(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】木造建築物の補強構造及び補強方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20220526BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20220526BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
E04H9/02 321F
E04G23/02 D
F16F15/02 L
(21)【出願番号】P 2018035377
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小野 将臣
(72)【発明者】
【氏名】川畑 陽輔
(72)【発明者】
【氏名】高田 友和
(72)【発明者】
【氏名】安達 大悟
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-007935(JP,A)
【文献】特開2014-037741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の柱と、当該柱の上側で水平に配設される上横架材と、前記柱の下側で水平に配設される下横架材とで構成されるフレーム内に設けられ、
前記フレーム内の
上下の一方側若しくは左右の一方側に固定される1の支持部材、又は、前記フレーム内の上下の両側若しくは左右の両側にそれぞれ固定される2の支持部材と、
前記1の支持部材の場合に前記フレーム内の上下の他方側若しくは左右の他方側と前記1の支持部材との間に連結される制震部、又は、前記2の支持部材の場合に前記フレーム内の上下両側の前記2の支持部材の間若しくは左右両側の前記2の支持部材の間に連結される制震部と、を含んでなる木造建築物の補強構造であって、
前記1の支持部材の場合の前記制震部には、前記1の支持部材に連結される第1の制震部材と、前記第1の制震部材の連結側と反対側の前記フレームに連結される第2の制震部材と、前記第1の制震部材と前記第2の制震部材との間に連結されるダンパーとが設けられ、前記2の支持部材の場合の前記制震部には、一方の前記支持部材に連結される第1の制震部材と、前記第1の制震部材の連結側と反対側の他方の前記支持部材に連結される第2の制震部材と、前記第1の制震部材と前記第2の制震部材との間に連結されるダンパーとが設けられ、
前記一対の柱の間又は前記上横架材と前記下横架材との間には、前記支持部材に連結される前記制震部材における前記支持部材側の端部に前記フレームの片面側から接触
して前記制震部材の水平方向又は上下方向の移動を案内する規制材が架設されていることを特徴とする木造建築物の補強構造。
【請求項2】
前記
2の支持部材は、前記フレーム内の上側又は左右の何れか一方側に固定される第1の支持部材と、前記フレーム内の下側又は左右の他方側に固定される第2の支持部材
であり、
前記第1の制震部材が前記第1の支持部材に、前記第2の制震部材が前記第2の支持部材にそれぞれ連結され、
前記規制材は、前記制震部材における前記第1の支持部材側又は前記第2の支持部材側の一方の端部に架設されていることを特徴とする請求項1に記載の木造建築物の補強構造。
【請求項3】
前記規制材は、前記制震部材における前記第1の支持部材側及び前記第2の支持部材側の端部にそれぞれ架設されていることを特徴とする請求項2に記載の木造建築物の補強構造。
【請求項4】
前記一対の柱の間又は前記上横架材と前記下横架材との間には、前記フレームの他方の面側で前記支持部材と当接する当接材が架設されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の木造建築物の補強構造。
【請求項5】
前記フレームと前記支持部材とに跨がって補強材が連結されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の木造建築物の補強構造。
【請求項6】
前記ダンパーは粘弾性体であることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の木造建築物の補強構造。
【請求項7】
一対の柱と、当該柱の上側で水平に配設される上横架材と、前記柱の下側で水平に配設される下横架材とで構成されるフレームを含む木造建築物に、請求項2に記載の補強構造を施工する補強方法であって、
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを前記フレーム内に組み付ける工程では、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを一体化した状態で前記フレーム内に固定した後、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを分離して前記制震部の配置空間を形成することを特徴とする木造建築物の補強方法。
