(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】デバイスおよび水晶体組織を切断する方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
A61F9/007 130Z
(21)【出願番号】P 2018548840
(86)(22)【出願日】2017-03-16
(86)【国際出願番号】 US2017022612
(87)【国際公開番号】W WO2017161062
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-16
(32)【優先日】2016-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519152940
【氏名又は名称】カール・ツァイス・メディテック・キャタラクト・テクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec Cataract Technology Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ルーク・ダブリュー・クローソン
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ツォンチェバ・ググチコバ
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/044672(WO,A1)
【文献】特開平02-164360(JP,A)
【文献】特表2015-533092(JP,A)
【文献】米国特許第04538611(US,A)
【文献】米国特許第04732150(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0054904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/00 - 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の水晶体嚢内のレンズを切断するための外科用デバイスであって、
第1ルーメン(114)および第2ルーメンを有するシャフト(112);ならびに第1の挿入形態から第2の捕捉形態へ前記シャフト(112)に対して移動可能な切開要素
を含んで成り、
前記第1ルーメン(114)および前記第2ルーメンは、前記シャフトを通して伸長し、前記シャフトは、長手軸に沿って出口(115)を有する遠位端(123)へ伸長し、
前記切開要素(116)の少なくとも一部が前記シャフトの外に伸長し、前記第1の挿入形態における前記切開要素(116)および前記シャフト(112)の前記遠位端(123)の両方が切開部を通して前記眼(1)の前房内へ挿入され、前記水晶体嚢内のレンズの前面上の配置される大きさであり、
前記切開要素が第1の挿入形態にある場合に、前記切開要素(116)の少なくとも一部が前記第1ルーメン(114)内に配置され、前記切開要素(116)の少なくとも一部が前記第2ルーメン(114)内に配置され、
前記第2の捕捉形態が前記切開要素により全体として形成された略閉鎖ループ(121)を含んで成り、前記略閉鎖ループ(121)は、開放領域(146)を含んで成り、前記開放領域(146)の遠位部(145)は、前記出口(115)の遠位に配置され、前記開放領域(146)の近位部(143)は、前記出口(115)の近位に配置され、
前記レンズが前記水晶体嚢(6)内に残り、開放領域(146)内の前記レンズ(8)の一部を捕捉する間に、前記切開要素(116)の第2捕捉形態は、前記水晶体嚢(6)と前記レンズ(8)との間の前記切開要素(116)の前進を許容するサイズおよび形状を有し、
アクチュエータ(44)は、切開要素(16)に動作可能に結合されており、該アクチュエータ(44)が、前記切開要素(16)に張力を加えて開放領域(46)を低減し、レンズを切断するように構成されて
おり、
前記切開要素(116)は第1脚(118)および第2脚(120)を有し、前記第1の挿入形態から前記第2の捕捉形態への前記切開要素(116)の移動により、前記切開要素(116)の前記第1脚(118)は前記シャフト(112)の前記遠位端(123)に対して遠位に前進し、前記切開要素(116)の前記第2脚(120)は前記シャフト(112)の前記遠位端(123)に対して近位に移動する、外科用デバイス。
【請求項2】
前記切開要素(116)が第1の挿入形態にある場合に、前記切開要素のチップ部を除く全てが前記シャフト(112)内に配置され、前記チップ部は前記第1脚(118)の少なくとも一部と、前記第2脚(120)の少なくとも一部とを含んで成る、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項3】
前記切開要素(116)が前記第2の捕捉形態にあると、前記第1ルーメン(114)および前記第2ルーメンの外側に位置する前記切開要素(116)の大部分は、前記シャフト(112)の前記長手軸からオフセットされている、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項4】
前記切開要素(116)は、前記第1ルーメンおよび前記第2ルーメンから前記切開要素(116)が伸長した結果として前記第1の挿入形態から前記第2の捕捉形態への前記切開要素(116)の遷移の間に形状変化を受け、前記第2の捕捉形態が調節された形状を有する、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項5】
前記調節された形状は、前記閉ループが前記レンズを取り囲むように前記レンズの断面形状に沿って形成されている、請求項
4に記載の外科用デバイス。
【請求項6】
前記切開要素(116)は、ニッケル―チタン合金製のワイヤーまたはストラップである、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項7】
第2の捕捉形態における前記第2脚(120)は、シャフト(112)の長手軸に対して120度を超えて屈曲する、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項8】
前記アクチュエータ(44)は、スライダー、ボタンおよびスプリングの少なくとも1つを含んで成る、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項9】
前記シャフト(112)の近位端部に取り付けられたハンドル(42)をさらに含んで成り、前記切開要素(116)は、ハンドル(42)上のアクチュエータ(44)の作動に応じて回転動きを受け、前記回転動きは、シャフト(112)の長手軸に対するものである、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項10】
前記アクチュエータ(44)は、前記切開要素(116)と、前記スライダーの直線運動を前記切開要素(116)の回転動きに変換するカム(50)との両方に動作可能に結合されたスライダーである、請求項
9に記載の外科用デバイス。
【請求項11】
前記閉鎖ループ(121)は、略湾曲しかつ非平面である、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項12】
前記切開要素(116)の前記第1の挿入形態は、前記眼の前記水晶体嚢(6)の前面の裂嚢(10)を通して挿入される大きさであり、
前記切開要素(116)は、前記第1の挿入形態から前記第2の捕捉形態へ移動可能であり、前記レンズ(8)と前記水晶体嚢(6)との間を移動し、前記切開要素(116)が成形され、前記水晶体嚢(6)内の前記レンズ(8)を取り囲む大きさであり、
前記レンズ(8)が前記水晶体嚢(6)内に存在する間に、前記切開要素(116)は、前記第2の捕捉形態から第3の形態に移動可能であり、前記レンズに切断する力を加える、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項13】
前記切開要素は、前記第1の挿入形態から前記第2の捕捉形態へ移動可能であり、前記レンズ(8)と前記水晶体嚢(6)との間を移動し、前記水晶体嚢(6)の損傷に関する閾値未満の力を前記水晶体嚢(6)に加える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第2の捕捉形態における前記切開要素(116)は、前記第1ルーメン(114)内の前記第1脚(118)の一部と、前記第2ルーメン内の前記第2脚(120)の一部とを含んで成る、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項15】
前記第2脚(120)は、前記第1脚(118)のみが前記シャフト(112)に対してスライド可能であるように、前記シャフト(112)に結合されている、請求項1に記載の外科用デバイス。
【請求項16】
前記第2の捕捉形態にある場合の前記切開要素(116)の前記開放領域(146)は、水晶体嚢(6)内の裂嚢の直径よりも大きな直径を有する、請求項1に記載の外科用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月17日に出願された米国特許出願第15/073,177の優先権を主張し、参照により本明細書に組み込まれる2015年9月17日に出願された米国特許第14/857,518号に関連する。
【0002】
本発明は、概して外科用デバイスに関し、より具体的には、眼科手術における水晶体または他の組織の摘出のための水晶体組織の切断に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の眼科手術(または眼の手術;ocular surgery)の特定のタイプは、眼から水晶体組織が摘出され得るように水晶体組織および眼内レンズのような固体の眼内物質を断片に分割することを必要とする。白内障手術のためのレンズの摘出は、米国だけでも毎年300万件以上の症例が派生する最も一般的な外来手術分野の一つである。そのレンズは、(水晶体嚢および角膜の間に位置する)前房(anterior chamber)から硝子体腔(vitreous cavity)を隔てる水晶体嚢と呼ばれる解剖学的構造内に存在する。硝子体腔および前房の間の流体連通を可能にすることは望まれていないため、レンズを摘出するプロセスの間、水晶体嚢の後面の安全性を維持するように注意が払われる。しかしながら、水晶体嚢は、薄く繊細な組織から構成される。結果として、医師は、水晶体嚢への意図しない損傷を回避するためにレンズ組織を除去する場合に極度の注意を払わなければならない。その手術をさらに複雑にしているのは、レンズは典型的には略円形の切開部を通して水晶体嚢の前面から取り除かれる。手術および手術で生じる切開は、裂嚢という。典型的には、裂嚢は直径2.8~3mmを超えない。一般には、白内障手術およびレンズを扱う他の外科手術は、角膜の端における小さな切開部を作製することにより行われ、前房および水晶体嚢の前面に接近(またはアクセス;access)することができる。その後、裂嚢が行われ、次いでその開口部は、レンズへの外科的アクセスのために利用され得る。
【0004】
白内障手術の間に一般的に使用されるレンズ摘出の方法は水晶体超音波乳化法(または超音波水晶体乳化吸引術;phacoemulsification)であり、その方法はレンズを破壊するために超音波エネルギーを使用し、その後、レンズ破片が吸引される。レンズ破片化および摘出の他の方法は、レンズを断片に破壊し、その後角膜における切開部を通して内部からのアプローチで(in an ab-interno approach)摘出するためのフックまたはナイフのような機械装置、またはレーザーのようなエネルギー伝送装置の使用を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既存のツールおよび技術は、レンズの完全な厚さの断片化を確実にするものではない。これらの技術は、眼の前面からレンズに近づき、したがって、機械的器具によって発揮される切開力は、それらがしばしば全層セグメント化(full-thickness segmentation)を達成するのに不十分であるように制限される。さらに、角膜の端の切開部を通る外科的プロローチのために、機械的器具が裂嚢によって規定される平面に実質的に平行な角度で送られる。結果として、従来の外科用スネア、ループまたはワイヤ回収ツールは、断片化または摘出を提供するためにそのデバイスをレンズの周りに巻き付けることができる向き(または方向または方位;orientation)にない。さらに、このような従来の器具をレンズの周りに巻き付けることができない場合であっても、スネアのワイヤは、それが所定の位置に移動されるときに過剰に損傷する力を水晶体嚢に与えるリスクを負う。エネルギー伝送器具は、水晶体嚢のような他の繊細な解剖学的構造に物理的に近いレンズ部分を切断する能力に限界がある。例として、レーザーは一般に、水晶体嚢の後方の端に近接し、完全に断片化されていないレンズを残しており、二次的技術を使用して注意深く断片化しなければならないため、レンズの後方の端を切断するためには使用されない。
【0006】
これらの理由から、水晶体超音波乳化法がレンズ除去の最も一般的な方法となっている。しかしながら、水晶体超音波乳化法は、それ自体の欠点がある。流体および物質が水晶体嚢および前房から吸引された場合、生理食塩水のような他の流体が、一定の容積または圧力を維持するように促される。吸気(inspiration)および吸引の間の眼における流体の流れは、乱流を生成し、角膜内皮(corneal endothelium)のような眼内の組織に有害な影響を及ぼし得る。水晶体超音波乳化法において使用される超音波エネルギーは、眼の組織にそれ自身の負の影響を及ぼすことができる。さらに、水晶体超音波乳化法は、高価でかさばる資本設備を必要とし、水晶体超音波乳化法を行うことができる場所を制限する。
【0007】
