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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】半導体素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/331 20060101AFI20220526BHJP
   H01L 29/732 20060101ALI20220526BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20220526BHJP
   H01L 21/8222 20060101ALI20220526BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20220526BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220526BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20220526BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
H01L29/72 P
H01L27/06 101P
H01L27/06 101D
H01L27/04 H
H01L29/91 E
H01L29/91 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018063618
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019176033
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】椿 明彦
(72)【発明者】
【氏名】出口 香奈子
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-211757(JP,A)
【文献】特開平05-299588(JP,A)
【文献】特開2001-094051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/73
H01L 21/331
H01L 27/06
H01L 21/8222
H01L 27/04
H01L 21/822
H01L 29/868
H01L 29/861
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型半導体であるコレクタ層と、
第2導電型半導体であり、かつ前記コレクタ層に接するベース層と、
前記第1導電型半導体であり、かつ前記ベース層に接するエミッタ層と、
前記ベース層に導通する第1電極と、
前記第1電極と前記ベース層との導電経路において、前記第1電極に直列接続された第1抵抗素子と、
前記エミッタ層および前記第1抵抗素子の双方に導通する第2電極と、
前記第1抵抗素子と前記第2電極との導電経路において、前記第1抵抗素子に直列接続された第2抵抗素子と、
前記第1抵抗素子に対して前記第1電極に並列接続された保護素子と、を備え、
前記保護素子は、導電経路における両端が互いに同一極性となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを含み、
厚さ方向の一方側に配置され、かつ前記コレクタ層、前記ベース層および前記エミッタ層の各々に接する絶縁層と、
前記第1抵抗素子に直列接続され、かつ前記絶縁層の上に配置された第1配線層と、をさらに備え、
前記第1配線層は、前記ベース層に接しており、
前記第1電極は、前記絶縁層の上に配置され、かつ前記厚さ方向に視て前記ベース層に重なり、
前記保護素子は、前記ベース層と前記第1電極との間に位置し、かつ前記ベース層および前記第1電極の双方に接している、半導体素子。
【請求項2】
前記保護素子は、前記第2導電型半導体であり、かつ前記ベース層に接するコンタクト部と、前記厚さ方向に視て各々が前記コンタクト部を囲む複数の環状部と、を有し、
前記複数の環状部は、前記第1導電型半導体である複数の第1環状部と、前記第2導電型半導体である複数の第2環状部と、を含み、
前記複数の環状部においては、前記複数の第1環状部および前記複数の第2環状部の各々が交互に配置されており、
前記厚さ方向に視て最も内側に位置する前記複数の環状部のいずれかは、前記コンタクト部に接する前記複数の第1環状部のいずれかであり、
前記厚さ方向に視て最も外側に位置する前記複数の環状部のいずれかは、前記第1電極および前記第1抵抗素子の双方に接する前記複数の第2環状部のいずれかである、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記ベース層は、前記保護素子の一部を兼ね備える、請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
第1導電型半導体であるコレクタ層と、
第2導電型半導体であり、かつ前記コレクタ層に接するベース層と、
前記第1導電型半導体であり、かつ前記ベース層に接するエミッタ層と、
前記ベース層に導通する第1電極と、
前記第1電極と前記ベース層との導電経路において、前記第1電極に直列接続された第1抵抗素子と、
前記エミッタ層および前記第1抵抗素子の双方に導通する第2電極と、
前記第1抵抗素子と前記第2電極との導電経路において、前記第1抵抗素子に直列接続された第2抵抗素子と、
前記第1抵抗素子に対して前記第1電極に並列接続された保護素子と、を備え、
前記保護素子は、導電経路における両端が互いに同一極性となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを含み、
厚さ方向の一方側に配置され、かつ前記コレクタ層、前記ベース層および前記エミッタ層の各々に接する絶縁層と、
前記第1抵抗素子に直列接続され、かつ前記絶縁層の上に配置された第1配線層と、
前記保護素子および前記第2電極を相互に導通させる第2配線層と、をさらに備え、
前記第1配線層は、前記ベース層に接しており、
前記第1電極は、前記絶縁層の上に配置されており、
前記保護素子は、前記コレクタ層と前記第1電極との間に位置し、かつ前記第1電極に接しており、
前記第2配線層は、前記第2導電型半導体であり、かつ前記保護素子の一部を兼ね備える、半導体素子。
【請求項5】
前記保護素子は、前記第2導電型半導体であり、かつ前記第1電極に接するコンタクト部と、前記厚さ方向に視て各々が前記コンタクト部を囲む複数の環状部と、を有し、
前記複数の環状部は、前記第1導電型半導体である複数の第1環状部と、前記第2導電型半導体である複数の第2環状部と、を有し、
前記複数の環状部においては、前記複数の第1環状部および前記複数の第2環状部の各々が交互に配置されており、
前記厚さ方向に視て最も内側に位置する前記複数の環状部のいずれかは、前記コンタクト部に接する前記複数の第1環状部のいずれかであり、
前記厚さ方向に視て最も外側に位置する前記複数の環状部のいずれかは、前記第2配線層に接する前記複数の第1環状部のいずれかである、請求項に記載の半導体素子。
【請求項6】
前記第2配線層は、前記厚さ方向に視て前記第1配線層に交差する帯状部を有し、
前記帯状部は、前記絶縁層に覆われている、請求項5に記載の半導体素子。
【請求項7】
前記第1抵抗素子および前記保護素子は、前記絶縁層に覆われている、請求項1ないし6のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項8】
前記保護素子の構成材料は、多結晶シリコンを含む、請求項に記載の半導体素子。
【請求項9】
第1導電型半導体であるコレクタ層と、
第2導電型半導体であり、かつ前記コレクタ層に接するベース層と、
前記第1導電型半導体であり、かつ前記ベース層に接するエミッタ層と、
前記ベース層に導通する第1電極と、
前記第1電極と前記ベース層との導電経路において、前記第1電極に直列接続された第1抵抗素子と、
前記エミッタ層および前記第1抵抗素子の双方に導通する第2電極と、
前記第1抵抗素子と前記第2電極との導電経路において、前記第1抵抗素子に直列接続された第2抵抗素子と、
前記第1抵抗素子に対して前記第1電極に並列接続された保護素子と、を備え、
前記保護素子は、導電経路における両端が互いに同一極性となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを含み、
厚さ方向の一方側に配置され、かつ前記コレクタ層、前記ベース層および前記エミッタ層の各々に接する絶縁層と、
前記第1抵抗素子に直列接続され、かつ前記絶縁層の上に配置された第1配線層と、
前記保護素子および前記第2電極を相互に導通させる第2配線層と、をさらに備え、
前記第1配線層は、前記ベース層に接しており、
前記第1電極は、前記絶縁層の上に配置されており、
前記保護素子は、前記コレクタ層に接しており、
前記コレクタ層は、前記保護素子の一部を兼ね備える、半導体素子。