【請求項8】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との一体化は、両支持部材が繋がった状態で形成されるものであり、前記両支持部材の分離は、繋がった状態の切断によってなされることを特徴とする請求項7に記載の木造建築物の補強方法。
【請求項9】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との一体化は、両支持部材を連結する治具によってなされるものであり、前記両支持部材の分離は、前記治具の取り外しによってなされることを特徴とする請求項7に記載の木造建築物の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物に対して制震補強を施すための補強構造及び補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、相次ぐ震災の発生等に伴って防災意識が高まり、木造建築物においても耐震性や制震性を高めた構造とするケースが増加しつつある。特許文献1には、コンクリートの土台の上面に固定される下梁と、下梁より上方に伸びる一対の柱と、柱の上端に架設される上梁と、上梁の下面に固定される上側伝達部材と、下梁の上面に固定される高さ調整用の板材と、板材の上端に固定される下側伝達部材と、上側伝達部材と下側伝達部材との間に連結される油圧ダンパとからなり、壁内に組み込まれる制振装置の発明が開示されている。
しかし、既存の木造建築物に対して耐震性や制震性を付与する補強工事を行う場合、壁面や天井、床を構成する壁材や天井材、床材を剥がして柱や梁、土台等のフレームを露出させる必要があり、補強工事の完了後には改めて壁面や天井、床を張り直すことになるため、工費がかさむ上、工期も長くなる問題があった。
この問題に鑑み、特許文献2には、左右の柱の間に、間柱と、天井板よりも下方で柱と間柱との間に架設される上支持材と、床板よりも上方で柱と間柱との間に架設される下支持材と、柱に沿って固定される柱補強材と、上支持材と間柱と柱補強材と下支持材とで囲まれる空間内に取り付けられる平板等を含む制震部材とからなる制震装置を構成することで、天井や床を剥がすことなく建物のフレーム内に制震装置を取り付け可能とした補強構造の発明が開示されている。
また、特許文献3には、左右の柱の間に、天井高さよりも下方で上部ブラケットを、床面よりも上方で下部ブラケットをそれぞれ柱に沿った固定板を介して架設して、上部ブラケットと下部ブラケットとの間に、上部伝達部材及び下部伝達部材を介して油圧ダンパを支持してなる制震装置を組み込んだ補強構造の発明が開示されている。
さらに、特許文献4には、左右の柱の間にそれぞれ伝達板を固定し、伝達板の間でフレームの片面側に、一対のプレートとその間の粘弾性体とからなる制振ダンパーを取り付けた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5153440号公報
【文献】特開2014-237946号公報
【文献】特許第4041743号公報
【文献】実用新案登録第3204249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2,3の補強構造では、一対の柱の側面に柱補強材や固定板を設けてその内側に上支持材や上部ブラケットを架設し、上支持材や上部ブラケットに制震部材や上部伝達部材を固定する構造となっているため、柱に柱補強材や固定板を取り付ける手間や時間が必要となって工数の増加に繋がる。
特許文献4の構造では、制振ダンパーはフレームの片面から取り付けられるものの、制振ダンパーを固定する伝達板や結合金物は柱に固定されるため、フレームの奥側の面が壁材によって塞がっていると施工がしにくくなって作業性が悪くなる。また、作業性の悪化によって取付精度が低くなると、制振ダンパーに面外変形や回転変形が生じて制震性能が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、工数を削減して容易に施工可能とすると共に、制震部の面外変形や回転変形を防止して必要な制震性も確保することができる木造建築物の補強構造及び補強方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、一対の柱と、当該柱の上側で水平に配設される上横架材と、柱の下側で水平に配設される下横架材とで構成されるフレーム内に設けられ、
フレーム内の上下の一方側若しくは左右の一方側に固定される1の支持部材、又は、フレーム内の上下の両側若しくは左右の両側にそれぞれ固定される2の支持部材と、
1の支持部材の場合にフレーム内の上下の他方側若しくは左右の他方側と1の支持部材との間に連結される制震部、又は、2の支持部材の場合にフレーム内の上下両側の2の支持部材の間若しくは左右両側の2の支持部材の間に連結される制震部と、を含んでなる木造建築物の補強構造であって、
1の支持部材の場合の制震部には、1の支持部材に連結される第1の制震部材と、第1の制震部材の連結側と反対側のフレームに連結される第2の制震部材と、第1の制震部材と第2の制震部材との間に連結されるダンパーとが設けられ、2の支持部材の場合の制震部には、一方の支持部材に連結される第1の制震部材と、第1の制震部材の連結側と反対側の他方の支持部材に連結される第2の制震部材と、第1の制震部材と第2の制震部材との間に連結されるダンパーとが設けられ、
