IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 前田道路株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人北見工業大学の特許一覧

特許7079454粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法
<>
  • 特許-粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法 図1
  • 特許-粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法 図2
  • 特許-粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法 図3
  • 特許-粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法 図4
  • 特許-粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法 図5
  • 特許-粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法 図6
  • 特許-粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法 図7
  • 特許-粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法 図8
  • 特許-粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20220526BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20220526BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220526BHJP
【FI】
G01N15/02 C
G01N33/38
G06T7/00 350C
G06T7/00 610
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021119491
(22)【出願日】2021-07-20
【審査請求日】2021-07-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年8月5日 令和2年度土木学会全国大会 講演概要資料(web公開) http://committees.jsce.or.jp/zenkoku/node/193
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年9月9日 令和2年度土木学会全国大会(オンライン)
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201515
【氏名又は名称】前田道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504238806
【氏名又は名称】国立大学法人北見工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平野 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 風花
(72)【発明者】
【氏名】田口 寛秋
(72)【発明者】
【氏名】小西 正朗
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-130952(JP,A)
【文献】特開平09-059909(JP,A)
【文献】特許第6738079(JP,B1)
【文献】特開平09-192608(JP,A)
【文献】特開2021-117625(JP,A)
【文献】深層学習を用いた土の粒度分布推定方法の基礎的研究,奥村組技術研究年報,No.45,日本,2019年09月,109頁-114頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
G01N 33/38
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト混合物の製造に用いられる骨材の粒度を推定する粒度推定装置であって、
前記骨材の撮像画像に基づいて前記骨材の粒度の推定値を算出する推定モデルを備え、
