を切欠き部102に挿入する。これにより、カートリッジ200と試料分析用ディスク100とを位置決めすることができる。
【0020】
図2Aまたは図3に示すように、分析ユニット1は、カートリッジ200の貫通孔201と試料分析用ディスク100の表面(トラック領域105)とによって形成される複数のウェル10を有する。ウェル10は穴形状を有する。ウェル10は、穴形状における底面に対応する第1の面11と、穴形状における内側の側面に対応する第2の面12とを有する。以下、説明をわかりやすくするために、ウェル10において第1の面11を底面11、第2の面12を内周面12とする。
【0021】
試料分析用ディスク100の表面はウェル10の底面11を構成している。貫通孔201の内側の面である内周面はウェル10の内周面12を構成している。ウェル10は試料液、緩衝液、及び、洗浄液等の溶液を溜めるための容器である。なお、図1では、一例として8つのウェル10を示しているが、ウェル10の数はこれに限定されるものではない。
【0022】
図2Bに示すように、カートリッジ200を試料分析用ディスク100から分離することができる。検出対象物質を標識する微粒子の検出及び計測は、カートリッジ200が分離された試料分析用ディスク100単体で行われる。
【0023】
図4を用いて、ウェル10の底面11に固定されている抗体とウェル10の内周面12に固定されている抗体との関係を説明する。なお、図4では、説明をわかりやすくするために、ウェル10を構成する試料分析用ディスク100とカートリッジ200とを簡略化して示している。
【0024】
図4に示すように、ウェル10の底面11には、検出対象物質と抗原抗体反応により特異的に結合する抗体20が固定されている。ウェル10の内周面12には、抗体20とは異なり、かつ、検出対象物質と特異的に結合しない抗体30が固定されている。検出対象物質は、例えば生体細胞から分泌されるエクソソーム等の小胞顆粒である。抗体20は例えばエクソソームと抗原抗体反応により特異的に結合するanti-Human CD9抗体等の生体分子(第1の生体分子)である。抗体30は例えばエクソソームと特異的に結合しないIgG1抗体等のネガティブコントロール抗体等の生体分子(第2の生体分子)である。ウェル10の底面11及び内周面12にはブロッキング層13が形成されている。
【0025】
図5図6A図6B図7A図7B図8図9A、及び、図9Bを用いて、分析ユニット1を用いた分析方法の一例を説明する。オペレータは、図5に示すフローチャートのステップS11にて、図6Aに示すように、試料分析用ディスク100aとカートリッジ200aとを備える分析ユニット1aを作製する。試料分析用ディスク100aは、図4に示す試料分析用ディスク100に相当する。図6Aに示す符号10aはウェルを示す。図6Aに示す符号11a及び12aはウェル10aの底面及び内周面を示す。底面11aは、図4に示す底面11に相当する。
【0026】
オペレータは、ステップS12にて、抗体20を含む緩衝液21をウェル10aに注入する。さらに、オペレータは、分析ユニット1aを適切な時間だけ適切な温度でインキュベートさせる。これにより、抗体20は、ウェル10aの底面11aを構成する試料分析用ディスク100aの表面に形成されたトラック領域105上に固定される。なお、抗体20は、ウェル10aの内周面12aを構成するカートリッジ200aの貫通孔201の内周面にも固定される。
【0027】
オペレータは、緩衝液21をウェル10aから排出する。オペレータは、ウェル10aを別の緩衝液で洗浄する。ウェル10aの底面11a及び内周面12aに固定されなかった抗体20はこの洗浄によって除去される。オペレータは、ステップS13にて、試料分析用ディスク100aとカートリッジ200aとを分離する。
【0028】
オペレータは、ステップS11~S13により、図6Bに示すように、検出対象物質と抗原抗体反応により特異的に結合する抗体20が表面(トラック領域105)に固定されている試料分析用ディスク100aを作製する。
【0029】
オペレータは、ステップS21にて、図7Aに示すように、試料分析用ディスク100bとカートリッジ200bとを備える分析ユニット1bを作製する。カートリッジ200bは、図4に示すカートリッジ200に相当する。図7Aに示す符号10bはウェルを示す。図7Aに示す符号11b及び12bはウェル10bの底面及び内周面を示す。内周面12bは、図4に示す内周面12に相当する。
【0030】
オペレータは、ステップS22にて、抗体30を含む緩衝液31をウェル10bに注入する。さらに、オペレータは、分析ユニット1bを適切な時間だけ適切な温度でインキュベートさせる。これにより、抗体30は、ウェル10bの内周面12bを構成するカートリッジ200bの貫通孔201の内周面に固定される。なお、抗体30は、ウェル10bの底面11bを構成する試料分析用ディスク100bの表面上にも固定される。