【請求項10】
前記保護素子と前記第1電極との間に位置し、かつ前記保護素子および前記第1電極の双方に接する補助保護素子をさらに備え、
前記補助保護素子は、前記第1導電型半導体であり、かつ前記保護素子に接する補助コンタクト部と、前記厚さ方向に視て各々が前記補助コンタクト部を囲む複数の補助環状部と、を有し、
前記複数の補助環状部は、前記第2導電型半導体である複数の第1補助環状部と、前記第1導電型半導体である複数の第2補助環状部と、を有し、
前記複数の補助環状部においては、前記複数の第1補助環状部および前記複数の第2補助環状部の各々が交互に配置されており、
前記厚さ方向に視て最も内側に位置する前記複数の補助環状部のいずれかは、前記補助コンタクト部に接する前記複数の第1補助環状部のいずれかであり、
前記厚さ方向に視て最も外側に位置する前記複数の補助環状部のいずれかは、前記第1電極および前記第1抵抗素子の双方に接する前記複数の第1補助環状部のいずれかである、請求項9に記載の半導体素子。
【請求項11】
前記第1抵抗素子および前記補助保護素子は、前記絶縁層に覆われている、請求項10に記載の半導体素子。
【請求項12】
前記補助保護素子の構成材料は、多結晶シリコンを含む、請求項11に記載の半導体素子。
【請求項13】
前記第1抵抗素子および前記第2抵抗素子の各々の構成材料は、多結晶シリコンを含む、請求項1ないし12のいずれかに記載の半導体素子。
【請求項14】
前記厚さ方向の他方側に配置され、かつ前記コレクタ層に導通する第3電極をさらに備える、請求項1ないし13のいずれかに記載の半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース電極に直列接続された抵抗素子を備えるバイポーラトランジスタである半導体素子に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末などの電子機器には、消費電力の抑制のため、比較的低いベース-エミッタ間電圧で動作することが可能なバイポーラトランジスタが要求されている。特許文献1には、このようなバイポーラトランジスタの一例が開示されている。特許文献1に開示されているバイポーラトランジスタは、ベース-エミッタ間電圧をベース電流に変換する抵抗がベース電極に直列接続されている。当該抵抗により、比較的低いベース-エミッタ間電圧に対して出力されるコレクタ電流の応答が線形状態となるため、バイポーラトランジスタの動作が安定したものとなる。
【0003】
ベース-エミッタ間電圧をベース電流に変換する抵抗は、バイポーラトランジスタとともに一つの半導体素子に組み込むことが可能である。このような半導体素子は、デジタルトランジスタと称されることがある。当該半導体素子は、ベース電極に直列接続された抵抗素子を備える。当該抵抗素子は、薄膜である多結晶ポリシリコンから構成されることが多いため、静電気に対して比較的脆弱である。このため、静電気により当該抵抗素子が破壊されるおそれがある。当該抵抗素子が破壊されると、ベース-エミッタ間電圧に対して出力されるコレクタ電流の応答が非線形状態となるため、当該半導体素子の動作が不安定なものとなったり、動作しなくなったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-209763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の事情に鑑み、ベース電極に直列接続された抵抗素子が静電破壊されることを回避可能な半導体素子を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1導電型半導体であるコレクタ層と、第2導電型半導体であり、かつ前記コレクタ層に接するベース層と、前記第1導電型半導体であり、かつ前記ベース層に接するエミッタ層と、前記ベース層に導通する第1電極と、前記第1電極と前記ベース層との導電経路において、前記第1電極に直列接続された第1抵抗素子と、前記エミッタ層および前記第1抵抗素子の双方に導通する第2電極と、前記第1抵抗素子に対して前記第1電極に並列接続された保護素子と、を備え、前記保護素子は、導電経路における両端がともに同一極性となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを含むことを特徴とする半導体素子が提供される。
【0007】
本発明の実施において好ましくは、前記厚さ方向の一方側に配置され、かつ前記コレクタ層、前記ベース層および前記エミッタ層のいずれにも接する絶縁層をさらに備え、前記第1電極は、前記絶縁層の上に配置されている。
【0008】
本発明の実施において好ましくは、前記第1抵抗素子に直列接続され、かつ前記絶縁層の上に配置された第1配線層をさらに備え、前記第1配線層は、前記ベース層に接している。
【0009】
本発明の実施において好ましくは、前記第1抵抗素子の構成材料は、多結晶シリコンを含む。
【0010】
本発明の実施において好ましくは、前記第1電極は、前記厚さ方向から視て前記ベース層に重なり、前記保護素子は、前記厚さ方向において前記ベース層と前記第1電極との間に位置し、かつ前記ベース層および前記第1電極の双方に接している。
【0011】
本発明の実施において好ましくは、前記保護素子は、前記第2導電型半導体であり、かつ前記ベース層に接するコンタクト部と、前記厚さ方向から視て前記コンタクト部を各々が囲む複数の環状部と、を有し、複数の前記環状部は、前記第1導電型半導体である複数の第1環状部と、前記第2導電型半導体である複数の第2環状部と、を含み、複数の前記環状部は、複数の前記第1環状部および複数の前記第2環状部の各々が交互に配置され、前記厚さ方向から視て最も内側に位置する前記環状部は、前記コンタクト部に接する前記第1環状部であり、前記厚さ方向から視て最も外側に位置する前記環状部は、前記第1電極および前記第1抵抗素子の双方に接する前記第2環状部である。
【0012】
本発明の実施において好ましくは、前記ベース層は、前記保護素子の一部を兼ね備える。
【0013】
本発明の実施において好ましくは、前記保護素子は、前記厚さ方向において前記コレクタ層と前記第1電極との間に位置し、かつ前記第1電極に接し、前記保護素子および前記第2電極を相互に導通させる第2配線層をさらに備え、前記第2配線層は、前記第2導電型半導体であり、かつ前記保護素子の一部を兼ね備える。
【0014】
本発明の実施において好ましくは、前記保護素子は、前記第2導電型半導体であり、かつ前記第1電極に接するコンタクト部と、前記厚さ方向から視て前記コンタクト部をそれぞれが囲む複数の環状部と、を有し、複数の前記環状部は、前記第1導電型半導体である複数の第1環状部と、前記第2導電型半導体である複数の第2環状部と、を有し、複数の前記環状部は、複数の前記第1環状部および複数の前記第2環状部の各々が交互に配置され、前記厚さ方向から視て最も内側に位置する前記環状部は、前記コンタクト部に接する前記第1環状部であり、前記厚さ方向から視て最も外側に位置する前記環状部は、前記第2配線層に接する前記第1環状部である。
【0015】
本発明の実施において好ましくは、前記第2配線層は、前記厚さ方向から視て前記第1配線層に交差する帯状部を有し、前記帯状部は、前記絶縁層に覆われている。
【0016】
本発明の実施において好ましくは、前記第1抵抗素子および前記保護素子は、前記絶縁層に覆われている。
【0017】
本発明の実施において好ましくは、前記保護素子の構成材料は、多結晶シリコンを含む。
【0018】
本発明の実施において好ましくは、前記保護素子は、前記コレクタ層に接し、前記コレクタ層は、前記保護素子の一部を兼ね備える。
【0019】
本発明の実施において好ましくは、前記厚さ方向において前記保護素子と前記第1電極との間に位置し、かつ前記保護素子および前記第1電極の双方に接する補助保護素子をさらに備え、前記補助保護素子は、前記第1導電型半導体であり、かつ前記保護素子に接する補助コンタクト部と、前記厚さ方向から視て前記補助コンタクト部をそれぞれが囲む複数の補助環状部と、を有し、複数の前記補助環状部は、前記第2導電型半導体である複数の第1補助環状部と、前記第1導電型半導体である複数の第2補助環状部と、を有し、複数の前記補助環状部は、複数の前記第1補助環状部および複数の前記第2補助環状部の各々が交互に配置され、前記厚さ方向から視て最も内側に位置する前記補助環状部は、前記補助コンタクト部に接する前記第1補助環状部であり、前記厚さ方向から視て最も外側に位置する前記補助環状部は、前記第1電極および前記第1抵抗素子の双方に接する前記第1補助環状部である。
【0020】
本発明の実施において好ましくは、前記第1抵抗素子および前記補助保護素子は、前記絶縁層に覆われている。
【0021】
本発明の実施において好ましくは、前記補助保護素子の構成材料は、多結晶シリコンを含む。
【0022】
本発明の実施において好ましくは、前記第1抵抗素子と前記第2電極との導電経路において、前記第1抵抗素子に直列接続された第2抵抗素子をさらに備え、前記第2抵抗素子の構成材料は、多結晶シリコンを含む。
