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特許7079572培養細胞解析システム、培養細胞解析方法、及び、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】培養細胞解析システム、培養細胞解析方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20220526BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20220526BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M3/00 Z
C12Q1/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017133899
(22)【出願日】2017-07-07
(65)【公開番号】P2019013191
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】小林 三奈
(72)【発明者】
【氏名】服部 敏征
(72)【発明者】
【氏名】有賀 尚洋
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 歩
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-089630(JP,A)
【文献】特開2010-152829(JP,A)
【文献】特開2005-278564(JP,A)
【文献】特開2007-020422(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
C12Q 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着細胞を含む生体試料を撮像し画像データを生成する画像データ生成装置と、
開始遅延時間と撮像時間間隔とを含む撮像条件を記憶する撮像条件記憶部と、
前記接着細胞の状態が接着状態か浮遊状態かを判定する判定部であって、前記撮像条件記憶部に記憶されている前記開始遅延時間と基準時刻からの経過時間とを比較し、前記経過時間が前記開始遅延時間以上となった場合に、前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定する判定部と、
前記接着細胞の状態が前記接着状態であると前記判定部が判定した後に、前記撮像条件記憶部に記憶されている前記撮像時間間隔で前記生体試料の撮像を開始するように前記画像データ生成装置を制御する撮像制御部と、
前記接着細胞の状態が前記接着状態であると前記判定部が判定した後に前記画像データ生成装置によって生成された画像データを解析対象データとして特定し、特定した前記解析対象データを解析する解析部と、を備える
ことを特徴とする培養細胞解析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の培養細胞解析システムにおいて、
前記撮像条件記憶部は、継代から前記接着細胞が前記接着状態になるまでに要する時間を前記開始遅延時間として記憶し、
前記判定部は、前記継代が行われた時刻を前記基準時刻として前記経過時間を計測する
ことを特徴とする培養細胞解析システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の培養細胞解析システムにおいて、
前記解析部は、特定した前記解析対象データに基づいて、前記接着細胞の数を計数する処理と前記接着細胞の密度を算出する処理との少なくとも一方を含む解析処理を行う
ことを特徴とする培養細胞解析システム。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の培養細胞解析システムにおいて、
前記判定部は、前記経過時間が前記開始遅延時間未満であった場合に、一定時間待機後に、前記接着細胞の状態が前記接着状態か前記浮遊状態かを判定する
ことを特徴とする培養細胞解析システム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の培養細胞解析システムにおいて、さらに、
前記解析部による解析結果を表示装置に表示させる表示制御部を備える
ことを特徴とする培養細胞解析システム。
【請求項6】
請求項5に記載の培養細胞解析システムにおいて、
前記表示制御部は、前記表示装置に、前記接着細胞の数の時間変化を示すグラフを表示させる
ことを特徴とする培養細胞解析システム。
【請求項7】
開始遅延時間と撮像時間間隔とを含む撮像条件を取得し、
前記開始遅延時間と基準時刻からの経過時間とを比較し、前記経過時間が前記開始遅延時間以上となった場合に、生体試料に含まれる接着細胞の状態が接着状態であると判定することで、前記接着細胞の状態が前記接着状態か浮遊状態かを判定し、
