(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】軒先吸気部材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/70 20060101AFI20220526BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20220526BHJP
E04D 13/16 20060101ALI20220526BHJP
E04D 13/158 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
E04B1/70 E
E04B1/94 G
E04D13/16 C
E04D13/158 501Z
(21)【出願番号】P 2018119609
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】595133736
【氏名又は名称】株式会社トーコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】中谷 浩史
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102806(JP,A)
【文献】特開2007-146570(JP,A)
【文献】実開昭60-23636(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/70
E04B 1/94
E04D 13/16
E04D 13/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の換気孔が形成された換気孔形成板材と、
前記換気孔に対向する位置に配置されるフラップ材と、
火災時に熱膨張することで前記換気孔を閉塞する熱膨張材と
を有し、
建造物の軒先部に設置される軒先吸気部材であって、
前記フラップ材を、
前記換気孔の下流側上方に固定される固定フラップ材と、
前記固定フラップ材に可撓性接続材で接続される可動フラップ材と
で形成し、
前記換気孔に対向する側である前記固定フラップ材の固定フラップ換気孔対向面に前記熱膨張材を設け、
前記可動フラップ材は、
暴風時には、前記可撓性接続材による接続部を支軸として可動することで通気経路を閉塞し、
火災時には、前記固定フラップ材から離脱して落下することで、前記固定フラップ材との間に、前記熱膨張材の膨張する範囲を規制する膨張規制空間を形成する
ことを特徴とする軒先吸気部材。
【請求項2】
前記可動フラップ材を垂下させた状態で、
前記可動フラップ材の自由端となる下端を、
前記支軸の仮想支軸鉛直線よりも前記換気孔側に位置させた
ことを特徴とする請求項1に記載の軒先吸気部材。
【請求項3】
前記可動フラップ材を垂下させた状態で、
前記可動フラップ材の自由端となる下端を、
前記可動フラップ材の重心の仮想重心鉛直線よりも前記換気孔側に位置させた
ことを特徴とする請求項1に記載の軒先吸気部材。
【請求項4】
前記可動フラップ材が落下した状態では、
前記換気孔に対向する側である前記可動フラップ材の可動フラップ換気孔対向面が上面となる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の軒先吸気部材。
【請求項5】
前記固定フラップ材を、
前記換気孔の下流側上方に一端を固定する第1固定フラップ材と、
前記第1固定フラップ材の他端を一端として前記第1固定フラップ材から延出させる第2固定フラップ材と
で形成し、
前記可動フラップ材を、
前記可撓性接続材で前記固定フラップ材に前記支軸となる一端を接続する第1可動フラップ材と、
前記第1可動フラップ材の他端を一端として前記第1可動フラップ材から延出させる第2可動フラップ材と、
前記第2可動フラップ材の他端を一端として前記第2可動フラップ材から延出させる第3可動フラップ材と
で形成し、
前記第2固定フラップ材と前記第1可動フラップ材との間の角度αを90°より大きくした
ことを特徴とする請求項1に記載の軒先吸気部材。
【請求項6】
前記可動フラップ材を、
前記可撓性接続材で前記固定フラップ材に前記支軸となる一端を接続する第1可動フラップ材と、
前記第1可動フラップ材の他端を一端として前記第1可動フラップ材から延出させる第2可動フラップ材と、
前記第2可動フラップ材の他端を一端として前記第2可動フラップ材から延出させる第3可動フラップ材と
で形成し、
前記第2可動フラップ材の前記他端を、前記第2可動フラップ材の前記一端の仮想鉛直線よりも前記換気孔側に位置させ、
