(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】網地及び網地の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04C 1/06 20060101AFI20220526BHJP
D02G 3/38 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
D04C1/06 A
D02G3/38
(21)【出願番号】P 2022004824
(22)【出願日】2022-01-17
【審査請求日】2022-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591224766
【氏名又は名称】ナカダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092680
【氏名又は名称】入江 一郎
(72)【発明者】
【氏名】石 川 祐 介
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-209059(JP,A)
【文献】特開昭62-006949(JP,A)
【文献】特開昭63-175126(JP,A)
【文献】特開2020-193406(JP,A)
【文献】特開2007-284047(JP,A)
【文献】特開2018-150667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
D04C1/00-7/00
D04G1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線が撚られて網地構成糸が形成され、複数の網地構成糸を交差させつつ該交
差位置において複数の素線の間に他方の素線を挿通させて無結節を製造する網地の製造方
法であって、
前記複数の網地構成糸は、下撚りのカバードヤーンである第1、第2の網地構成糸で
あり、
無結節で製造された前記網地は、上撚りであり、
a/b(aは上撚り網地の撚数、bは網地編網後、測定した下撚りの前記第1、第2
の網地構成糸の撚数)が0.56~0.63の範囲で網地を製造するものであ
り、
前記第1の網地構成糸の芯糸は、スーパー繊維であり、
前記第2の網地構成糸の芯糸は、スーパー繊維である
ことを特徴とする網地の製造方法。
【請求項2】
複数の素線が撚られて網地構成糸が形成され、複数の網地構成糸を交差させつつ該交
差位置において複数の素線の間に他方の素線を挿通させて無結節を構成する網地であって
、
前記複数の網地構成糸は、下撚りのカバードヤーンである第1、第2の網地構成糸で
あり、
無結節で製造された前記網地は、上撚りであり、
a/b(aは上撚り網地の撚数、bは網地編網後、測定した下撚りの前記第1、第2
の網地構成糸の撚数)が0.56~0.63であ
り、
前記第1の網地構成糸の芯糸は、スーパー繊維であり、
前記第2の網地構成糸の芯糸は、スーパー繊維である
ことを特徴とする網地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網地及び網地の製造方法に係り、特に、網地の強度利用率の向上を図った網地及び網地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、無結節網地(特許文献1参照)は材料である原糸を数本撚糸し(下撚り)、束ねたものをさらに撚り合わせて上撚り網地を形成する。原糸は過度に撚ると、強度が低下し(伸度は増加する)、本来の原糸のもつ強度の網地への利用率は落ちていく。一般的な無結節網地の強度利用率は40%~50%程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ダイニーマ(超高分子量ポリエチレン)や、ケブラー(ポリアラミド)、ベクトラン(ポリアリレート)などの高強度スーパー繊維を使用した無結節網地はその強度利用率が非常に低く、30%~40%程度となっている。また、スーパー繊維は伸度が小さく、かつ摩擦も小さいため、編網時に糸が滑り、単一材料で編網するのが難しいという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされた網地及び網地の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の網地の製造方法は、複数の素線が撚られて網地構成糸が形成され、複数の網地構成糸を交差させつつ該交差位置において複数の素線の間に他方の素線を挿通させて無結節を製造する網地の製造方法であって、前記複数の網地構成糸は、下撚りのカバードヤーンである第1、第2の網地構成糸であり、無結節で製造された前記網地は、上撚りであり、a/b(aは上撚り網地の撚数、bは網地編網後、測定した下撚りの前記第1、第2の網地構成糸の撚数)が0.56~0.63の範囲で網地を製造するものであり、
前記第1の網地構成糸の芯糸は、スーパー繊維であり、前記第2の網地構成糸の芯糸は、スーパー繊維である。
【0008】
また、請求項2記載の網地は、複数の素線が撚られて網地構成糸が形成され、複数の網地構成糸を交差させつつ該交差位置において複数の素線の間に他方の素線を挿通させて無結節を構成する網地であって、前記複数の網地構成糸は、下撚りのカバードヤーンである第1、第2の網地構成糸であり、無結節で製造された前記網地は、上撚りであり、a/b(aは上撚り網地の撚数、bは網地編網後、測定した下撚りの前記第1、第2の網地構成糸の撚数)が0.56~0.63であり、前記第1の網地構成糸の芯糸は、スーパー繊維であり、前記第2の網地構成糸の芯糸は、スーパー繊維である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の網地の製造方法によれば、a/b(aは上撚り網地の撚数、bは編地編網後測定した下撚り第1、第2の網地構成糸の撚数)が0.56~0.63であるため、無結節網地の強度利用率を向上させることができる。
【0012】
請求項2記載の網地によれば、a/b(aは上撚り網地の撚数、bは編地編網後測定した下撚り第1、第2の網地構成糸の撚数)が0.56~0.63であるため、無結節網地の強度利用率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例の無結節を製造する網地の無結節前の構成図である。
