(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】履歴情報記憶装置、経路の算出方法、影響範囲配信システム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20220526BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20220526BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20220526BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20220526BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/0969
G09B29/00 A
G09B29/10 A
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2018030771
(22)【出願日】2018-02-23
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 隆昭
(72)【発明者】
【氏名】林 新
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特許第3884473(JP,B2)
【文献】特開2012-063160(JP,A)
【文献】特開平11-258981(JP,A)
【文献】特開2004-177246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/0969
G09B 29/00
G09B 29/10
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行履歴に関する履歴情報および複数の区画に区切られた地図データを格納する記憶部と
、
前記履歴情報を考慮して出発地から目的地までの経路を算出し、前記経路からの前記車両の逸脱した走行の履歴を前記履歴情報に記録するナビゲーション部と
、
前記地図データを更新する情報である第二地図データを受信する通信部と、
前記第二地図データを用いて前記地図データを更新する地図データ更新部と、
前記地図データ更新部により更新される前の前記地図データと、前記地図データ更新部により更新された後の前記地図データとを比較して前記地図データの変化を検出する変動検出部と、
前記複数の区画のうち前記変化が前記経路の算出に影響する区画を影響区画として決定する影響範囲決定部と、
前記影響区画に関する前記履歴情報を一時的に無効にする履歴情報制御部と、を備え、
前記変動検出部は、更新される前の前記地図データにおける道路を示すリンクと更新された後の前記地図データにおける道路を示すリンクとの対応関係を判定することで、道路の新設及び/又は道路種別の変更を前記地図データの変化として検出し、
前記影響範囲決定部は、新設された道路が存在する区画、前記道路種別が変更された道路が存在する区画、新設された道路及び/又は前記道路種別が変更された道路の代替経路が存在する区画のうち、すくなくともいずれかを前記影響区画として決定する履歴情報記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の履歴情報記憶装置であって、
前記ナビゲーション部は、前記車両が前記経路から逸脱して走行したリンクを前記履歴情報に記録し、
前記地図データにはリンクごとの道路種別が記録されており、
前記履歴情報制御部は、前記影響区画に含まれ、かつ前記リンクの前記道路種別が所定の種類である前記履歴情報を無効にする履歴情報記憶装置。
【請求項3】
請求項1に記載の履歴情報記憶装置であって、
前記ナビゲーション部は、前記車両が前記経路から逸脱して走行したリンクを前記履歴情報に記録し、
前記履歴情報制御部は、前記履歴情報における前記影響区画に含まれるリンクに関する記録を所定の期限を設けて一時的に無効化し、前記所定の期限までに前記車両が前記影響区画に含まれるリンクを前記経路から逸脱して走行しない場合は当該リンクに関する記録を前記履歴情報から削除し、前記所定の期限までに前記車両が前記影響区画に含まれるリンクを前記経路から逸脱して走行した場合は当該リンクに関する記録の無効化を解除する履歴情報記憶装置。
【請求項4】
請求項1に記載の履歴情報記憶装置であって、
前記ナビゲーション部は、前記車両が前記経路から逸脱して走行したリンクを前記履歴情報に記録し、
前記影響区画に含まれるリンクに関する前記履歴情報を前記第二地図データにあわせて書き換える履歴情報更新部をさらに備える履歴情報記憶装置。
【請求項5】
車両の走行履歴に関する履歴情報および複数の区画に区切られた地図データを格納する記憶部を備える演算装置が実行する経路の算出方法であって、
第二地図データを用いて前記地図データを更新することと、
前記第二地図データを用いて更新される前の前記地図データと、前記第二地図データを用いて更新された後の前記地図データとを比較して前記地図データの変化を検出することと、
前記複数の区画のうち前記変化が
前記経路の算出に影響する区画を影響区画として決定することと、
前記影響区画に関する前記履歴情報を一時的に無効にすることと、
前記履歴情報を考慮して出発地から目的地までの経路を算出し、前記経路からの前記車両の逸脱した走行の履歴を前記履歴情報に記録することと
、を含
み、
前記地図データの変化を検出する際に、更新される前の前記地図データにおける道路を示すリンクと更新された後の前記地図データにおける道路を示すリンクとの対応関係を判定することで、道路の新設及び/又は道路種別の変更を前記地図データの変化として検出し、
前記影響区画を決定する際に、新設された道路が存在する区画、前記道路種別が変更された道路が存在する区画、新設された道路及び/又は前記道路種別が変更された道路の代替経路が存在する区画のうち、すくなくともいずれかを前記影響区画として決定する、経路の算出方法。
【請求項6】
サーバおよび前記サーバと通信し車両に搭載される車載装置を含む影響範囲配信システムであって、
前記サーバは、
複数の区画に区切られた地図データを格納するサーバ記憶部と、
更新される前の前記地図データと更新された後の前記地図データとを比較して前記地図データの変化を検出する変動検出部と、
前記複数の区画のうち前記変化が
前記車両の経路の算出に影響する区画を影響区画として決定する影響範囲決定部と、
前記影響範囲決定部が決定した前記影響区画の情報を送信するサーバ通信部とを備え、
前記車載装置は、
前記車両の走行履歴に関する履歴情報を格納する記憶部と、
前記影響範囲決定部が決定した前記影響区画の情報を受信する影響範囲受信部と、
前記影響区画に関する前記履歴情報を一時的に無効にする履歴情報制御部と、
前記履歴情報を考慮して出発地から目的地までの経路を算出し、
当該経路からの前記車両の逸脱した走行の履歴を前記履歴情報に記録するナビゲーション部とを備え
、
前記変動検出部は、更新される前の前記地図データにおける道路を示すリンクと更新された後の前記地図データにおける道路を示すリンクとの対応関係を判定することで、道路の新設及び/又は道路種別の変更を前記地図データの変化として検出し、
前記影響範囲決定部は、新設された道路が存在する区画、前記道路種別が変更された道路が存在する区画、新設された道路及び/又は前記道路種別が変更された道路の代替経路が存在する区画のうち、すくなくともいずれかを前記影響区画として決定する影響範囲配信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履歴情報記憶装置、経路の算出方法、および影響範囲配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地図データを参照してドライバーに案内情報を提供する車載装置が広く知られている。また車載装置において、地図データに加えてユーザの走行履歴を記憶して案内に活用する機能も知られている。この機能はたとえば、走行中に車載装置が提示した進行方向とは異なる方向に車両が進行した場合に、この履歴を記憶しておくことでユーザが好む経路を学習する機能である。履歴情報は地図データを構成するリンクのIDと対応付けて記憶されるため、地図データが更新されてリンクのIDが変化すると、履歴情報が使えなくなる問題があった。そのため、地図データが更新されても履歴情報を使用可能にする技術が考案されている。
