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特許7079555ウォータージェット推進機、船舶及び水陸両用車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】ウォータージェット推進機、船舶及び水陸両用車
(51)【国際特許分類】
   B63H 11/08 20060101AFI20220526BHJP
   B63H 11/107 20060101ALI20220526BHJP
   B63H 21/17 20060101ALI20220526BHJP
   B63H 25/42 20060101ALI20220526BHJP
   B63C 13/00 20060101ALI20220526BHJP
   B60F 3/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
B63H11/08 A
B63H11/107
B63H21/17
B63H25/42 F
B63C13/00
B60F3/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017180900
(22)【出願日】2017-09-21
(65)【公開番号】P2019055671
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】516279053
【氏名又は名称】泰成電機商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147050
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 亨
(72)【発明者】
【氏名】岡部泰典
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-225794(JP,A)
【文献】特開2011-087348(JP,A)
【文献】特開2013-132995(JP,A)
【文献】特開2002-087389(JP,A)
【文献】特開2007-131081(JP,A)
【文献】特開2013-107609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0166746(US,A1)
【文献】特開2002-362488(JP,A)
【文献】特開2006-238610(JP,A)
【文献】特開2007-120061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 11/00
B63H 11/08
B63H 11/107
B63H 21/17
B63H 21/22
B63H 25/42
B63H 25/46
B63B 49/00
B63J 99/00
B63C 13/00
B60F 3/00
H02J 3/32
H02J 3/38
H02P 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主発電機からの交流出力が入力されるマトリクスコンバータと接続され、
交流電動機によってポンプジェットスラスターを動作させるウォータージェット推進機を持つサイドスラスターであって、
前記交流電動機が動作時に直流に変換することなく前記マトリクスコンバータを介して前記主発電機からの交流出力の周波数を変換して前記交流電動機に供給することを特徴とするサイドスラスター。
【請求項2】
請求項1記載のサイドスラスターにおいて、
前記交流電動機が前記ポンプジェットスラスターのインペラを回動させることを特徴とするサイドスラスター。
【請求項8】
請求項1乃至7記載のサイドスラスターを持つ船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウォータージェット推進機、特にモータで動作するウォータージェット推進機に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォータージェット推進機は、船底から汲み上げた水を、主機(動力源)により動作する高圧ポンプで、後方のノズルから勢い良く吐出する事で推進力を得る機関である(Wikipediaより一部修正)。ウォータージェット推進機の特徴としては高速、静粛性の面で優れているが、推進効率及び航続距離の面でプロペラに劣る。
【0003】
図1は、従来の機械式駆動方式によるウォータージェット推進機の構成を表すブロック図である。また図2は、ポンプジェットスラスター901及びその中に含まれるインペラ902の周辺を表す断面図である。
【0004】
このウォータージェット推進機は、ポンプジェットスラスター901、インペラ902、カップリング903、エンジン904、制御装置910、遠隔操縦装置送受信部911、遠隔盤912、主発電機920を含んで構成される。
【0005】
ポンプジェットスラスター901は、一種の軸流水ポンプである。カップリング903より伝達される回転トルクによってインペラ902を回転させ、船底の開口部951から水を吸い込む。以下ポンプジェットスラスターの簡単な動作を説明する。
【0006】
インテーク991から吸い込まれた水は、インペラ902によって圧縮されディフューザ992を通り、ノズル993で絞られてジェット噴流として、噴出される。この反動推力が推進力となる。
【0007】
カップリング903は、エンジン904の発生する回転トルクを伝達する為の軸継手及び変速器である。なお、図2では軸継手のみを記載している。本出願は後述する電動機でインペラを回動させるものであり、変速機は基本不要だからである。但し、変速機があっても本願の射程から外れることはない。
【0008】
エンジン904は、インペラ902に回転トルクを与えるための発動機である。カップリング903を介してエンジンで発生したトルクはインペラ902に伝達される。