前記第3可動フラップ材の自由端となる下端を、前記支軸の仮想支軸鉛直線よりも前記換気孔側に位置させた
ことを特徴とする請求項1に記載の軒先吸気部材。
【請求項7】
前記可動フラップ材を、
前記可撓性接続材で前記固定フラップ材に前記支軸となる一端を接続する第1可動フラップ材と、
前記第1可動フラップ材の他端を一端として前記第1可動フラップ材から延出させる第2可動フラップ材と
で形成し、
前記第2可動フラップ材の他端を、前記第2可動フラップ材の前記一端の仮想鉛直線よりも前記換気孔側に位置させ、
前記第2可動フラップ材の自由端となる下端を、前記支軸の仮想支軸鉛直線よりも前記換気孔側に位置させた
ことを特徴とする請求項1に記載の軒先吸気部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の軒先部に設置される軒先吸気部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の換気孔が形成された換気孔形成板材と、換気孔に対向する位置に配置されるフラップ材と、火災時に熱膨張することで換気孔を閉塞する熱膨張材とを有する軒先吸気部材を提案している。
特許文献1では、フラップ材が可動することで雨水の浸入を防ぐことができ、また熱膨張材が膨張して火炎を遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軒先吸気部材は、吸気機能を高めるためには空気通路を大きくする必要があるが、熱膨張材による遮断を確実に作用させるためには、閉塞する空気通路を小さくする必要がある。
【0005】
本発明は、熱膨張材が膨張するときに、閉塞空間を小さくして熱膨張材を確実に機能させることができる軒先吸気部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の軒先吸気部材は、複数の換気孔11aが形成された換気孔形成板材11と、前記換気孔11aに対向する位置に配置されるフラップ材20と、火災時に熱膨張することで前記換気孔11aを閉塞する熱膨張材30とを有し、建造物の軒先部に設置される軒先吸気部材であって、前記フラップ材20を、前記換気孔11aの下流側上方に固定される固定フラップ材21と、前記固定フラップ材21に可撓性接続材22で接続される可動フラップ材23とで形成し、前記換気孔11aに対向する側である前記固定フラップ材21の固定フラップ換気孔対向面21xに前記熱膨張材30を設け、前記可動フラップ材23は、暴風時には、前記可撓性接続材22による接続部を支軸Aとして可動することで通気経路を閉塞し、火災時には、前記固定フラップ材21から離脱して落下することで、前記固定フラップ材21との間に、前記熱膨張材30の膨張する範囲を規制する膨張規制空間Cを形成することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の軒先吸気部材において、前記可動フラップ材23を垂下させた状態で、前記可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、前記支軸Aの仮想支軸鉛直線よりも前記換気孔11a側に位置させたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の軒先吸気部材において、前記可動フラップ材23を垂下させた状態で、前記可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、前記可動フラップ材23の重心Dの仮想重心鉛直線よりも前記換気孔11a側に位置させたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の軒先吸気部材において、前記可動フラップ材23が落下した状態では、前記換気孔11aに対向する側である前記可動フラップ材23の可動フラップ換気孔対向面23xが上面となることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載の軒先吸気部材において、前記固定フラップ材21を、前記換気孔11aの下流側上方に一端を固定する第1固定フラップ材21aと、前記第1固定フラップ材21aの他端を一端として前記第1固定フラップ材21aから延出させる第2固定フラップ材21bとで形成し、前記可動フラップ材23を、前記可撓性接続材22で前記固定フラップ材21に前記支軸Aとなる一端を接続する第1可動フラップ材23aと、前記第1可動フラップ材23aの他端を一端として前記第1可動フラップ材23aから延出させる第2可動フラップ材23bと、前