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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】雨水排水装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/08 20060101AFI20220526BHJP
   E04D 13/068 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
E04D13/08 P
E04D13/068 504A
E04D13/08 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018096784
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019203245
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 純一
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅幸
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-029690(JP,U)
【文献】特開2012-180716(JP,A)
【文献】実開昭60-019622(JP,U)
【文献】特開2006-097397(JP,A)
【文献】実開昭56-005715(JP,U)
【文献】特開2003-129626(JP,A)
【文献】特開2003-119976(JP,A)
【文献】特開2008-156953(JP,A)
【文献】特開平09-228593(JP,A)
【文献】特開平11-071871(JP,A)
【文献】特開平05-311829(JP,A)
【文献】実開昭59-075830(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/08
E04D 13/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設部分と増築部分とから構成された建築物における前記既設部分の屋根上に降下した雨水を排水する雨水排水装置であって、
前記既設部分の屋根に設けられた排水口に連通すると共に、前記増築部分の屋根の上方の位置に排水口が形成された連通樋と、
前記増築部分の屋根上における、上面視で前記連通樋の前記排水口に重なる位置に設置され、上面が開放された受樋と、
前記増築部分の屋根上に設置され、上面が開放された箱樋であって、
前記受樋に接続され、前記受樋との接続箇所から水下側に向かって略直線状に延びる直線状部と、
前記直線状部の水下側の端部に接続され、前記直線状部と比較して屋根勾配方向に直交する第1の方向の幅が広く、前記第1の方向における位置が互いに異なる複数の排水口が形成された拡幅部と、
を有する箱樋と、
前記増築部分の屋根上に設置され、前記連通樋を支持する樋受け部材と、
を備える、雨水排水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の雨水排水装置であって、
前記増築部分の屋根は、複数の山部と複数の谷部とを有する折板により構成されており、
前記箱樋の前記拡幅部に形成された前記複数の排水口のそれぞれは、上面視で、前記折板における互いに異なる前記谷部に重なる位置に配置されている、雨水排水装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の雨水排水装置であって、
前記箱樋の前記拡幅部に形成された前記複数の排水口の内、一の前記排水口の幅は、前記一の排水口より前記直線状部の中心軸から離間した他の前記排水口の幅より狭い、雨水排水装置。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の雨水排水装置であって、
前記箱樋の前記拡幅部に形成された前記複数の排水口の内の少なくとも1つは、前記拡幅部の側面に設けられており、かつ、前記拡幅部に形成された前記複数の排水口の内の少なくとも他の1つは、前記拡幅部の底面に設けられている、雨水排水装置。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の雨水排水装置であって、
前記第1の方向における前記受樋の幅は、前記第1の方向における前記箱樋の前記直線状部の幅より広い、雨水排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、雨水排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋根上に降下した雨水は、樋等から構成される雨水排水装置を介して外部の雨水側溝等に排水される。雨水排水装置には、雨水を、漏水させることなく速やかに排水する性能が求められる。特に工場等のように屋根面積が大きい建築物の雨水排水装置には、大量の雨水を円滑に排水できる性能が求められる。その他に、雨水排水装置には、メンテナンス性が高いことやコストが低いことも求められる。