一対の柱の間又は上横架材と下横架材との間には、支持部材に連結される制震部材における支持部材側の端部にフレームの片面側から接触して制震部材の水平方向又は上下方向の移動を案内する規制材が架設されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、2の支持部材は、フレーム内の上側又は左右の何れか一方側に固定される第1の支持部材と、フレーム内の下側又は左右の他方側に固定される第2の支持部材であり、第1の制震部材が第1の支持部材に、第2の制震部材が第2の支持部材にそれぞれ連結され、規制材は、制震部材における第1の支持部材側又は第2の支持部材側の一方の端部に架設されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、規制材は、制震部材における第1の支持部材側及び第2の支持部材側の端部にそれぞれ架設されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかの構成において、一対の柱の間又は上横架材と下横架材との間には、フレームの他方の面側で支持部材と当接する当接材が架設されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかの構成において、フレームと支持部材とに跨がって補強材が連結されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れかの構成において、ダンパーは粘弾性体であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、一対の柱と、当該柱の上側で水平に配設される上横架材と、柱の下側で水平に配設される下横架材とで構成されるフレームを含む木造建築物に、請求項2に記載の補強構造を施工する補強方法であって、
第1の支持部材と第2の支持部材とをフレーム内に組み付ける工程では、第1の支持部材と第2の支持部材とを一体化した状態でフレーム内に固定した後、第1の支持部材と第2の支持部材とを分離して制震部の配置空間を形成することを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項7の構成において、第1の支持部材と第2の支持部材との一体化は、両支持部材が繋がった状態で形成されるものであり、両支持部材の分離は、繋がった状態の切断によってなされることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項7の構成において、第1の支持部材と第2の支持部材との一体化は、両支持部材を連結する治具によってなされるものであり、両支持部材の分離は、治具の取り外しによってなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、工数を削減して容易に施工可能となると共に、制震部の面外変形及び回転変形が防止されて必要な制震性も確保することができる。よって、木造建築物に対して簡易且つ信頼性の高い制震補強を施すことが可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、支持部材が2つ設けられているので、水平方向の変位が制震部へ安定して入力される。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加えて、規制材が各制震部材の端部にそれぞれ架設されているので、制震部の面外変形及び回転変形がより効果的に防止可能となる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の何れかの効果に加えて、フレームの他方の面側で支持部材と当接する当接材が架設されているので、当該他方の面側への制震部の面外変形が効果的に防止可能となる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4の何れかの効果に加えて、フレームと支持部材とに跨がって補強材を連結したことで、支持部材がフレームへより強固に固定される。
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の何れかの効果に加えて、ダンパーを粘弾性体としたことで、制震部の厚みがコンパクトとなり、厚みの薄いフレームであっても当該フレーム内へ容易に組み込むことができる。
請求項7に記載の発明によれば、第1の支持部材と第2の支持部材とをフレーム内に組み付ける工程では、第1の支持部材と第2の支持部材とを一体化した状態でフレーム内に固定した後、第1の支持部材と第2の支持部材とを分離して制震部の配置空間を形成するようにしているので、一体化した第1、第2の支持部材の固定と同時に第1、第2の支持部材を適正な位置に固定可能となる。よって、施工時の支えが不要となってフレームの片側から2つの第1、第2の支持部材を、良好な作業性で精度よく組み付けることができる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項7の効果に加えて、第1の支持部材と第2の支持部材との一体化を、両支持部材が繋がった状態で形成されるものとして、両支持部材の分離を、繋がった状態の切断によってなされるようにしたことで、現場のフレームの大きさ等に合わせて適正な配置空間を形成することができる。