特許文献1には、地図データを読み出しながら該地図データの道路上を走行する車両に搭載されて、前記車両に対して走行中に行われた操作あるいは前記車両の挙動の少なくとも一方を含んだイベント情報を、前記道路上での車両位置に対応付けて記憶するイベント情報記憶装置であって、前記車両位置を取得する車両位置取得部と、前記車両が走行中の前記道路の形状を前記地図データから取得する道路形状取得部と、前記道路の形状を解析して形状的な特徴を抽出することにより、前記道路の特徴位置を検出する特徴位置検出部と、前記イベント情報を取得するイベント情報取得部と、前記イベント情報が取得された時点での前記車両位置を、前記特徴位置に対する相対位置に変換する車両位置変換部と、前記相対位置に変換された前記車両位置に対応付けて前記イベント情報を記憶するイベント情報記憶部とを備えるイベント情報記憶装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている発明では、最新の状況にあわせた経路の算出ができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様による履歴情報記憶装置は、車両の走行履歴に関する履歴情報および複数の区画に区切られた地図データを格納する記憶部と、前記地図データの変化を検出する変動検出部と、前記複数の区画のうち前記変化が影響する区画を影響区画として決定する影響範囲決定部と、前記影響区画に関する前記履歴情報を一時的に無効にする履歴情報制御部と、前記履歴情報を考慮して出発地から目的地までの経路を算出し、前記経路からの前記車両の逸脱した走行の履歴を前記履歴情報に記録するナビゲーション部と、を備える。
本発明の第2の態様による経路の算出方法は、車両の走行履歴に関する履歴情報および複数の区画に区切られた地図データを格納する記憶部を備える演算装置が実行する経路の算出方法であって、前記地図データの変化を検出することと、前記複数の区画のうち前記変化が影響する区画を影響区画として決定することと、前記影響区画に関する前記履歴情報を一時的に無効にすることと、前記履歴情報を考慮して出発地から目的地までの経路を算出し、前記経路からの前記車両の逸脱した走行の履歴を前記履歴情報に記録することとを含む。
本発明の第3の態様による影響範囲配信システムは、サーバおよび前記サーバと通信し車両に搭載される車載装置を含む影響範囲配信システムであって、前記サーバは、複数の区画に区切られた地図データを格納するサーバ記憶部と、前記地図データの変化を検出する変動検出部と、前記複数の区画のうち前記変化が影響する区画を影響区画として決定する影響範囲決定部と、前記影響範囲決定部が決定した前記影響区画の情報を送信するサーバ通信部とを備え、前記車載装置は、前記車両の走行履歴に関する履歴情報を格納する記憶部と、前記影響範囲決定部が決定した前記影響区画の情報を受信する影響範囲受信部と、前記影響区画に関する前記履歴情報を一時的に無効にする履歴情報制御部と、前記履歴情報を考慮して出発地から目的地までの経路を算出し、前記経路からの前記車両の逸脱した走行の履歴を前記履歴情報に記録するナビゲーション部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、履歴情報を維持しつつ最新の状況にあわせた経路の算出ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態における地図更新システムSの全体構成図
【
図2】
図2(a)は第一の地図データ600を可視化した図、
図2(b)は第二の地図データ700を可視化した図
【
図3】
図2(a)に可視化した第一の地図データ600の実データを示す図
【
図4】
図2(b)に可視化した第二の地図データ700の実データを示す図
【
図10】履歴情報記憶装置100の動作シーケンス図
【
図11】変動検出部130の動作を表すフローチャート
【
図12】
図11のステップS1314の詳細を示すフローチャート
【
図14】
図10のステップS1601の詳細を示すフローチャート
【
図15】
図10のステップS1401の詳細を示すフローチャート
【
図16】
図10のステップS1501の詳細を示すフローチャート
【
図17】ナビゲーション部110の動作を表すフローチャート
【
図18】
図18(a)は変形例1における道路の模式図であり、
図18(b)は
図18(a)に対応する影響範囲940を示す図である。
【
図19】
図19(a)は変形例2における道路の模式図であり、
図19(b)は
図19(a)に対応する影響範囲940を示す図である。
【
図20】第2の実施の形態における地図更新システムSaの全体構成図
【
図22】履歴情報記憶装置400の動作概要を説明する図
【
図24】動作シーケンスに対応する変動内容920、影響範囲940、および履歴情報900を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
―第1の実施の形態―
以下、
図1~
図17を参照して、地図更新システムSの第1の実施の形態を説明する。
【0009】
(動作の概要)
第1の実施の形態における地図更新システムSは、履歴情報を参照してユーザが好む経路を案内する機能を有する装置を備える。そしてこの装置は、地図データが更新されると履歴情報を引き継ぎつつ、更新により新たに設けられた道路を案内可能である。たとえば履歴情報をそのまま引き継いだ場合には案内がされない道路であっても、後述する工夫により新たに設けられた道路をユーザに案内できる。
【0010】
(システム構成)
図1は、第1の実施の形態における地図更新システムSの全体構成図である。地図更新システムSは、履歴情報記憶装置100と、地図データ配信サーバ200とを備え、これらは通信網300を介して互いに接続される。履歴情報記憶装置100は、いわゆるカーナビゲーション装置であり、履歴情報記憶装置100を搭載する車両の乗員(以下、「ユーザ」と呼ぶ)にナビゲーション情報を提供する。
【0011】
地図データ配信サーバ200は、地図データを配信する一連の処理を行う地図データ配信部210を有する制御部201と、第二の地図データ700を格納している記憶部202と、履歴情報記憶装置100と通信を行うための通信部206とを備える。第二の地図データ700は後述するように所定のサイズ、たとえば2km四方や10km四方の区画に分割されており、それぞれの区画に相当する情報を「更新データ」791と呼ぶ。
【0012】
地図データ配信部210は、専用のハードウェアとして実現してもよいし、制御部201が実行するソフトウェアモジュールとして実現してもよい。すなわち地図データ配信部210は特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit;ASIC)として実現されてもよいし、地図データ配信サーバ200がCPU,ROM、およびRAMを備え、中央演算装置であるCPUがROMに格納されたプログラムをRAMに展開して実行することにより地図データ配信部210の機能が実現されてもよい。
【0013】
履歴情報記憶装置100は、カーナビゲーション装置としての一連の処理を実行する制御部101と、第一の地図データ600、変動内容920、影響範囲940、および履歴情報900を格納する記憶部102と、ナビゲーション画面を表示する表示部103と、経路選択等の各種操作を行う操作部104と、位置情報等を取得するセンサ部105と、地図データ配信サーバ200と通信を行う通信部106とを備える。なお記憶部102に格納される変動内容920および影響範囲940は、制御部101が演算の過程で作成し参照するものであり、記憶部102には一時的に存在する。
【0014】
第一の地図データ600は、第二の地図データ700と同様に所定のサイズの区画に分割されており、それぞれの区画に相当する情報を「現データ」691と呼ぶ。また第一の地図データ600および第二の地図データ700は、情報の新旧を区別できるように便宜的に名付けたものであり構造的な違いはない。本実施の形態では、履歴情報記憶装置100に格納される地図データを第一の地図データ600と呼び、第二の地図データ700を用いて第一の地図データ600を更新したものを「更新後の第一の地図データ600」と呼ぶ。
【0015】
制御部101は、専用のハードウェアとして実現してもよいし、ソフトウェアモジュールとして実現してもよい。また制御部101をハードウェアとソフトウェアモジュールの両方で実現してもよい。記憶部102は、不揮発性の記憶装置、たとえばフラッシュメモリである。表示部103は、たとえば液晶ディスプレイである。操作部104は、たとえば複数のボタンである。センサ部105は、たとえばGPS受信機であり、衛星航法システムを構成する複数の衛星から電波を受信し、その電波に含まれる信号を解析することで自車両の位置、すなわち緯度と経度を算出する。
【0016】
