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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】殺菌装置及び殺菌方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 55/08 20060101AFI20220526BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20220526BHJP
   B65B 55/04 20060101ALN20220526BHJP
【FI】
B65B55/08 A
A61L2/10
B65B55/04 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018009579
(22)【出願日】2018-01-24
(65)【公開番号】P2019127285
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】507142395
【氏名又は名称】株式会社ブリッジス
(74)【代理人】
【識別番号】100106312
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敬敏
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】竹内 夕桐子
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 守人
(72)【発明者】
【氏名】松田 千恵
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-091916(JP,A)
【文献】特開2000-053111(JP,A)
【文献】特開平03-000625(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01120121(EP,A2)
【文献】特開平11-114029(JP,A)
【文献】特開2016-182987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 55/08
A61L 2/10
B65B 55/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する容器に紫外線を照射して殺菌処理を施す殺菌装置であって、
前記開口部から前記容器の内部に挿入され得る外輪郭でかつ前記容器の深さ方向の全域に亘る長さに形成されて放射状に紫外線を発光する筒面状光源と、
前記筒面状光源を前記容器に対して進退自在に支持及び駆動する支持駆動機構と、
備え、
前記筒面状光源は、前記容器の深さ方向の全域に亘る長さに形成された円柱状の保持部材と、平板状に形成され放射状に紫外線を発光するべく前記保持部材の外周面に巻き付けて固定された面状光源を含み、
前記支持駆動機構は、前記保持部材を介して前記筒面状光源を支持している、
ことを特徴とする殺菌装置。
【請求項2】
前記面状光源は、前記容器の深さ方向に長尺で周方向に隣接して配列された複数の放電チューブと、前記複数の放電チューブの一端側領域及び他端側領域にそれぞれ隣接するように配置された少なくとも一対の薄膜電極と、前記複数の放電チューブ及び一対の薄膜電極を保持するフレキシブル基板と、を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記支持駆動機構は、複数の容器に対応させるべく、前記筒面状光源を複数配列させた状態で支持及び駆動するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記容器の外側から紫外線を照射する外部面状光源を含む、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一つに記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記外部面状光源は、所定方向に長尺で互いに隣接して配列された複数の放電チューブと、前記複数の放電チューブの一端側領域及び他端側領域にそれぞれ隣接するように配置された少なくとも一対の薄膜電極と、前記複数の放電チューブ及び一対の薄膜電極を保持するフレキシブル基板と、を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記外部面状光源は、前記容器を複数配列した状態で、前記複数の容器の外壁面に対向するように平面状に又は湾曲面状に形成されている、
ことを特徴とする請求項に記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記容器を前記筒面状光源の軸線回りに回転させる回転機構を含む、
ことを特徴とする請求項1ないしいずれか一つに記載の殺菌装置。
【請求項8】
開口部を有する容器に紫外線を照射して殺菌処理を施す殺菌方法であって、
前記開口部から前記容器の内部に挿入され得る外輪郭でかつ前記容器の深さ方向の全域に亘る長さに形成された円柱状の保持部材及び平板状に形成され放射状に紫外線を発光するべく前記保持部材の外周面に巻き付けて固定された面状光源を含み放射状に紫外線を発光する筒面状光源を、前記容器の内部に挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後に、前記筒面状光源に電力を供給して紫外線を発光させる発光工程と、を含む、