請求項9に記載の発明によれば、請求項7の効果に加えて、第1の支持部材と第2の支持部材との一体化を、両支持部材を連結する治具によってなされるものとして、両支持部材の分離を、治具の取り外しによってなされるようにしたことで、治具を利用した第1、第2の支持部材の一体化と取り外しとが容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】フレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図2】補強体の説明図で、(A)は正面、(B)は側面をそれぞれ示す。
【
図3】補強体を組み込んだフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図4】補強体を固定したフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図5】規制材を架設したフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図6】補強方法の変更例1において一枚板を組み込んだフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図7】補強方法の変更例1において一枚板を固定したフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図8】補強方法の変更例1において規制材を架設したフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図9】補強方法の変更例1において一枚板の中間部分を切除したフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図10】補強方法の変更例2において治具で仮止めした第1、第2支持板の説明図で、(A)は正面、(B)は側面をそれぞれ示す。
【
図11】補強方法の変更例2における治具の説明図で、(A)は正面、(B)は側面をそれぞれ示す。
【
図12】補強方法の変更例2において仮止めした第1、第2支持板を組み込んだフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図13】補強方法の変更例2において第1、第2支持板を固定したフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図14】補強方法の変更例2において規制材を架設したフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図15】補強方法の変更例3において治具で仮止めした第1、第2支持板の説明図で、(A)は正面、(B)は側面をそれぞれ示す。
【
図16】補強方法の変更例3における治具の説明図で、(A)は正面、(B)は側面をそれぞれ示す。
【
図17】補強方法の変更例3において仮止めした第1、第2支持板を組み込んだフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図18】補強方法の変更例3において第1、第2支持板を固定したフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図19】補強方法の変更例3において規制材を架設したフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図20】補強方法の変更例3において制震部を取り付けたフレームの説明図で、(A)は正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図21】上下の補強金具を梁及び土台にそれぞれ固定した変更例を示すフレームの正面図である。
【
図22】既存の木造建築物のフレームに制震補強を施す変更例を示すフレームの正面図で、(A)は中間横架材を用いる例、(B)は中間横架材を用いない例をそれぞれ示す。
【
図23】補強構造の変更例の説明図で、(A)はフレームの正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【
図24】補強構造の変更例の説明図で、(A)はフレームの正面、(B)は右側の柱を省略した側面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、補強構造である制震補強を施すフレームの一例を示す正面図である。
このフレーム1は、上横架材としての梁2と、下横架材としての土台3と、梁2と土台3との間に鉛直方向に架設される一対の柱4,4とを備えてなる。フレーム1の背面側(
図1の紙面奥側)には、壁材5が設けられている。
このフレーム1内には、
図2に示す補強体10が配設される。この補強体10は、第1の支持部材としての第1支持板11Aと、第2の支持部材としての第2支持板11Bと、両支持板11A,11Bの間に連結される制震部12とからなる。
