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  • 特許-電磁波シールド形成用マスキングテープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】電磁波シールド形成用マスキングテープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20220526BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220526BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220526BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20220526BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J201/00
B32B27/00 M
B32B7/022
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018006883
(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公開番号】P2019123833
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】大川 雄士
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-297591(JP,A)
【文献】特開2016-222863(JP,A)
【文献】特開2010-166091(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151912(WO,A1)
【文献】特開2010-278427(JP,A)
【文献】特開2010-258426(JP,A)
【文献】特開2018-009050(JP,A)
【文献】特開2011-105961(JP,A)
【文献】特開2015-098616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線照射により、弾性率が活性エネルギー線照射前の20倍以上となる、粘着剤層と、
該粘着剤層の片側に配置される中間層とを備える、電磁波シールド形成用マスキングテープであって、
該粘着剤層の弾性率(活性エネルギー線照射前)が、0.07MPa~0.70MPaであり、
該粘着剤層の活性エネルギー線照射後の弾性率が、10MPa~500MPaであり、
該中間層の弾性率が、0.07MPa~0.70MPaであり、
該電磁波シールド形成用マスキングテープが、基材をさらに備え、
該基材の少なくとも片側に前記粘着剤層が配置され、
該中間層が、前記粘着剤層と前記基材との間に配置される、
電磁波シールド形成用マスキングテープ。
【請求項2】
60℃~270℃の加熱を行う加熱工程に供される、請求項1に記載の電磁波シールド形成用マスキングテープ。
【請求項3】
高さ50μm以上のバンプを有する面のマスキングに用いられる、請求項1または2に記載の電磁波シールド形成用マスキングテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド形成用マスキングテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品には、電磁波シールドが設けられ、外部からの電磁波による当該電子部品の誤作動、あるいは当該電子部品から発生する電磁波の漏洩の防止が図られている。近年、電子部品の小型化の観点から、スパッタリング、メッキ、スプレー等の方法で、電子部品に直接、電磁波シールド(金属層)を形成することが行われている(例えば、特許文献1)。このとき、電極形成面等の電磁波シールドの形成を要さない面には、当該面をマスキングすべく、粘着テープが貼着される。
【0003】
上記電子部品として、凹凸面を有する電子部品(例えば、バンプを備える電子部品)が用いられることがある。このような電子部品の凹凸面をマスキングする際に用いられる粘着テープには、凹凸に良好に追従して粘着テープと貼着面との間に不要な空隙が生じないこと、電磁波シールド形成後には糊残りなく剥離され得ることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-183180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、電磁波シールド形成時に用いられるマスキングテープであって、凹凸に対する追従性に優れ、かつ、凹凸面から糊残り無く剥離され得るマスキングテープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁波シールド形成用マスキングテープは、活性エネルギー線照射により、弾性率が活性エネルギー線照射前の20倍以上となる、粘着剤層を備え、該粘着剤層の活性エネルギー線照射後の弾性率が、500MPa以下である。
1つの実施形態においては、上記電磁波シールド形成用マスキングテープは、基材をさらに備え、該基材の少なくとも片側に前記粘着剤層が配置される。
1つの実施形態においては、上記電磁波シールド形成用マスキングテープは、上記粘着剤層の片側に配置される中間層をさらに備える。
1つの実施形態においては、上記電磁波シールド形成用マスキングテープは、上記粘着剤層と上記基材との間に配置される中間層をさらに備える。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層の弾性率(活性エネルギー線照射前)が、0.07MPa~0.70MPaである。