前記推定モデルは、畳み込みニューラルネットワークであり、前記骨材の粒度に応じて分類され、少なくとも6号砕石を含む複数の骨材区分であって、JIS A 5001の規定に従った区分を含む複数の骨材区分をさらに前記粒度に応じて複数に分類した骨材詳細区分の各々について、前記骨材詳細区分に対応付けられた前記骨材の撮像画像と前記骨材の粒度の実測値とを含む学習データセットを用いて予め機械学習され
前記推定モデルは、平均二乗誤差(Mean Square Error ; MSE)が最小となる重みパラメータを用いた推定モデルであり、
前記推定モデルの出力層には、各々のふるい目の通過質量百分率が、対応する各々のふるい目のサイズごとに変数として設定される、粒度推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒度推定装置であって、
各々の前記骨材区分は、細砂、粗砂、砕砂、7号砕石、又は前記6号砕石のいずれか1つを示す区分である、粒度推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の粒度推定装置であって、
複数の前記骨材区分は、7号砕石、及び、5号砕石のうち少なくともいずれか1つを含む、粒度推定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の粒度推定装置であって、
前記骨材詳細区分は、前記骨材区分を前記粒度に応じて3段階に分類した区分である、粒度推定装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の粒度推定装置であって、
前記推定モデルは、複数の前記撮像画像に基づいて、前記骨材の粒度の推定値を算出する、粒度推定装置。
【請求項6】
請求項に記載の粒度推定装置であって、
前記推定モデルは、
複数の前記撮像画像の各々に基づいて推定された前記粒度の平均値を算出し、
前記粒度の平均値を前記粒度の推定値として算出する、粒度推定装置。
【請求項7】
アスファルト混合物の製造に用いられる骨材の撮像画像に基づいて前記骨材の粒度の推定値を算出する推定モデルを備える粒度推定装置の学習方法であって、
前記推定モデルは、畳み込みニューラルネットワークであり、
前記骨材の粒度に応じて分類され、少なくとも6号砕石を含む複数の骨材区分であって、JIS A 5001の規定に従った区分を含む複数の骨材区分をさらに前記粒度に応じて複数に分類した骨材詳細区分の各々について、前記骨材詳細区分に対応付けられた前記骨材の撮像画像と前記骨材の粒度の実測値とを含む学習データセットを用いて前記推定モデルを機械学習し、
前記推定モデルは、平均二乗誤差(Mean Square Error ; MSE)が最小となる重みパラメータを用いた推定モデルであり、
前記推定モデルの出力層には、各々のふるい目の通過質量百分率が、対応する各々のふるい目のサイズごとに変数として設定される、学習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスファルト混合物の品質を確保するためには、アスファルト混合物の製造に用いられる骨材の粒度を検査する必要がある。一般的には、特許文献1に記載されるように、作業者がふるい分け試験を行うことにより、骨材の粒度を測定し、品質管理を行っている。また、特許文献2に記載される粒度判定システムは、機械学習された推定モデルを用いて、地盤材料の撮像画像に基づき材料の粒度を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平6-086055号公報
【文献】特開2020-180835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されるように、骨材のサンプリング試料を採取し、さらに試験室にサンプリング試料を持ち込んでふるい分け試験を実施するという作業を行う場合、骨材の品質管理にかかる作業負担が過大になってしまうという問題がある。また、特許文献2に記載される粒度判定システムは、あらかじめ学習された機械学習システムにより個別の路盤材の輪郭を推定することにより、粒度を測定するものである。したがって、画像から粒度分布を直接的に推定することができない。