ことを特徴とする殺菌方法。
【請求項9】
前記挿入工程及び発光工程は、複数の容器に対して同時に施される、
ことを特徴とする請求項に記載の殺菌方法。
【請求項10】
前記挿入工程の後に、前記容器の外側から対向する外部面状光源に電力を供給して紫外線を発光させる第2発光工程を含む、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の殺菌方法。
【請求項11】
前記第2発光工程と同時に、前記容器を前記筒面状光源の軸線回りに回転させる回転工程を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載の殺菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を殺菌する乾式の殺菌装置及び殺菌方法に関し、特に、小径の開口部を有する容器の内側から紫外線を照射して殺菌する殺菌装置及び殺菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の殺菌装置としては、電源と、電源から電力の供給を受けて紫外線を発光する複数のLED光源と、先端領域において複数のLED光源を支持する棒状の光源支持体を備え、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のボトルの前駆体である試験管形状のプリフォームの内部に、光源支持体を挿入して紫外線を照射するものが知られている。(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この殺菌装置においては、矩形状のLED光源体が光源支持体の先端領域にのみ配置されて紫外線の発光源が形成されている。また、殺菌処理の対象物は、成型後のボトルではなく、その前駆体としての試験管状のプリフォームである。
したがって、プリフォームの状態で殺菌処理が行われても、プリフォームからボトルに成型される工程あるいはその取扱い過程において菌の付着等が懸念される。
また、この殺菌装置を、プリフォームではなく面積の大きいボトルに適用する場合、十分な殺菌処理を行うには時間を要し、生産性が低下する虞がある。
【0004】
また、他の殺菌装置としては、電源と、電源から電力の供給を受けて紫外線を発光する複数の光源と、外周面の全域において複数の光源を支持する棒状の光源支持体と、光源支持体の内部を冷却する冷却機構を備え、光源支持体をボトルの前駆体である試験管形状のプリフォームの内部に挿入して紫外線を照射するものが知られている。(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
この殺菌装置においては、光源支持体が、略角柱形状に形成され、その四方の各々の側面において複数の光源が二列に配列されて紫外線の発光源が形成されている。また、一つの光源としては、LED発光素子を四辺が約5mm程度のハウジング内に収容してパッケージ化されたものを使用している。すなわち、複数の光源が配列された四角柱状の光源支持体において、その断面の対角線の長さはプリフォームの開口部の直径より僅かに小さい値となる。
したがって、この光源支持体をプリフォームの開口に対して挿脱する際には、干渉しないように操作する必要がある。その結果、殺菌処理の円滑な操作が妨げられ、殺菌処理の迅速化には限界がある。また、個々の光源の発熱が大きいため、冷却機構を必要としており、構造の複雑化を招いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-78895号公報
【文献】特開2017-143971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化、小型化等を図りつつ、殺菌処理を確実に行うことができ、殺菌処理の円滑化及び高速化、生産性の向上、低コスト化等を達成できる殺菌装置及び殺菌方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の殺菌装置は、開口部を有する容器に紫外線を照射して殺菌処理を施す殺菌装置であって、開口部から容器の内部に挿入され得る外輪郭でかつ容器の深さ方向の全域に亘る長さに形成されて放射状に紫外線を発光する筒面状光源と、筒面状光源を容器に対して進退自在に支持及び駆動する支持駆動機構とを備え、筒面状光源は、容器の深さ方向の全域に亘る長さに形成された円柱状の保持部材と、平板状に形成され放射状に紫外線を発光するべく保持部材の外周面に巻き付けて固定された面状光源を含み、支持駆動機構は、保持部材を介して筒面状光源を支持している、ことを特徴としている。
この構成によれば、支持駆動機構を駆動して、筒面状光源を容器の開口部から内部に挿入し、筒面状光源を発光させて容器の内壁面に向けて紫外線を照射することにより、容器に対して変形や劣化を生じさせることなく、殺菌処理を施すことができる。
ここでは、発光源が紫外線を放射状に発光する筒面状光源として形成されているため、殺菌処理の対象物として、樹脂製のボトル、ガラス製の容器、金属製の容器等、小径の開口部を有する種々の容器を適用することができる。
特に、筒面状光源が容器の深さ方向の全域をカバーするため、挿入完了後に即座に発光させることで、殺菌処理の高速化、生産性の向上等を達成することができる。
