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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】筒型リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018079339
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019187209
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391002487
【氏名又は名称】学校法人大同学園
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】加納 善明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
(72)【発明者】
【氏名】袴田 眞一郎
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-171638(JP,A)
【文献】特開平10-042496(JP,A)
【文献】特開2003-032994(JP,A)
【文献】特開2011-199936(JP,A)
【文献】特開2012-005230(JP,A)
【文献】特開2017-041947(JP,A)
【文献】特開2015-173577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のヨークと環状であって前記ヨークの外周に軸方向に間隔を空けて設けられ複数のティースとを有して軸方向に並べて配置される複数のコアと、前記各コアのティース間のスロットに装着される巻線とを有する電機子と、
筒状であって、前記電機子が内方に軸方向に移動自在に挿入されて、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁とを備え、
前記各コアに対して両端に配置された各ティースを末端ティースとし、前記末端ティース以外のティースを中間ティースとし、前記末端ティースの外周端の幅をWとし、前記中間ティースの外周端の幅をyとし、xを正の値とし、前記末端ティースの外周端の幅WをW=y/2+xとし、隣り合うコア同の間隔をKとし、前記間隔Kをxの値に基づいて設定する
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【請求項2】
前記コアの数が2であり、
前記間隔KをK=z-2xとするとき、前記界磁の磁極ピッチをPとし、nを0以上の整数とすると、前記値zは、前記値xに基づいて(1+2n)P/2或いは(1+2n)P/4のいずれかに設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項3】
前記コアの数が3であり、
前記間隔KをK=z-2xとするとき、前記界磁の磁極ピッチをPとし、nを0以上の整数とすると、前記値zは、前記値xに基づいて(1+3n)P/3或いは(1+3n)P/6のいずれかに設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項4】
前記値xは、前記界磁に対する前記コアの軸方向移動に対するコギング推力の波形が正弦波となるように設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項5】
前記値xは、前記コアのスロットピッチの長さをSとすると、0.01y≦x≦Sを満たす
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。
【請求項6】
前記コアは、コア本体と、前記コア本体の両端のそれぞれに着脱可能に装着されて前記末端ティースの一部として機能する幅が値xの環状プレートとを有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。
【請求項7】
前記中間ティースは、内周端の幅より外周端の幅が狭い等脚台形状とされ、
前記末端ティースは、前記中間ティース側の側面が前記中間ティースの側面と同形状とされるとともに反中間ティース側の側面が前記コアの軸線に直交する面を持つ台形状とされている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは、たとえば、直線方向に伸びるベースと、ベースに対して前記直線方向にS極とN極とが交互に並ぶように取付けられた複数の永久磁石とでなる固定子と、前記固定子に対して前記直線方向に移動可能に設けられた電機子とを備える。
【0003】
電機子は、複数のティースを備えて磁極ピッチの5m倍(mは1以上の整数)の長さに設定された複数の電機子ブロックと、各電機子ブロックにおけるティース間のスロットに装着されるU相、V相およびW相の巻線を有している。そして、電機子における巻線に通電すると、電機子は、固定子に対して前記直線方向に沿って駆動される。
【0004】
また、隣り合う電機子ブロックの間には、磁極ピッチの二分の一の間隔の空隙が設けられている。各電機子ブロックにおける端効果によるコギング推力は、正弦波状となっており、電機子ブロック間に前述の幅の空隙を設けると各電機子ブロックのコギング推力が互いに相殺しあい、全体としてコギング推力をキャンセルできる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-171638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の筒型リニアモータでは、前述のように電機子ブロックの長さを磁極ピッチの5m倍に設定すると、電機子ブロックの端効果によるコギング推力が正弦波となるとしている。
【0007】