【0023】
本発明の実施において好ましくは、前記厚さ方向の他方側に配置され、かつ前記コレクタ層に導通する第3電極をさらに備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる半導体素子によれば、ベース電極に直列接続された抵抗素子が静電破壊されることを回避可能となる。
【0025】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態にかかる半導体素子の平面図(保護層を透過)である。
図2図1に示す半導体素子の平面図(上部絶縁層および保護層を透過)である。
図3図2の部分拡大図(第1電極を透過)である。
図4図1に示す半導体素子の底面図である。
図5図2のV-V線に沿う断面図である。
図6図5の部分拡大図である。
図7図2のVII-VII線に沿う断面図である。
図8図2のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9図2のIX-IX線に沿う断面図である。
図10図9の部分拡大図である。
図11図1に示す半導体素子の回路図である。
図12】本発明の第2実施形態にかかる半導体素子の平面図(保護層を透過)である。
図13図12に示す半導体素子の平面図(上部絶縁層および保護層を透過)である。
図14図13のXIV-XIV線に沿う断面図である。
図15図14の部分拡大図である。
図16図14の部分拡大図である。
図17図13のXVII-XVII線に沿う断面図である。
図18図12に示す半導体素子の回路図である。
図19】本発明の第2実施形態の第1変形例にかかる半導体素子の部分拡大断面図である。
図20】本発明の第2実施形態の第2変形例にかかる半導体素子の部分拡大断面図である。
図21図20に示す半導体素子の回路図である。
図22】本発明の第3実施形態にかかる半導体素子の平面図(保護層を透過)である。
図23図22に示す半導体素子の平面図(上部絶縁層および保護層を透過)である。
図24図23の部分拡大図(第1電極を透過)である。
図25図23のXXV-XXV線に沿う断面図である。
図26図25の部分拡大図である。
図27図23のXXVII-XXVII線に沿う断面図である。
図28図22に示す半導体素子の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について、添付図面に基づいて説明する。
【0028】
〔第1実施形態〕
図1図11に基づき、本発明の第1実施形態にかかる半導体素子A10について説明する。半導体素子A10は、コレクタ層11、ベース層12、エミッタ層13、第1電極31、第2電極32、第1抵抗素子41および保護素子50を備える。半導体素子A10は、基板10、絶縁層20、第3電極33、第1配線層34、第2抵抗素子42および保護層60をさらに備える。なお、理解の便宜上、図1は、保護層60を透過して示しており、図2は、上部絶縁層22(絶縁層20の一部を構成するものであり、詳細は後述)および保護層60を透過して示している。図3は、第1電極31を透過して示している。図3において透過した第1電極31は、想像線(二点鎖線)で示している。
【0029】
半導体素子A10の説明においては、便宜上、半導体素子A10の厚さ方向を「厚さ方向z」と呼ぶ。厚さ方向zに対して直交する一方向を「第1方向x」と呼ぶ。厚さ方向zおよび第1方向xの双方に対して直交する方向を「第2方向y」と呼ぶ。第1方向xは、平面図の横方向に相当する。第2方向yは、平面図の縦方向に相当する。また、厚さ方向zの一方側とは、断面図において上方側を指す。厚さ方向zの他方側とは、断面図において下方側を指す。
【0030】
半導体素子A10は、コレクタ層11およびエミッタ層13がともに同一導電型の半導体であるバイポーラトランジスタである。半導体素子A10は、縦型のバイポーラトランジスタである。厚さ方向zから視て、半導体素子A10は、矩形状である。半導体素子A10の説明では、半導体素子A10がnpn接合型のバイポーラトランジスタである場合を対象とする。なお、半導体素子A10は、pnp接合型のバイポーラトランジスタでも適用可能である。
【0031】
半導体素子A10の説明において、便宜上、「第1導電型半導体」および「第2導電型半導体」という語句を用いる。半導体素子A10がnpn接合型のバイポーラトランジスタである場合は、第1導電型半導体がn型半導体を指すものとし、第2導電型半導体がp型半導体を指すものとする。半導体素子A10がpnp型バイポーラトランジスタである場合は、第1導電型半導体がp型半導体を指すものとし、第2導電型半導体がn型半導体を指すものとする。半導体素子A10の説明では、先述のとおり半導体素子A10がnpn接合型のバイポーラトランジスタである場合を対象とするため、第1導電型半導体がn型半導体を指し、第2導電型半導体がp型半導体を指す。
【0032】
基板10は、図5、および図7図9に示すように、コレクタ層11および第3電極33を支持している。基板10は、半導体材料から構成される。主たる当該半導体材料は、たとえばシリコン(Si)を含む。半導体素子A10の説明では、主たる当該半導体材料がシリコンである場合を対象とする。基板10には、単結晶、かつ真性半導体であるシリコンウエハに、n型ドーパントがイオン注入により添加されている。n型ドーパントは、たとえばアンチモン(Sb)、ヒ素(As)またはリン(P)である。このため、基板10は、第1導電型半導体である。
【0033】
コレクタ層11は、図5、および図7図9に示すように、基板10に対して厚さ方向zの一方側に配置されている。コレクタ層11は、真性半導体であるシリコンをエピタキシャル成長により基板10の上に積層させた後、n型ドーパントをイオン注入により当該シリコンに添加させることによって形成される。このため、コレクタ層11は、第1導電型半導体である。コレクタ層11におけるn型ドーパントの濃度は、基板10におけるn型ドーパントの濃度よりも小である。逆をいえば、基板10におけるn型ドーパントの濃度は、コレクタ層11におけるn型ドーパントの濃度よりも大である。したがって、断面図では、コレクタ層11を構成する第1導電型半導体を「n」と表記し、基板10を構成する第1導電型半導体を「n+」と表記する。コレクタ層11は、厚さ方向zの一方側を向くコレクタ主面11Aを有する。コレクタ層11の厚さ方向zの他方側は、基板10に対向している。
【0034】
ベース層12は、図5図9に示すように、コレクタ層11に接している。ベース層12は、p型ドーパントをイオン注入によりコレクタ層11の一部に添加させることによって形成される。p型ドーパントは、たとえばホウ素(B)である。このため、ベース層12は、コレクタ層11の一部が第2導電型半導体に置き換えられたものである。断面図では、ベース層12を構成する第2導電型半導体を「p」と表記する。ベース層12は、厚さ方向zの一方側を向くベース主面12Aを有する。ベース主面12Aは、コレクタ層11のコレクタ主面11Aと面一である。図2、および図5図9に示すように、ベース層12は、厚さ方向zから視て第1電極31に重なるように形成されている。ベース層12の最大厚さは、コレクタ層11の最大厚さよりも小である。
【0035】
エミッタ層13は、図9および図10に示すように、ベース層12に接している。エミッタ層13は、n型ドーパントをイオン注入によりベース層12の一部に添加させることによって形成される。このため、エミッタ層13は、ベース層12の一部が第1導電型半導体に置き換えられたものである。エミッタ層13におけるn型ドーパントの濃度は、コレクタ層11におけるn型ドーパントの濃度よりも大である。したがって、断面図では、エミッタ層13を構成する第1導電型半導体を「n+」と表記する。エミッタ層13は、厚さ方向zの一方側を向くエミッタ主面13Aを有する。エミッタ主面13Aは、ベース主面12Aのベース主面12Aと面一である。これにより、コレクタ層11のコレクタ主面11A、ベース主面12Aおよびエミッタ主面13Aは、いずれも面一である。エミッタ層13の最大厚さは、ベース層12の最大厚さよりも小である。
【0036】
絶縁層20は、図5図10に示すように、コレクタ層11に対して厚さ方向zの一方側に配置された電気絶縁部材である。絶縁層20は、コレクタ層11のコレクタ主面11A、ベース層12のベース主面12A、およびエミッタ層13のエミッタ主面13Aのいずれにも接している。絶縁層20の構成材料は、たとえば二酸化ケイ素(SiO2)である。絶縁層20は、下部絶縁層21および上部絶縁層22を有する。
【0037】
図9に示すように、下部絶縁層21は、コレクタ層11のコレクタ主面11A、ベース層12のベース主面12A、およびエミッタ層13のエミッタ主面13Aのいずれにも接している。図6および図9に示すように、下部絶縁層21には、第1段差21Aおよび第2段差21Bが設けられている。第1段差21Aおよび第2段差21Bは、厚さ方向zに対する段差である。第1段差21Aは、ベース層12を形成する際に設けられる。第2段差21Bは、エミッタ層13を形成する際に設けられる。第2段差21Bは、第1段差21Aに対して厚さ方向zの他方側に位置する。