また、深紫外線を照射することにより、極短時間(例えば、0.5秒~2分程度)の照射で確実に殺菌処理を施すことができ、電力の使用量を抑制して低コスト化等を達成することができる。
さらに、筒面状光源が、容器の深さ方向の全域に亘る長さに形成された円柱状の保持部材と、平板状に形成され放射状に紫外線を発光するべく保持部材の外周面に巻き付けて固定された面状光源により形成されているため、面状光源だけを湾曲させて筒状に形成したものに比べて、構造をより堅固にして耐久性を高めることができ、又、筒面状光源を容器に挿入する際に先端側の振れ等を防止でき、容器に対して筒面状光源をより高精度に位置決めすることができる。
【0010】
上記殺菌装置において、面状光源は、容器の深さ方向に長尺で周方向に隣接して配列された複数の放電チューブと、複数の放電チューブの一端側領域及び他端側領域にそれぞれ隣接するように配置された少なくとも一対の薄膜電極と、複数の放電チューブ及び一対の薄膜電極を保持するフレキシブル基板とを含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、フレキシブル基板上に、適宜絶縁層を介して薄膜電極及び複数の放電チューブを積層した平面をなす面状光源を準備し、この面状光源を適宜筒状に変形させて筒面状光源を形成することができる。
特に、円柱状の保持部材の外周面に対して、フレキシブル基板が接するように面状光源を巻き付けて接着剤等により固着させることで、容易に筒面状光源を形成することができる。
【0011】
上記殺菌装置において、支持駆動機構は、複数の容器に対応させるべく、筒面状光源を複数配列させた状態で支持及び駆動するように形成されている、構成を採用してもよい。
この構成によれば、複数の容器に対して、同時に殺菌処理を施すことができる。それ故に、生産性をさらに向上させることができる。
【0012】
上記殺菌装置において、容器の外側から紫外線を照射する外部面状光源を含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、筒面状光源により容器の内側から紫外線を照射して殺菌処理を施すと共に、外部面状光源により容器の外側から紫外線を照射して殺菌処理を施すことができる。
これにより、殺菌処理をより確実に行うことができる。
【0013】
上記殺菌装置において、外部面状光源は、所定方向に長尺で互いに隣接して配列された複数の放電チューブと、複数の放電チューブの一端側領域及び他端側領域にそれぞれ隣接するように配置された少なくとも一対の薄膜電極と、複数の放電チューブ及び一対の薄膜電極を保持するフレキシブル基板とを含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、フレキシブル基板上に、適宜絶縁層を介して薄膜電極及び複数の放電チューブを積層した平面をなす面状光源を、容器に対向させるように配置することで、容器の外側から紫外線を照射する構造を得ることができる。
ここで、放電チューブの伸長方向は、容器の深さ方向に限るものではなく、種々の方向に方向付けて面状光源を形成することができる。
【0014】
上記殺菌装置において、外部面状光源は、容器を複数配列した状態で、複数の容器の外壁面に対向するように平面状に又は湾曲面状に形成されている、構成を採用してもよい。
この構成によれば、外部面状光源を平面状に形成した場合は、直線的に配列された複数の容器に対向させるように外部面状光源を配置することができる。また、外部面状光源を湾曲面状に形成した場合は、環状に配列された複数の容器に対向させるように外部面状光源を配置することができる。
また、外部面状光源を平板又は湾曲板に張り付けて平板状に又は湾曲面状に形成した場合は、外部面状光源をより堅固に形成でき、所定の位置に確実に設置することができる。
【0015】
上記殺菌装置において、容器を筒面状光源の軸線回りに回転させる回転機構を含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、回転機構により容器を回転させることにより、外部面状光源から発せられる紫外線を容器の外壁に斑無く照射することができる。
【0016】
本発明の殺菌方法は、開口部を有する容器に紫外線を照射して殺菌処理を施す殺菌方法であって、開口部から容器の内部に挿入され得る外輪郭でかつ容器の深さ方向の全域に亘る長さに形成された円柱状の保持部材及び平板状に形成され放射状に紫外線を発光するべく保持部材の外周面に巻き付けて固定された面状光源を含み放射状に紫外線を発光する筒面状光源を、容器の内部に挿入する挿入工程と、挿入工程の後に、筒面状光源に電力を供給して紫外線を発光させる発光工程を含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、挿入工程において筒面状光源を容器の開口部から内部に挿入し、その後、発光工程において筒面状光源を発光させて容器の内壁面に向けて紫外線を照射することにより、容器に対して変形や劣化を生じさせることなく、殺菌処理を施すことができる。
特に、筒面状光源を容器に挿入するだけで、容器の深さ方向の全域をカバーするため、殺菌処理の高速化、生産性の向上等を達成することができる。
また、深紫外線を照射することにより、極短時間(例えば、0.5秒~2分程度)の照射で確実に殺菌処理を施すことができ、電力の使用量を抑制して低コスト化等を達成することができる。