本開示は、水晶体組織を除去するための既存の技術が一般に煩雑で非効率であることを認識する。さらに、既存の技術で水晶体嚢を損傷するリスクを克服するためにレンズが完全に壊れたり溶解したりすることなく、臨床的に望ましいサイズよりも大きなサイズの一つ以上の断片を残す。
【0008】
以上から、本開示は、効率的にレンズを小さな断片に壊しそれらの断片を捕捉するデバイスおよび方法を提供する。そのようなデバイスおよび方法は、眼手術のためのデバイスまたは方法を任意に補完しまたは置き換える。そのような方法およびインターフェース(interface)は、水晶体嚢のような眼の組織を損傷するリスクを低減し、より効率的な外科的経験をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
いくつかの実施形態では、外科用デバイス(または手術デバイス;surgical device)は、シャフトを通って規定されるルーメン(a shaft with a lumen defined therethrough)を有するシャフトと、格納(stored)位置(または状態;position)から展開(deployed)位置へ移動可能な要素とを含み、要素のより大きな部分がルーメンの遠位端部で出口の外に伸長し、格納位置から展開位置への移動が要素の第1脚をシャフトの遠位端部に対して遠位に前進させ、要素の第2脚をシャフトの遠位端部に対して近位に移動させる。
【0010】
いくつかの実施形態では、(水晶体嚢、水晶体嚢の内側のレンズ、および角膜を含む)人の眼の手術のためのデバイスは、管を通って規定されるルーメンを有する管と、少なくとも第1形状および第2形状の間に変化するように構成されている切開(または切断、または区分;sectioning)要素とを含み、第2形状は外周を有し、切開要素はルーメンの遠位端部から伸長し、第1形状は水晶体嚢の前面上の裂嚢を通して挿入されるようなサイズであり、裂嚢の直径はレンズの直径未満であり、切開要素は第1形状から第2形状へ移動可能でありレンズおよび水晶体嚢の間に移動し、切開要素が第2形状を有する場合に、切開要素はその外周内にレンズの少なくとも一部を含み、切開要素は第2形状から第3形状に移動可能でありレンズに切断力を加える。
【0011】
いくつかの実施形態では、眼科手術用デバイスは、シャフトを通って規定されるルーメンを有するシャフトと、ルーメンにおいて少なくとも部分的に配置される内部回転要素と、ルーメンにおいて少なくとも部分的に配置され内部回転要素およびシャフトの間に放射状に配置される外部回転要素と、外部回転要素の遠位端部から遠位に伸長する第1の複数のストラップと、ここで、各々の複数の第1ストラップは周囲に(または周辺に;circumferentially)互いに離間しており、内部回転要素の遠位端部から遠位に伸長する複数の第2ストラップと、ここで、各々の複数の第2ストラップは周囲に互いに離間しており、各々のそれらストラップの遠位端部に接続するチップ(または先端部;tip)と、ここで、複数の第1ストラップおよび複数の第2ストラップは閉鎖(closed)位置から開放(open)位置へ移動可能であり、複数の第1ストラップおよび複数の第2ストラップの少なくとも一方は開放位置に置いて互いに回転可能である、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、眼の生体構造の模式側面図であって、角膜の側面における切開部を通るシャフトおよび切開要素の挿入を示す。
【
図2】
図2は、展開位置における切開要素の上面図である。
【
図3】
図3は、裂嚢が完成し、第1の挿入形態における切開要素を有する水晶体嚢の斜視図である。
【
図4】
図4は、裂嚢が完成し、第2の捕捉形態における切開要素を有する水晶体嚢の斜視図である。
【
図5】
図5は、裂嚢が完成し、第3断片化(fragmentation)位置における切開要素を有する水晶体嚢の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のレンズの斜視図であり、明確にするために切開要素は図示されていない
【
図7】
図7は、
図5のレンズの斜視図であり、明確にするために切開要素は示されていない。
【
図8】
図8は、ハンドル、シャフトおよび複数の切開要素を含む外科用デバイスの斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8の外科用デバイスの斜視図であり、第1の挿入形態における切開要素を有する。
【
図10】
図10は、
図8の外科用デバイスの斜視図であり、左側のスライダーを前進させて、第2の捕捉形態に向かって左側の切開要素を拡張させている。
【
図11】
図11は、
図8の外科用デバイスの斜視図であり、左側のスライダーを完全に前進させて、第2の捕捉形態へ左側の切開要素を拡張させている。
【
図12】
図12は、
図8の外科用デバイスの斜視図であり、右側のスライダーを前進させて第2の捕捉形態に向かって右側の切開要素を拡張させている。
【
図13】
図13は、
図8の外科用デバイスの斜視図であり、右側のスライダーを完全に前進させて第2の捕捉形態における右側の切開要素を拡張させている。
【
図16】
図16は、ハンドルの一部を切り取った斜視図であり、その初期位置における右側のスライダーを有する。
【
図19】
図19は、
図16~18のハンドルの詳細な斜視図であり、右側のスライダーが部分的に前進している。
【
図20】
図20は、
図16~18のハンドルの詳細な斜視図であり、右側のスライダーは
図19におけるその位置よりもさらに遠位に前進している。
【
図21】
図21は、
図16~18のハンドルの詳細な斜視図であり、右側のスライダーはその元の位置に向かって戻されている。
【
図22】
図22は
図16~18のハンドルの詳細な斜視部であり、右側のスライダーはその元に位置に戻されている。
【
図23】
図23は、レンズを包囲するようにシャフトから伸長する2つの切開要素の別の実施形態の側面図である。
【
図24】
図24は、レンズを包囲するように伸長する2つの切開要素および保持バッグの別の実施形態の上面図である。
【
図25】
図25は、第1の挿入形態における外科用器具の別の実施形態の遠位端部の斜視図である。
【
図26】
図26は、第2の拡張形態における
図25の前記外科用器具の遠位端部の斜視図である。
【
図27】
図27は、レンズ破片を取り囲む、第2の拡張形態における
図25の外科用器具の遠位端部の斜視図である。
【
図31】
図31は、レンズの切断のための別のデバイスを示す。
【
図34】
図34は、シャフトからさらに伸長された要素を示す。
【
図37】
図37は、明確にするために水晶体嚢が除去された状態でレンズ上に配置された第2形態における要素を示す。
【
図38】
図38は、レンズの後方の位置までレンズの周囲(または外周または周辺;circumference)の周りを通過した要素の部分を示す。
【
図39】
図39は、レンズが閉鎖ループを通って移動するように回転された要素を示す。
【
図40】
図40は、要素の形状を変化させるために要素上に伸長された内管を示す。
【
図41】
図41は、明確にするために水晶体嚢を取り除いた状態でレンズ上に配置されたレンズを切断する別のデバイスを示す。
【
図44】
図44は、レンズの周囲の周りに伸長する内管を示す。
【
図45】
図45は、レンズの後側の周りに内管からさらに伸長する要素を示す。
【
図47】
図47は、ループを形成するために係り合う要素を示す。
【
図48】
図48は、水晶体嚢内でレンズを切断するための別のデバイスを示す。
【
図51】
図51は、周囲の周りをレンズの後側へ移動するために拡張された閉鎖ループを有する
図48のデバイスを示す。
【
図52】
図52は、レンズにおける切れ目を形成するために拡張されかつ配置された閉鎖ループを有する
図48のデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、眼1の通常の生体構造は、角膜2、水晶体嚢6、および水晶体嚢6内のレンズ8を含む。切開部4は角膜2の端において作製され、外科医は水晶体嚢6上で裂嚢手術を行い、その結果として、水晶体嚢6の前面において裂嚢10が生じる。裂嚢10は、メスで切開すること、フェムト秒レーザーまたは他のエネルギー・ベースのカッターでエネルギーを加えること、ロボットもしくは自動制御の下で切開することまたは任意の他の適切な方法のような任意の適切な方法で行われてもよい。裂嚢10は、約2.0mm~8.0mmの直径で引き裂かれまたは切断され得る。他の実施形態によれば、裂嚢10は、特に、レンズ8の断片(以下で詳細に記載される)がより小さな直径の裂嚢10を通して摘出されるのに十分小さいサイズである場合には、2.0mmよりも小さい直径で作製されてもよい。裂嚢10は、一般に行われるようにマイクロ-鉗子のような別個の器具で作製され得る。あるいは、特徴およびツールを本明細書で説明する外科用デバイス40に組み込んで、裂嚢を容易にすることまたは完全に行うことができる。例えば、マイクロ-鉗子を、ツール40が裂嚢を行うことができるようにシャフト12の遠位端部に追加してすることができる。他の例として、ブレード(blade)、ケラトーム(または角膜切開刃;keratome)、フック、レーザー、またはアブレイティブ・エネルギー・アプリケーター(ablative energy applicator)等の1つまたは複数を手術中に使用するためにシャフト12の遠位端部に組み込むまたは関連付けることができる。例えば、本明細書で説明するように伸長するチップはシャフト12に取り付けられてもよく、断片化工程の間にレンズ8を回転させるために使用されてもよい。伸長するチップは、ユーザーがレンズ8を新しい向きに回転させ異なる角度からレンズ8を切開できるように、レンズ8に刺入され得る尖ったチップであってもよい。いくつかの実施形態によれば、前記外科医により使用され裂嚢を行う任意の別個のツールは、角膜2における切開部4の外に取り除かれる。
図3も参照すると、その後シャフト12は角膜2における前記切開部3を通って挿入される。
図3に示すように、シャフト12の遠位端部は裂嚢10の上方に(すなわち、裂嚢10の前方に)配置され、裂嚢10から離間しているが眼1の外側から見えるように裂嚢10の周囲内に配置される。
図1に示すように、シャフト12は角膜2における切開部3を通って挿入されると、裂嚢10の端によって規定される平面に略平行である。いくつかの実施形態では、切開要素16の遠位端部は、第1の挿入形態におけるシャフト12の遠位端部でのルーメンにおける出口(または抜け口;outlet)5の外に伸長している。そのような実施形態では、引張状態の(または緊密なまたは小さな;tight)半径屈曲部(radius bend)24はシャフト12の外側に配置されてもよく、すでに少なくとも部分的に近位方向(または方位または向き;direction)に向かって折り曲げられていてもよい。このようにして切開要素16が超弾性材料から製造される実施形態であっても、切開要素16の第2脚は第1の挿入形態から第2の捕捉形態への遷移の間に折り曲げられている角度は減少されている。さらに、シャフト12のルーメン内にはシャフト12の直径を小さくすることを可能とするために、全部を保持するよりも切開要素16の一部を保持するために必要なスペースがより少ない。いくつかの実施形態によれば、シャフト12は丸いチップを有する卵形の断面管である。卵形の断面は、シャフト12が角膜の切開部4を通って眼1内に挿入される能力を高める。さらに複数の切開要素がある場合には、卵形の断面シャフト12のルーメン14においてより容易に隣り合って並べ得る。代わりに、シャフト12は円形の断面または任意の他の適切な形状の断面を有してもよい。切開要素16の近位端部は、シャフト12のルーメン14を通って伸長する。代わりに、切開要素16の全部は、第1の挿入形態におけるシャフト12のルーメン14内に配置される。代わりに、2つ以上の切開要素16が利用され、各切開要素16は最初に第1の挿入形態に存在する。明確にするために、この特定の実施形態に関して単一の切開要素16が記載されているが、以下のさらなる開示に照らして切開要素16の任意の適切な数を提供して単一のレンズ除去手術で使用することができ、本明細書のデバイスおよび方法は切開要素16の任意の特定の数は限定されない。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、切開要素16は第1端18および第2端20を含む。
図16~22に関して以下で詳細に記載されるように、切開要素16の端18、20の他方はシャフト12に対して固定され得るが、切開要素16の端18、20の一方はシャフト12に関して移動可能であってもよい。例えば、切開要素16の第2端20はシャフト12に対して固定され得、切開要素16の第1端18はシャフト12に対してスライド可能であってもよい。第2端20は、圧着、溶接、接着剤、機械的インターロック(または相互連結;interlock)または任意の適切な構造または方法によりシャフト12または任意の他の構造に接続されてもよい。いくつかの実施形態では、切開要素16は、円形、楕円形または他の傷付けない(atraumatic)断面を有するワイヤである。他の実施形態では、切開要素16はストラップである。本文書で使用されるように、ストラップは縦方向に見た場合に厚いよりも幅広い構造である。
【0015】
