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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】暖房システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/00 20220101AFI20220526BHJP
   F24D 3/18 20060101ALI20220526BHJP
   F24H 15/355 20220101ALI20220526BHJP
【FI】
F24D3/00 K
F24D3/18
F24H15/355
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018005025
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019124400
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 誠士
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-013245(JP,A)
【文献】特開昭62-190352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/00
F24D 3/18
F24H 15/355
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖房システムであって、
熱媒を循環させるための熱媒循環路と、
外気から吸収した熱を利用して前記熱媒を加熱するヒートポンプと、
燃料を燃焼させた熱を利用して前記熱媒を加熱する燃焼機と、
前記熱媒の熱を利用して暖房する暖房機と、
制御装置と、を備え、
前記燃焼機は、複数個のバーナを含み、
前記複数個のバーナは、それぞれ、前記燃料を燃焼可能であり、
前記複数個のバーナは、前記熱媒循環路に対して直列に配置されており、
前記制御装置は、前記ヒートポンプと前記燃焼機の両方を利用して前記熱媒を加熱すべき場合には、前記燃焼機の前記複数個のバーナのうちの一部のバーナのみを動作させて前記熱媒の加熱を行わせ
前記制御装置は、前記ヒートポンプを利用せずに、前記燃焼機を利用して前記熱媒を加熱すべき場合には、前記燃焼機の前記複数個のバーナをすべて動作させて前記熱媒の加熱を行わせる、
暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外気から吸収した熱を利用して熱媒を加熱するヒートポンプと、燃料を燃焼させた熱を利用して熱媒を加熱する燃焼機と、熱媒の熱を利用して暖房する暖房機と、制御装置と、を備える暖房システムが開示されている。制御装置は、暖房機に供給される熱媒の温度が所定の点火温度まで低下すると燃焼機を動作させて熱媒の加熱を開始し、暖房機に供給される熱媒の温度が所定の消火温度まで上昇すると燃焼機の動作を停止させる。さらに、制御装置は、燃焼機を動作させて熱媒の加熱を開始する場合に、ヒートポンプの目標加熱温度を上げる。これにより、暖房機における放熱量が低下した場合に、暖房機に供給される熱媒の温度を速やかに消火温度まで上昇させて、燃焼機による熱媒の加熱を速やかに終了させることを可能とし、燃焼機による熱媒の加熱を必要最小限度に抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-13245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、燃焼機による加熱量を最小限に抑制することは考慮されているが、暖房システム全体の一次エネルギー効率を最良にし得る運転内容については考慮されていない。ヒートポンプと燃焼機という二種類の熱源を備える暖房システムにおいて、システム全体の一次エネルギー効率を最良にし得る技術の提供が求められている。
【0005】
本明細書では、ヒートポンプと燃焼機という二種類の熱源を備える暖房システムにおいて、システム全体の一次エネルギー効率を最良にし得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する暖房システムは、熱媒を循環させるための熱媒循環路と、外気から吸収した熱を利用して前記熱媒を加熱するヒートポンプと、燃料を燃焼させた熱を利用して前記熱媒を加熱する燃焼機と、前記熱媒の熱を利用して暖房する暖房機と、制御装置と、を備える。前記燃焼機は、複数個のバーナを含む。前記複数個のバーナは、それぞれ、前記燃料を燃焼可能である。前記複数個のバーナは、前記熱媒循環路に対して直列に配置されている。前記制御装置は、前記ヒートポンプと前記燃焼機の両方を利用して前記熱媒を加熱すべき場合には、前記燃焼機の前記複数個のバーナのうちの一部のバーナのみを動作させて前記熱媒の加熱を行わせる。前記制御装置は、前記ヒートポンプを利用せず、前記燃焼機を利用して前記熱媒を加熱すべき場合には、前記燃焼機の前記複数個のバーナをすべて動作させて前記熱媒の加熱を行わせる。
【0007】
発明者等による鋭意研究の結果、ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合において、燃焼機の複数個のバーナをすべて動作させる場合(以下「全燃焼」と呼ぶ場合がある)に比べて、複数個のバーナの一部のバーナのみを動作させる(以下「部分燃焼」と呼ぶ場合がある)方が、システム全体の一次エネルギー効率が良くなることが判明した。その理由は以下の通りである。
【0008】
仮に、ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合において、燃焼機を全燃焼させて熱媒の加熱を行わせることにすると、仮に燃焼機に供給する燃料を最小の量に絞ったとしても(即ち火力を最小に絞っても)、燃焼機が単位時間当たりに熱媒に加える熱量が大きくなる。そのため、燃焼機を全燃焼させる場合、短時間で熱媒が燃焼機を停止させるべき閾値温度(いわゆる消火温度)に到達する。そのため、燃焼機は、短時間動作をした後ですぐに停止される。その結果、熱媒を暖房に必要な設定温度に維持するために、燃焼機の発停が頻繁に行われる可能性が高くなる。燃焼機が停止している(即ち、すべてのバーナの動作が停止している)間も、熱媒はヒートポンプによって加熱されるため、熱媒の温度が急激に低下することが抑制され、熱媒の温度が、燃焼機の動作を開始するべき閾値温度(いわゆる点火温度)を下回るまでに比較的長い期間を要する。即ち、燃焼機が動作していない期間が長くなる。燃焼機が動作していない間(即ち燃焼機が熱媒を加熱していない間)、熱媒は、燃焼機を通過する間に放熱をしてしまう。上記のとおり、ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合において、燃焼機を全燃焼させて熱媒の加熱を行わせる場合であっても、燃焼機による熱媒の加熱効率のみに着目するのであれば、燃焼機を部分燃焼させて熱媒の加熱を行わせる場合と比べて、それほど大きな差はない。