さらに、筒面状光源が、容器の深さ方向の全域に亘る長さに形成された円柱状の保持部材と、平板状に形成され放射状に紫外線を発光するべく保持部材の外周面に巻き付けて固定された面状光源により形成されているため、面状光源だけを湾曲させて筒状に形成したものに比べて、構造をより堅固にして耐久性を高めることができ、又、筒面状光源を容器に挿入する際に先端側の振れ等を防止でき、容器に対して筒面状光源をより高精度に位置決めすることができる。
【0017】
上記殺菌方法において、挿入工程及び発光工程は、複数の容器に対して同時に施される、構成を採用してもよい。
この構成によれば、複数の容器に対して、同時に殺菌処理を施すことができる。それ故に、生産性をさらに向上させることができる。
【0018】
上記殺菌方法において、挿入工程の後に、容器の外側から対向する外部面状光源に電力を供給して紫外線を発光させる第2発光工程を含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、第2発光工程により容器の外側から紫外線を照射して殺菌処理を施すことができる。これにより、容器の内側及び外側に対して同時に殺菌処理を施すことができる。
【0019】
上記殺菌方法において、上記第2発光工程と同時に、容器を筒面状光源の軸線回りに回転させる回転工程を含む、構成を採用してもよい。
この構成によれば、回転工程により容器を回転させることで、外部面状光源から発せられる紫外線を容器の外壁に斑無く照射することができる。
【発明の効果】
【0020】
上記構成をなす殺菌装置及び方法によれば、構造の簡素化、小型化等を達成しつつ、殺菌処理を確実に行うことができ、又、殺菌処理の円滑化及び高速化、生産性の向上、低コスト化等を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る殺菌装置の一実施形態を示す外観斜視図である。
図2図1に示す殺菌装置の一部をなす筒面状光源を示す斜視図である。
図3図1に示す殺菌装置の一部をなす筒面状光源が容器の内部に挿入された状態を示す断面図である。
図4】筒面状光源を形成する前の平面状の面状光源を示す平面図である。
図5図4に示す面状光源の一部を切断した部分断面図である。
図6】本発明に係る殺菌装置の他の実施形態を示す外観斜視図である。
図7図6に示す殺菌装置の一部を示す部分斜視図である。
図8図6に示す殺菌装置の一部をなす外部面状光源を示す斜視図である。
図9】本発明に係る殺菌装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
この実施形態に係る殺菌装置は、図1に示すように、搬送コンベアC上をトレイTに載置された状態で移動する容器Pの内部を殺菌処理するものである。
搬送コンベアCは、トレイT上に載置された容器Pの脱落を防止するべく、吸盤、ガイド溝、ガイド壁、あるいは容器Pの首部を把持する把持機構等を適宜備えていてもよい。
【0023】
また、容器Pは、プリフォームをブロー成型等により成形した樹脂(PET)製のボトルであり、20mm程度の口径をなす開口部P1、開口部P1に連続する本体部P2を備えている。尚、処理対象物としての容器Pは、樹脂製のボトルに限るものではなく、ブロー成型前のプリフォームでもよく、又、ガラス製や金属製の容器であってもよい。
【0024】
殺菌装置は、筒面状光源10、筒面状光源10を支持すると共に昇降させる支持駆動機構20、筒面状光源10に電力を供給すると共に支持駆動機構20の駆動を制御する制御盤30等を備えている。
【0025】
筒面状光源10は、図2及び図3に示すように、軸線S方向に伸長する保持部材11、保持部材11の外周面に沿うように巻き付けて固定された面状光源12を備えている。
【0026】
保持部材11は、樹脂材料又は金属材料等を用いて形成され、直径10mm程度の円柱状の保持ロッド部11a、保持ロッド部11aの上方に連続して形成された円柱状の連結ロッド部11bを備えている。
【0027】
保持ロッド部11aは、図2及び図3に示すように、容器Pの深さ方向に長尺でかつ容器Pの深さ方向の全域に亘る長さに形成され、又、面状光源12のフレキシブル基板12aを例えば貼着等により固定し得るように形成されている。
尚、保持ロッド11aの直径は、容器Pの開口部P1の口径に応じて、適宜選択され得るものであり、面状光源12を巻き付けた状態においてその外輪郭が容器Pの開口部P1から容易に挿入され得る寸法に設定される。
【0028】
連結ロッド部11bは、支持駆動機構20に連結されるものであり、又、面状光源12の配線12eをガイドする役割をなすように形成されている。
例えば、連結ロッド11bは、その内部において配線12eを通す貫通路を備えていてもよい。
【0029】
面状光源12は、図4に示すように、横寸法Wが約30mm~32mm程度でかつ縦寸法Dが容器Pの深さと同等以上の長さをなす略矩形の平板状に形成されている。
そして、面状光源12は、図4及び図5に示すように、フレキシブル基板12a、フレキシブル基板12a上に積層された一対の薄膜電極12b,12b、薄膜電極12b,12b上に積層された絶縁層12c、絶縁層12c上に接合して配列された複数の放電チューブ12d、一対の電極12b,12bに接続された配線12eを備えている。
【0030】
フレキシブル基板12aは、絶縁性を有するポリイミド系の樹脂材料等を用いて、薄膜電極12b,12b、絶縁層12c、及び複数の放電チューブ12dを積層した状態で保持し得るように、略矩形の平板状に形成されている。
【0031】
一対の薄膜電極12b,12bは、銅やアルミニウム等の電導材料を用いて、それぞれ、横寸法がWより僅かに小さい寸法でかつ縦寸法がD/2よりも小さい寸法をなす矩形状に形成されている。