第1の挿入形態において、切開要素16の遠位端部はシャフト12の外の遠位に伸長し、切開要素16は眼1を損傷することなく標準角膜の切開部4を通過するような大きさおよび形状とされる。角膜の切開部4は概ね3.5mm以下の幅であり、小さなナイフで作製される。よって、シャフト12の外径は3.5mm以下が有利である。異なるサイズの切開部4が使用される場合、切開部4を長さ5mm以下の線として形成することが最も望ましいことを念頭に置いて、シャフト12の異なる外径が使用され得る。他の実施形態では、シャフト12が切開部4を通って挿入される場合に、シャフト12の内径内に存在しかつ眼において一度シャフト12の外に伸長するように切開要素16はシャフト12のルーメン14内に完全に配置される。あるいは、追加の構成成分は、角膜の切開部4を通した挿入の間に切開要素16を被覆するように使用されてもよい。例えば、テーパー片は、角膜の切開部4を通した挿入を補助できるようにシャフト12の端からより小さな断面へ徐々に細くなるシャフト12の遠位端部上に配置されてもよい。テーパー片はまた挿入の間に切開要素16を拘束するように覆うことができる。さらにテーパー片は切開部4を通過すると切開要素16が伸長しまたは引き裂くことができる前方にスリットを有することができる。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、切開要素16は、角膜の切開部4を通って眼1へ挿入される場合に折り曲げて曲がることを可能にするニッケル-チタン合金のような可撓性のまたは超弾性の材料から製造される。これらの実施形態では、切開要素16の収縮形状(または締め付け形状または絞り形状;constricted shape)は、角膜の切開部4よりも1以上の寸法(または次元;dimensions)が大きくてもよく、シャフト12が裂嚢10に向かって移動する場合に切開部4を通過するように曲げられていてもよい。あるいは、切開要素16は、第1の挿入形態を有しなくてもよく、レンズ8を係り合わせるために利用されるのと同じ構成で切開部4を通して挿入されてもよい。そのような実施形態では、切開要素16は角膜の切開部4を通過する場合に圧縮され、その後眼1に入ると再び拡張する。さらに他の実施形態では、切開要素16は、第1の挿入形態を有しなくてもよく、レンズ8を係り合うために利用されるより大きな構成において切開部4を通して挿入されてもよい。さらに他の実施形態では、切開要素16は任意の方法の数で角膜の切開部4を通して引っかけられ、回転され、または挿入されてもよい。
【0017】
図4を参照して、切開要素16または要素は、シャフト12のルーメンに対して遠位に押される。上述のように、切開要素16の一方の脚20は、部分要素16の他の脚18がシャフト12のルーメン14に対して遠位に押されるように固定されてもよい。その結果として、切開要素16は第1の挿入形態から第2の捕捉形態へ移動する。
【0018】
切開要素16は任意の適切な材料から製造されてもよい。例えば、上記のように、ニッケル-チタン合金のような形状記憶材料を使用して切開要素16が第2の捕捉形態において所定の形状に高弾性で移動することを可能にすることができる。一実施形態では、ニッケル-チタン合金はその超弾性条件において使用されてもよく、ニッケル-チタン合金が第1の挿入形態から第2の捕捉形態へ移動するようにその結晶構造を変形する。他の実施形態では、切開要素16は、室温より高いが体温より低い転移温度に到達すると、第1の挿入形態から第2の捕捉形態に移動するように設計された形状のニッケル-チタン合金から製造される。よって、ニッケル-チタン合金から製造される切開要素16は、収縮形状を保持するようにその転移温度よりも低い室温で眼に入り得る。切開要素16が眼1内に設置され、体温まで温めることができるように、ニッケル-チタン合金はその転移温度よりも温かくなりかつ予め規定された第2の捕捉形態に戻り始めてもよい。ループがレンズを通して平面を分割することを規定できるように形状が変化するが、この形状変化は外科医が水晶体嚢6内に切開要素を入れかつ向き付けを可能にする期間を超えて発生してもよい。あるいは、他の任意の数の生体適合性材料は、例えば、ステンレス鋼が考慮されてもよい。いくつかの実施形態では、ニッケル-チタン合金は、外科用デバイス40により能動的に温められてもよく、この場合、切開要素16の転移温度は室温よりも高く選択されるが、水晶体嚢6の組織または眼1の他の組織を損傷する温度よりも低くてもよい。形状記憶プラスチックのような他の形状記憶材料はニッケル-チタン合金の代わりに利用されてもよい。あるいは、他の任意の数の生体適合性材料は、例えば、ステンレス鋼、チタン、シリコーン、ポリアミド、PEBAX(登録商標)ポリエーテル・ブロック・アミド、ナイロン、ポリカーボネート、または他の任意の適切な材料を考慮してもよい。さらに、端から端までまたは積層された層もしくは材料の同心管において複数の材料が使用されてもよい。
【0019】
図1および4も参照して、第2の捕捉形態において切開要素16は、レンズ捕捉のために特別に成形される。いくつかの実施形態によれば、第2の捕捉形態は、例えば、切開要素を製造するために弾性または超弾性の材料の使用を通じて切開要素16の予め調節された形状である。
【0020】
図4に最もよく見られるように、第2の捕捉形態において切開要素16は、レンズ8の断面とほぼ同様に成形され、かつ水晶体嚢6内のレンズ8を取り囲むような形状およびサイズである一様ではないループ(irregular loop)に近似する。上述のように、いくつかの実施形態では、切開要素16は丸いワイヤの長さから製造される。切開要素16の第2の捕捉形態は統合点22を有し、切開要素16の第1脚18および第2脚20が一体に統合して、デバイス40が閉鎖ループ21に近似するように外周を有する形状を形成する。「統合」(または結合または接合または併合;merging)とは、切開要素16の第1脚18および第2脚20を互いに近づけて位置することをいう。統合点22は、シャフト12の遠位端部にまたは近位に位置してもよい。第2の捕捉形態において切開要素は、統合点22の遠位に伸長する遠位部28および統合点22の近位に伸長する近位部26を含む。この例示的な実施形態では統合点22は、レンズ面の上方の点に存在し、および水晶体嚢6の上部での裂嚢10により規定される円内に存在する。いくつかの実施形態では、
図1に示すように切開要素16の近位部26は引張状態の半径屈曲部24を含んでもよい。引張状態の半径屈曲部24は、第2脚20が統合点22から近位に伸長するように切開要素16の第2脚20を折り曲げる。あるいは、そのような尖った半径屈曲部なしに切開要素16は、この経路(またはパス;path)遷移を到達するために異なる経路を取ってもよい。例えば、湾曲または揺れ(または振動または往復;oscillations)のような
図1の通常の平面の外側にある経路は、切開要素16の近位部26の全体的な屈曲半径(overall bend radius)を低減するように組み込まれてもよい。以下で説明するように、これは切開要素16が形状を他のより小さな収縮構成に変化させる能力を改善し得る。
【0021】
上述のように、他の脚はシャフトに対して固定されているが第1脚18および/または第2脚20はシャフト12のルーメン14の外に押される。あるいは切開要素16の両脚18、20はシャフト12に対して移動可能であり、シャフト12のルーメン14に対してスライドするように構成されている。あるいは切開要素16は静止したままであるがシャフト12は構成成分をスライドしていてもよい。脚または脚18、20がルーメン14から外向きに押される場合、切開要素16は第2の捕捉形態に遷移する。切開要素16が遷移する場合に、引張状態の半径屈曲部24が切開要素の近位部を水晶体嚢6に向かう方向においてルーメン12の長手中央線(または縦の中心線;longitudinal centerline)の一方の側に離れた場所でシャフト12の遠位端部から近位に伸長させる。
図1に示すように、このようにして切開要素16は裂嚢10を通って下方に伸長し、裂嚢10の直径よりも大きい水晶体嚢6内の長さに伸長することができる。いくつかの実施形態によれば、引張状態の半径屈曲部24は、
図1に示すようにシャフト12の長手中央線に対しておよび遠位方向に対して少なくとも120度の角度を有する第2脚20を生じる。第2の捕捉形態における切開要素16の遠位部28および近位部の両方は、損傷(例えば、被覆損傷もしくは穴、水晶体嚢を過度に引き延ばすこと、または水晶体嚢組織の内面を損傷すること)を引き起こすことなく、水晶体嚢6に入るために緩やかに湾曲し水晶体嚢6の水平側部(または横断側部;lateral sides)のサイズおよび形状に概ね近似する。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、
図2も参照して、第2の捕捉形態における切開要素16の形状は、上部レンズ表面について略平坦または水平である平面を形成する。
図1および3に戻って参照すると、正しい向きで切開要素16は、裂嚢10を通って水晶体嚢6内に開くように保持されている。切開要素16が拡張し続けると、切開要素16により形成される平面は切開要素が水晶体嚢およびレンズの間に空間を横切るように回転され得る。その平面はシャフト12のルーメン14の長手軸を含む。代わりに、第2の捕捉形態における切開要素16の形状は、単一平面内に存在しない、より三次元形状である。例えば、切開要素16は平坦な平面の内外に揺れて(または振動してまたは往復して;oscillate)もよく、または一方向または他の方向に平坦な平面から実質的に湾曲してもよい。回転は、ユーザーによるシャフト12もしくは外科用デバイス40の手動回転によって達成されてもよく、または以下で詳細に記載されるように外科用デバイス40内の一体化された機構によって達成されてもよい。
図4も参照して、切開要素16は、第1の挿入形態から第2の捕捉形態へ大半が進行し、レンズ8に対して部分的に回転させられている。切開要素16は、形状平面が主に垂直または任意の数の他の角度になるように回転させられてもよい。そのような回転を生成するための機構および方法については以下でより詳細に説明する。さらに、複数の切開要素16は、様々な角度に回転して使用されてもよい。他の実施形態では、切開要素6が第2の捕捉形態に遷移するまで回転は起こらない。いくつかの実施形態によれば、切開要素16が第2の捕捉形態に遷移する間に回転が開始する。例えば、一旦切開要素16内のループの開放領域46が近位部26および遠位部28上の2点間の開放領域46を横切って5~6mmのコード(または弦;chord)が伸長するサイズまで伸長すると、回転が開始し得る。他の例として、コードの長さが5~6mmよりも長いまたは短い場合に、回転が開始してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、
図1を参照して、幅7.0~15.0mmおよび高さ3.0~10.0mmで切開要素16の第2の捕捉形態は、略卵型の形状であってもよい。他の実施形態によれば、高さ1.0~15.0mmで切開要素16の幅は4.0~20.0mmであってもよい。いくつかの実施形態では、切開要素16の第2の捕捉形態のサイズは、特定の領域または輪郭(または外形;profile)全体に沿ったレンズのサイズよりも意図的に小さくてもよい。これは、レンズ8に接近したままであり水晶体嚢6との相互作用を減少させる切開要素16の能力を改善し得る。例えば、切開要素16の第2の捕捉形態は幅12.0mm幅および高さ4.0mmであってもよい。これにより楕円形の幅での切開要素16およびレンズ8の間のクリアランスが可能となり、楕円の高さに沿って干渉を維持しながら、水晶体嚢6の後面を損傷させる可能性を低減させ得る。すなわち、レンズ8の最も厚い部分を取り囲む位置に移動するのではなくレンズ8の一部と係り合うように切開要素16の第2の捕捉形態を構成することにより、切開要素16のサイズを小さくし、切開要素16の第2の捕捉形態がレンズ8の最も厚い部分を取り囲むことができる構成よりも小さい量の水晶体嚢6と係り合う。他の実施形態では、切開要素16の第2の捕捉形態は、レンズ8の周りの概ね特定のクリアランスを有するように予め規定されている。いくつかの実施形態によれば、切開要素16の第2の捕捉形態は略楕円形よりも異なる形状を有する。
【0024】
切開要素16は、水晶体嚢の損傷から要素をさらに防止する特徴または幾何学的形状を有してもよい。いくつかの実施形態によれば、例えば、切開要素16は、水晶体嚢6を引き裂くまたは損傷する可能性を低減するのに十分な直径の丸いワイヤである。その丸いワイヤの直径は、0.004~0.012(0.004”-0.012,”)であってもよいが、0.001~0.030(0.001”-0.030”)のような、過剰なストレスが水晶体嚢6に加えられることを防止する任意のサイズであってもよい。あるいは、切開要素16の輪郭は、より大きな幅又は高さを有する卵形であってもよく、またはストラップであってもよく、より大きな表面積にわたり水晶体嚢6上に切開要素16のその力をさらに分配し、それにより切開要素により水晶体嚢6上に及ぼされる高圧の領域を減少させるか排除する。
【0025】
いくつかの実施形態では、切開要素16の外表面の一部は、デバイスの特定の態様を改善するためにコーティングされてもよい。例えば、以下により詳細に説明するように、切開要素16は、水晶体嚢6およびレンズ8の間の空間を横切る。切開要素16がこれらの解剖学的構造の間を移動するため、より親水性または疎水性の表面を有することが有利であってもよく、その結果、切開要素16がより自由に回転して移動する。一実施形態では、切開要素16は、例えば、PTFEのようなフルオロポリマー等の疎水性材料で被覆されてもよい。コーティングは、ディップコーティング、プラズマ蒸着プロセス、熱収縮スリーブ、または任意の他の適切な方法により追加させることができる。コーティングは切開要素16と、レンズ8および/または水晶体嚢6との間の摩擦を低減でき、切開要素16をより自由に移動させることができる。摩擦を低減させる他の方法は、機械的摩耗、プラズマ処理、または任意の他の適切な方法を使用することが含まれてもよい。あるいは、切開要素16は手術の間に放出されるように構成された活性薬剤のような他の材料で被覆されてもよい。例えば、トリアムシノロン(triamcinolone)のようなステロイドが切開要素16の表面に添加され、それにより手術の間に、それが眼に放出される。他の任意の数の被覆および薬物が企図されてもよい。
【0026】
