(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】舗装材敷設機
(51)【国際特許分類】
E01C 19/52 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
E01C19/52
(21)【出願番号】P 2018041731
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】518080237
【氏名又は名称】株式会社ダイセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】古市 一郎
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00417650(EP,A1)
【文献】英国特許出願公開第02287012(GB,A)
【文献】欧州特許出願公開第00320781(EP,A1)
【文献】特開昭55-089509(JP,A)
【文献】特開2000-335873(JP,A)
【文献】米国特許第04714393(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/00-19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装材を運搬し設置する舗装材敷設機であって、
一対の車輪を有する台座と、
前記台座に略鉛直方向に接続された支柱部と、
前記支柱部に接続され
、他端にハンドルが設けられたハンドル部と、
前記支柱部の前記ハンドル部の反対側に配置され、前記支柱部に沿って上下動するクランプ吊部と、
前記クランプ吊部の接続部で前記クランプ吊部に吊下げられ、4節クロスリンク機構の端部で舗装材を挟持または解放するクランプ部と、
前記クランプ吊部を前記支柱部に沿って上下動させるウインチ機構と、
前記ハンドル部に設けられ、前記ウインチ機構を動作させるウインチ操作部と、
を備え、
前記ハンドル部の前記支柱部から前記ハンドルまでの長さは、前記支柱部から前記クランプ吊部の接続部までの長さより長く、前記ハンドルに鉛直下向きの力を加えたときに、前記車輪を支点とする梃子の原理により、前記クランプ吊部が鉛直上向きに引き上げられ、
前記クランプ部は、前記クランプ吊部によって吊り上げられ、上端部のジョイントが対向するジョイントと離れるように4節クロスリンク機構が動作したときに、前記端部が舗装材を挟持する一方、前記上端部のジョイントが対向するジョイントと近接するように4節クロスリンク機構が動作したときに、前記端部が舗装材を解放することを特徴とする舗装材敷設機。
【請求項2】
前記接続部は、前記クランプ部を前記クランプ吊部に回転可能に接続するユニバーサル部
であることを特徴とする請求項1記載の舗装材敷設機。
【請求項3】
前記クランプ部は、舗装材に対する挟持巾が可変であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の舗装材敷設機。
【請求項4】
前記台座は、前記車輪を固定するブレーキを備え、
前記ハンドル部は、前記ブレーキを動作させるブレーキ操作部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の舗装材敷設機。
【請求項5】
前記台座に、バランスを調整するためのウェイトを固定するウェイト固定部をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の舗装材敷設機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装材を運搬、設置、施工する舗装材敷設機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車道、歩道、駐車場、公園などの舗装において、インターロッキングブロック、コンクリート平板などの舗装用ブロックが使用されることが増えている。舗装用ブロックは、景観性、意匠性、遮熱性、保水性、排水性、透水性、緑化などの目的に合わせて、様々な機能、形状、大きさのものが使用される。
【0003】
