(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】排水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20060101AFI20220526BHJP
B01J 20/32 20060101ALI20220526BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
C02F1/28 D
B01J20/32 Z
B01J20/34 D
(21)【出願番号】P 2019092930
(22)【出願日】2019-05-16
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-009228(JP,A)
【文献】特開昭51-043395(JP,A)
【文献】特開2016-019933(JP,A)
【文献】特開2005-263547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/28
B01J 20/00-20/28
B01J 20/30-20/34
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着材により排水処理を行う排水処理工程と、前記吸着材を熱処理する熱処理工程とを有し、前記熱処理工程では吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に吸着材を賦活・再生するようにし、前記熱処理工程の排熱で排水処理工程後の吸着材を予備加熱するようにし、前記吸着材を排水処理工程に供するようにし
、前記吸着材に吸着性機能剤(5)を付着させ、前記熱処理工程で吸着性機能剤を炭化させるようにし、前記熱処理工程の排熱で吸着性機能剤(5)を加熱し吸着性機能剤の流動性を高めて吸着材に付着させるようにしたことを特徴とする排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場排水その他の排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工場排水その他の排水処理機構に関する提案があった(特許文献1)。
この排水処理機構は、排水中の汚れ物質を吸着する活性炭吸着槽と槽内流動機構とを有し、前記活性炭吸着槽に電解水を供給すると共に、前記活性炭吸着槽内で槽内流動機構により排水と活性炭とを流動させるようにしたものである。
そして、槽内が流動することにより一定の場所に停滞する部位が減少して電解水の洗浄作用を万遍なく活性炭に及ぼすことが出来るので、従来よりも効率良く分解することが出来るというものである。
これに対し、活性炭すなわち吸着材の賦活・再生時の熱利用効率をより優れたものにしたいという更なる要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来より吸着材の賦活・再生時の熱利用効率に優れたものとすることができる排水処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の排水処理方法は、吸着材により排水処理を行う排水処理工程と、前記吸着材を熱処理する熱処理工程とを有し、前記熱処理工程では吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に吸着材を賦活・再生するようにし、前記熱処理工程の排熱で排水処理工程後の吸着材を予備加熱するようにし、前記吸着材を排水処理工程に供するようにしたことを特徴とする。
この排水処理方法では、吸着材(例えば活性炭)により排水処理を行う排水処理工程を有するので、排水中の汚れ成分を吸着材に集約して低減ないし除去することが出来る。
また、前記吸着材を熱処理する熱処理工程とを有し、前記熱処理工程では排水処理工程で吸着材に吸着した汚れ成分を熱分解すると共に賦活・再生することとしたので、吸着材に集約した排水中の汚れ成分を熱処理して二酸化炭素(CO2)や水分(H2O)などにまで熱分解することができ、またこの熱処理により吸着材を賦活・再生することが出来る。
【0006】
ここで、熱処理工程の排熱で排水処理工程後の吸着材を予備加熱するようにしたので、熱処理工程の排熱を利用して排水処理工程後の含水した吸着材を事前にある程度 脱水することができると共に、この時点で脱水した分 熱処理工程での熱エネルギーを節減することが出来る。
そして、前記熱処理工程を経た吸着材を排水処理工程に供するようにしたので、熱エネルギーを節減して賦活・再生した吸着材を排水処理で再利用することが出来る。
【0007】
排水中の汚れ成分として、有機物、溶解性COD成分、極微粒子、ss成分などを例示できる。具体的には、MPA(3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド)、クエン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、PVAなどを例示することが出来る。また、分子サイズが小さい有機物、すなわちエチレングリコール(HO-CH2-CH2-OH)、プロピレングルコール、エチレンクロロヒドリン(Cl-CH2-CH2-OH)、プロピレンクロロヒドリン、アセトアルデヒド(CH3-CHO)などを例示することが出来る。さらに、植物油、動物油、鉱物油、シリコン油などの疎水性の油類を界面活性剤で可溶化した排水を例示することが出来る。
