(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】誘導発熱ローラ装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/14 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
H05B6/14
(21)【出願番号】P 2018009310
(22)【出願日】2018-01-24
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2017024436
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017216668
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】北野 孝次
(72)【発明者】
【氏名】外村 徹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 衛
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-106889(JP,A)
【文献】特開平05-326131(JP,A)
【文献】特開平09-197946(JP,A)
【文献】特開2004-116538(JP,A)
【文献】特開2004-020997(JP,A)
【文献】特開2008-181051(JP,A)
【文献】特開2012-234715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のローラ本体と、前記中空内に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、前記ローラ本体及び前記誘導発熱機構の間の空隙部に気体流を発生させて前記ローラ本体及び/又は前記誘導発熱機構を冷却する冷却機構とを備え、
前記冷却機構は、前記ローラ本体の軸方向一端側に形成されて前記空隙部に連通する吸気口と、前記ローラ本体の軸方向他端側に形成されて前記空隙部に連通する排気口と、前記排気口に接続されて前記排気口から前記空隙部の気体を吸引する吸引機構とを備え
、
前記吸引機構は、静止側において前記排気口を覆うように設けられた静止体と、当該静止体に接続されて前記排気口から前記空隙部の気体を吸引する吸引装置とを備え、
前記ローラ本体は、軸方向両端部に設けられた一対の駆動軸を有し、
前記排気口は、軸方向他端側の駆動軸の外側周面に形成されており、
前記静止体は、軸受を介して、前記排気口を覆うように前記駆動軸に設けられている誘導発熱ローラ装置。
【請求項2】
中空のローラ本体と、前記中空内に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、前記ローラ本体及び前記誘導発熱機構の間の空隙部に気体流を発生させて前記ローラ本体及び/又は前記誘導発熱機構を冷却する冷却機構とを備え、
前記冷却機構は、前記ローラ本体の軸方向一端側に形成されて前記空隙部に連通する吸気口と、前記ローラ本体の軸方向他端側に形成されて前記空隙部に連通する排気口と、前記排気口に接続されて前記排気口から前記空隙部の気体を吸引する吸引機構とを備え、
前記冷却機構は、負荷の熱量又は運転条件に応じて前記空隙部を流れる気体流量を調整するものである誘導発熱ローラ装置。
【請求項3】
前記ローラ本体は、軸方向両端部に設けられた一対のジャーナル部を有し、
前記吸気口は、軸方向一端側のジャーナル部に複数形成されている、請求項1
又は2に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項4】
前記吸気口は、前記軸方向一端側のジャーナル部において周方向に等間隔に形成されている、請求項
3に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項5】
前記吸気口には、吸引される気体中の異物を除去するフィルタが設けられている、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項6】
前記誘導発熱機構は、誘導コイルと、当該誘導コイルを支持する支持軸とを有し、
前記支持軸の軸方向一端部は、軸受を介して前記ローラ本体に支持されており、
前記支持軸の軸方向他端部は、静止側に設けられた部材に支持されている、請求項1乃至
5の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項7】
前記誘導発熱機構は、誘導コイルと、当該誘導コイルを支持する支持軸とを有し、
前記支持軸は、前記ローラ本体の軸方向両端側それぞれにおいて軸受を介して支持されており、
前記ローラ本体の軸方向他端側に設けられた軸受は、前記排気口よりも軸方向外側に形成されている、請求項1乃至
5の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項8】
前記吸気口に気体を供給する供給機構をさらに備え、
前記供給機構は、前記吸気口に気体を供給する供給配管と、当該供給配管と前記吸気口とを接続するジョイント部材とを有する、請求項1乃至
7の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項9】
前記ローラ本体の外部において前記吸気口及び前記排気口を連通し、前記吸引
機構により前記排気口から吸引された気体を前記吸気口に戻す循環経路と、
前記循環経路に設けられ、前記気体を冷却する熱交換器とをさらに備える、請求項1乃至
8の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項10】
前記冷却機構は、前記空隙部を流れる気体流量を調整するものである、請求項1
又は請求項1を引用する請求項3乃至9の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項11】
前記誘導発熱機構は、誘導コイルと、当該誘導コイルを支持する支持軸とを有し、
前記静止体は、前記支持軸の軸方向他端側を支持するものである、請求項1に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項12】
