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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】廃棄物のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20220526BHJP
   C08J 11/18 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
C08J11/12
C08J11/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019181414
(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公開番号】P2021055008
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】519065880
【氏名又は名称】モアディバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直樹
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-509750(JP,A)
【文献】特開2000-136466(JP,A)
【文献】特開2001-294761(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207751(WO,A1)
【文献】特開2004-099160(JP,A)
【文献】特表2002-542313(JP,A)
【文献】特開2006-326897(JP,A)
【文献】特開2011-213826(JP,A)
【文献】特開2014-198331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンに当該ポリオレフィンを酸化分解する機能を有する添加剤を配合した配合材からなるプラスチック製品の廃棄物のリサイクル方法であって、
前記廃棄物を加熱室に入れる工程と、
前記加熱室内に空気を供給しつつ、加熱手段によって前記加熱室内の前記廃棄物を所定の加熱温度である70℃~90℃で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、この変換に基づいて前記配合材を細片化する加熱工程と、
前記低分子酸化物を再利用する工程とを備え、
前記加熱工程の際に、ポリオレフィンの酸化分解の促進を図るために、前記加熱手段による前記加熱室内の前記廃棄物への加熱に加えて、紫外線照射手段による前記加熱室内の前記廃棄物への紫外線照射、送風手段による前記加熱室内の前記廃棄物への送風及び加湿手段による前記加熱室の加湿のうちのすべてを行う
ことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。
【請求項2】
ポリオレフィンに当該ポリオレフィンを酸化分解する機能を有する添加剤を配合した配合材と、この配合材が貼り合わされた異質材とを含むプラスチック製品の廃棄物のリサイクル方法であって、
前記廃棄物を加熱室に入れる工程と、
前記加熱室内に空気を供給しつつ、加熱手段によって前記加熱室内の前記廃棄物を所定の加熱温度である70℃~90℃で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、この変換に基づいて前記配合材を細片化することで前記配合材と前記異質材とを分離する加熱工程と、
前記低分子酸化物及び前記異質材をそれぞれ分けて再利用する工程とを備え、
前記加熱工程の際に、ポリオレフィンの酸化分解の促進を図るために、前記加熱手段による前記加熱室内の前記廃棄物への加熱に加えて、紫外線照射手段による前記加熱室内の前記廃棄物への紫外線照射、送風手段による前記加熱室内の前記廃棄物への送風及び加湿手段による前記加熱室の加湿のうちのすべてを行う
ことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。
【請求項3】
ポリオレフィンに当該ポリオレフィンを酸化分解する機能を有する添加剤を配合した配合材と、この配合材が間に挟まれた一の異質材及び他の異質材とを含むプラスチック製品の廃棄物のリサイクル方法であって、
前記廃棄物を加熱室に入れる工程と、
前記加熱室内に空気を供給しつつ、加熱手段によって前記加熱室内の前記廃棄物を所定の加熱温度である70℃~90℃で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、この変換に基づいて前記配合材を細片化することで前記配合材と前記一の異質材と前記他の異質材とを分離する加熱工程と、
前記低分子酸化物、前記一の異質材及び前記他の異質材をそれぞれ分けて再利用する工程とを備え、
前記加熱工程の際に、ポリオレフィンの酸化分解の促進を図るために、前記加熱手段による前記加熱室内の前記廃棄物への加熱に加えて、紫外線照射手段による前記加熱室内の前記廃棄物への紫外線照射、送風手段による前記加熱室内の前記廃棄物への送風及び加湿手段による前記加熱室の加湿のうちのすべてを行う
ことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。
【請求項4】
ポリオレフィンに当該ポリオレフィンを酸化分解する機能を有する添加剤を配合した配合材と、この配合材に混入された混入材とを含むプラスチック製品の廃棄物のリサイクル方法であって、
前記廃棄物を加熱室に入れる工程と、