舗装用ブロックの施工の際、景観性や意匠性などの観点から大型の舗装用ブロックが使用されることも増えているが、大型の舗装用ブロックは一人の人力のみで運ぶことが困難である重量を有するものもあり、人力による運搬、設置、施工には、多くの人手が必要であった。また、車両や重機による運搬をする場合も、それらが進入可能な場所には限度があるため、最後は小回りのきく小型の機材や人力による必要があった。
【0004】
特許文献1には、舗装ブロックを路面に敷設するための据付装置1において、走行台車10と、舗装ブロックを吸着する吸着装置30とを備えており、走行台車10は、把持部15を備えたフレーム体11と、当該フレーム体11の下端部に設けられた車輪12とを備えて構成され、吸着装置30は、走行台車10の下端部から張り出して取り付けられ舗装ブロックの表面に吸着する吸着部31を備えていることを特徴とし、吸着部31は、舗装ブロックの表面に対向して開口する空気室を備えた板状を呈しており、空気室は、内部の空気が吸引されて負圧となることで舗装ブロックを吸引するように構成される据付装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】柳沼 宏始/加形 護 著、大版ブロック舗装を大型車両走行箇所に適用するための設計,施工上の提案、「舗装 2017年7月号」、建設図書、P.12 写真-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の据付装置は、運搬者の他に吸着装置および吸引機を操作する者が必要であり、舗装用ブロックの運搬、設置に常に二人の人員が必要である。また、舗装用ブロックの引き上げは、梃子の原理を用いているのみであるため、舗装用ブロックの重量によっては、運搬者が一人では対応できない場合がある。
【0008】
また、非特許文献1記載の手動式小型敷設機は、舗装材を降ろす時のブレーキ機能は備えていたものの、舗装材をキャッチしたまま再度上げることはできず、また、舗装材のキャッチ時もリリース時も第三者がクランプ部で作業しなければならず、作業効率はよくなかった。また、特許文献1記載の技術と同様に、舗装用ブロックの重量によっては、運搬者が一人では対応できない場合がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、舗装材を容易に運搬、設置することができる舗装材敷設機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の舗装材敷設機は、舗装材を運搬し設置する舗装材敷設機であって、一対の車輪を有する台座と、前記台座に略鉛直方向に接続された支柱部と、前記支柱部に接続されたハンドル部と、前記支柱部の前記ハンドル部の反対側に配置され、前記支柱部に沿って上下動するクランプ吊部と、前記クランプ吊部に吊下げられ、4節クロスリンク機構の端部で舗装材を挟持または解放するクランプ部と、前記クランプ吊部を前記支柱部に沿って上下動させるウインチ機構と、前記ハンドル部に設けられ、前記ウインチ機構を動作させるウインチ操作部と、を備え、前記クランプ部は、前記クランプ吊部によって吊り上げられ、上端部のジョイントが対向するジョイントと離れるように4節クロスリンク機構が動作したときに、前記端部が舗装材を挟持する一方、前記上端部のジョイントが対向するジョイントと近接するように4節クロスリンク機構が動作したときに、前記端部が舗装材を解放することを特徴としている。
【0011】
これにより、運搬者がハンドル部の手元でウインチ機構を操作して吊荷をキャッチしたまま揚げ降しが可能となり、吊荷のキャッチ、リリースが可能となるので、一人でも容易に舗装材を運搬、設置することができる。
【0012】
(2)また、本発明の舗装材敷設機は、前記クランプ部を前記クランプ吊部に回転可能に接続するユニバーサル部をさらに備えることを特徴としている。これにより、吊荷を360度回転し、任意の角度で固定でき、運搬、施工、設置の微調整が可能となる。
【0013】
(3)また、本発明の舗装材敷設機において、前記クランプ部は、舗装材に対する挟持巾が可変であることを特徴としている。これにより、1種類のクランプで複数種類の吊荷の巾に対応でき、異なる巾の吊荷を扱うときでもクランプ部を交換する手間が省ける。
【0014】
(4)また、本発明の舗装材敷設機において、前記台座は、前記車輪を固定するブレーキを備え、前記ハンドル部は、前記ブレーキを動作させるブレーキ操作部をさらに備えることを特徴としている。これにより、運搬者がハンドル部の手元でブレーキ操作が可能となり、上り、下り面での固定位置での安定した施工が可能となる。
