(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】γ線検出装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/167 20060101AFI20220526BHJP
G01T 1/36 20060101ALI20220526BHJP
G01T 1/17 20060101ALI20220526BHJP
G21C 17/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
G01T1/167 C
G01T1/36 A
G01T1/17 H
G21C17/00
(21)【出願番号】P 2018160310
(22)【出願日】2018-08-29
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107467
【氏名又は名称】員見 正文
(72)【発明者】
【氏名】谷口 達郎
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/041836(WO,A1)
【文献】特開2008-249337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00
G21C 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較測定法による放射能定量評価を行うためのγ線スペクトロメトリ用のγ線検出装置(10)であって、
測定核種から放射されるγ線スペクトルを検出するためのγ線検出部(11)と、
前記γ線検出部によって検出された前記γ線スペクトルに基づいて波高分布スペクトルを求めるための波高分析部(13)と、
前記波高分析部で求められた前記波高分布スペクトルに基づいて放射能定量評価を行うための放射能定量評価部(14)とを具備し、
前記放射能定量評価部が、前記γ線検出部によって検出された前記γ線スペクトルが単一のカスケード核種のみのγ線スペクトルを示すと、前記比較測定法による放射能定量評価と共にサムピーク法による放射能定量評価を実施し、前記比較測定法による放射能定量評価結果と前記サムピーク法による放射能定量評価結果との間に有意な差が確認されると、前記γ線検出部の検出効率が劇的に低下したおそれがあると判定する、
ことを特徴とする、γ線検出装置。
【請求項2】
前記放射能定量評価部がγ線核種分析ソフトウェアに従って動作し、
前記γ線核種分析ソフトウェアが、
前記測定核種が単一のカスケード核種のみであるか否かを判定する第1の機能と、
前記測定核種が単一のカスケード核種のみであると判定すると、前記比較測定法による放射能定量評価および前記サムピーク法による放射能定量評価の両方を実施する第2の機能と、
前記比較測定法による放射能定量評価結果と前記サムピーク法による放射能定量評価結果との間に有意な差が確認されると、前記γ線検出部の検出効率が劇的に低下したおそれがあると判定する第3の機能とを備える、
ことを特徴とする、請求項1記載のγ線検出装置。
【請求項3】
前記有意な差が、前記γ線検出装置の統計的な誤差よりも大きい差であることを特徴とする、請求項1または2記載のγ線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所等での放射能定量評価に使用するのに好適なγ線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射能定量評価(測定核種の同定および定量)は、一般的に、NaIシンチレーション検出器やGe半導体検出器等のγ線スペクトロメトリ用のγ線検出装置を用いて実施されている。
【0003】
このようなγ線検出装置は、
図2に示すγ線検出装置110のように、測定核種から放射されるγ線スペクトルを検出するためのγ線検出部111と、γ線検出部111の出力信号を増幅するための増幅部112と、増幅部112の出力信号に基づいて波高分布スペクトルを求めるための波高分析部113と、波高分析部113で求められた波高分布スペクトルに基づいてγ線核種分析ソフトウェアによって放射能定量評価を行うための放射能定量評価部114と、放射能定量評価部114による放射能定量評価結果等を表示するための表示部115とを具備する。
【0004】
ここで、γ線核種分析ソフトウェアとしては、一般的に、γ線検出部111の検出効率とγ線検出部111で検出されたγ線スペクトルの全吸収ピークの計数値(波高分析部113で求められた波高分布スペクトルに基づいて算出される。)とを用いて放射能定量評価を行う比較測定法によるものが用いられている。