1つの実施形態においては、上記中間層の弾性率が、0.07MPa~0.30MPaである。
1つの実施形態においては、上記電磁波シールド形成用マスキングテープは、60℃~300℃の加熱を行う加熱工程に供される。
1つの実施形態においては、上記電磁波シールド形成用マスキングテープは、高さ50μm以上のバンプを有する面のマスキングに用いられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、活性エネルギー線の照射により、弾性率が変化し得る粘着剤層を形成し、当該弾性率を特定の範囲とすることにより、電磁波シールド形成時に用いられるマスキングテープであって、凹凸に対する追従性に優れ、かつ、凹凸面から糊残り無く剥離され得るマスキングテープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による電磁波シールド形成用マスキングテープの概略断面図である。
図2】本発明の別の実施形態による電磁波シールド形成用マスキングテープの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.電磁波シールド形成用マスキングテープの概要
図1は、本発明の1つの実施形態による電磁波シールド形成用マスキングテープの概略断面図である。この実施形態による電磁波シールド形成用マスキングテープ100は、基材10と基材10の少なくとも片側に配置された粘着剤層20とを備える。図示していないが、本発明のマスキングテープは、使用に供するまでの間、粘着面を保護する目的で、粘着剤層の外側に剥離ライナーが設けられていてもよい。なお、以下、本明細書において、電磁波シールド形成用マスキングテープを単にマスキングテープということもある。
【0010】
本発明のマスキングテープが備える粘着剤層は、活性エネルギー線の照射により、弾性率が変化し得る。より具体的には、上記粘着剤層は、活性エネルギー線の照射により弾性率が高くなり、弾性率が活性エネルギー線照射前の20倍以上となる。活性エネルギー線としては、例えば、ガンマ線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)、ラジオ波、アルファ線、ベータ線、電子線、プラズマ流、電離線、粒子線等が挙げられる。1つの実施形態において、活性エネルギー線の照射は、積算光量500mJ/cm~4000mJ/cm(好ましくは、800mJ/cm~1500mJ/cm、より好ましくは1000mJ/cm~1500mJ/cm)の紫外線(波長:365nmを中心とする高圧水銀ランプ使用)照射である。長時間照射により、粘着剤層の温度が100℃以上となる場合は、複数回に分けて照射するのが、好ましい。上記のような粘着剤層を備える上記マスキングテープは、貼着時には適度な柔軟性を有して、凹凸ある面(例えば、パッケージのバンプ形成面)に追従性よく貼着することができ、貼着面とマスキングテープとの間に不要な空隙が生じることを防止し得る。このようなマスキングテープによりパッケージのバンプ形成面をマスキングすれば、当該パッケージに電磁波シールドを設ける際、バンプ形成面への不要な金属層の形成が防止され得る。一方、貼着後には、活性エネルギー線照射により、マスキングテープ(実質的には粘着剤層)の弾性率を高めることができる。例えば、マスキングテープ付きのパッケージが、加熱工程(例えば、60℃~270℃、好ましくは60℃~200℃)に供される場合においても、本発明のマスキングテープを用いれば、粘着剤層の弾性率が高いため、該粘着剤層が凹凸に起因して形成される空隙(例えば、バンプ下部とバンプ形成面との隙間)に不要に入り込むことが防止され得る。その結果、当該マスキングテープを剥離した際には、貼着面への粘着剤層成分の残存(いわゆる、糊残り)が防止され得る。このように、電磁波シールド形成時に用いられるマスキングテープとして、各工程に適した弾性率を発現し得る粘着剤層を備えるマスキングテープを提供し得ることが、本発明の成果のひとつである。
【0011】
図2は、本発明の別の実施形態による電磁波シールド形成用マスキングテープの概略断面図である。この実施形態による電磁波シールド形成用マスキングテープ200は、中間層30をさらに備える。中間層30は、粘着剤層20の片側に配置される。図2に示すように、電磁波シールド形成用マスキングテープ200が基材10を備える場合、中間層30は、粘着剤層20と基材10との間に配置される。1つの実施形態においては、中間層は、活性エネルギー線照射後の粘着剤層の弾性率よりも低い弾性率を有する。中間層を形成することにより、粘着剤層が凹凸に起因して形成される空隙(例えば、バンプ下部とバンプ形成面との隙間)に不要に入り込むことを防止しつつも、マスキングテープ全体としては適度な柔軟性を維持し、凹凸面を良好にマスキングし得るマスキングテープを得ることができる。
【0012】
本発明のマスキングテープをステンレス板に貼着した際の23℃における初期粘着力は、好ましくは0.4N/20mm以上であり、より好ましくは0.5N/20mm以上である。このような範囲であれば、電子部品用として好適なマスキングテープを得ることができる。マスキングテープをステンレス板に貼着した際の23℃における初期粘着力の上限は、例えば、35N/20mmである。なお、粘着力は、JIS Z 0237:2000に準じて測定される。具体的には、2kgのローラーを1往復によりマスキングテープをステンレス板(算術平均表面粗さRa:50±25nm)に貼着し、23℃下で30分間放置した後、剥離角度180°、剥離速度(引張速度)300mm/minの条件で、マスキングテープを引きはがして測定される。本明細書において、「初期粘着力」とは、活性エネルギー線の照射前の粘着力を意味する。