前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定後に、前記撮像時間間隔で前記生体試料の撮像を開始するように画像データ生成装置を制御し、
前記画像データ生成装置が前記接着細胞を含む前記生体試料を撮像して画像データを生成し、
前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定後に前記画像データ生成装置によって生成された画像データを解析対象データとして特定し、特定した前記解析対象データを解析する
ことを特徴とする培養細胞解析方法。
【請求項8】
コンピュータに、
開始遅延時間と撮像時間間隔とを含む撮像条件を取得し、
前記開始遅延時間と基準時刻からの経過時間とを比較し、前記経過時間が前記開始遅延時間以上となった場合に、生体試料に含まれる接着細胞の状態が接着状態であると判定することで、前記接着細胞の状態が前記接着状態か浮遊状態かを判定し、
前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定後に、前記撮像時間間隔で前記生体試料の撮像を開始するように画像データ生成装置を制御し、
前記画像データ生成装置が前記接着細胞を含む前記生体試料を撮像して画像データを生成し、
前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定後に前記画像データ生成装置によって生成された画像データを解析対象データとして特定し、特定した前記解析対象データを解析する
処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、培養細胞解析システム、培養細胞解析方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生化学分野では、管理された環境下で培養中の培養細胞を繰り返し撮像し、得られたデータを解析する解析システムが知られている。このような解析システムは、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1には、培養環境情報と解析条件の情報と解析結果情報とを関連付けて記憶することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-20422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、培養容器に付着して増殖する接着細胞(付着細胞とも呼ばれる)は、培養細胞の一種である。接着細胞の培養では、接着細胞を新しい培地を含む容器に移す継代(植え継ぎとも呼ばれる。)が行われると、接着細胞は、新たな容器に付着するまでの間その容器内を浮遊した状態となる。この状態で取得された画像を用いて解析を行うと、接着細胞の細胞数等が正しく計数されず、解析精度が劣化してしまう。
【0005】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、接着細胞を正しく解析する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る培養細胞解析システムは、接着細胞を含む生体試料を撮像し画像データを生成する画像データ生成装置と、開始遅延時間と撮像時間間隔とを含む撮像条件を記憶する撮像条件記憶部と、前記接着細胞の状態が接着状態か浮遊状態かを判定する判定部であって、前記撮像条件記憶部に記憶されている前記開始遅延時間と基準時刻からの経過時間とを比較し、前記経過時間が前記開始遅延時間以上となった場合に、前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定する判定部と、前記接着細胞の状態が前記接着状態であると前記判定部が判定した後に、前記撮像条件記憶部に記憶されている前記撮像時間間隔で前記生体試料の撮像を開始するように前記画像データ生成装置を制御する撮像制御部と、前記接着細胞の状態が前記接着状態であると前記判定部が判定した後に前記画像データ生成装置によって生成された画像データを解析対象データとして特定し、特定した前記解析対象データを解析する解析部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る培養細胞解析方法は、開始遅延時間と撮像時間間隔とを含む撮像条件を取得し、前記開始遅延時間と基準時刻からの経過時間とを比較し、前記経過時間が前記開始遅延時間以上となった場合に、生体試料に含まれる接着細胞の状態が接着状態であると判定することで、前記接着細胞の状態が前記接着状態か浮遊状態かを判定し、前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定後に、前記撮像時間間隔で前記生体試料の撮像を開始するように画像データ生成装置を制御し、前記画像データ生成装置が前記接着細胞を含む前記生体試料を撮像して画像データを生成し、前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定後に前記画像データ生成装置によって生成された画像データを解析対象データとして特定し、特定した前記解析対象データを解析する。