【0005】
そのため、γ線検出部111の検出効率が低下したまま放射能定量評価を行うと放射能の過小評価に繋がる可能性があるので、定期的に標準線源を用いて検出効率の校正を行う必要がある。
【0006】
なお、下記の特許文献1には、時刻情報を用いて2つの光子の計数率と2つの光子の同時計数率とを求めて決定した放射線源の放射能絶対値に基づいて、放射線検出器集合体を備えた放射線測定装置を校正するようにした、放射線測定装置の校正方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、γ線検出部111の異常等により検出効率が劇的に(大きく)低下しても、その後の検出効率の校正を行うまでγ線検出部111の異常等が明らかにならず、結果として誤った放射能定量評価となるという問題があった。
また、標準線源を用いた検出効率の校正作業には標準線源の放射能計算等の専門知識を必要とするという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、γ線検出部の検出効率の劇的な低下を簡易的に検知することができるγ線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のγ線検出装置は、比較測定法による放射能定量評価を行うためのγ線スペクトロメトリ用のγ線検出装置(10)であって、測定核種から放射されるγ線スペクトルを検出するためのγ線検出部(11)と、前記γ線検出部によって検出された前記γ線スペクトルに基づいて波高分布スペクトルを求めるための波高分析部(13)と、前記波高分析部で求められた前記波高分布スペクトルに基づいて放射能定量評価を行うための放射能定量評価部(14)とを具備し、前記放射能定量評価部が、前記γ線検出部によって検出された前記γ線スペクトルが単一のカスケード核種のみのγ線スペクトルを示すと、前記比較測定法による放射能定量評価と共にサムピーク法による放射能定量評価を実施し、前記比較測定法による放射能定量評価結果と前記サムピーク法による放射能定量評価結果との間に有意な差が確認されると、前記γ線検出部の検出効率が劇的に低下したおそれがあると判定することを特徴とする。
ここで、前記放射能定量評価部がγ線核種分析ソフトウェアに従って動作し、前記γ線核種分析ソフトウェアが、前記測定核種が単一のカスケード核種のみであるか否かを判定する第1の機能と、前記測定核種が単一のカスケード核種のみであると判定すると、前記比較測定法による放射能定量評価および前記サムピーク法による放射能定量評価の両方を実施する第2の機能と、前記比較測定法による放射能定量評価結果と前記サムピーク法による放射能定量評価結果との間に有意な差が確認されると、前記γ線検出部の検出効率が劇的に低下したおそれがあると判定する第3の機能とを備えてもよい。
前記有意な差が、前記γ線検出装置の統計的な誤差よりも大きい差であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のγ線検出装置は、単一のカスケード核種のみが検出された場合にのみサムピーク法による放射能定量評価も行って、比較測定法による放射能定量評価結果とサムピーク法による放射能定量評価結果との間に有意な差があるか否かを判定することにより、γ線検出部の検出効率の劇的な低下を簡易的に検知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施例によるγ線検出装置10について説明するための図であり、(a)はγ線検出装置10の構成を示すブロック図であり、(b)は放射能定量評価部14の動作について説明するためのフローチャートである。
【
図2】従来のγ線検出装置110の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の目的を、単一のカスケード核種のみが検出されると比較測定法による放射能定量評価結果とサムピーク法による放射能定量評価結果とを比較して両者に有意な差があるか否かを判定することにより実現した。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明のγ線検出装置の実施例について図面を参照して説明する。
本発明のγ線検出装置は、測定核種が単一のカスケード核種(60Co、46Scおよび24Na等のカスケード壊変する核種)であった場合にはγ線検出部の検出効率を用いずに放射能定量評価が行えるサムピーク法が適用できることと、原子力発電所では放射能測定サンプル内に含まれる検出可能なγ核種が60Coのみの場合があることに着目して、γ線核種分析ソフトウェアに以下の3つの機能を追加することにより、γ線検出部の検出効率の劇的な低下を簡易的に検知できるようにしたことを特徴とする。
