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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】流動層熱回収装置
(51)【国際特許分類】
   F23C 10/04 20060101AFI20220526BHJP
   F23G 5/30 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
F23C10/04
F23G5/30 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018045077
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019158229
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】308024395
【氏名又は名称】荏原環境プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】工藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】永東 秀一
(72)【発明者】
【氏名】石川 栄司
(72)【発明者】
【氏名】梶原 洋和
(72)【発明者】
【氏名】野口 学
(72)【発明者】
【氏名】松岡 慶
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-196313(JP,A)
【文献】特開2001-132925(JP,A)
【文献】特開平09-033021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/04
F23G 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層反応炉において、流動層内にそれぞれ異なる流動化速度を与えるような散気装置を炉床部分に設け、
相対的に小さな流動化速度を与えられた第1の弱流動化域を形成して該第1の弱流動化域では流動媒体の沈降流を生じさせ、相対的に大きな流動化速度を与えられた強流動化域を形成して該強流動化域では流動媒体の上昇流を生じさせて流動層内部に流動媒体の旋回流を形成し、
前記強流動化域の外側に、相対的に小さな流動化速度を与えられた第2の弱流動化域を形成して該第2の弱流動化域では流動媒体の沈降流を生じさせて前記強流動化域から一部の流動媒体が流入するようにし、該第2の弱流動化域に伝熱面を有した熱回収装置を配置し、
前記散気装置は、前記第1の弱流動化域を形成するために相対的に小さな流動化速度を与える散気板からなる第1の散気装置と、
前記強流動化域を形成するために相対的に大きな流動化速度を与える複数の散気管を上段と下段に設けて構成された第2の散気装置からなり、
前記強流動化域と前記第2の弱流動化域の間に仕切り壁を設け、
前記第2の散気装置を構成する前記下段の前記複数の散気管は、前記仕切り壁の下部の開口部の下方まで延びており、
前記開口部は、前記第2の弱流動化域から前記強流動化域に流動媒体を戻す流路を構成し、前記流路は、前記第2の散気装置の前記上段と前記下段との間に形成されていることを特徴とする流動層熱回収装置。
【請求項2】
前記散気装置は、さらに、前記第2の弱流動化域を形成するために相対的に小さな流動化速度を与える複数の散気管を1段もしくは上下に複数段設けて構成されるか又は下方に傾斜した散気板から構成された第3の散気装置を備えることを特徴とする請求項1記載の流動層熱回収装置。
【請求項3】
前記第1の弱流動化域に被処理物としての固形状物質を投入し、前記固形状物質中に含まれる不燃物を前記散気装置の下方に設けられた流動媒体抜き出しコンベヤにより排出するようにしたことを特徴とする請求項1または2記載の流動層熱回収装置。
【請求項4】
前記第2の散気装置を構成する前記下段および前記上段の前記複数の散気管は、異なる空気管にそれぞれ接続されており、
前記下段の前記複数の散気管から噴出される流動化空気により、前記第2の弱流動化域から前記強流動化域に戻る流動媒体の流動化状態を調整し、
前記上段の前記複数の散気管から噴出される流動化空気により、前記強流動化域における流動媒体の流動化状態を調整するように構成されていることを特徴とする請求項記載の流動層熱回収装置。
【請求項5】
前記第1の散気装置は、前記強流動化域に向かって下方に傾斜している散気板からなることを特徴とする請求項1記載の流動層熱回収装置。