前記加熱室内に空気を供給しつつ、加熱手段によって前記加熱室内の前記廃棄物を所定の加熱温度である70℃~90℃で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、この変換に基づいて前記配合材を細片化することで前記配合材と前記混入材とを分離する加熱工程と、
前記低分子酸化物及び前記混入材をそれぞれ分けて再利用する工程とを備え、
前記加熱工程の際に、ポリオレフィンの酸化分解の促進を図るために、前記加熱手段による前記加熱室内の前記廃棄物への加熱に加えて、紫外線照射手段による前記加熱室内の前記廃棄物への紫外線照射、送風手段による前記加熱室内の前記廃棄物への送風及び加湿手段による前記加熱室の加湿のうちのすべてを行う
ことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。
【請求項5】
ポリオレフィンに当該ポリオレフィンを酸化分解する機能を有する添加剤を配合した層状の配合材と、この配合材がそれぞれの対向面に全体にわたって貼り合わされて当該両対向面間に介在したそれぞれ層状の一の異質材及び他の異質材とで構成されたプラスチック製品の廃棄物のリサイクル方法であって、
前記廃棄物を加熱室に入れる工程と、
前記加熱室内に空気を供給しつつ、加熱手段によって前記加熱室内の前記廃棄物を所定の加熱温度である70℃~90℃で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、この変換に基づいて前記配合材を細片化することで前記配合材と前記一の異質材と前記他の異質材とを分離する加熱工程と、
前記低分子酸化物、前記一の異質材及び前記他の異質材をそれぞれ分けて再利用する工程とを備え、
前記加熱工程の際に、ポリオレフィンの酸化分解の促進を図るために、前記加熱手段による前記加熱室内の前記廃棄物への加熱に加えて、紫外線照射手段による前記加熱室内の前記廃棄物への紫外線照射、送風手段による前記加熱室内の前記廃棄物への送風及び加湿手段による前記加熱室の加湿のうちのすべてを行う
ことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。
【請求項6】
前記加熱工程における所定の加熱温度は、80℃である
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の廃棄物のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を容易かつ効率良くリサイクルできる廃棄物のリサイクル方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の非特許文献1にあるように、青果物の鮮度を保ち、環境を守る生分解性効果を持つ理想的な包装資材として、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合(添加)した製品が知られている。そして、当該製品は、具体的には、例えば鮮度保持袋、レジ袋、梱包緩衝材、青果パック、農業用マルチ、フルーツキャップ、ウレタンボード、緩衝用シート、包装用シート、熱ラミシート等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】[online]、モアディバイス株式会社、[令和1年9月18日検索]、インターネット<URL:https://www.moredevice.co.jp/apinonnkeeper.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、資源枯渇の問題や環境汚染の問題等の高まりを受けて、あらゆる工業製品についてリサイクルが強く求められており、上述した製品についても同様にリサイクルが要望されている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、廃棄物を容易かつ効率良くリサイクルできる廃棄物のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の廃棄物のリサイクル方法は、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材からなる製品の廃棄物のリサイクル方法であって、前記製品の廃棄物を所定の加熱温度で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換する加熱工程を備えるものである。
【0007】
請求項2記載の廃棄物のリサイクル方法は、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材と、この配合材が貼り合わされた異質材とを含む製品の廃棄物のリサイクル方法であって、前記製品の廃棄物を所定の加熱温度で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、前記配合材と前記異質材とを分離する加熱工程を備えるものである。
【0008】
請求項3記載の廃棄物のリサイクル方法は、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材と、この配合材が間に挟まれた一の異質材及び他の異質材とを含む製品の廃棄物のリサイクル方法であって、前記製品の廃棄物を所定の加熱温度で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、前記配合材と前記一の異質材と前記他の異質材とを分離する加熱工程を備えるものである。
【0009】
請求項4記載の廃棄物のリサイクル方法は、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材と、この配合材に混入された混入材とを含む製品の廃棄物のリサイクル方法であって、前記製品の廃棄物を所定の加熱温度で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、前記配合材と前記混入材とを分離する加熱工程を備えるものである。