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、開始遅延時間と撮像時間間隔とを含む撮像条件を取得し、前記開始遅延時間と基準時刻からの経過時間とを比較し、前記経過時間が前記開始遅延時間以上となった場合に、生体試料に含まれる接着細胞の状態が接着状態であると判定することで、前記接着細胞の状態が前記接着状態か浮遊状態かを判定し、前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定後に、前記撮像時間間隔で前記生体試料の撮像を開始するように画像データ生成装置を制御し、前記画像データ生成装置が前記接着細胞を含む前記生体試料を撮像して画像データを生成し、前記接着細胞の状態が前記接着状態であると判定後に前記画像データ生成装置によって生成された画像データを解析対象データとして特定し、特定した前記解析対象データを解析する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、接着細胞を正しく解析する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る培養細胞解析システム1の構成を例示した図である。
図2】サーバ40のハードウェア構成を例示した図である。
図3】サーバ40の機能ブロック図の一例である。
図4】第1の実施形態に係る培養細胞解析処理の一例を示すフローチャートである。
図5】タイムラプス制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6】入力画面の一例である。
図7】解析結果の表示例である。
図8】従前の解析結果の表示例である。
図9】第2の実施形態に係る培養細胞解析処理の一例を示すフローチャートである。
図10】入力画面の別の例である。
図11】サーバ90の機能ブロック図の一例である。
図12】第3の実施形態に係る培養細胞解析処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る培養細胞解析システム1の構成を例示した図である。図2は、サーバ40のハードウェア構成を例示した図である。培養細胞解析システム1は、マイクロプレート30などに収容されている生体試料を撮像し、得られたデータを解析するシステムである。対象とする生体試料は、接着細胞を含む生体試料である。
【0012】
培養細胞解析システム1は、生体試料を撮像し画像データを生成する画像データ生成装置20と、少なくとも画像データ生成装置20で生成された画像データに基づいて解析処理を行うサーバ40と、を備えている。画像データ生成装置20とサーバ40は、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブルなどの有線ケーブルで接続されている。画像データ生成装置20とサーバ40は、相互にデータをやり取りできるように構成されていればよく、有線に限らず無線により通信可能に接続されてもよい。
【0013】
培養細胞解析システム1は、さらに、解析結果を表示する表示装置である液晶ディスプレイ50と、撮像条件を入力する入力装置であるキーボード60を備えてもよい。解析結果は、例えば、接着細胞の細胞数、密度などを含んでいる。また、撮像条件とは、タイムラプス観察のための撮像制御処理(以降、タイムラプス制御処理と記す。)についての条件であり、例えば、画像データサイズ、撮像開始までの待機時間(以降、開始遅延時間とも記す。)、撮像時間間隔(以降、スキャン間隔とも記す。)、撮像回数(以降、スキャン回数とも記す。)などである。
【0014】
なお、培養細胞解析システム1の利用者は、ノート型コンピュータ70、タブレット型コンピュータ80、スマートフォンなどのクライアント端末を用いて、培養細胞解析システム1に無線又は有線の少なくとも一方を通じてアクセスしてもよい。その場合、クライアント端末は、解析結果を表示する表示装置であり、撮像条件を入力する入力装置である。
【0015】
画像データ生成装置20は、例えば、図1に示すように、マイクロプレート30が配置されたインキュベータ10内に設置される。マイクロプレート30は、それぞれが収容部である複数のウェル31を有していて、各ウェル31には生体試料が収容されている。インキュベータ10は、培養環境を維持又は制御する装置であり、ここでは、マイクロプレート30に収容された生体試料を培養する培養器である。
【0016】