【0009】
ただし、燃焼機を全燃焼させる場合には、上記の通り、燃焼機の発停が頻繁に行われ得る。そのため、ヒートポンプに導入される熱媒の温度の変化が大きくなり、ヒートポンプに導入される熱媒の温度が不安定になる。即ち、頻繁に行われる燃焼機の発停に伴って、ヒートポンプが熱媒を加熱可能な加熱量(いわゆる加熱幅)の変化が大きくなる。例えば、燃焼機の動作中及び停止直後は、ヒートポンプに導入される熱媒の温度が比較的高くなるため、ヒートポンプによる加熱幅が小さくなる。その結果、その間のヒートポンプの加熱効率(具体的には、COP(Coefficient Of Performance))は悪くなる。また、例えば、燃焼機が停止して長期間が経過すると、ヒートポンプに導入される熱媒の温度が比較的低くなるため、ヒートポンプによる加熱幅が大きくなる。その間のヒートポンプの加熱効率は比較的良くなる。このように、ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合において、燃焼機を全燃焼させると、ヒートポンプによる加熱幅が安定せず、ヒートポンプによる全期間の加熱効率は平均して低くなる。
【0010】
以上の理由により、ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合において、燃焼機を全燃焼させると、ヒートポンプによる加熱効率が低くなることに起因して、システム全体の一次エネルギー効率が低くなる。
【0011】
これに対し、ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合において、燃焼機を部分燃焼させて熱媒の加熱を行わせることにすると、燃焼機が単位時間当たりに熱媒に加える熱量が小さくなる。そのため、燃焼機を部分燃焼させる場合、燃焼機に供給する燃料の量を調整することで(即ち動作するバーナの火力を調整することで)、熱媒の温度を、暖房に必要な設定温度に維持しやすくなる。即ち、燃焼機の発停が頻繁に行われる可能性が低くなる。燃焼機を部分燃焼させる場合、全燃焼させる場合に比べて、燃焼機を継続して長時間動作させることができる。ただし、燃焼機を部分燃焼させる場合、複数個のバーナのうちの一部は動作しないため、熱媒は、動作していないバーナ部分を通過する間に放熱をしてしまう。そのため、上記のとおり、ヒートポンプと燃焼機とを同時に動作させて熱媒を加熱する場合において、燃焼機を部分燃焼させて熱媒の加熱を行わせる場合、燃焼機による熱媒の加熱効率のみに着目するのであれば、燃焼機を全燃焼させて熱媒の加熱を行わせる場合と比べて、それほど大きな差はない。
【0012】
しかしながら、燃焼機を部分燃焼させる場合には、上記の通り、燃焼機の発停頻度が少ない。そのため、ヒートポンプに導入される熱媒の温度の変化が小さくなり、ヒートポンプに導入される熱媒の温度が安定する。そのため、ヒートポンプによる加熱幅の変化が小さくなる。その結果、ヒートポンプによる全期間の加熱効率は、燃焼機を全燃焼させる場合に比べて平均して高くなる。
【0013】
以上の理由により、ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合において、燃焼機を部分燃焼させると、ヒートポンプによる加熱効率が高くなることに起因して、システム全体の一次エネルギー効率が高くなる。
【0014】
上記の構成によると、制御装置は、ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合には、燃焼機の複数個のバーナのうちの一部のバーナのみを動作させて熱媒の加熱を行わせる。これにより、ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合において、燃焼機の複数個のバーナをすべて動作させて熱媒の加熱を行わせる場合に比べ、システム全体の一次エネルギー効率を高くすることができる。従って、上記の構成によると、ヒートポンプと燃焼機という二種類の熱源を備える暖房システムにおいて、システム全体の一次エネルギー効率を最良にし得る。
【0016】
発明者等の鋭意研究の結果、ヒートポンプを利用せず、燃焼機を利用して熱媒を加熱すべき場合(例えば、ヒートポンプが暖房以外の加熱用途に用いられる場合)には、燃焼機を全燃焼させる方が、燃焼機を部分燃焼させるよりも加熱効率が高くなることも判明している。即ち、ヒートポンプを利用せずに燃焼機を利用して熱媒を加熱する場合において、燃焼機を部分燃焼させると、燃焼機の複数個のバーナのうちの動作していないバーナ部分を熱媒が通過する間に放熱が行われてしまい、熱媒の加熱効率が低下してしまう。とくに、全燃焼の場合と同様に燃焼機内のファンが動作すると、動作していないバーナ部分での放熱量が一層大きくなってしまう。一方、燃焼機を全燃焼させると、上記のような放熱は行われず、熱損失が少なくなる。ただし、燃焼機が単位時間当たりに熱媒に加える熱量が大きくなるため、熱媒を暖房に必要な設定温度に維持するために、燃焼機の発停が頻繁に行われる可能性は高くなる。しかしながら、燃焼機が停止している間に熱媒がヒートポンプによって加熱されることがないため、燃焼機の停止後、熱媒の温度が比較的早期に点火温度を下回り、燃焼機が動作していない期間(即ち燃焼機が熱媒を加熱していない期間)が短く済む。そのため、ヒートポンプを利用せず、燃焼機を利用して熱媒を加熱すべき場合には、燃焼機を全燃焼させる方が、燃焼機を部分燃焼させるよりも加熱効率が高くなる。上記の構成によると、ヒートポンプを利用せず、燃焼機を利用して熱媒を加熱すべき場合においても、システム全体の一次エネルギー効率を最良にし得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】蓄熱運転時及び給湯運転時の給湯暖房システム2の動作を模式的に示す図。
図2】併用暖房運転時の給湯暖房システム2の動作を模式的に示す図。
図3】ヒートポンプ温調制御を示すフローチャート。
図4】バーナ温調制御を示すフローチャート。