このように電機子の磁極に対する軸方向の長さ条件が決められてしまうと、電機子の設計自由度に乏しく、筒型リニアモータの仕様によっては電機子長さを前述のように設定するのは困難な場合もある。
【0008】
そこで、本発明は、設計自由度を向上しつつもコギング推力を低減可能な筒型リニアモータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、筒状のヨークと環状であってヨークの外周に軸方向に間隔を空けて設けられ複数のティースとを有して軸方向に並べて配置される複数のコアと、各コアのティース間のスロットに装着される巻線とを有する電機子と、筒状であって電機子が内方に軸方向に移動自在に挿入されて軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁とを備え、各コアに対して両端に配置された各ティースを末端ティースとし、末端ティース以外のティースを中間ティースとし、末端ティースの外周端の幅をWとし、中間ティースの外周端の幅をyとし、xを正の値とし、末端ティースの外周端の幅WをW=y/2+xとし、隣り合うコア同の間隔Kとし、間隔Kがxの値に基づいて設定されている。
【0010】
このように構成された筒型リニアモータでは、末端ティースの外周端の幅Wをコギング推力を低減できる幅に設定して、電機子Aの全体のコギング推力の低減を図るので、コアの軸方向長さが磁極ピッチPの整数倍に固定化されない。
【0011】
また、コアの数が2であり、間隔KをK=z-2xとするとき、界磁の磁極ピッチをPとし、nを0以上の整数とすると、値zは、値xに基づいて(1+2n)P/2或いは(1+2n)P/4のいずれかに設定されるとよい。
【0012】
さらに、コアの数が3であり、間隔KをK=z-2xとするとき、界磁の磁極ピッチをPとし、nを0以上の整数とすると、値zは、値xに基づいて(1+3n)P/3或いは(1+3n)P/6のいずれかに設定されるとよい。
【0013】
また、値xが界磁に対するコアの軸方向移動に対するコギング推力の波形が正弦波となるように設定されると、コアのコギング推力を互いに効率よく打ち消しあえるので、筒型リニアモータのコギング推力を極小さくできる。
【0014】
また、コアのスロットピッチの長さをSとすると、0.01y≦x≦Sを満たすように値xが設定される場合には、コアの無用な質量増加を招かずにコギング推力の低減を図れる。そして、コアの無用な質量増加を招かないから、筒型リニアモータの質量推力密度が向上する。
【0015】
さらに、コアが、コア本体と、コア本体の両端のそれぞれに着脱可能に装着されて末端ティースの一部として機能する環状プレートとで構成されてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、コア或いは末端ティースの寸法公差等によって、コギング推力の低減効果が少ない場合、環状プレートの装着によってコギング推力の低減効果を向上できる。
【0016】
さらに、中間ティースが内周端の幅より外周端の幅が狭い等脚台形状とされており、末端ティースが中間ティース側の側面が中間ティースの側面と同形状とされるとともに反中間ティース側の側面がコアの軸線に直交する面を持つ台形状とされてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、末端ティースと中間ティースの内周端における磁路断面積が広くなり、大きな磁路断面積を確保しやすくなり、巻線を通電した際の磁気飽和を抑制でき、大きな推力を発生できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の筒型リニアモータによれば、設計自由度を向上しつつもコギング推力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。
図2】一実施の形態の筒型リニアモータのティース部分の縦断面図である。
図3】コアの単独のコギング推力の波形を示した図である。
図4】コアの単独のコギング推力の波形を示した図である。
図5】コアの単独のコギング推力の波形を示した図である。
図6】コアの単独のコギング推力の波形を示した図である。
図7】末端ティースの幅の変化とコギング推力の変化を説明する図である。
図8】一実施の形態の第一変形例における筒型リニアモータの縦断面図である。
図9】一実施の形態の第二変形例における筒型リニアモータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータM1は、図1に示すように、筒状のヨーク3と環状であってヨーク3の外周に軸方向に間隔を空けて設けられ複数のティース41,42とを有して軸方向に並べて配置される複数のコア2A,2Bと各コア2A,2Bのティース41,42間のスロット43に装着される巻線5とを有する電機子Aと、筒状であって内方に電機子Aが軸方向へ移動自在に挿入される界磁6とを備えて構成されている。
【0020】
以下、筒型リニアモータM1の各部について詳細に説明する。コア2A,2Bは、ともに同形状とされており、円筒状のヨーク3と、環状であってヨーク3の外周に設けた複数のティース41,42とを備えて構成されてロッド11の外周に軸方向に並べて装着されており、本実施の形態では可動子とされている。つまり、筒型リニアモータM1は、電機子Aが可動子として駆動され、コア2A,2Bの軸方向を推力発生方向としている。
【0021】
各コア2A,2Bにおけるヨーク3は、図1に示すように、円筒状であって、その外周には、軸方向に間隔を空けて設けられる複数のティース41,42が設けられている。本実施の形態では、図1に示すように、ヨーク3の外周に10個のティース41,42が、軸方向に等間隔に並べて設けられており、ティース41,42間およびティース42,42間に巻線5が装着される空隙でなるスロット43が形成されている。
【0022】