なお、図1では、マイクロプレート30がインキュベータ10内の支持板上に載置されることで、画像データ生成装置20から離間して配置された例を示したが、マイクロプレート30は、支持板を介すことなく画像データ生成装置20の上面に直接載置してもよい。また、生体試料の培養容器は、マイクロプレート30に限らず、例えば、フラスコ、ディッシュなどであってもよい。
【0017】
画像データ生成装置20は、イメージセンサ22と、イメージセンサ22の周囲に配置された複数の照明用LED光源23と、温度センサ24を備えている。イメージセンサ22は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary MOS)イメージセンサなどである。イメージセンサ22及び複数の照明用LED光源23は、撮影領域21下を移動自在に設けられている。温度センサ24は、インキュベータ10内の温度を測定するセンサである。なお、画像データ生成装置20は、インキュベータ10内の環境を測定する他のセンサを備えても良い。
【0018】
サーバ40は、例えば、標準的なコンピュータである。サーバ40は、図2に示すように、プロセッサ41、メモリ42、ストレージ43、インタフェース装置44、及び、可搬記憶媒体46が挿入される可搬記憶媒体駆動装置45を備え、これらがバス47によって相互に接続されている。
【0019】
プロセッサ41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などであり、プログラムを実行してプログラムされた処理を行う。メモリ42は、例えば、RAM(Random Access Memory)であり、プログラムの実行の際に、ストレージ43または可搬記憶媒体46に記憶されているプログラムまたはデータを一時的に記憶する。
【0020】
ストレージ43は、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリであり、主に各種データやプログラムの記憶に用いられる。インタフェース装置44は、サーバ40以外の装置(例えば、画像データ生成装置20、液晶ディスプレイ50、キーボード60、ノート型コンピュータ70、タブレット型コンピュータ80など)と信号をやり取りする回路である。
【0021】
可搬記憶媒体駆動装置45は、光ディスクやコンパクトフラッシュ(登録商標)等の可搬記憶媒体46を収容するものである。可搬記憶媒体46は、ストレージ43を補助する役割を有する。ストレージ43及び可搬記憶媒体46は、それぞれプログラムを記憶した非一過性のコンピュータ読取可能記憶媒体の一例である。
【0022】
図2に示す構成は、サーバ40のハードウェア構成の一例であり、サーバ40はこの構成に限定されるものではない。サーバ40は、汎用装置ではなく専用装置であってもよい。サーバ40は、プログラムを実行するプロセッサの代わりに又は加えて、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの電気回路を備えてもよく、それらの電気回路により、後述する処理の全部または一部が行われてもよい。
【0023】
図3は、サーバ40の機能ブロック図の一例である。サーバ40は、撮像条件取得部40a、判定部40b、撮像制御部40c、解析部40d、表示制御部40e、撮像条件記憶部40f、タイムラプス画像記憶部40g、及び、解析結果記憶部40hを備えている。
【0024】
撮像条件取得部40aは、入力装置であるキーボード60を用いて利用者が入力した撮像条件を取得し、撮像条件記憶部40fに記憶させる。撮像条件取得部40aは、例えば、画像データサイズ、開始遅延時間、スキャン間隔、スキャン回数を撮像条件として取得してもよく、これらを撮像条件記憶部40fに記憶させてもよい。
【0025】
判定部40bは、ウェル31に収容された生体試料に含まれる接着細胞の状態が接着状態か浮遊状態かを判定する。接着状態とは、接着細胞が容器表面等に接着している状態のことをいい、浮遊状態とは、接着細胞が容器表面等に接着しておらず培養液内で浮遊している状態のことをいう。具体的には、判定部40bは、基準時刻からの経過時間に基づいて、接着細胞の状態を判定してもよい。この場合、継代から接着細胞が接着状態になるまでに要する時間を開始遅延時間として予め撮像条件記憶部40fに記憶させておくことが望ましい。これにより、判定部40bは、基準時刻(例えば、継代した時刻)からの経過時間と開始遅延時間を比較することで、接着細胞の状態を判定することができる。
【0026】