第1、第2支持板11A,11Bは、長手方向の一端側が、長手方向の中央まで左右の柱4,4の内法寸法よりもやや小さい幅を有する広幅部13と、長手方向の中央から他端側へ向けて先細りのテーパ状となるテーパ部14とを有する合板製である。両支持板11A,11Bは、テーパ部14,14同士が向かい合わせとなるように所定間隔をおいて互いに逆向きに配置されて、テーパ部14,14の間に配置された制震部12がテーパ部14,14と連結される。
【0010】
制震部12は、長手方向の一端が第1支持板11Aのテーパ部14の正面側に固定される第1の制震部材としての縦長矩形状の第1制震板15と、同じく長手方向の一端が第2支持板11Bのテーパ部14の正面側に固定される第2の制震部材としての縦長矩形状の第2制震板16と、第1制震板15と第2制震板16との重合部分に介在されて両制震板15,16に前後面が接着されるダンパーとしての横長矩形状の粘弾性体17(
図2(A)の点線網掛け部分)とを備えている。
両制震板15,16は、第1支持板11Aに釘やビス等の固定具18,18・・によって連結される連結部19と、互いに相手側と重合して粘弾性体17が接着される接着部20とをそれぞれ有する。また、連結部19と接着部20との間は、連結部19と接着部20とを厚み方向で段違いに位置させる折曲部21となっている。第1制震板15は、接着部20が連結部19よりも正面側に位置する向きで第1支持板11Aに取り付けられ、第2制震板16は、接着部20が連結部19よりも背面側に位置する向きで第2支持板11Bに取り付けられて、前後の接着部20,20間に接着される粘弾性体17は、両支持板11A,11Bの正面との延長面上に位置している。
【0011】
次に、フレーム1に対して制震補強を施す補強方法を説明する。
まず、
図1に示すように、壁材5の手前側で柱4,4の間に、帯板状の複数の当接材6,6・・を、上下方向に所定間隔をおいて水平に架設する。
次に、
図3に示すように、フレーム1内に補強体10を、第1支持板11Aが上側、第2支持板11Bが下側となる向きでフレーム1内に組み込んで、第1、第2支持板11A,11Bの背面がそれぞれ当接材6に当接するフレーム厚み方向の中央に位置決めする。この位置決め状態で第1支持板11Aの上端は梁2の下面に、第2支持板11Bの下端は土台3の上面にそれぞれ当接している。
次に、
図4に示すように、上側の第1支持板11Aの広幅部13の両端の角部を、それぞれ仕口部際で、補強材としての補強金具22,22によって、柱4,4の側面に釘やビス等の固定具18,18・・を用いて固定する。同様に下側の第2支持板11Bの広幅部13の両端の角部を、それぞれ仕口部際で補強金具22,22によって、柱4,4の側面に固定具18,18・・を用いて固定する。この補強金具22は、両支持板11A,11Bに固定具18で固定される正面部分が正方形状で、柱4側の辺には、正面側に折り曲げた接合部23を有している。この接合部23が補強体10の正面側で固定具18によってそれぞれ柱4に固定される。
【0012】
そして、
図5に示すように、補強体10の正面側で左右の柱4,4の間に、当接材6,6・・に正面側で重なる位置で水平な帯板状の規制材24,24・・を、上下方向に所定間隔をおいて補強体10と接触させて架設する(このうち制震部12を挟んで上下に位置する2本の規制材を特定するために規制材24A,24Bとする)。このとき、規制材24Aは、下端が第1制震板15の連結部19の上端に当接する位置で、第1支持板11Aのテーパ部14の正面と接触させて架設する。また、規制材24Bは、上端が第2制震板16の連結部19の下端に当接する位置で、第2支持板11Bのテーパ部14の正面と接触させて架設する。よって、制震部12は、上下の規制材24A,24Bによって挟まれた格好となる。
最後にフレーム1の正面側を図示しない壁材で塞げば制震補強は完了する。
【0013】
よって、このフレーム1においては、地震等によって水平方向に加振されて左右へ変形すると、フレーム1内の補強体10では、上側の第1支持板11Aと下側の第2支持板11Bとが水平方向へ相対変位する。これにより、両支持板11A,11Bとそれぞれ一体の第1、第2制震板15,16も互いに相対変位して粘弾性体17を水平方向に剪断変形させて、震動エネルギーを減衰させる。
このとき、フレーム1では、補強体10の前後に水平な当接材6と規制材24とがそれぞれ上下に配設されているため、補強体10の面外変形が抑制されて、制震部12に水平方向の変位が効率よく入力される。特に制震部12では、第1制震板15が規制材24Aによって、第2制震板16が規制板24Bによってそれぞれ水平移動が案内されるため、制震部12の回転変形が規制され、効果的な減衰性能が発揮される。
【0014】
このように、上記形態の木造建築物の補強構造及び補強方法によれば、制震部12には、第1支持板11Aに連結される第1制震板15と、第2支持板11Bに連結される第2制震板16と、第1制震板15と第2制震板16との間に連結される粘弾性体17とが設けられ、一対の柱4,4の間には、第1制震板15における第1支持板11A側の端部にフレーム1の正面側から接触する規制材24Aと、第2制震板16における第2支持板11B側の端部にフレーム1の正面側から接触する規制材24Bとがそれぞれ架設されているので、工数を削減して容易に施工可能となると共に、制震部12の面外変形及び回転変形が防止されて必要な制震性も確保することができる。よって、木造建築物に対して簡易且つ信頼性の高い制震補強を施すことが可能となる。