図5】併用暖房運転時に、バーナ加熱装置82を全燃焼させる場合と部分燃焼させる場合のそれぞれの場合におけるサーミスタ78の検出温度の温度変化を表わすグラフ。
図6】併用暖房運転時のバーナ加熱装置82の燃焼負荷とバーナ加熱装置82の平均燃焼効率との関係を表わすグラフ。
図7】併用暖房運転時のバーナ加熱装置82の燃焼負荷とヒートポンプ50のCOPとの関係を表わすグラフ。
図8】併用暖房運転時のバーナ加熱装置82の燃焼負荷とシステム全体の一次エネルギー効率との関係を表わすグラフ。
図9】単独暖房運転時の給湯暖房システム2の動作を模式的に示す図。
図10】単独暖房運転時のバーナ加熱装置82の燃焼負荷とバーナ加熱装置82の平均燃焼効率との関係を表わすグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例)
図1に示すように、本実施例に係る給湯暖房システム2は、給湯系統104と、ヒートポンプ系統106と、暖房系統108と、制御装置100と、を備えている。
【0019】
ヒートポンプ系統106は、ヒートポンプ50を備える。ヒートポンプ50は、冷媒(例えば、フロンガスR410A等)を循環させるための冷媒循環路52と、熱交換器(蒸発器)54と、ファン56と、圧縮器62と、三流体熱交換器(凝縮器)58と、膨張弁60とを備えている。熱交換器54と、圧縮器62と、三流体熱交換器58と、膨張弁60とは、冷媒循環路52内に設置されている。このような構成を備えるヒートポンプ50を作動させることにより、三流体熱交換器58を通過する冷媒循環路52内に高温高圧の冷媒を送り込むことができる。
【0020】
給湯系統104は、タンク10と、タンク水循環路20と、水道水導入路24と、供給路36と、バーナ加熱装置81とを備える。
【0021】
タンク10は、ヒートポンプ50によって加熱された温水を貯える。タンク10は、密閉型であり、断熱材によって外側が覆われている。タンク10内には満水まで水が貯留されている。タンク10には、サーミスタ12、14、16、18がタンク10の高さ方向に略均等間隔で取り付けられている。各サーミスタ12、14、16、18は、その取付位置の水の温度を測定する。
【0022】
タンク水循環路20は、上流端がタンク10の下部に接続されており、下流端がタンク10の上部に接続されている。タンク水循環路20には、循環ポンプ22が介装されている。循環ポンプ22は、タンク水循環路20内の水を上流側から下流側へ送り出す。また、上述したように、タンク水循環路20は、三流体熱交換器58を通過している。そのため、ヒートポンプ50を作動させると、タンク水循環路20内の水が三流体熱交換器58で加熱される。従って、循環ポンプ22とヒートポンプ50を作動させると、タンク10の下部の水が三流体熱交換器58に送られて加熱され、加熱された水がタンク10の上部に戻される。タンク水循環路20は、タンク10に蓄熱するための水路である。
【0023】
水道水導入路24は、上流端が水道水供給源32に接続されている。水道水導入路24の下流側は、第1導入路24aと第2導入路24bに分岐している。第1導入路24aの下流端は、タンク10の下部に接続されている。第2導入路24bの下流端は、供給路36の途中に接続されている。接続部には、第1導入路24aを流れる水の流量(即ちタンク10から供給路36へ流れる水の流量)と第2導入路24bを流れる水の流量の比率を調整する混合弁36aが配置されている。第1導入路24aには、逆止弁26が介装されている。第2導入路24bには、逆止弁28と水量センサ30が介装されている。水量センサ30は、第2導入路24b内を流れる水道水の流量を検出する。
【0024】
供給路36は、上流端がタンク10の上部に接続されている。上述したように、供給路36の途中には、水道水導入路24の第2導入路24bが接続されている。第2導入路24bとの接続部より上流側の供給路36には、水量センサ34が介装されている。水量センサ34は、タンク10から供給路36へ流れる水の流量を検出する。第2導入路24bとの接続部より下流側の供給路36には、バーナ加熱装置81が介装されている。バーナ加熱装置81は、ガスを燃焼可能なバーナ81aを備えている。バーナ加熱装置81は、バーナ81aを動作させてガスを燃焼させることにより、供給路36内の水を加熱する。供給路36の下流端は給湯栓38に接続されている。供給路36には、バーナ加熱装置81をバイパスする流路であるバイパス路36bが設けられている。また、バイパス路36bには、バイパス路36bの開度を調整するためのバイパス制御弁36cが介装されている。
【0025】
暖房系統108は、シスターン70と、暖房用熱媒循環路71と、バーナ加熱装置82と、暖房機76と、を備えている。暖房用熱媒循環路71は、暖房往路72と、暖房復路84と、調整弁90と、熱回収路88と、バイパス路94と、循環流路96と、を備えている。暖房用熱媒循環路71は、シスターン70内の熱媒(具体的には水または不凍液)を循環させるための流路である。暖房用熱媒循環路71内の熱媒は、バーナ加熱装置82、三流体熱交換器58によって加熱される。
【0026】
シスターン70は、上部が開放されている容器であり、内部に暖房用の熱媒(即ち水または不凍液)を貯留している。シスターン70には、循環流路96の下流端と、暖房往路72の上流端とが接続されている。シスターン70内には、循環流路96から熱媒が流入する。シスターン70内の熱媒は、暖房往路72に導入される。
【0027】
暖房往路72は、上流端がシスターン70に接続され、下流端が暖房機76の往き口に接続されている。暖房往路72には、循環ポンプ74が介装されている。循環ポンプ74は、暖房往路72内の熱媒を下流側に送り出すポンプである。暖房機76より上流側の暖房往路72には、バーナ加熱装置82が介装されている。バーナ加熱装置82は、暖房往路72内の熱媒を加熱する。本実施例では、バーナ加熱装置82は、4個のバーナ82a~82dを備えている。バーナ82a~82dは、それぞれ、ガスを燃焼可能である。バーナ加熱装置82は、バーナ82a~82dの一部又は全部を動作させてガスを燃焼させることにより、暖房往路72内の熱媒を加熱する。バーナ加熱装置82が作動する様子は、図2図9に図示している。図2の例では、1個のバーナ82aのみが動作し、図9の例では、すべてのバーナ82a~82dが動作している。また、バーナ加熱装置82は、バーナ(1個のバーナ82a、又は、すべてのバーナ82a~82d)の動作時に動作して送風を行うファン(図示しない)も備えている。バーナ加熱装置82は、ヒートポンプ50よりも、熱媒を加熱する能力が高い。言い換えると、バーナ加熱装置82は、ヒートポンプ50よりも、単位時間当りの加熱量が大きい。バーナ加熱装置82で加熱された熱媒は、暖房機76に供給される。また、暖房往路72のバーナ加熱装置82の下流側には、サーミスタ78が介装されている。サーミスタ78は、バーナ加熱装置82を通過した後の暖房往路72内の熱媒の温度を測定する。