【0031】
オペレータは、緩衝液31をウェル10bから排出する。オペレータは、ウェル10bを別の緩衝液で洗浄する。ウェル10bの底面11b及び内周面12bに固定されなかった抗体30はこの洗浄によって除去される。オペレータは、ステップS23にて、カートリッジ200bと試料分析用ディスク100bとを分離する。
【0032】
オペレータは、ステップS21~S23により、図7Bに示すように、検出対象物質と特異的に結合しない抗体30が貫通孔201の内周面に固定されているカートリッジ200bを作製する。なお、オペレータは、ステップS11~S13とステップS21~S23とを並行して実行してもよいし、別々の時間に実行してもよい。
【0033】
オペレータは、ステップS31にて、試料分析用ディスク100aにカートリッジ200bを取り付けることにより、図4に示すウェル10を有する分析ユニット1を作製する。
【0034】
オペレータは、ステップS32にて、分析ユニット1のウェル10の底面11及び内周面12を、スキムミルクまたはBSA(ウシ血清アルブミン)等のブロッキング剤を用いてブロッキング処理する。例えば、オペレータは、リン酸緩衝液等の緩衝液で希釈されたスキムミルクをウェル10に注入する。さらに、オペレータは分析ユニット1を適切な時間だけ適切な温度で静置または振盪させる。
【0035】
オペレータは、スキムミルクを含む緩衝液をウェル10から排出する。オペレータは、ウェル10を別の緩衝液で洗浄する。洗浄に用いられる緩衝液は、スキムミルクを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、洗浄を省略してもよい。これにより、図4に示すように、ウェル10の底面11及び内周面12にブロッキング層13が形成される。
【0036】
オペレータは、ステップS33にて、図8に示すように、検出対象物質40を含む生体試料液41をウェル10に注入する。検出対象物質40は、例えば生体細胞から分泌されるエクソソーム等の小胞顆粒である。なお、生体試料液41には検出対象物質40が含まれていない場合もある。説明をわかりやすくするために、生体試料液41に検出対象物質40が含まれている場合について説明する。
【0037】
オペレータは、分析ユニット1を適切な時間だけ適切な温度でインキュベートさせる。これにより、検出対象物質40は、ウェル10の底面11に固定されている抗体20と抗原抗体反応により特異的に結合する。その結果、検出対象物質40は、試料分析用ディスク100の表面に形成されたトラック領域105に捕捉される。ブロッキング層13は、検出対象物質40がウェル10の底面11及び内周面12に非特異的に吸着することを防止する。
【0038】
一般的に、生体試料液41には、検出対象物質40以外の夾雑物42が含まれている。夾雑物42は、例えば検出対象物質40以外の種々のタンパク質、脂質、または糖鎖化合物等である。夾雑物42は、ウェル10の底面11に固定されている抗体20、及び、ウェル10の内周面12に固定されている抗体30に、抗原抗体反応しない状態で非特異的に吸着する。ブロッキング層13は、夾雑物42がウェル10の底面11及び内周面12に非特異的に吸着することを防止する。従って、ブロッキング層13は、検出対象物質40、及び、夾雑物42がウェル10の底面11及び内周面12に非特異的に吸着することを防止する。
【0039】
ウェル10の内周面12には検出対象物質40と特異的に結合しない抗体30が固定されている。ウェル10の底面11には検出対象物質40と抗原抗体反応により特異的に結合する抗体20が固定されている。従って、検出対象物質40が、ウェル10の底面11を構成する試料分析用ディスク100の表面(トラック領域105)に捕捉される確率を向上させることができる。
【0040】
夾雑物42は、ウェル10の底面11及び内周面12に固定されている抗体20及び30に、抗原抗体反応しない状態で非特異的に吸着する。検出対象物質40はウェル10の底面11に固定されている抗体20と抗原抗体反応により特異的に結合する。これにより、夾雑物42が、ウェル10の底面11を構成する試料分析用ディスク100の表面に非特異的に吸着する確率を低減させることができる。
【0041】
オペレータは、ウェル10から生体試料液41を排出する。オペレータは、ウェル10を緩衝液で洗浄する。なお、生体試料液41中に分散している検出対象物質40と夾雑物42とは、この洗浄によって除去される。
【0042】
オペレータは、ステップS34にて、図9Aに示すように、標識となる微粒子50を含む緩衝液51をウェル10に注入する。微粒子50の表面には検出対象物質40の抗原と抗原抗体反応により特異的に結合する抗体が形成されている。さらに、オペレータは、分析ユニット1を適切な時間だけ適切な温度でインキュベートさせる。
【0043】