撮像制御部40cは、撮像条件記憶部40fに記憶された撮像条件に従って、画像データ生成装置20を制御する。具体的には、撮像制御部40cは、接着細胞の状態が接着状態であると判定部40bが判定すると、タイムラプス制御処理を開始し、予め設定された時間間隔で生体試料を撮像するように画像データ生成装置20を制御してもよい。この場合、予め設定された時間間隔は、撮像条件としてスキャン間隔として予め撮像条件記憶部40fに記憶させておくことが望ましい。これにより、撮像制御部40cは、撮像条件記憶部40fからスキャン間隔を読み出して、読み出したスキャン間隔で生体試料を撮像するように画像データ生成装置20を制御してもよい。
【0027】
解析部40dは、解析対象データを解析し、解析結果記憶部40hに記憶させる。解析対象データは、画像データ生成装置20が生成した画像データであって、判定部40bによる判定結果に基づいて特定される接着状態の生体試料の画像データである。なお、接着状態の生体試料の画像データとは、接着状態にある接着細胞を撮像することで生成された画像データのことである。具体的には、解析部40dは、判定部40bが接着細胞の状態が接着状態であると判定した後に画像データ生成装置20が生成した画像データを、解析対象データとして特定してもよい。解析部40dが行う解析処理は、特に限定しないが、例えば、接着細胞の数を計数する処理、接着細胞の密度を算出する処理などを含んでもよい。
【0028】
表示制御部40eは、解析部40dによる解析結果を表示装置である液晶ディスプレイ50に表示させる。表示制御部40eは、例えば、接着細胞の細胞数、密度など液晶ディスプレイ50に表示させてもよく、これらの時間変化をグラフ形式で表示させてもよい。
【0029】
撮像条件記憶部40fは、撮像条件取得部40aが取得した撮像条件を記憶する。タイムラプス画像記憶部40gは、判定部40bが接着細胞の状態が接着状態であると判定した後に画像データ生成装置20が生成した画像データを記憶する。解析結果記憶部40hは、解析部40dによる解析結果を記憶する。
【0030】
サーバ40では、プロセッサ41がメモリ42にロードされたプログラムを実行することで、図3に示す各種機能が実現される。ただし、図3に示す各種機能部は、ソフトウェアを用いて実現されるものに限られず、例えば、それぞれ専用の回路で構成されてもよい。
【0031】
以上のように構成された培養細胞解析システム1では、判定部40bが接着細胞の状態を判定することで、接着状態の生体試料の画像データであると特定された画像データを解析対象として解析部40dが解析処理を行うことができる。従って、培養細胞解析システム1によれば、接着細胞が浮遊状態にあることに起因して生じる解析上の不都合を回避することが可能であり、接着細胞を正しく解析することができる。
【0032】
図4は、本実施形態に係る培養細胞解析処理の一例を示すフローチャートである。図5は、タイムラプス制御処理の一例を示すフローチャートである。図6は、入力画面の一例である。図7は、解析結果の表示例である。図8は、従前の解析結果の表示例である。以下、図4から図8を参照しながら、培養細胞解析システム1で行われる培養細胞解析処理について具体的に説明する。
【0033】
図4に示す培養細胞解析処理が開始されると、まず、サーバ40は、撮像条件を取得する(ステップS10)。ここでは、サーバ40は、例えば、液晶ディスプレイ50に図6に示す入力画面100を表示させる。そして、利用者がキーボード60を用いて入力画面100上で撮像条件を入力すると、サーバ40は、入力された撮像条件を取得しメモリ42又はストレージ43である撮像条件記憶部40fに記憶させる。なお、図6には、ドロップダウンリスト101を操作することで画像データサイズを、ドロップダウンリスト102を操作することで開始遅延時間を、ドロップダウンリスト103を操作することでスキャン間隔を、ドロップダウンリスト104を操作することでスキャン回数を選択する例が示されている。
【0034】
次に、サーバ40は、接着細胞の状態を判定する(ステップS20)。ここでは、サーバ40は、培養細胞解析処理開始からステップS10で取得した開始遅延時間だけ経過しているかに基づいて、接着細胞の状態を判定する。サーバ40は、培養細胞解析処理開始から開始遅延時間経過しているときには接着細胞の状態が接着状態であると判定し、経過していないときには接着細胞の状態が浮遊状態であると判定する。
【0035】
サーバ40は、接着細胞の状態が接着状態でないと判定すると(ステップS30NO)、一定時間待機し(ステップS40)、ステップS20及びステップS30の処理を繰り返す。一方、サーバ40は、接着細胞の状態が接着状態であると判定すると(ステップS30YES)、図5に示すタイムラプス制御処理を行う(ステップS50)。
【0036】