また、ティース41,42は、ヨーク3の両端にそれぞれ配置されて設けられた二つの末端ティース41,41と、末端ティース41,41間に配置されて設けられた8つの中間ティース42とで構成されている。つまり、一つのコア2A(2B)に対してコア2A(2B)の移動方向となる軸方向の両端に末端ティース41,41が設けられ、末端ティース41,41間に各中間ティース42が設けられている。また、本実施の形態では、末端ティース41及び中間ティース42は、環状とされている。
【0023】
中間ティース42は、本実施の形態では、図2に示すように、軸方向において内周端の幅yiより外周端の幅yが狭い等脚台形状とされており、軸方向で両側の側面が外周端に対して等角度で傾斜するテーパ面とされている。そして、中間ティース42をコア2A,2Bの軸線Jを含む面で切断した断面において、中間ティース42の側面がコア2A,2Bの軸線Jに直交する直交面Oとでなす内角θは、6度から12度の範囲となる角度に設定されている。
【0024】
また、末端ティース41は、図2に示すように、中間ティース側の側面が中間ティース42の側面と同形状とされるとともに反中間ティース側の側面がコア2A,2Bに軸線Jに直交する面を持つ台形状とされている。つまり、末端ティース41における中間ティース側の側面はテーパ面となっており、この側面がコア2A,2Bの軸線Jに直交する直交面Oとでなす内角θが中間ティース42の側面が前記直交面Oとでなす内角θと等しくなっている。また、末端ティース41の反中間ティース側の側面は、コア2A,2Bの軸線Jに直交する面とされており、側面と外周端とでなす角度は90度になっている。
【0025】
また、本実施の形態では、各コア2A,2Bにおける図1中で隣り合うティース41,42の間、つまり、末端ティース41と中間ティース42との間および中間ティース42,42間には、空隙でなるスロット43が合計で18個設けられている。そして、全スロット43には、巻線5が巻き回されて装着されている。巻線5は、U相、V相およびW相の三相巻線とされている。各コア2A,2Bの18個のスロット43には、それぞれ、図1中左側から順に、W相、W相、W相およびV相、V相、V相、V相およびU相、U相、U相、U相およびW相、W相およびV相、V相、V相、V相およびU相、U相、U相、U相およびW相、W相、W相の巻線5が装着されている。
【0026】
そして、このように構成されたコア2A,2Bは、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の外周に装着されている。具体的には、コア2A,2Bは、ロッド11の外周に固定される環状のスライダ12,13とで挟持されてロッド11に固定されている。スライダ12,13の外周には、ウェアリング12a,13aが装着されている。また、コア2A,2B間には、ロッド11の外周に固定される非磁性体で形成されるスペーサ14が介装されており、コア2Aとコア2Bは、間隔Kを空けてロッド11に固定されている。スライダ12,13およびスペーサ14の外径は、コア2A,2Bの外径よりも大径に設定されている。そして、このように構成された電機子Aは、筒状の界磁6内に推力方向である軸方向へ移動自在に挿入される。また、本実施の形態の場合、スペーサ14によってコア2Aとコア2Bとの間に間隔Kの磁気的なギャップが設けられている。
【0027】
他方、固定子Sは、本実施の形態では、円筒状の非磁性体で形成されるアウターチューブ7と、アウターチューブ7内に挿入される円筒状の軟磁性体で形成されるバックヨーク8と、バックヨーク8内に挿入されてバックヨーク8との間に環状隙間を形成する円筒状の非磁性体のインナーチューブ9と、バックヨーク8とインナーチューブ9との間の環状隙間に軸方向に交互に積層されて挿入される環状の主磁極の永久磁石10aと環状の副磁極の永久磁石10bとを備えた界磁6とで構成されている。
【0028】
なお、図1中で主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極の永久磁石10aの着磁方向は径方向となっており、副磁極の永久磁石10bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bは、ハルバッハ配列で配置されており、界磁6の内周側では、軸方向にS極とN極が交互に現れるように配置されている。
【0029】
また、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1は、副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くなっており、本実施の形態では、0.2≦L2/L1≦0.5を満たすように、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1と副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2が設定されている。主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を長くすればコア2A,2Bとの間の主磁極の永久磁石10aとの間の磁気抵抗を小さくできコア2A,2Bへ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータM1の推力を向上できる。
【0030】
また、本発明の筒型リニアモータM1では、永久磁石10a,10bの外周にバックヨーク8を設けている。バックヨーク8を設けると副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2を短くしても磁気抵抗の低い磁路を確保できるため、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を長くする際の筒型リニアモータM1の推力を効果的に向上できる。より詳しくは、永久磁石10a,10bの外周にバックヨーク8を設けると、磁気抵抗の低い磁路を確保できるので副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2の短縮に起因する磁気抵抗の増大が抑制される。よって、主磁極の永久磁石10aの軸方向長さL1を副磁極の永久磁石10bの軸方向長さL2よりも長くするとともに永久磁石10a,10bの外周に筒状のバックヨーク8を設けると筒型リニアモータM1の推力を大きく向上させ得る。バックヨーク8の肉厚は、主磁極の永久磁石10aの外部磁気抵抗の増大を抑制に適する肉厚に設定されればよい。なお、バックヨーク8を設けると磁気抵抗の増大を抑制できるが、バックヨーク8の省略も可能である。