記第2可動フラップ材23bの他端を一端として前記第2可動フラップ材23bから延出させる第3可動フラップ材23cとで形成し、前記第2固定フラップ材21bと前記第1可動フラップ材23aとの間の角度αを90°より大きくしたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の軒先吸気部材において、前記可動フラップ材23を、前記可撓性接続材22で前記固定フラップ材21に前記支軸Aとなる一端を接続する第1可動フラップ材23aと、前記第1可動フラップ材23aの他端を一端として前記第1可動フラップ材23aから延出させる第2可動フラップ材23bと、前記第2可動フラップ材23bの他端を一端として前記第2可動フラップ材23bから延出させる第3可動フラップ材23cとで形成し、前記第2可動フラップ材23bの前記他端を、前記第2可動フラップ材23bの前記一端の仮想鉛直線よりも前記換気孔11a側に位置させ、前記第3可動フラップ材23cの自由端Bとなる下端を、前記支軸Aの仮想支軸鉛直線よりも前記換気孔11a側に位置させたことを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1に記載の軒先吸気部材において、前記可動フラップ材23を、前記可撓性接続材22で前記固定フラップ材21に前記支軸Aとなる一端を接続する第1可動フラップ材23aと、前記第1可動フラップ材23aの他端を一端として前記第1可動フラップ材23aから延出させる第2可動フラップ材23bとで形成し、前記第2可動フラップ材23bの他端を、前記第2可動フラップ材23bの前記一端の仮想鉛直線よりも前記換気孔11a側に位置させ、前記第2可動フラップ材23bの自由端Bとなる下端を、前記支軸Aの仮想支軸鉛直線よりも前記換気孔11a側に位置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の軒先吸気部材によれば、雨水の浸入を防止する可動フラップ材を、火災時に固定フラップ材から切り離し、落下させた可動フラップ材によって固定フラップ材との間に膨張規制空間を形成することで、熱膨張材の膨張する範囲を規制することができ、火炎の浸入を確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による軒先吸気部材の斜視図、同軒先吸気部材を建造物の軒先部に設置した状態を示す断面図、及び同軒先吸気部材のフラップ材の断面図
【
図3】本実施例による軒先吸気部材の火災時を想定したバーナー実験での動作状態を示す写真
【
図4】本発明の他の実施例による軒先吸気部材の断面図
【
図5】本発明の更に他の実施例による軒先吸気部材の断面図
【
図6】本発明の更に他の実施例による軒先吸気部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による軒先吸気部材は、フラップ材を、換気孔の下流側上方に固定される固定フラップ材と、固定フラップ材に可撓性接続材で接続される可動フラップ材とで形成し、換気孔に対向する側である固定フラップ材の固定フラップ換気孔対向面に熱膨張材を設け、可動フラップ材は、暴風時には、可撓性接続材による接続部を支軸として可動することで通気経路を閉塞し、火災時には、固定フラップ材から離脱して落下することで、固定フラップ材との間に、熱膨張材の膨張する範囲を規制する膨張規制空間を形成するものである。本実施の形態によれば、雨水の浸入を防止する可動フラップ材を、火災時に固定フラップ材から切り離し、落下させた可動フラップ材によって固定フラップ材との間に膨張規制空間を形成することで、熱膨張材の膨張する範囲を規制することができ、火炎の浸入を確実に遮断することができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による軒先吸気部材において、可動フラップ材を垂下させた状態で、可動フラップ材の自由端となる下端を、支軸の仮想支軸鉛直線よりも換気孔側に位置させたものである。本実施の形態によれば、可動フラップ材の可動フラップ換気孔対向面が上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間を形成することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第1の実施の形態による軒先吸気部材において、可動フラップ材を垂下させた状態で、可動フラップ材の自由端となる下端を、可動フラップ材の重心の仮想重心鉛直線よりも換気孔側に位置させたものである。