タイムラプス制御処理では、サーバ40は、まず、現在の時刻が撮像時刻に達しているか否かを判定する(ステップS51)。ここでは、サーバ40は、ステップS10で取得したスキャン間隔に基づいて撮像時刻を算出する。そして、現在の時刻が撮像時刻に達していると判定すると、サーバ40は、撮像指示を画像データ生成装置20へ出力する(ステップS52)。その後、サーバ40は、画像データ生成装置20から画像データを受信し(ステップS53)、画像データを解析対象データとしてストレージ43であるタイムラプス画像記憶部40gに記憶する(ステップS54)。最後に、サーバ40は、タイムラプス制御処理を終了するか否かを判定する(ステップS55)。ここでは、サーバ40は、ステップS51からステップS55までの処理の繰り返し回数がステップS10で取得したスキャン回数に達していないときには、タイムラプス制御処理を終了しないと判定し、ステップS51からステップS55の処理を繰り返す。一方。サーバ40は、繰り返し回数がスキャン回数に達しているときには、タイムラプス制御処理を終了する。
【0037】
タイムラプス制御処理が終了すると、サーバ40は、画像データを解析する(ステップS60)。ここでは、サーバ40は、タイムラプス画像記憶部40gから画像データを読み出し、読み出した画像データを解析対象データとして解析する。サーバ40は、さらに、解析結果をストレージ43である解析結果記憶部40hに記憶する。
【0038】
最後に、サーバ40は、解析結果を表示する(ステップS70)。ここでは、サーバ40は、解析結果記憶部40hから解析結果を読み出し、読み出した解析結果を液晶ディスプレイ50に表示させる。図7に示すグラフG1は、ステップS70で液晶ディスプレイ50に表示される解析結果の一例であり、接着細胞数の時間変化を示している。グラフのピークP1、P2は、それぞれ継代のタイミングを示している。なお、図8に示すグラフG2は、比較例として示した従来の解析システムにおける解析結果の一例である。
【0039】
従来の解析システムと培養細胞解析システム1とを比較すると、以下のような違いがある。従来の解析システムでは、接着細胞の状態を判定することなく解析処理が行われる。このため、図8に示されるように、液晶ディスプレイ50には、浮遊状態にある期間と接着状態にある期間の両方の期間についての解析結果が表示されることになる。浮遊状態にある期間の解析結果は、解析精度の点で接着状態にある期間の解析結果よりも劣る。このため、従来の解析システムで得られる解析結果の全体としての精度は必ずしも高くない。
【0040】
これに対して、培養細胞解析システム1では、接着細胞の状態を判定し、接着状態にある接着細胞の画像データを解析する。このため、図7に示すように、液晶ディスプレイ50には、浮遊状態にある期間の解析結果だけが表示される。接着状態では、細胞数の計数等、種々の解析を高い精度で行うことができる。このため、培養細胞解析システム1によれば、従来の解析システムよりも高精度な解析結果を利用者に提供することができる。
【0041】
また、接着細胞の解析の目的が接着細胞の生育状態をモニタすることであるとすると、浮遊状態における接着細胞の解析結果は、接着状態における接着細胞の解析結果に比べて重要度が低い。これは、接着細胞が接着状態で増殖する細胞であるからである。このため、比較的重要度が低い浮遊状態にある接着細胞の画像データの解析を省略し、より重要度が高い接着状態にある接着細胞の画像データを解析する培養細胞解析システム1は、解析効率の点でも、従来の解析システムに比べて優れている。
【0042】
また、培養細胞解析システム1では、接着細胞の状態が接着状態である判定された後にタイムラプス制御処理が開始される。このため、ストレージ43に格納されているタイムラプス画像は、接着状態の画像である。これにより、タイムラプス画像を参照して接着細胞の成育状態を確認する利用者の作業量を抑えることができる。従って、培養細胞解析システム1は、従来の解析システムに比べて、利用者の作業効率を改善することができる。
【0043】
[第2の実施形態]
本実施形態に係る培養細胞解析システムは、判定部40bでの接着細胞の状態の判定方法が異なる点が、培養細胞解析システム1とは異なる。本実施形態では、判定部40bは、画像データ生成装置20が生成した画像データに基づいて、接着細胞の状態を判定する。
【0044】
より具体的には、判定部40bは、例えば、画像データから生体試料の画像のコントラストを算出し、算出したコントラストに基づいて接着細胞の状態を判定してもよい。画像データ生成装置20は、接着状態にある接着細胞が良好に観察できるようにフォーカス位置を予め接着面(例えば、ウェル31の底面)に合わせた状態で使用される。このため、接着細胞が接着状態にあると画像のコントラストが高くなり、浮遊状態にあると画像のコントラストが低くなる。より厳密には、接着細胞は生体試料内に複数存在するため、生体試料内の接着細胞に占める接着状態にある接着細胞の割合が高いほど画像のコントラストが高くなる。このように、接着細胞の状態と画像のコントラストの間には強い相関があることから、判定部40bは画像のコントラストに基づいて接着細胞の状態を判定してもよい。
【0045】