【0028】
暖房機76は、暖房往路72から供給される熱媒の熱を利用して、居室を暖房する端末である。暖房往路72から供給される熱媒は、暖房に利用されると、熱を奪われ、比較的低温になる。暖房に利用された後の比較的低温の熱媒は、暖房復路84に導入される。
【0029】
暖房復路84は、上流端が暖房機76の戻り口に接続され、下流端がバイパス路94の上流端及び熱回収路88の上流端に接続されている。暖房復路84には、サーミスタ86が介装されている。サーミスタ86は、暖房復路84内の熱媒の温度(即ち、三流体熱交換器58に送り込まれる熱媒の温度)を測定する。
【0030】
熱回収路88は、上流端がバイパス路94の上流端及び暖房復路84の下流端に接続され、下流端がバイパス路94の下流端及び循環流路96の上流端に接続されている。熱回収路88は、三流体熱交換器58を通過している。そのため、ヒートポンプ50を作動させると、熱回収路88内の熱媒が三流体熱交換器58で加熱される。熱回収路88の三流体熱交換器58の下流側には、サーミスタ92が介装されている。サーミスタ92は、三流体熱交換器58を通過した後の熱回収路88内の熱媒の温度を測定する。
【0031】
バイパス路94は、上流端が暖房復路84の下流端及び熱回収路88の上流端に接続され、下流端が熱回収路88の下流端及び循環流路96の上流端に接続されている。即ち、バイパス路94は、三流体熱交換器58の上流側と下流側とをバイパスする。
【0032】
調整弁90は、暖房復路84の下流端と、熱回収路88の上流端と、バイパス路94の上流端との接続部分に取り付けられている。調整弁90は、その開度を変化させることによって、熱回収路88を通過する熱媒の流量(三流体熱交換器58を通過する熱媒の流量)と、バイパス路94を通過する熱媒の流量との割合を変化させることができる。本実施例の調整弁90には、例えば三方弁が用いられる。
【0033】
循環流路96は、上流端が熱回収路88の下流端及びバイパス路94の下流端に接続され、下流端がシスターン70に接続されている。循環流路96には、サーミスタ98が介装されている。サーミスタ98は、循環流路96内の熱媒の温度を測定する。
【0034】
制御装置100は、給湯系統104、ヒートポンプ系統106、及び、暖房系統108と電気的に接続されており、各構成要素の動作を制御する。
【0035】
(給湯暖房システムの動作)
次いで、本実施例の給湯暖房システム2の動作について説明する。給湯暖房システム2は、蓄熱運転、給湯運転、併用暖房運転、単独暖房運転、の各運転を実行することができる。以下、各運転について説明する。
【0036】
(蓄熱運転)
蓄熱運転は、ヒートポンプ50で生成した熱により、タンク10内の水を加熱する運転である。図1中の実線矢印は、蓄熱運転中におけるヒートポンプ50の冷媒の流れ、及び、タンク10の水の流れを示している。制御装置100によって蓄熱運転の実行が指示されると、ヒートポンプ50が動作を開始するとともに、循環ポンプ22が回転する。
【0037】
ヒートポンプ50が動作することにより、三流体熱交換器58を通過する冷媒循環路52内の冷媒が、高温高圧の気体状態になる。また、循環ポンプ22が回転すると、タンク水循環路20内をタンク10内の水が循環する。即ち、タンク10の下部に存在する水がタンク水循環路20内に導入され、導入された水が三流体熱交換器58を通過する際に、冷媒循環路52内の冷媒の熱によって加熱され、加熱された水がタンク10の上部に戻される。これにより、タンク10に高温の水が貯められる。タンク10の上部には、高温の水の層が形成され、下部には、低温の水の層が形成される。
【0038】
(給湯運転)
給湯運転は、タンク10内の水を給湯栓38に供給する運転である。図1中の破線矢印は、給湯運転中におけるタンク10の水の流れを示している。給湯運転は、上記の蓄熱運転中にも実行することができる。給湯栓38が開かれると、制御装置100は、混合弁36aを開く。すると、水道水供給源32からの水圧によって、水道水導入路24(第1導入路24a)からタンク10の下部に水道水が流入する。同時に、タンク10上部の温水が、供給路36を介して給湯栓38に供給される。
【0039】
制御装置100は、タンク10から供給路36に供給される水の温度(即ち、サーミスタ12の検出温度)が、給湯設定温度より高い場合には、混合弁36aを調整して、第2導入路24bから供給路36に水道水を導入する。従って、タンク10から供給された水と第2導入路24bから供給された水道水とが、供給路36内で混合される。制御装置100は、給湯栓38に供給される水の温度が、給湯設定温度と一致するように、混合弁36aの開度比率を調整する。一方、制御装置100は、タンク10から供給路36に供給される水の温度が、給湯設定温度より低い場合には、バーナ加熱装置81を動作させる。従って、供給路36を通過する水がバーナ加熱装置81によって加熱される。加熱された水は、バイパス制御弁36cで開度調整されたバイパス路36bからの水と混合されて、給湯栓38に供給される。制御装置100は、給湯栓38に供給される水の温度が、給湯設定温度と一致するように、バーナ加熱装置81の出力を制御する。
【0040】
(併用暖房運転)
併用暖房運転は、ヒートポンプ50とバーナ加熱装置82の両方を動作させて暖房用熱媒循環路71内の熱媒を加熱し、加熱された熱媒の熱を暖房機76で放熱することによって居室を暖房する暖房運転である。併用暖房運転が行われるべき状況は、例えば、蓄熱運転、給湯運転が行われていない間に暖房運転が行われるべき場合のように、ヒートポンプ50とバーナ加熱装置82の両方を暖房のための熱源として利用可能な場合に暖房運転の実行が指示される状況である。図2中の実線矢印は、併用暖房運転中におけるヒートポンプ50の冷媒の流れ、及び、暖房用熱媒循環路71内の熱媒の流れを示している。
【0041】
