(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】内圧防爆用アンテナおよびアンテナの内圧防爆構造、内圧防爆用アンテナの製造方法並びに移動体
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/42 20060101AFI20220526BHJP
H01Q 1/40 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
H01Q1/42
H01Q1/40
(21)【出願番号】P 2018120737
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 献
(72)【発明者】
【氏名】宿谷 光司
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 弘祥
(72)【発明者】
【氏名】小堀 周平
(72)【発明者】
【氏名】大西 典子
(72)【発明者】
【氏名】小島 弘義
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-011225(JP,A)
【文献】特開2015-036172(JP,A)
【文献】特開2003-115712(JP,A)
【文献】特開平02-035803(JP,A)
【文献】特表2013-504259(JP,A)
【文献】特開2015-222965(JP,A)
【文献】米国特許第06137452(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタを有するアンテナ本体と、
内部に少なくとも前記アンテナ本体の一部が隙間なく収容されるアンテナケースと、
を備
え、
前記アンテナケースは、先端部が閉塞して基端部が開口する筒形状をなすケース本体と、前記ケース本体と前記アンテナ本体との間に充填される充填部材とを有する、
ことを特徴とする内圧防爆用アンテナ。
【請求項2】
前記ケース本体と前記充填部材は、異なる材料により構成されることを特徴とする
請求項1に記載の内圧防爆用アンテナ。
【請求項3】
前記アンテナケースは、基端部が内圧防爆用フレームに固定されて前記コネクタが前記内圧防爆用フレームの内部に露出することを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の内圧防爆用アンテナ。
【請求項4】
前記アンテナケースは、樹脂材料により形成されることを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の内圧防爆用アンテナ。
【請求項5】
一端部が閉塞されたアンテナケースの内部にコネクタを有するアンテナ本体が隙間なく収容され、
前記アンテナケースの他端部が中空密閉形状をなす内圧防爆用フレームに固定さ
れ、
前記アンテナケースは、先端部が閉塞して基端部が開口する筒形状をなすケース本体と、前記ケース本体と前記アンテナ本体との間に充填される充填部材とを有する、
ことを特徴とするアンテナの内圧防爆構造。
【請求項6】
アンテナケース本体内に液状の樹脂材料を充填する工程と、
前記アンテナケース本体内に充填された前記液状の樹脂材料にアンテナ本体を埋め込む工程と、
前記アンテナケース本体の内部を真空引きする工程と、
を有することを特徴とする内圧防爆用アンテナの製造方法。
【請求項7】
中空形状で密閉構造をなすフレームと、
前記フレームを移動させる移動装置と、
前記フレーム内に空気を供給するエア供給装置と、
前記フレーム内の空気を排出する排気装置と、
請求項1から
請求項4のいずれか一項に記載の内圧防爆用アンテナを有すると共に前記フレーム内に配置されて外部と通信を行う通信装置と、
前記フレーム内に配置されて前記移動装置と前記エア供給装置と前記排気装置と前記通信装置を制御する制御装置と、
を備える、
ことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内圧防爆機能を有するフレームに装着される内圧防爆用アンテナおよびアンテナの内圧防爆構造、内圧防爆用アンテナの製造方法、並びに、内圧防爆用アンテナを備える移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
操作装置により移動可能なロボットを遠隔で操作して各種の作業を行うとき、操作装置とロボットとの間で各種の信号の送受信を行う通信装置が必要となる。即ち、ロボットは、制御装置や駆動装置などの他に、アンテナを有する送受信機を搭載する必要がある。また、各種の作業を行う環境が爆発性雰囲気であるとき、ロボットの作動時に発生する火花が引火して火災が発生するおそれがある。そのため、この場合、ロボットは、防爆構造が必要となる。