【0015】
特にここでは、規制材24Aと規制材24Bとが共に架設されているので、制震部12の面外変形及び回転変形がより効果的に防止可能となる。
また、一対の柱4,4の間には、フレーム1の背面側で第1、第2支持板11A,11Bと当接する当接材6が架設されているので、背面側への補強体10の面外変形が効果的に防止可能となる。
さらに、制震部12のダンパーを粘弾性体17としたことで、制震部12の厚みがコンパクトとなり、厚みの薄いフレーム1であっても当該フレーム1内へ容易に組み込むことができる。
加えて、フレーム1と第1、第2支持板11A,1Bとに跨がって、それぞれ補強金具22,22が連結されているので、第1、第2支持板11A,11Bがフレーム1へより強固に固定される。
【0016】
なお、上記形態の補強方法では、第1、第2支持板と制震部とからなる補強体を予め作製してフレームに組み込むようにしているが、施工手順はこれに限らない。以下、補強方法の他の例を説明する。
[補強方法の変更例1]
まず、
図6に示すように、第1、第2支持板11A,11Bが両者間で繋がった状態となる一枚板30を形成して、
図3と同様に、フレーム1内に一枚板30を、第1支持板11Aが上側、第2支持板11Bが下側となる向きで組み込んで、背面が当接材6に当接するフレーム厚み方向の中央に位置決めする。
次に、
図7に示すように、一枚板30の上下の角部を、補強金具22,22によってそれぞれ柱4,4に固定し、
図8に示すように、一枚板30の正面側で規制材24,24・・を架設する。
【0017】
次に、
図9に示すように、一枚板30において、制震部12が取り付けられる中間部分を切除して、固定された状態の第1、第2支持板11A,11Bを得る。そして、切除により形成される配置空間31に制震部12を配置して、第1制震板15の上端が規制材24Aに、第2制震板16の下端が規制材24Bにそれぞれ当接する状態で取り付ければ、補強体10が完成して
図5と同じ状態となる。最後にフレーム1の正面側を図示しない壁材で塞げば制震補強は完了する。
但し、この補強方法では、正面側の規制材24の架設を後にして、先に一枚板30の中間部分の切除と制震部12の取付とを行ってもよい。
【0018】
このように、補強方法の変更例1によれば、第1、第2支持板11A,11Bをフレーム1内に組み付ける工程では、第1、第2支持板11A,11Bを一体化した一枚板30としてフレーム1内に固定した後、一枚板30を分離して制震部12の配置空間31を形成するようにしているので、一枚板30の固定と同時に第1、第2支持板11A,11Bを適正な位置に固定可能となる。よって、施工時の支えが不要となってフレーム1の正面側から2つの第1、第2支持板11A,11Bを、良好な作業性で精度よく組み付けることができる。
特ここでは、第1、第2支持板11A,11Bの一体化を、両支持板11A,11Bが繋がった状態で形成されるものとして、両支持板11A,11Bの分離を、繋がった状態の切断によって行うようにしているので、現場のフレーム1の大きさ等に合わせて適正な配置空間31を形成することができる。
【0019】
[補強方法の変更例2]
ここでは
図10に示すように、第1、第2支持板11A,11Bを制震部12に代わる治具35で一時的に仮固定する。この治具35は、
図11にも示すように、両支持板11A,11Bの間の配置空間31に相当する大きさを有する正面視矩形状の板体で、上下辺には、両支持板11A,11Bのテーパ部14,14の上下端にそれぞれ当接して配置空間31を保持する一対の保持片36,36が、それぞれ背面側へ突設されている。また、治具35の上下辺には、上下のテーパ部14,14に正面側からそれぞれ当接する左右一対の当接片37,37がそれぞれ相反する上下方向に突設されている。この当接片37の突出端は、制震部12を取り付けた際の第1、第2制震板15,16の各連結部19の上下端と同じ位置となっている。当接片37,37には、固定具18等による仮止め用の透孔38,38がそれぞれ形成されている。すなわち、治具35の保持片36,36を、両支持板11A,11Bのテーパ部14,14の間に嵌合させた状態で、上下の当接片37,37をそれぞれテーパ部14,14に固定具18等で仮止めすることで、両支持板11A,11Bは治具35を介して仮固定される。
【0020】
こうして治具35で仮固定した第1、第2支持板11A,11Bを、
図12に示すようにフレーム1内に、第1支持板11Aが上側、第2支持板11Bが下側となる向きで組み込んで、背面が当接材6に当接するフレーム厚み方向の中央に位置決めする。
次に、
図13に示すように、両支持板11A,11Bの角部を、補強金具22,22によってそれぞれ柱4,4に固定し、
図14に示すように、両支持板11A,11Bの正面側で規制材24,24・・を架設する。このとき規制材24Aは、下端が治具35の上側の当接片37,37の突出端に当接する位置で架設し、規制材24Bは、上端が治具35の下側の当接片37,37の突出端に当接する位置で架設する。
