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特許7079737レーザビームのビーム品質の測定方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】レーザビームのビーム品質の測定方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
G01J1/42 E
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2018566245
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-11
(86)【国際出願番号】 IB2017053624
(87)【国際公開番号】W WO2017216778
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】2016/04282
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(73)【特許権者】
【識別番号】507198875
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ジ・ウィトウォーターズランド・ヨハネスブルク
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF THE WITWATERSRAND, JOHANNESBURG
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス アンドリュー
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/064636(WO,A2)
【文献】特表2013-522643(JP,A)
【文献】NAIDOO Darryl, et al.,Controlled generation of higher-order Poincare sphere beams from a laser,Nature Photonics,2016年05月,Vol.10, No.5,p.327-332,doi:10.1038/nphoton.2016.37
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スカラー、ベクトル、又はこれらの組合せであり得る横電界を有する光ビームのビーム品質要因(VQF)を決定する方法であって、前記VQFは純粋なスカラーと純粋なベクトルとの間で変化する前記光ビームのベクトル性の度合いの測定値であり、
前記方法は、
光ビームを受光することと、
前記受光した光ビームを2つの直交成分に分割することと、
直交成分当たり所定の数のモード又は状態を検出することであって、分割された一方の直交成分に対して検出された前記所定の数のモード又は状態が分割された他方の直交成分に対して検出された所定の数のモード又は状態と同一又は実質的に同様であるように検出することと、
検出された各モード又は状態の軸上強度を測定することと、
少なくとも1つの量子力学エンタングルメント測定を用いて前記測定された軸上強度に関して前記VQFを算出することと、を含む方法。
【請求項2】
前記光ビームはレーザビームであり、前記測定された軸上強度は正規化された軸上強度である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記受光した光ビームを2つの直交成分に分割することは、前記受光した光ビームを2つの直交偏光成分に分割すること、又は2つの直交空間モード成分に分割することを含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記受光したビームを前記2つの直交偏光成分に分割することは、偏光格子、偏光ビームスプリッタ、幾何学的位相要素(単数及び複数)及び複屈折プリズム(単数及び複数)を含む群から選択される偏光スプリッタによって行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記受光したビームは、前記2つの直交偏光成分に分割される場合において、前記2つの直交偏光成分は、水平及び垂直に偏光された成分、左回り及び右回り円偏光成分、又は斜め及び反斜め偏光成分である、
請求項3又は4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記直交成分当たり検出された所定の数のモード又は状態は、6つのモード又は状態のセットを含み、前記6つのモード又は状態は直交モード又は状態の対、4つの関連する相互にバイアスされていないモード又は状態とを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記4つの関連する相互にバイアスされていないモード又は状態は、それらの間に相対的な位相遅延を有する直交基準モード又は状態の重ね合わせである、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
直交成分当たり前記所定の数のモード又は状態を検出することは、モード分解により行われる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記直交成分当たりの前記所定の数のモード又は状態を検出することは、前記直交モード又は状態の対及び前記4つの関連する相互にバイアスされていないモード又は状態をそれぞれ検出するのに好適な直交及び相互にバイアスされていない関連する関数で符号化されたホログラムの形態の整合フィルタを含む整合フィルタ配置によって行われる、