また、判定部40bは、例えば、画像データ生成装置20が生成した画像データから接着細胞の形態を特定し、特定した形態に基づいて接着細胞の状態を判定してもよい。接着細胞の形態の一例は、接着細胞の形状である。例えば、浮遊状態で球形状の細胞は、接着状態では接着により変形するため、球形状とは異なる歪な形状(例えば、楕円など)となる。このように、接着細胞の状態と接着細胞の形状の間には強い相関があることから、判定部40bは、画像処理により接着細胞の輪郭を検出して形状を特定し、特定した形状に基づいて接着細胞の状態を判定してもよい。
【0046】
図9は、本実施形態に係る培養細胞解析処理の一例を示すフローチャートである。図10は、入力画面の別の例である。以下、図9及び図10を参照しながら、培養細胞解析システムで行われる培養細胞解析処理について具体的に説明する。
【0047】
図9に示す培養細胞解析処理が開始されると、まず、サーバ40は、撮像条件を取得する(ステップS100)。ここでは、サーバ40は、例えば、液晶ディスプレイ50に図10に示す入力画面200を表示させる。そして、利用者がキーボード60を用いて入力画面200上で撮像条件を入力すると、サーバ40は、入力された撮像条件を取得しメモリ42又はストレージ43である撮像条件記憶部40fに記憶させる。なお、図10には、ドロップダウンリスト101を操作することで画像データサイズを、スライダ201を操作することで接着状態と判定するための閾値となる画像のコントラストを、ドロップダウンリスト103を操作することでスキャン間隔を、ドロップダウンリスト104を操作することでスキャン回数を選択する例が示されている。
【0048】
次に、サーバ40は、撮像指示を画像データ生成装置20へ出力する(ステップS110)。その後、サーバ40は、画像データ生成装置20から画像データを受信し(ステップS120)、画像データを事前解析する(ステップS130)。事前解析処理は、この例では、画像のコントラストを算出する処理である。
【0049】
なお、接着細胞の形状に基づいて接着細胞の状態を判定する場合であれば、事前解析処理は、接着細胞の形状を特定する処理であってもよい。また、事前解析処理は、形状を特定し、さらに、所定の形状(又は所定の形状以外)の接着細胞の割合を算出する処理であってもよい。
【0050】
事前解析が終了すると、サーバ40は、接着細胞の状態を判定する(ステップS140)。ここでは、サーバ40は、ステップS130での事前解析結果に基づいて、接着細胞の状態を判定する。この例では、サーバ40は、ステップS130で算出した画像のコントラストがステップS100で取得したコントラストの閾値以上のときには接着細胞の状態が接着状態であると判定し、閾値未満のときには接着細胞の状態が浮遊状態であると判定する。
【0051】
サーバ40は、接着細胞の状態が接着状態でないと判定すると(ステップS150NO)、一定時間待機し(ステップS160)、ステップS110からステップS150の処理を繰り返す。一方、サーバ40は、接着細胞の状態が接着状態であると判定すると(ステップS150YES)、タイムラプス制御処理を行い(ステップS170)、タイムラプス制御処理で取得した画像データを解析し(ステップS180)、解析結果を表示して(ステップS190)、培養細胞解析処理を終了する。なお、ステップS170からステップS190の処理は、図4のステップS50からステップS70の処理と同様である。
【0052】
本実施形態に係る培養細胞解析システムによっても、培養細胞解析システム1と同様の効果を得ることができる。即ち、従来の解析システムよりも高精度な解析結果を利用者に提供することができる。また、解析効率、及び、利用者の作業効率の点において、従来の解析システムに比べて優れている点も、培養細胞解析システム1と同様である。
【0053】
さらに、本実施形態に係る培養細胞解析システムでは、生体試料を撮像して生成された画像データに基づいて接着細胞の状態を判定する。つまり、画像データから実際の接着細胞の状態を確認し、その確認結果に基づいて接着細胞の状態を判定する。このため、本実施形態に係る培養細胞解析システムによれば、培養細胞解析システム1よりも高い精度で接着細胞の状態を判定することができる。
【0054】
また、培養細胞解析システム1では、高い判定精度を確保するためには、開始遅延時間をある程度長めに見積もって設定することが想定される。これに対して、本実施形態に係る培養細胞解析システムでは、接着細胞の状態を監視し接着状態になると直ぐにタイムラプス制御処理が開始されるため、培養細胞解析システム1よりも早期に観察を開始し解析結果を得ることができる。
【0055】
[第3の実施形態]
本実施形態に係る培養細胞解析システムは、サーバ40の代わりにサーバ90を備える点、及び、タイムラプス制御処理後にタイムラプス制御処理で得られた画像データから解析対象データを特定し特定された解析対象データを解析する点が、第1及び第2の実施形態に係る培養細胞解析システムとは異なる。