切開要素16は任意の他の適切な形状または材料で構成されてもよい。例示的な実施形態は、切開要素16は丸いワイヤである。ワイヤはレンズ8および水晶体嚢6の間の空間を無遠慮に(または鈍くまたは鋭くなく;bluntly)横切るように構成されてもよい。ワイヤは、切開要素16の長さに沿った様々なサイズまたは直径を有することができる。あるいは、切開要素16は、任意の数の他の輪郭であってもよい。例えば、切開要素16は、管、リボン、ストラップ、六角形の輪郭を有するワイヤ、または他の任意の数の適切な形状であり得る。加えて、切開要素16の輪郭はその長さに沿って変化することができる。例えば、切開要素16は、水晶体嚢4への損傷が特に懸念される、輪郭に沿った1つ以上の詰まった(またはパッド;padded)領域を含んでもよい。詰まった領域は、切開要素16の適切な領域に結合または被覆される異なる材料を含んでもよいが、シリコーンのような軟質エラストマー性材料に限定されない。詰まった領域は、より大きな領域にわたってその力を分配し、水晶体嚢6に対してより柔らかくより傷つけないインターフェースを提供してもよい。他の実施形態では、詰まった領域は、特定の領域における切開要素の幾何学的輪郭の変化である。例えば、たとえ同じ材料から構成されていても、裾がラッパ状に広がった(flared out)または幅が広がった(broadened)領域はより大きな領域のわたりその力を分配する。さらに、切開要素の剛性または可撓性は、特定の領域における材料の厚さまたはワイヤの直径を変化させることにより、切開要素16にわたって変化させ得る。あるいは、スリーブまたは他の材料を切開要素16に追加して特定の領域において局所的に剛性を増加させてもよい。さらに他の実施形態では、切開要素16は特定の領域におけるその可撓性または剛性を変化させるその長さに沿って切れ目またはリブを有してもよい。
【0027】
他の実施形態では、第2の捕捉形態における切開要素16の形状は、予め定められていない。その代わりに、第2の捕捉形態における切開要素16の形状は、レンズ8と係り合う切開要素16の材料特性または幾何学的特性によって規定される。切開要素16は、レンズ8と係り合う回転を可能にするのに十分な剛性を維持しながら、その長さに沿って十分に可撓性、弾性、柔らかさ、または鈍いこと(blunt)があってもよく、それによって切開要素16が水晶体嚢4内に存在しかつ完全に開放されている場合でさえ、水晶体嚢6に最小限の力が加えられている。他の実施形態では、切開要素16は、切開要素16が水晶体嚢6に過度の力が加わらないように十分に柔らかく、十分に大きい直径のシリコーンのような軟質エラストマーであってもよい。さらに他の実施形態では、切開要素16は、水晶体嚢6に加えられる力がより大きい領域にわたり分散するように特定の部分および端に沿って十分に鈍くすることができ、よって、引き裂き圧力(tearing pressure)を低減し得る。さらに他の実施形態では、切開要素16は、複数の要素、例えば、鎖状構造の連結から構成され、複数の要素間の柔軟な移動を可能にし得る。さらに他の実施形態では、切開要素16は、その可撓性を局所的に増加し得るその長さの部分に沿ってスリットを有してもよい。例えば、切開要素16は、これらの領域はより可撓性でありよって水晶体嚢6に過度の力をかける傾向が少なくなるように、水晶体嚢6が切開要素16と接触し得る領域にその長さに沿って切欠きを有する管を含んでもよい。さらに他の実施形態では、切開要素16の他の部分は形状が予め定められているが、第2の捕捉形態における切開要素16の部分は形状が予め定められていない。例として、レンズの前方の切開要素16の一部は、切開要素16を眼に導くのを助ける所定の形状に設定された形状である形状記憶円形ワイヤから製造してもよい。例えば、そのような部分は、近位部26の引張状態の半径屈曲部24を含むことができる。レンズ8の後方の切開要素16の一部は、眼の形状により容易に適合する異なりより可撓性のある材料から製造してもよい。このようにして、裂嚢を通して切開要素の挿入を可能にする第2の捕捉形態における切開要素16の部分は、引張状態の半径屈曲部を含み、レンズ8の前方にあり、水晶体嚢6に接触する第2の捕捉形態における切開要素16の部分は、より可撓性のある材料から構成され、水晶体嚢6を損傷する可能性がより少ない。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、追加のガイド(または案内または誘導;guide)管または構成成分は、裂嚢10を通るおよび/またはレンズ8の周りの切開要素16の経路を整列させ得または導き得る。例えば、 第2の捕捉形態における切開要素16が所定の形状を有しない実施形態では、ガイド(または案内または誘導;guiding)要素はそれを特定の形状に拘束するために、切開要素16の遠位部28または近位部26の領域に沿って存在してもよい。管は、統合点22から遠位部28の方向に伸長してもよく、管は水晶体嚢6への挿入およびレンズ8の周りの配置の間に、多かれ少なかれ所望の経路をたどるように可撓性切開要素16を同心円状に拘束してもよい。その後、ガイド管を格納して(または引っ込めて;restracted)、可撓性切開要素16をレンズ4の周りの位置に残してもよい。
【0029】
さらに他の実施形態では、第2の捕捉形態における切開要素16の所定の形状は、外科手術の任意の部分の間に生成されてもよい。例えば、外科医は、レンズ8または水晶体嚢4のような眼の解剖学的特徴を測定するために画像技術を使用してもよい。外科医は、この情報を使用するか、または切開要素の形状を変化させてもよい。あるいは、成形ダイまたは自動ワイヤ成形機械(automated wire forming machined)のような一台の装置は、測定データと組み合わせて使用して、第2の捕捉形態における切開要素16の形状を変化させてもよい。一実施形態では、外科医は、OCTのようなイメージングモダリティを使用して、レンズ8の測定を行い、この情報は患者用のカスタム切開要素16を生成する自動ワイヤ形成ステーションに提供される。さらに他の実施形態では、切開要素16の少なくとも一部が眼内に存在する間に、外科医が切開要素16の形状を追加または変化させてもよい。例えば、外科医は、切開要素16を水晶体嚢6へ位置し、その形状が改善され得ることを決定してもよい。次いで、外科医は眼に鉗子のような別個のツールを挿入するか、またはシャフト12に関連する一体化ツールを使用して、切開要素16の形状を追加または変化させてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、空間が少なくともいくつかの領域においてレンズ8および水晶体嚢6の間に生成されるように、裂嚢10が作製された後に流体は水晶体嚢6の間に導入される。これは、流体切開、ハイドロ切開(hydro dissection)または空間生成(または、腔形成;space creation)と言い得る。いくつかの実施形態によれば、第2の捕捉形態における切開要素16について流体は空間を生成して水晶体嚢6内で回転し、レンズ8を取り囲む。例示的な実施形態は、粘弾性ヒアルロン酸または生理食塩水のような流体は、これらの材料が眼科手術の間に一般に使用され、眼において十分許容され、かつ容易に入手可能であるため、注入してもよい。着色流体、ステロイドのような医薬液体、薬物負荷流体(drug loaded fluids)、生体吸収性流体、潤滑剤、ハイドロゲル、ミクロスフェア(または微小球、microspheres)、粉体状物質、蛍光コントラスト(fluorescent contrast)、 液泡(liquid foams)、または任意の他の適切な流体のような1以上の追加流体を導入してもよい。さらに、空気、酸素、アルゴン、または窒素等のような1以上のガスをさらに追加的にまたは代替的に導入してもよい。あるいは、他の実施形態では、レンズ8および水晶体嚢6の間に流体空間が必要でなくてもよく、レンズ8について回転する場合に切開要素16はレンズ8および水晶体嚢4の機械的切開または鈍的切開(blunt dissection)を行ってもよい。流体切開および鈍的切開は、互いに組み合わせてまたは別々に行うことができる。別個の器具を使用して、流体をカニューレ(cannula)または針を通して水晶体嚢6に注入してもよい。他の実施形態によれば、流体切開の準備は、切開要素16のような外科用デバイス40の要素に組み込まれてもよい。例えば、切開要素16は、そこを通る流体の通過を可能にするその長さに沿って複数の穴を伴い可撓性の管として製造され得る。そのような実施形態では、流体は、切開要素16のルーメンへ導入され、その後、複数の穴の外に流れ出得る。流体が切開要素16を通って連続的に、または切開が必要な時に不連続な時点で導入され得るため、これは切開要素16の能力を改善して水晶体嚢6およびレンズ8の間を通らせ得る。さらに他の実施形態では、流体注入は、外科用デバイス40の他の態様において組み込まれてもよい。例えば、流体は、シャフト12のルーメンを介して送られてもよい。あるいは、伸縮する管または他の管のようなシャフト12から分離した構成成分は、シャフト12と接続して流体導入を提供し得る。いくつかの実施形態では、シャフト12または要素16のようなデバイスの構成成分を通って浸出された流体は、他の外科的目的のために使用され得る。例えば、流体は、別個のカニューレを必要とせずまたは粘弾性物質を必要とせずに、眼1の房を維持するために、シャフト12を通して流体を浸出され得る。洗浄(または灌注;irrigation)および吸引は、単一の構成成分または複数の別個の構成成分を介して達成され得る。 例えば、生理食塩水のような流体は、上述のように、切開要素16の実施形態のルーメンを通って眼に注がれ、シャフト12のルーメンを通して吸引され得る。いくつかの実施形態によれば、他の洗浄または吸引技術は、行われ得る。
【0031】
図5を参照して、切開要素16は第2の捕捉形態に完全に伸長され、シャフト12の長手軸について回転されおよび/または別の方法で水晶体嚢6に過度の力を加えることなく切開要素16がレンズ8を取り囲む水晶体嚢6内の向きに回転されるか移動される。その後、例えば、シャフト12のルーメン14を通って一方または両方の脚を格納させるような、切開要素16の一方または両方の脚18、20に張力を加えること(または引っ張り力を加える;tensioning)により切開要素16はレンズ8を切断するために使用される。切開要素16は、レンズ8を圧縮または切断するために、第1から第2形態へ切開要素16を拡張させるために、上述とは反対の方法で移動させ得る。切開要素16に張力が加えられる場合に、切開要素16はレンズ8に内向きの力を及ぼし、レンズ8を切断および/または断片化を開始する。切開要素16の薄い直径の小さな表面領域を横切ってレンズ8に加えられるその力に起因する。レンズ8が部分的にまたは完全に分割されるまで、切開要素16に張力が加えられ続ける。いくつかの実施形態では、レンズ8が完全に分割されるまで、切開要素16に張力が加えられ続ける。他の実施形態では、切開要素16の伸長は、レンズ8を部分的に断片化し、レンズ8のその残りは切開要素の使用の繰り返しまたは追加ツールにより断片化され得る。
図6を参照して、断片化されたレンズ8は、水晶体嚢6内に示される。切断面(section plane)は主に垂直であるが、切開要素16の切断経路には任意の数の角度および向きが存在してもよいことを理解されたい。
図7を参照して、水晶体嚢が除去されたレンズが示されている。
【0032】
いくつかの実施形態では、外科用デバイス40は以下で説明するように複数の切開要素16を組み込んで一度に複数のレンズ破片を生成してもよい。例えば、複数の切開要素16は、レンズ8を多数の断片に切断することができるメッシュを形成し得、切開要素16は、公差十字パターンを形成するように互いに対して斜めにまたは鋭角であってもよい。他の実施形態では、外科用デバイス40は、レンズ8上で連続して使用されてもよい。例えば、単一部分が生成された後に、第1切断平面が伝送デバイス平面に対して垂直になるようにレンズ8(または切開要素16)を90度回転させることができる。その後、上述のように切開要素16を水晶体嚢6に再挿入でき、全部で4つの断片を生成する2つのレンズ断片にわたり新しい部分を生成するために使用できる。そのプロセスは、任意の所望のサイズの任意の数のレンズ断片を生成するために必要な回数繰り返されてもよい。レンズ破片の最終的な所望のサイズは、眼1からの摘出方法に依存してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、水晶体超音波乳化法(phacoemulsification)を水晶体嚢6において使用してレンズ破片を除去してもよい。これは完全なレンズ破片が表面積を増加させ水晶体超音波乳化法によって乳化させるべき断片のサイズを減少させる困難な白内障または硬白内障において特に有用で有り得る。他の実施形態では、レンズ破片は、下記のように摘出されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、レンズ破片を、わずかな圧力の下で水晶体6へ流体を導入することにより水晶体嚢6の外に張力が加えられてもよい。レンズを摘出するための他のツールおよび方法が利用されるように、流体の流れおよび/または圧力はレンズ破片を眼1の前房に移動させてもよい。例えば、鉗子または把持ツールを使用してレンズ破片を把持し、角膜の切開部4を通して眼1の外にそれらに張力が加えられてもよい。いくつかの実施形態では、切開要素16を使用してレンズ破片を捕まえ、それらを眼1の外に引き出してもよい。切開要素16を第2の捕捉形態に戻し、レンズ破片の周りに位置してもよい。その後、レンズ8が切開要素内に保持されるまで切開要素16に張力が加えられまたは他の方法により閉じられ得るが、レンズ破片は切断される。レンズ破片は、その後、切開要素16を用いて眼1の外に張力が加えられ得る。レンズ8が切開要素16により切断されていないことを保証するために、それを切断するよりはむしろレンズ断片をつかむより大きな表面積を有するパッド、ストラップ、またはストリップのような追加の構成成分を使用し得る。これらの構成成分をシャフト12から摘出することができ、または切開部4を通って眼1内に挿入されかつ切開要素16に取り付けられた別個の構成成分であってもよい。
【0034】
図8~9を参照して、外科用デバイス40の一実施形態は、ハンドル機構42がシャフト12の近位端部に取り付けられている状態で、シャフト12の遠位端部から摘出する2つの切開要素16を含む。