【0038】
図2および図9に示すように、下部絶縁層21には、下部第1開口211、下部第2開口212および下部第3開口213が設けられている。下部第1開口211、下部第2開口212および下部第3開口213は、下部絶縁層21を厚さ方向zに貫通している。下部第1開口211は、厚さ方向zから視て第1電極31に重なり、かつベース層12のベース主面12Aに通じている。下部第2開口212は、厚さ方向zから視て第2電極32に重なり、かつエミッタ層13のエミッタ主面13Aに通じている。図10に示すように、厚さ方向zにおける下部第2開口212とエミッタ主面13Aとの境界面は、第2段差21Bに囲まれている。下部第3開口213は、厚さ方向zから視て第1配線層34に重なり、かつベース主面12Aに通じている。下部第3開口213は、厚さ方向zから視て第1配線層34に沿って延びる帯状である。
【0039】
図5図9に示すように、上部絶縁層22は、下部絶縁層21に対して厚さ方向zの一方側に位置する。上部絶縁層22は、下部絶縁層21の少なくとも一部を覆っている。上部絶縁層22は、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)により形成される。図1図5および図6に示すように、上部絶縁層22には、上部第1開口221、上部第2開口222、および一対の上部第3開口223が設けられている。上部第1開口221、上部第2開口222および一対の上部第3開口223は、上部絶縁層22を厚さ方向zに貫通している。上部第1開口221は、厚さ方向zから視て第1電極31に重なり、かつ保護素子50に通じている。上部第1開口221は、厚さ方向zから視て環状である。上部第2開口222は、厚さ方向zから視て第2電極32に重なり、かつ第2抵抗素子42に通じている。一対の上部第3開口223は、厚さ方向zから視て第1配線層34に重なっている。一方の上部第3開口223は、第1抵抗素子41に通じている。他方の上部第3開口223は、第2抵抗素子42に通じている。
【0040】
第1電極31は、図5図9、および図11に示すように、保護素子50を介してベース層12に導通する導電部材である。第1電極31には、ベース層12とエミッタ層13との間における順方向電圧(ベース-エミッタ間電圧)が印加される。すなわち、第1電極31は、半導体素子A10のベース電極である。第1電極31は、絶縁層20(上部絶縁層22)の上に配置されている。第1電極31の構成材料は、たとえばアルミニウム(Al)である。第1電極31は、厚さ方向zから視てベース層12に重なっている。第1電極31は、第1端子部311および第1導通部312を有する。
【0041】
図1図2、および図5図9に示すように、第1端子部311は、第1電極31の本体を構成している。第1端子部311の厚さ方向zの一方側は、半導体素子A10から露出している。半導体素子A10から露出する第1端子部311の部分には、ボンディングワイヤなどが接続される。
【0042】
図5図9図8を除く)に示すように第1導通部312は、第1端子部311の厚さ方向zにおける他方側から保護素子50に向けて突出している。第1導通部312は、保護素子50に接している。これにより、第1電極31は保護素子50に導通している。第1導通部312は、上部絶縁層22の上部第1開口221に収容されている。これにより、図1に示すように、第1導通部312は、厚さ方向zから視て環状である。
【0043】
図6に示すように、第1電極31には、凸部314、第1凹部315Aおよび第2凹部315Bが設けられている。凸部314は、第1端子部311の厚さ方向zから他方側から保護素子50に向けて突出している。厚さ方向zにおいて、保護素子50と凸部314との間には、上部絶縁層22が位置している。凸部314は、厚さ方向zから視て第1導通部312に囲まれている。第1凹部315Aは、第1端子部311の厚さ方向zの一方側から厚さ方向zに向けて凹んでいる。厚さ方向zから視て、第1凹部315Aは、環状であり、かつ第1導通部312に重なる部分を有する。第1凹部315Aは、第1導通部312の形成に伴って形成される。第2凹部315Bは、第1端子部311の厚さ方向zの一方側から厚さ方向zに向けて凹んでいる。厚さ方向zから視て、第2凹部315Bは、第1凹部315Aに囲まれ、かつ凸部314に重なる部分を有する。第2凹部315Bは、凸部314の形成に伴って形成される。
【0044】
第2電極32は、図9図11に示すように、エミッタ層13および第1抵抗素子41の双方に導通する導電部材である。第2電極32には、エミッタ電流が流れる。すなわち、第2電極32は、半導体素子A10のエミッタ電極である。第2電極32は、エミッタ層13のエミッタ主面13Aの上に配置されている。第2電極32の構成材料は、たとえばアルミニウムである。第2電極32は、第2端子部321、第2導通部322、第2パッド部323を有する。
【0045】
図1図2図9および図10に示すように、第2端子部321は、第2電極32の本体を構成している。第2端子部321の厚さ方向zの一方側は、半導体素子A10から露出している。半導体素子A10から露出する第2端子部321の部分には、ボンディングワイヤなどが接続される。
【0046】
図9および図10に示すように、第2導通部322は、第2端子部321の厚さ方向zにおける他方側からエミッタ層13のエミッタ主面13Aに向けて突出している。第2導通部322は、エミッタ主面13Aに接している。これにより、第2電極32は、エミッタ層13に導通している。第2導通部322は、下部絶縁層21の下部第2開口212に収容されている。
【0047】
図1および図2に示すように、第2パッド部323は、第2端子部321の隅から第2方向yに向けて延びている。図5に示すように、第2パッド部323の先端の一部は、上部絶縁層22の上部第2開口222に収容され、かつ第2抵抗素子42に接している。これにより、第2電極32は、第2抵抗素子42に導通している。
【0048】
図10に示すように、第2電極32には、凹部324が設けられている。凹部324は、第2端子部321の厚さ方向zの一方側から厚さ方向zに向けて凹んでいる。凹部324は、厚さ方向zから視て第2導通部322に重なる部分を有する。凹部324は、第2導通部322の形成に伴って形成される。
【0049】
第3電極33は、図4および図9に示すように、基板10に対して厚さ方向zの他方側に配置された導電部材である。第3電極33は、基板10を介してコレクタ層11に導通している。第3電極33には、コレクタ層11とベース層12との間における逆方向電圧(コレクタ-ベース間電圧)が印加されるとともに、半導体素子A10から出力されるコレクタ電流が流れる。すなわち、第3電極33は、半導体素子A10のコレクタ電極である。第3電極33は、リードなどの導電部材に電気的に接合される。第3電極33は、真空蒸着やスパッタリング法により、たとえば金(Au)のみを基板10に積層させることや、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、金の順に各金属層を基板10に積層させることによって形成される。
【0050】
第1配線層34は、図5図7および図9に示すように、絶縁層20の上に配置された導電部材である。図11に示すように、第1配線層34は、第1抵抗素子41と第2抵抗素子42との間に直列接続され、かつベース層12に導通している。第1電極31に印加されたベース層12とエミッタ層13との間における順方向電圧は、第1抵抗素子41によりベース電流に変換され、当該ベース電流が第1配線層34を介してベース層12に流れる。第1配線層34は、絶縁層20の上に配置されている。第1配線層34の構成材料は、たとえばアルミニウムである。第1配線層34は、本体部341、第3導通部342および一対の第3パッド部343を有する。
【0051】
図1図2および図9に示すように、本体部341は、第1配線層34の本体を構成している。本体部341は、厚さ方向zから視て帯状であり、かつ第1電極31と第2電極32との間に位置する。
【0052】
図9に示すように、第3導通部342は、本体部341の厚さ方向zにおける他方側からベース層12のベース主面12Aに向けて突出している。第3導通部342は、ベース主面12Aに接している。これにより、第1配線層34は、ベース層12に接し、かつ導通している。第3導通部342は、下部絶縁層21の下部第3開口213に収容されている。
【0053】
図1および図2に示すように、一対の第3パッド部343は、厚さ方向zから視て本体部341から突出している。一方の第3パッド部343は、本体部341から第1方向xに突出している。図7に示すように、一方の第3パッド部343の一部は、第1抵抗素子41に通じる上部第3開口223に収容され、かつ第1抵抗素子41に接している。図5に示すように、他方の第3パッド部343の一部は、第2抵抗素子42に通じる上部第3開口223に収容され、かつ第2抵抗素子42に接している。これにより、第1配線層34は、第1抵抗素子41と第2抵抗素子42との間に直列接続されている。したがって、第2電極32は、第2抵抗素子42および第1配線層34を介して第1抵抗素子41に導通していることがいえる。