制御部101は、ナビゲーション部110と、地図データ更新部120と、変動検出部130と、影響範囲決定部140と、履歴情報制御部150と、履歴情報更新部160とを備える。ナビゲーション部110は、既知のアルゴリズムにより履歴情報900を考慮して出発地から目的地までの経路計算、および経路計算の結果に基づく誘導案内を表示部103に出力する。履歴情報900を考慮した経路計算とは、たとえば履歴情報900に記載されているリンクは通行するコストを通常よりも低く見積もり、そのリンクを通行する機会が多くなるように調整された経路計算である。また後述するように履歴情報900にはリンクごとの走行回数も記載されるので、走行回数が多いリンクほど算出した経路に含まれやすくする。
【0017】
地図データ更新部120は、第一の地図データ600を更新する。変動検出部130は、第一の地図データ600に含まれる現データ691と第二の地図データ700に含まれる区画791を比較して地図データの変動を検出する。影響範囲決定部140は、変動検出部130が検出した変動が影響する範囲を決定する。履歴情報制御部150は、影響範囲内の履歴情報の扱いを制御する。履歴情報更新部160は、第一の地図データ600の更新時に履歴情報900に含まれるリンクのIDを、更新の前後で同一のリンクを指すように必要に応じて書き換える。以下では、同一のリンクを指すようにリンクのIDを書き換えることを「承継」とも呼ぶ。
【0018】
(地図データの可視化)
図2(a)は第一の地図データ600を可視化した図、
図2(b)は第二の地図データ700を可視化した図である。なお
図2(a)および
図2(b)は以降の本実施の形態の説明のために便宜的に示したものであり、
図2(a)および
図2(b)に示す画像が第一の地図データ600や第二の地図データ700として格納されているわけではない。
【0019】
第一の地図データ600および第二の地図データ700は前述のとおり複数の区画で構成されており、これらの区切りは同一である。
図2(a)および
図2(b)は符号691で示す区画T11を含む9つの区画、すなわち区画T11以外に区画T12、T13、T21、T22、T23、T31、T32,T33を示している。たとえば
図2(a)における区画T11と
図2(b)における区画T11は地理的に同一の領域、たとえば緯度の範囲および経度の範囲が同一の領域を示している。
【0020】
図2(a)および
図2(b)において、線は道路を構成するリンクを、点はリンク同士を結ぶノードを示している。リンクの近傍に記載しているL1やL2などの記号は、そのリンクを識別する番号(以下、「リンクID」と呼ぶ)であり、区画内でユニークな値である。リンクIDは所定の規則にしたがって、たとえば下端が図示下方左側に存在するリンクのリンクIDを「1」とし、1度目の分岐までは連番を付し2度目の分岐以降は連番を付さずL1の次に下方に存在するリンクIDを付与していないリンクに次のIDを付与する。
【0021】
図2(a)に示す第一の地図データ600と、
図2(b)に示す第二の地図データ700とを比較すると、第二の地図データ700には、第一の地図データ600には存在しない道路が新設されている。新設された道路は、第二の地図データ700における区画T11のリンクL1~L3などである。前述のとおり、リンクIDは所定の規則にしたがって付与されるので、従前のリンクIDとは同一でない場合がある。たとえば
図2(a)と
図2(b)とでは、区画T11のリンクL1は異なる。
【0022】
なお、
図2(a)および
図2(b)は、区画T11に出発地111、区画T33に目的地112を示している。出発地111および目的地112は、以降の説明のために便宜上記載しているにすぎず、第一の地図データ600および第二の地図データ700には含まれない。
【0023】
(第一の地図データ600の構成)
図3は、
図2(a)に可視化した第一の地図データ600の実データを示す図である。第一の地図データ600は、複数のレコードから構成され、各レコードは、区画ID601、リンクID602、始点座標603、終点座標604、道路種別605、およびコスト606のフィールドを有する。各レコードには異なるリンクの情報が格納される。ただしリンクIDは前述のとおり区画ごとにユニークであり、異なる区画とはIDの番号が重複する。そのため
図3に示す第一の地図データ600では、各レコードは区画ID601とリンクID602の組み合わせたものが他のレコードと重複しない情報である。なお後述する処理では、始点座標603のX座標をX_S、Y座標をY_Sで表し、終点座標604のX座標をX_E、Y座標をY_Eで表し、道路種別605をAで表し、およびコスト606をCで表す。
【0024】
区画ID601のフィールドには、前述の区画ID、たとえばT11などが格納される。リンクID602のフィールドには、前述のリンクID、たとえばL1などが格納される。始点座標603および終点座標604のフィールドには、リンクの始点および終点について、各区画の左下を(0、0)、右上を(100、100)とする座標系における値が格納される。なお、ある区画の座標(100、100)は、その区画の右上に存在する区画の座標(0、0)と同一の位置を示す。
【0025】
道路種別605のフィールドには道路の種別を示す値が格納される。値と道路の種別の対応は、たとえば、「2」は国道、「3」は県道、「4」は市町村道、「5」は細街路を示す。なお細街路は、道幅が狭いなどの理由により、土地勘のない人からは敬遠される傾向にある。そのためユーザが履歴情報記憶装置100の案内とは異なる細街路を通行した場合には、ユーザがその細街路についてよく知っているとの推測ができる。コスト606のフィールドには、リンクの通過に要するコストを示す値が格納される。このコストは、値が大きいほどそのリンクの通過に時間を要することを意味する。
【0026】
(第二の地図データ700の構成)
図4は、
図2(b)に可視化した第二の地図データ700の実データを示す図である。第二の地図データ700のフィールド構成は第一の地図データ600と同一である。なお
図4の右端に示す備考707は、以降の説明の便宜上、各リンクと第一の地図データ600のリンクの対応関係を記載しているものであり、第二の地図データ700に収録される情報ではない。なお後述する処理では、始点座標703のX座標をX_S’、Y座標をY_S’で表し、終点座標704のX座標をX_E’、Y座標をY_E’で表し、道路種別705をA’で表し、およびコスト706C’で表す。
【0027】
たとえば第一の地図データ600には存在せず第二の地図データ700には存在するリンクは備考707のフィールドの値が「新設」と記入され、第一の地図データ600と第二の地図データ700で同一のリンクIDが付与されるリンクは備考707のフィールドの値が「変化なし」と記入される。また第一の地図データ600と第二の地図データ700でリンクIDが変化した同一のリンクは、備考707のフィールドの値が「旧」と「以前のリンクID」の組み合わせとなる。たとえば第二の地図データ700における区画T11のリンクL4は、第一の地図データ600における区画T11のリンクL1と同一である。なおここでいう同一とは、少なくともリンクの始点座標が一致することを言う。
【0028】
(履歴情報900の構成)
図5は、履歴情報900の一例を示す図である。履歴情報900には、履歴情報記憶装置100が算出してユーザに提示した経路から車両が逸脱して走行した履歴が格納される。すなわち仮にユーザが履歴情報記憶装置100が提示した経路しか走行しなかった場合には、履歴情報900には何ら記録されない。
図5(a)は履歴情報900に走行履歴のみが書き込まれた状態を示し、
図5(b)は
図5(a)に示す状態から第一の地図データ600の更新にともない追記された履歴情報900を示す。履歴情報900は複数のレコードから構成され、各レコードは区画ID901、履歴リンクID902、道路種別903、走行回数904、保留要因905、および有効期限906のフィールドを有する。区画ID901、履歴リンクID902、および道路種別903のフィールドには、第一の地図データ600や第二の地図データ700の区画ID、リンクID、および道路種別と同様の情報が格納される。
【0029】
図5(a)に示す履歴情報900の例では、
図2(a)および
図3に示す例に対応しており、区画T11のリンクL3および区画T33のリンクL5が履歴情報900に含まれている。そして前者の道路種別は「3」であり後者の道路種別は「5」である。たとえば
図5(a)に示す履歴情報900の1行目は、ナビゲーション部110は第一の地図データ600の区画T11においてリンクL1からリンクL2に向かう方向等、リンクL3を通らない経路を提示したが、車両はナビゲーション部110が提示した経路を逸脱してリンクL3に進行したことを示す。なお以下では、車両がナビゲーション部110の提示した経路を逸脱することを、「経路逸脱」と呼ぶ。