次に、治具35を取り外して両支持板11A,11Bの間の配置空間31に、制震部12を、第1制震板15の上端が規制材24Aに、第2制震板16の下端が規制材24Bにそれぞれ当接する状態で取り付ければ、補強体10が完成して
図5と同じ状態となる。最後にフレーム1の正面側を図示しない壁材で塞げば制震補強は完了する。
但し、この補強方法でも、正面側の規制材24の架設を後にして、先に治具35の取り外しと制震部12の取付とを行ってもよい。
【0021】
[補強方法の変更例3]
ここでは治具の構造が
図10,11と異なっている。
図15,16に示すように、治具40は、長手方向の寸法が制震部12の上下方向の寸法と等しい板状体で、裏面には、上下の第1、第2支持板11A,11Bのテーパ部14,14の角が嵌合するL字状の支持片41,41が、上下対称に突設されている。また、支持片41,41よりも上下外側となる治具40の上下端部には、固定具18等による仮止め用の透孔42,42がそれぞれ形成されている。
この治具40を一対用いて、左右方向の間隔が制震部12の左右方向の寸法と等しくなるように左右対称に配置して、治具40,40の上側左右の支持片41,41に第1支持板11Aのテーパ部14の左右の角を嵌合させる一方、治具40,40の下側左右の支持片41,41に第2支持板11Bのテーパ部14の左右の角を嵌合させて、それぞれ固定具18等で仮止めする。すると、両支持板11A,11Bは、治具40,40を介して配置空間31を保持した状態で仮固定される。
【0022】
こうして治具40で仮固定した第1、第2支持板11A,11Bを、
図17に示すようにフレーム1内に、第1支持板11Aが上側、第2支持板11Bが下側となる向きで組み込んで、背面が当接材6に当接するフレーム厚み方向の中央に位置決めする。
次に、
図18に示すように、両支持板11A,11Bの角部を、補強金具22,22によってそれぞれ柱4,4に固定し、
図19に示すように、両支持板11A,11Bの正面側で規制材24,24・・を架設する。このとき規制材24Aは、下端が治具40,40の上端に当接する位置で架設し、規制材24Bは、上端が治具40,40の下端に当接する位置で架設する。
【0023】
次に、
図20に示すように、配置空間31に制震部12を、治具40,40の間で第1制震板15の上端が規制材24Aに、第2制震板16の下端が規制材24Bにそれぞれ当接する状態で取り付けた後、治具40,40を取り外せば、補強体10が完成して
図5と同じ状態となる。最後にフレーム1の正面側を図示しない壁材で塞げば制震補強は完了する。
但し、この補強方法でも、正面側の規制材24の架設を後にして、先に制震部12の取付と治具40の取り外しとを行ってもよい。
【0024】
このように、補強方法の変更例2,3においても、第1、第2支持板11A,11Bをフレーム1内に組み付ける工程では、第1、第2支持板11A,11Bを一体化した状態でフレーム1内に固定した後、両支持板11A,11Bを分離して制震部12の配置空間31を形成するようにしているので、治具35,40で一体化された第1、第2支持板11A,11Bを適正な位置に固定可能となる。よって、施工時の支えが不要となってフレーム1の正面側から2つの第1、第2支持板11A,11Bを、良好な作業性で精度よく組み付けることができる。
特にここでは、第1、第2支持板11A,11Bの一体化を、両支持板11A,11Bを連結する治具35,40によって行い、両支持板11A,11Bの分離を、治具35,40の取り外しによって行うようにしているので、治具35,40を利用した第1、第2支持板11A,11Bの一体化と取り外しとが容易に行える。
【0025】
なお、上記形態及び変更例においては、補強金具22を柱4,4のみに固定しているが、
図21に示すように、補強金具22における梁2及び土台3側の辺にも接合部23を折曲形成して梁2及び土台3にもそれぞれ固定具18で固定するようにしてもよい。
また、補強金具自体の数や形状も上記形態に限らず、適宜変更可能で、フレーム1内で補強体10が当接材6と規制材24とで強固に固定されれば、補強金具等の補強材は省略することもできる。
【0026】
一方、本発明の補強構造及び補強方法は、既存の木造建築物においても適用できる。
図22はその一例を示すものである。ここでは、天井面L1と、床面L2との間で正面側の壁材を除去してフレーム1内を部分的に開放した状態として、壁材の正面側の開口から施工される。同図(A)では、天井面L1の下側で柱4,4との間に、中間横架材25が水平に架設され、床面L2の上側で柱4,4との間に、中間横架材26が水平に架設される。
そして、中間横架材25,26の間に収まる長さの補強体10が組み込まれて、上側の第1支持板11Aは、中間横架材25の下側で補強金具22,22によって柱4,4(或いはこれに加えて中間横架材25)に固定される。一方、下側の第2支持板11Bは、中間横架材26の上側で補強金具22,22によって柱4,4(或いはこれに加えて中間横架材26)に固定される。後の構造は先の形態と同じである
このように、フレーム1と第1、第2支持板11A,11Bとの間に中間横架材25,26を設ければ、補強体10を固定した柱4,4の曲げ変形を効果的に防止可能となる。