【0054】
図10に示すように、第1配線層34には、凹部344が設けられている。凹部344は、本体部341の厚さ方向zの一方側から厚さ方向zに向けて凹んでいる。凹部344は、厚さ方向zから視て第3導通部342に重なる部分を有する。凹部344は、第3導通部342の形成に伴って形成される。
【0055】
第1抵抗素子41および第2抵抗素子42は、図11に示すように、第1電極31と第2電極32との間の導電経路に設けられている。第1抵抗素子41は、第1電極31とベース層12との導電経路において、第1電極31に直列接続されている。第1抵抗素子41は、第1電極31に印加されたベース層12とエミッタ層13との間における順方向電圧をベース電流に変換する。これにより、比較的低いベース-エミッタ電圧に対して出力されるコレクタ電流の応答が線形状態となるため、半導体素子A10の動作が安定する。第2抵抗素子42は、第1抵抗素子41と第2電極32との導電経路において、第1配線層34を介して第1抵抗素子41に直列接続されている。第2抵抗素子42は、第1電極31からのリーク電流やノイズが第1配線層34に入力された際、これらを第2電極32に導通する外部接地端子に流す。これにより、リーク電流やノイズがベース層12に流れることが回避されるため、半導体素子A10の誤作動を防止できる。なお、半導体素子A10は、その使用状態において誤作動のおそれが生じなければ、第2抵抗素子42を備えない構成としてもよい。
【0056】
第1抵抗素子41および第2抵抗素子42の構成材料は、多結晶シリコンを含む。第1抵抗素子41および第2抵抗素子42は、多結晶シリコンにp型ドーパントまたはn型ドーパントが添加されている。これにより、第1抵抗素子41および第2抵抗素子42の抵抗値がそれぞれ所望の値となるように調整されている。
【0057】
第1抵抗素子41は、図2に示すように、厚さ方向zから視て第2方向yに蛇行した帯状である。図7および図8に示すように、第1抵抗素子41は、下部絶縁層21の上に配置され、かつ上部絶縁層22に覆われている。これにより、第1抵抗素子41は、絶縁層20に覆われた構成となる。第1抵抗素子41の一端は、保護素子50に接している。第1抵抗素子41の他端は、第1配線層34の一方の第3パッド部343に接している。これにより、第1抵抗素子41は、保護素子50および第1配線層34の双方に導通している。
【0058】
第2抵抗素子42は、図2に示すように、厚さ方向zから視て第2方向yに蛇行した区間を有する帯状である。図5に示すように、第2抵抗素子42は、下部絶縁層21の上に配置され、かつ上部絶縁層22に覆われている。これにより、第2抵抗素子42は、絶縁層20に覆われた構成となる。第2抵抗素子42の一端は、第1配線層34の他方の第3パッド部343に接している。第2抵抗素子42の他端は、第2電極32の第2パッド部323に接している。これにより、第2抵抗素子42は、第1配線層34および第2電極32の双方に導通している。
【0059】
保護素子50は、図11に示すように、第1抵抗素子41に対して第1電極31に並列接続されている。保護素子50は、厚さ方向zにおいてベース層12と第1電極31との間に位置する。保護素子50は、ベース層12および第1電極31の双方に接している。これにより、保護素子50は、ベース層12および第1電極31の双方に導通している。保護素子50は、下部絶縁層21の上に配置され、かつ上部絶縁層22に覆われている。これにより、保護素子50は、絶縁層20に覆われた構成となる。保護素子50の構成材料は、多結晶シリコンを含む。保護素子50は、多結晶シリコンにp型ドーパントおよびn型ドーパントが添加されている。図3および図6に示すように、保護素子50は、コンタクト部51および複数の環状部52を有する。
【0060】
図3および図6に示すように、コンタクト部51は、厚さ方向zから視て保護素子50の中央に位置する。コンタクト部51の一部は、下部絶縁層21の下部第1開口211に収容されている。下部第1開口211に収容されたコンタクト部51の部分が、ベース層12のベース主面12Aに接している。コンタクト部51は、p型ドーパントをイオン注入により多結晶シリコンに添加させることによって形成される。このため、コンタクト部51は、第2導電型半導体である。コンタクト部51におけるp型ドーパントの濃度は、ベース層12におけるp型ドーパントの濃度よりも小である。したがって、断面図では、コンタクト部51を構成する第2導電型半導体を「p-」と表記する。
【0061】
図3および図6に示すように、複数の環状部52は、厚さ方向zから視てコンタクト部51を各々が囲んでいる。複数の環状部52は、複数の第1環状部521および複数の第2環状部522を含む。複数の第1環状部521は、p型ドーパントおよびn型ドーパントをイオン注入により多結晶シリコンに添加させることによって形成される。複数の第1環状部521において、n型ドーパントの濃度は、p型ドーパントの濃度よりも小である。このため、複数の第1環状部521は、第1導電型半導体である。また、複数の第1環状部521におけるn型ドーパントの濃度は、コレクタ層11におけるn型ドーパントの濃度よりも大である。複数の第2環状部522は、p型ドーパントをイオン注入により多結晶シリコンに添加させることによって形成される。このため、複数の第2環状部522は、第2導電型半導体である。複数の第2環状部522におけるp型ドーパントの濃度は、ベース層12におけるp型ドーパントの濃度よりも小である。したがって、断面図では、複数の第1環状部521を構成する第1導電型半導体を「n+」と表記し、複数の第2環状部522を構成する第2導電型半導体を「p-」と表記する。
【0062】
図3および図6に示すように、厚さ方向zから視て複数の環状部52は、複数の第1環状部521および複数の第2環状部522の各々が交互に配置されている。隣り合う第1環状部521および第2環状部522は、相互に接している。厚さ方向zから視て最も内側に位置する環状部52は、第1環状部521である。当該第1環状部521は、コンタクト部51に接している。厚さ方向zから視て最も外側に位置する環状部52は、第2環状部522である。当該第2環状部522は、第1電極31の第1導通部312と、第1抵抗素子41との双方に接している。これにより、第1抵抗素子41は、当該第2環状部522を介して第1電極31に導通している。したがって、第2電極32は、第2抵抗素子42、第1配線層34、第1抵抗素子41および当該第2環状部522を介して第1電極31に導通していることがいえる。
【0063】
図6に示すように、保護素子50には、厚さ方向zから視て最も外側に位置する第2環状部522と、当該第2環状部522の内周縁に接する第1環状部521と、当該第1環状部521の内周縁に接する第2環状部522とによって、pn接合による一対のダイオードが構成されている。また、保護素子50には、厚さ方向zから視てコンタクト部51と、コンタクト部51に接する第1環状部521と、当該第1環状部521の外周縁に接する第2環状部522とによって、pn接合による一対のダイオードが構成されている。これらの一対のダイオードの各々は、その導電経路における両端がともに同一極性である。当該極性は、アノードである。したがって、図11に示すように、半導体素子A10では、保護素子50は、導電経路における両端がともに同一極性となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを2つ含む。これらの一対のダイオードは、互いに直列接続されている。コンタクト部51に接するベース層12は、コンタクト部51とともに一対のダイオードを構成している。したがって、ベース層12は、保護素子50の一部を兼ね備えている。
【0064】
保護層60は、図5図10に示すように、絶縁層20に対して厚さ方向zの一方側に配置された電気絶縁部材である。保護層60は、絶縁層20および第1配線層34を覆っている。第1電極31よび第2電極32のそれぞれ一部ずつは、保護層60に覆われている。保護層60の構成材料は、たとえば窒化ケイ素(Si34)である。保護層60は、窒化ケイ素に替えて、ポリイミドを含んでもよい。
【0065】
次に、半導体素子A10の作用効果について説明する。
【0066】
半導体素子A10の構成によれば、図11に示すように、第1抵抗素子41に対して第1電極31に直列接続された保護素子50を備える。保護素子50は、導電経路における両端がともに同一極性となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを含む。これにより、第1電極31に静電気が印加された際、当該一対のダイオードのうち、第1電極31側がカソードであるダイオードに逆方向電圧が印加される。当該逆方向電圧がある一定の値を超えると、第1電極31側がカソードであるダイオードにブレークダウン電流が流れる。このため、静電気は、第1抵抗素子41には流れず、保護素子50に流れることとなる。したがって、半導体素子A10によれば、第1電極31(ベース電極)に接続された第1抵抗素子41が静電破壊されることを回避可能となる。