前記吸引機構は、静止側において前記排気口を覆うように設けられた静止体と、当該静止体に接続されて前記排気口から前記空隙部の気体を吸引する吸引装置とを備え、
前記誘導発熱機構は、誘導コイルと、当該誘導コイルを支持する支持軸とを有し、
前記静止体は、前記支持軸の軸方向他端側を支持するものである、請求項
2に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項13】
前記吸引装置は、配管を介さずに前記静止体に一体的に設けられている、請求項1に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項14】
前記吸引機構は、静止側において前記排気口を覆うように設けられた静止体と、当該静止体に接続されて前記排気口から前記空隙部の気体を吸引する吸引装置とを備え、
前記吸引装置は、配管を介さずに前記静止体に一体的に設けられている、請求項2に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項15】
前記吸引装置は、気体流増幅器である、請求項11乃至14の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばプラスチックフィルム、紙、布、不織布、合成繊維、金属箔等のシート材又はウェブ材、線(糸)材等の連続材の連続熱処理工程等には、回転するローラ本体の内部に誘導発熱機構を配置し、これによりローラ本体の周壁部を誘導電流によって発熱させる誘導発熱ローラ装置が用いられている。
【0003】
そして近年、例えば連続材の種類を変更することに伴うローラ本体による加熱温度の変更を短時間で行う要請がある。また、熱処理工程の終了後において、安全衛生上の観点から、ローラ本体の温度が一定温度以下に低下しなければ、作業者がその場から離れることができない。このようなことからローラ本体を可及的短時間で冷却する必要がある。
【0004】
ローラ本体を冷却するものとしては、特許文献1に示すように、ローラ本体及び誘導発熱機構の間の空隙部に空気を供給することによってローラ本体を冷却する空冷式のものが考えられている。具体的にこのローラ装置は、ローラ本体の一端部に空気供給管を接続して、ローラ本体の他端部に空気排出管を接続している。そして、空気供給管には、空隙部に空気を供給するための送風機が接続されている。
【0005】
しかしながら、このような構成では、送風機によりローラ本体の一端部から空気が供給するだけであり、ローラ本体の他端部側では空隙部で暖められた空気が積極的に排気されず、ローラ本体の冷却ムラが生じるという問題がある。
【0006】
なお、ローラ本体の内部に水やミストを供給してローラ本体を水冷する方式も考えられているが、水供給回路の設置コストが大きく、また、水漏れ等が発生した場合には、絶縁破壊によって事故に至る恐れもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、ローラ本体及び/又は誘導発熱機構を気体により均一に冷却できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る誘導発熱ローラ装置は、中空のローラ本体と、前記中空内に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、前記ローラ本体及び前記誘導発熱機構の間の空隙部に気体流を発生させて前記ローラ本体及び/又は前記誘導発熱機構を冷却する冷却機構とを備え、前記冷却機構は、前記ローラ本体の軸方向一端側に形成されて前記空隙部に連通する吸気口と、前記ローラ本体の軸方向他端側に形成されて前記空隙部に連通する排気口と、前記排気口に接続されて前記排気口から前記空隙部の気体を吸引する吸引機構とを備えることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、吸引機構をローラ本体の軸方向他端側に形成された排気口に接続して、当該排気口から気体を吸引することによって、ローラ本体の軸方向一端側に形成された吸気口から外部気体が吸い込まれて、ローラ本体及び誘導発熱機構の間の空隙部を流れる。このとき、ローラ本体及び誘導発熱機構の間の空隙は概略円筒形状をなしており、吸気口から吸い込まれた外部気体は、円周方向に均一に流れるようになり、ローラ本体及び/又は誘導発熱機構の冷却を均一に行うことができる。ここで、空隙部を流れて暖められた空気が積極的に吸引機構により吸引されて排気されるので、ローラ本体及び/又は誘導発熱機構をより一層均一に冷却することができる。また、ローラ本体を均一に冷却するという主たる効果を得るためのローラ本体の周辺構造としては、ローラ本体の軸方向他端側に吸引機構を設けるだけで良いので、ローラ本体の周囲の構成を複雑にすることもない。
その他、吸引機構に排気ダクトを設ける等により、高温気体を屋外等の適切な場所に排出し、ローラ本体の設置空間に高温気体が排出されないようにすることで、高温気体によって作業者の安全が脅かされることを防ぐだけでなく、連続材の連続熱処理工程に悪影響を及ぼすことも防ぐことができる。
【0011】
ローラ本体は、円筒状をなすシェル部と、シェル部の軸方向両端部に接続された一対のジャーナル部とを有している。また、ロール本体等の冷却効果やロール本体の周方向均温性を得るためには、空隙部を流れる気体は周方向において均一な流速で流れることが望ましい。
このためには、前記吸気口は、軸方向一端側のジャーナル部に複数形成されていることが望ましい。吸気口を複数設けることによって、ジャーナル部の機械的強度を確保しながらも、吸気抵抗を小さくしつつ、空隙部の周方向に万遍なく気体を吸い込むことができる。
【0012】
空隙部における気体の流速を周方向においてより一層均一にするためには、前記吸気口は、前記軸方向一端側のジャーナル部において周方向に等間隔に形成されていることが望ましい。
【0013】