請求項6又は請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記整合フィルタ配置は、前記直交モード又は状態の対、及び前記4つの関連する相互にバイアスされていないモード又は状態を検出するのに好適なホログラムの重ね合わせでそれぞれ、符号化又はプログラムされた2つの領域を有する光学素子を含み、前記方法は、前記直交成分の対を前記2つの領域にそれぞれ導き、同時に、かつリアルタイムで、直交成分当たり前記直交モード又は状態の対及び前記4つの関連する相互にバイアスされていないモード又は状態を検出することを含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記光学素子は、デジタルホログラムで符号化された空間光変調器、回折光学素子、メタマテリアル、屈折構造、非球面光学素子及びデジタルマイクロミラーデバイスを含む群から選択される、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
検出器を介してフーリエ面における前記検出されたモード又は状態の軸上強度を測定することを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
記直交成分当たり検出されたモード又は状態を、フーリエレンズを介して前記検出器に投影することを含み、前記検出器は光検出器である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの量子力学エンタングルメント測定の測定値は、レーザビームの状態トモグラフィにより測定されたコンカレンス(concurrence)、エンタングルメントエントロピー及び量子的ディスコード(discord)を含む群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記VQFを算出することは、
パウリのオペレータの3つの期待値σ、σ、σを算出することであって、1の期待値σ1は直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第1のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第2のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出され、2の期待値σは直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第3のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第4のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出され、かつ3の期待値σは、直交成分の両方に関連付けられた第1の直交モード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分の両方に関連付けられた第2の直交モード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出されることと、
次式への入力値として前記算出された期待値σ、σ、σを用いてブロッホベクトルの長さsを算出することと、
【数1】
次式を用い、前記ブロッホベクトルの長さsの算出値を用いて、前記VQFを算出することであって、
【数2】
、前記算出されたVQFは純粋なスカラーに対しては0であり、純粋なベクトルに対しては1であり、ベクトル品質の変化する度合いに対しては中間値であるようにすること、
を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
前記光ビームを受光すること、前記光ビームの一部を受光することを含み、前記光ビームの一部のVQFの算出は、前記光ビームのVQFを示すものである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
スカラー、ベクトル、又はこれらの組合せであり得る横電界を有する光ビームのビーム品質要因(VQF)を決定するシステムであって、前記VQFは純粋なスカラーと純粋なベクトルとの間で変化する前記光ビームのベクトル性の度合いの測定値であり、
受光した光ビームを、つの直交成分に分割し、2つの光路を進行させるように構成されたビームスプリッタと、
前記2つの光路と交している整合フィルタ配置であって、直交成分当たりの所定の数のモード又は状態を検出し、分割された一方の直交成分に対して検出された所定の数のモード又は状態が、分割された他方の直交成分に対して検出された所定の数のモード又は状態と同一又は実質的に同様であるように構成された整合フィルタ配置と、
前記整合フィルタ配置により検出された各モード又は状態の軸上強度を測定するように構成された検出器と、
前記検出器により測定された前記軸上強度、又はそれを示すデータを受信し、前記軸上強度、又はそれを示すデータを処理して、少なくとも1つの量子力学エンタングルメント測定を用いて前記測定された軸上強度に関して前記VQFを算出するように構成されたプロセッサと、
を備える、システム。
【請求項18】
前記光ビームはレーザビームであり、
前記検出器は正規化された軸上強度を測定するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記ビームスプリッタは、前記受光した光ビームを2つの直交偏光成分を分割するように構成された偏光スプリッタ、又は前記ビーム又は光を2つの直交空間モード成分に分割するように構成された空間モードスプリッタである、
請求項17又は18に記載のシステム。
【請求項20】