【0003】
従来のロボットの防爆構造としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された産業用ロボットは、移動可能なフレームに制御装置とバッテリとモータなどを配置すると共に、エア供給装置によりフレーム内にエアを供給して内部を所定圧力より高く保持する内圧防爆構造とするものである。また、従来の防爆用アンテナとしては、例えば、下記特許文献2に記載されたものがある。特許文献2に記載されたアンテナは、防爆型機器本体にエルボ型継ぎ手を固定し、アンテナが内蔵されたアンテナカバーをエルボ型継ぎ手に取付けるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-036172号公報
【文献】特開2008-078835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されたアンテナは、耐圧式防爆構造であることから、装置が大型化し、ロボットに搭載した場合、ロボットの大型化を招いてしまう。また、アンテナを小型化するために、内圧防爆式のアンテナを適用することが考えられる。この場合、内圧防爆式のアンテナは、アンテナ本体をアンテナカバーにより被覆する構造となる。しかし、このような構造では、アンテナカバーの先端部に閉塞された空間が存在することから、ロボットのフレーム内の掃気するとき、アンテナカバーの先端部の空気を掃気することができず、安全性を確保することができないという課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、十分な安全性を確保すると共に装置の大型化を抑制する内圧防爆用アンテナおよびアンテナの内圧防爆構造、内圧防爆用アンテナの製造方法並びに移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の内圧防爆用アンテナは、コネクタを有するアンテナ本体と、内部に少なくとも前記アンテナ本体の一部が隙間なく収容されるアンテナケースと、を備えることを特徴とするものである。
【0008】
従って、アンテナケースの内部にアンテナ本体の一部が隙間なく収容されることから、アンテナの内部を事前に掃気する必要がなく、内圧防爆用アンテナとして十分な安全性を確保することができると共に、装置の大型化を抑制することができる。
【0009】
本発明の内圧防爆用アンテナでは、前記アンテナケースは、基端部が内圧防爆用フレームに固定されて前記コネクタが前記内圧防爆用フレームの内部に露出することを特徴としている。
【0010】
従って、アンテナケースの基端部が内圧防爆用フレームに固定されて内部にコネクタが露出することから、アンテナ本体をコネクタにより内圧防爆用フレーム内の通信装置に容易に接続することができる。
【0011】
本発明の内圧防爆用アンテナでは、前記アンテナケースは、樹脂材料により形成されることを特徴としている。
【0012】
従って、アンテナケースを樹脂材料により形成することから、静電気対策を施すことで、小型軽量化を図ることができる。
【0013】
本発明の内圧防爆用アンテナでは、前記アンテナケースは、先端部が閉塞して基端部が開口する筒形状をなすケース本体と、前記ケース本体と前記アンテナ本体との間に充填される充填部材とを有することを特徴としている。
【0014】
従って、アンテナケースをケース本体と充填部材とから構成することから、充填部材によりケース本体とアンテナ本体との隙間を容易になくすことができる。
【0015】
本発明の内圧防爆用アンテナでは、前記ケース本体と前記充填部材は、異なる材料により構成されることを特徴としている。
【0016】
従って、ケース本体と充填部材を異なる材料により構成することから、例えば、充填部材を熱硬化性樹脂とすることで、この熱硬化性樹脂によりケース本体とアンテナ本体との隙間を容易になくすことができる。
【0017】
本発明のアンテナの内圧防爆構造は、一端部が閉塞されたアンテナケースの内部にコネクタを有するアンテナ本体が隙間なく収容され、前記アンテナケースの他端部が中空密閉形状をなす内圧防爆用フレームに固定される、ことを特徴とするものである。
【0018】
従って、アンテナケースの内部にアンテナ本体の一部が隙間なく収容されることから、アンテナの内部を事前に掃気する必要がなく、内圧防爆用アンテナとして十分な安全性を確保することができると共に、装置の大型化を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の内圧防爆用アンテナの製造方法は、アンテナケース本体内に液状の樹脂材料を充填する工程と、前記アンテナケース本体内に充填された前記液状の樹脂材料にアンテナ本体を埋め込む工程と、前記アンテナケース本体の内部を真空引きする工程と、を有することを特徴とするものである。