吸気口からローラ本体内に異物が侵入すると、誘導発熱機構の誘導コイルが破損するなどの問題が生じ得る。この問題を好適に解決するためには、前記吸気口には、吸引される気体中の異物を除去するフィルタが設けられていることが望ましい。ここで、フィルタの開口率(又は目開き)は、ローラ本体の周囲に発生する粉塵に応じて種々設定することができる。なお、フィルタの開口率が小さい場合には、吸気抵抗が大きくなってしまうため、所望の風速を得るためには、高圧の吸引装置を用いる等のように吸引機構の吸引能力を大きくする必要がある。
【0014】
排気口はローラ本体側に設けられているので回転するが、吸引機構は静止側に設けられているので回転しない。回転する排気口から空隙部の気体を吸引するための具体的な実施の態様としては、前記吸引機構は、静止側において前記排気口を覆うように設けられた静止体と、当該静止体に接続されて前記排気口から前記空隙部の気体を吸引する吸引装置とを備えることが考えられる。ここで、静止体は、吸引機構の専用の部品であっても良いし、ローラ本体に温度検出装置の回転トランスが設けられている場合には、当該回転トランスのステータを保持するステータハウジングであっても良いし、又は、当該ステータハウジングと一体形成されたものであっても良い。
【0015】
前記ローラ本体が軸方向両端部に設けられた一対の駆動軸を有する構成の場合、空隙部を流れる気体とローラ本体のシェル部の内面との接触面をできる限り大きくするためには、排気口を軸方向他端側の駆動軸の外側周面に形成することが考えられる。この構成において、前記静止体は、軸方向に前記排気口を挟むように設けられた2つの軸受を介して、前記排気口を覆うように前記駆動軸に設けることが考えられる。
【0016】
前記誘導発熱機構は、誘導コイルと、当該誘導コイルを支持する支持軸とを有している。この構成において、支持軸は軸受を介してローラ本体の内部に支持されている。このとき、軸受が高温に晒されるとグリス劣化が早くなり損傷に早期に至る恐れがある。この軸受の損傷は、誘導コイルとローラ本体との共回りの要因となり、電気的な重大事故を招く恐れがある。
排出側の高温気体に晒される可能性がある軸受を無くして、上記の問題を好適に解決するためには、前記支持軸の軸方向一端部は、軸受を介して前記ローラ本体に支持されており、前記支持軸の軸方向他端部は、静止側に設けられた部材(例えば支持軸用機台)に支持されていることが望ましい。
なお、この構成の場合には、軸方向他端側において、ローラ本体におけるジャーナル部の駆動軸と支持軸との間の隙間から外部気体を吸い込まないように、回転シールを設ける必要がある。
【0017】
また、前記支持軸が、前記ローラ本体の軸方向両端側それぞれにおいて軸受を介して支持された構成の場合には、前記ローラ本体の軸方向他端側に設けられた軸受は、前記排気口よりも軸方向外側に形成されていることが望ましい。
この構成であれば、軸方向他端側の軸受が排気口よりも軸方向外側にあるので、当該軸受が積極的に高温気体に晒されることを避けることができ、軸受の寿命低下を抑制することができる。また、軸方向他端側の軸受と排気口との間に遮蔽板等の遮蔽構造を設けて通気抵抗を増大することにより、軸受からの外部気体の吸い込みを防止し、また、軸受の高温化対策を行うことができる。
【0018】
ローラ本体の軸方向他端側の構成を簡単にするためには、前記静止体は、前記支持軸の軸方向他端側を支持するものであることが望ましい。
【0019】
吸引機構の構成を簡単にするためには、前記吸引装置は、配管を介さずに前記静止体に一体的に設けられていることが望ましい。
【0020】
吸引装置としては、例えば電動送風機やブロアといった電動のものが考えられる。一方、工場などの誘導発熱ローラ装置の設置場所に圧縮気体源がある場合には、前記吸引装置として、前記圧縮気体源から圧縮気体が供給されて排出口から気体を吸引する気体流増幅器を用いることができる。
【0021】
誘導発熱ローラ装置が腐食性ガスや可燃性ガスが含まれる雰囲気に設置される場合には、当該腐食性ガス又は可燃性ガスがローラ本体の吸い込まれることによって、重大な事故を招く恐れがある。この問題を好適に解決するためには、誘導発熱ローラ装置が前記吸気口に気体を供給する供給機構をさらに備え、前記供給機構は、前記吸気口に気体を供給する供給配管と、当該供給配管と前記吸気口とを接続するジョイント部材とを有することが望ましい。
【0022】
吸引装置により排気口から排出される気体は高温となっており、当該高温気体は外部に排出される。そうすると、周囲環境への熱影響の問題が生じる。このため、前記ローラ本体の外部において前記吸気口及び前記排気口を連通し、前記吸引装置により前記排気口から吸引された気体を前記吸気口に戻す循環経路と、前記循環経路に設けられ、前記気体を冷却する熱交換器とをさらに備えることが望ましい。この構成であれば、吸気及び排気による影響を低減することができる。
【0023】
ローラ本体等の冷却を行う目的は、運転終了後に早く安全な温度に低下させることや、生産品種の変更に伴う運転温度の低い方への設定変更の際に早く温度を低下させること、又は、他の機能を持った別のローラ本体に交換する際に早く温度を低下させること等である。これらの場合には、基本的に負荷運転はされない。
一方、ロール本体に入ってくる負荷(熱処理物)が高温であるため、負荷からローラ本体に入熱があることで、電気入力を切断してもローラ本体の温度が徐々に上昇してしまう場合がある。このような場合は、負荷の入熱を少し上回る抜熱をして、その上回った分だけを誘導加熱によって入熱することにより、所定の温度に安定制御する温度制御方法がある。このような運転では、負荷運転時の冷却が必要であるため、冷却時におけるローラ本体の軸方向の均温性が要求される。このため、前記ローラ本体は、気液二相の熱媒体が封入されて軸方向に延設されたジャケット室を有することが望ましい。
【0024】
ロール本体における冷却熱量及び冷却に要する時間は、気体の流速すなわち流量との比例関係がある。つまり、空隙部における気体の流量を上げると、冷却熱量が増加して冷却に要する時間は短縮される。しかし、負荷運転においては、負荷の熱量や運転条件によって必要な冷却量は異なってくるので、それに応じて、前記冷却機構は、前記空隙部を流れる気体の流量を調整するものであることが望ましい。この構成であれば、効率的に所定のローラ本体の温度に調整することができる。
【0025】