また、特許文献2に記載される粒度判定システムでは、機械学習に用いられる学習データによっては粒度判定システムが所望の精度で骨材の粒度を測定できない可能性もある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、アスファルト混合物の製造に用いられる骨材の粒度を少ない作業負担で精度良く推定できる粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]上記課題を解決するために、本発明に係る粒度推定装置は、アスファルト混合物の製造に用いられる骨材の粒度を推定する粒度推定装置であって、前記骨材の撮像画像に基づいて前記骨材の粒度の推定値を算出する推定モデルを備え、前記推定モデルは、畳み込みニューラルネットワークであり、前記骨材の粒度に応じて分類され、少なくとも6号砕石を含む複数の骨材区分であって、JIS A 5001の規定に従った区分を含む複数の骨材区分をさらに前記粒度に応じて複数に分類した骨材詳細区分の各々について、前記骨材詳細区分に対応付けられた前記骨材の撮像画像と前記骨材の粒度の実測値とを含む学習データセットを用いて予め機械学習され、前記推定モデルは、平均二乗誤差(Mean Square Error ; MSE)が最小となる重みパラメータを用いた推定モデルであり、前記推定モデルの出力層には、各々のふるい目の通過質量百分率が、対応する各々のふるい目のサイズごとに変数として設定される。
【0008】
]上記発明において、各々の前記骨材区分は、細砂、粗砂、砕砂、7号砕石、又は6号砕石のいずれか1つを示す区分であってもよい。
【0009】
[3]上記発明において、複数の前記骨材区分は、7号砕石、及び、5号砕石のうち少なくともいずれか1つを含んでもよい。
【0011】
]上記発明において、前記骨材詳細区分は、前記骨材区分を前記粒度に応じて3段階に分類した区分であってもよい。
【0013】
]上記発明において、前記推定モデルは、複数の前記撮像画像に基づいて、前記骨材の粒度の推定値を算出してもよい。
【0014】
]上記発明において、前記推定モデルは、複数の前記撮像画像の各々に基づいて推定された前記粒度の平均値を算出し、前記粒度の平均値を前記粒度の推定値として算出してもよい。
【0015】
]上記課題を解決するために、本発明に係る粒度推定装置の学習方法は、アスファルト混合物の製造に用いられる骨材の撮像画像に基づいて前記骨材の粒度の推定値を算出する推定モデルを備える粒度推定装置の学習方法であって、前記推定モデルは、畳み込みニューラルネットワークであり、前記骨材の粒度に応じて分類され、少なくとも6号砕石を含む複数の骨材区分であって、JIS A 5001の規定に従った区分を含む複数の骨材区分をさらに前記粒度に応じて複数に分類した骨材詳細区分の各々について、前記骨材詳細区分に対応付けられた前記骨材の撮像画像と前記骨材の粒度の実測値とを含む学習データセットを用いて前記推定モデルを機械学習し、前記推定モデルは、平均二乗誤差(Mean Square Error ; MSE)が最小となる重みパラメータを用いた推定モデルであり、前記推定モデルの出力層には、各々のふるい目の通過質量百分率が、対応する各々のふるい目のサイズごとに変数として設定される
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アスファルト混合物の製造に用いられる骨材の粒度を少ない作業負担で精度良く推定できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る粒度推定装置の構成を示す図である。
図2図1に示す粒度推定装置の推定モデルを示す図である。
図3図2に示す推定モデルを機械学習させるために用いられる骨材区分及び骨材区分を3段階に分類した骨材詳細区分を示す図である。
図4】細砂の骨材詳細区分毎の粒度分布を通過質量百分率で示す図であり、図4(a)は、図1に示す粒度推定装置によって推定された骨材の粒度の推定値であり、図4(b)は、ふるい分け試験によって測定された骨材の粒度の実測値である。
図5】粗砂の骨材詳細区分毎の粒度分布を通過質量百分率で示す図であり、図5(a)は、図1に示す粒度推定装置によって推定された骨材の粒度の推定値であり、図5(b)は、ふるい分け試験によって測定された骨材の粒度の実測値である。
図6】砕砂の骨材詳細区分毎の粒度分布を通過質量百分率で示す図であり、図6(a)は、図1に示す粒度推定装置によって推定された骨材の粒度の推定値であり、図6(b)は、ふるい分け試験によって測定された骨材の粒度の実測値である。
図7】7号砕石の骨材詳細区分毎の粒度分布を通過質量百分率で示す図であり、図7(a)は、図1に示す粒度推定装置によって推定された骨材の粒度の推定値であり、図7(b)は、ふるい分け試験によって測定された骨材の粒度の実測値である。
図8】6号砕石の骨材詳細区分毎の粒度分布を通過質量百分率で示す図であり、図8(a)は、図1に示す粒度推定装置によって推定された骨材の粒度の推定値であり、図8(b)は、ふるい分け試験によって測定された骨材の粒度の実測値である。