ユーザによって暖房運転の実行が指示されると、まず、制御装置100は、暖房機76における暖房負荷に応じて、調整弁90の開度を調整する。これにより、シスターン70内の熱媒が、シスターン70から、暖房往路72、暖房機76、暖房復路84、熱回収路88、及び、循環流路96をこの順で通過してシスターン70に戻る経路が形成される(図2参照)。また、調整弁90の開度によっては、熱回収路88を流れる熱媒の一部が、バイパス路94を通過して、循環流路96に導入される経路も形成される(図示省略)。
【0042】
次いで、制御装置100は、ユーザが設定した運転温度に基づいて、暖房機76に供給されるべき熱媒の温度である暖房設定温度を設定する。制御装置100は、所定の計算式を用いて暖房設定温度を算出し、設定する。次いで、制御装置100は、所定の回転数で循環ポンプ74を作動させる。循環ポンプ74を作動させることにより、上記の経路内を熱媒が循環する。
【0043】
次いで、制御装置100は、図3のヒートポンプ温調制御、及び、図4のバーナ温調制御を開始する。ヒートポンプ温調制御、及び、バーナ温調制御の内容は後で詳しく説明する。制御装置100は、ヒートポンプ温調制御、及び、バーナ温調制御を開始した後、ユーザによって暖房運転の終了が指示されるまで、ヒートポンプ温調制御、及び、バーナ温調制御を継続して実行する。
【0044】
図3を参照して、ヒートポンプ温調制御について説明する。ヒートポンプ温調制御は、ヒートポンプ50によって熱媒を所定の目標出湯温度になるように加熱するために、制御装置100が実行する制御のことである。目標出湯温度とは、三流体熱交換器58によって加熱された後の熱媒の目標温度である。図3に示すように、ヒートポンプ温調制御を開始すると、まず、S10において、制御装置100は、暖房設定温度、調整弁90のバイパス比(暖房用熱媒循環路71内を流れる熱媒のうち、バイパス路94を流れる熱媒の割合)、及び、サーミスタ86の検出温度(三流体熱交換器58に送り込まれる熱媒の温度)に基づいて、目標出湯温度を算出する。
【0045】
次いで、S12では、制御装置100は、サーミスタ92の検出温度(三流体熱交換器58から送り出される熱媒の温度)が目標出湯温度より所定温度α1(例えば1℃)だけ高い動作開始温度を下回ることを監視する。α1の値は、目標出湯温度によって変更されてもよい。なお、他の例では、動作開始温度は、目標出湯温度より所定温度α1だけ低い温度であってもよい。サーミスタ92の検出温度が上記の動作開始温度を下回ると、制御装置100は、S12でYESと判断し、S14に進む。
【0046】
S14では、制御装置100は、ヒートポンプ50の動作を開始させる。ヒートポンプ50が動作することにより、熱回収路88を通過する熱媒が、三流体熱交換器58内で、冷媒循環路52内の冷媒の熱によって加熱される。
【0047】
次いで、S16において、制御装置100は、サーミスタ92の検出温度が目標出湯温度より所定温度α2(例えば15℃)だけ高い停止温度以上になることを監視する。サーミスタ86の検出温度が停止温度以上である場合、制御装置100は、S16でYESと判断し、S18に進む。サーミスタ92の検出温度が停止温度以上である場合には、三流体熱交換器58を通過する冷媒循環路52内の冷媒の温度と、三流体熱交換器58を通過する熱回収路88内の熱媒の温度の差が小さくなり、ヒートポンプ50による加熱効率が低下する。
【0048】
S18では、制御装置100は、ヒートポンプ50を停止させる。これにより、熱回収路88を通過する熱媒は、三流体熱交換器58内で、冷媒循環路52内の冷媒の熱によって加熱されなくなる。
【0049】
S18を終えると、制御装置100は、S10に戻る。このように、制御装置100は、ユーザによって暖房運転の終了が指示されるまで、S10~S18の各処理を繰り返し実行する。
【0050】
次いで、図4を参照して、バーナ温調制御について説明する。バーナ温調制御は、バーナ加熱装置82を動作させて、暖房機76に供給される熱媒の温度を暖房設定温度にするために、制御装置100が実行する制御のことである。
【0051】
まず、S30では、制御装置100は、サーミスタ78の検出温度(即ち、暖房機76に供給される水の温度)が、暖房設定温度より所定温度β(例えば5℃)だけ低い点火温度を下回ることを監視する。βの値は、暖房設定温度に応じて変更されてもよい。サーミスタ78の検出温度が点火温度を下回る場合、制御装置100は、S30でYESと判断し、S32に進む。
【0052】
S32では、制御装置100は、バーナ加熱装置82の動作を開始させる。S32の内容は、給湯暖房システム2が併用暖房運転と単独暖房運転(後述)のどちらを行っているのかに応じて異なる。この場合、給湯暖房システム2では、併用暖房運転が行われている(即ち、制御装置100がヒートポンプ温調制御(図3)も並行して実行している)。そのため、S32では、制御装置100は、バーナ加熱装置82のバーナ82a~82dのうちの一部のバーナ(例えばバーナ82a)のみを用いてガスを燃焼させる。このようなバーナ加熱装置82の動作を以下では「部分燃焼」と呼ぶ場合がある。バーナ加熱装置82が部分燃焼を開始することにより、熱媒が、バーナ加熱装置82によって加熱される。
【0053】
S32でバーナ加熱装置82の動作を開始すると、制御装置100は、サーミスタ78の検出温度が暖房設定温度で安定するように、バーナ加熱装置82(この場合はバーナ82a)に供給するガスの流量を調整する。具体的には、制御装置100は、サーミスタ78の検出温度が暖房設定温度を上回る場合に、ガスの流量を少なくし、サーミスタ78の検出温度が暖房設定温度を下回る場合に、ガスの流量を増やすことができる。ガスの流量の増減に伴い、バーナ82aの火力が増減する。
【0054】
次いで、S34では、制御装置100は、サーミスタ78の検出温度が暖房設定温度より所定温度γ(例えば5℃)だけ高い消火温度以上になることを監視する。γの値は、暖房設定温度に応じて変更されてもよい。サーミスタ78の検出温度が消火温度以上になる場合、制御装置100は、S34でYESと判断し、S36に進む。
【0055】
S36では、制御装置100は、バーナ加熱装置82を停止させる。即ち、制御装置100は、燃焼中のバーナ82aを消火させる。これにより、熱媒が、バーナ加熱装置82によって加熱されなくなる。
【0056】
S36を終えると、制御装置100は、S30に戻る。このように、制御装置100は、ユーザによって暖房運転の終了が指示されるまで、S30~S36の各処理を繰り返し実行する。
【0057】
以上、ヒートポンプ温調制御(図3)及びバーナ温調制御(図4)について説明した。上記の通り、ヒートポンプ温調制御及びバーナ温調制御の実行中に、ユーザによって暖房運転の終了が指示されると、制御装置100は、その時点で動作中のヒートポンプ50、バーナ加熱装置82、及び、循環ポンプ74をすべて停止させる。その場合、併用暖房運転が終了する。