【0013】
本発明のマスキングテープは、活性エネルギー線照射により、粘着力が低下してもよいが、所定の粘着力を有していることが好ましい。マスキングテープをステンレス板に貼着し、紫外線(積算光量500mJ/cm~4000mJ/cm(好ましくは、800mJ/cm~1500mJ/cm、より好ましくは1000mJ/cm~1200mJ/cm)を照射した後の23℃における粘着力は、好ましくは0.07N/20mm~0.5N/20mmであり、より好ましくは0.08N/20mm~0.3N/20mmである。このような範囲であれば、電子部品に電磁波シールドを形成する工程(例えば、スパッタリング工程、メッキ工程またはスプレー工程)において、良好に当該電子部品をマスキングし得るマスキングテープを得ることができる。
【0014】
マスキングテープの厚みは、好ましくは70μm~600μmであり、より好ましくは80μm~500μmであり、さらに好ましくは100μm~500μmである。
【0015】
B.粘着剤層
上記のとおり、粘着剤層は、活性エネルギー線照射により、弾性率が活性エネルギー線照射前の20倍以上となる。好ましくは、粘着剤層は、活性エネルギー線照射により、弾性率が活性エネルギー線照射前の20倍~6000倍となり、より好ましくは50倍~5500倍となり、さらに好ましくは100倍~4000倍となる。このような範囲であれば、本願発明の上記効果はより顕著となる。なお、本明細書において、特にことわりのない場合、「粘着剤層」とは活性エネルギー線照射前の粘着剤層を意味する。
【0016】
上記粘着剤層の弾性率(活性エネルギー線照射前)は、好ましくは0.07MPa~0.7MPaであり、より好ましくは0.075MPa~0.6MPaであり、さらに好ましくは0.08MPa~0.5MPaであり、特に好ましくは0.1MPa以上0.5MPa未満である。このような範囲であれば、貼着面の凹凸に適度に追従し得るマスキングテープを得ることができる。また、マスキングテープを巻回した際に、マスキングテープ同士のひっつきを防止することができる。ロール形状の端面部分に活性エネルギー線を照射して、粘着剤のはみ出しを防止することも可能である。
【0017】
上記粘着剤層の活性エネルギー線照射後の弾性率は、500MPa以下である。このような範囲であれば、活性エネルギー線照射後においても、割れにくい粘着剤層が得られ、貼着面への糊残りが防止され得る。貼着面が凹凸面である場合は、凹凸に入り込んだ粘着剤層が割れて、糊残りが生じやすい傾向にあるが、本発明のマスキングテープは、このようにして生じる糊残りを防止できる点で、有用である。上記粘着剤層の活性エネルギー線照射後の弾性率は、好ましくは10MPa~500MPaであり、より好ましくは100MPa~470MPaであり、さらに好ましくは120MPa~400MPaである。このような範囲であれば本願発明の上記効果はより顕著なる。1つの実施形態において、活性エネルギー線の照射は、上記のとおり、積算光量500mJ/cm~4000mJ/cm(好ましくは、800mJ/cm~1500mJ/cm、より好ましくは1000mJ/cm~1200mJ/cm)の紫外線(波長:365nmを中心とする高圧水銀ランプ使用)照射である。
【0018】
本明細書において、弾性率とは、室温下(23℃)でのナノインデンテーション法による弾性率を意味する。ナノインデンテーション法による弾性率は、下記条件で測定され得る。
(測定装置及び測定条件)
装置:Hysitron Inc.製 Tribo Indenter
使用圧子:Berkovich(三角錐型)
測定方法:単一押し込み測定
押し込み深さ設定:2500nm
押込み速度:2000nm/sec
測定雰囲気:空気中
試料サイズ:1cm×1cm
【0019】
上記粘着剤層の厚みは、好ましくは3μm~500μmであり、より好ましくは5μm~450μmであり、さらに好ましくは10μm~400μmである。このような範囲であれば、貼着面の凹凸に適度に追従し得るマスキングテープを得ることができる。1つの実施形態においては、マスキングテープが中間層を有さない場合、粘着剤層の厚みは、好ましくは70μm~500μmであり、より好ましくは80μm~450μmであり、さらに好ましくは100μm~400μmである。別の実施形態においては、マスキングテープが中間層を有する場合、粘着剤層の厚みは、好ましくは3μm~100μmであり、より好ましくは5μm~80μmであり、さらに好ましくは10μm~50μmである。マスキングテープが中間層を有する場合、当該中間層によりマスキングテープの柔軟性を確保し得るため、粘着剤層の厚みを薄くすることができる。
【0020】
1つの実施形態においては、粘着剤層は、活性エネルギー線硬化型粘着剤から構成される。
【0021】
1つの実施形態においては、活性エネルギー線硬化型粘着剤として、母剤となるベースポリマーと、該ベースポリマーと結合可能な活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)とを含む活性エネルギー線硬化型粘着剤(A1)が用いられる。別の実施形態においては、ベースポリマーとして活性エネルギー線反応性ポリマーを含む活性エネルギー線硬化型粘着剤(A2)が用いられる。好ましくは、上記ベースポリマーは、光重合開始剤と反応し得る官能基を有する。該官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基等が挙げられる。本発明において、粘着剤層の弾性率は、例えば、ベースポリマーの種類、分子量;活性エネルギー線反応性化合物の種類、量;活性エネルギー線反応性ポリマーの種類、分子量;活性エネルギー線硬化型粘着剤に含まれる添加剤(例えば、架橋剤)の種類、量等により、適切に調整することができる。