図9図1に示す粒度推定装置の推定モデルの別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明を実施するための最良の形態のひとつであり、必ずしもこれに限定されるものではない。
図1に示すように、粒度推定システム200は、粒度推定装置100、撮像装置101及び出力装置102を備える。粒度推定装置100は、撮像装置101が取得した骨材Aの撮像画像に基づいて骨材Aの粒度を推定する。粒度推定装置100は、例えば、コンピュータである。なお、骨材Aは、アスファルト混合物の製造に用いられる骨材である。また、粒度推定装置100は、骨材Aの粒度の推定値を出力装置102に出力する。出力装置102は、例えば、モニタ又はプリンタ等である。また、粒度推定装置100は、記憶部1及び推定モデル2を備える。記憶部1は、撮像装置101が取得した骨材Aの撮像画像を記憶する。推定モデル2は、畳み込みニューラルネットワークであり、骨材Aの撮像画像に基づいて骨材Aの粒度の推定値を算出する。なお、骨材Aの粒度を推定値は、図4~8に示すように、ふるい目の閾値0.075mm,0.15mm,0.3mm,0.6mm,2.36mm,4.75mm,13.2mm,19mm,26.5mm,31.5mm,37.5mm,53mmに応じた通過質量百分率で表される。
【0019】
なお、図1に示す粒度推定装置100と撮像装置101又は出力装置102とは、有線又は無線によって接続されている。また、粒度推定装置100、撮像装置101及び出力装置102は、同一の装置であってもよい。具体的には、粒度推定システム200は、スマートフォン等の携帯端末に設けられた撮像装置101及び出力装置102と、ソフトウェアである粒度推定装置100とによって構成されていてもよい。また、粒度推定装置100はクラウドサーバであり、既知の通信手段を介して、撮像装置101及び出力装置102と情報のやり取りを行ってもよい。また、撮像装置101は、アスファルトプラントのホットビンの内部を流動する骨材Aの動画又は連続画像データを取得し、粒度推定装置100は、骨材Aの動画又は連続画像データから抽出した撮像画像に基づいて骨材Aの粒度をリアルタイムに推定してもよい。
【0020】
次に、図2,3を用いて粒度推定装置100の推定モデル2について説明する。なお、推定モデル2の構造及び学習回数は、以下に示す例に限定されない。
推定モデル2は、骨材Aの粒度に応じて分類された複数の骨材区分をさらに3段階に分類した骨材詳細区分の各々について、学習データセットTを用いて予め機械学習されている。学習データセットTは、各々の骨材詳細区分に対応付けられた骨材Aの撮像画像Gtと骨材Aの粒度の実測値Vtとを含む。ここで、複数の骨材区分とは、例えば、図3に示すように、「細砂」、「粗砂」、「砕砂」、「7号砕石」及び「6号砕石」である。なお、「7号砕石」及び「6号砕石」は、JIS A 5001の規定に従った区分である。また、「7号砕石」及び「6号砕石」は、JIS A 0203に規定された「粗骨材」に分類される区分である。また、骨材区分は、JIS A 5001の規定に従った「5号砕石」を含んでいてもよい。また、「細砂」、「粗砂」及び「砕砂」は、JIS A 0203に規定された「細骨材」に分類される区分であり、各々、アスファルトプラント毎に規定された作業標準に従って、粒度に応じて区分される。なお、骨材区分は、上記に限定されず、細砂、粗砂、砕砂、7号砕石、及び、6号砕石以外の区分(例えば「5号砕石」等)を含んでもよい。また、骨材区分は、JIS規格以外に従った区分を含んでいてもよい。また、骨材区分の数は5区分に限定されず、5未満或いは6以上の区分としてもよい。また、粗骨材の骨材区分は、JIS A 5001の規定に従った区分である「7号砕石」、「6号砕石」、及び、「5号砕石」のうち少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
【0021】
また、各々の骨材区分は、さらに粒度に応じて、3段階の骨材詳細区分(上方、中央、下方)に分類される。すなわち、推定モデル2は、合計15段階の骨材詳細区分毎に、学習データセットTを用いて機械学習される。なお、3段階の骨材詳細区分は、上方、中央、下方の順に粒度が粗くなる。具体的には、3段階の骨材詳細区分は、骨材区分毎に、粒度の平均値を含む所定の粒度範囲を「中央」として、「中央」よりも粒度が細かい粒度範囲が「上方」、「中央」よりも粒度が粗い粒度範囲が「下方」となるように設定される。なお、骨材詳細区分は、各々、複数であればよく、3段階に限定されない。また、骨材詳細区分は、上述の「上方」、「中央」、「下方」の区分に限定されず、例えば、「1」「2」「3」…等、数字を付して分類されてもよい。