【請求項6】
を空塔速度、umfを最低流動化空塔速度としたときに、前記第2の散気装置から前記強流動化域に供給する流動化空気の空気量は、4~20u/umfであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の流動層熱回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ、産業廃棄物、石炭その他の不燃物を含む固形状物質を均一に燃焼またはガス化などの酸化反応をさせ、かつ不燃物を円滑に排出しつつ安定して熱エネルギーを回収するための熱回収室機能を備えた流動層熱回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経済発展に伴い、一般廃棄物は年間約4400万トン、産業廃棄物も約4億トン排出され処理されている。これらの廃棄物の一部は焼却処理され、焼却の際に発生する排ガスの熱エネルギーは、発電などに有効に活用されている。環境問題への配慮から、これらの熱エネルギーを効率よく回収することが求められている。
しかしながら、廃棄物なかでも産業廃棄物においては、廃棄物の形状や性状が実に多様であり、しかも一定しておらず、さらに不定形の様々な不燃物が混入していることから、安定した燃焼および処理が困難であり、廃棄物エネルギーの有効利用を阻んでいる。
【0003】
一般廃棄物および産業廃棄物のエネルギーの有効利用を図るため、焼却等の酸化反応による熱エネルギー回収を目的として、様々なシステムが開発されてきている。なかでも、流動層ボイラは不燃物を含む固形状物質を均一に燃焼させ、かつ不燃物を円滑に排出しつつ安定して熱エネルギーを回収することが可能なシステムとして期待されているが、以下のような課題が存在する。
【0004】
流動媒体が上下に活発に流動するバブリング流動層においては、流動媒体の流動が上下方向だけであるため、焼却物の分散が不十分であり、均一で安定した燃焼は困難である。また、流動媒体より比重が大きい不燃物は炉床に広範囲に堆積し、その結果、不燃物の排出が困難となり、運転に支障をきたす場合もある。そのため、濃厚流動層内で流動化速度に変化をつけて流動媒体の旋回流を形成することによって、焼却物の混合分散を良好にして、均一で安定した燃焼を行わせる方式が開発されてきた。
しかしながら、従来構造の内部循環流動層ボイラ(ICFB)のように、熱回収室出口近傍に流動媒体および不燃物の排出口があると、排出口上部が固定層(非流動化領域)になってしまい、熱回収室から主燃焼室への流動媒体の循環が円滑に行われなくなる可能性があり、その解決が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平7-56361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、熱回収室(熱回収領域)から主燃焼室(主燃焼領域)への流動媒体の循環を円滑に行い、不燃物を含む固形状物質を均一に燃焼し、かつ不燃物を円滑に排出しつつ安定して熱エネルギーを回収することが可能な流動層熱回収装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、流動層反応炉において、流動層内にそれぞれ異なる流動化速度を与えるような散気装置を炉床部分に設け、相対的に小さな流動化速度を与えられた第1の弱流動化域を形成して該第1の弱流動化域では流動媒体の沈降流を生じさせ、相対的に大きな流動化速度を与えられた強流動化域を形成して該強流動化域では流動媒体の上昇流を生じさせて流動層内部に流動媒体の旋回流を形成し、前記強流動化域の外側に、相対的に小さな流動化速度を与えられた第2の弱流動化域を形成して該第2の弱流動化域では流動媒体の沈降流を生じさせて前記強流動化域から一部の流動媒体が流入するようにし、該第2の弱流動化域に伝熱面を有した熱回収装置を配置し、前記散気装置は、前記第1の弱流動化域を形成するために相対的に小さな流動化速度を与える散気板からなる第1の散気装置と、前記強流動化域を形成するために相対的に大きな流動化速度を与える複数の散気管を上段と下段に設けて構成された第2の散気装置からなり、前記強流動化域と前記第2の弱流動化域の間に仕切り壁を設け、前記第2の散気装置を構成する前記下段の前記複数の散気管は、前記仕切り壁の下部の開口部の下方まで延びており、前記開口部は、前記第2の弱流動化域から前記強流動化域に流動媒体を戻す流路を構成し、前記流路は、前記第2の散気装置の前記上段と前記下段との間に形成されていることを特徴とする流動層熱回収装置である。