冷却機構により、誘導発熱機構の誘導コイルの外側周面には気体が流れるので、湿気や汚染物質が侵入して、絶縁低下を招く恐れがある。このため、前記誘導発熱機構の誘導コイルの外周面は、例えばポリイミド系、シリコン系又はエポキシ系等の絶縁ワニスによって被覆されていることが望ましい。なお、絶縁ワニスは、誘導コイルが達する最高温度に耐える種類のものを選択することができる。
【0026】
誘導発熱機構とローラ本体とが接触すると地絡事故に繋がる恐れがあり、両者の間には、一定の空隙が必要となる。ローラ本体と誘導発熱機構との間の空隙部を小さくして気流の流速を大きくし、冷却効果を向上させるためには、前記誘導発熱機構の外周に、前記ローラ本体の内周径よりも小さい絶縁パイプが固定されており、前記ローラ本体と前記絶縁パイプとの間に前記空隙部が形成されていることが望ましい。また、絶縁パイプを設けているので、万が一、絶縁パイプとローラ本体とが接触しても、大きな事故に繋がりにくくなる。
【0027】
ローラ本体の内面に湿気が付着すると錆が発生して、絶縁低下を招く恐れがある。このため、前記ローラ本体の内面は防錆材料(例えば、硬質クロムメッキ、ニッケルメッキ、ステンレスコート(商品名)などの防錆塗料等)によって被覆されていることが望ましい。
【0028】
ローラ本体の内面の伝熱面積を大きくして冷却効果を増大させるためには、前記ローラ本体の内面に凹凸構造が形成されていることが望ましい。ここで、ローラ本体の内面は誘導加熱による発熱部となるため、発熱量の平準化の観点から、円周方向及び軸方向に規則的な形状の加工であることが望ましい。
【発明の効果】
【0029】
このように構成した本発明によれば、ローラ本体及び/又は誘導発熱機構を気体により均一に冷却できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】第1実施形態の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】同実施形態の吸気口の構成を示すA-A線断面図である。
【
図3】同実施形態の排気口の構成を示すB-B線断面図である。
【
図4】同実施形態のローラ本体の軸方向他端側の構成を示す断面図である。
【
図5】風量の違いによるローラ本体の降温特性を示すグラフである。
【
図6】第2実施形態のローラ本体の軸方向他端側の構成を示す断面図である。
【
図7】第3実施形態のローラ本体の軸方向他端側の構成を示す断面図である。
【
図8】吸引機構の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図9】吸引機構の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図10】吸引機構の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図11】吸気口の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図12】吸気口の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図13】吸気口の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図14】吸気口の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図15】変形実施形態の誘導発熱ローラ装置における供給機構を模式的に示す断面図である。
【
図16】変形実施形態の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す図である。
【
図17】変形実施形態のローラ本体の構成を示す断面図である。
【
図18】変形実施形態のローラ本体の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100は、例えばプラスチックフィルム、紙、布、不織布、合成繊維、金属箔等のシート材又はウェブ材、線(糸)材等の連続材の連続熱処理工程等において用いられるものである。
【0032】
具体的にこの誘導発熱ローラ装置100は、
図1に示すように、回転自在に支持された中空円筒状のローラ本体2と、このローラ本体2の中空内に静止状態で配置される誘導発熱機構3とを備えている。
【0033】
ローラ本体2は、円筒状をなすシェル部21と、当該シェル部21の両端部に設けられた一対のジャーナル部22とを有している。このジャーナル部22は、シェル部21の端部開口を覆うフランジ部221と、当該フランジ部221に一体形成された中空の駆動軸222とを有している。また、駆動軸222は、転がり軸受等の軸受41、42を介して機台51、52に回転自在に支持されている。そして、ローラ本体2は、例えばモータ等の回転駆動機構(不図示)により外部から与えられる駆動力によって回転されるように構成されている。
【0034】
また、ローラ本体2のシェル部21には、長手方向(軸方向)に延びる気液二相の熱媒体を封入するジャケット室21Aが、周方向全体に間隔を空けて例えば等間隔に複数形成されている。このジャケット室21A内に封入した気液二相の熱媒体の潜熱移動によりシェル部21の表面温度を均一化する。
【0035】
誘導発熱機構3は、円筒形状をなす円筒状鉄心31と、当該円筒状鉄心31の外側周面に巻装された誘導コイル32と、それらを支持する支持軸331、332とを有する。支持軸331、332は、円筒状鉄心31の両端部それぞれに設けられている。この支持軸331、332は、それぞれ駆動軸222の内部に挿通されており、転がり軸受等の軸受61、62を介して駆動軸222に対して回転自在に支持されている。これにより、誘導発熱機構3は、回転するローラ本体2の内部において、ローラ本体2に対して静止状態に保持される。誘導コイル32には、リード線L1が接続されており、このリード線L1には、交流電圧を印加するための交流電源(不図示)が電力調整装置(不図示)を介して接続されている。
【0036】
このような誘導発熱機構3により、誘導コイル32に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体2のシェル部21を通過する。この通過によりシェル部21に誘導電流が発生し、その誘導電流でシェル部21はジュール発熱する。