本実施の形態によれば、可動フラップ材の可動フラップ換気孔対向面が上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間を形成することができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれかの実施の形態による軒先吸気部材において、可動フラップ材が落下した状態では、換気孔に対向する側である可動フラップ材の可動フラップ換気孔対向面が上面となるものである。本実施の形態によれば、落下状態を一定とすることができ、設定通りの膨張規制空間を形成することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態による軒先吸気部材において、固定フラップ材を、換気孔の下流側上方に一端を固定する第1固定フラップ材と、第1固定フラップ材の他端を一端として第1固定フラップ材から延出させる第2固定フラップ材とで形成し、可動フラップ材を、可撓性接続材で固定フラップ材に支軸なる一端を接続する第1可動フラップ材と、第1可動フラップ材の他端を一端として第1可動フラップ材から延出させる第2可動フラップ材と、第2可動フラップ材の他端を一端として第2可動フラップ材から延出させる第3可動フラップ材とで形成し、第2固定フラップ材と第1可動フラップ材との間の角度αを90°より大きくしたものである。本実施の形態によれば、可動フラップ材の可動フラップ換気孔対向面が上面となるように落下させやすい。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態による軒先吸気部材において、可動フラップ材を、可撓性接続材で固定フラップ材に支軸となる一端を接続する第1可動フラップ材と、第1可動フラップ材の他端を一端として第1可動フラップ材から延出させる第2可動フラップ材と、第2可動フラップ材の他端を一端として第2可動フラップ材から延出させる第3可動フラップ材とで形成し、第2可動フラップ材の他端を、第2可動フラップ材の一端の仮想鉛直線よりも換気孔側に位置させ、第3可動フラップ材の自由端となる下端を、支軸の仮想支軸鉛直線よりも換気孔側に位置させたものである。本実施の形態によれば、可動フラップ材の落下時の方向や角度を一定にしやすく、可動フラップ材の可動フラップ換気孔対向面が上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間を形成することができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第1の実施の形態による軒先吸気部材において、可動フラップ材を、可撓性接続材で固定フラップ材に支軸となる一端を接続する第1可動フラップ材と、第1可動フラップ材の他端を一端として第1可動フラップ材から延出させる第2可動フラップ材とで形成し、第2可動フラップ材の他端を、第2可動フラップ材の一端の仮想鉛直線よりも換気孔側に位置させ、第2可動フラップ材の自由端となる下端を、支軸の仮想支軸鉛直線よりも換気孔側に位置させたものである。本実施の形態によれば、可動フラップ材の可動フラップ換気孔対向面が上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間を形成することができる。
【実施例】
【0016】
以下本発明の一実施例による軒先吸気部材について説明する。
図1は本実施例による軒先吸気部材の斜視図、同軒先吸気部材を建造物の軒先部に設置した状態を示す断面図、及び同軒先吸気部材のフラップ材の断面図である。
図1(a)は同軒先吸気部材の斜視図、
図1(b)は同軒先吸気部材を建造物の軒先部に設置した状態を示す断面図、
図1(c)は同軒先吸気部材のフラップ材の断面図を示している。
【0017】
本実施例による軒先吸気部材は、複数の換気孔11aが形成された換気孔形成板材11と、換気孔11aに対向する位置に配置されるフラップ材20と、火災時に熱膨張することで換気孔11aを閉塞する熱膨張材30とを有して、建造物の軒先部に設置される。
換気孔形成板材11の上部には、換気孔形成板材11と一体の板材を外方に延出させた後に内方に折り曲げて上部取付板材12が形成されている。換気孔形成板材11の下部には、換気孔形成板材11と一体の板材を外方に延出させて水切り板材13が形成されている。
水切り板材13の下面には、空気通路底面板材14の一端側端部が当接している。空気通路底面板材14の他端は、上方に折り曲げられて空気通路側面板材15が形成されている。
【0018】
換気孔11aは、高さHの方向が幅Wの方向より長い長孔であり、幅W方向に複数形成されている。換気孔11aの内方は、ブリッジ材11b(