【0022】
図2に示すように、推定モデル2は、例えば、TensorFlowをバックエンドとするKerasを用いて、畳み込み層2層、プーリング層1層を2段重ねた畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。畳み込みニューラルネットワークは、回帰分析に適した全結合層に連結される。出力層には、各々のふるい目の通過質量百分率が、対応する各々のふるい目のサイズごとに変数として設定される。また、最適化アルゴリズム(Optimizer)にはAdamが使用される。
【0023】
推定モデル2は、下記式(1)に示す平均二乗誤差(Mean Square Error ; MSE)に基づいて、推定モデル2によって算出された骨材Aの粒度の推定値と学習データセットTの骨材Aの粒度の実測値との誤差が最小となるように、誤差逆伝播を用いて、例えば、10,000の重みパラメータを学習する。すなわち、平均二乗誤差(Mean Square Error ; MSE)が最小となる重みパラメータを用いた推定モデル2が最適モデルとして設定され、評価用データによって、その推定精度が確認される。
【数1】
【0024】
また、推定モデル2には、骨材Aの複数の撮像画像Gが入力される。推定モデル2は、複数の撮像画像Gの各々に基づいて推定された粒度の平均値を算出し、粒度の平均値を粒度の推定値として算出する。すなわち、推定モデル2は、複数の撮像画像Gに基づいて、骨材Aの粒度の推定値を算出する。
【0025】
また、粒度推定装置100は、推定モデル2が算出した骨材Aの粒度の推定値を通過質量百分率で出力装置102に出力する。また、粒度推定装置100は、骨材Aの粒度の推定値に対応する骨材区分(細砂、粗砂、砕砂、7号砕石、6号砕石)及び骨材詳細区分(上方、中央、下方)を出力装置102に出力してもよい。
【0026】
次に、図2を用いて、推定モデル2を機械学習させるために用いられる学習データセットTの具体的な作成方法について説明する。
図2の左下の図に示すように、学習データセットTに含まれる撮像画像は、撮影ボックス20を用いて撮像された画像であってもよい。撮影ボックス20の内部の上面の中央部分には、撮像装置21(カメラ)が取り付けられる。また、撮影ボックス20の内部の上面には、撮像装置21を挟んで一対の照明22が設けられている。また、撮影ボックス20の内部の底面には、バット23が載置される。バット23には、学習データ用の撮像画像取得のためのサンプルとしての骨材A’が入れられる。撮像装置21は、15種類の骨材詳細区分毎に骨材A’の撮像画像Gtを100枚ずつ取得する。すなわち、撮像装置21によって、合計1500枚の撮像画像Gtが取得され、そのうちの70%が学習データセットTに使用され、30%が評価用のデータセットに使用される。このように、撮影ボックス20を用いることにより、撮像装置21は、一定の撮影条件の下で、学習データセットTに含まれる撮像画像Gtを取得することができる。従って、撮影ボックス20を用いることにより、撮影環境における明るさの違いや光ムラが学習データセットTの撮像画像Gtに与える影響が最小限に抑えられる。なお、学習データセットT及び評価用のデータセットに含まれる骨材の粒度の値は、ふるい分け試験によって測定された骨材A’の粒度の実測値である。
【0027】
図4~8は、各々の粒度区分及び粒度詳細区分毎に、学習済みの推定モデル2によって推定された骨材Aの粒度の推定値(a)と、ふるい分け試験によって測定された骨材Aの粒度の実測値(評価用データ)(b)との比較の例を示す。なお、各図における3つのグラフ線は、各々、上方、中央、下方の骨材詳細区分に対応づけられた骨材Aの粒度分布を示す。すなわち、各図における3つのグラフ線のうち、真中のグラフが「中央」を示し、「中央」の上側に位置するグラフが「上方」を示し、「中央」の下側に位置するグラフが「下方」を示す。図4(a),図5(a),図6(a),図7(a)及び図8(a)に示す骨材Aの粒度の推定値と、図4(b),図5(b),図6(b),図7(b)及び図8(b)に示す骨材Aの粒度の実測値(評価用データ)との比較は、粒度推定装置100の推定モデル2が、骨材区分(細砂、粗砂、砕砂、7号砕石、又は6号砕石)及び骨材詳細区分(上方、中央、下方)を有意的に判別できることを示している。
【0028】