【0003】
また、建築物を増築する際には、雨水排水装置により、増築部分の屋根上に降下した雨水を円滑に排水できることはもちろんのこと、既設部分の屋根上に降下した雨水を円滑に排水できることも求められる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平2-134228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既設部分と増築部分とから構成された建築物における既設部分の屋根上に降下した雨水を排水する従来の雨水排水装置には、雨水を漏水させることなく円滑に排水できること、メンテナンス性が高いこと、および、コストが低いことという観点で向上の余地がある。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示される雨水排水装置は、既設部分と増築部分とから構成された建築物における前記既設部分の屋根上に降下した雨水を排水する雨水排水装置であって、前記既設部分の屋根に設けられた排水口に連通すると共に、前記増築部分の屋根の上方の位置に排水口が形成された連通樋と、前記増築部分の屋根上における、上面視で前記連通樋の前記排水口に重なる位置に設置され、上面が開放された受樋と、前記増築部分の屋根上に設置され、上面が開放された箱樋であって、前記受樋に接続され、前記受樋との接続箇所から水下側に向かって略直線状に延びる直線状部と、前記直線状部の水下側の端部に接続され、前記直線状部と比較して屋根勾配方向に直交する第1の方向の幅が広く、前記第1の方向における位置が互いに異なる複数の排水口が形成された拡幅部と、を有する箱樋と、を備える。本雨水排水装置では、箱樋の拡幅部に、屋根勾配方向に直交する第1の方向における位置が互いに異なる複数の排水口が形成されているため、既設部分の屋根上に降下した雨水を、増築部分の屋根における水下側の端部付近に分散して放流することができる。そのため、本雨水排水装置によれば、増築部分の屋根上における雨水の集中を抑制して漏水リスクを低減することができ、既設部分の屋根上に降下した雨水を円滑に排水することができる。また、本雨水排水装置では、受樋および箱樋の上面が開放されているため、SGP管等の管状の樋を用いる場合と比較して、メンテナンス性を向上させることができる。また、本雨水排水装置では、連通樋と受樋とが連結されておらず、縁が切れているため、両者の間にエキスパンションジョイントを設ける必要がなく、コストを低減することができる。このように、本雨水排水装置によれば、建築物の既設部分の屋根上に降下した雨水を漏水させることなく円滑に排水することができ、メンテナンス性を向上させることができ、かつ、コストを低減することができる。
【0009】
(2)上記雨水排水装置において、さらに、前記増築部分の屋根上に設置され、前記連通樋を支持する樋受け部材を備える構成としてもよい。本雨水排水装置によれば、連通樋を増築部分の屋根上に確実に支持させつつ、連通樋と受樋とが連結されていない構成を採用することができる。
【0010】
(3)上記雨水排水装置において、前記増築部分の屋根は、複数の山部と複数の谷部とを有する折板により構成されており、前記箱樋の前記拡幅部に形成された前記複数の排水口のそれぞれは、上面視で、前記折板における互いに異なる前記谷部に重なる位置に配置されている構成としてもよい。本雨水排水装置では、複数の排水口のそれぞれから折板上に放出された雨水は、互いに異なる谷部を通って排水される。従って、本雨水排水装置によれば、増築部分の屋根上における雨水の集中を効果的に抑制して漏水リスクをより低減することができ、既設部分の屋根上に降下した雨水をさらに円滑に排水することができる。
【0011】
(4)上記雨水排水装置において、前記箱樋の前記拡幅部に形成された前記複数の排水口の内、一の前記排水口の幅は、前記一の排水口より前記直線状部の中心軸から離間した他の前記排水口の幅より狭い構成としてもよい。本雨水排水装置では、箱樋の直線状部から拡幅部内に流入した雨水は、直線状部の中心軸に近い排水口に集中することなく、複数の排水口から良好に分散して放出される。従って、本雨水排水装置によれば、増築部分の屋根上における雨水の集中を極めて効果的に抑制して漏水リスクをより低減することができ、既設部分の屋根上に降下した雨水を極めて円滑に排水することができる。
【0012】
(5)上記雨水排水装置において、前記箱樋の前記拡幅部に形成された前記複数の排水口の内の少なくとも1つは、前記拡幅部の側面に設けられており、かつ、前記拡幅部に形成された前記複数の排水口の内の少なくとも他の1つは、前記拡幅部の底面に設けられている構成としてもよい。本雨水排水装置では、複数の排水口の配置を、雨水が極めて良好に分散して放出されるような配置とすることができる。従って、本雨水排水装置によれば、増築部分の屋根上における雨水の集中を極めて効果的に抑制して漏水リスクをより低減することができ、既設部分の屋根上に降下した雨水を極めて円滑に排水することができる。
【0013】