【0056】
図11は、サーバ90の機能ブロック図の一例である。サーバ90は、撮像条件取得部90a、判定部90b、撮像制御部90c、解析部90d、表示制御部90e、撮像条件記憶部90f、タイムラプス画像記憶部90g、及び、解析結果記憶部90hを備えている。
【0057】
撮像条件取得部90a、表示制御部90e、撮像条件記憶部90f、解析結果記憶部90hは、図3の撮像条件取得部40a、表示制御部40e、撮像条件記憶部40f、解析結果記憶部40hと同様である。
【0058】
撮像制御部90cは、撮像条件記憶部90fに予め設定された時間間隔(スキャン間隔)で生体試料を撮像するように画像データ生成装置20を制御する。この点は、撮像制御部40cと同様である。ただし、撮像制御部90cは、撮像条件取得部90aにより撮像条件が取得されると直ちにタイムラプス制御処理を開始する点が、撮像制御部40cとは異なっている。
【0059】
タイムラプス画像記憶部90gは、タイムラプス制御処理で取得された画像データを記憶する。この点は、タイムラプス画像記憶部40gと同様である。ただし、タイムラプス画像記憶部90gは、接着細胞の状態によらずに、画像データ生成装置20が生成した画像データを記憶する点が、タイムラプス画像記憶部40gとは異なっている。
【0060】
判定部90bは、タイムラプス画像記憶部90gに記憶された画像データを読み出して、読み出した画像データに基づいて接着細胞の状態を判定する。なお、判定方法は、第2の実施形態に係る判定部40bでの判定方法と同様である。即ち、画像のコントラストに基づいて接着細胞の状態を判定してもよく、接着細胞の形状に基づいて接着細胞の状態を判定してもよい。
【0061】
解析部90dは、判定部90bによる判定結果に基づいて、画像データ生成装置20が生成した画像データの中から解析対象データを特定する。そして、特定した解析対象データを解析し、解析結果記憶部90hに記憶させる。
【0062】
図12は、本実施形態に係る培養細胞解析処理の一例を示すフローチャートである。以下、図12を参照しながら、培養細胞解析システムで行われる培養細胞解析処理について具体的に説明する。
【0063】
図12に示す培養細胞解析処理が開始されると、まず、サーバ90は、撮像条件を取得し(ステップS200)、その後、タイムラプス制御処理を行う(ステップS210)。なお、ステップS200、ステップS210の処理は、図9のステップS100、S170と同様である。
【0064】
次に、サーバ90は、タイムラプス制御処理で取得した画像データをタイムラプス画像記憶部90gから読み出して、事前解析し(ステップS220)、接着細胞の状態を判定する(ステップS230)。なお、ステップS220、ステップS230の処理は、図9のステップS130、S140と同様である。
【0065】
その後、サーバ90は、ステップS230での判定結果に基づいて、タイムラプス画像記憶部90gに記憶されている画像データから解析対象データを特定する(ステップS240)。
【0066】
最後、サーバ90は、特定された解析対象データを解析し(ステップS250)、解析結果を表示して(ステップS260)、培養細胞解析処理を終了する。なお、ステップS250及びステップS260の処理は、図9のステップS180及びステップS190の処理と同様である。
【0067】
本実施形態に係る培養細胞解析システムによっても、第1の実施形態及び第2の実施形態に係る培養細胞解析システムと同様に、従来の解析システムよりも高精度な解析結果を利用者に提供することができる。
【0068】
本実施形態に係る培養細胞解析システムでは、タイムラプス観察を行うタイミングに制約されることなく、任意のタイミングで解析処理を行うことができる。このため、例えば、別の解析システムで取得された画像データを解析することもできる。
【符号の説明】
【0069】
10 インキュベータ
20 画像データ生成装置
21 撮影領域
22 イメージセンサ
23 照明用LED光源
24 温度センサ
30 マイクロプレート
31 ウェル
40、90 サーバ
40a、90a 撮像条件取得部
40b、90b 判定部
40c、90c 撮像制御部
40d、90d 解析部
40e、90e 表示制御部
40f、90f 撮像条件記憶部
40g、90g タイムラプス画像記憶部
40h、90h 解析結果記憶部
41 プロセッサ
42 メモリ
43 ストレージ
44 インタフェース装置
45 可搬記憶媒体駆動装置
46 可搬記憶媒体
47 バス
50 液晶ディスプレイ
60 キーボード
70 ノート型コンピュータ
80 タブレット型コンピュータ
100、200 入力画面
101、102、103 ドロップダウンリスト
201 スライダ
G1、G2 グラフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12