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  • 特許-合成樹脂製ボトル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】合成樹脂製ボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20220526BHJP
   B65D 1/46 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/46
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018014432
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131240
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】505440295
【氏名又は名称】北海製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】久保 徳晃
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100743(JP,A)
【文献】特開2008-132998(JP,A)
【文献】特開2007-297084(JP,A)
【文献】特開2003-341640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0175284(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0111824(US,A1)
【文献】特開2016-137927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の口部と、該口部の下端から下方に連続して次第に拡径する肩部と、該肩部の下端から下方に連続する胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備え、該口部に装着したキャップにより内部が密封される合成樹脂製ボトルにおいて、
該胴部は、コーナー部を介して周方向に連接する複数の平坦壁部を備える多角筒状であり、該コーナー部は、互いに隣り合う平坦壁部の周方向端縁同士を繋ぐ面で構成され、該コーナー部に扇状部を備え、側面視で該胴部から該底部にかけて窄まる形状を備え、該胴部の各平坦壁部に、該平坦壁部の輪郭に沿って胴部から底部にかけて両者の間隔が次第に縮小する1対の縦リブを備えることを特徴とする合成樹脂製ボトル。
【請求項2】
請求項1記載の合成樹脂製ボトルにおいて、前記胴部は四角筒状であることを特徴とする合成樹脂製ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲料や液体調味料等の液状内容物を収容する合成樹脂製ボトルとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の合成樹脂からなるものが用いられている。
【0003】
前記合成樹脂製ボトルでは、前記液状内容物を充填する際に、例えば、殺菌のために約85℃程度の高温に加熱した該液状内容物を充填し、口部にキャップを装着して内部を密封した後、冷却する所謂ホットパックが行われている。前記ホットパックでは、冷却に伴って前記合成樹脂製ボトルの内圧(以下、ボトル内圧と略記する)が減圧状態になると、該合成樹脂製ボトルの胴部が予期しない形状に不正変形する虞がある。
【0004】
そこで、前記液状内容物の冷却に伴う合成樹脂製ボトルの胴部の不正変形を防止するために、該胴部に該合成樹脂製ボトル内部の容積変化に対応して膨出変形と没入変形とを許容するパネル部を備える合成樹脂製ボトルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-137927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、無菌環境下で常温に近い前記液状内容物を前記合成樹脂製ボトルに充填する所謂アセプティック充填を行う場合には、冷却にともなうボトル内圧の変化が少ないため、前記胴部にパネル部を備えることを必要としない。
【0007】
このため、前記胴部にパネル部を備える前記合成樹脂製ボトルをアセプティック充填に用いるときにはデザイン的に好まれないことがある。また、前記胴部にパネル部を備える前記合成樹脂製ボトルは、胴部に凹凸を備えるため、その製造に用いる金型形状が複雑になるという問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、前記事情に鑑み、胴部にパネル部を備えることなく、ホットパック後の不正変形を防止することができ、ホットパックとアセプティック充填とのどちらにも対応することができる合成樹脂製ボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明の合成樹脂製ボトルは、円筒状の口部と、該口部の下端から下方に連続して次第に拡径する肩部と、該肩部の下端から下方に連続する胴部と、該胴部の下端を閉塞する底部とを備え、該口部に装着したキャップにより内部が密封される合成樹脂製ボトルにおいて、該胴部は、コーナー部を介して周方向に連接する複数の平坦壁部を備える多角筒状であり、該コーナー部は、互いに隣り合う平坦壁部の周方向端縁同士を繋ぐ面で構成され、該コーナー部に扇状部を備え、側面視で該胴部から該底部にかけて窄まる形状を備え、該胴部の各平坦壁部に、該平坦壁部の輪郭に沿って胴部から底部にかけて両者の間隔が次第に縮小する1対の縦リブを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の合成樹脂製ボトルは、前記胴部の平坦壁部の輪郭に沿う縦リブを備えており、該縦リブは結果的に前記コーナー部の両側に配置されている。このため、液状内容物をホットパック後、該液状内容物の冷却に伴って前記合成樹脂製ボトルの内部が減圧状態になると、前記平坦壁部の中央部が該合成樹脂製ボトル内部に凹入する一方、前記コーナー部の高さ方向の中央部が該合成樹脂製ボトルの外方に突出するように変形する。