そして、一対の薄膜電極12b,12bは、縦方向(軸線S方向)において所定の隙間をおいて平行に配列され、フレキシブル基板12a上に積層されている。
ここでは、一対の薄膜電極12b,12bが設けられているが、放電チューブ12dが比較的長い場合は、二対以上の薄膜電極が設けられてもよい。
【0032】
絶縁層12cは、絶縁性を有するシリコーン樹脂等の接着性材料を用いて、一対の薄膜電極12b,12bを覆うように形成され、複数の放電チューブ12dを付着させるものである。
【0033】
複数の放電チューブ12dは、図3ないし図5に示すように、容器Pの深さ方向(軸線S方向)に長尺で、横方向に所定の隙間をおいて配列され、絶縁層12cを介して一対の薄膜電極12b,12b上に積層して固着されている。
また、この積層状態において、一対の薄膜電極12b,12bの一方は、複数の放電チューブ12dの一端側領域に隣接し、一対の薄膜電極12b,12bの他方は、複数の放電チューブ12dの他端側領域に隣接するように配置される。
【0034】
ここで、各々の放電チューブ12dは、酸化ケイ素及び酸化ホウ素等を主成分とするガラス材料を用いて、フレキシブル基板12aの縦寸法Dと同等以下の長さで、その断面が扁平な楕円形状に、例えば、長径が約2mm程度で短径が約1mm程度の楕円形状に形成されている。
また、放電チューブ12dは、内部において、紫外線蛍光体を備えると共に、例えばネオン及びキセノンを混合した放電ガスが注入された後に封止されている。
蛍光体としては、UV-Cバンド(200nm~280nm)、特に、殺菌効果を高めるには、中心波長258nm、半値幅50nm程度の深紫外線を発光する蛍光体が好ましい。
【0035】
そして、面状光源12においては、配線12eを介して、一対の薄膜電極12b,12b間に正弦波の電圧が印加されることにより、放電ガスがプラズマ化され、プラズマにより蛍光体が励起されて、殺菌作用を及ぼす紫外線が発光される。
【0036】
上記構成をなす筒面状光源10を形成する際は、予め、処理対象となる容器Pの開口部P1の口径及び容器Pの深さ寸法に応じて形成された保持部材11及び面状光源12が準備される。
続いて、面状光源12が、放電チューブ12dを保持部材11の軸線S方向に沿わせつつフレキシブル基板12aを保持ロッド部11aの外周面に巻き付けるように湾曲させて、接着等の手法により保持部材11に固定される。
【0037】
これにより、複数の放電チューブ12dが、容器Pの深さ方向に長尺で保持ロッド部11aの外周面に沿って周方向に隣接して配置され、円筒をなす筒面状光源10が形成される。
すなわち、開口部P1から容器Pの内部に挿入され得る外輪郭でかつ容器Pの深さ方向の略全域に亘る長さに形成されて放射状に紫外線を発光する筒面状光源10が得られる。
【0038】
筒面状光源10は、図3に示すように、容器Pの開口部P1の口径よりも小さい外輪郭をなすため容器Pの内部に容易に挿入することができ、又、容器Pの深さ方向の略全域をカバーするため挿入完了後に即座に発光させることで、殺菌処理の高速化、生産性の向上等を達成することができる。
特に、深紫外線を照射することにより、極短時間(例えば、0.5秒~2分程度)の照射で確実に殺菌処理を施すことができ、電力の使用量を抑制して低コスト化等を達成することができる。
【0039】
また、筒面状光源10は、放熱性も高いため、従来のような冷却機構も不要であり、構造の簡素化、小型化等を達成することができる。
さらに、筒面状光源10が、円柱状の保持部材11の外周面に面状光源12を巻き付けることにより形成されているため、構造をより堅固にして耐久性を高めることができ、又、筒面状光源10を容器Pに挿入する際に先端側の振れ等を防止でき、容器Pに対して筒面状光源10をより高精度に位置決めすることができる。
【0040】
支持駆動機構20は、図1に示すように、支柱21、支柱21に固定されたアクチュエータ22、アクチュエータ22により昇降駆動される昇降ロッド23、昇降ロッド23に固定された把持アーム24等を備えている。
【0041】
支柱21は、処理エリアにおいて直立して設置されている。
アクチュエータ22は、支柱21に固定され、昇降ロッド23に対して昇降駆動力を及ぼすものである。アクチュエータ22の機構としては、昇降駆動力を発生させるものであればよく、例えば、油圧ピストン機構、ラック及びピニオン機構、電磁ソレノイド機構等が適用され、又、その他種々の手法を採用することができる。
【0042】
昇降ロッド23は、アクチュエータ22の駆動力を受けて、筒面状光源10が容器Pの最深部まで挿入された下降位置と、筒面状光源10が容器Pから引き抜かれて離脱した上昇位置との間を昇降するように形成されている。
把持アーム24は、昇降ロッド23の上端部に固定されて水平方向に伸長し、その先端領域において保持部材11の連結ロッド11bを着脱自在に把持するように形成されている。
【0043】
すなわち、支持駆動機構20は、アクチュエータ22が適宜駆動制御されることにより、筒面状光源10を容器Pに対して進退自在に支持及び駆動するようになっている。
例えば、オン-オフ制御により、オン時に、筒面状光源10が下降させられて容器P内に挿入され、オフ時に、筒面状光源10が上昇させられて容器Pから離脱される。
【0044】
上記支持駆動機構20は、一例であって、これに限定されるものではなく、容器Pの仕様及び大きさ、処理量等に応じて、適宜相応しい形態を適用することができる。