以上より、本実施形態に係る粒度推定装置100及び粒度推定装置100を有する粒度推定システム200は、アスファルト混合物の製造に用いられる骨材Aの撮像画像Gに基づいて骨材Aの粒度の推定値を算出する推定モデル2を備える。推定モデル2は、畳み込みニューラルネットワークであり、骨材Aの粒度に応じて分類された複数の骨材区分の各々について、骨材区分に対応付けられた骨材Aの撮像画像と骨材Aの粒度の実測値とを含む学習データセットを用いて予め機械学習される。従って、粒度推定装置100は、アスファルト混合物の製造に用いられる骨材Aの撮像画像Gに基づいて骨材Aの粒度の推定値を算出することにより、ふるい分け試験を行わずに、骨材Aの粒度を少ない作業負担で推定できる。また、畳み込みニューラルネットワークである推定モデル2が、複数の骨材区分の各々について、骨材区分に対応付けられ骨材の撮像画像Gtと骨材の粒度の実測値Vtとを含む学習データセットTを用い、予め機械学習されていることにより、粒度推定装置100は、図4~8に示すように、高い精度で骨材Aの粒度を推定することができる。
【0029】
また、骨材区分は、JISA 5001の規定に従った区分を含む。これにより、粒度推定装置100は、標準規格に沿った骨材区分に応じて、高い精度で骨材Aの粒度を推定することができる。
【0030】
また、骨材区分は、細砂、粗砂、砕砂、7号砕石、又は6号砕石のいずれか1つを示す区分である。これにより、粒度推定装置100は、特にアスファルト混合物の製造に用いられる骨材Aの骨材区分に応じて、高い精度で骨材Aの粒度を推定することができる。
【0031】
また、複数の骨材区分は、7号砕石、6号砕石、及び、5号砕石のうち少なくともいずれか1つを含んでもよい。これにより、粒度推定装置100は、特に粗骨材に関する標準規格に沿った骨材区分に応じて、高い精度で骨材Aの粒度を推定することができる。
【0032】
また、推定モデル2は、骨材区分をさらに粒度に応じて複数に分類した骨材詳細区分の各々について、骨材詳細区分に対応づけられた骨材の撮像画像と骨材の粒度の実測値とを含む学習データセットを用いて予め機械学習される。これにより、粒度推定装置100は、骨材区分のさらに詳細な区分に応じて、骨材区分のみに対応付けられた学習データセットを用いて機械学習される場合よりも、より高い精度で骨材Aの粒度を推定することができる。
【0033】
また、骨材詳細区分は、骨材区分を粒度に応じて3段階(上方、中央、下方)に分類した区分である。これにより、粒度推定装置100は、骨材区分毎に3段階に分類された区分に応じて、高い精度で骨材Aの粒度を推定することができる。
【0034】
また、粒度推定装置100は、推定モデル2が算出した粒度の推定値を通過質量百分率で出力する。これにより、ユーザは骨材Aの粒度の推定値を容易かつ明瞭に確認することができる。
【0035】
また、粒度推定装置100は、推定モデル2が算出した粒度の推定値に対応する骨材区分及び骨材詳細区分を出力してもよい。これにより、ユーザは骨材Aの粒度を骨材区分及び骨材詳細区分に応じて容易に把握することができる。
【0036】
また、推定モデル2は、複数の撮像画像Gに基づいて、骨材Aの粒度の推定値を算出する。これにより、粒度推定装置100は、1枚の撮像画像Gのみを入力データとした場合よりも高い精度で骨材Aの粒度の推定値を算出することができる。
【0037】
また、推定モデル2は、複数の撮像画像Gの各々に基づいて推定された粒度の平均値を算出し、粒度の平均値を粒度の推定値として算出する。これにより、粒度推定装置100は、複数の撮像画像Gを用いて、より高い精度で骨材Aの粒度の推定値を算出することができる。
【0038】
なお、粒度推定装置100の推定モデルは、回帰分析に適した推定モデル2に限定されず、図9に示すように、分類に適した推定モデル12であってもよい。推定モデル12の出力層では、5つの骨材区分(細砂、粗砂、砕砂、7号砕石、6号砕石)を3段階ずつ(上方、中央、下方)に分類した15種類の骨材詳細区分に応じて、15の変数が得られる解析アルゴリズムがPython言語で記述される。
【符号の説明】
【0039】
100…粒度推定装置
2…推定モデル
A…骨材
G…撮像画像
T…学習データセット
【要約】
【課題】アスファルト混合物の製造に用いられる骨材の粒度を少ない作業負担で精度良く推定できる粒度推定装置、及び、粒度推定装置の学習方法を提供する。
【解決手段】アスファルト混合物の製造に用いられる骨材Aの粒度を推定する粒度推定装置100は、骨材Aの撮像画像に基づいて骨材Aの粒度の推定値を算出する推定モデル2を備え、推定モデル2は、畳み込みニューラルネットワークであり、骨材Aの粒度に応じて分類された複数の骨材区分の各々について、骨材区分に対応付けられた骨材の撮像画像Gtと骨材の粒度の実測値Vtとを含む学習データセットTを用いて予め機械学習される。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9