【
図2】
図2は、網地構成糸を構成する第1、第2の網地構成糸の概略的図である。
【
図3】
図3は、上撚り網地の撚数a、網地編網後、測定した下撚りの第1、第2の網地構成糸の撚数b、網地の強度利用率を示す表である。
【
図4】
図4は、
図3をグラフ化したもので、横軸に上撚り網の撚数aを第1、第2の網地構成糸の撚り数bで割った係数a/b、縦軸に利用率を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施例の網地及び網地の製造方法を説明する。
ダイニーマ(超高分子量ポリエチレン)や、ケブラー(ポリアラミド)、ベクトラン(ポリアリレート)などの高強度スーパー繊維を使用した無結節網地はその強度利用率が非常に低く、30%~40%程度となっている。本件発明者は、鋭意研究した結果、無結節網地の強度利用率が上撚り網地10の撚数a、編地編網後測定した下撚り第1、第2の網地構成糸1、2の撚数bに起因することを見出した。
【0015】
即ち、複数の素線が撚られて網地構成糸が形成され、複数の網地構成糸を交差させつつ該交差位置において複数の素線の間に他方の素線を挿通させて無結節を製造する網地の製造方法であって、前記複数の網地構成糸は、下撚りのカバードヤーンである第1、第2の網地構成糸1、2であり、無結節で製造された網地10は、上撚りである。
a/b(aは上撚り網地10の撚数、bは網地編網後、測定した下撚りの第1、第2の網地構成糸1、2の撚数)を算出して、第1、第2の網地構成糸1、2の撚数と網地10の撚数を決定して網地10を製造するものである。
その結果、a/b(aは上撚り網地の撚数、bは編地編網後測定した下撚り第1、第2の網地構成糸1、2の撚数)を算出して、第1、第2の網地構成糸1、2の撚数bと網地の撚数aを決定して網地10を製造するため、無結節網地の強度利用率を向上させた網地10を製造することができる。
【0016】
更に、詳述すれば、カバードヤーンは芯糸に、鞘糸を巻き付けた糸である。カバードヤーンは、例えば、特開2019-99990に開示された15cN/dtex以上の強度を有する繊維からなる芯糸と、熱可塑性繊維または天然繊維からなり、前記芯糸を被覆するように撚り上げた鞘糸からなる撚糸である。
【0017】
上記網地の製造方法は、無結節網機(例えば、東洋工業株式会社製のR0125S)に下撚りのカバードヤーンである第1の網地構成糸1と下撚りのカバードヤーンである第2の網地構成糸2を供給して、複数の網地構成糸を交差させつつ該交差位置において複数の素線の間に他方の素線を挿通させて無結節の網地10を製造することができる。なお、S撚りを上撚りとすれば、Z撚りは下撚りとなる。
【0018】
上記した網地の製造方法(又は、網地10)によれば、
図3に示すように、網地10の撚数aを第1、第2の網地構成糸1、2の撚り数bで割った係数a/bが0.56~0.63の範囲で網地10を製造すれば、無結節網地の強度利用率が従来の40%を超えた45%以上の値を得ることができた。
カバードヤーン1、2の撚り数bは、網地編網後、検撚機等で測定した撚数であり、
カバードヤーン1、2製作時の撚数ではない。これは、無結節の網地10を編網する際は管巻きされた素線が解かれる際に解除撚りが発生し、カバードヤーン製作時の撚りに編網時に追撚されるためである。
【0019】
なお、芯糸はスーパー繊維を用いた。スーパー繊維は、強度:18cN/decitex以上、弾性率:380cN/decitex以上の高強度かつ高弾性繊維糸であるのが好ましい。具体的には、アラミド(パラ系、メタ系を含む)繊維、ポリアリレート繊維、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキザール)(PBO)繊維、ポリ(p-フェニレンベンゾビスチアゾール)(PBZT)繊維、ポリエチレン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維及びポリビニルアルコール繊維から選ばれる少なくとも一つの繊維糸であるのが好ましい。これらの繊維は混合して使用することもできる。経糸と緯糸は同一であっても良いし、異なっていても良い。この中でも耐熱性の高いアラミド繊維(例えば、東レ・デュポン社製商品名“ケブラー”、テイジントワロン(登録商標)社製商品名“トワロン(登録商標)”、帝人社製商品名“テクノーラ”)、ポリアリレート繊維(例えば、クラレ社製商品名“ベクトラン”)、ポリ(p-フェニレンベンゾビスオキザール)(PBO)繊維(例えば、東洋紡社製商品名“ザイロン”)が好ましい。
【0020】
また、鞘糸は、機能性繊維、原着糸、難燃糸、再生繊維、融着糸、特開2019-99990に開示された以外の別種のスーパー繊維等でも良い。
【0021】
また、強度利用率=(実際の強さ÷理論強さ)×100
理論強さ(N)=(素材Aの強度×繊度+素材Bの強度×繊度)÷100(cN→N)
網地10を構成するすべての繊維の強度:素材Aの強度:5cN/dtex
:素材Bの強度:10cN/dtex
網地10でのそれぞれの使用繊度:素材Aの繊度:4000dtex
:素材Bの繊度:5000dtex
例えば、実際の強さが300Nとすると、理論強さ(N)=(5cN/dtex×4000dtex+10cN/dtex×5000dtex)÷100=700N
強度利用率は(300N÷700N)×100=42.9% となる。
【符号の説明】
【0022】
1 第1の網地構成糸
2 第2の網地構成糸
10 網地
a 網地の撚数
b 網地編網後、測定した下撚りの第1、第2の網地構成糸の撚数
【要約】
【課題】
本発明の目的は、網地の強度利用率の向上を図った網地及び網地の製造方法を提供するものである。
【解決手段】
網地の製造方法は、複数の素線が撚られて網地構成糸が形成され、複数の網地構成糸を交差させつつ該交差位置において複数の素線の間に他方の素線を挿通させて無結節を製造する網地の製造方法であって、前記複数の網地構成糸は、下撚りのカバードヤーンである第1、第2の網地構成糸1、2であり、無結節で製造された網地10は、上撚りであり、a/b(aは上撚り網地の撚数、bは網地編網後、測定した下撚りの前記第1、第2の網地構成糸の撚数)を算出して、第1、第2の網地構成糸1、2の撚数と網地10の撚数を決定して網地10を製造するものである。
【選択図】
図3