【0045】
制御盤30は、支柱21の側部に設けられており、筒面状光源10に対する電力供給を制御する電力制御と、支持駆動機構20の駆動を制御する駆動制御を司るものである。
一般的には、コンピュータを内蔵して、自動制御が行われるようになっている。
尚、制御盤30の構成及び配置形態は、一例であって、これに限るものではなく、その他の構成及び配置形態を採用することができる。
【0046】
次に、上記構成をなす殺菌装置を用いた容器Pの殺菌処理について説明する。
先ず、搬送コンベアCにより送られてきた処理対象となる容器Pが所定の処理位置に至ると、所定の検知信号に基づき、搬送コンベアCが停止する。
続いて、制御盤30が制御信号を発して、支持駆動機構20のアクチュエータ22が下降駆動される。これにより、筒面状光源10が、開口部P1から容器Pの内部に挿入される(挿入工程)。
【0047】
続いて、挿入完了の検知信号に基づき、制御盤30が制御信号を発して、筒面状光源10に対する電力の供給が行われ、筒面状光源10は、複数の放電チューブ12dから放射状に紫外線を発光する(発光工程)。
これにより、容器Pの内壁面に直接紫外線が照射され、殺菌処理が施される。
ここで、筒面状光源10による紫外線の照射時間は、約0.5秒~2分程度の範囲であり、消費電力を低減でき、又、紫外線を照射するだけであるため、容器Pに変形や劣化を及ぼすこともない。
【0048】
そして、所定時間の紫外線照射が完了すると、制御盤30が制御信号を発して、筒面状光源10が発光を停止し、支持駆動機構20のアクチュエータ22が上昇駆動される。
これにより、筒面状光源10が、開口部P1から容器Pの外部に抜き取られる(抜き取り工程)。
その後、搬送コンベアCが作動して、処理済みの容器Pは、下流側に搬送される。
以下、搬送コンベアCにより搬送される複数の容器Pに対して、順次同様の殺菌処理が施される。
【0049】
以上述べた殺菌装置及び殺菌方法によれば、支持駆動機構20を駆動して、筒面状光源10を容器Pの開口部P1から内部に挿入し、筒面状光源10を発光させて容器Pの内壁面に向けて紫外線を照射することにより、容器Pに対して変形や劣化を生じさせることなく、殺菌処理を施すことができる。
すなわち、紫外線の照射では、そのエネルギの大部分が細菌細胞内のDNAに光化学反応を起こすために費やされるため、容器Pのエネルギ吸収は軽微であり、発熱等による容器Pの変形や素材の劣化等を生じることはない。
【0050】
ここでは、発光源が筒面状光源10として形成されているため、殺菌処理の対象物として、樹脂製のボトル、ガラス製の容器、金属製の容器等、小径の開口部を有する種々の容器を適用することができる。
また、筒面状光源10が容器Pの深さ方向の略全域をカバーするため、挿入完了後に即座に発光させることで、殺菌処理の高速化、生産性の向上等を達成することができる。
【0051】
特に、深紫外線を照射することにより、極短時間(例えば、0.5秒~2分程度)の照射で確実に殺菌処理を施すことができ、電力使用の抑制による低コスト化等を達成することができる。
すなわち、低消費電流、高出力の深紫外線(UV-C)光源を使用することで、省エネルギ化、低コスト化を達成することができる。
さらに、深紫外線と大気中の酸素との光化学反応により、若干量のオゾンが生成されるものの、オゾン自体に殺菌効果があり、又、再び酸素に分解されるため、安全性への影響もなく、殺菌効果を得ることができる。
【0052】
図6ないし図8は、本発明に係る殺菌装置の他の実施形態を示すものであり、複数の容器Pに対して同時に殺菌処理を施すようになっている。尚、前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
すなわち、この実施形態に係る殺菌装置は、図6に示すように、二列の搬送コンベアC,C上をトレイTに載置された状態で移動する複数の容器Pの内部及び外部を殺菌処理するものである。
尚、この実施形態では、二列の搬送コンベアC,Cを示したが、一列の搬送コンベアC上において、二列に並んで複数の容器Pが搬送される構成であってもよい。
【0053】
この実施形態において、殺菌装置は、複数の筒面状光源10、複数の筒面状光源10を支持すると共に昇降させる支持駆動機構20´、制御盤30、複数の容器Pの外側から紫外線を照射する外部面状光源40、複数の容器Pを筒面状光源10の軸線S回りに回転させる回転機構50等を備えている。
【0054】
支持駆動機構20´は、図1及び図7に示すように、支柱21、支柱21に固定されたアクチュエータ22、アクチュエータ22により昇降駆動される昇降ロッド23、昇降ロッド23に固定された複数の把持アーム24´等を備えている。
複数の把持アーム24´は、搬送される複数の容器Pのピッチと等間隔に配置されて、一つの昇降ロッド23により昇降されるようになっている。
そして、上記構成をなす支持駆動機構20´は、二つの搬送コンベアC,Cに隣接して二つ配置されている。
【0055】
すなわち、支持駆動機構20´は、アクチュエータ22が適宜駆動制御されることにより、複数の筒面状光源10を対応する複数の容器Pに対して同時に進退自在に支持及び駆動するようになっている。
例えば、オン-オフ制御により、オン時に、複数の筒面状光源10が下降させられて複数の容器P内に同時に挿入され、オフ時に、複数の筒面状光源10が上昇させられて複数の容器Pから同時に離脱される。
尚、一つの支持駆動機構20´で、二つの搬送コンベアC,C上に載置された複数の容器Pに対応する把持アーム24´を備えていてもよい。