(6)上記雨水排水装置において、前記第1の方向における前記受樋の幅は、前記第1の方向における前記箱樋の前記直線状部の幅より広い構成としてもよい。本雨水排水装置によれば、受樋の容量を大きくしてバッファとしての機能を高めることができる。従って、本雨水排水装置によれば、増築部分の屋根上における雨水の集中を抑制して漏水リスクをより低減することができ、既設部分の屋根上に降下した雨水を円滑に排水することができる。また、連通樋の排水口が変位しても、連通樋の排水口から放出された雨水を受樋によって確実に受けることができ、漏水リスクをより低減することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、雨水排水装置、雨水排水装置を備える建築物、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態における建築物10の平面(屋根面)の構成を概略的に示す説明図である。
図2】本実施形態における建築物10の屋根付近の断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】雨水排水装置100の平面構成を概略的に示す説明図である。
図4】雨水排水装置100を構成する箱樋140の一部分の平面構成を拡大して示す説明図である。
図5】雨水排水装置100を構成する箱樋140の一部分の構成を拡大して示す斜視図である。
図6】樋の正面図である。
図7】樋の右側面図である。
図8】樋の左側面図である。
図9】樋の平面図である。
図10】樋の底面図である。
図11】樋の水下側の先端部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A-1.構成:
(建築物10の構成)
図1は、本実施形態における建築物10の平面(屋根面)の構成を概略的に示す説明図であり、図2は、本実施形態における建築物10の屋根付近の断面構成(図1および後述する図3のII-IIの位置における断面構成)を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、Z軸正方向を「上方向」といい、Z軸負方向を「下方向」というものとする。また、各図において、建築物10や建築物10を構成する各部分の一部の図示が省略されていることがある。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態における建築物10は、既設部分12と、増築部分14とから構成されている。既設部分12は、増築工事前に存在していた部分であり、増築部分14は、増築工事において新たに建てられた部分である。本実施形態では、増築部分14は、既設部分12に対してY軸負方向側に隣接して設けられている。なお、本実施形態の建築物10は、工場であり、比較的面積の大きい屋根を有する。
【0018】
建築物10の既設部分12の屋根13の内、少なくとも増築部分14に隣接する部分は、増築部分14に向かう方向(すなわち、Y軸正方向からY軸負方向に向かう方向)の屋根勾配を有する。また、建築物10の増築部分14の屋根15は、既設部分12から遠ざかる方向(すなわち、Y軸正方向からY軸負方向に向かう方向)の屋根勾配を有する。なお、本実施形態では、増築部分14の屋根15は、複数の山部104と複数の谷部103とを有する折板102により構成されている(図5参照)。
【0019】
建築物10の増築部分14には、増築部分14の屋根15上に降下した雨水を排水する雨水排水装置が設けられている。具体的には、増築部分14には、軒樋150と、複数のルーフドレン152と、複数の竪樋160とが設けられている。図1において矢印F2で示すように、増築部分14の屋根15上に降下した雨水は、屋根15(折板102)上を屋根勾配に沿って水下方向(Y軸負方向)に流下して軒樋150に流れ込み、各ルーフドレン152および各竪樋160を経由して、外部の雨水側溝20に放出される。なお、このような雨水排水装置は、後述する既設部分12の屋根13上に降下した雨水を排水する雨水排水装置100からの排水が流入することも考慮して設計されている。
【0020】
また、建築物10の増築部分14には、既設部分12の屋根13上に降下した雨水を排水する雨水排水装置100が設けられている。
【0021】
(雨水排水装置100の構成)
図3は、雨水排水装置100の平面構成を概略的に示す説明図である。また、図4は、雨水排水装置100を構成する箱樋140の一部分の平面構成を拡大して示す説明図であり、図5は、雨水排水装置100を構成する箱樋140の一部分の構成を拡大して示す斜視図である。図1から図3に示すように、雨水排水装置100は、連通樋110と、樋受け部材120と、受樋130と、箱樋140とを備える。
【0022】
連通樋110は、建築物10の既設部分12の屋根13に設けられたルーフドレン(排水口)252に連通する管状の樋である。連通樋110は、既設部分12の屋根13上に降下した雨水を、後述する受樋130に導くための樋である。本実施形態では、連通樋110は、建築物10の増築の際に、既設部分12の屋根13のルーフドレン252に接続された既設樋210と連結するように設置されたものであり、既設樋210を介して間接的に該ルーフドレン252に連通している。ただし、連通樋110が、建築物10の増築の前から存在する既設樋そのものであるとしてもよい。連通樋110の先端側の部分は、増築部分14の屋根15の上方の位置において略鉛直下方向に延びており、その先端の位置に、排水口112が形成されている。