【0008】
(2)前記吸着材に吸着性機能剤を付着させ、前記熱処理工程で吸着性機能剤を炭化させるようにしてもよい。
このように構成し、吸着材に吸着性機能剤(例えばタール・ピッチ)を付着させ、熱処理工程で吸着性機能剤を炭化させるようにすると、経時的に目減りし消耗(例えば元の5~20%程度)していく吸着材自体を補充することなく、(通常はより安価な)吸着性機能剤を追加しながら排水処理を行うことができるので、従来より吸着材の補充コストが掛からないこととなる。
【0009】
(3)前記熱処理工程の排熱で吸着性機能剤を加熱して吸着材に付着させるようにしてもよい。
このように構成し、熱処理工程の排熱で吸着性機能剤を加熱して吸着材に付着させるようにすると、(流動状ないし略流動状の)吸着性機能剤の流動性を高めた付き易い状態で吸着材に付着させることが出来る。
(4)前記吸着性機能剤にシリカ又は/及びアルミナを含有させるようにしてもよい。
このように構成し、吸着性機能剤にシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)を含有させるようにすると、熱処理工程で吸着材にシリカやアルミナが軟化・固着して吸着材の骨格強度を向上させることが出来る。前記シリカやアルミナとして、例えばシラス台地の火山灰を用いることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
熱エネルギーを節減して賦活・再生した吸着材を排水処理で再利用することができるので、従来より吸着材の賦活・再生時の熱利用効率に優れた排水処理方法を提供することが出来る。
また、流動状ないし略流動状の吸着性機能剤の流動性を高めた付き易い状態で吸着材に付着させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の排水処理方法の実施形態を説明するシステム・フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
〔実施形態1〕
図1に示すように、この実施形態の排水処理方法は、吸着材により排水処理を行う排水処理工程(System 1、2)と、前記吸着材を熱処理する熱処理工程(System 3)とを有する。前記排水
1として、高濃度有機・油分排水を処理した。前記吸着材として、活性炭を用いた。
具体的には、排水中のss・油成分を処理するブロック(System 1)と、排水中の有機成分を吸着材により処理するブロック(System 2)と、前記吸着材を熱処理して再生するブロック(System 3)と、熱処理による排ガスを浄化して大気解放するブロック(System 4)と、排水処理を制御するブロック(System 5)とを有する。
【0013】
排水中のss・油成分を処理するブロック(System 1)では、高濃度有機・油分排水の水質をセンサーS-1 で分析し、自動採水装置(排水サンプルを自動採取する)を介して、ss・油成分バブル浮上装置に受け入れた。センサーS-1ではTOC計測器により全有機炭素を測定し、排水処理全体は集中制御盤で管理する(System 5)。
ss・油成分バブル浮上装置では、バブル発生装置から微細気泡を吹き込んでss・油成分を浮上させるようにしている。ss・油成分バブル浮上装置で浮上したss・油成分は、その中央部で横溢・流下させて高濃度有機水槽に移行せしめる。この高濃度有機水槽(モータM4により撹拌)には、脱臭用電解水を注入するようにしている。これにより卵白などの嫌な臭気を減じるようにしている。高濃度有機水槽の下方から、スラリー・ポンプSP2により排水を抜き出して油成分・ss除去装置に送るようにしている。
【0014】
そして、この油成分・ss除去装置後の排水を、既述のss・油成分バブル浮上装置の下方からスラリー・ポンプSP18により抜き出した排水と合流しつつ、電解水を注入して、一次処理水槽に移行せしめ、(熱処理により再生した)吸着材をスラリー・ポンプSP3によって注入した。電解水の注入により、排水中の有機成分の吸着材への吸着性を向上させることが出来た。
次に、排水中の有機成分を吸着材により処理するブロック(System 2)では、前記一次処理水槽からスラリー・ポンプSP4により排水を抜き出し、水質をセンサーS-2 で分析し3連の混練槽2に移送している。ここで、浄化処理済みの浄化水(UF膜濾過装置後)をフィード・バック水(FB水)として、その水質をセンサーS-2 で分析して配管中に注入している。これにより、前記混練槽の汚れ成分の濃度を希釈して処理の均一化を図っている。
【0015】