図15も参照して、2つの切開要素16はシャフト12の遠位端部で第1の挿入形態において示される。ハンドル42は、下記で説明するように2つの切開要素16と接続する、縦にスライド可能な2つのスライダーを有する。この初期構成におけるスライダーは、その格納された近位に存在する。第1の挿入形態におけるシャフト12および切開要素16は、上述のように裂嚢10に向かって角膜において切開部4を通って挿入される。本明細書で使用されるように、用語「ハンドル」は外科医による手動把持および作動のために構成されたハンドルと、手術ロボットに結合(または連結または接続;coupled)されロボット制御および動作のために構成されたロボットハンドルとの両方を含む。
【0035】
図16~17も参照して、外科用デバイス40のハンドル42の一実施形態は、切開要素16の第1の挿入形態に相当する構成の一部を切り取ったものにおいて示される。スライダー44は、ハンドル42の上面に沿ってスライド可能である。フィンガー48は、ハンドル42の上面においてスロットを通してスライダー44からハンドル42へ伸長する。フィンガー48は、フィンガー48の近位に配置される螺旋状カム50または他のカム構造に結合しており、フィンガー48に対して軸方向に自由に回転するフィンガー48に縦方向に固定されている。これは、係り合うピン、カラーまたは他の適切な機構を介して機械的に達成されてもよい。カム経路52は、螺旋状カム50の表面において規定される。螺旋状カム50は、螺旋状カム50を縦方向にスライド可能にするが実質的に半径方向には移動しないハンドル42の内側の房内に閉じ込められる。ノーズ(または突出部または鼻部;nose)56はフィンガー48から遠位に伸長し、フィンガー48に対して回転可能である。好都合なことに、ノーズ56は螺旋状カム50に回転可能に固定されている。いくつかの実施形態では、ノーズ56は単に螺旋状カム50の遠位端部である。引き込み(または後退;retraction)バネ58は、ハンドル42の外に第1の挿入形態に向かってフィンガー48を押すように作用して、フィンガー48および前側通路60の間に配置される。引き込みバネ58の近位端部は、ノーズ56の中心に位置され、ノーズ56と係り合ってもよい。切開要素16の第1脚の近位端部は、ノーズの周りを包み込むこと、摩擦フィッティング、溶接、はんだ付け、または圧力フィッティング等のような任意の適切な方法によりノーズ16に固定されてもよい。代わりに、第1脚18の近位端部はフィンガー48に固定されてもよい。カムポスト62はおよび/またはハンドル42内に規定されるまたはハンドル42に対して固定され、かつカム経路52と係り合う。螺旋状カム50がハンドル42の残りに対して横切る場合に、カムポスト62ハンドル42上の同じ場所に留まる。2つの切開要素16が使用される場合に、上述のようにそのような2つのアセンブリ(スライダー44、フィンガー48、カム50、ノーズ56、引き込みバネ58および切開要素16の第1脚18への接続)は、ハンドル42内に並んで利用される。そのようなアセンブリは、互いに同一であってもよく、互いに鏡像であってもよく、または実質的に同一のアセンブリが以下に説明するように2つの別個の切開要素16を走査することができる他の方法で互いに異なってもよい。スライダー44a、44bおよび切開要素16の動きの説明は、スライダー44および切開要素16の両方について同じであり、これら2つの説明は特に明記しない限り置き換え可能である。
【0036】
図10を参照して、切開要素16の一方は、対応するスライダー44bを遠位にスライドさせることにより第2の捕捉形態に遷移する。切開要素16の一方の脚20はシャフト12に接続してもよく、ハンドル42またはハンドル42に対して固定された他の構造に接続され、固定位置に維持される。第1脚18はハンドル42内の移動要素で遷移し回転するように構成されている。上述のように、第1脚18はノーズ56に取り付けられている。
図18も参照して、スライダー44が遠位に移動する場合に、フィンガー48は引き込みバネ58を圧縮し、ノーズ56を遠位に移動させ、螺旋状カム50を遠位に引き込む。引き込みバネ58は圧縮され、フィンガー48に近位力を与える。ユーザーがスライダー44、フィンガー48を放出すると、フィンガー48に並進的に固定された機構は、スライダー44の初期位置に向かって遠位に押される。スライダー44が遠位に前進する場合に、螺旋状カム50は、ハンドル42内に移動する。カム経路52は、カム経路52およびカムポスト62の間の係り合いが螺旋状カム50の回転を引き起こさないように、スライダー44の動きの第1セグメントの間に実質的に縦方向であり得、したがって、切開要素16はシャフト12の長手軸に対して実質的に同一の回転向きに留まる。スライダー44が遠位に前進する場合に、スライダー44は切開要素の第1脚18を遠位に押す。その結果、切開要素16は、
図1~4に関して上述と同じ方法で、第2の捕捉形態へ形状を変化させる。
【0037】
図11も参照して、スライダー44は切開要素16が第2の捕捉形態へ形状が変化した後に、さらに遠位に前進してもよい。
図18~20に示すように、カム経路52はカムポスト62と係り合って螺旋状カム50を回転する。スライダー44の遠位動き量(amount of distal motion)は螺旋状カム50の回転量を調整する。このようにして、スライダー4の直線運動は切開要素16の回転動きに転換される。螺旋状カム50およびノーズ56が互いに回転可能に固定されるため、螺旋状カム50の回転はノーズ56の回転を引き起こし、次いで、第2の捕捉形態における切開要素16の回転を引き起こす。切開要素16は回転し、切開要素16の形状により規定される平面が一致して回転する。切開要素16は、裂嚢10の端により規定される平面に実質的に平行であってもよいその初期位置から、垂直向きから0~40度内の位置に、回転する。この回転の間、切開要素16は水晶体嚢6およびレンズ8の間に移動し、切開要素16の外周内に開放領域46におけるレンズ8を捕捉する。切開要素16は、水晶体嚢6および/またはレンズ8と実質的に係り合わなくてもよく、またはレンズ8または水晶体嚢6と係り合うように構成されてもよい。代わりに、切開要素16は水晶体嚢6およびレンズ8の間の鈍的切開を引き起こすかもしれない。
【0038】
図20を参照して、スライダー44は、完全に前方に移動され、螺旋状カム50および切開要素16の回転が完了する。切開要素16は水晶体嚢6内のレンズ8を取り囲み、
図4~5に関して上述したように、レンズ8に対して内向きの切断力を加えるように構成されている。
【0039】
図12~13も参照して、第2切開要素16はその後、第2の捕捉形態に展開されて、
図9~11および16~20に関して上述と同一の方法でレンズ8を取り囲む位置に回転する。
図14も参照して、切開要素16に張力が加えられまたは他の方法で閉じられる場合に切開要素16がレンズ8を3つの部分的または完全に分離した断片に切断するように、両方の切開要素16はレンズ8に係り合う。
図21も参照して、伸長させることは、スライダー44を近位にスライドさせることにより提供されてもよく、それにより各切開要素16の第1脚18を近位に引き込み、それに張力を加える。いくつかの実施形態では、引き込みバネ58によりフィンガー48に及ぼされる近位力は、ユーザーによる追加の力の適用なしにレンズ8を切断するのに十分大きくてもよい。他の実施形態では、ユーザーは、レンズ8を断片化する追加の力を提供する。これは、硬白内障または困難な白内障(hard or difficult cataracts)について特に必要であり得る。いくつかの実施形態によれば、各切開要素16は、その他の切開要素16から離間した線に沿って、レンズ8の後面と係り合い、実質的に同一の線に沿ってレンズ8の前面と係り合う。
【0040】
図22において、スライダー44は近位に移動されて元の位置に戻る。切開要素16はその元の挿入平面に戻って回転されて、その後シャフト12に向かって格納される。
図15も参照して、切開要素16はレンズを分割した後にそれらの初期の構成に実質的に戻ってもよい。螺旋状カム50のカム経路52は、図示されるように閉鎖ループであってもよい。代わりに、カム経路52は一方向の経路であってもよく、スライダー44は完全に遠位に移動されその後元の位置にそれを近位に移動する。いくつかの実施形態では、螺旋状カム50が特定の方向に回転または移動することを防止するカム経路52へ組み込まれてもよく、カム経路52の別個の位置にまたはカム経路52全体に沿って含まれてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、上述のように切開要素16は、各切開要素16が異なるスライダー44a、44bに結合するというよりはむしろ、単一のスライダー44の動作と同期して移動するように構成されてもよい。そうであれば、切開要素16は同時に開き回転するように構成されてもよい。代わりに、切開要素16の回転は一方の切開要素16が最初に開き、他方の切開要素16の前で最初に開き最初に回転するように交互に配列してもよい。これは異なるカム経路52およびカムポスト62を各切開要素16と関連づけることにより達成されてもよい。さらに他の実施形態では、2つのスライダー44a、44bは、左のスライダー44bは両方のスライダー44を前に移動させるが右のスライダー44aは右のスライダー44aのみを前に移動させる(またはその逆も)ように、構成することができる。右のスライダー44aは、両方のスライダー44a、44bを後に移動させ、左のスライダーは左のスライダー44bのみを後に移動させるように構成されてもよい。よって、ユーザーはスライダー44a、44bを独立にまたは同期させて移動させるか決めてもよい。
【0042】
いくつかの要素によれば、切開要素16を同一方向に回転させる。例えば、第1切開要素16が開き、第1切開要素16をその後水晶体嚢6へ時計周り方向に回転させる。第2切開要素はその後開き、第2切開要素を水晶体嚢6へ時計回り方向に回転させる。この実施形態では、第1切開要素16は垂直平面を超えて角度10~40度まで回転してもよく、第2切開要素16は垂直平面より10~40度小さい角度まで回転してもよい。
【0043】
さらに他の実施形態では、1つまたは複数の追加の機構または異なる機構を使用して切開要素16を展開してもよい。例えば、スクロールホイール前進機構または他の回転機構を使用して、一方のまたは両方の切開要素16を展開することができる。いくつかの実施形態では、ユーザーによる移動は、付与量のユーザー・インターフェース構成成分を移動させてギア、スケーリングされたプーリーまたは他の任意の数の構成成分の使用を通して切開要素16をより多くまたはより少ない量だけ移動させるように、切開要素16の移動に対して上下に調整される。いくつかの実施形態では、外科用デバイス40の特定の部分は、モーター、リニアモーター、空気圧、油圧、または磁石等のような構成成分を通して機械的に動力を与えられてもよい。外科用デバイス40は、1以上のより大きなロボット・アセンブリの一部として組み込まれてもよい。例えば、白内障手術を行うように構成されたロボット・デバイスは、外科用デバイス40の実施形態を含んでもよい。これは、外科医が記述の方法の一部を行うことを可能にしてもよい。いくつかの実施形態では、これは、強膜(sclera)を通して水晶体嚢4に近づくような代替の技術および方法を可能にし得る。いくつかの実施形態によれば、少なくともルーメン14を有するシャフト12の挿入し、角膜の切開部4を通って裂嚢10に向かって伸長させ、ルーメン14の遠位端部の切開要素16の外に伸長させ、切開要素16をシャフト12の軸から遠ざけて折り曲げ裂嚢10を通らせ、裂嚢10よりも大きいサイズに伸長させ、レンズ8の少なくとも一部を捕捉することは、ロボット制御下で行われる。
【0044】
いくつかの実施形態では、切開要素16は、水晶体嚢6内に最初に設置される場合にループに近づく必要はない。例えば、切開要素16はループを形成するためにそれ自身を倍増することなく、シャフト12から水晶体嚢6に供給される単一の一片の丸いワイヤであってもよい。そのような実施形態では、眼1内の組織への穿刺(puncture)または損傷を防止するために切開要素16の遠位端は尖っていない。切開要素16の遠位端が水晶体嚢6の壁に到達した場合に、その構造内に所定の屈曲部のいずれかで折り曲げるように、または水晶体嚢6の内表面に沿って追跡することによって折り曲げるように構成してもよい。切開要素16は、その後レンズ8の周囲の周りに行くようにレンズ8および水晶体嚢6の間の空間を横切ってもよい。切開要素16は、その後、ユーザーの視点に戻り、水晶体嚢6の上面へ戻ってもよく、ユーザーはグリッパーのようなハンドル42上の特徴で、または全体的に別個のツールで切開要素16を把持することができる。この点で、切開要素16は水晶体嚢6内のレンズ8を取り囲み、ループに近づく。一方のまたは両方の切開要素16の端に張力が加えられおよび/または引き込まれる場合に、レンズ8が断片化されるように内向きの切断力はレンズ8に加えられる。この実施形態の切開要素16は、他よりも容易に特定の方向に優先的に折り曲げることを可能とする断面を有してもよく、切開要素16は必要に応じて折り曲がりレンズ8の周りを追跡できるが、依然として組織への進路を追跡することなく、レンズ8の周りに適切な経路に従うことができる。これは、特定の面に関して優先的に折り曲がる「I」ビームのような好ましい折り曲げモーメント断面の使用を含んでもよい。あるいは、折り曲げを可能にする切欠きを有する管は、この平面に切り目を設置することにより特定の平面内に折り曲がるように構成されてもよい。したがって、切開要素16は、主として遠位から近位への方法で、レンズ8の周りで折り曲がってもよい。これは、切開要素16が水晶体嚢6およびレンズ8に対して所望の一般的な経路を横切る能力が向上し得る。いくつかの実施形態では、切開要素16は、その遠位端が任意の所定の経路を移動することが制約されないように完全に可撓性であってもよい。遠位端は、外部電磁場で力が印加され得る磁気または電磁の構成成分を含むように構成されてもよい。その後、所望の経路に沿って水晶体嚢6の周りに導かれるように、外部デバイスを使用して切開要素16の遠位端の位置を制御してもよい。任意の数の異なる経路または断片化平面は、この実施形態で考慮されてもよい。外科用デバイス40は、水晶体嚢6を損傷せずに切開要素16の遠位端について所望の経路を生成するために様々な画像モダリティを組み込んでもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、切開要素16は複数の部分および/または複数のループに分岐してもよい。