【0067】
半導体素子A10は、第1抵抗素子41と第2抵抗素子42との間に直列接続された第1配線層34を備える。第1配線層34は、ベース層12に接している。これにより、第1抵抗素子41により変換されたベース電流をベース層12に流し、かつ第1電極31からのリーク電流やノイズをベース層12に流すことなく第2抵抗素子42に流すことができる。
【0068】
半導体素子A10では、保護素子50は、ベース層12および第1電極31の双方に導通している。これにより、第1電極31に印加された静電気を、保護素子50、ベース層12およびエミッタ層13を介して第2電極32に到達させることができる。第2電極32に到達した静電気は、第2電極32に導通する外部接地端子に流れる。したがって、第1電極31に印加された静電気を、第1抵抗素子41および第2抵抗素子42に流れることなく外部接地端子に排出させることができる。
【0069】
半導体素子A10では、第1電極31は、厚さ方向zから視てベース層12に重なっている。保護素子50は、厚さ方向zにおいてベース層12と第1電極31との間に位置している。これにより、保護素子50を介した第1電極31からベース層12までの導電経路を極力短くすることができる。
【0070】
半導体素子A10では、保護素子50は、コンタクト部51および複数の環状部52を有する。コンタクト部51は、第2導電型半導体であり、かつベース層12に接している。複数の環状部52は、厚さ方向zから視てコンタクト部51を各々が囲んでいる。複数の環状部52は、第1導電型半導体である複数の第1環状部521と、第2導電型半導体である複数の第2環状部522との各々が交互に配置されている。これにより、保護素子50に含まれる当該一対のダイオードの数を増加させることができる。したがって、第1抵抗素子41に対する静電破壊耐量の増加を図ることができる。
【0071】
〔第2実施形態〕
図12図18に基づき、本発明の第2実施形態にかかる半導体素子A20について説明する。これらの図において、先述した半導体素子A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、理解の便宜上、図12は、保護層60を透過して示しており、図13は、上部絶縁層22および保護層60を透過して示している。
【0072】
半導体素子A20では、ベース層12、エミッタ層13、絶縁層20(下部絶縁層21および上部絶縁層22)、第1電極31、第2電極32、第1配線層34および保護素子50の構成が、先述した半導体素子A10に対して異なる。半導体素子A20では、半導体素子A10に対して、第2配線層35をさらに備える。
【0073】
図13に示すように、ベース層12のベース主面12Aの面積は、半導体素子A10のベース主面12Aの面積よりも小である。図15に示すように、ベース層12は、保護素子50に接していない。
【0074】
図16に示すように、エミッタ層13は、エミッタ主面13Aから厚さ方向zに向けて突出する凸状部131を有する。
【0075】
図13および図16に示すように、下部絶縁層21には、下部第2開口212および一対の下部第3開口213が設けられている。下部第2開口212は、厚さ方向zから視て第2電極32に重なり、かつエミッタ層13のエミッタ主面13Aに通じている。エミッタ層13の凸状部131は、下部第2開口212に収容されている。一対の下部第3開口213は、厚さ方向zから視て第1配線層34に重なり、かつベース主面12Aに通じている。厚さ方向zから視て、一方の下部第3開口213は、第2配線層35に対して第1配線層34が延びる方向の一方側に位置する。厚さ方向zから視て、他方の下部第3開口213は、第2配線層35に対して第1配線層34が延びる方向の他方側に位置する。
【0076】
図12に示すように、上部絶縁層22には、上部第1開口221、上部第2開口222、一対の上部第3開口223、上部第4開口224および上部第5開口225が設けられている。上部第2開口222および一対の上部第3開口223は、これらの構成が半導体素子A10の上部第2開口222および一対の上部第3開口223の構成と同様であるため、ここでの説明は省略する。上部第1開口221は、厚さ方向zから視て第1電極31の中央に重なり、かつ矩形状である。なお、上部第1開口221は、厚さ方向zから視て円形状などでもよい。上部第4開口224は、厚さ方向zから視て第1電極31に重なっている。図17に示すように、上部第4開口224は、上部絶縁層22を厚さ方向zに貫通し、かつ第1抵抗素子41に通じている。上部第5開口225は、厚さ方向zから視て第2電極32に重なっている。図16に示すように、上部第5開口225は、上部絶縁層22を厚さ方向zに貫通し、かつエミッタ層13の凸状部131に通じている。
【0077】
図13に示すように、第1電極31は、厚さ方向zから視てベース層12に重なっていない。第1電極31は、第1端子部311、第1導通部312および第1パッド部313を有する。第1端子部311の構成は、半導体素子A10の第1端子部311の構成と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0078】
図13図15に示すように、第1導通部312は、厚さ方向zから視て第1電極31の中央に位置する。第1導通部312は、上部第1開口221に収容されている。これにより、第1導通部312は、厚さ方向zから視て矩形状である。
【0079】
図12および図13に示すように、第1パッド部313は、第1端子部311の隅から第2方向yに向けて延びている。図17に示すように、第1パッド部313の先端の一部は、上部絶縁層22の上部第4開口224に収容され、かつ第1抵抗素子41に接している。これにより、第1電極31は、第1抵抗素子41に導通している。
【0080】
図15に示すように、第1電極31には、凸部314および第2凹部315Bが設けられておらず、第1凹部315Aのみが設けられている。厚さ方向zから視て、第1凹部315Aは、第1電極31の中央に位置し、かつ矩形状である。厚さ方向zから視た第1凹部315Aの形成位置は、第1導通部312の形成位置に対応している。
【0081】
図16に示すように、第2電極32の第2導通部322は、エミッタ層13の凸状部131に接している。第2導通部322は、上部絶縁層22の上部第5開口225に収容されている。
【0082】
図12および図13に示すように、第1配線層34は、本体部341、一対の第3導通部342および一対の第3パッド部343を有する。本体部341および一対の第3パッド部343は、これらの構成が半導体素子A10の本体部341および一対の第3パッド部343の構成と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0083】
図10に示す半導体素子A10と同様に、一対の第3導通部342は、下部絶縁層21の一対の下部第3開口213に収容されている。一対の第3導通部342は、ベース層12のベース主面12Aに接している。第1配線層34には、一対の凹部344が設けられている。厚さ方向zから視た一対の凹部344の形成位置は、一対の第3導通部342の形成位置に対応している。
【0084】
第2配線層35は、図18に示すように、保護素子50および第2電極32を相互に導通させる導電部材である。第2配線層35の構成材料は、多結晶シリコンを含む。第2配線層35は、p型ドーパントをイオン注入により多結晶シリコンに添加させることによって形成される。このため、第2配線層35は、第2導電型半導体である。第2配線層35におけるp型ドーパントの濃度は、ベース層12におけるp型ドーパントの濃度よりも小である。したがって、断面図では、第2配線層35を構成する第2導電型半導体を「p-」と表記する。図12図13および図16に示すように、第2配線層35は、帯状部351およびエミッタ接続部352を有する。
【0085】
図12および図13に示すように、帯状部351は、厚さ方向zから視て保護素子50の外縁から第2電極32に向けて延びている。帯状部351の一端は、保護素子50の外縁に接している。帯状部351の他端は、エミッタ接続部352につながっている。これにより、第2配線層35は、保護素子50に導通している。帯状部351は、厚さ方向zから視て第1配線層34に交差している。図16に示すように、帯状部351は、下部絶縁層21の上に配置され、かつ上部絶縁層22に覆われている。これにより、帯状部351は、絶縁層20に覆われた構成となる。厚さ方向zから視て帯状部351に交差する第1配線層34の本体部341の部分は、上部絶縁層22の上に配置されている。
【0086】