【0008】
発明の好ましい態様は、前記散気装置は、さらに、前記第2の弱流動化域を形成するために相対的に小さな流動化速度を与える複数の散気管を1段もしくは上下に複数段設けて構成されるか又は下方に傾斜した散気板から構成された第3の散気装置を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記第1の弱流動化域に被処理物としての固形状物質を投入し、前記固形状物質中に含まれる不燃物を前記散気装置の下方に設けられた流動媒体抜き出しコンベヤにより排出するようにしたことを特徴とする
【0010】
発明の好ましい態様は、前記第2の散気装置を構成する前記下段および前記上段の前記複数の散気管は、異なる空気管にそれぞれ接続されており、前記下段の前記複数の散気管から噴出される流動化空気により、前記第2の弱流動化域から前記強流動化域に戻る流動媒体の流動化状態を調整し、前記上段の前記複数の散気管から噴出される流動化空気により、前記強流動化域における流動媒体の流動化状態を調整するように構成されていることを特徴とする
発明の好ましい態様は、前記第1の散気装置は、前記強流動化域に向かって下方に傾斜している散気板からなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、uを空塔速度、umfを最低流動化空塔速度としたときに、前記第2の散気装置から前記強流動化域に供給する流動化空気の空気量は、4~20u/umfであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
(1)被処理物(例えば、焼却物)が投入される主燃焼室(主燃焼領域)において被処理物の均一な分散に適した流動化状態を保ち、かつ熱回収装置を設けた熱回収室(熱回収領域)内の弱流動化域を熱回収に適した流動化状態に保つことができる。したがって、主燃焼室(主燃焼領域)において被処理物を均一に燃焼させ、かつ熱回収室(熱回収領域)において安定して熱エネルギーを回収することが可能となる。
(2)熱回収室(熱回収領域)内の弱流動化域から主燃焼室(主燃焼領域)内の強流動化域に戻る流動媒体の流動化状態を最適な状態にすることができ、熱回収室(熱回収領域)から主燃焼室(主燃焼領域)への流動媒体の循環を円滑に行うことができる。したがって、不燃物を円滑に排出しつつ主燃焼室(主燃焼領域)と熱回収室(熱回収領域)の流動媒体の良好な循環および制御を可能とし、安定して熱エネルギーを回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る流動層熱回収装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。
図2図2は、本発明に係る流動層熱回収装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。
図3図3は、本発明に係る流動層熱回収装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。
図4図4は、本発明に係る流動層熱回収装置の第4の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る流動層熱回収装置の実施形態を図1乃至図4を参照して説明する。
図1乃至図4において、同一または対応する部材については同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、本発明に係る流動層熱回収装置の第1の実施形態を示す縦断面図である。図1に示すように、流動層反応炉1は、略四角筒形状の炉本体2を備えており、炉本体2内には流動媒体が流動する流動層が形成されている。炉本体2内は左右一対の仕切り壁3,3によって、中央部にある1つの主燃焼室4と、両側部にある2つの熱回収室5,5とに分割されている。主燃焼室4の炉底部分に、中央が高く両側縁に向かうにつれ徐々に低くなった山形状をなし、流動化ガスとしての流動化空気を炉内に噴出するための散気板7が配置されている。散気板7は、流動化ガスとしての流動化空気を炉内に噴出する多数の開口(ノズル)を備えた板状体からなり、散気板7は第1の散気装置を構成している。
【0014】