上述のように、例えば、初期の構成において、切開要素16は形状および輪郭を有してもよい。しかしながら、第2の捕捉形態に遷移される場合に、切開要素16は、その長さに沿って、レンズ8の全体または一部をそれぞれ取り囲む、同一のもしくは似た形状または異なる形状を有し得る2つの要素に分岐してもよい。これは、2つの分割された切開要素16を使用することなく、切開要素16が複数の断片にレンズ8を切断することを可能にしてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、一方または両方の切開要素16はレンズ8の鈍的切開または断片化を助けるために1つまたは複数のタイプのエネルギーを加えるように構成されてもよい。例えば、一方または両方の切開要素16は、電流が流れる場合に熱くなる電気抵抗ワイヤの使用を通して加熱されるように構成されている1以上の部分を含んでもよい。増加した温度は水晶体嚢6およびレンズ8の分割が改善し、レンズ8の分割も促進される。あるいは、ラジオ周波数アブレーション(または切除または焼灼;ablation)、電気メス、または超音波振動エネルギー等のような任意の数の他のモダリティを使用してもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、ハンドル42は流体伝送特徴を組み込んでもよい。例えば、上述のように、切開要素16またはシャフト12は、各構成成分を通して流体の注入を可能にしてもよい。ハンドル42は、管または一体化コネクタ等を介してこれらの構成成分を外部流体源に接続する流体通路および経路を含んでもよい。あるいは、ハンドル42は、シャフト12を通して流体を押す内部注入システムを含んでもよい。流体は、ハンドル42においてピストンを有するシリンダー内に貯蔵してもよく、ピストンは 作動構成成分により前に押圧される。例えば、別個のスライダーまたはボタンはピストンに接続され、スライダーがユーザーにより移動されるとピストンが移動してシリンダーからの流体を注入システム内に排出するように配置されてもよい。これは、ユーザーが水晶体嚢6およびレンズ8の間の空間を生成するような手術の間の特定の時間に、切開要素16、シャフト12、または任意の他のハンドル42の構成成分を通して流体の伝送(delivery)を調整すること可能にしてもよい。あるいは、外科用デバイス40は、デバイスの通常の動作内で特定の期間内に流体が外科用デバイス40により自動的に注入されるように構成されてもよい。例えば、バネは、螺旋状カム50がその経路を通って移動する場合に、ピストンが流体量を排出するようにピストンに力を加えるように構成されてもよい。
【0048】
図23を参照して、切開要素16の代替の実施形態が側面図として示される。2つの切開要素16は、シャフト12の遠位端部から伸長する。この実施形態では、切開要素16は、上述のようにレンズ8の側面よりはむしろレンズ8の遠位端部8aで開始するレンズ8の周りのループに配置される。切開要素16は、シャフト12の遠位端部からレンズ8の遠位端部8aに向かって遠位に、かつ水晶体嚢へ一度伸長してもよい。切開要素16は、水晶体嚢に過剰な力がかかることなく、レンズ8の周りに行くことが可能な所定の形状および湾曲を有するように構成されているワイヤのループに近似してもよい。これは、切開要素16は伝送デバイスから伸長する場合に、側面から側面の折り曲がりだけでなく、様々な三次元形状を形成する前方および後方の湾曲も含んでもよい。水晶体嚢に入りレンズ8を捕捉するために、切開要素16は膨張するにつれて異なる形状になるように構成されている。これらの切開要素16は、
図23に示されるように、平面というよりは第2形態におけるシャフトから下方に湾曲している。複数の切開要素16が使用される場合、各々は他と異なる程度に湾曲するように構成されてもよい。切開要素16の一方の端は、上述のように、他方が伝送デバイスに相対的に固定されている間に伸長してもよく、または両方の端が同時に伸長してもよい。上述のように、切開要素は、様々な輪郭、材料、またはその長さに沿う可撓性を有してもよい。
【0049】
切開要素16の一方は水晶体嚢およびレンズ8の間の空間を横切るように伸長してもよく、次いで、レンズ8の周りの下方および近位に移動してもよい。第2切開要素16は、示されているように伸長してもよく、任意の数の他の切開要素16が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、上述のように、2つの切開要素16がレンズを4つの離散的な片にスライスことができるように断片化平面の交差を生成するために、前方に伸長する切開要素16は側面に伸長する切開要素16と共に接近して使用してもよい。さらに、前記断片化平面は互いに任意の角度であり得、切開要素16は前方に伸びるおよび前記側面に伸びる実施形態のような任意の数の方向からレンズ8の周辺に伸びることができる。
【0050】
図24を参照して、別の代替的な実施形態は、上面図として示される。この実施形態では、切開要素16の一方は、その露出された長さの少なくとも一部分に沿った保持バッグ70に取り付けられている。保持バッグ70は、ポリエステル、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、または任意の他の適切なプラスチックのような薄いポリマー材料から製造されてもよい。あるいは、保持バッグは、小さなワイヤステンレス鋼ブレイド(braid)、ニッケル-チタン合金ブレイド、または任意の他の適切な材料のようなメッシュから構成されてもよい。保持バッグ70は、切開要素16の部分に接続し空洞を形成し、それによって切開要素16は保持バッグ70を開閉する開放および収縮構成の間で変化することができる。一実施形態では、保持バッグ70を有する切開要素は、収縮形状にして切開部4を通って患者の眼1へ配置され得る。保持バッグ70は、切開部を通って眼1に挿入する間にシャフト12のルーメン14において隠されてもよい。その後、切開要素16は、上述のように裂嚢10に配置され、レンズ8の周りの水晶体嚢6へ挿入され得る。いくつかの実施形態では、保持バッグ70は、レンズ8の輪郭またはレンズ破片のような所定の形状を有してもよい。切開要素16がレンズ8の周りを輪で囲む場合に、保持バッグ70は切開要素16に従い、レンズ8は保持バッグ70により形成される空洞に入る。いくつかの実施形態によれば、レンズ8全体が保持バッグ70にレンズ8の周りのあらゆるところですくいとられるように、切開要素16を移動させることができる。切開要素16は、その後保持バッグ70を閉じた収縮形状に変化し、レンズ8を封入する。保持バッグ70は、その後切開部4を通して眼1の外に引き出される。レンズ8は、レンズ8が除去されるにつれて、折りたたまれて絞られて角膜切開部4の長さを通過するしてもよい。回収バッグ70は、回収バッグ70の摩擦係数を減少させること等により切開部4から除去する能力を高めるために任意の適切な方法で被覆してもよい。他の実施形態では、レンズ8の剛性に応じて追加のツールまたは構成成分を使用してレンズ8をさらに断片化してもよい。例えば、
図24に示されるように、複数の切開要素16は水晶体嚢へ挿入して保持バッグ70内でレンズ8を断片化してもよい。これらの追加の切開要素16は、保持バッグ70が水晶体嚢からレンズ8を除去する後であるがレンズ8が眼1から除去される前に、保持バッグ70が同時に配置されまたは導入されてもよい。
【0051】
他の実施形態では、他の断片化モダリティは、レンズ8が保持バッグ70内に存在すると、使用されてもよい。例えば、レンズ8が保持バッグ70により捕捉されると、超音波エネルギーまたは水晶体超音波乳化法を保持バッグ内で使用して、レンズ8を断片化してもよい。これは、シャフト12の遠位端部から保持バッグ70に伸縮プローブの使用を含んでもよい。あるいは、デブリスタ(debriders)、またはオーガー(augers)等の機械的器具を使用して、レンズ8を十分に断片化して、狭い角膜切開部4を通って眼1から引き出してもよい。
【0052】
さらに他の実施形態では、本明細書で説明する保持バッグ70は、レンズ8が断片化された後に眼1からレンズ断片を除去するために回収デバイスとして利用されてもよい。例えば、
図1に示されるデバイスを使用して任意の数の断片にレンズ8を切断してもよい。1以上の断片は、通常の計器を用いて角膜切開部を通して回収することは困難であるため、十分に大きくてもよい。保持バッグ70を使用して水晶体嚢内のまたは前房に浮遊するレンズ破片を捕捉して角膜の切開部4の外にそれらを引き出してもよい。さらに、保持バッグ70は流体のまたは小さな物体の通過を可能にする切欠きまたは開口を有してもよい。例えば、保持バッグ70は、レンズ破片を依然として保持しながら戻水流体(aqueous humor fluid)または粘弾性流体が開口を通って浸透することを可能にするメッシュまたはブレイドであってもよい。
【0053】
図25~29を参照して、眼1からレンズ断片8fを除去するための外科用デバイス80の別の実施形態が示されている。外科用デバイス80は外部回転要素82aおよび内部回転要素82bを含む。要素82a、82bは、シャフト12の長手軸を規定し得る中心軸に沿って同心円状に配置される。
図25を参照して、
図1に示すように、外科用デバイス80は、最初、第1形態において、デバイスの輪郭が標準的な角膜切開部4を通って挿入されるように十分小さい。外部回転要素82aおよび内部回転要素82bは、それらの長さに沿って切断されて、窓84により周囲に分割されたストラップ82を生成する管であってもよい。外部回転要素82aは、角膜切開部に適合することができるように適切に寸法決めされた外径を有してもよく、任意の外径は対象とされる切開部に応じて考慮されてもよいが理想的には外径は0.015(0.015”)および0.060(0.060”)である。内部回転要素82bは、外部回転要素82aの内径内に同心円状に適合するように寸法決めされた外径を有してもよい。外部回転要素82aおよび内部回転要素82bの管は、ストラップ82および窓84を生成するために、レーザー切断、機械加工、化学的エッチング、溶接、または任意の適切なプロセスであってもよい。ストラップ82は、下記で説明するように、力が加えられ要素82a、82bを収縮させる場合に、レンズ8fを通して切断しない任意の適切な幅を有するサイズにしてもよい。ストラップ82はその範囲外の幅を有してもよいが、ストラップ82の幅は、0.004(.004”)から0.050(.050”)の間であってもよい。
【0054】
外部回転要素82aおよび内部回転要素82bは、プッシュ・ロッド(push rod)のような別個の構成成分を用いて外科用デバイス80の遠位端を前方に押すような、または眼に挿入している間に外科用デバイス80を覆う(sheaths)追加の外管を用いて外部回転要素82aを拘束することによって、第2の捕捉形態に拘束されてもよい。あるいは、外科用デバイス80は、収縮要素(constricting element)が必要ではなく角膜の切開部4を通して挿入する場合に手術用デバイス80は収縮するように、十分に可撓性である。遠位端86は、各々の外部回転要素82aおよび内部回転要素82bの遠位端部に接続して、眼球構造と接触するために角膜切開部および鈍的表面(blunt surface)に円滑な挿入を提供してもよい。遠位端は、PEBAX(登録商標)ポリエステル・ブロック・アミド、ポリウレタン、またはサーモプラスチック・エラストマー 等のような軟質ポリマーから構成されてもよい。あるいは、遠位端86は、ステンレス鋼若しくはチタンのような金属といった硬質材料、または生体適合非金属物質から構成されてもよい。代わりに、遠位端86は、鋭利であってもよく、鋭利な遠位端86が切開部を形成する以前の切開部4を生成することなく外科用デバイス80が眼1に挿入されることを可能にする。外部回転要素82aおよび内部回転要素82bは超弾性材料から構成される場合、第1形態から第2形態への遷移は、材料の相変化を含んでもよい。
【0055】
好都合なことに、ストラップ82は、一旦外科用デバイス80が前房内に入る場合に、所定の開放形状を有するように構成される。要素が所定の形状に戻るように外科用デバイスが開く。これは、超弾性状態におけるニッケル-チタン合金のような形状記憶材料を使用して達成されてもよく、その形状記憶材料は一旦収縮要素が放出されると、
図26に示される開放輪郭に戻るように成形される。あるいは、デバイスが一旦眼に挿入されかつニッケル-チタン合金の転移温度を超える体温に加熱されることを可能にすると、ニッケル-チタン合金は開口形状に各ストラップ82を戻し得る。代わりに、外科用デバイス80が一旦第2形態の開放形状が所望される位置に存在すると、加熱要素を外科用デバイス80に接続して外科用デバイス80をさらに高い転移温度を超えて加熱してもよい。他の実施形態では、外部回転要素82aおよび内部回転要素82bは任意の数の材料から構成されてもよい。例えば、ステンレス鋼、チタン、またはプラスチック等のような弾性材料を使用してもよく、変形は弾性回復のための歪み限度を下回る。あるいは、ストラップ82の一部または全体は、回転要素82a、82bの部分とさらに異なってもよい複数の材料から構成されてもよい。例えば、ストラップ82を、おそらくニッケル-チタン合金から製造し、ステンレス鋼から構成される回転要素に貼り付けてもよい。
図25~29に示す実施形態では、各々の2つの回転要素82a、82bは、2つのストラップ82を含む。しかしながら、任意の他の適切な数のストラップ82は、各回転要素82a、82bの部分として含まれ得、任意の適切な数の回転要素82a、82bが提供されてもよい。例えば、デバイスは、1つのストラップ82のみをそれぞれ含む、同心円状に積層された4つの回転要素82a、82bを含んでもよい。この実施形態では、ストラップ82はそれらがすべて共にグループ化されるように回転され得、角膜の切開部4におけるデバイスの交差する輪郭(crossing profile)をさらに低減し得る。いくつかの実施形態では、ストラップ82の所定の形状は、初期形状であり、ストラップは第2形態に向かって外側に曲がる。