図12図13および図16に示すように、エミッタ接続部352は、厚さ方向zから視てエミッタ層13の凸状部131を囲んでいる。エミッタ接続部352は、厚さ方向zにおいてエミッタ層13のエミッタ主面13Aと、第2電極32の第2端子部321との間に位置する。エミッタ接続部352は、凸状部131に接している。これにより、第2配線層35は、エミッタ層13および第2電極32の双方に導通している。
【0087】
図14および図15に示すように、保護素子50は、厚さ方向zにおいてコレクタ層11と第1電極31との間に位置する。保護素子50のコンタクト部51は、第1電極31の第1導通部312に接している。これにより、保護素子50は、第1電極31に導通している。厚さ方向zから視て最も外側に位置する保護素子50の環状部52は、第1環状部521である。当該第1環状部521は、第2配線層35の帯状部351に接している。
【0088】
図18に示すように、半導体素子A20では、保護素子50は、導電経路における両端がともに同一極性(アノード)となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを2つ含む。保護素子50に接する第2配線層35の帯状部351は、これに接する環状部52の第1環状部521と、当該第1環状部521に接する環状部52の第2環状部522とともに、一対のダイオードを構成している。したがって、第2配線層35は、保護素子50の一部を兼ね備えている。これらの一対のダイオードは、第1電極31と第2電極32との導電経路において、互いに直列接続されている。
【0089】
<第2実施形態の第1変形例>
次に、図19に基づき、半導体素子A20の第1変形例にかかる半導体素子A21について説明する。
【0090】
半導体素子A21では、エミッタ層13、第2電極32および第2配線層35の構成が、先述した半導体素子A20と異なる。
【0091】
図19に示すように、エミッタ層13は、凸状部131を有さない構成となっている。下部絶縁層21の下部第2開口212には、第2電極32の第2導通部322と、第2配線層35のエミッタ接続部352の一部とが収容されている。第2導通部322は、エミッタ層13のエミッタ主面13Aに接している。エミッタ接続部352は、エミッタ主面13Aおよび第2導通部322の双方に接している。エミッタ接続部352は、厚さ方向zから視て第2導通部322の周縁の一部に接している。
【0092】
<第2実施形態の第2変形例>
次に、図20および図21に基づき、半導体素子A20の第2変形例にかかる半導体素子A22について説明する。
【0093】
半導体素子A22では、保護素子50の構成が、先述した半導体素子A20と異なる。
【0094】
図20に示すように、保護素子50の一部を構成する複数の環状部52は、厚さ方向zにおいてエミッタ層13と第2電極32との間に位置し、かつ厚さ方向zから視てエミッタ層13の凸状部131と、第2配線層35のエミッタ接続部352との間に位置する。当該複数の環状部52は、厚さ方向zから視て凸状部131を各々が囲んでいる。凸状部131には、環状部52の第2環状部522が接している。当該第2環状部522には、環状部52の第1環状部521が接している。当該第1環状部521には、エミッタ接続部352が接している。当該複数の環状部52と、エミッタ接続部352とにより、pn接合による一対のダイオードが構成されている。これらの一対のダイオードの各々は、その導電経路における両端がともに同一極性である。当該極性は、アノードである。
【0095】
図21に示すように、半導体素子A22では、保護素子50は、導電経路における両端がともに同一極性(アノード)となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを3つ含む。第2配線層35は、帯状部351に加えてエミッタ接続部352も保護素子50の一部を兼ね備えている。これらの一対のダイオードは、第1電極31と第2電極32との導電経路において、互いに直列接続されている。なお、これらの一対のダイオードには、エミッタ層13の凸状部131と、凸状部131に接する環状部52の第2環状部522とによってpn接合により構成された1つのダイオードが直列接続されている。
【0096】
次に、半導体素子A20の作用効果について説明する。
【0097】
半導体素子A20の構成によれば、図18に示すように、第1抵抗素子41に対して第1電極31に直列接続された保護素子50を備える。保護素子50は、導電経路における両端がともに同一極性となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを含む。したがって、半導体素子A20によっても、第1電極31に接続された第1抵抗素子41が静電破壊されることを回避可能となる。
【0098】
半導体素子A20は、保護素子50および第2電極32を相互に導通させる第2配線層35を備える。第2配線層35は、第2電極32に接している。これにより、第1電極31に印加された静電気を、保護素子50および第2配線層35を介して第2電極32に到達させることができる。したがって、第1電極31に印加された静電気が、半導体素子A20においてバイポーラトランジスタを構成するコレクタ層11、ベース層12およびエミッタ層13に流れないため、静電気に対するこれらの半導体層の保護効果が得られる。
【0099】
保護素子50は、コンタクト部51および複数の環状部52を有する。これらは、半導体素子A10と同一の導電型の半導体により構成される。このため、半導体素子A20によっても、保護素子50に含まれる当該一対のダイオードの数を増加させることができる。したがって、第1抵抗素子41に対する静電破壊耐量の増加を図ることができる。
【0100】
半導体素子A22では、保護素子50の一部を構成する複数の環状部52が、厚さ方向zにおいてエミッタ層13と第2電極32との間に位置し、かつ厚さ方向zから視てエミッタ層13の凸状部131と、第2配線層35のエミッタ接続部352との間に位置する。これにより、第1抵抗素子41に対する静電破壊耐量を、半導体素子A20よりも増加させることができる。
【0101】
〔第3実施形態〕
図22図28に基づき、本発明の第3実施形態にかかる半導体素子A30について説明する。これらの図において、先述した半導体素子A10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、理解の便宜上、図22は、保護層60を透過して示しており、図23は、上部絶縁層22および保護層60を透過して示している。図24は、第1電極31を透過して示している。図24において透過した第1電極31は、想像線で示している。
【0102】
半導体素子A30では、ベース層12、第1抵抗素子41および保護素子50の構成が、先述した半導体素子A10に対して異なる。半導体素子A30では、半導体素子A10に対して、補助保護素子70をさらに備える。
【0103】
図23に示すように、ベース層12のベース主面12Aの面積は、半導体素子A10のベース主面12Aの面積よりも小である。図25に示すように、ベース層12は、保護素子50に接していない。
【0104】
図23および図27に示すように、第1抵抗素子41は、厚さ方向zから視て補助保護素子70の周縁に接している。
【0105】
図25および図26に示すように、保護素子50は、コレクタ層11に接している。保護素子50は、第1拡散層531および第2拡散層532を有する。第1拡散層531は、コレクタ層11に接している。第1拡散層531は、ベース層12と同様に、p型ドーパントをイオン注入によりコレクタ層11の一部に添加させることによって形成される。このため、第1拡散層531は、コレクタ層11の一部が第2導電型半導体に置き換えられたものである。第1拡散層531におけるp型ドーパントの濃度は、ベース層12におけるp型ドーパントの濃度よりも小である。第1拡散層531は、ベース層12から離間している。第2拡散層532は、第1拡散層531に接している。第2拡散層532は、エミッタ層13と同様に、n型ドーパントをイオン注入により第1拡散層531の一部に添加させることによって形成される。このため、第2拡散層532は、第1拡散層531の一部が第1導電型半導体に置き換えられたものである。第2拡散層532におけるn型ドーパントの濃度は、コレクタ層11におけるn型ドーパントの濃度よりも大である。したがって、断面図では、第1拡散層531を構成する第1導電型半導体を「p-」と表記し、第2拡散層532を構成する第2導電型半導体を「n+」と表記する。
【0106】
図26に示すように、厚さ方向zの一方側を向く第1拡散層531および第2拡散層532の面は、コレクタ層11のコレクタ主面11Aと面一である。これらの面は、コレクタ主面11Aとともに下部絶縁層21に覆われている。下部絶縁層21に設けられた下部第1開口211は、厚さ方向zの一方側を向く第2拡散層532の面に通じている。
【0107】
図26に示すように、厚さ方向zにおいて第2拡散層532と、第2拡散層532に接する第1拡散層531と、第1拡散層531に接するコレクタ層11によって、pn接合により一対のダイオードが構成されている。当該一対のダイオードは、その導電経路における両端がともに同一極性である。当該極性は、カソードである。半導体素子A30では、保護素子50は、当該一対のダイオードを含む構成をとる。このため、コレクタ層11は、保護素子50の一部を兼ね備えている。