散気板7の両側には、流動化ガスとしての流動化空気を炉内に噴出するための複数の散気管8,9が上下に2段配置されている。散気管8,9は、それぞれ、流動化ガスとしての流動化空気を炉内に噴出する多数の開口(ノズル)を備えたパイプからなり、散気管8,9は第2の散気装置を構成している。これら上下2段の散気管8,9は、上下に重なって配置されるか、もしくは上下に互い違いに千鳥状に配置されるなど、不燃物の量などによって自由に定めることが可能である。山形状の散気板7は、相対的に小さな流動化速度を与えるように流動化空気を噴出する。その結果、散気板7の上方に流動媒体が比較的ゆっくりした速度で流動する弱流動化域WF(図1において点線で区切った矩形状の領域)を形成する。主燃焼室4内の弱流動化域WFは第1の弱流動化域を構成する。上下2段の散気管8,9は、相対的に大きな流動化速度を与えるように流動化空気を噴出する。その結果、散気管8,9の上方に流動媒体が活発に流動する強流動化域SF(図1において点線で区切った矩形状の領域)を形成する。
【0015】
一方、仕切り壁3で隔てた熱回収室5内には、伝熱管などからなる熱回収装置10が設置されている。また、熱回収室5の炉底部分には、流動化ガスとしての流動化空気を炉内に噴出するための複数の散気管11が1段配置されている。散気管11は、流動化ガスとしての流動化空気を炉内に噴出する多数の開口(ノズル)を備えたパイプからなり、散気管11は第3の散気装置を構成している。1段の散気管11は、相対的に小さな流動化速度を与えるように流動化空気を噴出する。その結果、散気管11の上方に流動媒体が比較的ゆっくりした速度で流動する弱流動化域WF(図1において点線で区切った矩形状の領域)を形成する。熱回収室5内の弱流動化域WFは第2の弱流動化域を構成する。
【0016】
本実施形態では、第1の散気装置から第1の弱流動化域に供給する流動化空気の空気量を0.5~3u/umf、好ましくは1~2.5u/umf、第2の散気装置から強流動化域に供給する流動化空気の空気量を4~20u/umf、好ましくは6~12u/umf、第3の散気装置から第2の弱流動化域に供給する流動化空気の空気量を0~3u/umf、好ましくは0.5~2u/umfとしている。ここで、uは空塔速度であり、umfは最低流動化空塔速度である。
【0017】
主燃焼室4の弱流動化域WFにある散気板7は、上下2段の散気管8,9の上方の強流動化域SFに向かって下降傾斜(下方に傾斜)している。また、強流動化域SFの散気管8,9、熱回収室5の散気管11の下方は、ともに流動媒体抜き出しコンベヤ13につながっており、流動媒体抜き出しコンベヤ13により流動媒体および焼却物に含まれる不燃物が外部に排出されるようになっている。散気板7、散気管8,9および散気管11の下方には、炉本体2の水平断面積が下方に向かって徐々に小さくなっていくシュートが形成され、該シュートによって不燃物を流動媒体とともに流動媒体抜き出しコンベヤ13に導くようにしている。散気板7には空気管15、強流動化域SFの上段の散気管8には空気管16、下段の散気管9には空気管17、また熱回収室5の炉底部分の散気管11には空気管18が、それぞれつながっている。
【0018】
上述のように構成された流動層反応炉1において、炉本体2に形成された投入口(図示せず)から焼却物Wを主燃焼室4の弱流動化域WFに投入すると、焼却物Wは流動媒体の沈降流21に飲み込まれながら低酸素状態のため還元性雰囲気で燃焼する。その後、流動媒体は散気板7の傾斜面に沿って強流動化域SFに向かう流れとなる。流動媒体とともに強流動化域SFに流入した焼却物Wは、多量の酸素による酸化雰囲気の中で十分に燃焼しつつ流動媒体の上昇流22により上昇する。
流動媒体および焼却物Wは、矢印で示すように、その後再び弱流動化域WFに戻り、沈降流21に飲み込まれる。すなわち、このように流動媒体の旋回流によって焼却物Wは流動層の中で分散し、均一に安定燃焼することが可能である。
一方、強流動化域SFにおける流動媒体の上昇流22の一部は、仕切り壁3を越えて、熱回収室5内のもう1つの弱流動化域WFに流れ込み、流動媒体は、その弱流動化域WFの中を沈降しつつ熱回収室5内に配置された熱回収装置10に熱を与え、仕切り壁3の下部の開口部6から強流動化域SFに戻る。
【0019】
熱回収装置10が設けられた弱流動化域WFは、強流動化域SFで十分に燃焼した後の流動媒体が流入してくるため、酸化雰囲気であり、熱回収装置10の伝熱面の還元腐食の恐れは少ない。また熱回収室5内は弱い流動状態なので、熱回収装置10の伝熱面の摩耗も少ない。
一方、焼却物Wに含まれる不燃物は、投入された主燃焼室4の弱流動化域WFにおいて流動媒体の沈降流21に飲み込まれ、その後、流動媒体は方向を転じて強流動化域SFに向かうが、その際、強流動化域SFにおいて多くの不燃物は分離沈降する。しかし、この強流動化域SFは散気管構造となっているため、不燃物は、堆積することなく散気管8,9の間をすり抜けて、流動層反応炉1の下部に設置された流動媒体抜き出しコンベヤ13によって流動媒体とともに外部に搬出される。