【0023】
樋受け部材120は、建築物10の増築部分14の屋根15(折板102)上に設置され、支持金物105によって増築部分14の屋根15に固定されている。樋受け部材120は、連通樋110を下方から支持している。
【0024】
受樋130は、建築物10の増築部分14の屋根15(折板102)上における、上面視で連通樋110の排水口112と重なる位置に設置され、支持金物105によって増築部分14の屋根15に固定されている。受樋130は、上面が開放された略箱状の樋である。すなわち、受樋130は、連通樋110と連結されておらず、連通樋110とは縁が切れている。受樋130は、連通樋110から排出された雨水を一旦受けるバッファとして機能する樋である。本実施形態では、受樋130の上面視での形状は、略矩形である。受樋130の底面における各辺からは、側壁134が立ち上がっている。受樋130の側壁134の内、水下側(Y軸負方向側)に位置する側壁134には、開口132が形成されている。屋根勾配方向(本実施形態ではY軸方向)に直交する方向(本実施形態ではX軸方向)における受樋130の幅W0は、同方向における後述する箱樋140の直線状部141の幅W1より広い。
【0025】
箱樋140は、建築物10の増築部分14の屋根15(折板102)上に設置され、支持金物105によって増築部分14の屋根15に固定されている。箱樋140は、上面が開放された略箱状の樋である。箱樋140は、受樋130から排出された雨水を、増築部分14の屋根15の軒先付近まで導く樋である。箱樋140は、直線状部141と、拡幅部142とを有する。
【0026】
箱樋140の直線状部141は、受樋130(より詳細には、受樋130の開口132)に接続され、かつ、受樋130との接続箇所から水下側に向かって(すなわち、Y軸負方向側に向かって)略直線状に延びる部分である。本実施形態では、直線状部141の上面視での形状は、略矩形である。直線状部141の底面における屋根勾配方向(Y軸方向)に略平行な2つの辺からは、側壁48が立ち上がっている。一方、直線状部141の底面における屋根勾配方向(Y軸方向)に略直交する2つの辺(水上側の端部を構成する辺および水下側の端部を構成する辺)の位置では、側壁が立ち上がっておらず、側面が開放されている。直線状部141における水上側の端部の開放された側面は、受樋130の開口132に連通している。
【0027】
箱樋140の拡幅部142は、直線状部141の水下側の端部に接続された部分であり、増築部分14の屋根15の軒先付近に配置されている。屋根勾配方向(Y軸方向)に直交する方向(X軸方向)において、拡幅部142の幅W2は、直線状部141の幅W1より広くなっている。本実施形態では、拡幅部142の上面視での形状は、略矩形から水下側の部分を略三角形状に削り取ったような形状である。すなわち、拡幅部142の底面41の各辺の内、水上側の端部を構成する辺、および、屋根勾配方向(Y軸方向)に直交する方向(X軸方向)における両端部を構成する2つの辺は、略直線状であるが、水下側の端部を構成する辺は、直線状部141の中心軸CLから遠ざかるほど水下側に位置するような勾配を有している。なお、本実施形態では、直線状部141の中心軸CLは、拡幅部142の中心軸でもある。拡幅部142の底面41における水上側の端部を構成する辺の内、中心軸CL付近の部分を除く部分からは、側壁42が立ち上がっている。また、拡幅部142の底面41における水下側の端部を構成する2つの辺の内、中心軸CL付近の部分を除く部分からは、側壁42が立ち上がっている。拡幅部142の底面41の外周辺における残りの部分の位置では、側壁が立ち上がっておらず、側面が開放されている。拡幅部142における水上側の端部の開放された側面は、直線状部141における水下側の端部の開放された側面に連通している。
【0028】
また、図4および図5に示すように、箱樋140の拡幅部142には、複数の(本実施形態では5つの)排水口40が形成されている。拡幅部142に形成された複数の排水口40は、屋根勾配方向(Y軸方向)に直交する方向(X軸方向)における位置が互いに異なっている。より詳細には、複数の排水口40のそれぞれは、上面視で、増築部分14の屋根15を構成する折板102における互いに異なる谷部103に重なる位置に配置されている。
【0029】
箱樋140の拡幅部142に形成された複数の排水口40の内、直線状部141の中心軸CLの最も近くに位置する排水口40(以下、「中央排水口40a」という)は、水下側の端部の側面に形成されている。また、複数の排水口40の内、直線状部141の中心軸CLから最も離間した排水口40(以下、「端部排水口40c」という)は、屋根勾配方向(Y軸方向)に直交する方向(X軸方向)の両端部の側面に形成されている。また、複数の排水口40の内、直線状部141の中心軸CLからの距離が中央排水口40aよりも遠く、かつ、端部排水口40cよりも近い排水口40(以下、「中間排水口40b」という)は、底面41に形成されている。本実施形態では、複数の排水口40の内、一の排水口40の幅(最大幅)は、該一の排水口40より直線状部141の中心軸CLから離間した他の排水口40の幅(最大幅)より狭くなっている。例えば、中間排水口40bの幅は、端部排水口40cの幅よりも狭くなっており、中央排水口40aの幅は、中間排水口40bの幅よりも狭くなっている。