【0031】
なお、副磁極の永久磁石10bは、主磁極の永久磁石10aより高い保磁力を有する永久磁石とされている。永久磁石における残留磁束密度と保磁力は、互いに密接に関係しており、一般的に残留磁束密度を高めると保磁力は低くなり、保磁力を高めると残留磁束密度が低くなるという、互いに背反する関係にある。ハルバッハ配列では、副磁極の永久磁石10bには減磁方向に大きな磁界が印加されるため、副磁極の永久磁石10bの保磁力を高くして減磁を抑制し、大きな磁界をコア2A,2Bに作用させ得るようにしている。対して、コア2A,2Bに対して作用する磁界の強さは、主磁極の永久磁石10aの磁力線数に左右される。そのため、主磁極の永久磁石10aに高い残留磁束密度の永久磁石を使用して大きな磁界をコア2A,2Bに作用させるようにしている。本実施の形態では、副磁極の永久磁石10bを主磁極の永久磁石10aよりも保磁力を高くするのに際して、副磁極の永久磁石10bの材料を主磁極の永久磁石10aの材料よりも保磁力が高い材料としている。よって、材料の選定によって、主磁極の永久磁石10aと副磁極の永久磁石10bの組合せを簡単に実現できる。なお、本実施の形態では、主磁極の永久磁石10aは、ネオジム、鉄、ボロンを主成分とする残留磁束密度が高い材料で構成され、副磁極の永久磁石10bは、前記材料にジスプロシウムやテリビウム等の重希土類元素の添加量を増やした減磁しにくい磁石で構成されている。
【0032】
また、固定子Sの内周側には、電機子Aが挿入されており、界磁6は、電機子Aに磁界を作用させている。なお、界磁6は、電機子Aの可動範囲に対して磁界を作用させればよいので、電機子Aの可動範囲に応じて永久磁石10a,10bの設置範囲を決定すればよい。したがって、アウターチューブ7とインナーチューブ9との環状隙間のうち、電機子Aに対向し得ない範囲には、永久磁石10a,10bを設置しなくともよい。なお、バックヨーク8の長さは、永久磁石10a,10bを積層した長さと等しい長さとされており、永久磁石10a,10bがコア2A,2Bのストローク範囲外に磁界を作用させて推力低下を招かないように配慮されている。
【0033】
また、アウターチューブ7、バックヨーク8およびインナーチューブ9の図1中左端はキャップ15によって閉塞されており、アウターチューブ7、バックヨーク8およびインナーチューブ9の図1中右端は環状のヘッドキャップ16によって閉塞されている。ヘッドキャップ16は、内径がロッド11の外径よりも大径であって、内周にダストシール16aを備えており、内周にロッド11が挿通されている。そして、ダストシール16aは、ヘッドキャップ16の内周に移動自在に挿入されるロッド11の外周に摺接してロッド11の外周をシールしている。
【0034】
インナーチューブ9の内周には、ロッド11とロッド11の外周に装着された電機子A、スライダ12,13およびスペーサ14が軸方向へ移動可能に挿入されている。このように電機子Aが界磁6内に挿入されると各コア2A,2Bが界磁6における8つ磁極に対向するので、筒型リニアモータM1は、8極9スロットのリニアモータとされている。また、インナーチューブ9の内周面には、ウェアリング12a,13aを装着したスライダ12,13が摺接しており、スライダ12,13によって電機子Aはロッド11とともに界磁6に対して偏心せずに軸方向へスムーズに移動できる。インナーチューブ9は、電機子Aの外周と各永久磁石10a,10bの内周との間のギャップを形成するとともに、スライダ12,13と協働して電機子Aの軸方向移動を案内する役割を果たしている。このように、界磁6に対して電機子Aの偏心が防止されるので、電機子Aの偏心による推力低下も阻止され、筒型リニアモータM1は安定して推力を発生できる。なお、スペーサ14は、本実施の形態では、インナーチューブ9の内周に摺接してはいないが、ロッド11に過大な径方向の外力が作用してロッド11が撓んでもコア2A,2Bに先立ってインナーチューブ9に当接する。よって、コア2A,2Bのインナーチューブ9への干渉が阻止され、電機子Aを保護できる。なお、インナーチューブ9は、非磁性体で形成されればよいが、合成樹脂で形成されると筒型リニアモータM1の推力密度向上効果が高くなる。インナーチューブ9を非磁性体の金属で製造すると、電機子Aが軸方向へ移動する際にインナーチューブ9の内部に渦電流が生じて、電機子Aの移動を妨げる力が発生してしまう。これに対して、インナーチューブ9を合成樹脂とすれば渦電流が生じないので筒型リニアモータM1の推力をより効果的に向上できるとともに、筒型リニアモータM1の質量を低減できる。なお、インナーチューブ9を合成樹脂とする場合、フッ素樹脂で製造すればスライダ12,13のウェアリング12a,13aとの間の摩擦および摩耗を低減できる。また、インナーチューブ9を他の合成樹脂で形成してもよく、また、摩擦および摩耗を低減するべく他の合成樹脂で形成されたインナーチューブ9の内周をフッ素樹脂でコーティングしてもよい。
【0035】
なお、本実施の形態では、電機子Aの両端に設けられたスライダ12,13をインナーチューブ9に摺接させているので、電機子Aの界磁6に対する偏心の防止と電機子Aの軸方向(推力方向)の円滑な移動が保証され、筒型リニアモータM1は、安定して推力を発生できる。また、界磁6が永久磁石10a,10bの内周に設けた非磁性体のインナーチューブ9を備えているので、筒型リニアモータM1の界磁6内に電機子Aを挿入する際に電機子Aが永久磁石10a,10bに吸引されて貼り付いてしまうのを防止できる。よって、インナーチューブ9を設けると、電機子Aが永久磁石10a,10bに吸引されて貼り付いてしまって筒型リニアモータM1の組立が不能となってしまう事態が回避され、筒型リニアモータM1の組立作業も容易となる。