【0056】
図26を参照して、第2形態では回転要素82a、82bは平面を規定し、レンズの断片を受け取るために開く中央領域を囲み、デバイスにより取り囲まれてもされてもよい。
図27を参照して、外科用デバイス80を、レンズ破片8fを囲むように移動させる。
図28を参照して、内部回転要素82aおよび外部回転要素82bは、互いに約90度回転している。外科用デバイス80は、第3回転構成に存在する。一方または両方の回転要素82a、82bを回転して、第3構成に到達してもよい。例えば、外部回転要素82bの近位端部に取り付けられた管88、および/または内部回転要素82aの近位端部に取り付けられた管90を、回転要素82a、82bを第3構成に回転させるために回転させる。他の実施形態では、回転要素82a、82bは互いに任意の他の適切な角度に回転してもよい。第3構成では、内部回転要素82aおよび外部回転要素82bはレンズ破片8fを取り囲むケージに近づく。
【0057】
図29を参照して、ストラップ82を移動してレンズ破片8fの周りに収縮させてもよい。いくつかの実施形態では、外側の鞘(outer sheath)またはプッシュ(push)およびプッシュ・ロッド(pull rod)のような収縮要素を使用してストラップ82を収縮させてもよい。他の実施形態では、ストラップを第2形態に拡張するための機構または方法が逆転される。例えば、ストラップ82が超弾性である場合に、ストラップ82は冷却されてもよくそれらの初期形状に向かって相転移を介して機械的に促されてもよい。他の実施形態では、回転要素82a、82bは、それらが角膜の切開部4を通って引っ込まれるようにして収縮する。ストラップ82およびレンズ8が引き出される場合にストラップ82およびレンズ8が切開部4のサイズに適合するように、切開部4はストラップ82およびレンズ8を圧搾し圧縮する。さらに、他の構成成分および機構を組み込んで眼1からレンズ破片8fを除去することを助けてもよい。例えば、圧縮バネ、空気圧機構、または電動機構等を組み込み、または外科用デバイス80を使用して、眼1からレンズ破片8fを引き出してもよい。いくつかの実施形態では、ストラップ82はレンズ破片8fへ切断してもまたはさらにレンズを断片化してもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、上述のようにストラップ82を組み込んでまたは取り付けてバッグを取り除いてもよい。バックは、1以上の回転要素82a、82b上に2以上のストラップ82の間に存在してもよい。開放構成では、レンズ破片8fは、同様に内部回転要素82aおよび外部回転要素82bの中央領域内に配置され得る。内部回転要素82aおよび外部回転要素82bを第3構成に移動させた場合に、バックは同様に移動され、レンズ破片を捕捉する。
【0059】
他の実施形態では、
図25~29のデバイスを任意の他の適切な方法で構成してもよい。例えば、回転要素82a、82bをそれらの遠位端部に接続してもよく、代わりに開放ケージを形成してもよい。いくつかの実施形態では、回転要素82a、82bは、同心円状に整列させなくてもよく、またはワイヤもしくはビーム等のような非管状(非チューブ状;non-tubular)構造で構成されてもよい。
【0060】
図30Aおよび30Bを参照して、代替的な実施形態が示される。単一のルーメンシャフト12というよりはむしろ、2つのルーメンシャフトが第1伝送管12aおよび第2伝送管12bを有する。各管は、そこを通るルーメンを含み、切開要素16は各伝送管12a、12bの自由端を通って伸長して閉鎖ループまたは閉鎖形状を形成する。切開要素16は、上述のように任意の実施形態に関して同じ特徴を有してもよい。第2伝送管12bは、近位に(
図30に示すように右側に)折り曲げられ、その結果、切開要素16の近位セグメントは使用中にレンズ8の近位端部の周りを回転することができる。2つの伝送管12a、12bの自由端を裂嚢10の直径よりも小さい距離で互いに離間させてもよい。その結果、伝送管12a、12bを、上述のように、レンズへ可撓性の切開要素16を送ることができ、切開要素16をレンズ8に対して回転させ、レンズの少なくとも一部を取り囲むことができる。超弾性の切開要素16というよりはむしろ単一の可撓性の切開要素16の使用がデバイスの構成を単純化し得る。一方または両方の伝送管12a、12bは、
図1に示す切開要素16の異なる実施形態の少なくとも一部として同一の方法で成形されてもよく、例えば、第2伝送管12bは、
図1の実施形態では、切開要素16自体によって作製された引張状態の半径屈曲部24を含んでもよい。上述のように、切開要素16は、開放してない初期形状(less-open initial shape)から開放した捕捉形状(more-open capture shape)に拡張可能であってもよい。例えば、初期形状として切開要素16は、切開要素16の追加部分を一方または両方の伝送管12a、12bの端の外に押し出して
図30の湾曲した捕捉形状を形成した後に、伝送管12a、12bの端の間に実質的に直線状に伸長してもよい。
図30Aの実施形態は、上述のように実質的に作動する。
【0061】
図30Bを参照して、第1内管180Aは一方のルーメンに配置され、第2内管180Bは他方のルーメンに配置される。第1および第2内管180A、180Bを本明細書で説明する内管に関連して記載された任意の方法で使用されてもよい。第1および第2内管180A、180Bを要素16の両端から要素16に前進させて、要素16を成形してもよく、周囲の周りに要素16を移動してもよく、または本明細書で説明する任意の他の使用であってもよい。第1および第2管180A、180Bの利点は、以下に説明するように、内管180A、180Bを用いて要素16を非常に可撓性にして段階的に前進させることができるようにそれらを使用して16を実質的に成形し得ることである。
【0062】
上記のいずれかの実施形態では、真空吸引をシャフト12のルーメン14または内部回転要素82aのようなデバイスの特定の要素に組み込んでもよい。真空吸引を使用してレンズの小さな断片を吸引し、または移動の間にレンズ断片を適所に保持してもよい。
【0063】
図31~33を参照して、レンズを切断/セグメント化するための別のデバイス140が示されている。デバイス140は、本明細書で説明する任意の方法で使用され得る切断または切開要素116を有する。さらに、本明細書で説明する全てのデバイスを本明細書で説明する任意の方法で使用してもよく、そのような全ての方法は明示的に各デバイスに組み込まれる。要素116は、
図33で示される第1形態から
図31で示される第2形態に移動可能である。要素116は、第1脚118および第2脚120を有する。第1脚118は、
図33~36に示すようにシャフト112においてルーメン114を通って伸長してもよい。ルーメン114を出るときに、要素16の向きを概ね規定する出口115でルーメン114が長手中央線LCを規定する状態でルーメン114は遠位端部123で出口115を有する。シャフト112はまた、要素116の両端がシャフト112に対してスライド可能であり、本明細書で説明するように操作されるように、第2脚120が配置される第2ルーメン(
図30参照)を有してもよい。あるいは、第2脚120は第1脚118のみがシャフト112に対してスライド可能であるように、シャフト112に結合されてもよい。
【0064】
デバイス140は、要素116が第1形態から第2形態へ移動するにつれてサイズが増加する閉鎖ループを形成する。本明細書で説明するように、要素116が第1形態から第2形態へ移動する場合に、要素116はレンズの前面および水晶体嚢の間に前進する。閉鎖ループ121は、閉鎖ループ121の開放領域146を最大にする向きにより規定される開放領域146を形成する。デバイス140が一旦第2形態に存在すると、デバイス140はレンズの周りの開放領域146を所望の位置に移動してレンズを切断するように操作される。上述のように、デバイス140を使用して要素16を移動させることにより水晶体嚢からレンズの後面を切開してもよい。要素116および/またはシャフト112の回転のような任意の適切な方法で要素116を移動させてもよい。閉鎖ループ121を切開の間のように移動された場合に、固定サイズを有してもよい。レンズおよび水晶体嚢の間に閉鎖ループ121が前進した状態で、閉鎖ループ121のサイズおよび閉鎖ループ121の弾性特性を増加させるために、要素116を第2形態に向かって移動させると、閉鎖ループ121はサイズが増加する。閉鎖ループ121の剛性は、水晶体嚢への外傷を軽減し防止すべく軟質の柔らかい要素16を提供することとの間のバランスを必要とするが、閉鎖ループ121が伸長すると、水晶体嚢およびレンズの前面の間の空間を通して前進するために十分な剛性を有さなければならない。フィラメントはレンズおよび水晶体嚢の間に前進するのに十分な外向きの力を発揮することができないため、細いフィラメントで作製された伝統的なスネアはこのように前進できない。他方、剛性ループはレンズおよび水晶体嚢の間に前進することができるが、過剰に硬いループは水晶体嚢の損傷を増加させる。
【0065】
シャフト112から伸長する要素116の長さは、要素116が第2形態に向かって移動する場合に増加する。本発明の一態様では、要素116が第1形態から第2形態へ移動する場合に、第1脚118が全長の増加の少なくとも85%、または少なくとも95%である第1長さについてシャフト112のルーメンから伸長してもよい。もちろん、第2脚120はシャフト112に対して移動可能ではない場合に、第1脚118は、長さの増加の全てを生じる。
【0066】
要素116が
図33の第1形態に存在する場合に、要素116の部分は、第1形態から第2形態へ要素116を移動させる前に.水晶体嚢およびレンズの前面(明確にするために水晶体嚢は誇張されている)の間に配置されてもよい。例えば、
図34の閉鎖ループ121の一部または全部は、第2形態へ要素116を移動させる前に、水晶体嚢およびレンズの間に配置されまたは押し込まれてもよい。要素116は、任意の適切な方法でレンズの上方/前の位置で眼において配置されてもよい。例えば、要素116をシャフト内に完全に拘束してもよく、眼への導入後に
図34のシャフト112から第1形態へ伸長させてもよい。あるいは、要素116が眼へ導入され第1形態におけるレンズ上に配置された場合に、要素116は第1形態に存在してもよい。要素116を、別のカニューレまたは管を通って前進させて眼に導入された間に要素を収容してもよい。デバイス140は任意の適切なアクセス技術を使用して眼へ導入してもよい。
【0067】
図35に示されているように、要素116は第2形態に到達する前に中央位置を形成してもよい。デバイス140は、中間位置において中間閉鎖ループを形成する。中間閉鎖ループ130は第2形態において開放領域146の30%として定義された領域IAを有する。中間位置は、あるいは閉鎖ループ121を横切る最大寸法が5mmに到達するかまたは等しい場合に、定義されてもよい。
【0068】
中間位置は、閉鎖ループ121がレンズの周囲に到達したかまたはほぼ到達した中間状態を示す。本発明に関して、要素116は、閉鎖ループ121を水晶体嚢に向かって押すのとは対照的に、レンズ上に広げる傾向にあるようにルーメン114から伸長する。開放領域146により形成された中間領域IAが幾何学的中心GCを有する。長手中央線LCは出口115および幾何学的中心GCの間に、少なくとも60度または少なくとも80度伸長する線Lを有する角度Aを形成する。中間位置の間に要素116および長手中央線LCを向き付けることにより、中間位置からの要素116のさらなる伸長は、小さな角度で起こり得る中間閉鎖ループ121をカプセル壁に向かって移動させるのではなく、レンズ上に要素116を広げる傾向にある。換言すると、閉鎖ループ121および要素116は、第1脚118が遠位に移動する間に要素116が中間位置に移動する場合に、第2脚120がシャフト112の遠位端部123に対して近位に変位するという点で外側に突出するというよりはむしろ、レンズ上に広がる。換言すれば、中間位置は、中間領域IAの少なくとも 30%であるシャフト112の遠位端部123の近位に配置される近位領域PAを有する。
【0069】
図31を参照して、要素116が第2形態において存在する場合に、要素116は閉鎖ループ121の広がりを同様に高める長手中央線LCの一方の側面上で、少なくとも85%、または全体として主に伸長してもよい。第2形態における開放領域146は、シャフト112の遠位端部123の近位に配置される近位部143およびシャフト112の遠位端部123の遠位に配置された遠位部145を有する。シャフト112(不図示)の遠位端部123の位置は、
図31において明確に示されている。近位部143は、第2形態における開放領域146の少なくとも10%である領域を有する。換言すると、要素116の長さLの少なくとも10%は、長手中央線LCに沿って測定される長さを有する第2形態におけるシャフト112の遠位端部123の近位に配置される。
【0070】
要素116はまた、要素116が第1形態から第2形態へ移動した場合に、レンズの周囲に向かって移動する前進部150を有してもよい。前進部150は、レンズの後側に一致して反転する部分152を有する。前進部150は、レンズの周囲の曲率半径よりも、例えば20%または40%大きい第2形態において曲率半径を有してもよい。前進部150に沿ったより大きな曲率半径は、より湾曲した形状で起こり得るように要素116が水晶体嚢に過剰に突出するのを防止することを助けてもよい。もちろん、前進部150は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な曲率半径を有してもよい。本明細書で使用されるように、直線部分は、無限の曲率半径を有するとみなされ、よって、本明細書での定義の目的にためにレンズ半径よりも大きなものとみなされる。
【0071】
周囲の周りを反転する前進部150の部分152は、周囲の周りに移動した後に外側に伸長するというよりはむしろ、レンズの後面および水晶体嚢の間の位置に移動する。その部分は、(要素116および/またはシャフト112を回転させるように)要素116の追加操作を必要とせずに要素116が単に第2形態へ移動するためにレンズの周囲の周りに反転してもよい。あるいは、デバイス140を操作して、要素116を第2形態へ移動する間またはその後に、レンズの後側に部分152を反転させてもよい。