【0056】
外部面状光源40は、図6及び図8に示すように、二つの搬送コンベアC,Cの間において搬送方向に平行に直立して配置されている。
外部面状光源40は、略矩形の保持基板41の両面においてそれぞれ平面状の面状光源12´,12´が設けられたものである。
【0057】
面状光源12´は、前述の面状光源12の寸法を変更して、複数の容器Pに対向し得る大きさに形成されたものである。
保持基板41は、面状光源12´を保持し得る平面を画定するものであり、樹脂材料や金属材料等により形成されている。
【0058】
ここでは、外部面状光源40が、平板状の保持基板41の両側面に平面状の面状光源12´を張り付けることにより形成されているため、構造をより堅固にして耐久性を高めることができる。それ故に、外部面状光源40を複数の容器Pに対して確実に対向させることができる。
【0059】
尚、外部面状光源40は、筒面状光源10の軸線S方向に長尺で互いに隣接して配列された複数の放電チューブ12dを備えているが、放電チューブ12dの配列方向は容器Pの深さ方向に限定されるものではなく、複数の容器Pの外壁面と対向する構成であれば、別の方向に配列されていてもよい。
【0060】
回転機構50は、図7に示すように、搬送される複数の容器Pのピッチと等間隔に配置された複数の歯車51、歯車51から上方に伸長して対応する位置に達したトレイTを支える支持ロッド52、複数の歯車51と噛合するラック53、ラック53を往復動させる駆動源(不図示)等を備えている。
【0061】
そして、ラック53が一方向に移動すると、複数の歯車51及び支持ロッド52が同時に一方向に回転し、対応する複数の容器Pが一方向に回転させられるようになっている。
一方、ラック53が他方向に移動すると、複数の歯車51及び支持ロッド52が同時に他方向に回転し、対応する複数の容器Pが他方向に回転させられるようになっている。
そして、上記構成をなす回転機構50は、二つの搬送コンベアC,Cに対応させて二つ配置されている。
【0062】
尚、この実施形態において、制御盤30は、複数の筒面状光源10に対する電力供給を制御する電力制御と、外部面状光源40に対する電力供給を制御する電力制御と、支持駆動機構20´の駆動を制御する駆動制御と、回転機構50の駆動を制御する駆動制御を司るものである。
【0063】
次に、上記構成をなす殺菌装置を用いた複数の容器Pの殺菌処理について説明する。
先ず、搬送コンベアCにより送られてきた処理対象となる複数の容器Pが所定の処理位置に至ると、所定の検知信号に基づき、搬送コンベアCが停止する。
続いて、制御盤30が制御信号を発して、支持駆動機構20´のアクチュエータ22が下降駆動される。これにより、複数の筒面状光源10が、対応する複数の容器Pの内部に挿入される(挿入工程)。
【0064】
続いて、挿入完了の検知信号に基づき、制御盤30が制御信号を発して、複数の筒面状光源10に対する電力の供給が行われ、複数の筒面状光源10は、複数の容器Pの内側から放射状に紫外線を発光する(発光工程)。
これにより、複数の容器Pの内壁面に直接紫外線が照射され、殺菌処理が施される。
ここで、複数の筒面状光源10による紫外線の照射時間は、約0.5秒~2分程度の範囲であり、消費電力を低減でき、又、紫外線を照射するだけであるため、容器Pに変形や劣化を及ぼすこともない。
【0065】
また、上記発光工程と同時に、外部面状光源40に対する電力の供給が行われ、外部面状光源40は、対向する複数の容器Pの外側から紫外線を発光する(第2発光工程)。
これにより、複数の容器Pの外壁面に直接紫外線が照射され、殺菌処理が施される。
ここで、外部面状光源40による紫外線の照射時間は、約0.5秒~2分程度の範囲であり、消費電力を低減でき、又、紫外線を照射するだけであるため、容器Pに変形や劣化を及ぼすこともない。
【0066】
さらに、上記第2発光工程と同時に、回転機構50が駆動され、複数の容器Pが筒面状光源10の軸線S回りに回転させられる(回転工程)。
このように、複数の容器Pを回転させることで、外部面状光源40から発せられる紫外線を複数の容器Pの外壁面に斑無く照射することができる。
【0067】
そして、所定時間の紫外線照射が完了すると、制御盤30が制御信号を発して、複数の筒面状光源10及び外部面状光源40が発光を停止し、回転機構50が停止し、支持駆動機構20´のアクチュエータ22が上昇駆動される。
これにより、複数の筒面状光源10が、複数の容器Pの外部に抜き取られる(抜き取り工程)。
その後、搬送コンベアCが作動して、処理済みの複数の容器Pは、下流側に搬送される。以下、搬送コンベアCにより搬送される複数の容器Pに対して、順次同様の殺菌処理が施される。
【0068】
以上述べた殺菌装置及び殺菌方法によれば、複数の容器Pに対して同時に殺菌処理を施すことができる。それ故に、生産性をさらに向上させることができる。
また、複数の筒面状光源10により複数の容器Pの内側から紫外線を照射して殺菌処理を施すと共に、外部面状光源40により複数の容器Pの外側から紫外線を照射して殺菌処理を施すことができるため、殺菌処理をより確実に行うことができる。
【0069】
また、複数の筒面状光源10が複数の容器Pの深さ方向の略全域をカバーするため、挿入完了後に即座に発光させることで、殺菌処理の高速化、生産性の向上等を達成することができる。