【0036】
本実施の形態では、スライダ12,13をインナーチューブ9に摺接させて電機子Aの界磁6に対する偏心の防止と移動を案内しているが、スペーサ14をインナーチューブ9に摺接させて、スライダ12,13と共に電機子Aの偏心と移動を案内してもよい。
【0037】
なお、キャップ15には、巻線5に接続されるケーブルCを外部の図示しない電源に接続するコネクタ15aを備えており、外部電源から巻線5へ通電できるようになっている。また、アウターチューブ7、バックヨーク8およびインナーチューブ9の軸方向長さは、電機子Aの軸方向長さよりも長く、電機子Aは、界磁6内の軸方向長さの範囲で図1中左右へストロークできる。
【0038】
そして、たとえば、巻線5の界磁6に対する電気角をセンシングし、前記電気角に基づいて通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線5の電流量を制御すれば、筒型リニアモータM1における推力と電機子Aの移動方向とを制御できる。なお、前述の制御方法は、一例でありこれに限られない。このように、本実施の形態の筒型リニアモータM1では、電機子Aが可動子であり、界磁6は固定子として振る舞う。また、電機子Aと界磁6とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線5への通電、あるいは、巻線5に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータM1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。
【0039】
ここで、図2において、末端ティース41の外周端の軸方向の幅をWとし、中間ティース42の外周端の軸方向の幅をyとし、xを正の値とすると、末端ティース41の外周端の軸方向の幅Wは、W=(y/2)+xとしている。つまり、末端ティース41の幅Wは、y/2以上とされている。中間ティース42の外周端の幅をyとしているので、末端ティース41の外周端の幅Wは、磁路断面積の観点からy/2以上の長さが必要である。そして、xを0とした場合、つまり、末端ティース41の幅Wをy/2とした場合のコア2A,2Bの軸方向長さをコア2A,2Bの基本長とすると、コア2A,2Bの基本長は、界磁6の磁極ピッチPの8倍の長さに設定されている。ここで、磁極ピッチPは、図1に示すように設定されている。
【0040】
そして、末端ティース41の外周端の幅Wを、前述の通り、W=y/2+xとして、xを変化させると、それぞれのコア2A,2Bの端効果によるコギング推力は変化する。xの値を0とすると、つまり、コア2A,2Bを基本長とすると、界磁6に対するコア2A,2Bの位置(deg)に対するコギング推力は、綺麗な正弦波とならず、図3に示すように、コア2A,2Bの位置が0度から360度(2磁極ピッチ相当)までの範囲で2周期分の乱れた単位波が現れる波形となっている。コア2A,2Bの左右の末端ティース41にて端効果が現れるので、コア2A,2Bのコギング推力は、左右の末端ティース41の端効果のコギング推力を合成したものとなる。
【0041】
そして、xの値を増加させていくと徐々にコギング推力の波形における単位波が正弦波に近づくように変化し、コギング推力の波形は或る値x1で略綺麗な正弦波形となる。この或る値x1では、図4に示すように、コア2A,2Bの位置が0度から360度までの範囲でコギング推力の波形は、正弦波が2周期分現れる波形となる。
【0042】
xの値をx1からさらに増加させていくとコギング推力の波形は乱れて正弦波とはならず、図5に示すように、コア2A,2Bの位置が0度から360度までの範囲で4周期分の乱れた単位波が現れる波形となる。そして、xの値をさらに増加させていくと徐々にコギング推力の波形は正弦波形に近づくように変化し、或る値x2で略綺麗な正弦波形となる。この或る値x2では、図6に示すように、コア2A,2Bの位置が0度から360度の範囲でコギング推力の波形は、正弦波が4周期分現れる波形となる。
【0043】
xの値をx2からさらに増加させていくとコギング推力の波形は乱れて正弦波とはならず、コア2A,2Bの位置が0度から360度までの範囲で8周期分の乱れた単位波が現れる波形となるが、やがては略綺麗な8周期分の正弦波が現れる波形となる。
【0044】
このようにxの値によって各コア2A,2Bのコギング推力の波形は変化し、コギング推力の波形が正弦波となるxの値があるが、xの値が大きくなるにつれてコア2A,2Bの位置が0度から360度までの範囲でコギング推力の波形の波の数は多くなっていく。
【0045】
そして、xの値がx1或いはx2となる場合、各コア2A,2Bのコギング推力の波形がきれいな正弦波となる。よって、コア2Aのコギング推力の正弦波形に対してコア2Bのコギング推力の正弦波形が逆位相となるように、コア2Aとコア2Bの間の間隔を調節すれば、コア2Aのコギング推力をコア2Bのコギング推力で打ち消して電機子Aの全体のコギング推力を極小さくできる。
【0046】
コギング推力の波形がコア2A,2Bの位置が0度から360度までの範囲で正弦波が二つ現れる波形の場合、コア2Aのコギング推力をコア2Bのコギング推力で打ち消すには、コア2Aに対してコア2Bを軸方向に90度或いは270度離間させればよい。一般化すれば、コア2Aに対してコア2Bを90+180n(ただし、n=0、1、2・・・)を演算して求めた度数だけ離間させればよい。コア2A,2Bの末端ティース41の幅Wのうち、長さxは電気角に影響を与えない。よって、コア2Aに対してコア2Bを軸方向に(90+180n)度離間させるには、コア2Aとコア2Bとの間の間隔の長さをKとし、K=z-2xとすると、値zが(90+180n)度分のずれを生じさせる長さに設定されればよい。90度は、磁極ピッチをPとすると、P/2に相当する長さとなり、270度は、3P/2に相当する長さとなる。よって、値zが(1+2n)P/2(ただし、n=0、1、2・・・)を満たす値となればよい。