【0030】
走行回数904のフィールドには、ナビゲーション部110が提示した走行経路を逸脱して、そのレコードに記載されているリンクを走行した回数が格納される。保留要因905および有効期限906のフィールドには、地図更新が行われた後にナビゲーション部110がレコードを使用するか否かを判断するための情報が格納される。保留要因905のフィールドには、ナビゲーション部110がそのレコードを経路計算の際に考慮しないで一時的に無効化する要因、すなわち理由が格納される。有効期限906のフィールドには、レコードの削除を保留する期限が格納される。その期限までにユーザがそのレコードに記載された経路を経路逸脱により走行しない場合には、そのレコードは削除される。詳しくは後述する。
【0031】
(変動内容920の構成)
図6は変動内容920の一例を示す図である。変動内容920は、第一の地図データ600や第二の地図データ700の区画ごとに作成される。各区画の変動内容920は複数のレコードから構成され、各レコードは、更新リンクID921、対応リンクID922、および変動923のフィールドを有する。変動内容920のレコードの数は、第二の地図データ700におけるリンクの数に等しい。更新リンクID921のフィールドには、更新後の地図、すなわち第二の地図データ700におけるリンクのリンクIDが格納される。
【0032】
対応リンクID922のフィールドには、更新前の地図、すなわち第一の地図データ600において同一レコードの更新リンクID921のフィールドの値で特定されるリンクに対応するリンクのリンクIDが格納される。ただし第一の地図データ600に対応するリンクが存在しない場合は存在しない旨の表記、たとえばハイフンが記載される。変動923のフィールドには、変動の分類が記載される。分類はたとえば、新設、コスト変化、変化なしである。ただし
図6では変化がないことを単に「なし」と表記している。
【0033】
(影響範囲940の構成)
図7は影響範囲940の一例を示す図である。影響範囲940は、複数のレコードから構成され、各レコードは影響区画ID941、および要因942のフィールドを有する。影響区画ID941には、第一の地図データ600が更新された影響を受ける区画の区画IDが格納される。要因942には、影響を受ける要因、換言するとどのような変更があったかを示す情報が格納される。たとえば
図7に示す例では、区画IDT11および区画IDT33が道路新設の影響を受けることが示されている。
【0034】
(動作例)
図8および
図9を参照して、履歴情報記憶装置100の動作、および表示部103に表示される画像を説明する。
図8では履歴情報900が記録されることにより提示される経路の変化を示し、
図9は
図8に示した状況の続きとして、履歴情報900が記録されたのちに第一の地図データ600が第二の地図データ700に更新された後に提示される経路を示す。なお
図8および
図9では、
図2~
図7に例示した情報を参照する。
【0035】
(動作例:地図更新前)
図8は、車両が
図2に示した出発地111から目的地112まで走行する際の履歴情報記憶装置100の動作、具体的には表示部103に表示する画像を示す図である。ただし
図8では作図の都合により出発地111の記載を省略し、目的地112を星印として記載している。ただし
図8の当初の状態では履歴情報900には何も記録されていない。
【0036】
画面1031は、出発地111において表示部103に表示される画像である。画面1031では、ナビゲーション部110が既知の経路検索アルゴリズムにより、太線で示す経路を提示している。ナビゲーション部110は、第一の地図データ600のコスト606を参照して最短経路計算を行うことにより、経路を提示する。画面1031に示す経路は、出発地111から目的地112に至る経路のうち、コスト606の総和が最も少ない経路である。
【0037】
画面1032は、車両が進行して、経路とは異なる方向、すなわち第一の地図データ600における区画T11のリンクL3に相当する箇所に進行した直後において表示部103に表示される画像である。ナビゲーション部110は、経路逸脱が発生したため、車両の現在地から目的地112に至る最短経路として、太線で示す経路を提示している。
【0038】
画面1033は、車両がさらに進行して、再び経路とは異なる方向、すなわち第一の地図データ600における区画T33のリンクL5に相当する位置に進行した直後において表示部103に表示される画像である。ナビゲーション部110は、経路逸脱が発生したため、太線で示す新たな経路を提示している。このような経路逸脱が発生するたびに、経路逸脱時に車両が走行したリンクの履歴が履歴情報900に記録される。具体的には、履歴情報900に既に記録されているレコードのうち、いずれかのレコードの区画ID901、および履歴リンクID902の各フィールドの情報から特定されるリンク上の地点で経路逸脱が発生した場合は、履歴情報900において当該レコードの走行回数904のフィールドの値が1加算される。また履歴情報900に記録されていない地点で経路逸脱が発生した場合は、履歴情報900に新たなレコードが追加され、当該地点に対応するリンクの情報が区画ID901、履歴リンクID902および道路種別903の各フィールドに記録されると共に、走行回数904のフィールドの値に1が記録される。
図5(a)に示した履歴情報900は、
図8の画面1031から画面1033まで示した動作を5回繰り返したことを示している。
【0039】
画面1034は、このような動作を繰り返し履歴情報900が
図5(a)に示すものになった後に提示される画面を示したものである。ナビゲーション部110は、履歴情報900から車両の進行方向を学習した結果、出発地111から目的地112までの経路として、画面1031に示す最短経路ではなく、ユーザが通行した画面1034に示す経路を提示するようになる。
【0040】
(動作例:地図更新後)
図9は、履歴情報900に
図5に示す情報が格納されたのち、すなわちナビゲーション部110が
図8の画面1034に示す経路を提示するようになったのちに、第一の地図データ600が第二の地図データ700を用いて更新された場合の履歴情報記憶装置100の動作を示す図である。
図9は具体的には、
図8と同様に表示部103に表示する画像を示す図である。なお詳しくは後述するが、第一の地図データ600が第二の地図データ700を用いて更新されると履歴情報900の保留要因905および有効期限906のフィールドに書き込みが行われる。
【0041】
画面1036は、第一の地図データ600が更新された直後にナビゲーション部110が提示する経路である。履歴情報記憶装置100は、履歴情報900に経路逸脱が記録されているが、後述する理由により画面1036に示す経路を提示する。このとき履歴情報記憶装置100は、不図示のスピーカーを用いて、ユーザに「周辺の地図が更新されたため最新のルートで案内します」などの説明とともに経路を提示してもよい。
【0042】
画面1037は、車両が進行して経路逸脱した際に提示される経路である。詳細には、車両が区画T11のリンクL3に進行した際に提示される経路であり、まだ進行していない区画T33のリンクL5も通行する経路が提示される。
【0043】
(動作シーケンス図)
図10は、履歴情報記憶装置100が
図9に示した動作を行うための、地図更新時の動作シーケンス図である。地図データ更新部120は、まず地図データ配信サーバ200の地図データ配信部210から区画T11の更新データ791を取得するとともに、第一の地図データ600から区画T11の現データ691を読み込む(ステップS1201)。次に地図データ更新部120は、変動検出部130に、取得した更新データ791と現データ691とを送信する(ステップS1202)。これらのデータを送信した後で、地図データ更新部120は、更新データ791を第一の地図データ600に書き込む(ステップS1203)。
【0044】
変動検出部130は、更新データ791と現データ691とを受信すると、変動内容920を検出する(ステップS1301)。ステップS1301の詳細は
図11を用いて後述する。次に変動検出部130は、検出した変動内容920を、履歴情報更新部160に送信する(ステップS1302)。履歴情報更新部160は、受信した変動内容920を参照して、履歴情報900の更新処理を実行する(ステップS1601)。ステップS1601の処理の詳細は
図14を用いて後述する。履歴情報900を更新後、履歴情報更新部160は、変動検出部130に更新完了を通知する(ステップS1602)。