【0009】
制御装置910は、エンジン904の制御を行うためのコントローラである。
【0010】
遠隔操縦装置送受信部911は、制御装置910を遠隔操作する為の図示しないリモコンからの無線信号を受信し、ステータスデータ等を送信する送受信部である。遠隔制御や遠隔でのステータスの監視を行わない場合には、遠隔操縦装置送受信部11が不要になることは言うまでもない。
【0011】
遠隔盤912は、制御装置910を遠隔操作する為の制御盤である。制御装置910との間は有線で接続される。
【0012】
主発電機920は、制御装置910を動作させるための電力を供給するための発電機である。
【0013】
図3は、従来の電気式駆動方式によるウォータージェット推進機の構成を表すブロック図である。
【0014】
図1図3の相違点は、モータで動かすか、エンジンで動かすか、である。すなわち図3はモータ(発動機951)でインペラ902を動かしているのである。ここでは、図1図3の相違点のみ説明する。
【0015】
発動機951はインペラ902を動かすモータである。
【0016】
始動器盤952は、発動機951を始動する際に操作者の手を煩わせずに徐々に負荷を上げていくことで発動機951や発動機951の発生する駆動力を伝達するベルト等(あればだが)が壊れることを防ぐスタータ及びその操作盤である。具体的には始動器盤952とは主発電機920から発動機951へ供給される電力を制御するモノである。
【0017】
主発電機920は、制御装置910を動作させるための電力を供給するための発電機である。図3では発動機951へ供給される電力も用意する為、図1の主発電機920よりも出力は大きくする必要がある。
【0018】
図1の形態と図3の形態の良否は運用の形態によってさまざまである。しかし主発電機920を常時パワーバンドで稼働するようにし、図示しない蓄電池等に充電するようにすれば、高効率で動作できる。よって、最近では図3の実施形態を採用する場合が増えている。
【0019】
特開2002-087389(特許文献1)には、モータで駆動するサイドスラスターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開2002-087389
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかし、特許文献1記載の発明では、モータを用いることのみが記載されてい。しかし、実装する際には色々と問題がある。
【0022】
電動機951を動かすには、インバータ制御を行う。すなわち、主発電機920の出力の周波数と電動機951の動作周波数が異なる場合には、主発電機920の出力を一旦直流に変換したのちに、電動機951の動作周波数をもつ交流に再変換する必要がある。図3では始動器盤952がこの役割を果たす。
【0023】
このインバータ制御は交流を直流に変換するときに高調波を生じる。そしてこの高調波の発生により電力損失が生じることになる。
【0024】
本発明の目的は、インバータによる損失を防ぐことで、発動機951による消費電力と主発電機920の発電能力の差を少なくし、主発電機920の発電能力が小さくても動作するウォータージェット推進機を提供することにある。
【0025】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に関わる代表的なウォータージェット推進機は、電動機によってポンプジェットスラスターを動作させるものであって、マトリクスコンバータを介して主発電機からの電力を電動機に供給することを特徴とする。
【0027】
このウォータージェット推進機において、電動機がポンプジェットスラスターのインペラを回動させることを特徴としても良い。
【0028】
このウォータージェット推進機において、マトリクスコンバータが始動器盤に含まれることを特徴としても良い。
【0029】
このウォータージェット推進機において、始動器盤が電動機を保護することを特徴としても良い。
【0030】
このウォータージェット推進機において更に制御装置を含み、この制御装置が電動機を制御することを特徴としても良い。
【0031】
このウォータージェット推進機において、制御装置に遠隔操縦装置送受信部を含むことを特徴としても良い。
【0032】
このウォータージェット推進機において、遠隔操縦装置送受信部を介して制御装置が遠隔制御可能なことを特徴としても良い。
【0033】
これらのウォータージェット推進機を用いた主推進機を持つ船舶またはこれらのウォータージェット推進機を用いたサイドスラスターを持つ船舶も本発明の射程に含まれる。
【0034】
また、これらのウォータージェット推進機を用いた主推進機を持つ水陸両用装甲車も本発明の射程に含まれる。
【発明の効果】
【0035】
本明細書記載の発明によって、熱損失等の電力のロスを防ぎ、より小型の主発電機で動作するウォータージェット推進機を実現することにある。
【0036】
また本発明記載の発明によって主発電機の小型化が可能になり、結果船内容量の確保が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】従来の機械式駆動方式によるウォータージェット推進機の構成を表すブロック図である。
図2】ポンプジェットスラスター及びインペラの周辺を表す断面図である。
図3】従来の電気式駆動方式によるウォータージェット推進機の構成を表すブロック図である。
図4】本発明に関わるウォータージェット推進機の構成を表すブロック図である。
図5】従来の始動器盤の概念図である。
図6】本発明の始動器盤の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0039】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態を説明する。