【0022】
上記粘着剤(A1)において用いられるベースポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ニトリルゴム(NBR)等のゴム系ポリマー;シリコーン系ポリマー;アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも好ましくは、アクリル系ポリマーである。アクリル系ポリマーを用いれば、半導体プロセスに好適な特性(例えば、粘着力、弾性率等)を有する粘着剤層を形成することができる。
【0023】
上記アクリル系ポリマーは、代表的には、アルキル(メタ)アクリレートの1種または2種以上を単量体成分として形成されたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)である。上記アルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。
【0024】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する構成単位を含んでいてもよい。このような単量体成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、等のスルホン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;スクシンイミド系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレートモノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等の複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子等を有するアクリル酸エステル系モノマー;イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。これらの単量体成分は、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。上記の中でも、より好ましくはカルボキシル基含有モノマー(特に好ましくはアクリル酸またはメタクリル酸)またはヒドロキシル基含有モノマー(特に好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル)である。このようなモノマー由来の構成単位を導入すれば、光重合開始剤とアクリル系ポリマー(ベースポリマー)とを結合させることが可能となり、本発明の効果はより顕著となる。カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは1重量部~10重量部である。ヒドロキシル基含有モノマー由来の構成単位の含有割合は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは1重量部~15重量部である。
【0025】
上記粘着剤(A1)に用いられ得る上記活性エネルギー線反応性化合物としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の重合性炭素-炭素多重結合を有する官能基を有する光反応性のモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。該光反応性のモノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;多官能ウレタン(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、メタクリロイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナトエチルメタクリレート)、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等のモノマーを用いてもよい。光反応性のオリゴマーの具体例としては、上記モノマーの2~5量体等が挙げられる。
【0026】
また、上記活性エネルギー線反応性化合物として、エポキシ化ブタジエン、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルシロキサン等のモノマー;または該モノマーから構成されるオリゴマーを用いてもよい。
【0027】
さらに、上記活性エネルギー線反応性化合物として、オニウム塩等の有機塩類と、分子内に複数の複素環を有する化合物との混合物を用いてもよい。該混合物は、活性エネルギー線(例えば、紫外線、電子線)の照射により有機塩が開裂してイオンを生成し、これが開始種となって複素環の開環反応を引き起こして3次元網目構造を形成し得る。上記有機塩類としては、例えば、ヨードニウム塩、フォスフォニウム塩、アンチモニウム塩、スルホニウム塩、ボレート塩等が挙げられる。上記分子内に複数の複素環を有する化合物における複素環としては、オキシラン、オキセタン、オキソラン、チイラン、アジリジン等が挙げられる。
【0028】
上記粘着剤(A1)において、活性エネルギー線反応性化合物の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~500重量部であり、より好ましくは1重量部~300重量部であり、さらに好ましくは2重量部~200重量部である。