【0045】
変動検出部130は、更新完了を受信後、変動内容920を影響範囲決定部140に送信する(ステップS1303)。影響範囲決定部140は、受信した変動内容920を参照して、影響範囲940を決定する(ステップS1401)。ステップS1401の処理の詳細は
図15を用いて後述する。次に影響範囲決定部140は、決定した影響範囲940を履歴情報制御部150に送信する(ステップS1402)。履歴情報制御部150は、受信した影響範囲940を参照して、履歴情報900の保留処理を実行する(ステップS1501)。ステップS1501の詳細は
図16を用いて後述する。
【0046】
その後、車両の走行に応じて、ナビゲーション部110は、現在走行しているリンク(以降、走行リンクと呼ぶ)に関する情報を履歴情報制御部150に送信する(ステップS1101)。履歴情報制御部150は、受信した走行リンクに関する情報を参照して、走行リンクに関する履歴を履歴情報900から探し、履歴情報900の保留要因905および有効期限906を消去する処理を実行する(ステップS1502)。
【0047】
以上が第1の実施の形態の地図更新システムSの動作を示す全体シーケンスである。以降、個々の処理の詳細について説明する。
【0048】
(S1301の詳細)
図11は、
図10のステップS1301における、変動検出部130が実行する変動内容検出処理の詳細を示すフローチャートである。変動検出部130は、まず、ループ変数Iに1を代入し、変数Mに更新データ791に存在するリンク(以降、更新リンクと呼ぶ)の総数を格納する(ステップS1311)。なおループ変数Iの値は、
図6に示す変動内容920の処理対象の区画におけるレコードの番号に相当する。次に変動検出部130は、変動内容920の対応する区画のI行目のフィールドの変動923に「新設」を格納する(ステップS1312)。本ステップの処理は、変動923に格納される値のデフォルト値を「新設」とし、正しい値が「新設」ではない場合のみ正しい値で上書きすることを意図している。
【0049】
次に変動検出部130は、第2のループカウンタである変数Jに1を、変数Nに現データ691に存在するリンク(以降、現リンクと呼ぶ)の総数を格納する(ステップS1313)。次に変動検出部130は、I番目の更新リンク(以降、更新リンク(I)と呼ぶ)とJ番目の現リンク(以降、現リンク(J)と呼ぶ)の変動を判定する処理を実行する(ステップS1314)。この処理の詳細は
図12で後述する。次に変動検出部130は、変数Jに1を加算する(ステップS1315)。
【0050】
次に変動検出部130は、変数Jが変数Nを超える値であるか否かを判断し、変数Jが変数Nを超えないと判断する場合は、ステップS1314に戻り、処理を繰り返す(ステップS1316)。変動検出部130は変数Jが変数Nを超えると判断する場合は、変数Iに1を加算する(ステップS1317)。次に変動検出部130は、変数Iが変数Mを超える値であるか否かを判断し、変数Iが変数Mを超えないと判断する場合は、ステップS1312に戻り、処理を繰り返す(ステップS1318)。変動検出部130は、変数Iが変数Mを超えると判断する場合は、
図11に示す処理を修了する。
【0051】
(S1314の詳細)
図12は、
図11のステップS1314における、変動判定処理の詳細を示すフローチャートである。変動検出部130は、まず更新リンク(I)と現リンク(J)の差を計算する(ステップS1321)。この計算処理を、
図13を参照して説明する。
【0052】
図13は、ステップS1321の計算処理の概要を説明する図である。変動検出部130は、更新リンク911と現リンク912の組合せに対して、始点差913、終点差914、種別差915、およびコスト差916を計算する。始点差913は、更新リンク911の始点と現リンク912の始点の距離であり、双方のX座標とY座標から計算されるユークリッド距離を示す。同様に、終点差914は、更新リンク911の終点と現リンク912の終点の距離を示す。種別差915は、更新リンク911の道路種別と現リンク912の道路種別の差の絶対値を示す。コスト差916は、更新リンク911のコストと現リンク912のコストの差の絶対値を示す。
【0053】
図3および
図4に示す記号を用いて始点差913、終点差914、種別差915、およびコスト差916は以下の数式1~4のように表される。
始点差=SQRT{(X_S-X_S’)^2+(Y_S-Y_S’)^2}・・(1)
終点差=SQRT{(X_E-X_E’)^2+(Y_E-Y_E’)^2}・・(2)
種別差=ABS{A-A’}・・(3)
コスト差=ABS{C-C’}・・(4)
ただしSQRTは平方根演算を表し、ABSは絶対値演算を表す。
【0054】
図12に戻り、変動判定処理の説明を続ける。ステップS1321の後、変動検出部130は、
図13の種別差915が0であるか否かを判断し、0ではないと判断する場合は変動判定処理を終了する(ステップS1322)。種別差915が0であると判断する場合には変動検出部130は、始点差913が一定の閾値L未満であるか否かを判断する(ステップS1323)。なお、閾値Lは、ノードの始点または終点を同一とみなすか否かを判断する閾値であり、たとえば1などである。始点差913がL未満であると判断する場合には変動検出部130は、対応リンク(I)、すなわち
図6における変動内容920のいずれかの区画におけるI行目の対応リンク922のフィールドの値に、現リンク(J)のリンクIDを格納する(ステップS1324)。
【0055】
ステップS1323において始点差913がL未満ではないと判断する場合には変動検出部130は、終点差914がL未満であるか否か判定し、終点差914がL未満ではないと判断する場合は変動判定処理を終了する(ステップS1325)。終点差914がL未満である場合、対応リンク(I)に現リンク(J)のリンクIDを格納するとともに、現リンク(J)の分割であることを意味する情報を格納する(ステップS1326)。次に、ステップS1324、あるいはステップS1326の後に変動検出部130は、コスト差916が一定の閾値Q未満か判定する(ステップS1329)。なお、閾値Qは、コストを同一とみなすかどうかの閾値であり、たとえば1などである。
【0056】
コスト差916がQ未満ではないと判断する場合には変動検出部130は、変動(I)に「コスト変化」を格納して変動判定処理を終了する(ステップS1330)。ステップS1329においてコスト差916がQ未満である場合と判断する場合には変動検出部130は、変動(I)に「なし」を格納して、変動判定処理を終了する(ステップS1331)。以上が変動判定処理の説明である。
【0057】
(S1601の詳細)
図14は、
図10のステップS1601における、履歴情報更新部160が実行する履歴情報更新処理の詳細を示すフローチャートである。履歴情報更新部160は、まず、第1のループ変数Iに1を、変数Mに
図5(a)に示した履歴情報900の行数(以下、「履歴リンク数」と呼ぶ)を格納する(ステップS1611)。次に履歴情報更新部160は、第2のループ変数Jに1を、変数Nに
図6に示した変動内容920の行数(以下、「更新リンク数」と呼ぶ)を格納する(ステップS1612)。
【0058】
次に履歴情報更新部160は、履歴リンク(I)、すなわち
図5(a)に示す履歴情報900のI行目の履歴リンク902と対応リンク(J)、すなわち
図6に示す変動内容920の処理対象の区画におけるJ行目の対応リンク922が同一か否かを判断する(ステップS1613)。履歴リンク(I)と対応リンク(J)とが同一ではないと判断する場合は、履歴情報更新部160は変数Jに1を加算する(ステップS1614)。
【0059】
次に履歴情報更新部160は、変数Jが変数Nよりも大きいか否かを判断し、変数Jが変数N以下であると判断する場合は、ステップS1613に戻り、処理を繰り返す(ステップS1615)。変数Jが変数Nよりも大きいと判断する場合は、履歴情報更新部160は履歴リンク(I)にリンクが地図更新によって消失したことを示す値を格納する(ステップS1617)。
【0060】
ステップS1613において履歴リンク(I)と対応リンク(J)が同一であると判断する場合は、履歴情報更新部160は履歴リンク(I)に更新リンク(J)のリンクIDを格納する(ステップS1616)。なおこの処理は、履歴リンク(I)に対応する地図更新後のリンクは、更新リンク(J)であることを意味する。ステップS1617またはステップS1616の後に履歴情報更新部160は、変数Iに1を加算する(ステップS1618)。次に履歴情報更新部160は、変数Iが変数Mよりも大きいか否かを判断し、変数Iが変数M以下であると判断する場合は、ステップS1612に戻り、処理を繰り返す(ステップS1619)。履歴情報更新部160はステップS1619において変数Iが変数Mよりも大きいと判断する場合は、履歴情報更新処理を終了する。