前記偏光スプリッタは、偏光格子、偏光ビームスプリッタ、幾何学的位相要素(単数及び複数)及び複屈折プリズム(単数及び複数)を含む群から選択される、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記2つの直交偏光成分は、水平及び垂直偏光成分、左回り及び右回り円偏光成分、又は斜め及び反斜め偏光成分である、請求項19又は20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記直交成分当たり検出された所定の数のモード又は状態は、6つのモード又は状態のセットを含み、前記6つのモード又は状態は、一対の直交モード又は状態と、相互にバイアスされていない関連する4つのモード又は状態とを含む、請求項17~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記相互にバイアスされていない関連する4つのモード又は状態は、それらの間に相対的な位相遅延を有する直交基準モード又は状態の重ね合わせである、
請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記整合フィルタ配置は、モード分解により、前記直交成分当たり所定の数のモード又は状態を検出するように構成されている、請求項17~23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記整合フィルタ配置は、直交及び相互にバイアスされていないモード又は状態を検出するのに好適な直交及び相互にバイアスされていない関数で符号化されたホログラムの形態の整合フィルタを含む、請求項22又は請求項23のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
前記整合フィルタ配置は2つの領域を有する光学素子を含み、各領域は、2つの直交モード又は状態と、相互にバイアスされていない関連する4つのモード又は状態とを、同時に、リアルタイムで、使用中に検出するのに好適なホログラムの重ね合わせで符号化又はプログラムされている、
請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記光学素子はデジタルホログラムで符号化された空間光変調器、回折光学素子、メタマテリアル、屈折構造、非球面光学素子、及びデジタルマイクロミラーデバイスを含む群から選択される、
請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記システムはそれぞれ前記整合フィルタ配置から光路下流に配置された一対のフーリエレンズを含み、各フーリエレンズは、ーリエ面において、前記直交成分当たり検出されたモード又は状態を前記検出器に投影する、
請求項17~27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記検出器は光検出器である、請求項17~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
前記光検出器は電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)デバイス及びフォトダイオードアレイを含む群から選択される、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
少なくとも1つの量子力学エンタングルメント測定の測定値は、レーザビームの状態トモグラフィにより測定されたコンカレンス、エンタングルメントエントロピー及び量子的ディスコードを含む群から選択される、請求項17~30のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記プロセッサは、前記検出器によって測定された前記受光した軸上強度又はそれを示すデータを処理し、それによって、
パウリのオペレータの3つの期待値σ、σ、σを算出し、1の期待値σは直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第1のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第2のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との間の差として算出され、2の期待値σは直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第3のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第4のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出され、かつ3の期待値σは、直交成分の両方に関連付けられた第1の直交モード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分の両方に関連付けられた第2の直交モード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出され、
次式への入力値として前記算出された期待値σ、σ、σを用いて、ブロッホベクトルの長さsを算出し、
【数3】
かつ
次式を用いて前記ブロッホベクトルの長さsの算出値を用いて前記VQFを算出することであって、
【数4】
、前記算出されたVQFは純粋なスカラーに対しては0で、純粋なベクトルに対しては1であり、ベクトル品質の変化する度合いに対しては中間値であるようにすることによって、
前記VQFを算出するように構成される、
請求項22に記載のシステム。
【請求項33】
前記システムの大部分は光学的に遮蔽された筐体内に位置しており、前記筐体は前記光ビームを受光するように構成された入力ポートを含む、