【0020】
従って、アンテナケース本体内に液状の樹脂材料とアンテナ本体を埋め込んだ後、アンテナケース本体の内部を真空引きすることから、アンテナケース本体内に残留する空気を適正に除去することができ、内圧防爆用アンテナとして十分な安全性を確保することができると共に、装置の大型化を抑制することができる。
【0021】
また、本発明の移動体は、中空形状で密閉構造をなすフレームと、前記フレームを移動させる移動装置と、前記フレーム内に空気を供給するエア供給装置と、前記フレーム内の空気を排出する排気装置と、前記内圧防爆用アンテナを有すると共に前記フレーム内に配置されて外部と通信を行う通信装置と、前記フレーム内に配置されて前記移動装置と前記エア供給装置と前記排気装置と前記通信装置を制御する制御装置と、を備えることを特徴とするものである。
【0022】
従って、内圧防爆用アンテナを有する通信装置がフレーム内に配置されることから、アンテナの内部を事前に掃気する必要がなく、内圧防爆用アンテナとして十分な安全性を確保することができると共に、装置の大型化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の内圧防爆用アンテナおよびアンテナの内圧防爆構造、内圧防爆用アンテナの製造方法並びに移動体によれば、十分な安全性を確保することができると共に、装置の大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態のロボットを表す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の内圧防爆用アンテナを表す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の内圧防爆用アンテナの取付構造を表す断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の内圧防爆用アンテナの製造方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る内圧防爆用アンテナおよびアンテナの内圧防爆構造、内圧防爆用アンテナの製造方法並びに移動体の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0026】
本実施形態の移動体としてのロボットは、例えば、石油化学プラントの巡回点検作業に適用されるものである。石油化学プラントは、各種の作業を行う環境が爆発性雰囲気になる可能性があり、ロボットは、防爆構造となっている。そして、本実施形態の内圧防爆用アンテナは、防爆構造をなすロボットに装備されるものである。
【0027】
まず、移動体としてのロボットについて説明する。
図1は、本実施形態のロボットを表す概略図である。
【0028】
本実施形態において、
図1に示すように、ロボット(移動体)10は、フレーム(内圧防爆用フレーム)11と、移動装置12と、バッテリ13と、制御装置14と、内圧防爆装置15と、カメラ16と、通信装置17とを備えている。なお、ロボットは、
図1にて、右側が前部であって、右方への走行が前進であり、左方への走行が後退である。
【0029】
フレーム11は、箱型の中空形状をなし、密閉構造となっている。フレーム11は、下部に移動装置12が設けられることで、単独で走行可能となっている。移動装置12は、電気モータ21と、駆動スプロケット22と、クローラ23とから構成される。電気モータ21は、フレーム11内に搭載され、駆動スプロケット22は、フレーム11両側の前後下部に装着され、左右における前後の駆動スプロケット22にクローラ23が掛け回されている。なお、移動装置12は、4個の駆動スプロケット22とクローラ23に限らず、複数の駆動車輪であってもよい。
【0030】
バッテリ13と制御装置14は、フレーム11内に搭載されている。バッテリ13は、制御装置14と電気モータ21に電力を供給可能である。制御装置14は、電気モータ21を駆動制御することで、移動装置12によりフレーム11、つまり、ロボット10の前進および後退と停止を制御可能である。
【0031】
内圧防爆装置15は、フレーム11内の圧力をフレーム11外圧力より高く維持することで、フレーム11の内部への外部のガスの侵入を防止するものである。内圧防爆装置15は、エア供給装置24と排気装置25を有する。エア供給装置24は、フレーム11の外部に設けられる空気タンク26からフレーム11を貫通して内部に延出する空気供給ライン28が設けられて構成され、空気供給ライン28は、フレーム11の外部側に減圧弁29が設けられ、端部が開放されている。そのため、通常、空気タンク26の加圧空気が空気供給ライン28を通してフレーム11の内部に供給されており、減圧弁29によりフレーム11の内部の圧力が外部の圧力より高い一定の設定圧力に維持される。