【0020】
上下2段の散気管8,9は、水平方向に互い違いに千鳥状に配列してもよく、また格子状に配列してもよい。上下2段の散気管8,9を設けることにより、散気管8,9の水平方向ピッチを大きくしてもこの領域を十分に流動化させることができる。また、散気管8,9のピッチを大きくすることで、より大きな不燃物でも排出することができるようになる。
【0021】
図1において仕切り壁3を越えて熱回収室5に流入した流動媒体と不燃物は、弱流動化域WF内を沈降していき、炉底近くで不燃物が分離沈降するが、熱回収室5内も散気管構造であるため、不燃物は堆積することなく流動媒体とともに散気管11の間をすり抜けて、強流動化域SFからの流動媒体や不燃物とともに流動層反応炉1の下部に設置された流動媒体抜き出しコンベヤ13によって外部に搬出される。
【0022】
仕切り壁3の下部の開口部6を強流動化域SFの下部の上下2段の散気管8,9の間に設け、下段の散気管9を開口部6よりも下方に設置して、流動化空気もしくは流動化ガスを調整する。すなわち、熱回収室5内の弱流動化域WFから主燃焼室4内の強流動化域SFに流動媒体を戻す流路としての開口部6を、上下2段の散気管8,9の段間に形成している。これにより、下段の散気管9により、熱回収室5内の弱流動化域WFから主燃焼室4内の強流動化域SFに戻る流動媒体の流動化状態を最適な状態にすることができる。また、上段の散気管8により、主燃焼室4内の強流動化域SFにおける流動媒体の流動化状態を最適な状態に維持することができる。
【0023】
図2は、本発明に係る流動層熱回収装置の第2の実施形態を示す縦断面図である。図1に示す第1の実施形態においては、主燃料室4に投入された焼却物が未燃のまま熱回収室5に進入し、熱回収室5内で燃焼することにより局所的に高温となり、伝熱管に悪影響を及ぼすことなどを防ぐために仕切り壁3を設けている。しかしながら、投入される焼却物の性状によっては仕切り壁3をなくすことも可能であるため、図2に示す第2の実施形態では、仕切り壁3をなくすことにより、図1に示す第1の実施形態における主燃焼室4は主燃焼領域4’になり、熱回収室5は熱回収領域5’になる。図2に示す実施形態の場合、高温流動層内の構造物が減り、シンプルな構造とすることができる。また、主燃焼領域4’の強流動化域SFと熱回収領域5’の弱流動化域WFの間に流動媒体の旋回流が生じ、第1の実施形態における仕切り壁3を設けた場合よりも強流動化域SFと弱流動化域WFの間での高温の燃焼ガスや流動媒体の出入りが活発となり、弱流動化域WFに配置した熱回収装置10の効率を高くすることができる。
【0024】
図3は、本発明に係る流動層熱回収装置の第3の実施形態を示す縦断面図である。図1に示す第1の実施形態においては、熱回収室5の下部に散気管11を設けていたが、図3に示すように散気管11の代わりに熱回収室散気板25を設けることも可能である。熱回収室散気板25は開口部6に向かって下降傾斜(下方に傾斜)しており、熱回収室5内の流動媒体が開口部6に向かって移動することが促進されるので、主燃焼室4と熱回収室5との間の流動媒体の循環がより円滑に行われる。
【0025】
図4は、本発明に係る流動層熱回収装置の第4の実施形態を示す縦断面図である。図1に示す第1の実施形態においては、散気板7の両側に上下2段の散気管8,9を設けていたが、図4に示すように1段の散気管9のみ配置することも可能である。散気管9には空気管17がつながっている。本実施形態では、熱回収室5内の弱流動化WFから主燃焼室4内の強流動化域SFに流動媒体を戻す流路としての開口部6は、散気管9の上方に形成している。散気管9により、熱回収室5内の弱流動化域WFから主燃焼室4内の強流動化域SFに戻る流動媒体の流動化状態を最適な状態にすることができる。
【0026】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0027】
1 流動層反応炉
2 炉本体
3 仕切り壁
4 主燃焼室
4’ 主燃焼領域
5 熱回収室
5’ 熱回収領域
6 開口部
7 散気板
8,9,11 散気管
10 熱回収装置
13 流動媒体抜き出しコンベヤ
15,16,17,18 空気管
21 沈降流
22 上昇流
25 熱回収室散気板
W 焼却物
SF 強流動化域
WF 弱流動化域
図1
図2
図3
図4