【0011】
本発明の合成樹脂製ボトルは、前記平坦壁部と前記コーナー部との前記変形により、前記ホットパック後の減圧を吸収して前記胴部の不正変形を防止することができる。従って、本発明の合成樹脂製ボトルによれば、前記平坦壁部にパネル部を備えることなく、前記ホットパックに対応することができる。
【0012】
また、本発明の合成樹脂製ボトルは、前記胴部がコーナー部を介して周方向に連接する複数の平坦壁部を備えるので、アセプティック充填にも用いることができるデザイン性を備えている。
【0013】
本発明の合成樹脂製ボトルは、前記胴部は五角形以上の多角筒状であってもよいが、例えば四角筒状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】Aは本発明の合成樹脂製ボトルの構成を示す正面図、BはAの底面図。
図2図1Aに示す合成樹脂製ボトルを水平方向に45°回転した状態を示す側面図。
図3図1AのIII-III線断面図。
図4図1Aに示す合成樹脂製ボトルに液状内容物をホットパックし、冷却したときのボトル内圧と平坦壁部中央部の凹入量との関係を示すグラフ。
図5図1Aに示す合成樹脂製ボトルに液状内容物をホットパックし、冷却したときのボトル内圧とコーナー部の高さ方向中央部の突出量との関係を示すグラフ。
図6図1Aに示す合成樹脂製ボトルに液状内容物をホットパックし、冷却したときのボトル内圧とボトル内容積との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
図1Aに示すように、本実施形態の合成樹脂製ボトル1は、円筒状の口部2と、口部2の下端から下方に連続して次第に拡径する肩部3と、肩部3の下端から下方に連続する胴部4と、胴部4の下端を閉塞する底部5とを備える。口部2は、外周面に雄ねじ部6と、サポートリング7とを備え、雄ねじ部6に螺着される図示しないキャップにより内部が密封される。
【0017】
胴部4は、コーナー部8を介して周方向に連接する4つの平坦壁部9を備える四角筒状であり、コーナー部8は、互いに隣り合う平坦壁部9の周方向端縁同士を繋ぐ面で構成されている。各平坦壁部9は、その輪郭に沿う1対の縦リブ10を備える以外、パネル部等の凹凸は備えていない。
【0018】
図1Bに示すように、底部5は円環状の接地部11と、接地部11の内周側で合成樹脂製ボトル1内部に膨出する凹部12とを備えており、この結果、合成樹脂製ボトル1が接地部11で自立可能とされている。コーナー部8は、胴部4側から底部5方向に向かって扇状に広がる扇状部8aを備えており、扇状部8aは円環状の接地部11に連接している。
【0019】
合成樹脂製ボトル1の胴部4は、正面視では図1Aに示すように四角形状であるが、コーナー部8が扇状部8aを備えることにより、図1Aに示す状態から45°回転した側面視では、図2に示すように、胴部4から底部5にかけて窄まる形状を備えている。胴部4が前記形状を備えることに伴って、1対の縦リブ10は胴部4から底部5にかけて両者の間隔が次第に縮小するようになっている。
【0020】
また、1対の縦リブ10は平坦壁部9の輪郭に沿って形成されているので、図3に示すように、結果的に1つの平坦壁部9の縦リブ10が隣接する平坦壁部9の縦リブ10との間にコーナー部8を挟むようになっている。
【0021】
次に、実施例として、容量250ml、高さ140mm、胴部4の対辺間の長さ54mm、対角間の長さ64mmの本実施形態の合成樹脂製ボトル1に、90℃に加熱した液状内容物としての温水を充填し、図示しないキャップを口部2の雄ねじ部6に螺着して、合成樹脂製ボトル1の内部を密封した後、5℃まで冷却したときに、合成樹脂製ボトル1のボトル内圧と、平坦壁部9の合成樹脂製ボトル1の内部への凹入量、コーナー部8の合成樹脂製ボトル1の外方への突出量及び合成樹脂製ボトル1の内容積との関係を調べた。また、比較例として、縦リブ10を全く備えない以外は本実施形態の合成樹脂製ボトル1と同一形状の合成樹脂製ボトル1を用いた以外は実施例と全く同一にして、該合成樹脂製ボトルのボトル内圧と、平坦壁部9の合成樹脂製ボトル1の内部への凹入量、コーナー部8の合成樹脂製ボトル1の外方への突出量及び合成樹脂製ボトル1の内容積との関係を調べた。
【0022】
尚、「平坦壁部9の合成樹脂製ボトル1の内部への凹入量」とは、合成樹脂製ボトル1内部の減圧が進むにつれ平坦壁部9が徐々に内側に緩やかに凹み、合成樹脂製ボトル1の内方に向かって凸状となったときの凸状の頂点となった部位の変化量をいう。また、「コーナー部8の合成樹脂製ボトル1の外方への突出量」とは、合成樹脂製ボトル1内部の減圧が進むにつれコーナー部8が外側へ押し出され、合成樹脂製ボトル1の外方に向かって凸状となったときの凸状の頂点となった部位の変化量をいう。
【0023】
ボトル内圧と平坦壁部9の中央部の該合成樹脂製ボトルの内部への凹入量との関係を図4に、ボトル内圧とコーナー部8の高さ方向中央部の該合成樹脂製ボトルの外方への突出量との関係を図5に、ボトル内圧と該合成樹脂製ボトルの内容積との関係を図6に、それぞれ示す。尚、図4~6では、合成樹脂製ボトルの内部への変化をプラス、合成樹脂製ボトルの外方への変化をマイナスで示している。
【0024】
図4~6から、本実施例の合成樹脂製ボトル1によれば、比較例の合成樹脂製ボトルに対し、平坦壁部9の中央部の合成樹脂製ボトル1の内部への凹入量と、コーナー部8の高さ方向中央部の合成樹脂製ボトル1の外方への突出量とが大きく、この結果として、合成樹脂製ボトルの内容積の減少が大きく、ホットパック後の冷却に伴うボトル内圧の減圧を容易に吸収できることが明らかである。
【0025】
尚、本実施形態の合成樹脂製ボトル1では、図3に示すように、コーナー部8を断面視Rのついた形状としているが、コーナー部8は断面視四角形の各頂角を面取りした形状であってもよい。また、平坦壁部9は、断面視四角形状を損なわない範囲で、外方に凸に湾曲していてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…合成樹脂製ボトル、 2…口部、 3…肩部、 4…胴部、 5…底部、 8…コーナー部、 9…平坦壁部、 10…縦リブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6