【0029】
上記粘着剤(A2)に含まれる活性エネルギー線反応性ポリマー(ベースポリマー)としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素-炭素多重結合を有する官能基を有するポリマーが挙げられる。活性エネルギー線反応性官能基を有するポリマーの具体例としては、多官能(メタ)アクリレートから構成されるポリマー;光カチオン重合型ポリマー;ポリビニルシンナマート等のシンナモイル基含有ポリマー;ジアゾ化されたアミノノボラック樹脂;ポリアクリルアミド;等が挙げられる。
【0030】
上記粘着剤(A2)は、上記活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)をさらに含んでいてもよい。
【0031】
上記粘着剤を構成するベースポリマーの重量平均分子量は、好ましくは30万~200万であり、より好ましくは50万~150万である。重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)により測定され得る。
【0032】
上記粘着剤を構成するベースポリマーのガラス転移温度は、好ましくは-50℃~30℃であり、より好ましくは-40℃~20℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れ、加熱工程で好適に使用され得る粘着シートを得ることができる。
【0033】
上記活性エネルギー線硬化型粘着剤は、光重合開始剤を含み得る。光重合開始剤としては、任意の適切な光重合開始剤が用いられ得る。例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア369」、「イルガキュア379ex」、「イルガキュア819」、「イルガキュアOXE2」、「イルガキュア127」;Lamberti社製の商品名「エサキュアone」、「エサキュア1001m」;旭電化工業社製の商品名「アデカオプトマーN-1414」、「アデカオプトマーN-1606」、「アデカオプトマーN-1717」等が挙げられる。光重合開始剤の含有割合は、粘着剤中のベースポリマー100重量部に対して、好ましくは1重量部~20重量部であり、より好ましくは2重量部~10重量部である。
【0034】
好ましくは、上記粘着剤層は、架橋剤を含む。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。
【0035】
上記架橋剤の含有割合は、粘着剤のベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~10重量部であり、より好ましくは1重量部~8重量部である。このような範囲であれば、弾性率が適切に調整された粘着剤層を形成することができる。さらに、炭素-炭素二重結合を有するベースポリマーを含む粘着剤を用いる場合に、架橋剤(好ましくは、イソシアネート系架橋剤)の含有割合を上記範囲にすることで、加熱後の炭素-炭素二重結合の上記残存率を高めることができる。その結果、加熱しても良好に硬化し得る粘着剤層を得ることができる。
【0036】
1つの実施形態においては、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。イソシアネート系架橋剤は、多種の官能基と反応し得る点で好ましい。上記イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等が挙げられる。好ましくは、イソシアネート基を3個以上有する架橋剤が用いられる。
【0037】
活性エネルギー線硬化型粘着剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、活性エネルギー線重合促進剤、ラジカル捕捉剤、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤等)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0038】
C.基材
上記基材は、任意の適切な樹脂から構成され得る。該樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ランダム共重合ポリプロピレン、ブロック共重合ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、シリコン樹脂、セルロース系樹脂、および、これらの架橋体等が挙げられる。
【0039】
上記基材を構成する樹脂のガラス転移温度は、好ましくは60℃~500℃であり、より好ましくは100℃~500℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れ、加熱工程で好適に使用され得る粘着シートを得ることができる。なお、「ガラス転移温度」とは、DMA法(引っ張り法)において、昇温速度5℃/min、サンプル幅5mm、チャック間距離20mm、周波数10Hzの条件において確認される損失正接(tanδ)のピークを示す温度を意味する。
【0040】
上記基材の厚みは、好ましくは12μm~250μmであり、より好ましくは25μm~200μmであり、さらに好ましくは50μm~150μmである。
【0041】
上記基材の弾性率は、好ましくは300MPa~6000MPaであり、より好ましくは400MPa~5000MPaである。このような範囲であれば、貼着面の凹凸に適度に追従し得るマスキングテープを得ることができる。
【0042】
上記基材の表面は、隣接する層との密着性、および、保持性等を向上させるため、任意の表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、コーティング処理が挙げられる。