【0047】
また、コギング推力の波形がコア2A,2Bの位置が0度から360度までの範囲で正弦波が4つ現れる波形の場合、コア2Aのコギング推力をコア2Bのコギング推力で打ち消すには、コア2Aに対してコア2Bを軸方向に45度、135度、225度或いは315度離間させればよい。一般化すれば、コア2Aに対してコア2Bを45+90n(ただし、n=0、1、2・・・)を演算して求めた度数だけ離間させればよい。コア2A,2Bの基本長が磁極ピッチPの整数倍に設定されているので、コア2Aに対してコア2Bを軸方向に(45+90n)度離間させるには、コア2Aとコア2Bとの間の間隔の長さをKとし、K=z-2xとすると、値zが(45+90n)度分のずれを生じさせる長さに設定されればよい。たとえば、45度は、磁極ピッチをPとすると、P/4に相当する長さとなり、135度は、3P/4に相当する長さとなる。よって、値zが(1+2n)P/4(ただし、n=0、1、2・・・)を満たす値となればよい。
【0048】
このように、xの値をx1或いはx2として末端ティース41の幅Wを設定し、xの値に基づいてzの値を求め、値zからコア2Aとコア2Bの間の間隔Kを設定すれば、電機子Aのコギング推力を極小さくできる。なお、電機子Aのコギング推力を低減するには、xの値をコア2A,2Bの単独コギング推力の波形を正弦波とする値に設定するほうがよいが、xの値がそのような値に設定されなくとも電機子A全体のコギング推力を低減できる。
【0049】
xの値に応じて適宜間隔Kをコギング推力を低減できるように設定するのを条件として、xの値に応じて電機子Aの全体のコギング推力がどのように変化するかを調べた結果を図7に示す。図7は、末端ティース41の外周端の幅Wをy/2とした場合の電機子A全体のコギング推力を基準として、xの値の変化に対して電機子Aの全体のコギング推力がどのように変化するかを示したグラフである。なお、図7のグラフは、xの値がx2未満である場合、値zを(1+2n)P/2(ただし、n=0、1、2・・・)とし、xの値がx2以上である場合、値zを(1+2n)P/4(ただし、n=0、1、2・・・)とした結果を表している。
【0050】
図7から理解できるように、末端ティース41の外周端の幅Wは、y/2より大きくすれば、筒型リニアモータM1のコギング推力は低下する。よって、末端ティース41の外周端の軸方向の幅Wは、W>y/2を満たすように設定すれば、筒型リニアモータM1のコギング推力を低減できる。また、図7に示すように、縦軸をコギング推力とし、xの値を横軸に採ると、コギング推力は、コア2A,2Bの単独のコギング推力の波形が正弦波となる値x1,x2で周期的に最小値を採るように推移する。
【0051】
前述したように、コア2A,2Bの末端ティース41の幅Wをy/2+xとすると、xの値によってコア2A,2Bの単独のコギング推力の波形がコア2A,2Bの位置が0度から360度の範囲で何周期分の単位波が現れるのかが分かるので、xの値に基づいて間隔Kを最適化すれば電機子Aの全体のコギング推力を低減できる。また、xの値を最適化してコア2A,2Bの単独のコギング推力の波形が正弦波とすれば、電機子Aのコギング推力を最小化できる。
【0052】
よって、末端ティース41の幅WをW=y/2とした場合のコア2A,2Bの軸方向長さである基本長を磁極ピッチPの整数倍とし、末端ティース41の幅Wをコギング推力の低減に適するよう幅に設定し、xの値に基づいてコア2A,2B間の間隔Kを適宜設定すればコギング推力を低減できる。
【0053】
本実施の形態の場合、スペーサ14によってコア2Aとコア2Bとの間に磁気的に間隔Kの隙間を設けており、スペーサ14の軸方向の幅を間隔Kに設定している。よって、xの値に基づいてzの値を求めて、K=z-2xを演算して、スペーサ14の軸方向の幅を決定すればよい。また、スペーサ14を省略する場合には、ロッド11の外周にコア2A,2Bを間隔Kだけ軸方向に離して固定するようにしてもよい。
【0054】
前述の通り、値xは、コギング推力を最小にするx1,x2に設定されれば最適となるが、たとえば、前記幅Wがy/2とされた場合のコギング推力に対してコギング推力が50%以下となる範囲内の値を得られるように設定されてもよい。このように設定しても、筒型リニアモータM1のコギング推力は、末端ティース41の幅Wをy/2に設定した際のコギング推力よりも半減するので十分なコギング推力の低減効果が得られる。なお、図7に示した例では、xの値が範囲β1内にあるか、或いは範囲β2内にある場合に前記幅Wがy/2とされた場合のコギング推力に対してコギング推力が50%(図7中破線で示したライン)以下となるので、xの値を範囲β1或いは範囲β2の値に設定してもよい。なお、コギング推力は、末端ティース41の外周端の幅Wが変化すると周期的に最小値を採るので、幅Wがy/2とされた場合のコギング推力に対してコギング推力が50%以下となる範囲内の値を得られるように設定されればよい。ただし、コア2の質量は、末端ティース41の幅が大きくなると増加するので、コギング推力を低減できるxの値の範囲はいくつも存在するが、図7に示したように、xの値がなるべく小さい値となるようにするとよい。そこで、値xが中間ティース42の外周端の幅yの1%からスロットピッチの長さの間の値を採るように設定されると、コア2の無用な質量増加を招かずにコギング推力の低減を図れる。つまり、前記末端ティース41の外周端の幅Wは、スロットピッチ長さをSとすると、y/2+0.01y≦W≦y/2+Sを満たすように設定されると、コア2の無用な質量増加を招かずにコギング推力の低減を図れる。幅Wは、磁路断面積の観点からy/2以上の長さが必要であり、最小限必要な幅であるy/2の値にスロットピッチ長さSを加えると幅Wをy/2とした場合と同じ状態となる。よって、y/2+0.01y≦W≦y/2+Sを満たすように設定されると、コア2の無用な質量増加を招かない。