【0032】
排気装置25は、フレーム11を貫通して内部に延出する空気排出ライン31により構成され、空気排出ライン31は、フレーム11の外部側にリリーフ弁32が設けられ、端部が開放されている。そのため、フレーム11の内部の温度が上昇することで、フレーム11の内部の圧力が設定圧力より高くなると、リリーフ弁32によりフレーム11の内部の空気が空気排出ライン31を通して外部に排出され、フレーム11の内部の圧力を低下させる。
【0033】
カメラ16は、フレーム11内の上部に搭載されている。カメラ16は、制御装置14により制御され、外部を撮影可能であり、撮影画像を制御装置14に出力する。通信装置17は、制御装置14と外部の管理室(図示略)などとの通信を可能とするものである。通信装置17は、内圧防爆用アンテナ41を有し、外部から入力した情報を制御装置14が受け取ると共に、カメラ16の撮影画像などの情報を制御装置14により外部に送る。
【0034】
なお、ロボット10は、保護監視装置(図示略)が搭載されており、フレーム11の内部の圧力が予め設定された所定気圧(少なくとも大気圧より高い圧力)以下に低下したら、バッテリ13から、移動装置(電気モータ21)12と制御装置14とカメラ16と通信装置17への電力供給を停止する。また、ロボット10は、図示しないが、ロボットアームなどを装備させてもよい。
【0035】
このように構成されたロボット10は、制御装置14が移動装置12を制御することで前進および後退並びに停止が可能である。また、ロボット10は、制御装置14が移動装置12を制御して左右のクローラ23の速度を調整することで操舵が可能である。そして、ロボット10は、制御装置14が巡回する地図を記憶しており、この地図情報やロボット10に搭載されたセンサが検出した距離情報に基づいて移動経路を決定する。なお、ロボット10は、GPSからの位置信号に応じて移動経路を決定してもよい。
【0036】
次に、本実施形態の内圧防爆用アンテナ41について説明する。
図2は、本実施形態の内圧防爆用アンテナを表す断面図、
図3は、本実施形態の内圧防爆用アンテナの取付構造を表す断面図、
図4は、本実施形態の内圧防爆用アンテナの製造方法を説明するための概略図である。
【0037】
内圧防爆用アンテナ(以下、アンテナと称する。)41は、アンテナ本体42と、アンテナケース43を備える。アンテナ本体42は、アンテナ素子51とコネクタ52とを有し、アンテナ素子51の基端部にコネクタ52が接続される。なお、アンテナ素子51をロッド形状としたが、この形状に限らず、板形状などとしてもよい。アンテナケース43は、内部に少なくともアンテナ本体42の一部が隙間なく収容される。本実施形態では、アンテナケース43内にアンテナ素子51とコネクタ52の一部が隙間なく収容される。
【0038】
アンテナケース43は、基端部がフレーム11(
図1参照)に固定され、コネクタ52の一部がフレーム11の内部に露出する。アンテナケース43は、先端部が閉塞して基端部が開口する筒形状をなすケース本体53と、ケース本体53とアンテナ本体42との間に充填される充填部材54とを有する。この場合、アンテナケース43は、樹脂材料により形成されるが、ケース本体53と充填部材54は、異なる材料により構成される。
【0039】
即ち、ケース本体53は、筒形状をなす筒部53aの先端部が閉塞され、基端部に平板形状をなす取付部53bが一体に設けられ、取付部53bから筒部53aに貫通する取付孔53cが設けられて構成される。アンテナ本体42は、ケース本体53の取付孔53c内に配置される。充填部材54は、ケース本体53の取付孔53c内で、アンテナ本体42との隙間に充填される。本実施形態にて、ケース本体53は、ポリカーボネートやピークなどの樹脂により形成され、充填部材54は、シリコン系、エポキシ系などの樹脂により形成される。
【0040】
なお、アンテナケース43は、樹脂材料で構成されるものであるが、アンテナ41は、内圧防爆用として適用されることから、アンテナケース43に樹脂材料を使用する制限(規格)がある。即ち、熱安定性として、規格UL746Bに準拠する温度定格(RTI)が、最高使用到達温度(80℃)+20K以上であれば、熱安定性試験を省略可能であり、本実施形態のアンテナ41は、672時間+24時間をクリアしている。また、耐光性として、規格ISO4892-2暴露1000時間から1025時間前後で、規格ISO179衝撃曲げ強さが暴露前の50%以上、または、規格ANSI/U746Cの紫外線暴露要求事項(f1)に適合すること。耐炎性として、火炎による浸食試験(50cc以上で、接合部がプラスチックである場合)は、2種類のガスで25回ずつ引火試験を行うこと。燃焼性として、規格IEC60695-11-10(MethodV-2)クリアすること。表面抵抗として、1.0×109Ω(@相対湿度50%±5%)を超えないこと、または、表面抵抗1.0×1011Ω(@相対湿度30%±5%)を超えないこと。なお、抵抗が制限を満たさない場合、面積が2000mm2を超えないこと(管状のものでは、外径がΦ20mmを超えないこと)。本実施形態のアンテナ41は、これらの規格を全てクリアしている。