【0043】
D.中間層
中間層の弾性率は、活性エネルギー線照射後の粘着剤層の弾性率よりも低いことが好ましい。また、中間層は、その弾性率が活性エネルギー線照射により変化する構成であってもよいが、活性エネルギー線照射後の中間層の弾性率は、活性エネルギー線照射後の粘着剤層の弾性率よりも低いことが好ましい。
【0044】
中間層の弾性率(弾性率が活性エネルギー線照射により変化する場合、紫外線照射前の弾性率)は、好ましくは0.07MPa~0.7MPaであり、より好ましくは0.075MPa~0.6MPaであり、さらに好ましくは0.08MPa~0.5MPaである。このような範囲であれば、貼着面の凹凸に適度に追従し得るマスキングテープを得ることができる。
【0045】
中間層の弾性率が活性エネルギー線照射により変化する場合、活性エネルギー線照射後の中間層の弾性率は、好ましくは0.05MPa~25MPaであり、より好ましくは0.08MPa~20MPaであり、さらに好ましくは0.1MPa~15MPaである。このような範囲であれば、貼着面の凹凸に適度に追従し得るマスキングテープを得ることができる。
【0046】
中間層の厚みは、好ましくは100μm~500μmであり、より好ましくは200μm~400μmである。このような範囲であれば、貼着面の凹凸に適度に追従し得るマスキングテープを得ることができる。
【0047】
上記マスキングテープが中間層を備える場合、中間層の厚みと粘着剤層の厚みとの合計厚みは、好ましくは103μm~510μmであり、より好ましくは120μm~450μmであり、さらに好ましくは160μm~400μmである。このような範囲であれば、貼着面の凹凸に適度に追従し得るマスキングテープを得ることができる。
【0048】
上記中間層を構成する材料としては、任意の適切な材料が用いられ得る。1つの実施形態においては、中間層を構成材料として、上記B項で説明したベースポリマー(好ましくはアクリル系ポリマー)を含む中間層形成用組成物(B1)、上記B項で説明したベースポリマー(好ましくはアクリル系ポリマー)と、上記B項で説明した活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)とを含む中間層形成用組成物(B2)、または上記B項で説明した活性エネルギー線反応性ポリマーを含む中間層形成用組成物(B3)が用いられる。1つの実施形態においては、中間層形成用組成物として、活性エネルギー線照射により硬化し得る組成物を用いる場合、本発明のマスキングテープは、硬化後の中間層を備えるマスキングテープとして提供される。換言すれば、この実施形態においては、上記マスキングは、硬化後の中間層と、硬化前の粘着剤層とを備える。
【0049】
中間層形成用組成物(B2)において、活性エネルギー線反応性化合物の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~50重量部であり、より好ましくは0.03重量部~40重量部であり、さらに好ましくは0.04重量部~30重量部である。
【0050】
上記中間層形成用組成物は、光重合開始剤を含み得る。光重合開始剤としては、任意の適切な光重合開始剤が用いられ得る。例えば、BASF社製の商品名「イルガキュア369」、「イルガキュア379ex」、「イルガキュア819」、「イルガキュアOXE2」、「イルガキュア127」;Lamberti社製の商品名「エサキュアone」、「エサキュア1001m」;旭電化工業社製の商品名「アデカオプトマーN-1414」、「アデカオプトマーN-1606」、「アデカオプトマーN-1717」等が挙げられる。光重合開始剤の含有割合は、中間層形成用組成物中のベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.5重量部~20重量部であり、より好ましくは2重量部~10重量部である。
【0051】
好ましくは、上記中間層形成用組成物は、架橋剤を含む。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。
【0052】
上記架橋剤の含有割合は、中間層形成用組成物のベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~10重量部であり、より好ましくは0.5重量部~8重量部である。
【0053】
1つの実施形態においては、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。上記イソシアネート系架橋剤の具体例としては、上記B項で説明した化合物が挙げられる。
【0054】
中間層形成用組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、活性エネルギー線重合促進剤、ラジカル捕捉剤、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤等)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0055】
E.マスキングテープの製造方法
上記マスキングテープは、任意の適切な方法により製造され得る。マスキングテープは、例えば、基材上に、上記粘着剤を塗工して得られ得る。塗工方法としては、バーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷など種々の方法を採用することができる。また、別途、剥離ライナーに粘着剤層を形成した後、それを基材に貼り合せる方法等を採用してもよい。また、マスキングテープが中間層を備える場合、当該マスキングテープは、基材上に中間層形成用組成物を塗工(必要に応じて、硬化)して中間層を形成した後、上記粘着剤を中間層上に塗工して得られ得る。