3連の混練槽2(各モータM1、2、3により撹拌)は、図示右側2連の前処理槽と左側の後処理槽とから構成している。そして、その下方の3連の濾過槽3(吸着材が貯留されている)により濾過し、モータMで回転駆動されるスパイラル・ポンプ4で吸着材を熱処理工程(System 3)へと移行(図示右方向)しつつ、濾過後の排水を下方の右側2連の中間槽と左側の処理水槽とに流下させるようにしている。
前記図示左側の処理水槽から一部をフィード・バック水(FB水)として再利用しつつ、最終 2連並列のUF膜濾過装置を介して、水質をセンサーS-4 で分析して外部に清浄水として排水するようにしている。
【0016】
前記熱処理工程(System 3)では、吸着材(活性炭)に吸着した汚れ成分(有機成分等)を熱分解すると共に吸着材を賦活・再生するようにした。
すなわち、吸着材を熱処理して再生するブロック(System 3)では、LNGガス・バーナーによる熱風発生装置により1,200℃の熱風を吹き出して循環し、吸着材を900℃~910℃×3時間 加熱することにより賦活・再生した。
ここで、前記熱処理工程(System 3)の排熱(600℃程度の高温の排ガス)で、排水処理工程(System 2)後の吸着材(スパイラル・ポンプ4内の吸着材C)を予備加熱Xするようにし(排ガスの配管までは図示せず)、その後 前記吸着材Cを排水処理工程(熱風発生装置による熱風の循環路)に供するようにした。
【0017】
また、前記吸着材Cに吸着性機能剤5を付着させ、前記熱処理工程(熱風発生装置による熱風の循環路)で吸着性機能剤を炭化(炭化物は活性炭として機能する)させるようにした。吸着性機能剤として、タール・ピッチを用いた。
具体的には、前記熱処理工程(熱風発生装置による熱風)の排熱(600℃程度の高温の排ガス)で、吸着性機能剤5(タール・ピッチ)を180℃程度に加熱して吸着材C(活性炭)に付着させるようにした。
そして、熱処理による排ガスを浄化して大気解放するブロック(System 4)では、排ガスを2連並列の電解スクラバー装置6と、活性炭ガス濾過装置7に通して清浄化し、センサーS-5で気体を分析して大気解放するようにした。電解水は2連並列の電解機構8で生成し、電解水槽に貯留するようにした。
【0018】
次に、この実施形態の排水処理方法の使用状態を説明する。
この排水処理方法では、吸着材(活性炭)により排水処理を行う排水処理工程(System 1、2)を有するので、排水中の汚れ成分(有機成分等)を吸着材に集約して低減ないし除去することが出来た。
また、前記吸着材を熱処理する熱処理工程(System 3)とを有し、前記熱処理工程では排水処理工程(System 1、2)で吸着材に吸着した汚れ成分(有機成分等)を熱分解すると共に吸着材(活性炭)を賦活・再生することとしたので、吸着材に集約した排水中の汚れ成分を熱処理して二酸化炭素(CO2)や水分(H2O)などにまで熱分解することができ、またこの熱処理により吸着材を賦活・再生することが出来た。
【0019】
ここで、熱処理工程(System 3)の排熱で排水処理工程(System 2)後の吸着材Cを予備加熱Xするようにしたので、熱処理工程の排熱(600℃程度の高温の排ガス)を利用して排水処理工程後の含水した吸着材を事前にある程度 脱水することができると共に、この時点で脱水した分 熱処理工程での熱エネルギーを節減することが出来た。
そして、前記熱処理工程(System 3)を経た吸着材を排水処理工程(System 1、2)に供するようにしたので、熱エネルギーを節減して賦活・再生した吸着材を排水処理で再利用することができ、従来より吸着材の賦活・再生時の熱利用効率に優れたものであった。
【0020】
また、吸着材に吸着性機能剤5(タール・ピッチ)を付着させ、熱処理工程(System 3)で吸着性機能剤を炭化(炭化物は活性炭として機能する)させるようにしたので、経時的に目減りし消耗(元の5~20%程度)していく吸着材(活性炭)自体を補充することなく、通常はより安価な吸着性機能剤を追加しながら排水処理を行うことができるので、従来より吸着材の補充コストが掛からなかった。
【0021】
さらに、熱処理工程の排熱で吸着性機能剤5(タール・ピッチ)を180℃程度に加熱して吸着材に付着させるようにしたので、流動状ないし略流動状の吸着性機能剤の流動性を高めた付き易い状態で吸着材に付着させることが出来た。
【0022】
〔実施形態2〕
上記実施形態との相違点を説明する。
吸着性機能剤(タール・ピッチ)にシリカ・アルミナを含有させるようにした。前記シリカ・アルミナとして、シラス台地の火山灰を用いた。
このように、吸着性機能剤にシリカ(SiO2)・アルミナ(Al2O3)を含有させるようにしたので、熱処理工程で吸着材にシリカやアルミナが軟化・固着して吸着材(活性炭)の骨格強度を向上させることが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0023】
従来より吸着材の賦活・再生時の熱利用効率に優れていることによって、種々の排水処理の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 排水
5 吸着性機能剤