これにより、微粒子50は、試料分析用ディスク100の表面に形成されたトラック領域105上に捕捉されている検出対象物質40と抗原抗体反応により特異的に結合する。その結果、微粒子50は、試料分析用ディスク100のトラック領域105、具体的にはトラック領域105の凹部103に、検出対象物質40と結合した状態で捕捉される。ブロッキング層13は、微粒子50がウェル10の底面11及び内周面12に非特異的に吸着することを防止する。
【0044】
オペレータは、ウェル10から緩衝液51を排出する。オペレータは、ウェル10を別の緩衝液で洗浄し、さらに必要に応じて純水で洗浄した後、乾燥させる。なお、緩衝液51中に分散している微粒子50は洗浄により除去される。
【0045】
オペレータは、ステップS35にて、試料分析用ディスク100とカートリッジ200とを分離する。図2Bに示すように、試料分析用ディスク100には、複数のウェル10に対応して複数の反応領域60が形成される。
【0046】
図9Bに示すように、反応領域60には、微粒子50が検出対象物質40と結合した状態で、試料分析用ディスク100の表面に形成されたトラック領域105に捕捉されている。即ち、検出対象物質40は、抗体20と微粒子50とによってトラック領域105にサンドイッチ捕捉されている。
【0047】
オペレータは、ステップS36にて、反応領域60に捕捉されている微粒子50を検出し、カウントする。これにより、反応領域60に捕捉されている検出対象物質40を間接的に検出し、カウントすることができる。
【0048】
本実施形態の分析ユニット及び分析方法では、検出対象物質40と抗原抗体反応により特異的に結合する抗体20が固定されている試料分析用ディスク100に、検出対象物質40と特異的に結合しない抗体30が固定されているカートリッジ200を取り付け、分析ユニット1を作製する。
【0049】
検出対象物質40はカートリッジ200に固定されている抗体30とは特異的に結合しないため、抗体20が試料分析用ディスク100、及び、カートリッジ200に固定されている場合と比較して、検出対象物質40が試料分析用ディスク100に捕捉される確率を増加させることができる。
【0050】
本実施形態の分析ユニット及び分析方法では、検出対象物質40が試料分析用ディスク100に固定されている抗体20と抗原抗体反応により特異的に結合する。それに対して、夾雑物42は、試料分析用ディスク100に固定されている抗体20、及び、カートリッジ200に固定されている抗体30に、抗原抗体反応しない状態で非特異的に吸着する。そのため、夾雑物42が試料分析用ディスク100に固定されている抗体20に非特異的に吸着する確率を低減することができる。
【0051】
本実施形態の分析ユニット及び分析方法では、さらに、分析ユニット1のウェル10の底面11、及び、内周面12にブロッキング層13が形成される。ブロッキング層13は、検出対象物質40、夾雑物42、及び、微粒子50がウェル10の底面11及び内周面12に非特異的に吸着することを防止する。ウェル10の底面11を構成する試料分析用ディスク100に非特異的に吸着した夾雑物42は、試料分析用ディスク100に捕捉されている微粒子50(検出対象物質40)を検出するときのノイズ成分となる。従って、ブロッキング層13によりノイズ成分を低減することができる。
【0052】
従って、本実施形態の分析ユニット及び分析方法によれば、検出対象物質40が試料分析用ディスク100に捕捉される確率を増加させることにより、検出対象物質40の検出精度を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の分析ユニット及び分析方法によれば、夾雑物42が試料分析用ディスク100に固定されている抗体20に非特異的に吸着する確率を低減させることにより、ノイズ成分を低減することができる。ブロッキング層13により、ノイズ成分をさらに低減することができる。
【0054】
よって、本実施形態の分析ユニット及び分析方法によれば、ノイズ成分を低減し、かつ、検出対象物質40の検出精度を向上させることにより、検出対象物質40を検出するための検出下限LOD(Limit Of Detection)、及び、S/N比を向上させることができる。これにより、検出対象物質40の検出感度を向上させることができるため、生体試料液41に含まれる検出対象物質40が微量であっても、検出対象物質40を精度よく分析することができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 分析ユニット
10 ウェル
11 底面(第1の面)
12 内周面(第2の面)
20 抗体(第1の生体分子)
30 抗体(第2の生体分子)
40 検出対象物質
50 微粒子
100 試料分析用ディスク
200 カートリッジ
201 貫通孔
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B