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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】防音壁
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
E01F8/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019013062
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020122271
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000161356
【氏名又は名称】宮地エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595122187
【氏名又は名称】ブリヂストンケービージー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】永見 研二
(72)【発明者】
【氏名】久保 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】石原 彰子
(72)【発明者】
【氏名】酒田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐
(72)【発明者】
【氏名】武井 聡
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-058252(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0782161(KR,B1)
【文献】特開2005-213791(JP,A)
【文献】特開平08-049217(JP,A)
【文献】特開昭53-148813(JP,A)
【文献】特開2003-321810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0125711(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形のFRP壁材と、前記FRP壁材の表面に配置する吸音体と、からなり、
前記FRP壁材は、平板状の壁面板と、前記壁面板の表面に、前記FRP壁材を立設した際の高さ方向に亘って突設する平面視T字状のリブと、からなり、
前記吸音体は、矩形の板状体であり、
前記吸音体は、一枚の前記FRP壁材に並列する前記リブ間、又は、二枚並べた前記FRP壁材のそれぞれの前記リブ間のうち、少なくともいずれか一方に配置し、
前記リブは、前記壁面板と略平行な側部押さえ材を有し、
前記吸音体の側辺は、前記壁面板と前記側部押さえ材との間に位置することを特徴とする、防音壁。
【請求項2】
請求項1に記載の防音壁において、
前記壁面板のうち、前記リブと平行な側辺の表面から前記壁面板と平行に突設したフランジを有することを特徴とする、防音壁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防音壁において、
隣り合う前記リブの前記側部押さえ材間に亘って配設する表面押さえ材を有することを特徴とする、防音壁。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の防音壁において、
前記吸音体の上方に、上蓋を配置することを特徴とする、防音壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音性能を有する壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道や道路において、車両が走行する際に生じる騒音が外部に伝播するのを防ぐために、防音壁が設けられている。
従来の防音壁としては、重量の大きなコンクリート製の防音壁が用いられている。
しかし、コンクリートは経年劣化があり、また重量が大きく高架橋等の下部の構造体への負荷も大きい。
このため、近年は、軽量な繊維強化樹脂(FRP)製の防音壁がコンクリート製の防音壁に代わって採用されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-23919号公報
【文献】特開2013-68018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のFRP製の防音壁は、芯材を内包することにより防音性能を高めている。
しかし、芯材を内包することにより、防音壁を構成する防音パネルの重量が大きくなり、運搬や現場での設置作業が重労働となる。
【0005】
特許文献2に記載のFRP製の防音壁は、中空構造となっている。
中空構造の防音壁は軽量で運搬や現場での設置作業は容易となるが、内部空間の空気による共鳴現象により特定帯域の音響透過損失が低下し、防音性能の低い防音壁となってしまう。