【0108】
補助保護素子70は、図28に示すように、第1抵抗素子41に対して第1電極31に並列接続されている。図24および図26に示すように、補助保護素子70は、厚さ方向zにおいて保護素子50と第1電極31との間に位置する。補助保護素子70は、保護素子50および第1電極31の双方に接している。これにより、補助保護素子70は、保護素子50および第1電極31の双方に導通している。したがって、保護素子50は、補助保護素子70に直列接続された構成となる。補助保護素子70は、下部絶縁層21の上に配置され、かつ上部絶縁層22に覆われている。これにより、補助保護素子70は、絶縁層20に覆われた構成となる。補助保護素子70の構成材料は、多結晶シリコンを含む。補助保護素子70は、多結晶シリコンにp型ドーパントおよびn型ドーパントが添加されている。補助保護素子70は、補助コンタクト部71および補助環状部72を有する。
【0109】
図24および図26に示すように、補助コンタクト部71は、厚さ方向zから視て補助保護素子70の中央に位置する。補助コンタクト部71の一部は、下部絶縁層21の下部第1開口211に収容されている。下部第1開口211に収容された補助コンタクト部71の部分が、保護素子50の第2拡散層532に接している。補助コンタクト部71は、p型ドーパントおよびn型ドーパントをイオン注入により多結晶シリコンに添加させることによって形成される。補助コンタクト部71において、n型ドーパントの濃度は、p型ドーパントの濃度よりも大である。このため、補助コンタクト部71は、第1導電型半導体である。また、補助コンタクト部71におけるn型ドーパントの濃度は、コレクタ層11におけるn型ドーパントの濃度よりも大である。したがって、断面図では、補助コンタクト部71を構成する第1導電型半導体を「n+」と表記する。
【0110】
図24および図26に示すように、複数の補助環状部72は、厚さ方向zから視て補助コンタクト部71を各々が囲んでいる。複数の補助環状部72は、複数の第1補助環状部721および複数の第2補助環状部722を含む。複数の第1環状部521は、p型ドーパントをイオン注入により多結晶シリコンに添加させることによって形成される。このため、複数の第1補助環状部721は、第2導電型半導体である。複数の第1補助環状部721におけるp型ドーパントの濃度は、ベース層12におけるp型ドーパントの濃度よりも小である。複数の第2補助環状部722は、p型ドーパントおよびn型ドーパントをイオン注入により多結晶シリコンに添加させることによって形成される。複数の第2補助環状部722において、n型ドーパントの濃度は、p型ドーパントの濃度よりも大である。このため、複数の第2補助環状部722は、第1導電型半導体である。また、複数の第2補助環状部722におけるn型ドーパントの濃度は、コレクタ層11におけるn型ドーパントの濃度よりも大である。したがって、断面図では、複数の第1補助環状部721を構成する第2導電型半導体を「p-」と表記し、複数の第2補助環状部722を構成する第1導電型半導体を「n+」と表記する。
【0111】
図24および図26に示すように、厚さ方向zから視て複数の補助環状部72は、複数の第1補助環状部721および複数の第2補助環状部722の各々が交互に配置されている。隣り合う第1補助環状部721および第2補助環状部722は、相互に接している。厚さ方向zから視て最も内側に位置する補助環状部72は、第1補助環状部721である。当該第1補助環状部721は、補助環状部72に接している。厚さ方向zから視て最も外側に位置する補助環状部72は、第1補助環状部721である。当該第1補助環状部721は、第1電極31の第1導通部312と、第1抵抗素子41との双方に接している。これにより、第1抵抗素子41は、当該第1補助環状部721を介して第1電極31に導通している。したがって、第2電極32は、第2抵抗素子42、第1配線層34、第1抵抗素子41および当該第1補助環状部721を介して第1電極31に導通していることがいえる。
【0112】
図26に示すように、補助保護素子70には、厚さ方向zから視て最も外側に位置する第1補助環状部721と、当該第1補助環状部721の内周縁に接する第2補助環状部722と、当該第2補助環状部722の内周縁に接する第1補助環状部721とによって、pn接合による一対のダイオードが構成されている。また、補助保護素子70には、厚さ方向zから視て補助コンタクト部71に接する第1補助環状部721と、当該第1補助環状部721の外周縁に接する第2補助環状部722と、当該第2補助環状部722の外周縁に接する第1補助環状部721とによって、pn接合による一対のダイオードが構成されている。これらの一対のダイオードの各々は、その導電経路における両端がともに同一極性である。当該極性は、アノードである。したがって、補助保護素子70は、導電経路における両端がともに同一極性となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを2つ含む。これらの一対のダイオードは、互いに直列接続されている。さらに、補助保護素子70には、補助コンタクト部71と、補助コンタクト部71に接する第1補助環状部721とによって、pn接合によるダイオードが形成されている。当該ダイオードの第1電極31側の極性は、アノードである。したがって、補助保護素子70と保護素子50との境界には、pn接合による障壁は形成されない。
【0113】
次に、半導体素子A30の作用効果について説明する。
【0114】
半導体素子A30の構成によれば、図28に示すように、第1抵抗素子41に対して第1電極31に直列接続された保護素子50を備える。保護素子50は、導電経路における両端がともに同一極性となるようにpn接合により構成された一対のダイオードを含む。したがって、半導体素子A30によっても、第1電極31に接続された第1抵抗素子41が静電破壊されることを回避可能となる。
【0115】
半導体素子A20は、保護素子50および第1電極31の双方に接する補助保護素子70を備える。これにより、第1電極31に印加された静電気を、補助保護素子70、保護素子50、コレクタ層11、ベース層12およびエミッタ層13を介して第2電極32に到達させることができる。
【0116】
補助保護素子70は、補助コンタクト部71および複数の補助環状部72を有する。補助コンタクト部71は、第1導電型半導体であり、かつ保護素子50に接している。複数の補助環状部72は、厚さ方向zから視て補助コンタクト部71を各々が囲んでいる。複数の補助環状部72は、第2導電型半導体である複数の第1補助環状部721と、第1導電型半導体である複数の第2補助環状部722との各々が交互に配置されている。これにより、補助保護素子70において、当該一対のダイオードを増加させることができる。したがって、第1抵抗素子41に対する静電破壊耐量の増加を図ることができる。
【0117】
半導体素子A30では、保護素子50に含まれる当該一対のダイオードにより得られる耐圧は、概ね10Vである。このため、第1抵抗素子41に対する駆動電圧(第1電極31に印加される電圧)が当該一対のダイオードにより得られる耐圧よりも低い場合は、半導体素子A30において補助保護素子70を備えない構成とすることができる。
【0118】
本発明は、先述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0119】
A10,A20,A21,A22,A30:半導体素子
10:基板
11:コレクタ層
11A:コレクタ主面
12:ベース層
12A:ベース主面
13:エミッタ層
13A:エミッタ主面
131:凸状部
20:絶縁層
21:下部絶縁層
21A:第1段差
21B:第2段差
211:下部第1開口
212:下部第2開口
213:下部第3開口
22:上部絶縁層
221:上部第1開口
222:上部第2開口
223:上部第3開口
224:上部第4開口
225:上部第5開口
31:第1電極
311:第1端子部
312:第1導通部
313:第1パッド部
314:凸部
315A:第1凹部
315B:第2凹部
32:第2電極
321:第2端子部
322:第2導通部
323:第2パッド部
324:凹部
33:第3電極
34:第1配線層
341:本体部
342:第3導通部
343:第3パッド部
344:凹部
35:第2配線層
351:帯状部
352:エミッタ接続部
41:第1抵抗素子
42:第2抵抗素子
50:保護素子
51:コンタクト部
52:環状部
521:第1環状部
522:第2環状部
531:第1拡散層
532:第2拡散層
60:保護層
70:補助保護素子
71:補助コンタクト部
72:補助環状部
721:第1補助環状部
722:第2補助環状部
z:厚さ方向
x:第1方向
y:第2方向
図1
図2
図3
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