特に、深紫外線を照射することにより、極短時間(例えば、0.5秒~2分程度)の照射で確実に殺菌処理を施すことができ、電力の使用量を抑制して低コスト化等を達成することができる。すなわち、低消費電流、高出力の深紫外線(UV-C)光源を使用することで、省エネルギ化、低コスト化を達成することができる。
【0070】
図9は、本発明に係る殺菌装置のさらに他の実施形態を示すものであり、前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
この実施形態においては、搬送コンベアC´が湾曲して配置されている。そして、殺菌処理エリアAにおいて、前述の複数の筒面状光源10が湾曲状に配列されると共に、二つの外部面状光源40´,40´´が搬送コンベアC´に隣接して設置されている。
【0071】
外部面状光源40´は、搬送コンベアC´上を移動する複数の容器Pの外壁面に対向するように凹状をなす湾曲面状に形成され、複数の容器Pに対して紫外線を照射し得るようになっている。
外部面状光源40´´は、搬送コンベアC´上を移動する複数の容器Pの外壁面に対向するように凸状をなす湾曲面状に形成され、複数の容器Pに対して紫外線を照射し得るようになっている。
【0072】
上記実施形態においては、前述のような回転機構50を備えていなくても、容器Pの外壁面に対して斑無く紫外線を照射することができる。
この実施形態でも、前述同様に、複数の容器Pに対して同時に殺菌処理を施すことができ、生産性を向上させることができる。
また、複数の筒面状光源10により複数の容器Pの内側から紫外線を照射して殺菌処理を施すと共に、外部面状光源40´,40´´により複数の容器Pの外側から紫外線を照射して殺菌処理を施すことができるため、殺菌処理をより確実に行うことができる。
【0073】
<実験例>
以下に、面状光源による殺菌効果をサンプルで確認した実験結果を示す。
[面状光源]
面状光源として、80mm×60mmの矩形状で、中心波長258nm、半値幅50nm、出力200mWの深紫外線を発光する面状光源を使用した。
[殺菌処理の対象物]
処理の対象物として、指標菌(枯草菌;Bacillus Pumilus)10個をPETシートに摂取したサンプルシートを使用した。
[実験手法]
サンプルシートを面状光源の前方25cmに正対させて、深紫外線(UV-C)を5秒、10秒、15秒、20秒間、照射した。
この時の深紫外線の照射強度は、2.5mW/cmであった。
照射後のサンプルを、それぞれ培養した結果、15秒及び20秒の照射サンプルでは、いずれも指標菌の増殖は認められず、十分な殺菌処理行われたことが分かった。
このことは、指標菌(枯草菌;Bacillus Pumilus)の99.99%殺菌に必要な深紫外線量が48mW・s/cm(mJ/cm)であることから、15秒間照射時の37.5mW・s/cm(mJ/cm)では線量以上の効果が得られていることになる。
これは、深紫外線が中心波長258nm、半値幅50nmで、細菌類の殺菌に最も効果の高い波長成分が含まれていることに起因すると考えられる。
すなわち、本発明に係る面状光源により、殺菌処理を確実に行うことができることを示すものである。
【0074】
上記実施形態においては、筒面状光源として、保持部材11の外周面に面状光源12を巻き付けて形成した筒面状光源10を示したが、これに限定されるものではなく、機械的強度を確保できるものであれば、面状光源12を筒状に成形した筒面状光源を採用してもよい。
【0075】
上記実施形態においては、搬送コンベアとして、トレイTを備えた搬送コンベアC,C‘を示したが、これに限定されるものではなく、容器Pの首部を把持しつつ容器Pを持ち上げて空中を搬送する搬送コンベアであってもよい。
【0076】
上記実施形態においては、回転機構として、一つの搬送コンベアCに対応する回転機構50を、それぞれの搬送コンベアC,Cに設けた場合を示したが、これに限定されるものではなく、二つの搬送コンベアC,Cに載置された複数の容器Pを同時に回転させる別の回転機構を採用してもよい。
【0077】
また、上記実施形態においては、回転機構として、搬送コンベアC上のトレイTを回転させる回転機構50を示したが、これに限定されるものではなく、容器Pの首部を把持する把持機構等を採用し、把持機構が容器Pを回転させる回転機構も備えている構成を採用してもよい。
【0078】
上記実施形態においては、筒面状光源として、一つの放電チューブ12dが容器Pの深さ方向の略全域に亘る長さに形成された面状光源12を備えた筒面状光源10を示したが、これに限定されるものではなく、容器Pの深さが一般の樹脂(PET)製ボトルよりも遥かに深い場合は、所定長さの放電チューブ12dが軸線S方向に2つ以上配列された面状光源を備えた筒面状光源を採用してもよい。
【0079】
以上述べたように、本発明の殺菌装置及び殺菌方法によれば、構造の簡素化、小型化等を達成しつつ、殺菌処理を確実に行うことができ、又、殺菌処理の円滑化及び高速化、生産性の向上、低コスト化等を達成することができるため、飲料関係の容器の殺菌処理は勿論のこと、医薬品等の容器、その他の分野の殺菌を要する容器の殺菌処理においても有用である。
【符号の説明】
【0080】
P 容器
P1 開口部
S 軸線
10 筒面状光源
11 保持部材
12,12´ 面状光源
12a フレキシブル基板
12b 薄膜電極
12d 放電チューブ
20,20´ 支持駆動機構
40,40´,40´´ 外部面状光源
50 回転機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9