【0037】
そして、本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、ローラ本体2及び誘導発熱機構3の間の空隙部X1に気体流を発生させてローラ本体2及び誘導発熱機構3を冷却する冷却機構7を備えている。なお、本実施形態の冷却媒体である気体は、ローラ本体2の設置空間の雰囲気ガスである空気であるが、その他、雰囲気ガスを例えば窒素ガス等にすることによって、前記気体を窒素ガス等にしても良い。
【0038】
この冷却機構7は、
図1に示すように、ローラ本体2の外部気体を、ローラ本体2及び誘導発熱機構3の間に形成される概略円筒状をなす空隙部X1の軸方向一端部から導入するとともに、空隙部X1の軸方向他端部から外部に排出することにより、ローラ本体2及び誘導発熱機構3を冷却するものである。なお、軸方向とは、
図1の矢印に示すように紙面左右方向である。
【0039】
具体的に冷却機構7は、ローラ本体2の軸方向一端側に形成されて空隙部X1に連通する吸気口71と、ローラ本体2の軸方向他端側に形成されて空隙部X1に連通する排気口72と、排気口72に接続されて排気口72から空隙部X1の気体を吸引する吸引機構73とを備えている。
【0040】
吸気口71は、
図2に示すように、軸方向一端側のジャーナル部22におけるフランジ部221に複数形成されている。また、吸気口71は、軸方向一端側のフランジ部221において周方向に例えば等間隔に形成されている。各吸気口71は、フランジ部221に軸方向に沿って形成された貫通孔から形成されている。本実施形態の吸気口71の開口形状は、円形状をなすものであるが、その他、長円形状、楕円形状、矩形状や多角形状等種々の形状とすることができる。そして、吸気口71には、吸引される気体中の異物を除去するフィルタ8が設けられている。本実施形態のフィルタ8は、複数の吸気口71を閉塞する一体のものとしているが、複数の吸気口71それぞれに設けられるものであっても良い。
【0041】
排気口72は、
図3に示すように、軸方向他端側のジャーナル部22における駆動軸222の外側周面に複数形成されている。また、排気口72は、軸方向他端側の駆動軸222において周方向に例えば等間隔に形成されている。各排気口72は、駆動軸222の側周壁において径方向に沿って形成された貫通孔から形成されている。本実施形態の排気口72の開口形状は、円形状をなすものであるが、その他、長円形状、楕円形状、矩形状や多角形状等種々の形状とすることができる。なお、軸方向他端側の駆動軸222において、排気口72よりも軸方向外側に軸受62が設けられている。
【0042】
吸引機構73は、特に
図4に示すように、静止側において排気口72を覆うように設けられた静止体たるカバー体731と、当該カバー体731に接続されて排気口72から空隙部X1の気体を吸引する吸引装置732とを備える。なお、本実施形態では、カバー体731と吸引装置732とは接続配管(接続ダクト)733により接続されている。
【0043】
カバー体731は、排気口72が形成された駆動軸222の外側周面の外側に設けられた概略円筒形状をなすものである。カバー体731の内側周面は、駆動軸222の外側周面とともに、排気口72から排出される気体を外部に排出するための排出空間X2を形成する。カバー体731には、接続ダクト733が接続される接続ポートP1が形成されており、前記排出空間X2は接続ポートP1と連通している。そして、このカバー体731は、軸方向において排気口72を挟むように設けられた2つの軸受91、92を介して、排気口72を覆うように駆動軸222に設けられている。本実施形態では、カバー体731は、駆動軸222において機台52よりも軸方向外側に設けられている。また、カバー体731は、駆動軸222とともに回転しないように、静止側に固定されている。
【0044】
なお、カバー体731が設けられた駆動軸222の軸方向外側には、ローラ本体2のシェル部21の温度を検出する温度センサT1(
図1参照)の検出信号を静止側の制御部に送信するための回転トランス10が設けられている。回転トランス10は、ジャーナル部22の駆動軸222に設けられたロータ101と、当該ロータ101の周囲に配置されたステータ102とからなり、ステータ102は、円筒状をなすステータハウジング103に設けられている。
【0045】
吸引装置732は、カバー体731の接続ポートP1から排出空間X2を介して空隙部X1の気体を吸引するものであり、例えば、電動送風機やブロア、吸引ポンプ等である。この吸引装置732は、静止側に設けられている。また、吸引装置732の排気ポートP2には排気ダクト(不図示)が接続されており、当該排気ダクトの排気ポートP2は、例えば誘導発熱ローラ装置100の設置空間とは異なる外部空間(例えば屋外)に設けられている。なお、吸引装置732を前記外部空間に設けて、接続ダクト733によって外部空間に設けられた吸引装置732とカバー体731の接続ポートP1とを接続しても良い。また、吸引装置732は、例えば回転数を変更することによって吸引力が変更可能に構成されており、これにより、空隙部X1を流れる気体流量を調整することができる。その他、接続ダクトに流量調整バルブなどの流量調整機構を設けても良い。
【0046】
このような構成において、吸引装置732により吸引を開始すると、排気口72から空隙部X1の気体が吸引されるとともに、吸気口71からローラ本体2の周囲の外部気体が空隙部X1に吸い込まれる。そして、吸気口71から吸い込まれた気体が空隙部X1の内部を流れて排気口72から排出される。ここで、排気口72よりも軸方向外側に軸受62が位置しているため、大部分の高温気体は、軸受62に当たる前に排出口72から排出され、軸受62が高温気体に積極的に晒されることを防ぐことができる。
【0047】
また、本実施形態では、軸方向他端側の軸受62と排気口72との間に遮蔽板等の遮蔽構造11が設けられている。この遮蔽構造11によって、軸方向他端側の軸受62に高温気体が当たりにくくすることができ、また、軸受62側の通気抵抗が増大するので軸受62から外部気体が吸引されることを防止することができる。
【0048】