【0006】
本発明は、軽量で運搬や現場での設置作業が容易であり、かつ、防音性能の高い、防音壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本願の第1発明は、平面視矩形のFRP壁材と、前記FRP壁材の表面に配置する吸音体と、からなり、前記FRP壁材は、平板状の壁面板と、前記壁面板の表面に、前記FRP壁材を立設した際の高さ方向に亘って突設する平面視T字状のリブと、からなり、前記吸音体は、矩形の板状体であり、前記吸音体は、一枚の前記FRP壁材に並列する前記リブ間、又は、二枚並べた前記FRP壁材のそれぞれの前記リブ間のうち、少なくともいずれか一方に配置し、前記リブは、前記壁面板と略平行な側部押さえ材を有し、前記吸音体の側辺は、前記壁面板と前記側部押さえ材との間に位置するすることを特徴とする、防音壁を提供する。
本願の第2発明は、第1発明の防音壁において、前記壁面板のうち、前記リブと平行な側辺の表面から前記壁面板と平行に突設したフランジを有することを特徴とする、防音壁を提供する
願の第発明は、第1発明又は第2発明の防音壁において、隣り合う前記リブの前記側部押さえ材間に亘って配設する表面押さえ材を有することを特徴とする、防音壁を提供する。
本願の第発明は、第1発明乃至第発明のいずれかの防音壁において、前記吸音体の上方に、上蓋を配置することを特徴とする、防音壁を提供する。

【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
(1)防音壁を構成するFRP壁材と吸音体のどちらも軽量であり、運搬や現場での設置作業が容易である。
(2)FRP壁材の表面に吸音体を設置するため、防音性能が高い。
(3)吸音体は側辺部分を側部押さえ材により押さえるのみであり、露出部分が大きいため、防音性能が高い防音壁となる。
(4)軽量な防音壁のため、既存壁の置き換えにおいて、設置する構造体の構造に関わらず使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の防音壁の斜視図
図2】本発明の防音壁のFRP壁材の斜視図
図3】FRP壁材の固定状態の説明図
図4】本発明の防音壁の断面図
図5】本発明の防音壁の吸音体の斜視図
図6a】本発明の防音壁の構築方法の説明図(1)
図6b】本発明の防音壁の構築方法の説明図(2)
図6c】本発明の防音壁の構築方法の説明図(3)
図7】その他実施例に係る防音壁の斜視図
図8】その他実施例に係る防音壁の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
[実施例1]
<1>防音壁の構成
本発明の防音壁は、FRP壁材1と、FRP壁材1の表面に配置する吸音体2を組み合わせて構成する(図1)。
【0012】
<2>FRP壁材
FRP壁材1は、繊維強化樹脂(FRP)やガラス繊維強化樹脂(GFRP)を材質とする部材である。
FRP壁材1は、平面視矩形の平板状の壁面板11と、壁面板11の表面に高さ方向に亘って突設するリブ12と、リブ12と平行な壁面板11の側辺に設けるフランジ13と、からなる(図2)。
壁面板11と、リブ12、フランジ13は、一体成形とする。
FRP壁材1は、立設する構造体に打設したアンカーボルト31にアングル3及び固定ボルト32、固定ナット33を介して立設する(図3)。なお、FRP壁材1の立設方法はこの方法に限定されない。
【0013】
<2.1>リブ
リブ12は平面視T字状の部材である。
複数のFRP壁材1を立設したときに、リブ12が等間隔に並列するように、壁面板11の側辺からリブ12までの長さと隣り合うリブ12の間隔を設定する。
【0014】
<2.2>フランジ
フランジ13は平板状であり、壁面板11の側辺の表面から、壁面板11と平行に突設する。
複数のFRP壁材1の側辺同士を合わせて立設したときに、側辺同士の接合部分の表面にフランジ13が位置する。
フランジ13を設けることにより、FRP壁材1同士の隙間がなくなり、FRP壁材1の面に直交する方向に作用する力が、フランジ13を介して隣接するFRP壁材1に分散される(図4)。
【0015】
<3>吸音体
吸音体2は、入射した音のエネルギーを熱エネルギーに変換することにより、反射する音のエネルギーを減らすものである。
吸音体2は、ポリエステル繊維不織布を矩形の板状に形成した母材21と、母材21の少なくとも音響入射側にポリエステル繊維スパンボンド不織布からなる表面材22を熱融着して一体とした複合吸音体であり(図5)、優れた吸音性能を発揮する。また、表面材22には撥水処理を施すことにより、母材21の保護材にもなる。表面材22は、母材21の音響入射側に限らず、表面全面に設けてもよい。
吸音体2の構成素材であるポリエステル繊維不織布は、軽量で優れた吸音性能を有し、リサイクルができるため地球環境に優しく、また、耐候性、耐久性、耐水性、耐薬品性にも優れ、長期的に安定して使用できる材料である。