【0030】
各図において矢印F1で示すように、建築物10の既設部分12の屋根13上に降下した雨水は、既設部分12の屋根13に設けられたルーフドレン(排水口)252から既設樋210を介して連通樋110に流入し、連通樋110の排水口112から鉛直方向に落下して、上面が開放された受樋130内に流入する。また、受樋130に流入した雨水は、受樋130の開口132を介して箱樋140の直線状部141内に進入し、直線状部141内を水下方向に流下する。直線状部141における水下側の端部に至った雨水は、箱樋140の拡幅部142内に進入し、拡幅部142に形成された複数の(5つの)排水口40から、増築部分14の屋根15(折板102)上における対応する谷部103に放出される。増築部分14の屋根15(折板102)上の各谷部103に放出された雨水は、各谷部103を流下して軒樋150内に流入する。その後は、上述した増築部分14の屋根15上に降下した雨水の排水経路と同様に、軒樋150からルーフドレン152および竪樋160を経由して、外部の雨水側溝20に放出される。
【0031】
A-2.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の雨水排水装置100は、既設部分12と増築部分14とから構成された建築物10における既設部分12の屋根13上に降下した雨水を排水する装置であり、連通樋110と、受樋130と、箱樋140とを備える。連通樋110は、既設部分12の屋根13に設けられたルーフドレン(排水口)252に連通する樋であり、増築部分14の屋根15の上方の位置に排水口112が形成されている。受樋130は、増築部分14の屋根15上における、上面視で連通樋110の排水口112に重なる位置に設置され、上面が開放された樋である。箱樋140は、増築部分14の屋根15上に設置され、上面が開放された樋であり、直線状部141と拡幅部142とを有する。箱樋140の直線状部141は、受樋130に接続され、受樋130との接続箇所から水下側に向かって略直線状に延びる部分である。箱樋140の拡幅部142は、直線状部141の水下側の端部に接続された部分である。拡幅部142は、直線状部141と比較して、屋根勾配方向に直交する方向の幅が広い。また、拡幅部142には、屋根勾配方向に直交する方向における位置が互いに異なる複数の排水口40が形成されている。
【0032】
このように、本実施形態の雨水排水装置100では、箱樋140の拡幅部142に、屋根勾配方向に直交する方向における位置が互いに異なる複数の排水口40が形成されているため、既設部分12の屋根13上に降下した雨水を、増築部分14の屋根15における水下側の端部付近に分散して放流することができる。そのため、本実施形態の雨水排水装置100によれば、増築部分14の屋根15上における雨水の集中を抑制して漏水リスクを低減することができ、既設部分12の屋根13上に降下した雨水を円滑に排水することができる。また、本実施形態の雨水排水装置100では、受樋130および箱樋140の上面が開放されているため、SGP管等の管状の樋を用いる場合と比較して、メンテナンス性を向上させることができる。また、本実施形態の雨水排水装置100では、連通樋110と受樋130とが連結されておらず、縁が切れているため、両者の間にエキスパンションジョイントを設ける必要がなく、コストを低減することができる。このように、本実施形態の雨水排水装置100によれば、建築物10の既設部分12の屋根13上に降下した雨水を漏水させることなく円滑に排水することができ、メンテナンス性を向上させることができ、かつ、コストを低減することができる。
【0033】
また、本実施形態の雨水排水装置100は、さらに、増築部分14の屋根15上に設置され、連通樋110を支持する樋受け部材120を備える。そのため、本実施形態の雨水排水装置100によれば、連通樋110を増築部分14の屋根15上に確実に支持させつつ、連通樋110と受樋130とが連結されていない構成を採用することができる。
【0034】
また、本実施形態の雨水排水装置100では、増築部分14の屋根15は、複数の山部104と複数の谷部103とを有する折板102により構成されている。また、箱樋140の拡幅部142に形成された複数の排水口40のそれぞれは、上面視で、折板102における互いに異なる谷部103に重なる位置に配置されている。そのため、複数の排水口40のそれぞれから折板102上に放出された雨水は、互いに異なる谷部103を通って軒樋150に排水される。従って、本実施形態の雨水排水装置100によれば、増築部分14の屋根15上における雨水の集中を効果的に抑制して漏水リスクをより低減することができ、既設部分12の屋根13上に降下した雨水をさらに円滑に排水することができる。
【0035】