【0015】
(5)また、本発明の舗装材敷設機は、前記台座に、バランスを調整するためのウェイトを固定するウェイト固定部をさらに備えることを特徴としている。これにより、吊荷の重量に応じてウェイト調整ができ、運搬、施工が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、運搬者の手元の操作で、吊荷をキャッチしたまま揚げ降しが可能となり、吊荷のキャッチ、リリースが可能となるので、一人でも容易に舗装材を運搬、設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】舗装材敷設機の吊荷を吊上げた状態の側面図である。
【
図4】挟持巾を変更したクランプ部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、舗装材敷設機のクランプ部を4節クロスリンク機構とし、クランプ部を上下動させるウインチ機構を設け、その操作部を運搬者の手元に設けることで、運搬者の操作による吊荷をキャッチしたままの揚げ降しが可能となり、吊荷のキャッチ、リリースが可能となるため、容易に舗装材を運搬し設置できることを見出し、本発明に至った。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る舗装材敷設機の側面図であり、
図2は、平面図である。なお、
図2は、吊荷(舗装用ブロック、舗装材)Wを挟持しウェイト17a(後述)を乗せていない状態の平面図である。舗装材敷設機1は、台座3、車輪5、支柱部7、ハンドル部9、クランプ吊部11、クランプ部13、ウインチ機構15およびウインチ操作部15aによって、基本的な構成がされている。
【0020】
台座3は、板状に形成され、一対の車輪5を有すると共に支柱部7が略鉛直方向に接続されている。支柱部7は、車輪5の車軸を含む位置に設けられることが好ましい。台座3は、ウェイト固定部17を備えていてもよい。ウェイト固定部17は、吊荷の重量に応じてウェイト17aを乗せて固定することができる。ウェイト固定部17を備えることで、吊荷の重量に応じてウェイト調整ができ、運搬、施工が容易になる。
【0021】
支柱部7には、ハンドル部9が接続される。ハンドル部9の支柱部7との接続部の他端にはハンドル9aが設けられ、運搬者はハンドル9aを持って舗装材敷設機1を操作する。ハンドル部9の水平方向の長さは、クランプ吊部11の水平方向の長さより長い。これにより、クランプ吊部11に吊下げられたクランプ部13に舗装材を挟持させてハンドル9aに鉛直下向きの力を加えたときに、車輪5を支点とする梃子の原理により、容易にクランプ吊部11側を鉛直上向きに引き上げることができ、舗装材を運搬できる。また、吊荷の重量に応じたウェイト17aを乗せている場合は、さらに容易に運搬できる。なお、舗装材敷設機1にウェイト17aを乗せる構成とする場合、ハンドル部9の水平方向の長さを短くしコンパクトな設計にすることもできる。
【0022】
支柱部7のハンドル部9が接続された側の反対側には、クランプ吊部11が配置される。クランプ吊部11は、ウインチ機構15により、支柱部7に沿って上下動が可能となっている。本実施形態では、支柱部7は、支柱7aと補助支柱7bにより構成され、ハンドル部9は支柱7aに接続され、クランプ吊部11は補助支柱7bに沿って上下動する構成としているが、支柱7aと補助支柱7bとが一体となっていてもよい。
【0023】
クランプ吊部11には、クランプ部13が吊下げられる。クランプ部13は、4節クロスリンク機構によって構成される。クランプ部13の動作は後述する。
図1に示すように、クランプ吊部11とクランプ部13との接続部は、クランプ部13をクランプ吊部11に回転可能に接続するユニバーサル部19となっていてもよい。接続部がユニバーサル部19となっていることで、吊荷を360度回転し、任意の角度で固定でき、運搬、設置、施工の微調整が可能となる。また、クランプ吊部11とクランプ部13との接続位置を変更可能とし、クランプ部13の下端からクランプ吊部11までの高さを変更可能としてもよい。また、クランプ部13が着脱可能となっていてもよい。
【0024】