図4は、本発明に関わるウォータージェット推進機の構成を表すブロック図である。
本発明に関わるウォータージェット推進機は、ポンプジェットスラスター101、それに含まれるインペラ102、カップリング103、制御装置110、遠隔制御装置送受信部111、遠隔盤112、主発電機120、電動機151、始動器盤152を含んで構成される。
【0040】
ポンプジェットスラスター101は、ポンプジェットスラスター901同様に軸流水ポンプである。図2に表した構成とほぼ同一である。
【0041】
インペラ102は、ポンプジェットスラスター101の構成要素の一である。電動機151によってインペラ102は回動する。その回動によって水が圧縮される。ディフューザ952を通り、ノズル953で絞られてジェット噴流として、噴出される。この反動推力が推進力となる。図1の相違点とすれば、インペラ102を回動させるのが電動機151か、エンジン904かという相違しかない。
【0042】
カップリング103は、電動機151の駆動軸とインペラ102を回す従動軸をつなぎ、動力を伝達する軸継手である。
【0043】
制御装置110は、電動機151及びその他の制御対象を制御するためのコントローラである。主発電機120から供給される電力によって制御装置110は動作する。
【0044】
遠隔操縦装置送受信部111は、制御装置110を遠隔操作する為の図示しないリモコンからの無線信号を受信し、ステータスデータ等を送信する送受信部である。従来例同様、遠隔制御や遠隔でのステータスの監視を行わない場合には、遠隔操縦装置送受信部111が不要になることは言うまでもない。
【0045】
遠隔盤112は、制御装置110を遠隔操作する為の制御盤である。制御装置110との間は有線で接続されるのは従来例と同様である。
【0046】
主発電機120は、電動機151、制御装置110他に電力を供給するための発動機である。主発電機120は交流出力となるので、電動機151で用いる周波数で発電するのが良いが、費用や設置スペースの都合でそのようにはいかないことが多い。なお、制御装置110は直流で動くことが想定されるが、本図においては制御装置110内に交流直流変換回路が用意されているものとする。
【0047】
始動器盤152は、主発電機120が発電した交流電力を一旦直流に変換せずに、電動機151が求める異なる周波数に変換する直接式周波数変換器(マトリクスコンバータ152a)を含むスタータ及びその操作盤である。
【0048】
始動器盤152と図3の始動器盤952の相違点を説明する。図5は始動器盤952の内部構成を表す概念図であり、図6はマトリクスコンバータ952の概念図である。
【0049】
図5からも明らかなとおり、図3の始動器盤952における交流の周波数変換ではコンバータ952aが周波数f1の交流を一旦直流に変換する。そして、その変換した直流をインバータ952bが周波数f2の交流に変換する。
【0050】
しかし、このような変換を行うと発熱等による損失が極めて大きなものになる。すなわち、周波数f2の所望の交流電力を得ようとすると、周波数f1の交流を発生させる主発電機920の発電電力量はその所望の電力の数倍~十数倍が必要になる。このような損失は好ましくないのは言うまでもない。
【0051】
一方本願発明では、始動器盤152はマトリクスコンバータ152aによって交流・交流変換を行う。
【0052】
マトリクスコンバータ152aは図5の間接式周波数変換方式と異なり直流リンク部をもたず、直接周波数変換を行うため、唸り周波数の発生や入出力電流波形のひずみが懸念される。但し、120度ごとの位相差を持つ平衡した三相の瞬時電力は一定になることを利用すれば、入出力のうなりを抑制しながら、ひずみのない入出力電流を得ることができる。
【0053】
いずれにしても、マトリクスコンバータ152aを有効なコンバータとして機能させるにはスイッチングを高速かつ的確に行う必要があるが、実現できれば損失の少ない高性能なコンバータになる。そして、その高性能なコンバータをウォータージェット推進機に適用すれば、主発電機120の出力を大きくしなくとも十分な推進力を船に与えることが可能になる。
【0054】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは言うまでもない。
【0055】
例えば、サイドスラスターとしてウォータージェット推進機を用いる場合が考えられる。船の主推進機と異なり、接岸や離岸、港内の方向転換での使用が主な目的となるサイドスラスターの場合、その目的に叶うだけ主発電機120の出力を必要なだけ小さくすることで、船の自重を軽くすることができる。結果燃費の向上や船内容積の確保が容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は船や水陸両用車、水陸両用装甲車等で用いるウォータージェット推進機に用いることが可能である。また、主推進機として用いるだけでなくサイドスラスターなどの補助的な推進機関として使用することも視野に含まれる。
【0057】
また、高速性や正確性をそれほどシビアに見ない用途であれば、始動器盤152内のマトリクスコンバータ152aをサイクロコンバータに置き換えることも本発明の射程に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
101、901:ポンプジェットスラスター、
102、902:インペラ、
103、903:カップリング、
110、910:制御装置、
111、911:遠隔制御装置送受信部、
112、912:遠隔盤、
120、920:主発電機、
151:電動機、
152、952:始動器盤、
152a:マトリクスコンバータ、
904:エンジン、
951:電動機、
952a:コンバータ、
952b:インバータ、
991:インテーク、
992:ディフューザ、
993:ノズル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6