【0072】
部分152は、レンズの後側に反転する臨界長さを有してもよい。一態様では、部分152は、レンズの周囲が半径5mmを有する場合に、少なくとも2mmまたは少なくとも4mmである臨界長さで後側へ反転する。レンズの後側に反転する前進部150の部分152は、レンズの軸154の少なくとも20度、または少なくとも45度の角度を形成する。前進部150はまた、少なくとも6mmの長さを有する。
【0073】
前進部150はまた、要素116の部分がエンベロープ156を超えて伸長しないように要素116を境界付けている第2形態においてエンベロープ156を規定する。エンベロープ156は、前進部150を180度の角度への対称的な伸長により規定される。要素116は、第2形態におけるエンベロープ156内に完全に配置されてもよい。前進部150を、レンズの軸154に沿って見た場合に要素116の第1部とすることでレンズの周囲に到達させてもよい。第2形態における開放領域146は、前進部150の曲率半径の0.7倍未満の長手中央線を横切る方向において幅を有してもよい。前進部150はまた、第2形態における要素116の長さLの少なくとも25%である長さを有してもよい(
図31参照)。前進部150はまた、レンズが切断する前に開放領域146において配置される場合に要素116の後部160上に配置されてもよい。後部160は、後方長さPLを有し、前進部150は後方長さPLの少なくとも70%の長さを有する。
【0074】
デバイス140を
図31および32を参照してさらに詳細に説明する。要素116の後部160は、近位屈曲部162の約半分および遠位屈曲部164の約半分を含む。近位屈曲部162および遠位屈曲部164はレンズの周囲に隣り合って配置され、各屈曲部162、164は、レンズの前側および後側に跨がる。要素116の前側部分166は、シャフト112のルーメン114から伸長しかつ遠位湾曲部170に至るストレート・セグメント168を有する。遠位湾曲部170は、曲率半径0.2143インチを有し、近位屈曲部は半径0.0394インチ、遠位屈曲部は半径0.0689インチ、前進部150は半径0.3176インチを有し、狭い屈曲部172は半径0.0059インチを有する。狭い屈曲部172は、少なくとも120度である角度のような狭い屈曲半径について本明細書で説明する特徴のいずれかを有してもよい。
図32を参照して、遠位湾曲部170および近位湾曲部174は、半径0.414インチを有する遠位湾曲部および半径0.186インチを有する近位湾曲部を有し両方とも湾曲している。要素116は、上述のように設定された形状を有するニチノール・ワイヤ(nitinol wire)であってもよいが、本発明の多くの態様から逸脱することなく他の断面および形状を使用してもよい。本発明の範囲を逸脱することなく他のサイズを使用しサイズおよび断面が変化してもよいが、ワイヤは0.004インチから0.008インチの直径を有してもよい。
図32に示すように、要素116は、レンズの凸前面に面してレンズの凸前面および水晶体嚢との間に滑らかに前進するように要素116を促進する、凹形状を有する。
【0075】
本明細書で説明するデバイス140および他のデバイスは、主に閉鎖ループの弾性拡張のためにレンズおよび水晶体嚢の間を徐々に前進するように設計してもよい。この目的のために、閉鎖ループは、要素が伸長する場合に、閉鎖ループの偏っていない形状よりも小さいつぶれた状態にある。多くの要素が水晶体嚢およびレンズの間のループを自然に前進させるシャフトから伸長するため、閉鎖ループは偏っていない形状に向かって拡張する。閉鎖ループの偏っていない形状は、要素が第2形態に存在する場合に中間形状よりも大きく形成された閉鎖ループ形状であってもよい。もちろん、偏っていない形状は、本発明の多くの態様から逸脱することなく、第2形態よりも小さくてもまたは大きくてもよい。換言すると、デバイスにより形成された閉鎖ループは、閉鎖ループの自然な拡張のために水晶体嚢およびレンズの間に前進する。ルーメンから伸長する要素の長さは、閉鎖ループのサイズを増加させるように増加する。
【0076】
図40を参照して、デバイス140は、内管180を有するシャフト112を用いて示される。内管180は、ルーメン114に配置され、ルーメン内にスライド可能であり、ルーメン114の出口115から伸長する内管180で拡張域に移動可能である。内管180は、要素116が伸長する管ルーメン182および管出口184を有する。この内管180は、
図30に示すように本明細書で説明する他の実施形態と連携して動作するように適合されてもよい。特に、内管180が管12a内でスライド可能であると、縫合糸または薄い金属ワイヤのような弛緩性材料からワイヤ16を作製し、上述したレンズカプセル化を依然として達成することができる。
【0077】
内管180を、
図40に示されるように要素116上に前進させて要素116および閉鎖ループ121の形状を変化させてもよい。例えば、内管180は、内管180がルーメンの外に移動するにつれて後方に湾曲する形状を有してもよい。内管180は、上述のように、要素116の形状を変化させて部分160を周囲の周りに反転させてもよい(
図38参照)。
図40は、閉鎖ループ121(および特に、前進部)の部分160を
図38に示すようにレンズの後側に移動することを許容する要素116およびレンズの間の小さな分離を示す。このようにして、内管180を要素116上に前進させてレンズの後側に閉鎖ループ121の部分を移動してもよい。内管180を階段状に前進させてもよく、要素116の伸長および閉鎖ループ121の拡張を調整してもよい。例えば、要素116の伸長の前後の2つのステップにおいて内管180を前進させて、要素116を伸長させて内管180を閉鎖ループ121を拡張してもよい。
【0078】
内管180の別の使用方法では、要素116をシャフト112から伸長させて、閉鎖ループ121が近位に広がるように内管180に対してシャフト112を格納させることにより露出した長さおよび閉鎖ループ121のサイズを増加させてもよい。レンズ上に閉鎖ループ121の広がりを促進させることに関連するもののような、本発明の全ての適用可能な態様は、上述のように等しく適用可能である。要素116は、内管180の出口から伸長する第1端と、シャフト112に取り付けられた第2端とを有する。内管180はまた、レンズが閉鎖ループ121を通して移動するように、要素116を移動させることを助ける。換言すると、閉鎖ループ121が前面の部分およびレンズの後面の周りをスイープする(またはさっと通るまたは掃く;sweep)ように、要素116を移動させる。例えば、要素116を回転させて水晶体嚢からレンズの後面を
図39の位置を切開してもよい。要素116が最も遠位の出口を出る場合に制約がないため、シャフト112が内管180を含む場合に、本明細書で使用するシャフト112の出口およびシャフト112の長手中央線LCは、ルーメン出口115および内管出口184のより遠位に規定されるものとする。換言すると、内管180がシャフト112のルーメン114から伸長する場合に、内管出口184はシャフト112の出口を構成し、長手中央線LCを規定する。
【0079】
図41~47を参照して、水晶体嚢内のレンズを切断する別のデバイス200が示される。デバイス200は自由端であり得る遠位端部202を有する要素116Aを含む。要素116Aはレンズの周りに延在し、
図47で示されるように遠位端部202のような要素116上の場所は係り合わされる。次いで、要素116Aは、レンズを切断するためにサイズが減少するループ121Aにおいてレンズが配置されるように張力が加えられる。要素116Aは、要素116Aに張力が加わるように係り合わされている継手を有する。継手は、フック210により係り合わされるアイレット(eyelet)208のような任意の適切な継手であってもよい。把持器またはスネアのような任意の他の適切な係り合う(engaging)要素を使用してもよい。さらに、把持要素をシャフトに結合させまたはシャフトから独立させてもよい。要素116Aはまた、シャフト112または内管180上のスロットまたはタブで把持されてもよい。要素116Aの一方または両方の端を引くこと、またはシャフト112、内管180若しくは要素116A上の任意の他の適切な構造またはそれらの組み合わせを(要素116Aを静止状態で保持しながら)締め付けることを含む任意の適切な方法で張力を要素116Aに加えてもよい。
【0080】
要素116Aは、内管180も含み得るシャフト112において配置される。
図41および42は、ルーメン114における出口115から伸長した要素116Aおよび内管180の両方で水晶体嚢内のレンズに隣り合って配置されたシャフトを示す。要素116Aは、本発明から逸脱することなく内管180なしで水晶体嚢およびレンズの間に前進させるように伸長させてもよい。
図43~45は、内管180およびレンズの前側から後側へ前進させた要素116Aの両方を示す。
【0081】
要素116Aは、要素116Aがシャフト112から伸長する場合に、ルーメン114においてつぶれた状態でありかつ所定の形状に向かって伸長する要素116Aを有する所定の形状を有してもよい。内管180を要素116A上に前進させて、要素116Aの形状に変化させてもよい。例えば、内管180は、内管180がルーメンの外に移動した場合に後方に湾曲する形状を有してもよい。内管180はまた、レンズの周囲を通り過ぎておよびレンズの後方に前進してもよい。
【0082】
内管180を要素116A上に前進させて要素116Aをレンズの後側に移動させてもよい。内管180および要素116Aはまた、複数のステップで前進させてもよい。例えば、要素116Aを管の先に前進させてもよく、次いで、管を要素116A上に伸長させ、要素116Aをさらに伸長させてもよい。
【0083】
内管180は、
図44~47に示すように、後方に湾曲した拡張形状を有する。内管180はシャフトにより潰れた形状に拘束され、シャフトから伸長する場合に湾曲し拡張した形状に向かって拡張する。上述のように、要素116Aを移動させて水晶体嚢からレンズの後面を切開してもよい。
【0084】
図46に示すように、張力を加える工程を開始する前に形成されたループ121Aを用いて伸長させる工程を実行してもよい。あるいは、ループ121Aを、ループ121Aが完全に形成される前に要素116Aのアイレットが係り合わされると、張力が加えられて形成してもよい。次いで、張力が加えられる場合に、ループ121Aが形成され、続いてループ121Aのサイズが減少しレンズを切断する。ループ121Aは、要素116Aに張力を加える前に内管180を格納することにより、主に要素により形成されて(形成されて切断を促進されて)もよい。ループ121Aはまた、要素116Aおよびシャフト112により形成されてもよい。要素116Aは、シャフト112において存在する場合でさえ、もちろんループ121Aの周りに伸長する。
【0085】
図48~53を参照して、水晶体嚢内のレンズを切断するための別のデバイスを示す。デバイス220は、シャフト112から遠位に伸長する要素116Bを有する。要素116Bは、同時に伸長する第1脚222および第2脚224を有する。デバイス220は、要素116Bが
図48の第1形態から
図52の第2形態に移動する場合に、少なくとも60度または少なくとも75度に向きを変化させる閉鎖ループ226を形成する。閉鎖ループ226の向きは、レンズの軸154に沿って見た場合に、シャフトの長手中央線LCを横切る軸について変化する。要素116Bが第2形態において存在する場合に前進部230がループ226の最遠位部であり少なくとも45度の角度に伸長した状態で、閉鎖ループ226は、少なくとも6mmの曲率半径を有する前進部230を有してもよい。閉鎖ループ226の向きは、シャフト112の向きに変化することを要求されることなく、変化する。これは、要素116B内の所定の形状を通って助けてもよい。いくつかの実施形態では、要素116Bのサイズは、その長さに沿って変化してもよく、例としてより多くの力を提供して第2形態を達成する向きの変化が起こる近位ルート(proximal root)でより厚い部分が存在してもよい。さらに変化は、シャフト112のルーメンから伸長してもよくまたは伸長しなくてもよい内管により助けられてもよい。
図53は、要素116Bの第1脚222および第2脚124上に伸長する内管180を示す。内管180は、要素116Bを形成すること、または要素116をレンズの周囲の周りに移動させることのような任意の方法で使用されてもよい。さらに、内管180は本明細書で説明する方法で閉鎖ループ 226を再配向(re-orienting)を助けてもよい。
【0086】
要素116Bは、第1形態から第2形態へ移動させる場合に、シャフト112から長さについて伸長する。長さは、それぞれ伸長の第1ハーフおよび第2ハーフの間に伸長された第1ハーフおよび第2ハーフに分割されてもよい。長さの第1ハーフと同じ長さの第2ハーフの間に向きが少なくとも2倍変化するように、要素116Bは成形される。換言すると、向きにおける変化の少なくとも40%がシャフトから伸長する長さの最終の20%の間に起こる。閉鎖ループ226は、要素が第2形態に存在する場合に、ルーメン114の出口115の遠位に完全に存在する。要素が
図52の位置に到達すると、要素116Bに張力が加えられてレンズを切断してもよい。要素116Bをデバイス 140のような別のデバイスと組み合わせて使用して上述した切れ目の挿入を生成してしてもよい。
【0087】
様々な方法およびデバイスの実施形態が特定のバージョンを参照して詳細に本明細書で説明されるが、他のバージョン、実施形態、使用方法、およびこれらの組み合わせも可能であることを理解されたい。したがって、本発明の精神および範囲は、本明細書に含まれる実施形態の記載に限定されるべきではない。さらに、様々な実施形態および説明は、特定の解剖学的位置、種、または外科手術を特定することができるが、これらの実施形態は、他の位置、種、および外科手術に適用されることを理解されたい。