【0061】
(S1401の詳細)
図15は、
図10のステップS1401における、影響範囲決定部140が実行する影響範囲決定処理の詳細を示すフローチャートである。影響範囲決定部140は、まず、ループ変数Iに1を格納し、変数Mに
図6に示した変動内容920の処理対象の区画における行数(以下、「更新リンク数」と呼ぶ)を格納する(ステップS1411)。次に影響範囲決定部140は、変動(I)が「新設」であるか否かを判断(ステップS1412)する。変動(I)が「新設」であると判断する場合には影響範囲決定部140は、影響範囲940に処理対象の区画を影響区画とし、要因を道路新設とするレコードを追加して、影響範囲決定処理を終了する(ステップS1415)。すなわちステップS1415では区画内に新設道路が存在する場合に、その区画自体を影響範囲とする。
【0062】
S1415の処理によりたとえば、
図7に示す情報が影響範囲940の影響区画941および要因942のフィールドにそれぞれ書き込まれる。変動(I)が「新設」ではないと判断する場合には影響範囲決定部140は、変数Iに1を加算する(ステップS1413)。次に影響範囲決定部140は、変数Iが変数Mよりも大きいか否かを判断し、変数Iが変数M以下であると判断する場合は、ステップS1412に戻り処理を繰り返す(ステップS1414)。変数Iが変数Mよりも大きいと判断する場合には影響範囲決定部140は、影響範囲決定処理を終了する。
【0063】
(S1501の詳細)
図16は、
図10のステップS1501における、履歴情報制御部150が実行する履歴情報保留処理の詳細を示すフローチャートである。履歴情報制御部150は、まず、第1のループ変数Iに1を格納し、変数Mに
図7に示した影響範囲940の行数(以下、「影響区画数」と呼ぶ)を格納する(ステップS1511)。次に履歴情報制御部150は、第2のループ変数Jに1を格納し、変数Nに
図5に示した履歴情報900の行数(以下、「履歴リンク数」と呼ぶ)を格納する(ステップS1512)。
【0064】
次に履歴情報制御部150は、区画(J)と影響区画(I)が同一であり、かつ、道路種別(J)、たとえば
図5に示す履歴情報900のJ行目の道路種別903が4未満であるか否かを判定する(ステップS1513)。区画(J)と影響区画(I)の同一性は、たとえば
図5に示す履歴情報900のJ行目の区画901と、
図7に示す影響範囲のI行目の影響区画941とが同一か否かにより判断できる。また道路種別903が4未満であるとは、その道路が国道または県道であることを示している。
【0065】
履歴情報制御部150はS1513において前述の条件を満たすと判断する場合は、保留要因(J)に要因(I)を格納し、有効期限(J)に現在から1カ月後の日付を格納する(ステップS1514)。具体的には、
図5に示す履歴情報900のJ行目の保留要因905に
図7に示す影響範囲のI行目の要因942を格納し、
図5に示す履歴情報900のJ行目の有効期限906に現在から1カ月後の日付を格納する。これにより、履歴情報900においてJ行目のレコードを一時的に無効化し、ナビゲーション部110が履歴情報900を考慮した経路計算を行う際には、そのレコードの走行回数904の値が無視されるように設定する。
【0066】
ステップS1513で否定判断されたのち、またはステップS1514の次に履歴情報制御部150は、変数Jに1を加算する(ステップS1515)。次に履歴情報制御部150は、変数Jが変数Nよりも大きいか否かを判断し、変数Jが変数N以下であると判断する場合は、ステップS1513に戻り、処理を繰り返す(ステップS1516)。変数Jが変数Nよりも大きいと判断すると履歴情報制御部150は、変数Iに1を加算する(ステップS1517)。次に履歴情報制御部150は、変数Iが変数Mよりも大きいか否かを判断し、変数Iが変数M以下であると判断する場合は、ステップS1512に戻り、処理を繰り返す(ステップS1518)。変数Iが変数Mより大きいと判断する場合には履歴情報制御部150は、履歴情報保留処理を終了する。
【0067】
図5(b)に示す履歴情報900は、
図16で説明した履歴情報保留処理により書き換えられた履歴情報900である。
図5(a)に示す履歴情報900と比較して、履歴リンク902の値が第二の地図データ700に応じた値に修正されている。また
図5(b)では、保留要因905および有効期限906に値が格納されている。
【0068】
(ナビゲーション部110の動作)
図17を参照してナビゲーション部110による経路算出の前処理、すなわちナビゲーション部110による履歴情報900の取り扱いを説明する。ナビゲーション部110は、ユーザから経路検索の指示を受けると
図17に示す処理を開始する。まずナビゲーション部110は、履歴情報900に格納された全レコードを対象として、1レコードずつ順番に処理対象としてステップS1911からステップS1916までの処理を実行する。ただしステップS1911およびステップS1916では具体的な処理は行わない。また履歴情報900にレコードが1つも格納されていない場合はステップS1920を実行する。
【0069】
ステップS1911の次に実行されるステップS1912ではナビゲーション部110は、処理対象のレコードは保留要因905のフィールドに何らかの値が記載されているか否かを判断する。ナビゲーション部110は、何らかの保留要因が記載されていると判断する場合はステップS1913に進み、保留要因が記載されていないと判断する場合はステップS1915に進む。なおステップS1912では、保留要因905の代わりに有効期限906のフィールドの値で判断してもよい。
【0070】
ステップS1912において肯定判断されると実行されるステップS1913ではナビゲーション部110は、処理対象のレコードにおいて有効期限906のフィールドに格納された期限を超過しているか否かを判断する。ナビゲーション部110は、期限を超過している、すなわち現在の日付が記載された期限よりも後の日付であると判断する場合はステップS1914に進み、否定判断する場合はステップS1916に進む。ステップS1914ではナビゲーション部110は、履歴情報制御部150に処理対象のレコードを履歴情報900から削除させてステップS1916に進む。
【0071】
ステップS1912において否定判断されると実行されるステップS1915では、ナビゲーション部110は処理対象のレコードを考慮対象に追加してステップS1916に進む。履歴情報900に含まれる全てのレコードについてステップS1911からステップS1916までの処理を実行すると、ナビゲーション部110はステップS1920に進む。ステップS1920ではナビゲーション部110は、ステップS1915において考慮対象に追加した履歴情報900のレコードを考慮して経路算出を行う。以上で
図17に示す処理を終了する。
【0072】
以上、
図1から
図17を用いて説明した処理により、履歴情報900は
図5(b)に示す値に修正される。ナビゲーション部110は、
図5(b)に示す履歴情報900を参照することにより、地図更新が行われた際に履歴情報を承継しつつ、
図9に示したように経路を提示することが可能となる。なお、
図9に示した動作例において、画面1036のように経路が提示される理由は
図5(b)に示す履歴情報900の1行目の参照が保留されているからである。また画面1037のように経路が提示される理由は、
図5(b)に示す履歴情報900の2行目の履歴リンク902が第二の地図データ700におけるリンクIDに修正されている、すなわち履歴情報が承継されているからである。
【0073】
上述した第1の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)履歴情報記憶装置100は、履歴情報900および区画に区切られた第一の地図データ600を格納する記憶部102と、第一の地図データ600の変化を検出する変動検出部130と、変化が影響する区画を決定する影響範囲決定部140と、履歴情報900のうち、影響する区画に関する履歴情報900を無効にする履歴情報制御部150と、履歴情報900を考慮した経路を算出し、算出した経路からの逸脱した走行の履歴を履歴情報900に記録するナビゲーション部110と、を備える。
【0074】
そのため、第一の地図データ600が更新された際に、変化が影響する区画の履歴情報900を一時的に無効にすることで最新の状況にあわせた経路を算出できる。たとえば第一の地図データ600が更新され、新設された道路の情報が追加された場合に、履歴情報記憶装置100は、その新設された道路を通行する経路を算出することができる。