【0010】
請求項5記載の廃棄物のリサイクル方法は、請求項1ないし4のいずれか一記載の廃棄物のリサイクル方法において、前記加熱工程における所定の加熱温度は、70℃~90℃であるものである。
【0011】
請求項6記載の廃棄物のリサイクル方法は、請求項1ないし5のいずれか一記載の廃棄物のリサイクル方法において、前記加熱工程の際に、紫外線照射、送風及び加湿のうちの少なくともいずれか一を行うものである。
【0012】
請求項7記載の廃棄物のリサイクル方法は、請求項1ないし6のいずれか一記載の廃棄物のリサイクル方法において、前記生分解性ポリマーは、ポリオレフィンを酸化型生分解性プラスチックに変化させる機能を有する添加剤であるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、廃棄物を容易かつ効率良くリサイクルでき、よって、資源枯渇の問題や環境汚染の問題等の解決に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法を示す説明図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法を示す説明図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法を示す説明図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態について図1を参照しながら説明する。
【0016】
第1の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法は、図1に示すように、ポリオレフィン(ポリオレフィン組成のプラスチック)に生分解性ポリマーを配合(添加)した配合材からなる製品の廃棄物を回収する回収工程と、この回収工程により回収された廃棄物を所定の加熱温度で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換する加熱工程とを備えている。
【0017】
ポリオレフィンは、例えばポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等であり、生分解が困難とされる石油由来のプラスチックや植物由来のプラスチック等である。また、生分解性ポリマーは、そのような生分解が困難なポリオレフィンを酸化型生分解性プラスチックに変化させる機能を有する添加剤(酸化型生分解マスターバッジ)である。なお、生分解性ポリマーは、例えばヤシ油(植物油)をもとに精製された脂肪酸を主成分とした植物由来の酸化還元剤である。
【0018】
そして、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを所定量(製品全体に対して僅かな添加量)だけ配合した配合材のみで構成された製品は、酸化型生分解性プラスチック製品である。当該製品は、具体的には、例えばポリ袋、ごみ袋、レジ袋、梱包緩衝材、青果パック、農業用マルチ、フルーツキャップ、ウレタンボード、緩衝用シート、包装用シート、熱ラミシート、ストレッチフィルム、ラップ等であるが、これらには限定されず任意であり、あらゆる種類のPE製品やPP製品等が考えられる。
【0019】
なお、酸化型生分解性プラスチック製品は、酸化分解が始まるまでプラスチックの組成が変わらない。また、添加量により酸化分解速度のコントロールが可能であり、さらに、酸化されると比重が重くなるため、海水でも微生物の生存する海底に沈みやすい。
【0020】
回収工程で回収される廃棄物(リサイクル対象物)は、使用後に廃棄された製品であり、当該製品は配合材のみからなるものである。そして、この廃棄物の回収方法としては、特に限定されず任意であり、公知の回収方法を用いることができる(以下でも同様)。
【0021】
加熱工程は、回収工程により回収された廃棄物(単一層材)を所定の加熱温度、すなわち例えば70℃~90℃、好ましくは80℃(略80℃を含む)の温度で所定時間加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物(PE・PPの酸化物)に変換する工程である。
【0022】
具体的には、例えば所定量の廃棄物を加熱室等の加熱用空間に入れて、加熱手段による加熱で当該加熱用空間を所定時間(例えば7日)、所定温度(例えば80℃)に維持しつつ、当該加熱用空間には空気を供給する。
【0023】
すると、ポリオレフィンは、酸化分解により強制的に低分子酸化物(例えばカルボン酸、アルコール類等)に変換され、その結果、廃棄物は細片化されて細かくなる。つまり、約80℃の温度と風(外気)のみで、ポリオレフィンは酸化分解して低分子酸化物となる。
【0024】
そして、低分子酸化物は、生分解性ポリマーを再生するための再生原料として再利用(低分子酸化物と廃プラとを混合して生分解性ポリマーを再生)できるばかりでなく、焼却燃料としての再利用や、土壌活性化のための肥料としての再利用等も可能である。
【0025】
したがって、上記第1の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法によれば、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材からなる製品の廃棄物を容易かつ効率良くリサイクルでき、よって、資源枯渇の問題や環境汚染の問題等の解決に大きく貢献することができる。
【0026】
次に、本発明の第2の実施形態について図2を参照しながら説明する。
【0027】