(1)単一カスケード核種判定機能
測定核種が単一のカスケード核種のみであるか否かを判定する機能
(2)比較測定法およびサムピーク法による放射能定量評価機能
測定核種が単一のカスケード核種のみであると判定すると、比較測定法による放射能定量評価およびサムピーク法による放射能定量評価の両方を実施する機能
(3)検出効率劇的低下判定機能
比較測定法およびサムピーク法による放射能定量評価結果を比較し、両者の放射能定量評価結果に有意な差が確認されると、γ線検出部の検出効率が劇的に低下したおそれがあると判定する機能
【0015】
そのため、本発明の一実施例によるγ線検出装置10は、
図1(a)に示すように、測定核種から放射されるγ線スペクトルを検出するためのγ線検出部11と、γ線検出部11の出力信号を増幅するための増幅部12と、増幅部12の出力信号に基づいて波高分布スペクトルを求めるための波高分析部13と、波高分析部13で求められた波高分布スペクトルに基づいてγ線核種分析ソフトウェアによって放射能定量評価を行うための放射能定量評価部14と、放射能定量評価部14による放射能定量評価結果等を表示するための表示部15とを具備する点では、
図2に示した従来のγ線検出装置110と同様である。
しかし、本実施例によるγ線検出装置10は、放射能定量評価部14のγ線核種分析ソフトウェアが単一カスケード核種判定機能と比較測定法およびサムピーク法による放射能定量評価機能と検出効率劇的低下判定機能とを備える点で、
図2に示した従来のγ線検出装置110と相違する。
【0016】
次に、放射能定量評価部14の動作について、
図1(b)に示すフローチャートを参照して説明する。
放射能定量評価部14は、波高分析部13で求められた波高分布スペクトルに基づいて、γ線検出部11によって検出された測定核種が単一のカスケード核種のみであるか否かを判定する(ステップS11)。
【0017】
このとき、放射能定量評価部14は、γ線検出部11で検出された測定核種のγ線スペクトルを内蔵メモリに格納されている各測定核種のγ線スペクトルデータと照合して、γ線検出部11で検出された測定核種のγ線スペクトルが単一のカスケード核種のみのγ線スペクトルを示すと、測定核種が単一のカスケード核種のみであると判定する。
【0018】
例えば、測定核種が60Coのみであった場合には、60Coは崩壊により1.17MeVおよび1.33MeVのγ線を放出するため、放射能定量評価部14は、γ線検出部11で検出された測定核種のγ線スペクトルが1.17MeVおよび1.33MeVの2本のγ線のみを示す場合には、内蔵メモリに格納されている60Coのγ線スペクトルデータ(1.17MeVおよび1.33MeV)を参照して、測定核種が60Co(単一のカスケード核種のみ)であると判定する。
【0019】
ステップS11においてγ線検出部11によって検出された測定核種が単一のカスケード核種のみでないと判定すると、放射能定量評価部14は、比較評価法による放射能定量評価のみを実施する(ステップS12)。
【0020】
ステップS11においてγ線検出部11によって検出された測定核種が単一のカスケード核種のみであったと判定すると、放射能定量評価部14は、比較測定法による放射能定量評価およびサムピーク法による放射能定量評価の両方を実施する(ステップS13)。
【0021】
その後、放射能定量評価部14は、比較測定法による放射能定量評価結果とサムピーク法による放射能定量評価結果とを比較する(ステップS14)。
【0022】
その結果、両者の放射能定量評価結果に有意な差がなければ、放射能定量評価部14は、γ線検出部11の検出効率に劇的な低下はないと判定するとともに、比較測定法による放射能定量評価結果を表示部15に出力する。
【0023】
一方、両者の放射能定量評価結果に有意な差(例えば、γ線検出装置10の統計的な誤差よりも大きい差等)があると、γ線検出部11の検出効率が劇的に低下したおそれがあると判定し、両者の放射能定量評価結果と共に、「γ線検出部11の検出効率が劇的に低下したおそれがある」旨を示す警告を表示部15に出力する(ステップS15)。
これにより、「γ線検出部11の検出効率が劇的に低下したおそれがある」旨を示す警告を表示装置(不図示)に表示させて運転員等に知らせることができる。
【符号の説明】
【0024】
10,110 γ線検出装置
11,111 γ線検出部
12,112 増幅部
13,113 波高分析部
14,114 放射能定量評価部
15,115 表示部
S11~S15 ステップ