【0058】
上記の通り、併用暖房運転では、制御装置100は、バーナ加熱装置82を動作させる際(図4のS32参照)、バーナ82aのみを動作させる部分燃焼を行う。併用暖房運転においてバーナ加熱装置82を動作させる際に、上記のように部分燃焼を行った方が、すべてのバーナ82a~82dを動作させる「全燃焼」を行った場合に比べて、システム全体の一次エネルギー効率が高い。以下、その理由について説明する。
【0059】
図5は、併用暖房運転時に、バーナ加熱装置82を全燃焼させた場合((a)参照)と、上記のように部分燃焼させた場合((b)参照)のそれぞれの場合におけるサーミスタ78の検出温度の温度変化を表わすグラフである。図5の例では、暖房設定温度が40℃であり、点火温度が35℃であり、消火温度が45℃である。
【0060】
図5中の(a)に示すように、バーナ加熱装置82を全燃焼させた場合、各バーナ82a~82dに供給するガスの流量を最小値まで絞った状態でも、一度バーナ加熱装置82が動作すると、単位時間当たりに暖房往路72内の水に加えられる熱量が大きくなる(例えば最小で10000kcal/h)。そのため、図5の(a)に示すように、サーミスタ78の検出温度が短時間で消火温度(45℃)に到達する。そのため、バーナ加熱装置82は、短時間動作をした後ですぐに停止される。そのため、熱媒を暖房設定温度に保つために、バーナ加熱装置82の発停が頻繁に行われ易くなる。
【0061】
一方、図5中の(b)に示すように、バーナ加熱装置82を部分燃焼させた場合、バーナ82aのみでガスが燃焼されるため、ガスの流量を最小値まで絞ると、単位時間当たりに暖房往路72内の水に加えられる熱量を小さくすることができる(例えば最小で2500kcal/h)。そのため、図5の(b)に示すように、バーナ加熱装置82に供給されるガスの流量を調整することによって、サーミスタ78の検出温度を、暖房設定温度の近傍の値に維持し易くなる。即ち、暖房往路72内の水の温度を暖房設定温度の近傍値に維持するために、バーナ加熱装置82の発停が頻繁に行われる可能性が低い。バーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合、全燃焼させる場合に比べて、バーナ加熱装置82を継続して長時間動作させることができる。
【0062】
そして、図6は、併用暖房運転時のバーナ加熱装置82の燃焼負荷とバーナ加熱装置82の平均燃焼効率との関係を表わす。ここで「平均燃焼効率」とは、バーナ加熱装置82が動作している期間の燃焼効率と、バーナ加熱装置82が停止している期間の燃焼効率と、を平均した値を示す。図6中のE1は、バーナ加熱装置82を全燃焼させた場合の関係を表わし、E2は、バーナ加熱装置82を部分燃焼させた場合の関係を表わす。なお、E2に示すように、バーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合、燃焼負荷は最大で7kWである。以下、図7図8図10においても同様である。E1、E2が示すように、バーナ加熱装置82を全燃焼させる場合と部分燃焼させる場合との間で、平均燃焼効率に大きな差はない。
【0063】
上記の通り、併用暖房運転時にバーナ加熱装置82を全燃焼させる場合、バーナ加熱装置82の発停が頻繁に行われる可能性が高くなる(図5の(a)参照)。バーナ加熱装置82が停止している(即ち、すべてのバーナ82a~82dの動作が停止している)間も、暖房用熱媒循環路71内の熱媒はヒートポンプ50によって加熱されるため、熱媒の温度が急激に低下することが抑制され、熱媒の温度が、バーナ加熱装置82の点火温度まで下がるまでに比較的長い期間を要する。即ち、バーナ加熱装置82が動作していない期間が長くなる。バーナ加熱装置82が動作していない間、熱媒は、バーナ加熱装置82を通過する間に空気との自然対流熱交換(即ち、バーナ加熱装置82のファンが停止している間における空気との熱交換)により、放熱をしてしまう。なお、ここで言う「放熱」は、バーナ加熱装置82に導入される熱媒の温度が、サーミスタ78の検出温度(即ち、バーナ加熱装置82を通過後、暖房機76に導入される前の熱媒の温度)よりも高い期間における放熱を意味する。上記の通り、併用暖房運転を行う場合、バーナ加熱装置82が停止している間もヒートポンプ50で熱媒が加熱されるが、図6の平均燃焼効率の算出の際には、バーナ加熱装置82が停止している間にバーナ加熱装置82で放熱された熱量(放熱量)を、バーナ加熱装置82に起因する放熱量として考慮した上で計算を行っている。
【0064】
また、上記の通り、併用暖房運転時にバーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合、バーナ加熱装置82の発停が頻繁に行われる可能性が低くなるとともに、バーナ加熱装置82を継続して長時間動作させることができる(図5の(b)参照)。ただし、バーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合、熱媒は、動作していないバーナ82b~82d部分を通過する間に、空気との強制対流熱交換(即ち、バーナ加熱装置82のファンが動作することに伴う空気との熱交換)によって放熱をしてしまう。
【0065】
そのため、上記の通り、バーナ加熱装置82による平均加熱効率のみに着目するのであれば、併用暖房運転時にバーナ加熱装置82を全燃焼させる場合と部分燃焼させる場合との間で、それほど大きな差が出なくなる(図6のE1、E2参照)。
【0066】
ただし、併用暖房運転時にバーナ加熱装置82を全燃焼させる場合と部分燃焼させる場合との間で、ヒートポンプ50の加熱効率には大きな差が生じる。図7は、併用暖房運転時のバーナ加熱装置82の燃焼負荷とヒートポンプ50のCOPとの関係を表わす。図7中のE11は、バーナ加熱装置82を全燃焼させた場合の関係を表わし、E12は、バーナ加熱装置82を部分燃焼させた場合の関係を表わす。E11、E12が示すように、バーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合のヒートポンプ50のCOPは、全燃焼させる場合のヒートポンプ50のCOPよりも高い。
【0067】