【0041】
上述したアンテナ41は、
図3に示すように、基端部がフレーム11に固定される。フレーム11は、所定の位置に貫通孔61が形成されると共に、内側にリング形状をなすフランジ部62が形成されることで取付凹部63が設けられ、フランジ部62に周方向に所定間隔を空けて複数のねじ穴64が形成される。取付板65は、所定の位置に貫通孔66が形成されると共に、外周側にリング形状をなすフランジ部67が形成されることで取付凹部68が設けられ、フランジ部67に周方向に所定間隔を空けて複数の取付穴69が形成される。そして、アンテナ41は、ケース本体53の筒部53aが貫通孔61に貫通すると共に、取付部53bがシール部材70を介して取付凹部63に嵌合する。また、取付板65は、コネクタ52を貫通孔66に挿通すると共に、シール部材71を介して取付凹部68をケース本体53の取付部53bに嵌合する。そして、複数のボルト72が各取付穴69を貫通して各ねじ穴64に螺合することで、アンテナ41は、取付板65によりフレーム11に固定される。ここで、アンテナ41は、コネクタ52が通信装置17からのコネクタ73が接続される。
【0042】
また、本実施形態の内圧防爆用アンテナの製造方法は、
図4に示すように、ケース本体(アンテナケース本体)53内に液状の充填部材54aを充填する工程と、ケース本体53内に充填された液状の充填部材54aにアンテナ本体42を埋め込む工程と、ケース本体53の内部を真空引きする工程とを有する。
【0043】
まず、
図4(a)に示すように、筒部53aと取付部53bと取付孔53cを有するケース本体53を用意する。次に、
図4(b)に示すように、ケース本体53の取付孔53cに液状の充填部材54aを充填する。続いて、
図4(c)に示すように、ケース本体53内に充填された液状の充填部材54a内にアンテナ本体42を埋め込む。このとき、コネクタ52の一部が外部に露出するようにする。そして、
図4(d)に示すように、ケース本体53内に液状の充填部材54aとアンテナ本体42が入れられたアンテナ41を真空容器81内に入れる。真空容器81は、連結部82に排気管83を介して排気装置84が連結されている。そのため、排気装置84を作動すると、真空容器81内の空気が吸引され、内部空間Sが真空状態になることでケース本体53の内部を真空引きし、ケース本体53の内部に残留する空気が除去される。その後、アンテナ41を真空容器81から取り出し、液状の充填部材54aを硬化させることで固状の充填部材54なり、アンテナ41が製造される。
【0044】
このように製造されたアンテナ41がフレーム11に取付けられたロボット10は、作動前に、引火性気体のない安全な場所で、バッテリ13から移動装置12(電気モータ21)と制御装置14とカメラ16と通信装置17への電力供給を開始し、内圧防爆装置15によりフレーム11内に引火性気体が浸入しないようにする防爆作業を行う。即ち、エア供給装置24により空気タンク26の空気を空気供給ライン28からフレーム11の内部に供給し、フレーム11の内部を昇圧する。すると、排気装置25により内部の空気がリリーフ弁32を通して空気排出ライン31からフレーム11の外部に排出される。
【0045】
そのため、フレーム11は、内部の空気が排出されて掃気が実行される。このとき、空気供給ライン28からフレーム11内への空気の供給量は、空気排出ライン31からフレーム11外への空気の排出量より多いことから、フレーム11は、内部の圧力が上昇し、一定の設定圧力に維持される。また、アンテナ41は、内部に空気が存在しないことから、掃気作業が不要となる。
【0046】
このように本実施形態の内圧防爆用アンテナにあっては、コネクタ52を有するアンテナ本体42と、内部に少なくともアンテナ本体42の一部が隙間なく収容されるアンテナケース43とを備える。
【0047】
従って、アンテナケース43の内部にアンテナ本体42の一部が隙間なく収容されることから、アンテナ41の内部を事前に掃気する必要がなく、内圧防爆用アンテナとして十分な安全性を確保することができると共に、装置の大型化を抑制することができる。
【0048】
本実施形態の内圧防爆用アンテナでは、アンテナケース43の基端部が内圧防爆用フレーム11に固定されてコネクタ52が内圧防爆用フレーム11の内部に露出する。従って、アンテナ本体42をコネクタ52によりフレーム11内の通信装置17に容易に接続することができる。
【0049】