【0075】
(2)ナビゲーション部110は、車両が経路から逸脱して走行したリンクを履歴情報900に記録する。第一の地図データ600にはリンクごとの道路種別が記録されている。履歴情報制御部150は、影響する区画に含まれ、かつリンクの道路種別が4未満、すなわち国道または県道である履歴情報を無効にする。経路逸脱が細街路や市町村道で発生した場合には、ユーザはそのリンクについて熟知していることが推測され、そのような道路についても履歴情報を無効にするのは適切でないと考えられるからである。
【0076】
(3)履歴情報記憶装置100は、第一の地図データ600を更新する情報である第二の地図データ700を受信する通信部106と、第二の地図データ700を用いて第一の地図データ600を更新する地図データ更新部120とを備える。変動検出部130は、地図データ更新部120により更新される前の第一の地図データ600と、地図データ更新部120により更新された後の第一の地図データ600とを比較して変化を検出する。そのため履歴情報記憶装置100は、地図の更新に伴う変化を検出することができる。
【0077】
(4)地図データの変化には道路の新設が含まれ、影響範囲決定部140は、新設された道路が存在する区画を影響範囲とする。そのため更新により新設された道路を含む区画は履歴情報900が一時的に無効にされるので、新設された道路を通行する経路を算出することができる。
【0078】
(5)ナビゲーション部110は、車両が経路から逸脱して走行したリンクを履歴情報900に記録する。履歴情報制御部150は、履歴情報900における影響する区画に含まれるリンクに関する記録を所定の期限を設けて一時的に無効化し(
図16のステップS1514)、所定の期限までに車両が区画に含まれるリンクを経路から逸脱して走行しない場合は区画に含まれるリンクを削除する(
図17のステップS1914)。履歴情報制御部150はさらに、所定の期限までに車両が区画に含まれるリンクを経路から逸脱して走行した場合は区画に含まれるリンクの無効化を解除する(
図10のステップS1502)。そのため第一の地図データ600を更新する前に蓄積した履歴情報900を有用に活用できる。詳述すると、履歴情報900にはリンクごとに走行回数が記録されているので、リンクの無効化を解除することで従前に記録した走行回数を引き継いで使用できる。
【0079】
(6)履歴情報記憶装置100は、影響する区画に関する履歴情報のリンクを第二地図データにあわせて書き換える履歴情報更新部160を備える。そのためリンクの追加や削除によりリンク番号が変化しても、履歴情報更新部160が適切なリンク番号に書き換えるので、履歴情報900を有効に活用できる。
【0080】
(変形例1)
第1の実施の形態では、新設されたリンクが含まれる区画を影響範囲とした。しかし影響範囲の決定方法はこれに限定されない。たとえば新設されたリンクだけでなく、道路種別が変更されたリンクを含む区画も影響範囲940に含めてよい。
【0081】
図18は、変形例1における影響範囲940の例を示す図である。
図18(a)は道路の模式図であり、
図18(b)は
図18(a)に対応する影響範囲940を示す図である。
図18(a)に示す符号951~符号953の3つの道路のうち、符号952と符号953で示す道路は従前から存在していた。符号951で示す道路は更新により追加、すなわち新設され、さらに符号952と符号953で示す道路は道路種別が県道から国道に変更された。
【0082】
このような状況において本変形例では、影響範囲は、新設された道路951を含む区画T13だけでなく、道路種別が変更された区画T23,T22,T32,およびT31も影響範囲940に含まれる。そのため影響範囲940には区画T13,T23,T22,T32,およびT31が含まれ、それらの要因942は道路が新設されたことにより道路種別が変更されたと考えると、全て「道路新設」となる。ただし道路の新設と道路種別の変更を独立した変化と考えて、T13のみを「道路新設」とし、T22,T23,T31,T32を「道路種別変更」としてもよい。
【0083】
本変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(7)地図データの変化には道路種別の変更が含まれる。影響範囲決定部140は、道路種別が変化した道路が存在する区画を影響範囲とする。従前から存在していた道路であっても道路種別の変化により通行量が変化することが考えられるので、影響範囲とすることで適切な経路を算出できる。
【0084】
(変形例2)
第1の実施の形態では、新設されたリンクが含まれる区画を影響範囲とした。しかし影響範囲に更新により直接の変化はないが影響を受けると考えられる区画を含めてもよい。たとえば新設された道路が代替経路となりうる道路を含む区画を影響範囲940に含めてもよい。
【0085】
図19(a)は道路の模式図であり、
図19(b)は
図19(a)に対応する影響範囲940を示す図である。
図18(a)に示す符号955および符号959で示す道路は従前から存在していた。符号954で示す道路は更新により追加、すなわち新設された。この場合に、第1の実施の形態によれば新設された道路、すなわち新設されたリンクが存在する区画T11,T12,およびT13のみが影響範囲940に含まれた。しかし本変形例では以下のように代替経路が存在する区画を影響範囲940に含める。
【0086】
影響範囲決定部140はまず、新設された道路954と既存の道路との交点である交点956と交点957に着目する。そして影響範囲決定部140は、交点956から交点957へ移動するための経路であって、新設された道路954を通過しない経路を算出する。このとき算出する経路は、コストが最小となる経路だけでもよいし、コストが低い順に複数個、たとえば3つの経路を算出してもよい。たとえばコストが最小となる経路だけを算出すると、符号959で示す道路が算出される。
【0087】
そのため、代替経路をコストが最小の経路とする場合は、影響範囲940は
図19(b)に示すものとなる。すなわち影響区画ID941には、新設された道路954が存在する区画T11,T12,T13に加えて、代替経路が存在する区画T21,T22,T23が格納される。そしてこれら全てについて、要因942は道路新設となる。
【0088】
本変形例によれば、次の作用効果が得られる。
(8)影響範囲決定部140は、変化が検出された道路の代替経路が存在する区画を影響範囲とする。そのためあるリンク自体に変化はないが他の箇所で変化があった影響が波及することを想定し、直接は変化がなかった区画も影響範囲とすることができる。
【0089】
(変形例3)
上述した第1の実施の形態では、履歴情報900の有効期限906のフィールドの値を参照して、現在の日付が有効期限906を超過している場合にそのレコードを削除した。しかし有効期限906の経過を待たなくても、所定の条件を満たす場合にそのレコードを削除してもよい。所定の条件とはたとえば、区画ID901および履歴リンクID902により特定される地点において車両がナビゲーション部110の提示する進行方向に沿って走行した回数、すなわち経路逸脱しなかった回数が一定の回数以上になることである。
【0090】
(変形例4)
上述した第1の実施の形態では、
図17のステップS1914に示したように、ナビゲーション部110が主体となって期限を超過したレコードを特定して履歴情報制御部150に削除させた。しかし履歴情報制御部150が所定のタイミング、たとえば1日のうち最初に起動されたタイミングで履歴情報900の全レコードを読み込み、期限を超過したレコードを特定して削除してもよい。
【0091】
(変形例5)
上述した第1の実施の形態では、リンクの始点の位置が所定の範囲内であるか否かにより同一のリンクであるか否かを判断した。しかしリンクの始点の位置だけでなく、地図上での傾きを考慮して同一のリンクであるか否かを判断してもよい。地図上での傾きとは、たとえば南北方向に延びるリンクを角度0度、東西方向に延びるリンクを角度90度とする評価の方法である。
【0092】
(変形例6)
上述した第1の実施の形態では、道路種別に高速道路が含まれなかったが、高速道路は国道と同様に扱ってもよい。また
図16のステップS1513において、道路種別が4未満であるか否かを判断したが、4以下であるかを判断してもよい。すなわち細街路とその他を分類してもよい。また道路種別は道幅を基準として設定してもよい。その場合は道幅が広いほど道路種別の値が小さくなり、道幅が狭いほど道路種別の値が大きくなる。
【0093】
―第2の実施の形態―
図20~