図2参照)で覆っている。ブリッジ材11bは、換気孔11aの切り起こしによって形成している。換気孔11aの内方をブリッジ材11bで覆うことで、換気孔11aから吹きつけられる雨水を、ブリッジ材11bで遮ることができる。
【0019】
図1(b)に示す建造物は、垂木41を傾斜して設け、垂木41の上部には野地板42を設け、野地板42の上面には屋根材43が敷設されている。垂木41の端面には外壁材44を設けている。
軒先吸気部材は、上部取付板材12を野地板42の上面に取り付け、空気通路側面板材15を外壁材44に当接させることで設置される。
【0020】
図1(c)に示すように、フラップ材20は、換気孔11aの内方、すなわち換気孔11aの下流側上方に固定される固定フラップ材21と、固定フラップ材21に可撓性接続材22で接続される可動フラップ材23とで形成している。可撓性接続材22は、可撓性と熱による溶融性を持った接続材であり、例えば可撓性接続材22としては高強度のガラス繊維で補強されたフィラメントテープを用いることができる。
なお、
図1(a)及び
図1(b)に示す緩衝材50は、可動フラップ材23の空気通路側面板材15側に設けてあり、可動フラップ材23の空気通路側面板材15への衝突音を防止している。
【0021】
固定フラップ材21は、換気孔11aの下流側上方に一端を固定する第1固定フラップ材21aと、第1固定フラップ材21aの他端を一端として第1固定フラップ材21aから延出させる第2固定フラップ材21bとで形成している。
本実施例では、第1固定フラップ材21aの一端は、折り曲げて延出させ、上部取付板材12に挟み込むことで固定している。
第2固定フラップ材21bの自由端Aを支軸とし、第2固定フラップ材21bの自由端Aを第2固定フラップ材21bの一端よりも高い位置とし、第2固定フラップ材21bに熱膨張材30を設けている。
なお、熱膨張材30は、換気孔11aに対向する側である固定フラップ材21(第2固定フラップ材21b)の固定フラップ換気孔対向面21xに設けている。
熱膨張材30を、このような第2固定フラップ材21bの固定フラップ換気孔対向面21xに設けることで、熱膨張材30が平常時の換気を阻害することはなく、火災時には換気孔11aから流れ込む熱風に対して感度良く膨張し、熱膨張材30の垂れ下がりを利用して確実に空気通路を遮断できる。
【0022】
可動フラップ材23は、可撓性接続材22で固定フラップ材21に一端を接続する第1可動フラップ材23aと、第1可動フラップ材23aの他端を一端として第1可動フラップ材23aから延出させる第2可動フラップ材23bと、第2可動フラップ材23bの他端を一端として第2可動フラップ材23bから延出させる第3可動フラップ材23cとで形成している。
第3可動フラップ材23cの自由端Bとなる下端を、第1可動フラップ材23aの一端(支軸)の仮想支軸鉛直線よりも換気孔11a側に位置させ、第2可動フラップ材23bの他端を第2可動フラップ材23bの一端の仮想鉛直線よりも換気孔11a側に位置させている。第3可動フラップ材23cの自由端Bを第1可動フラップ材23aの一端(支軸)の仮想支軸鉛直線よりも換気孔11a側に位置させるために、第2可動フラップ材23bと第3可動フラップ材23cとの角度を決定するが、図示のように、第3可動フラップ材23cを折り曲げることで、第3可動フラップ材23cの自由端Bを更に換気孔11a側に位置させることができる。
このような可動フラップ材23とすることで、可動フラップ材23の落下時の方向や角度を一定にしやすく、可動フラップ材23の可動フラップ換気孔対向面23xが上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間C(
図2参照)を形成することができる。
また、第2固定フラップ材21bと第1可動フラップ材23aとの間の角度αは、90°より大きくしている。第2固定フラップ材21bと第1可動フラップ材23aとの間の角度αが、90°より大きくなるように可動フラップ材23を形成することで、可動フラップ材23の可動フラップ換気孔対向面23xが上面となるように落下させやすい。
【0023】
図2は本実施例による軒先吸気部材の動作説明図であり、
図2(a)は平常時での吸気状態を示す図、
図2(b)は暴風時での通気経路閉塞状態を示す図、
図2(c)は火災時での通気経路閉塞状態を示す図である。
【0024】
図2(a)に示すように、平常時には、換気孔11aから流入する空気は、空気通路底面板材14及び空気通路側面板材15で形成される通気経路を通過して建造物の屋根裏に導入される。