同様に、カバー体731と駆動軸222との間に設けられた軸受91、92の内側にも、遮蔽板等の遮蔽構造12が設けられている。この遮蔽構造12によって、軸受91、92に高温気体が当たりにくくすることができ、また、軸受91、92から外部気体が吸引されることを防止することができる。
【0049】
さらに本実施形態では、吸気口71から吸い込まれる外部気体が接触する部分に次のような処理が施されている。つまり、外部気体が接触する誘導コイル32の外周面は、例えばポリイミド系、シリコン系又はエポキシ系等の耐熱絶縁ワニスによって被覆されている。具体的には誘導コイル32の外側周面は、耐熱絶縁ワニスが塗布されている。また、外部気体が接触するローラ本体2の内面は、耐熱材料によって被覆されている。具体的には、ローラ本体2の内面は、耐熱塗料又は防錆塗料が塗布される、又は、防錆用のメッキ処理が施されている。
【0050】
<第1実施形態の効果>
このように構成した誘導発熱ローラ装置100によれば、吸引機構73をローラ本体2の軸方向他端側に形成された排気口72に接続して、当該排気口72から気体を吸引することによって、ローラ本体2の軸方向一端側に形成された吸気口71から外部気体が吸い込まれて、ローラ本体2及び誘導発熱機構3の間の空隙部X1を流れる。このとき、ローラ本体2及び誘導発熱機構3の間の空隙部X1は概略円筒形状をなしており、吸気口71から吸い込まれた外部気体は、円周方向に均一に流れるようになり、ローラ本体2及び誘導発熱機構3の冷却を均一に行うことができる。ここで、空隙部X1を流れて暖められた空気が積極的に吸引機構73により吸引されて排気されるので、ローラ本体2及び誘導発熱機構3をより一層均一に冷却することができる。また、ローラ本体2を均一に冷却するという主たる効果を得るためのローラ本体2の周辺構造としては、ローラ本体2の軸方向他端側に吸引機構73を設けるだけで良いので、ローラ本体2の周囲の構成を複雑にすることもない。
【0051】
その他、本実施形態によれば、吸引機構73に排気ダクトを設ける等により、高温気体を屋外等の適切な場所に排出し、ローラ本体2の設置空間に高温気体が排出されないようにすることで、高温気体によって作業者の安全が脅かされることを防ぐだけでなく、連続材の連続熱処理工程に悪影響を及ぼすことも防ぐことができる。
【0052】
ここで、風量(排出口から出る空気流量、すなわちX1部の空気の流速)の違いによるローラ本体の降温特性を調べた。なお、ローラ本体の寸法は、直径250mm、軸長1400mmである。周囲温度は20℃であり、ローラ本体の冷却開始温度は、200℃である。また、ローラ本体の回転数を90rpmとした状態においてローラ本体を冷却した場合のローラ本体の表面温度を測定した。風量は、7m
3/min、4m
3/min、1m
3/min、自然冷却(0m
3/min)とし、ローラ本体の表面温度が30℃に低下するまでの時間を計測した。
その結果を
図5に示す。
図5に示すように、自然冷却の場合は420分以上かかっているが、風量を上げるに連れて冷却時間が短縮されており、風量が7m
3/minの場合は60分未満となっている。
【0053】
ところで、ロール本体2(熱ロール)には必要な運転温度よりも高温の負荷が入ってくることで、電気入力を切断してもロール温度が上昇してくる場合がある。このような場合では気体通流による冷却だけでは高精度の温度制御が困難であることから、負荷からの入熱を少し上回る通風冷却をおこない、その上回った分の熱量だけを誘導加熱によって入力することで、所望の温度に精度よく制御する方法がある。この制御を行うにあたっては、前記に示した風量調整による冷却熱量制御が有効となる。
【0054】
さらに、冷却時であっても負荷運転されている場合はロール本体2のシェル部21の温度分布の均一性が極めて重要である。ローラ本体2のシェル部21には気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室21Aが形成されているので、冷却運転時におけるローラ本体2のシェル部21の軸方向の均温性を向上させることができる。
【0055】
また、吸気口71が、軸方向一端側のジャーナル部22に複数形成されているので、ジャーナル部22の機械的強度を確保しながらも、吸気抵抗を小さくしつつ、空隙部X1の周方向に万遍なく気体を吸い込むことができる。
【0056】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る誘導発熱ローラ装置について説明する。なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部材には、同一の符号を付している。
【0057】
第2実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、前記第1実施形態とは、主として、誘導発熱機構3の支持軸331、332の支持形式が異なる。
【0058】
具体的にこの誘導発熱ローラ装置100は、
図6に示すように、軸方向一端側の支持軸331が、転がり軸受等の軸受61を介して、軸方向一端側の駆動軸222に対して回転自在に支持されており、軸方向他端側の支持軸332が、軸方向他端側の駆動軸222から外部に延出して、静止側に設けられた部材(支持軸用機台)13に固定されている。
【0059】
この構成において吸引機構73により排気口72から吸引すると、ローラ本体2及び誘導発熱機構3の間の空隙部X1の気体が吸引されるだけでなく、軸方向他端側の駆動軸222と支持軸332との間の隙間、及び、回転トランス10から外部気体が吸引されてしまう。このため、本実施形態では、軸方向他端側において、駆動軸222の内側周面と支持軸332の外側周面との間に回転シール14が設けられている。なお、回転シール14は、回転トランス10のステータハウジング103の内側周面と駆動軸222の外側周面との間に設けても良い。
【0060】
このような構成において、吸引装置732により吸引を開始すると、排気口72から空隙部X1の気体が吸引されるとともに、吸気口71からローラ本体2の周囲の気体が空隙部X1に吸い込まれる。このとき、排気口72よりも軸方向他端側には回転シール14が設けられているので、軸方向他端側から外部気体が吸引されることを防ぐことができる。そして、吸気口71から吸い込まれた気体が空隙部X1の内部を流れて排気口72から排出される。ここで、ローラ本体2の内部において軸方向他端側には軸受(前記実施形態の軸受62)が設けられていないので、高温気体が軸受に当たることはない。