また、本実施形態の雨水排水装置100では、箱樋140の拡幅部142に形成された複数の排水口40の内、一の排水口40(例えば、中央排水口40a)の幅は、該一の排水口40より直線状部141の中心軸CLから離間した他の排水口40(例えば、中間排水口40b)の幅より狭い。そのため、箱樋140の直線状部141から拡幅部142内に流入した雨水は、直線状部141の中心軸CLに近い排水口40に集中することなく、複数の排水口40から良好に分散して放出される。従って、本実施形態の雨水排水装置100によれば、増築部分14の屋根15上における雨水の集中を極めて効果的に抑制して漏水リスクをより低減することができ、既設部分12の屋根13上に降下した雨水を極めて円滑に排水することができる。
【0036】
また、本実施形態の雨水排水装置100では、箱樋140の拡幅部142に形成された複数の排水口40の内の少なくとも1つ(例えば、中央排水口40aおよび端部排水口40c)は、拡幅部142の側面に設けられており、かつ、複数の排水口40の内の少なくとも他の1つ(例えば、中間排水口40b)は、拡幅部142の底面41に設けられている。そのため、複数の排水口40の配置を、雨水が極めて良好に分散して放出されるような配置とすることができる。従って、本実施形態の雨水排水装置100によれば、増築部分14の屋根15上における雨水の集中を極めて効果的に抑制して漏水リスクをより低減することができ、既設部分12の屋根13上に降下した雨水を極めて円滑に排水することができる。
【0037】
また、本実施形態の雨水排水装置100では、屋根勾配方向に直交する方向における受樋130の幅W0は、箱樋140の直線状部141の幅W1より広い。そのため、受樋130の容量を大きくしてバッファとしての機能を高めることができる。従って、本実施形態の雨水排水装置100によれば、増築部分14の屋根15上における雨水の集中を抑制して漏水リスクをより低減することができ、既設部分12の屋根13上に降下した雨水を円滑に排水することができる。また、連通樋110の排水口112が変位しても、連通樋110の排水口112から放出された雨水を受樋130によって確実に受けることができ、漏水リスクをより低減することができる。
【0038】
A-3.樋の形状の詳細:
受樋130と箱樋140との一体部材(以下、単に「樋」という)の形状を詳細に説明する。樋は、上述したように、屋根上に設置され、屋根に降下した雨水を排水するための物品である。図6は、樋の正面図であり、図7は、樋の右側面図であり、図8は、樋の左側面図であり、図9は、樋の平面図であり、図10は、樋の底面図である。なお、樋の背面図は、図6に示す樋の正面図と対称であるため、省略している。なお、樋の正面は、上述した実施形態(図1から図5)におけるX軸正方向側の面である。
【0039】
図6図9および図10における省略箇所の図面上の寸法は、38cmである。また、図6から図10において、実線で表した部分は、樋の水下側の先端部分(上記実施形態における拡幅部142に略一致する部分)であり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。図11は、樋の水下側の先端部分の斜視図である。
【0040】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0041】
上記実施形態における建築物10や雨水排水装置100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、建築物10は工場であるとしているが、建築物10は他の工場以外の建築物であってもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、箱樋140の拡幅部142に5つの排水口40が形成されているが、拡幅部142に形成された排水口40の個数は5個に限られない。また、拡幅部142の形状や、拡幅部142における各排水口40の形状や配置は、種々変形可能である。
【0043】
また、上記実施形態では、建築物10の増築部分14の屋根15が折板102により構成されているが、増築部分14の屋根15が他の材料により構成されていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、樋受け部材120が設けられているが、樋受け部材120を省略してもよい。また、上記実施形態では、屋根勾配方向に直交する方向における受樋130の幅W0は箱樋140の直線状部141の幅W1より広いとしているが、必ずしもこのような関係である必要はない。
【符号の説明】
【0045】
10:建築物 12:既設部分 13:屋根 14:増築部分 15:屋根 20:雨水側溝 40:排水口 40a:中央排水口 40b:中間排水口 40c:端部排水口 41:底面 42:側壁 48:側壁 100:雨水排水装置 102:折板 103:谷部 104:山部 105:支持金物 110:連通樋 112:排水口 120:樋受け部材 130:受樋 132:開口 134:側壁 140:箱樋 141:直線状部 142:拡幅部 150:軒樋 152:ルーフドレン 160:竪樋 210:既設樋 252:ルーフドレン CL:中心軸
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