なお、この変更例では、梁2と中間横架材25との間や、土台3と中間横架材26との間でフレーム1内に、上下の部材に当接する新たな補強材を設けてもよい。
【0027】
また、
図22(B)では、中間横架材を設けずに、天井面L1と床面L2との間で壁材の正面側の開口から補強体10を組み込む構造を示している。この場合、両支持板11A,11Bは、補強金具22,22によって柱4,4のみに固定される。
このように、
図22の変更例によれば、上記形態の効果に加えて、天井や床を剥がすことなく工数を削減して施工可能となり、既存の木造建築物に対して簡易に制震補強を施すことが可能となる。
なお、
図22の変更例においても、上述した補強方法の変更例1~3を採用して施工することは可能である。
【0028】
[補強構造の変更例]
上記形態や変更例では、フレーム内に第1支持板と第2支持板とを共に設けて両支持板の間に制震部を連結しているが、第1の支持部材と第2の支持部材とは何れか一方であっても本発明は適用できる。以下、この補強構造の変更例を説明する。
図23に示すフレーム1では、上下方向に長い第1支持板11Aのみを設けて広幅部13を梁2側に固定し、第1支持板11Aのテーパ部14の下端と土台3との間に制震部12を連結して補強体10Aを形成している。ここでは最下位置の規制材24Aを、下端が第1制震板15の連結部19の上端に当接する位置で架設し、第2制震板16の連結部19の下端19aを正面側へ折り曲げて、土台3の上面に固定具18,18・・で固定する構造となっている。
【0029】
この補強構造においても、一対の柱4,4の間には、第1制震板15における第1支持板11A側の端部にフレーム1の正面側から接触する規制材24Aが架設されているので、工数を削減して容易に施工可能となると共に、制震部12の面外変形及び回転変形が防止されて必要な制震性も確保することができる。よって、木造建築物に対して簡易且つ信頼性の高い制震補強を施すことが可能となる。
【0030】
また、
図24に示すフレーム1では、
図22(A)と同様に天井面L1の下側で柱4,4との間に中間横架材25を、床面L2の上側で柱4,4との間に中間横架材26をそれぞれ水平に架設し、中間横架材25と中間横架材26との間に上下方向に長い第1支持板11Aのみを設けて広幅部13を柱4,4に固定し、第1支持板11Aのテーパ部14の下端と中間横架材26との間に制震部12を連結して補強体10Aを形成している。ここでも最下位置の規制材24Aを、下端が第1制震板15の連結部19の上端に当接する位置で架設し、第2制震板16の連結部19の下端19aを正面側へ折り曲げて、中間横架材26の上面に固定具18,18・・で固定する構造となっている。
【0031】
この補強構造においても、制震部12の面外変形及び回転変形が防止されて必要な制震性も確保することができ、既存の木造建築物に対して簡易且つ信頼性の高い制震補強を施すことが可能となる。
なお、
図23,24の変更例では、上側の第1支持板11Aでなく下側の第2支持板11Bを上下に長く設けて、第2支持板11Bと上側の梁2や中間横架材25との間に制震部12を連結して補強体10Aを形成してもよい。また、
図24の変更例において、柱に固定される支持板側では中間横架材を省略することもできる。
【0032】
そして、上記形態や変更例では、フレームの上下に第1支持板及び/又は第2支持板を配置して補強体を上下方向に組み込んでいるが、フレームの左右の柱の一方に第1支持板を、他方に第2支持板をそれぞれ固定して補強体を左右方向に組み込み、梁と土台との間に、第1制震板の連結部の上下方向の端部に接触する第1規制材と、第2制震板の連結部の上下方向の端部に接触する第2規制材とをそれぞれ上下方向に架設することもできる。補強方法の変更例1~3も同様に採用できる。また、左右の柱の一方側に1つの支持板を固定して当該支持板と他方の柱との間を制震部で連結して規制材を上下に架設してもよい。
【0033】
また、上記形態や各変更例に共通して、規制材は、第1、第2制震板等の第1、第2の制震部材にそれぞれ接触する一対のみとしてもよいし、第1、第2の制震部材に対してそれぞれ接触させる一対に限らず、何れか一方に接触する1つの規制材のみを架設してもよい。補強体の背面側の当接材も、数の増減は勿論、省略することもできる。
第1、第2の支持部材も、上記形態の支持板に限らず正面視形状は変更可能で、さらには両支持部材を板状でなく複数の帯板等からなる枠状とする等、適宜形状変更可能である。
さらに、制震部のダンパーは、粘弾性体に限らず、油圧ダンパー等も採用できる。
【符号の説明】
【0034】
1・・フレーム、2・・梁、3・・土台、4・・柱、5・・壁材、6・・当接材、10,10A・・補強体、11A・・第1支持板、11B・・第2支持板、12・・制震部、13・・広幅部、14・・テーパ部、15・・第1制震板、16・・第2制震板、17・・粘弾性体、18・・固定具、19・・連結部、20・・接着部、22・・補強金具、24・・規制材、24A・・第1規制材、24B・・第2規制材、25、26・・中間横架材、30・・一枚板、34,40・・治具、L1・・天井面、L2・・床面。