上記の通り、併用暖房運転時にバーナ加熱装置82を全燃焼させる場合、バーナ加熱装置82が頻繁に発停される(図5の(a)参照)。そのため、ヒートポンプ50に導入される熱媒の温度の変化が大きくなり、ヒートポンプ50に導入される熱媒の温度が不安定になる。即ち、頻繁に行われるバーナ加熱装置82の発停に伴って、ヒートポンプ50が熱媒を加熱可能な加熱量(いわゆる加熱幅)の変化が大きくなる。例えば、バーナ加熱装置82の動作中及び停止直後は、ヒートポンプ50に導入される熱媒の温度が比較的高くなるため、ヒートポンプ50による加熱幅が小さくなる。その結果、その間のヒートポンプのCOPは悪化する。また、例えば、バーナ加熱装置82が停止して長期間が経過すると、ヒートポンプ50に導入される熱媒の温度が比較的低くなるため、ヒートポンプ50による加熱幅が大きくなる。その間のヒートポンプ50のCOPは比較的良くなる。このように、併用暖房運転時にバーナ加熱装置82を全燃焼させると、ヒートポンプ50による加熱幅が安定せず、ヒートポンプ50のCOPが平均して低くなる(図7のE11参照)。
【0068】
一方、併用暖房運転時にバーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合、上記の通り、バーナ加熱装置82の発停頻度が少ない(図5の(b)参照)。そのため、ヒートポンプ50に導入される熱媒の温度の変化が小さくなり、ヒートポンプ50に導入される熱媒の温度が安定する。そのため、ヒートポンプ50による加熱幅の変化が小さくなる。その結果、ヒートポンプ50のCOPは、全燃焼させる場合に比べて平均して高くなる(図7のE12参照)。
【0069】
これに起因して、図8に示すように、併用暖房運転時にバーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合、全燃焼させる場合に比べて、システム全体の一次エネルギー効率が高くなる。図8は、併用暖房運転時のバーナ加熱装置82の燃焼負荷と、給湯暖房システム2全体の一次エネルギー効率との関係を表わす。図8中のE21は、バーナ加熱装置82を全燃焼させた場合の関係を表わし、E22は、バーナ加熱装置82を部分燃焼させた場合の関係を表わす。E21、E22が示すように、バーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合の一次エネルギー効率は、全燃焼させる場合の一次エネルギー効率よりも高い。
【0070】
(単独暖房運転)
単独暖房運転は、バーナ加熱装置82のみを熱源として暖房用熱媒循環路71内の熱媒を加熱し、加熱された熱媒の熱を用いて、暖房機76によって居室を暖房する暖房運転である。単独暖房運転が行われるべき状況は、例えば、蓄熱運転が行われている間に暖房運転が行われるべき場合のように、ヒートポンプ50をタンク10内の温水の加熱のための熱源として利用する必要があり、バーナ加熱装置82のみを暖房のための熱源として利用可能な場合に、暖房運転の実行が指示される状況である。図9中の実線矢印は、併用暖房運転中におけるヒートポンプ50の冷媒の流れ、及び、暖房用熱媒循環路71内の熱媒の流れを示している。
【0071】
この場合も、ユーザによって暖房運転の実行が指示されると、まず、制御装置100は、調整弁90の開度を調整し、暖房復路84を流れる熱媒の全部が、バイパス路94を通過して(熱回収路88をバイパスして)、循環流路96に導入されるようにする。即ち、三流体熱交換器58をバイパスする経路が形成される。これにより、シスターン70内の熱媒が、シスターン70から、暖房往路72、暖房機76、暖房復路84、バイパス路94、及び、循環流路96をこの順で通過してシスターン70に戻る経路が形成される(図9参照)。
【0072】
次いで、制御装置100は、ユーザが設定した運転温度に基づいて、暖房機76に供給されるべき熱媒の温度である暖房設定温度を設定する。次いで、制御装置100は、所定の回転数で循環ポンプ74を作動させ、上記の経路内で熱媒を循環させる。
【0073】
次いで、制御装置100は、バーナ温調制御(図4参照)を開始する。この場合、ヒートポンプ50は、既に他の用途(例えばタンク10内の水の加熱)のために動作しているため、制御装置100は、ヒートポンプ温調制御(図3参照)は行わない。制御装置100は、バーナ温調制御を開始した後、ユーザによって暖房運転の終了が指示されるまで、バーナ温調制御を継続して実行する。
【0074】
単独暖房運転の場合のバーナ温調制御(図4)の内容も、併用暖房運転の場合のバーナ温調制御と基本的には同様である。ただし、単独暖房運転の場合は、S32において、制御装置100は、バーナ加熱装置82のバーナ82a~82dを全部用いてガスを燃焼させる(即ち全燃焼させる)。バーナ加熱装置82が全燃焼を開始することにより、熱媒が、バーナ加熱装置82によって加熱される。なお、単独暖房運転の場合も、併用暖房運転の場合と同様に、制御装置100は、必要に応じてバーナ加熱装置82(この場合はバーナ82a~82d)に供給するガスの流量を調整する。ガスの流量の増減に伴い、バーナ82a~82dの火力が増減する。
【0075】
バーナ温調制御の実行中に、ユーザによって暖房運転の終了が指示されると、制御装置100は、その時点で動作中のバーナ加熱装置82、及び、循環ポンプ74をすべて停止させる。その場合、単独暖房運転が終了する。
【0076】
上記の通り、単独暖房運転では、制御装置100は、バーナ加熱装置82を動作させる際(図4のS32参照)、すべてのバーナ82a~82dを動作させる全燃焼を行う。単独暖房運転においてバーナ加熱装置82を動作させる際には、併用暖房運転の場合とは異なり、全燃焼を行った方が、部分燃焼を行う場合に比べて、システム全体の一次エネルギー効率が高い。以下、その理由について説明する。
【0077】
図10は、単独暖房運転時のバーナ加熱装置82の燃焼負荷とバーナ加熱装置82の平均燃焼効率との関係を表わす。図10中のE31は、バーナ加熱装置82を全燃焼させた場合の関係を表わし、E32は、バーナ加熱装置82を部分燃焼させた場合の関係を表わす。E31、E32が示すように、燃焼負荷の大きさに関わらず、バーナ加熱装置82を全燃焼させる場合の平均燃焼効率は、部分燃焼させる場合の平均燃焼効率に比べて高い。
【0078】