【0055】
また、前述したところでは、電機子Aが二つのコア2A,2Bを備えているが、図8に示した一実施の形態の第一変形例の筒型リニアモータM2のように、電機子Aが三つのコア2A,2B,2Cを備える場合には、以下のようにすればよい。この場合、コア2A,2B間とコア2B,2C間にスペーサ14a,14bを設けて、コア2Aとコア2Bとの間と、コア2Bとコア2Cとの間に間隔Kの磁気的なギャップが設けられる。
【0056】
スペーサ14a,14bは、コア2A,2B,2Cの外径よりも大きな外径を有している。よって、スペーサ14a,14bは、スペーサ14と同様に、コア2A,2B間およびコア2B,2C間に磁気的なギャップを設ける機能を発揮する他、ロッド11が過大な外力により撓んでもインナーチューブ9とコア2A,2B,2Cの干渉を阻止する機能を発揮する。なお、スペーサ14a,14bは、インナーチューブ9の内周に常時摺接してスライダ12,13とともに電機子Aの推力方向への移動を案内してもよい。
【0057】
xの値をx1として各コア2A,2B,2Cの位置が0度から360度の範囲でコギング推力の波形を2周期分の正弦波となるようにすると、コア2A,2B,2Cを三つにする場合では、値zを60+180n(ただし、n=0、1、2・・・)度分のずれを生じさせる長さに設定すれば、コア2A,2B,2Cのコギング推力が打ち消しあって電機子Aのコギング推力を極小さくできる。つまり、値zを(1+3n)P/3(ただし、n=0、1、2・・・)を満たす値に設定すればよい。
【0058】
また、xの値をx2としてコギング推力の波形がコア2A,2B,2Cの位置が0度から360度までの範囲で正弦波が四つ現れる波形とすると、コア2A,2B,2Cを三つにする場合では、値zを30+90n(ただし、n=0、1、2・・・)度分のずれを生じさせる長さに設定すれば、コア2A,2B,2Cのコギング推力が打ち消しあって電機子Aのコギング推力を極小さくできる。つまり、値zを(1+3n)P/6(ただし、n=0、1、2・・・)を満たす値に設定すればよい。
【0059】
このように、xの値をx1或いはx2として末端ティース41の幅Wを設定し、xの値に基づいてzの値を求め、値zからコア2A、2B間とコア2B,2Cの間の間隔Kを設定すれば、電機子Aのコギング推力を極小さくできる。なお、電機子Aのコギング推力を低減するには、xの値をコア2A,2B,2Cの単独コギング推力の波形を正弦波とする値に設定するほうがよいが、xの値がそのような値に設定されなくとも電機子A全体のコギング推力を低減できる。
【0060】
前述したように、コア2A,2Bの末端ティース41の幅Wをy/2+xとすると、xの値によってコア2A,2Bの単独のコギング推力の波形がコア2A,2Bの位置が0度から360度の範囲で何周期分の単位波が現れるのかが分かるので、xの値に基づいて間隔Kを最適化すれば電機子Aの全体のコギング推力を低減できる。また、xの値を最適化してコア2A,2Bの単独のコギング推力の波形が正弦波とすれば、電機子Aのコギング推力を最小化できる。
【0061】
以上のように、本発明の筒型リニアモータM1は、筒状のヨーク3と環状であってヨーク3の外周に軸方向に間隔を空けて設けられ複数のティース41,42とを有して軸方向に並べて配置される複数のコア2A,2Bと、各コア2A,2Bのティース41,42間のスロット43に装着される巻線5とを有する電機子Aと、筒状であって電機子Aが内方に軸方向に移動自在に挿入されて軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6とを備え、各コア2A,2Bに対して両端に配置された各ティースを末端ティース41とし、末端ティース41以外のティースを中間ティース42とし、末端ティース41の外周端の幅をWとし、中間ティース42の外周端の幅をyとし、xを正の値とし、末端ティース41の外周端の幅WをW=y/2+xとし、隣り合うコア2A,2B同子の間隔をKとし、間隔Kがxの値に基づいて設定されている。
【0062】
このように構成された筒型リニアモータM1では、末端ティース41の外周端の幅Wをコギング推力を低減できる幅に設定して、電機子Aの全体のコギング推力の低減を図るので、コア2A,2Bの軸方向長さが磁極ピッチPの整数倍に固定化されない。このようにコア2A,2Bの磁極ピッチに対する軸方向の長さ条件は磁極ピッチの5倍などと固定化されないので、電機子Aの設計自由度が向上する。以上、本発明の筒型リニアモータM1によれば、設計自由度を向上しつつもコギング推力を低減できる。なお、このことは、三つのコア2A,2B,2Cを持つ筒型リニアモータM2にあっても同様であり、本発明の筒型リニアモータM2によれば、設計自由度を向上しつつもコギング推力を低減できる。
【0063】
コア2A,2Bの数が2つであって、コア2A,2Bの位置が0度から360度までの範囲でコア2A,2Bの単体のコギング推力の波形が2周期分の正弦波である場合、zを(1+2n)P/2とすると電機子Aの全体のコギング推力を極小さくできる。また、コア2A,2Bの数が2つであって、コア2A,2Bの位置が0度から360度までの範囲でコア2A,2Bの単体のコギング推力の波形が4周期分の正弦波である場合、zを(1+2n)P/4とすると電機子Aの全体のコギング推力を極小さくできる。よって、コア2A,2Bの数が2であり、間隔KをK=z-2xとするとき、界磁6の磁極ピッチをPとし、nを0以上の整数とすると、値zは、値xに基づいて(1+2n)P/2或いは(1+2n)P/4のいずれかに設定されるとよい。
【0064】