【0061】
<第2実施形態の効果>
このように構成した誘導発熱ローラ装置100によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、軸方向他端側の支持軸332を静止側の機台13に支持させているので、高温気体に晒される可能性がある軸受を無くして、高温気体により生じる軸受の損傷を防止して、誘導コイル32とローラ本体2との共回りを防ぐことができる。
【0062】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る誘導発熱ローラ装置について説明する。なお、前記第1、2実施形態と同一又は対応する部材には、同一の符号を付している。
【0063】
第3実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、前記第2実施形態の構成において、
図7に示すように、少なくともカバー体731と、回転トランス10のステータハウジング103とが一体形成されたものである。なお、
図7では、カバー体731及びステータハウジング103に加えて、支持軸用機台13も一体形成された例を示している。
【0064】
具体的にこの誘導発熱ローラ装置100は、カバー体731、ステータハウジング103及び支持軸用機台13が、静止体である共通の円筒状部材15から構成されている。この円筒状部材15の側周壁が2つの軸受91、92を介して駆動軸222に設けられている。当該2つの軸受91、92の間の空間が排出空間X2となる。側周壁において2つの軸受91、92の間には、吸引装置732が接続される接続ポートP1が形成されている。また、側周壁の内側周面には、回転トランス10のロータ101に対向する位置に回転トランス10のステータ102が設けられている。さらに、円筒状部材15の底壁には支持軸332が貫通しており、当該支持軸332は底壁に固定されている。この円筒状部材15は図示しない部材により静止側に固定されている。この静止側の部材は、円筒状部材15の回転を防止するとともに、ロール本体2等の熱伸びを逃がすべく軸方向にはスライド自在に支持する構成となっている。
【0065】
<第3実施形態の効果>
このように構成した誘導発熱ローラ装置100によれば、前記第1、第2実施形態の効果に加えて、カバー体731、ステータハウジング103及び支持軸用機台13が、共通の円筒状部材15から構成されているので、ローラ本体2の軸方向他端側の構成を簡単にするとともに、部品点数を削減することができる。
【0066】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記各実施形態に限られるものではない。
【0067】
例えば、
図8に示すように、吸引装置732をカバー体731(又は円筒状部材15)の接続ポートP1に接続ダクトを介さずに直接取り付ける構成であっても良い。
【0068】
この場合、吸引装置732として、圧縮気体源から圧縮気体が供給されて排出口から気体を吸引する気体流増幅器を用いても良い。この構成であれば、工場などの誘導発熱ローラ装置100の設置場所に圧縮気体源がある場合に、別途送風機やブロア等を準備する必要が無い。
【0069】
前記第3実施形態において、カバー体731、ステータハウジング103及び支持軸用機台13を一体形成したものであったが、カバー体731及びステータハウジング103を一体形成したものであっても良い。この場合、長手方向他端側の支持軸332は、支持軸用機台13により支持される。また、第1実施形態の構成においてカバー体731及びステータハウジング103を一体形成しても良い。
【0070】
カバー体731及びステータハウジング103等を一体形成する場合には、接続ポートP1は、
図9及び
図10に示すように、共通の円筒状部材15において回転トランス10のステータ102よりも軸方向外側(底壁側)に形成しても良い。なお、
図9は、支持軸332が支持軸用機台13により支持される構成であり、
図10は、支持軸332が円筒状部材15により支持される構成である。このとき、排気口72は、軸方向他端側における駆動軸222(又はロータ101)と支持軸332との間に形成される円環状の空間から構成される。
【0071】
また、
図9の構成の場合、円筒状部材15の開口部分、つまり、ロータ101及びステータ102の間から外部気体が吸引されてしまうので、円筒状部材15の側周壁においてステータ102よりも開口側に、回転シール16を設けることが望ましい。また、
図9及び
図10の何れにおいても、円筒状部材15の側周壁においてステータ102と回転シール16又は軸受9との間に外部と連通する貫通孔15hを形成して、当該貫通孔15hから適度な流量の気体を吸い込ませて、ロータ101及びステータ102を冷却してそれらの劣化を抑制する構成としている。なお、
図10では、軸受9には、軸受9からの外部気体の吸い込みを防止するために遮蔽板等の遮蔽構造を設けることが望ましい。
【0072】
前記各実施形態では、排気口72をジャーナル部22の駆動軸222の外側周面に形成しているが、前記実施形態の吸気口71と同様に、ジャーナル部22のフランジ部221に形成しても良い。この場合には、当該フランジ部221に対向するように円環状のカバー体731が設けられる。
【0073】
前記各実施形態では、吸気口71を軸方向一端側におけるジャーナル部22のフランジ部221に形成しているが、その他、空隙部X1の軸方向一端側に気体を供給できる位置であれば、種々変更が可能である。
【0074】
例えば、
図11に示すように、軸方向一端側の支持軸331をローラ本体2の外部に設けた機台17に支持させて、軸方向一端側における駆動軸222と支持軸331との間に形成される円環状の空間を吸気口71としても良い。なお、他の位置に設けられた吸気口と併用しても良い。また、この吸気口71にフィルタを設ける場合には、回転部(駆動軸222)と非回転部(支持軸331)との間に設置する必要があるため、フィルタの内側周面と支持軸331の外側周面との間のクリアランスは、許容される異物のサイズ以下である必要がある。