【0056】
F.マスキングテープの用途
本発明のマスキングテープは、凹凸面を有する電子部品(例えば、バンプを備える電子部品)に電磁波シールドを設ける際に、電磁波シールドの形成を要さない凹凸面(バンプ形成面)をマスキングする際に好適に用いられ得る。また、マスキングされた電子部品が加熱工程に供される場合のマスキングテープとして好適に用いられ得る。
【0057】
1つの実施形態においては、本発明のマスキングテープは、高さが50μm以上(例えば、50μm~400μm)あるバンプを有する面のマスキングに用いられる。通常、当該面においては、複数のバンプが設けられる。当該バンプの配置間隔は、例えば、100μm~500μmである。また、1つの実施形態においては、バンプの平面視形状は円形であり、その直径は100μm~300μmである。本発明のマスキングテープを用いれば、上記のようなバンプを有する面を良好にマスキングすることができ、また、本発明のマスキングテープは、当該面から糊残り無く剥離することができる。
【0058】
1つの実施形態においては、本発明のマスキングテープは、60℃~270℃(好ましくは60℃~200℃)の加熱を行う加熱工程に供される。より詳細には、本発明のマスキングテープは、活性エネルギー線の照射により粘着剤層を高弾性率化させた後に、上記加熱工程に供される。本発明のマスキングテープは、このような工程に供される場合にも粘着剤層が凹凸に起因して形成される空隙(例えば、バンプ下部とバンプ形成面との隙間)に不要に入り込むことが防止され得る。その結果、本発明のマスキングテープを用いれば、当該マスキングテープの剥離が要される工程において、糊残りが防止され得る。
【実施例
【0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における試験および評価方法は以下のとおりである。また、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0060】
(1)弾性率
マスキングテープの粘着剤層を1cm角に切り出し、これを測定用試料とした。測定用試料を所定の支持体に固定し、についてナノインデンターで弾性率を測定した。
ナノインデンター装置ならびに測定条件は下記のとおりである。
(測定装置及び測定条件)
装置:Hysitron Inc.製 Tribo Indenter
使用圧子:Berkovich(三角錐型)
測定方法:単一押し込み測定
押し込み深さ設定:2500nm
押込み速度:2000nm/sec
測定雰囲気:空気中、23℃
試料サイズ:1cm×1cm
また、日東精機社製のUM-810を用いて積算光量1000mJ/cmの紫外線を、粘着剤層に照射し、その後、粘着剤層の弾性率を上記の方法にて測定した。
【0061】
(2)マスキングテープの浮き評価
BGA半導体パッケージのバンプ形成面にマスキングテープを貼着し、日東精機社製のUM-810を用いて積算光量1000mJ/cmの紫外線を、粘着剤層に照射した。その後、芝浦メカトロニクス社製のCCS-1300にてSUS0.2μm/Cu5μm/SUS0.5μmから構成される層をパッケージ上にスパッタにより作製した。次いで、マスキングテープを剥離して、バンプ面を顕微鏡にて観察し、パッケージ周辺部のメタル侵入量により、マスキングテープの浮きを下記の基準で評価した。なお、BGA半導体パッケージは、サイズ10mm×10mm×0.9mmtで、BGA(バンプ)の高さが200μmであり、直径が200μmであるものを使用した。また、マスキングテープの貼着は、40℃の環境下で、2kgのゴムロール1往復にて行った。
〇:パッケージの周辺のメタル侵入が50μm以下
×:パッケージの周辺のメタル侵入が100μm以上
【0062】
(3)マスキングテープの糊残り評価
上記(2)のようにして、BGA半導体パッケージにマスキングテープを貼着した後、日東精機社製のUM-810を用いて積算光量1000mJ/cmの紫外線を、粘着剤層に照射した。その後、マスキングテープを剥離して、バンプ形成面に残存した粘着剤層成分の有無を、SEM(50倍)で確認した。
〇:糊残りがない
△:数十μmレベル少量で、電気的接続には問題ないと考えられる糊残りが存在する
×:100μm以上の糊残りが、多数認められる
【0063】
[製造例1]粘着剤Aの調製
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2-エチルヘキシル(以下、「2EHA」という。)88.8部、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル(以下、「HEA」という。)11.2部、過酸化ベンゾイル0.2部及びトルエン65部を入れ、窒素気流中で61℃にて6時間重合処理をし、重量平均分子量85万のアクリル系ポリマーAを得た。2EHAとHEAとのモル比は、100mol:20molとした。
このアクリル系ポリマーAに2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」という。)12部(HEAに対し80mol%)を加え、空気気流中で50℃にて48時間、付加反応処理をし、アクリル系ポリマーA’を得た。