クランプ部13は、一対の爪13aおよび13bを有する。クランプ部13は、クランプ吊部11によって吊り上げられ、上端部のジョイント13cが対向するジョイント13dと離れるように4節クロスリンク機構が動作したときに、端部に形成された爪13aおよび13bが舗装材を挟持する一方、上端部のジョイント13cが対向するジョイント13dと近接するように4節クロスリンク機構が動作したときに、端部に形成された爪13aおよび13bが舗装材を解放する。
図3は、舗装材敷設機の吊荷を吊上げた状態の側面図である。爪13aおよび13bの水平方向の長さは、舗装材の挟持される辺の長さの2分の1以上あることが好ましく、3分の2以上あることがさらに好ましい。これにより、舗装材の挟持される辺の一部に力が集中せず、舗装材を安定して挟持できる。
【0025】
クランプ部13は、ジョイント13dの位置を変更することにより舗装材に対する挟持巾が可変にできる構成としてもよい。これにより、1種類のクランプ部13で複数種類の吊荷の巾に対応でき、異なる巾の吊荷を扱うときでもクランプ部13を交換する手間が省ける。
図4は、挟持巾を変更したクランプ部13の模式図である。また、クランプ部13は、吊荷を挟持した状態から意図しない吊荷の落下を防ぐため、開き防止ストッパを備えてもよい。
【0026】
ウインチ機構15は、ウインチ操作部15aがハンドル部9に設けられる。ウインチ操作部15aを操作することで、クランプ吊部11に接続されたワイヤー15bが巻き取られまたは送り出され、クランプ吊部11が補助支柱7bに沿って上下動する。本実施形態では、ウインチ機構15は、人力により操作する構成としているが、電動式としてもよい。
【0027】
ウインチ機構15により、クランプ部13で吊荷を挟持したまま上下動が可能となる。また、吊荷を挟持した状態からウインチ操作部15aを操作し吊荷を着地させ、さらにワイヤー15bを緩めることで、吊荷の挟持状態を解放できる。すなわち、本実施形態では、クランプ部13を4節クロスリンク機構とし、吊荷が着地した後もクランプ吊部11およびクランプ部13を下降できる構成とすることで、ウインチ機構15が吊荷の挟持状態を解放する機能を有する。
【0028】
ウインチ操作部15aがハンドル部9に設けられているため、運搬者が手元でウインチ操作部15aを操作でき、吊荷を挟持したまま揚げ降しが可能となり、挟持された吊荷の解放が可能となるので、一人でも容易に舗装材を運搬、設置することができる。
【0029】
台座3に車輪5を固定するブレーキ21を備え、ハンドル部9にブレーキ21を操作するブレーキ操作部21aを備えてもよい。
図5は、ブレーキ21の概念図である。ブレーキ21は、ブレーキ操作部21a、ブレーキワイヤー21b、インデックスプランジャ21cおよび平歯車21dによって構成される。平歯車21dは、車輪5の軸に備えられ、通常は、インデックスプランジャ21cのピン21eが、平歯車21dの歯溝に篏合することで、車輪5をロックする。ブレーキ操作部21aを操作すると、ブレーキワイヤー21bが引かれ、インデックスプランジャ21cのピン21eが退避し、車輪5のロックが解除され回転可能となる。このように、通常時は常にブレーキがかかっている状態であるため、坂道等であっても舗装材敷設機1の停止状態を維持できる。
【0030】
ハンドル部9に、舗装材敷設機1を自立させるスタンド部23を設けてもよい。スタンド部23があることで、運搬者がハンドル部9等から手を放しても、舗装材敷設機1を自立させることができる。スタンド部23は、高さを変えられる構成であることが好ましい。
【0031】
なお、上記の実施形態は一例であり、本発明は、これに限定されるわけではない。
【0032】
以上説明したように、舗装材敷設機によれば、運搬者の手元の操作で、吊荷をキャッチしたまま揚げ降しが可能となり、吊荷のキャッチ、リリースが可能となるので、一人でも容易に舗装材を運搬、設置することが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
1 舗装材敷設機
3 台座
5 車輪
7 支柱部
7a 支柱
7b 補助支柱
9 ハンドル部
9a ハンドル
11 クランプ吊部
13 クランプ部
13a、13b 爪
13c、13d ジョイント
15 ウインチ機構
15a ウインチ操作部
15b ワイヤー
17 ウェイト固定部
17a ウェイト
19 ユニバーサル部
21 ブレーキ
21a ブレーキ操作部
21b ブレーキワイヤー
21c インデックスプランジャ
21d 平歯車
21e ピン
23 スタンド部
W 舗装材