第2の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法は、図2に示すように、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材と、この配合材が貼り合わされた異質材とを含む製品の廃棄物を回収する回収工程と、この回収工程により回収された廃棄物を所定の加熱温度で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、配合材と異質材とを分離する加熱工程とを備えている。なお、ポリオレフィンや生分解性ポリマー等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0028】
回収工程で回収される廃棄物(リサイクル対象物)は、使用後に廃棄された製品であり、当該製品は、層状の配合材(酸化型生分解性プラスチック)と、この配合材が表面に全体にわたって貼り合わされた層状の異質材とで構成された2層の複層材の製品(例えば包装容器等)である。異質材は、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材とは材質が異なるものであり、例えばポリスチレン(PS)である。
【0029】
加熱工程は、回収工程により回収された廃棄物(複層材)を所定の加熱温度、すなわち例えば70℃~90℃、好ましくは80℃(略80℃を含む)の温度で所定時間加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、この変換に基づいて配合材を細片化することで配合材と異質材とをそれぞれ分離する工程である。
【0030】
具体的には、上記第1の実施形態と同様、例えば所定量の廃棄物を加熱室等の加熱用空間に入れて、加熱手段による加熱で当該加熱用空間を所定時間(例えば7日)、所定温度(例えば80℃)に維持しつつ、当該加熱用空間には空気を供給する。
【0031】
すると、ポリオレフィンは、酸化分解により強制的に低分子酸化物(例えばカルボン酸、アルコール類等)に変換され、その結果、廃棄物中の配合材が細片化され、これにより、配合材と異質材とが分離される。
【0032】
そして、低分子酸化物は、上述のとおり、生分解性ポリマーを再生するための再生原料として再利用(低分子酸化物と廃プラとを混合して生分解性ポリマーを再生)できるばかりでなく、焼却燃料としての再利用や、土壌活性化のための肥料としての再利用等も可能である。また、配合材が完全剥離した異質材は、配合材とは分けて回収して、その材質(例えばPS)に応じた各種用途に再利用することができる。
【0033】
したがって、上記第2の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法でも、廃棄物を容易かつ効率良くリサイクルでき、よって、資源枯渇の問題や環境汚染の問題等の解決に大きく貢献することができる。
【0034】
次に、本発明の第3の実施形態について図3を参照しながら説明する。
【0035】
第3の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法は、図3に示すように、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材と、この配合材が間に挟まれた一の異質材及び他の異質材とを含む製品の廃棄物を回収する回収工程と、この回収工程により回収された廃棄物を所定の加熱温度で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、配合材と一の異質材と他の異質材とを分離する加熱工程とを備えている。なお、ポリオレフィンや生分解性ポリマー等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0036】
回収工程で回収される廃棄物(リサイクル対象物)は、使用後に廃棄された製品であり、当該製品は、層状の配合材(酸化型生分解性プラスチック)と、この配合材がそれぞれの対向面に全体にわたって貼り合わされて両対向面間に介在したそれぞれ層状の一の異質材及び他の異質材とで構成された3層の複層材の製品(例えば包装容器等)である。
【0037】
一の異質材は、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材とは材質が異なるものであり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)である。他の異質材は、配合材や一の異質材とは材質が異なるものであり、例えばナイロンである。なお、図示した例は、3層の複層材であるが、3層には限定されず、4層以上の複層材(複合材料の積層体)でもよい。
【0038】
加熱工程は、回収工程により回収された廃棄物(多重複層材)を所定の加熱温度、すなわち例えば70℃~90℃、好ましくは80℃(略80℃を含む)の温度で所定時間加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、この変換に基づいて両異質材間の配合材を細片化することで配合材と各異質材とをそれぞれ分離する工程である。
【0039】
具体的には、上記第1の実施形態と同様、例えば所定量の廃棄物を加熱室等の加熱用空間に入れて、加熱手段による加熱で当該加熱用空間を所定時間(例えば7日)、所定温度(例えば80℃)に維持しつつ、当該加熱用空間には空気を供給する。
【0040】
すると、ポリオレフィンは、酸化分解により強制的に低分子酸化物(例えばカルボン酸、アルコール類等)に変換され、その結果、廃棄物中の配合材が細片化され、これにより、配合材と一の異質材と他の異質材とが分離される。つまり、2層の異質材間に酸化型生分解性プラスチック製の層状の配合材(中間層)を配置することにより、各異質材を容易に剥離することが可能となる。