次に、アクリル系ポリマーA’100部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン社製)2.5部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」、BASF社製)5部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(商品名「KAYARAD DPHA」、日本化薬社製)30部と、ポリウレタンアクリレート(商品名「紫光UV-3000B」、日本合成化学工業社製)6部とを加えて、粘着剤Aを作製した。
【0064】
[製造例2]粘着剤Bの調製
「KAYARAD DPHA」の配合量を60部とし、「紫光UV-3000B」の配合量を12部としたこと以外は、製造例1と同様にして粘着剤Bを調製した。
【0065】
[製造例3]粘着剤Cの調製
「KAYARAD DPHA」の配合量を100部とし、「紫光UV-3000B」を配合しなかったこと以外は、製造例1と同様にして粘着剤Cを調製した。
【0066】
[製造例4]粘着剤Dの調製
「KAYARAD DPHA」、「紫光UV-3000B」ともに配合しなかったこと以外は、製造例1と同様にして粘着剤Dを調製した。
【0067】
[製造例5]粘着剤Eの調製
「KAYARAD DPHA」の配合量を130部とし、「紫光UV-3000B」を配合しなかったこと以外は、製造例1と同様にして粘着剤Eを調製した。
【0068】
[製造例6]中間層の作製
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90部、アクリル酸(AA)10部、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)0.05部、および光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、BASF社製)0.05部を4つ口フラスコに投入した。そして、混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることによって、重合率約8質量%の部分重合物(アクリル系ポリマーシロップ)を得た。
上記アクリル系ポリマーシロップ100部に、光重合開始剤(商品名「イルガキュア651」、BASF社製)0.04部、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.04部を添加した後、これらを均一に混合して中間層形成用組成物を調製した。
片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:MRF、三菱化学ポリエステル社製)の剥離処理面に、上述したアクリル系粘着剤組成物を最終的な厚みが300μmになるように塗布して塗布層を形成した。次いで、塗布されたアクリル系粘着剤組成物の表面に、片面をシリコーンで剥離処理した厚さ38μmのポリエステルフィルム(商品名:MRE、三菱化学ポリエステル株式会社製)を、当該フィルムの剥離処理面が塗布層側になるようにして積層した。これにより、光学用アクリル系粘着剤組成物の塗布層(粘着剤層)を酸素から遮断した。このようにして得られた積層体に、高圧水銀ランプ(株式会社東芝ライテック製)を用いて照度200mW/cm(約350nmに最大感度をもつトプコンUVR-T1で測定)の紫外線を光量3000mW/cmになるまで紫外線を照射し、ポリエステルフィルムに挾持された中間層を得た。
【0069】
[実施例1-1]
粘着剤Aを、PET基材(厚み:100μm)のシリコーン処理を施した面上に塗布し、120℃で2分間加熱架橋して、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
次いで、製造例6で得られた中間層を上記粘着剤層に転写した後、50℃の環境下で48時間保存して、マスキングテープ(基材(100μm)/中間層(300μm)/粘着剤層(10μm))を得た。
得られたマスキングテープを上記評価(2)および(3)に供した。結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2-1、実施例3-1、比較例1-1、比較例2-1]
粘着剤Aに代えて、表1に示す粘着剤を用いたこと以外は、実施例1-1と同様にして、マスキングテープを得た。得られたマスキングテープを上記評価(2)および(3)に供した。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例1-2]
粘着剤Aを、PET基材(厚み:100μm)のシリコーン処理を施した面上に塗布し、80℃で5分間加熱架橋して、厚さ135μmの粘着剤層aを形成した。
別途、PET剥離ライナー上に、粘着剤Aを塗布し、80℃で5分間加熱架橋して、厚さ135μmの粘着剤層bを形成した。
粘着剤層bを粘着剤層aに転写し、その後、得られた積層体を50℃にて48時間保存し、厚み270μmの粘着剤層を有するマスキングテープを得た。
得られたマスキングテープを上記評価(2)および(3)に供した。結果を表1に示す。
【0072】
[実施例2-2、実施例3-2、比較例1-2、比較例2-2]
粘着剤Aに代えて、表1に示す粘着剤を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして、マスキングテープを得た。得られたマスキングテープを上記評価(2)および(3)に供した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のマスキングテープは、真空プロセス(例えば、半導体製造における真空プロセス)用のマスキングテープとして好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0075】
10 基材
20 粘着剤層
30 中間層
100 マスキングテープ
図1
図2