吸音体2は、立設したFRP壁材1のうち、一枚のFRP壁材1に並列するリブ12間や、二枚並べて立設したFRP壁材1のそれぞれのリブ12間に配置する。
吸音体2の大きさは、高さ方向はFRP壁材1の高さよりも短くし、幅方向は、並列したリブ12の間隔と略同一とし、奥行き方向は、突設するリブ12の高さよりも短くする。
【0016】
<3.1>吸音体の保持
FRP壁材1の壁面板11と吸音体2との間は、隙間がないことが好ましい。
吸音体2の下端は、壁面板11及びリブ12に突設した支持材14により支持する。
また、FRP壁材1のリブ12には、FRP壁材1の高さ方向に沿って側部押さえ材15を設ける。
側部押さえ材15は断面視L字状とし、一辺をリブ12に沿って固定し、他辺をリブ12から突設する押さえ部とする。押さえ部は壁面板11と平行とし、押さえ部と壁面板11との間隔は、吸音体2の奥行きと略同一とする。これにより、吸音体2の側辺部分は側部押さえ材15によって保持される。
支持材14及び側部押さえ材15はFRP壁材1と同じくFRP製とし、リベットやボルト、ナットを介してFRP壁材1に固定するのが好適である。
吸音体2は壁面材のリブ12間に配置し、また、側辺部分を側部押さえ材15により押さえるのみであり、露出部分が大きく、防音性能が高い防音壁となる。
【0017】
<4>上蓋
吸音体2は母材21の表面に撥水処理を施した表面材22を熱融着したポリエステル繊維系吸音材であるため、耐水性は保有するが、万が一水が内部に入りこむと水がしばらく保持される可能性がある。
このため、吸音体2を構成するポリエステル繊維の配向方向を一方向とし、配向方向をFRP壁材1に設置した際の高さ方向とすることにより、内部に入りこんだ水が繊維に沿って下方に流れ落ちやすくなるという特色が発揮され、速やかに排水される。
また、並列したFRP壁材1の上端には、上蓋16を設ける。
上蓋16は、並列したリブ12の上端間に渡設し、リブ12の上端に突設した上蓋支持材161に固定する。上蓋16と上蓋支持材161はFRP壁材1と同じくFRP製又はGFRP製とし、リベットを介して上蓋16と上蓋支持材161を固定するのが好適である。
上蓋16で吸音体2の上方を覆うことにより、吸音体2の内部に水が浸入するのを防止できる。
【0018】
<5>防音壁の構築
<5.1>FRP壁材の立設
次に、FRP壁材1と吸音体2とを用いた防音壁の構築方法について説明する。
まず、壁面板11、リブ12、フランジ13が一体成形され、予め支持材14、側部押さえ材15、上蓋支持材161を取り付けたFRP壁材1を並べて立設する(図6a)。
隣り合うFRP壁材1の接合部分の表面には、フランジ13が位置する。
並列したFRP壁材1の表面には、等間隔にリブ12が並列する。
FRP壁材1は軽量であり、運搬や現場での設置作業が容易である。
【0019】
<5.2>吸音体の配置
次に、等間隔に並列するリブ12の間であって、FRP壁材1の表面と、側部押さえ材15との間に、吸音体2を落とし込む(図6b)。
吸音体2の下端は、壁面板11及びリブ12に突設した支持材14により支持される。
吸音体2は軽量であり、運搬や現場での落とし込み作業が容易である。
【0020】
<5.3>上蓋の設置
最後に、上蓋16を並列したリブ12の上端間に渡設し、リブ12の上端に突設した上蓋支持材161に固定する(図6c)。
上蓋16はFRP製又はGFRP製のため軽量であり、運搬や現場での設置作業が容易である。
【0021】
防音壁を構成するFRP壁材1、吸音体2いずれも軽量である。このため、防音壁も軽量となる。
このため、既存壁の置き換えにおいて、従来のコンクリート製の防音壁では高重量による下部の構造体への負荷が大きく、使用が困難な場合であっても、軽量な本発明の防音壁を使用できる。
【0022】
[その他実施例]
<1>表面押さえ材の設置
吸音体2の表面には、高さ方向に所定の間隔を設けて、表面押さえ材17を設置しても良い(図7、8)。
表面押さえ材17は、断面視L字状(図7、8(a))又は平板状(図8(b))とする。
表面押さえ材17は、両端を隣り合うリブ12の側部押さえ材15に固定し、側部押さえ材15間に亘って配設する。
吸音体2と表面押さえ材17との間に隙間がある場合には、表面押さえ材17の背面に裏支持材171を設けてもよい(図8)。裏支持材171で隙間をなくすことにより、吸音体2が風等により揺れるのを防止する。
表面押さえ材17と裏支持材171はFRP壁材1と同じくFRP製又はGFRP製とし、リベットを介してそれぞれ固定するのが好適である。
【符号の説明】
【0023】
1…FRP壁材、11…壁面板、12…リブ、13…フランジ、14…支持材、15…側部押さえ材、16…上蓋、161…上蓋支持材、17…表面押さえ材、171…裏支持材
2…吸音体
3…アングル、31…アンカーボルト、32…固定ボルト、33…固定ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8