【0075】
また、
図12に示すように、支持軸331の内部に軸中心に同軸上に内部流路R1を形成し、当該内部流路R1を支持軸331の誘導コイル32側で放射状に分岐させて、支持軸331の外側周面において開口するように構成しても良い。この場合、支持軸331の軸方向端面における内部流路R1の開口が吸気口71となる。なお、他の位置に設けられた吸気口と併用しても良い。
【0076】
さらに、
図13に示すように、軸方向一端側における駆動軸222の側周壁に軸方向に沿って貫通孔H1を形成しても良い。このとき、貫通孔H1は、側周壁において周方向において複数、等間隔に形成することが望ましい。この場合、駆動軸222の軸方向端面における貫通孔H1の開口が吸気口71となる。なお、他の位置に設けられた吸気口と併用しても良い。
【0077】
その上、
図14に示すように、軸方向一端側における駆動軸222の側周壁に径方向に沿って貫通孔H2を形成しても良い。このとき、貫通孔H2は、軸方向一端側の軸受61よりも軸方向内側に形成される。この場合、貫通孔H2の径方向外側の開口が吸気口71となる。なお、他の位置に設けられた吸気口と併用しても良い。
【0078】
誘導発熱ローラ装置100が腐食性ガスや可燃性ガスが含まれる有害な雰囲気に設置される場合には、
図15に示すように、誘導発熱ローラ装置100が、吸気口71に気体を供給する供給機構18をさらに備えるものであっても良い。この構成であれば、雰囲気中の腐食性ガス又は可燃性ガスがローラ本体2の吸い込まれることによって、重大な事故を招く恐れを解消することができる。なお、供給する気体は、空気の他に、例えば窒素ガス等の不活性ガスであっても良い。また、必要に応じて、気体中にミストを含んだものを供給しても良い。
【0079】
この供給機構18は、吸気口71に気体を供給する供給配管181と、当該供給配管181と前記吸気口71とを接続するジョイント部材182とを有する構成とすることが考えられる。なお、供給配管181は、ジョイント部材182に形成された接続ポートP3に接続されている。
図15の構成では、吸気口71は、駆動軸222の外側周面に形成されており、供給配管181の気体導入口181aは、有害な雰囲気と壁Wによって隔離された雰囲気に設けられている。
【0080】
ジョイント部材182は、吸気口71が形成された駆動軸222の外側周面の外側に設けられた概略円筒形状をなすものである。ジョイント部材182の内側周面は、駆動軸222の外側周面とともに、吸気口71に気体を導くための導入空間X3を形成する。ジョイント部材182には、供給配管181が接続される接続ポートP3が形成されており、前記導入空間X3は接続ポートP3と連通している。そして、このジョイント部材182は、軸方向において吸気口71を挟むように設けられた2つの軸受191、192を介して、吸気口71を覆うように駆動軸222に設けられている。なお、ジョイント部材182は、駆動軸222とともに回転しないように、静止側に固定されている。また、軸受61及び軸受191、192には、有害な雰囲気のガスを吸い込まないように遮蔽板等の遮蔽構造を設けることが望ましい。
【0081】
また、誘導発熱ローラ装置100は、
図16に示すように、ローラ本体2の外部において吸気口71及び前記排気口72を連通し、吸引装置732により排気口72から吸引された気体を吸気口71に戻す循環経路CPと、循環経路CPに設けられ、気体を冷却する熱交換器HEとをさらに備えるものであってもよい。
【0082】
図16に示す循環経路CPは、前記実施形態の吸引機構73と、当該吸引機構73の吸引装置732の排気ポートP2と吸気口71とを接続する接続配管(接続ダクト)CP1とを有する。接続配管CP1と吸気口71とは、排気口72と吸引機構73との接続構造に用いられるカバー体731と同じ構造のカバー体CP2により接続されている。このような循環経路CPを有する構成であれば、吸気及び排気による影響を低減することができる。
【0083】
さらに誘導発熱ローラ装置100は、
図17に示すように、誘導発熱機構3の外周に、ローラ本体2の内周径よりも小さい絶縁パイプ34が固定されており、ローラ本体2と絶縁パイプ34との間に空隙部X1が形成されていてもよい。この絶縁パイプは、誘導発熱機構3の誘導コイル32の全体を覆うように設けられている。また、絶縁パイプ34は、誘導コイル32から外径方向に離間して設けられている。この絶縁パイプ34によりローラ本体2と誘導発熱機構3との間の空隙部X1を小さくして気流の流速を大きくし、冷却効果を向上させることができる。また、万が一、絶縁パイプ34とローラ本体2とが接触しても、大きな事故に繋がりにくくなる。
【0084】
その上、ローラ本体2の内面の伝熱面積を大きくして冷却効果を増大させるためには、
図18に示すように、ローラ本体2の内面に凹凸構造2Zが形成されていることが望ましい。
図18では、ローラ本体2の内面に凹部を形成することにより凹凸構造2Zを形成しているが、当該内面に凸部を形成することにより凹凸構造2Zを形成してもよい。ここで、ローラ本体2の内面は誘導加熱による発熱部となるため、発熱量の平準化の観点から、円周方向及び軸方向に規則的な形状の加工であることが望ましい。
【0085】
前記実施形態のカバー体731及び円筒状部材15は、円筒形状をなすものであったが、駆動軸222の外周を覆う形状であれば、円筒形状に限られず、例えば、四角筒などの多角筒形状をなすものなどであってもよい。
【0086】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
100・・・誘導発熱ローラ装置
2・・・ローラ本体
21・・・シェル部
21A・・・ジャケット室
22・・・ジャーナル部
222・・・駆動軸
3・・・誘導発熱機構
31・・・誘導コイル
331、332・・・支持軸
X1・・・空隙部
7・・・冷却機構
71・・・吸気口
8・・・フィルタ
72・・・排気口
73・・・吸引機構
731・・・カバー体(静止体)
732・・・吸引装置
61、62・・・軸受
91、92・・・軸受
13・・・機台(支持軸用機台)
15・・・円筒状部材(静止体)
18・・・供給機構
181・・・供給配管
182・・・ジョイント部材