本実施形態の内圧防爆用アンテナでは、アンテナケース43は、樹脂材料により形成される。従って、静電気対策を施すことで、小型軽量化を図ることができる。
【0050】
本実施形態の内圧防爆用アンテナでは、アンテナケース43は、先端部が閉塞して基端部が開口する筒形状をなすケース本体53と、ケース本体53とアンテナ本体42との間に充填される充填部材54とを有する。従って、充填部材54によりケース本体53とアンテナ本体42との隙間を容易になくすことができる。
【0051】
本実施形態の内圧防爆用アンテナでは、ケース本体53と充填部材54を異なる材料により構成する。従って、例えば、充填部材54を熱硬化性樹脂とすることで、この熱硬化性樹脂によりケース本体53とアンテナ本体42との隙間を容易になくすことができる。
【0052】
また、本実施形態のアンテナの内圧防爆構造にあっては、一端部が閉塞されたアンテナケース43の内部にコネクタ52を有するアンテナ本体42が隙間なく収容され、アンテナケース43の他端部が中空密閉形状をなす内圧防爆用フレーム11に固定される。従って、内圧防爆用アンテナとして十分な安全性を確保することができると共に、装置の大型化を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態の内圧防爆用アンテナの製造方法にあっては、ケース本体53内に液状の充填部材54aを充填する工程と、ケース本体53内に充填された液状の充填部材54aにアンテナ本体42を埋め込む工程と、ケース本体53の内部を真空引きする工程とを有する。
【0054】
従って、ケース本体53内に液状の充填部材54aとアンテナ本体42を埋め込んだ後、ケース本体53の内部を真空引きすることから、ケース本体53内に残留する空気を適正に除去することができ、内圧防爆用アンテナとして十分な安全性を確保することができると共に、装置の大型化を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の移動体にあっては、中空形状で密閉構造をなすフレーム11と、フレーム11を移動させる移動装置12と、フレーム11内に空気を供給するエア供給装置24と、フレーム11内の空気を排出する排気装置25と、フレーム11内に配置されると共に内圧防爆用アンテナ41を有して外部と通信を行う通信装置17と、フレーム11内に配置されて移動装置12とエア供給装置24と排気装置25と通信装置17を制御する制御装置14とを備える。
【0056】
従って、内圧防爆用アンテナ41を有する通信装置17がフレーム11内に配置されることから、アンテナ41の内部を事前に掃気する必要がなく、内圧防爆用アンテナとして十分な安全性を確保することができると共に、装置の大型化を抑制することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、アンテナ41をロッド形状としたが、この形状に限定されるものではない。
【0058】
また、上述した実施形態では、アンテナケース43をケース本体53と充填部材54とから構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、アンテナケースの成形型を形成し、成形型内に液状の充填部材を充填すると共に、液状の充填部材内にアンテナ本体を埋設し、液状の充填部材を硬化させてから成形型を除去することでアンテナを製造してもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、移動体としてのロボット10は、搭載した制御装置14が移動装置12を制御することで自走可能としたが、移動装置12を遠隔操作により制御することで移動体としてのロボット10を自走可能としてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、本発明の移動体を石油化学プラントの巡回点検作業に適用して説明したが、その他、原子力発電プラント、化学薬品プラント、鉄鋼プラント、各種製造工場撫でに適用することができ、また、防災支援作業や建築物保全作業などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 ロボット(移動体)
11 フレーム(内圧防爆用フレーム)
12 移動装置
13 バッテリ
14 制御装置
15 内圧防爆装置
16 カメラ
17 通信装置
21 電気モータ
22 駆動スプロケット
23 クローラ
24 エア供給装置
25 排気装置
26 空気タンク
28 空気供給ライン
29 減圧弁
32 リリーフ弁
31 空気排出ライン
41 内圧防爆用アンテナ、アンテナ
42 アンテナ本体
43 アンテナケース
51 アンテナ素子
52 コネクタ
53 ケース本体(アンテナケース本体)
53a 筒部
53b 取付部
53c 取付孔
54 充填部材
54a 液状の充填部材