【0041】
そして、低分子酸化物は、上述のとおり、生分解性ポリマーを再生するための再生原料として再利用(低分子酸化物と廃プラとを混合して生分解性ポリマーを再生)できるばかりでなく、焼却燃料としての再利用や、土壌活性化のための肥料としての再利用等も可能である。また、配合材が完全剥離した2種の各異質材は、それぞれ分けて回収して、その材質(例えばPET、ナイロン)に応じた各種用途に再利用できる。
【0042】
したがって、上記第3の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法でも、廃棄物を容易かつ効率良くリサイクルでき、よって、資源枯渇の問題や環境汚染の問題等の解決に大きく貢献することができる。
【0043】
次に、本発明の第4の実施形態について図4を参照しながら説明する。
【0044】
第4の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法は、図4に示すように、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材と、この配合材に混入された混入材とを含む製品の廃棄物を回収する回収工程と、この回収工程により回収された廃棄物を所定の加熱温度で加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、配合材と混入材とを分離する加熱工程とを備えている。なお、ポリオレフィンや生分解性ポリマー等は、上記第1の実施形態と同様である。
【0045】
回収工程で回収される廃棄物(リサイクル対象物)は、使用後に廃棄された製品であり、当該製品は、層状の配合材(酸化型生分解性プラスチック)と、この配合材中に分散するように混入された粒状の混入材(異質材)とで構成された単層材の製品(例えば包装容器等)である。
【0046】
混入材は、ポリオレフィンに生分解性ポリマーを配合した配合材とは材質が異なるものであり、例えば鉱物・鉱石類(金、銀、銅、ゼオライト、大谷石、石灰、カーボン等)、セラミック、食品系廃材(コーヒー、茶、ホタテの貝殻等)、活性炭、炭等である。
【0047】
加熱工程は、回収工程により回収された廃棄物(混合材)を所定の加熱温度、すなわち例えば70℃~90℃、好ましくは80℃(略80℃を含む)の温度で所定時間加熱することにより、ポリオレフィンを酸化分解により低分子酸化物に変換し、この変換に基づいて配合材を細片化することで配合材と混入材とをそれぞれ分離する工程である。
【0048】
具体的には、上記第1の実施形態と同様、例えば所定量の廃棄物を加熱室等の加熱用空間に入れて、加熱手段による加熱で当該加熱用空間を所定時間(例えば7日)、所定温度(例えば80℃)に維持しつつ、当該加熱用空間には空気を供給する。
【0049】
すると、ポリオレフィンは、酸化分解により強制的に低分子酸化物(例えばカルボン酸、アルコール類等)に変換され、その結果、廃棄物中の配合材が細片化され、これにより、配合材と混入材とが分離される。
【0050】
そして、低分子酸化物は、上述のとおり、生分解性ポリマーを再生するための再生原料として再利用(低分子酸化物と廃プラとを混合して生分解性ポリマーを再生)できるばかりでなく、焼却燃料としての再利用や、土壌活性化のための肥料としての再利用等も可能であり、また、混入材はその材質に応じた各種用途に再利用できる。
【0051】
したがって、上記第4の実施形態に係る廃棄物のリサイクル方法でも、廃棄物を容易かつ効率良くリサイクルでき、よって、資源枯渇の問題や環境汚染の問題等の解決に大きく貢献することができる。
【0052】
なお、上記いずれの実施形態(プラスチック廃棄物のリサイクル方法)においても、廃棄物を加熱する加熱工程における所定の加熱温度は70℃~90℃である場合について説明したが、例えば所定の加熱温度が70℃未満になるとポリオレフィンの酸化分解速度が遅くなり過ぎ、他方、所定の加熱温度が90℃を超えると異質材に悪影響を及ぼすおそれがあるため、廃棄物の加熱温度としては、ポリオレフィンの融点未満であって70℃~90℃の範囲内の温度が好ましい。
【0053】
また、廃棄物の加熱工程の際に、ポリオレフィンの酸化分解の促進を図るために、加熱手段による廃棄物への加熱に加えて、紫外線照射手段による廃棄物への紫外線照射、送風手段による廃棄物への送風(廃棄物に風を当てる)、及び加湿手段による加熱用空間の加湿のうちの少なくともいずれか一を行うようにしてもよい。
【0054】
さらに、異質材は、例示した材質のものには限定されず、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ナイロン(ON)、無延伸ナイロン(CN)、ポリブタジェン(BDR)、ポリメチルベンテン(PMP)、延伸ビニロン(BOV)、PVCD塗布延伸ビニロン(OV)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニルデン(PVCD)、ポリ塩化ビニルデン塗布OPP(KOP)、ポリ塩化ビニリデン塗布ON(KON)、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリスチレン(PS)、普通セロファン(PT)、紙等でもよい。
【0055】
なお、本発明のいくつかの実施形態及びその変形例について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、前記各実施形態及び各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
図1
図2
図3
図4