図24を参照して、地図更新システムSの第2の実施の形態を説明する。以下の説明では、第1の実施の形態と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、第1の実施の形態と同じである。本実施の形態では、主に、サーバにおいて変動要因および影響範囲が検出される点、および地図の更新に伴うリンクの増減を想定しない点で、第1の実施の形態と異なる。本実施の形態では、リンクのコストが変化することを想定する。
【0094】
図20は、第2の実施の形態における影響範囲配信システムSaの全体構成図である。履歴情報記憶装置400と、影響範囲配信サーバ500とが通信網300を介して接続される。履歴情報記憶装置400は、第1の実施の形態における履歴情報記憶装置100と比較して、地図データ更新部120、変動検出部130、影響範囲決定部140、履歴情報更新部160が削除され、影響範囲受信部170が追加されている。影響範囲配信サーバ500は、第1の実施の形態における地図データ配信サーバ200と比較して、地図データ配信部210、第二の地図データ700が削除され、全データ比較部510、変動検出部520、影響範囲決定部530、第一の地図データ600、第三の地図データ800、および変動要因DB990が追加されている。第一の地図データ600および履歴情報900の構成は、第1の実施の形態と同様である。
【0095】
図21は、
図20に示した第三の地図データ800の構成と格納される情報を示す図である。第三の地図データ800の構成は第一の地図データ600の構成と同一である。第三の地図データ800に格納される情報は、第一の地図データ600とほぼ同一であり、区画IDがT22,リンクIDがL2のレコードにおいてコスト806のフィールドの値が「2」である点のみが異なる。なお
図21では相違するフィールドを明示するために矢印を追記している。
【0096】
第2の実施の形態の履歴情報記憶装置400は、第1の実施の形態の
図8で示した動作を行うことにより、記憶部102には第1の実施の形態と同様に
図5に示した履歴情報900が記録される。
【0097】
(履歴情報記憶装置400の動作概要)
図22は、履歴情報記憶装置400が影響範囲配信サーバ500から影響範囲940を受信した際に、車両が
図2に示した出発地111から目的地112まで走行する際の履歴情報記憶装置400の動作概要を説明する図である。画面1038は、影響範囲940を受信後にナビゲーション部110が算出して提示する経路である。これまでの履歴情報900に従って経路を提示する場合は
図8の画面1034に示した経路が提示されるが、本実施の形態では、履歴情報900に基づいて算出した経路ではなく画面1038に示す経路を提示する。また履歴情報記憶装置400は、履歴情報900に基づいて算出した経路が示す進行方向を表示し、履歴情報900に基づいて算出した経路を提示するためのボタンである「いつものルートに切り替え」を表示している。
【0098】
画面1039は、「いつものルートに切り替え」ボタンがユーザにより押下されるとナビゲーション部110が表示する画面である。画面1039では
図8の画面1034と同様のルートを示しており、さらに画面1038に戻すためのボタンである「早い可能性があるルートに切り替え」を表示している。
【0099】
図23は、履歴情報記憶装置400において履歴情報900が修正されるまでの一連の動作シーケンス図である。まず、影響範囲配信サーバ500において、全データ比較部510は、第三の地図データ800から区画T11の更新データ891を読み込むとともに、第一の地図データ600から区画T11の現データ691を読み込む(ステップS5101)。次に全データ比較部510は、変動検出部520に、読み込んだ更新データ891と現データ691を送信する(ステップS5102)。変動検出部520は、更新データ891と現データ691を受信後、変動内容920を検出する処理を実行し、検出した変動要因を変動要因DB990に記録する(ステップS5103)。
【0100】
なお、変動内容検出処理の詳細は、第1の実施の形態と同様である。変動検出部520は、変動内容検出処理を第一の地図データ600に含まれる全区画に対して実行し、全区画の変動要因を変動要因DB990に記録する。次に、履歴情報記憶装置400において、影響範囲受信部170は、影響範囲配信サーバ500の影響範囲決定部530に対して、影響範囲を要求する(ステップS1701)。この要求には、影響範囲を要求する区画、たとえば履歴情報記憶装置400が存在する地点の周辺の区画などを示す情報が含まれる。
【0101】
次に影響範囲決定部530は、要求された区画の変動内容920を変動要因DB990から読み出し、読み出した変動内容920を参照して、影響範囲940を決定する(ステップS5301)。この処理の詳細は、第1の実施の形態の
図15を用いて説明した内容と同様である。次に影響範囲決定部530は、決定した影響範囲940を、履歴情報記憶装置400における影響範囲受信部170に送信する(ステップSS5302)。
【0102】
次に、影響範囲受信部170は、受信した影響範囲940を、履歴情報制御部150に送信する(ステップS1702)。履歴情報制御部150は、受信した影響範囲940を参照して、履歴情報900の保留処理を実行する(ステップS1501)。この処理の詳細は
図16を用いて説明した内容と同様である。その後、車両の走行に応じて履歴情報900が有効化される処理は、第1の実施の形態と同様である。
【0103】
図24は、
図23で説明した動作シーケンスにより生成される、区画T22における変動内容920、この変動要因による影響範囲940、およびこれらの情報に従って修正された履歴情報900を示す図である。変動内容920では、区画T22のリンクL2のコストが変動したことにより変動「コスト変化」が検出されている。影響範囲940では、区画T22のリンクL2のコストが変動したことにより、リンクL2に対応する道路を上り下りの両方向に交差点に至るまで追跡し、その道路を含む区画を影響範囲としている。履歴情報900では、
図18に示した第1の実施の形態の履歴情報900と比較して、履歴リンク902が変化していない点を除いて同一である。
【0104】
以上、
図20から
図24を用いて説明した処理により、履歴情報900は
図24に示す値に修正される。
図24に示す履歴情報900を参照することにより、ナビゲーション部110は、
図22に示した動作のように経路を提示することが可能となる。なお、
図22に示した動作例において、画面1038のように経路が提示される理由は
図24に示す履歴情報900の1行目の参照が保留されているからであり、画面1039のように経路が提示される理由は、
図24に示す履歴情報900の2行目の参照が保留されていないからである。
【0105】
上述した第2の実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(9)影響範囲配信システムSaは、影響範囲配信サーバ500および履歴情報記憶装置400を含む。影響範囲配信サーバ500は、区画に区切られた第一の地図データ600および第三の地図データ800を格納する記憶部202と、第一の地図データ600と第三の地図データ800との変化を検出する変動検出部520と、変化が影響する区画を決定する影響範囲決定部530と、影響範囲決定部530が決定した区画を送信する通信部206とを備える。履歴情報記憶装置400は、履歴情報900を格納する記憶部102と、影響範囲決定部530が決定した区画を受信する影響範囲受信部170と、影響範囲受信部170が受信した情報に基づき履歴情報900を一時的に無効にする履歴情報制御部150と履歴情報900を考慮して出発地から目的地までの経路を算出し、経路からの車両の逸脱した走行の履歴を履歴情報900に記録するナビゲーション部110とを備える。そのため影響範囲配信サーバ500と履歴情報記憶装置400とで役割を分担して、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0106】
上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
S、Sa…地図更新システム
100、400…履歴情報記憶装置
101…制御部
102…記憶部
103…表示部
110…ナビゲーション部
120…地図データ更新部
130…変動検出部
140…影響範囲決定部
150…履歴情報制御部
160…履歴情報更新部
170…影響範囲受信部
500…影響範囲配信サーバ
510…全データ比較部
520…変動検出部
530…影響範囲決定部
600…第一の地図データ
700…第二の地図データ
800…第三の地図データ