単独暖房運転の場合、ヒートポンプ50は暖房以外の用途で既に使われており、バーナ加熱装置82のみが暖房用の熱源として利用される。この際、仮に、バーナ加熱装置82を部分燃焼させると、バーナ加熱装置82のバーナ82a~82dのうちの動作していないバーナ82b~82d部分を熱媒が通過する間に放熱が行われてしまい、熱媒の加熱効率が低下してしまう(図10中のE32参照)。とくに、全燃焼の場合と同様にバーナ加熱装置82内のファン(図示省略)が動作すると、動作していないバーナ82b~82d部分での放熱量が一層大きくなってしまう。一方、バーナ加熱装置82を全燃焼させると、上記のような放熱は行われず、熱損失が少なくなる。ただし、バーナ加熱装置82が単位時間当たりに熱媒に加える熱量が大きくなるため、熱媒を暖房設定温度に維持するために、バーナ加熱装置82の発停が頻繁に行われる可能性は高くなる。しかしながら、バーナ加熱装置82が停止している間に熱媒がヒートポンプ50によって加熱されることがないため、バーナ加熱装置82の停止後、熱媒の温度が比較的早期に点火温度を下回るため(図4のS30でYES)、バーナ加熱装置82が動作していない期間(即ちバーナ加熱装置82が熱媒を加熱していない期間)が短く済む。そのため、単独暖房運転時には、バーナ加熱装置82を全燃焼させる方が、バーナ加熱装置82を部分燃焼させるよりも加熱効率が高くなる。そのため、単独暖房運転の場合、バーナ加熱装置82を全燃焼させる場合の方が、部分燃焼させる場合に比べて加熱効率が高いことに起因して、システム全体の一次エネルギー効率も高くなる。
【0079】
以上、給湯暖房システム2の各動作(蓄熱運転、給湯運転、併用暖房運転、単独暖房運転)の内容について説明した。なお、併用暖房運転の実行中に、ヒートポンプ50が暖房以外の用途に利用される(例えば蓄熱運転が開始される)場合には、制御装置100は、運転内容を、併用暖房運転から単独暖房運転に切り替える。その際、制御装置100は、ヒートポンプ温調制御(図3)を終了する。そして、制御装置100は、動作中のバーナ加熱装置82を部分燃焼から全燃焼に切り替えた上で、バーナ温調制御(図4)を継続する。
【0080】
反対に、単独暖房運転の実行中に、ヒートポンプ50を暖房用の熱源として利用可能な状態に移行する(例えば、実行していた蓄熱運転が終了する)場合には、制御装置100は、運転内容を、単独暖房運転から併用暖房運転に切り替える。その際、制御装置100は、ヒートポンプ温調制御(図3)を開始する。そして、制御装置100は、動作中のバーナ加熱装置82を全燃焼から部分燃焼に切り替えた上で、バーナ温調制御(図4)を継続する。
【0081】
以上、本実施例の給湯暖房システム2の構成及び動作について説明した。上記の通り、本実施例では、制御装置100は、併用暖房運転を実行する場合には、バーナ加熱装置82を部分燃焼させる(図4のS32)。これにより、ヒートポンプ50とバーナ加熱装置82の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合において、バーナ加熱装置82を全燃焼させる場合に比べ、システム全体の一次エネルギー効率を高くすることができる。従って、本実施例によると、ヒートポンプ50とバーナ加熱装置82という二種類の熱源を備える給湯暖房システム2において、システム全体の一次エネルギー効率を最良にし得る。
【0082】
また、本実施例では、制御装置100は、単独暖房運転を実行する場合には、バーナ加熱装置82を全燃焼させる(図4のS32)。上記の通り、単独暖房運転を実行する場合には、バーナ加熱装置82を全燃焼させた方が、部分燃焼させる場合に比べて燃焼効率が高くなる。本実施例によると、ヒートポンプ50を利用せず、バーナ加熱装置82を利用して熱媒を加熱すべき場合においても、システム全体の一次エネルギー効率を最良にし得る。
【0083】
本実施例と請求項の記載の対応関係を説明しておく。バーナ加熱装置82が「燃焼機」の一例である。併用暖房運転を行う場合が「ヒートポンプと燃焼機の両方を利用して熱媒を加熱すべき場合」の一例である。単独暖房運転を行う場合が「ヒートポンプを利用せずに、燃焼機を利用して熱媒を加熱すべき場合」の一例である。
【0084】
以上、実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0085】
(変形例1)上記の実施例では、バーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合、1個のバーナ82aのみを動作させる。しかしながら、バーナ加熱装置82を部分燃焼させる場合に動作させるバーナの数は1個に限られず、2個や3個であってもよい。一般的に言うと、燃焼機の複数個のバーナのうちの一部のバーナのみを動作させて熱媒の加熱を行わせればよい。
【0086】
(変形例2)上記の実施例では、バーナ加熱装置82は、4個のバーナ82a~82dを備えている。しかしながら、バーナ加熱装置82が備えるバーナの数は4個に限られず、他の数(例えば3個や、5個以上等)であってもよい。一般的に言うと、燃焼機は複数個のバーナを備えていればよい。
【0087】
(変形例3)上記の実施例では、バーナ温調制御(図4)において、制御装置100は、サーミスタ78の検出温度(即ち、暖房機76に供給される熱媒の温度)を基準として、バーナ加熱装置82の動作の開始及び停止を切り替えている。しかしながら、制御装置100は、上記の基準に限られず、任意の基準に基づいて、バーナ加熱装置82の動作の開始及び停止を切り替えてもよい。例えば、制御装置100は、サーミスタ98の検出温度(循環流路96内の熱媒の温度)に基づいて、バーナ加熱装置82の動作の開始及び停止を切り替えてもよい。
【0088】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0089】
2:給湯暖房システム
10:タンク
12、14、16、18:サーミスタ
20:タンク水循環路
22:循環ポンプ
24:水道水導入路
24a:第1導入路
24b:第2導入路
26:逆止弁
28:逆止弁
30:水量センサ
32:水道水供給源
34:水量センサ
36:供給路
36a:混合弁
36b:バイパス路
36c:バイパス制御弁
38:給湯栓
50:ヒートポンプ
52:冷媒循環路
54:熱交換器
56:ファン
58:三流体熱交換器
60:膨張弁
62:圧縮器
70:シスターン
71:暖房用熱媒循環路
72:暖房往路
74:循環ポンプ
76:暖房機
78:サーミスタ
81:バーナ加熱装置
81a:バーナ
82:バーナ加熱装置
82a、82b、82c、82d:バーナ
84:暖房復路
86:サーミスタ
88:熱回収路
90:調整弁
92:サーミスタ
94:バイパス路
96:循環流路
98:サーミスタ
100:制御装置
104:給湯系統
106:ヒートポンプ系統
108:暖房系統
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10