また、コア2A,2B,2Cの数が3つであって、コア2A,2B,2Cの位置が0度から360度までの範囲でコア2A,2B,2Cの単体のコギング推力の波形が2周期分の正弦波である場合、値zを(1+3n)P/3とすると電機子Aの全体のコギング推力を極小さくできる。コア2A,2B,2Cの数が3つであって、コア2A,2B,2Cの位置が0度から360度までの範囲でコア2A,2B,2Cの単体のコギング推力の波形が4周期分の正弦波である場合、値zを(1+3n)P/6とすると電機子Aの全体のコギング推力を極小さくできる。よって、コア2A,2B,2Cの数が3であり、間隔KをK=z-2xとするとき、界磁6の磁極ピッチをPとし、nを0以上の整数とすると、値zは、値xに基づいて(1+3n)P/3或いは(1+3n)P/6のいずれかに設定されるとよい。
【0065】
さらに、値xが界磁6に対するコア2A,2B,2Cの軸方向移動に対するコギング推力の波形が正弦波となるように設定されると、コア2A,2B,2Cのコギング推力を互いに効率よく打ち消しあえるので、筒型リニアモータM1,M2のコギング推力を極小さくできる。
【0066】
また、末端ティース41の外周端の幅Wがy/2+0.01y≦W≦y/2+Sを満たすように設定される、即ち、値xが0.01y≦x≦Sを満たすように設定される場合には、コア2A,2B,2Cの無用な質量増加を招かずにコギング推力の低減を図れる。そして、コア2A,2B,2Cの無用な質量増加を招かないから、筒型リニアモータM1の質量推力密度が向上する。ここで、質量推力密度とは、前述の構成の筒型リニアモータM1の最大推力を質量で割った数値であり、末端ティース41の質量が増えても推力が増加するわけではないので、末端ティース41の質量を軽量とするほうが質量推力密度が向上する。よって、このように構成された筒型リニアモータM1によれば、質量当たりの推力が大きくなるので小型で大きな推力が得られる。
【0067】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータM1にあっては、中間ティース42が内周端の幅yiより外周端の幅yが狭い等脚台形状とされており、末端ティース41が中間ティース側の側面が中間ティース42の側面と同形状とされるとともに反中間ティース側の側面がコア2の軸線Jに直交する面を持つ台形状とされている。
【0068】
このように末端ティース41の形状を前述のような台形状とすると、図2に示すように、末端ティース41の外周端の軸方向の幅Wよりも内周端の軸方向の幅Wiの方が大きい。末端ティース41の形状を前述のようにする場合と、外周端の軸方向の幅Wを同じにして末端ティース41の断面を矩形とする場合とで比較すると、末端ティース41の断面を台形状とするほうが内周端における磁路断面積は広くなる。また、中間ティース42の形状を前述のように設定すると、図2に示すように、中間ティース42の外周端の軸方向の幅yよりも内周端の軸方向の幅yiの方が大きい。中間ティース42の形状を前述のような等脚台形状とする場合と、外周端の軸方向の幅yを同じにして中間ティース42の断面を矩形とする場合とで比較すると、中間ティース42の断面を等脚台形状とするほうが内周端における磁路断面積は広くなる。よって、このように構成された筒型リニアモータM1では、大きな磁路断面積を確保しやすくなり、巻線5を通電した際の磁気飽和を抑制でき、より大きな磁場を発生できるからより大きな推力を発生できる。なお、推力の向上のためには、末端ティース41と中間ティース42の断面形状を台形とするとよいが、コギング推力の低減には影響がないので末端ティース41と中間ティース42の断面形状を矩形としてもよいし、他の形状としてもよい。
【0069】
なお、発明者らの研究によって、末端ティース41および中間ティース42の断面における側面と直交面Oとでなす内角θが6度から12度の範囲にあると、良好な質量推力密度が得られることが分かった。以上より、末端ティース41および中間ティース42の断面を台形状とする場合、前記内角θを6度から12度の範囲の角度とすると、筒型リニアモータM1の質量当たりの推力が大きくなるので小型で大きな推力が得られる。
【0070】
また、図9に示すように、コア2A,2Bが、ヨーク3と、末端ティース41および中間ティース42とが設けられるコア本体21と、コア本体21の両端のそれぞれに着脱可能に装着される環状プレート22,22とで構成されてもよい。この環状プレート22,22は、共に軸方向の幅が等しく、コア本体21と同一の材料で作られており、コア本体21の両端にそれぞれ装着されると末端ティース41の一部として機能し、末端ティース41の外周端における軸方向の幅Wを調整する機能を発揮する。つまり、環状プレート22は、コギング推力の低減の調整をも担っている。コア2A,2B或いは末端ティース41の寸法公差等によって、コア本体21のみではコギング推力の低減効果が少ない場合、環状プレート22,22の装着によって、コギング推力の低減効果を向上できる。なお、異なる幅の環状プレート22を用意しておき、コア本体21に最適な幅の環状プレート22を選択して装着してもよいし、幅が薄い環状プレートを複数枚重ねてコア本体21に装着するようにしてもよい。また、環状プレート22のコア本体21への装着に際しては、たとえば、コア本体21に螺子孔を設けるとともに環状プレート22に孔を設けて、螺子を用いてコア本体21に環状プレート22を固定してもよいし、他の固定方法を採用してもよい。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
2A,2B,2C・・・コア、3・・・ヨーク、5・・・巻線、6・・・界磁、21・・・コア本体、22・・・環状プレート、41・・・末端ティース、42・・・中間ティース、43・・・スロット、J・・・軸線、M1,M2・・・筒型リニアモータ、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9