図2(b)に示すように、暴風時には、換気孔11aから流入する空気によって、可動フラップ材23は、可撓性接続材22による接続部(第2固定フラップ材21bの自由端)Aを支軸として可動し、空気通路側面板材15に当接することで通気経路を閉塞する。
図2(c)に示すように、火災時には、可撓性接続材22が火炎や熱によって溶け、可動フラップ材23が固定フラップ材21から離脱して落下することで、固定フラップ材21との間に、熱膨張材30の膨張する範囲を規制する膨張規制空間Cを形成し、熱膨張材30はこの膨張規制空間Cで膨張する。
このように、雨水の浸入を防止する可動フラップ材23を、火災時に固定フラップ材21から切り離し、落下させた可動フラップ材23によって固定フラップ材21との間に膨張規制空間Cを形成することで、熱膨張材30の膨張する範囲を規制することができ、火炎の浸入を確実に遮断することができる。
【0025】
図3は本実施例による軒先吸気部材の火災時を想定したバーナー実験での動作状態を示す写真である。
図3(a)は、バーナーでの加熱前の状態を示している。
図3(b)は、バーナーの加熱によって可撓性接続材22が溶け、可動フラップ材23が落下し始めた状態を示している。
図3(c)は、可動フラップ材23が落下した状態を示している。
図3(d)は、熱膨張材30が膨張している状態を示している。
図3(e)は、熱膨張材30の膨張によって空気通路が閉塞された状態を示している。
【0026】
図4は他の実施例による軒先吸気部材の断面図である。
図1の実施例と同一部材には同一符号を付して説明を省略し、
図1と異なる構成について以下に説明する。なお、熱膨張材については図示を省略している。
図1に示す第3可動フラップ材23cは、折り曲げることで、第3可動フラップ材23cの自由端Bを更に換気孔11a側に位置させているが、
図4(a)に示す第3可動フラップ材23cは、折り曲げていない。
図4(a)に示す可動フラップ材23は、
図1に示す可動フラップ材23と同様に、可動フラップ材23を垂下させた状態で、可動フラップ材23の自由端Bを支軸Aの仮想支軸鉛直線よりも換気孔11a側に位置させている。
このように、可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、支軸Aの仮想支軸鉛直線よりも換気孔11a側に位置させることで、可動フラップ材23の可動フラップ換気孔対向面23xが上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間Cを形成することができる。
また、
図4(a)に示す可動フラップ材23は、可動フラップ材23を垂下させた状態で、可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、可動フラップ材23の重心Dの仮想重心鉛直線よりも換気孔11a側に位置させている。
このように、可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、可動フラップ材23の重心Dの仮想重心鉛直線よりも換気孔11a側に位置させることで、可動フラップ材23の可動フラップ換気孔対向面23xが上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間Cを形成することができる。
【0027】
図1に示す第3可動フラップ材23cは、第3可動フラップ材23cの自由端Bを、第3可動フラップ材23cの一端よりも換気孔11a側に位置させているが、
図4(b)に示す第3可動フラップ材23cは、第3可動フラップ材23cの自由端Bを、第3可動フラップ材23cの一端よりも換気孔11aから離れた位置としている。
図4(b)に示す可動フラップ材23は、
図1に示す可動フラップ材23と同様に、可動フラップ材23を垂下させた状態で、可動フラップ材23の自由端Bを支軸Aの仮想支軸鉛直線よりも換気孔11a側に位置させている。
このように、可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、支軸Aの仮想支軸鉛直線よりも換気孔11a側に位置させることで、可動フラップ材23の可動フラップ換気孔対向面23xが上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間Cを形成することができる。
また、
図4(b)に示す可動フラップ材23は、可動フラップ材23を垂下させた状態で、可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、可動フラップ材23の重心Dの仮想重心鉛直線よりも換気孔11a側に位置させている。
このように、可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、可動フラップ材23の重心Dの仮想重心鉛直線よりも換気孔11a側に位置させることで、可動フラップ材23の可動フラップ換気孔対向面23xが上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間Cを形成することができる。
【0028】
図4(c)及び
図4(d)に示す可動フラップ材23は、可撓性接続材22で固定フラップ材21に支軸Aとなる一端を接続する第1可動フラップ材23aと、第1可動フラップ材23aの他端を一端として第1可動フラップ材23aから延出させる第2可動フラップ材23bとで形成し、第2可動フラップ材23bの他端(自由端)Bを、第2可動フラップ材23bの一端の仮想鉛直線よりも換気孔11a側に位置させ、第2可動フラップ材23bの自由端Bとなる下端を、支軸Aの仮想支軸鉛直線よりも換気孔11a側に位置させている。
可動フラップ材23をこのように構成することで、可動フラップ材23の可動フラップ換気孔対向面23xが上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間Cを形成することができる。
また、
図4(c)及び
図4(d)に示す可動フラップ材23は、可動フラップ材23を垂下させた状態で、可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、可動フラップ材23の重心Dの仮想重心鉛直線よりも換気孔11a側に位置させている。
このように、可動フラップ材23の自由端Bとなる下端を、可動フラップ材23の重心Dの仮想重心鉛直線よりも換気孔11a側に位置させることで、可動フラップ材23の可動フラップ換気孔対向面23xが上面となるように落下させることができるため、設定通りの膨張規制空間Cを形成することができる。
なお、
図4(c)に比べて
図4(d)は、重心Dを高い位置としており、重心Dが高い位置にあるほど、可動フラップ材23は落下時に回転モーメントを受けやすく、可動フラップ材23の自由端Bが仮想重心鉛直線から離間させる方が可動フラップ換気孔対向面23xが上面となるように落下させることができる。
【0029】
図5及び
図6は更に他の実施例による軒先吸気部材の断面図である。
図1及び
図4の実施例と同一部材には同一符号を付して説明を省略し、
図1及び
図4と異なる構成について以下に説明する。なお、熱膨張材については図示を省略している。
図5に示す可動フラップ材23は、
図1に示す可動フラップ材23において平常時に可撓性接続材22の反力を作用させており、
図6(a)から
図6(d)に示す可動フラップ材23は、
図4(a)から
図4(d)に示す可動フラップ材23において平常時に可撓性接続材22の反力を作用させており、仮想支軸鉛直線と仮想重心鉛直線とが一致しないものを示している。
【0030】
図5及び
図6に示す可動フラップ材23は、垂下した状態では、平常時には可撓性接続材22の反力が作用することによって可撓性接続材22の反力が作用する方向に位置しており、仮想支軸鉛直線と仮想重心鉛直線との位置は異なる。
図5及び
図6に示す可動フラップ材23であっても、加熱時には可撓性接続材22の反力が作用しなくなるため、仮想支軸鉛直線と仮想重心鉛直線とは位置が一致する。
【0031】
以上のように本発明のそれぞれの実施例によれば、可動フラップ材23が落下した状態では、可動フラップ換気孔対向面23xが上面となり、落下状態を一定とすることができ、設定通りの膨張規制空間Cを形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、可動フラップ材の落下状態を一定とすることができ、設定通りの膨張規制空間を形成することができる。
【符号の説明】
【0033】
11 換気孔形成板材
11a 換気孔
11b ブリッジ材
12 上部取付板材
13 水切り板材
14 空気通路底面板材
15 空気通路側面板材
20 フラップ材
21 固定フラップ材
21a 第1固定フラップ材
21b 第2固定フラップ材
21x 固定フラップ換気孔対向面
22 可撓性接続材
23 可動フラップ材
23a 第1可動フラップ材
23b 第2可動フラップ材
23c 第3可動フラップ材
23x 可動フラップ換気孔対向面
30 熱膨張材
41 垂木
42 野地板
43 屋根材
50 緩衝材
A 支軸(自由端、接続部)
B 自由端(他端)
C 膨張規制空間
D 重心
H 高さ
W 幅
α 角度