請求項17~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記システムは前記算出されたVQFを出力する出力装置を含み、前記出力装置は視覚的表示及び音響出力装置を含む群から選択される、請求項17~33のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザベクトルビーム及びそのようなビームの定量的な品質測定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザの発明及びその横モードの規定以来、多くの研究で、任意のレーザモードのビーム品質要因が問題にされてきた。1990年代初頭には、これまで統計学と関連付けられたツールを、均一なシングルモード及び分離可能な偏光(スカラービーム)を有するレーザビームに適用し、確率密度関数とレーザビーム強度プロファイルとの間の類似した挙動を開拓してきた。光を見つける確率としてレーザビーム強度プロファイルを観測すると、統計モーメントを使用し、強度の第2のモーメントとしてビーム及び発散幅を規定し、最終的に、スカラーモードの単一の測定値としてビーム品質要因Mを提供してきた。この測定は以後、それに対応するデジタル測定技法とともに広く研究されており、レーザビームを測定し規定するISO規格に組み込まれている。
【0003】
近年、分離できない多方向の偏光、いわゆるベクトルビームを有する非均一な偏光分布のレーザビームが話題になっているのは、その適用範囲が、いくつか挙げただけでも光学顕微鏡法、光ピンセット、量子メモリ及びデータ暗号化と同じくらい多岐にわたっているからである。過去数年にわたり、干渉計又は直接的な方法のいずれかでレーザ空洞の内部及び外部にベクトル光渦ビームを生成する様々な手段が考えられている。
【0004】
ベクトル光渦ビームの生成における数多の進展にもかかわらず、ベクトル光渦ビームの検出又は分析手段は遅れをとっている。このような検出技法は、干渉計とともに回転分析計並びにシングルモード繊維(fibre)を有する幾何学位相板の使用を含むものである。重大なことに、ベクトルモードの品質を規定する、すなわち、ベクトルモードとスカラーモードを区別する定量的な測定は存在しない。今のところ、この測定は、例えば、偏光素子(polariser)後のプロファイルの変化を測定する、といった定性的手段によって、あるいはビーム間の偏光度合いを平均化することによって行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
必要なのは、このようなベクトルビームに対して使用できる規格であり、本発明は国際規格に発展しうるような測定を目的とするものである。したがって、本発明の目的は上述した要件を解決し、ベクトルビームの定量的なビーム品質の測定法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、スカラー、ベクトル、又はこれらの組合せであり得る横電界を有する光ビームのビーム品質要因(VQF)を決定する方法であって、VQFは純粋なスカラーと純粋なベクトルとの間で変化する前記光ビームのベクトル性の度合いの測定値であり、前記方法は、
光ビームを受光することと、
前記受光した光ビームを2つの直交成分に分割することと、
直交成分当たり所定の数のモード又は状態を検出することであって、検出された前記所定の数のモード又は状態は各直交成分に対して同一又は実質的に同様であることと、
検出された各モード又は状態の軸上強度を測定することと、
少なくとも1つの量子力学エンタングルメント測定を用いて、前記測定された軸上強度に関して前記VQFを算出することと、を含む、方法が提供される。
【0007】
前記光ビームは通常はレーザビームであり、前記測定された軸上強度は正規化された軸上強度であってもよい。
【0008】
前記受光した光ビームを2つの直交成分に分割するステップは、前記受光した光ビームを2つの直交偏光成分、又は2つの直交空間モード成分に分割することを含んでもよい。したがって、前記受光したビームを2つの直交偏光成分に分割するステップは、偏光格子、偏光ビームスプリッタ、幾何学的位相要素、及び複屈折プリズムを含む群から選択される偏光スプリッタによって行われてもよいことになる。また、2つの直交偏光成分は、水平及び垂直偏光成分、左回り及び右回り円偏光成分、又は斜め方向及び反斜め方向偏光成分であってもよい。
【0009】
前記直交成分当たり検出された所定の数のモード又は状態は6つのモード又は状態のセットを含んでもよいし、あるいは6つのモード又は状態のセットであってもよく、前記6つのモード又は状態は一対の直交モード又は状態、及び相互にバイアスされていない関連する4つのモード又は状態を含む。前記相互にバイアスされていない関連する4つのモード又は状態はそれらの間に相対的な位相遅延を有する前記直交基準モード又は状態の重ね合わせとすることができる。
【0010】
前記直交成分当たり前記所定の数のモード又は状態を検出するステップは、モード分解により行われてもよい。
【0011】
前記直交成分当たり所定の数のモード又は状態を検出するステップは、前記直交及び相互にバイアスされていないモード又は状態を検出するのに好適な直交及び相互にバイアスされていない関連する関数で符号化されたホログラムの形態の整合フィルタを含む整合フィルタ配置により行われてもよい。前記整合フィルタ配置は、前記2つの直交モード又は状態及び相互にバイアスされていない関連する4つのモード又は状態を検出するのに好適なホログラムの重ね合わせでそれぞれ符号化又はプログラムされた2つの領域を有する光学素子を含むことができ、前記方法は、前記2つの直交成分を前記2つの領域にそれぞれ導き、直交成分当たり前記2つの直交モード又は状態、及び相互にバイアスされていない4つのモード又は状態を同時に、リアルタイムに検出することを含む。前記光学素子は好適なデジタルホログラムで符号化された空間光変調器、回折光学素子、メタマテリアル、屈折構造、非球面光学素子、及びデジタルマイクロミラーデバイスを含む群から選択されてもよいことを理解されたい。
【0012】
前記方法は好適な検出器を介してフーリエ面における前記検出されたモード又は状態の軸上強度を測定することを含むことができる。前記方法は前記直交成分当たり検出されたモード又は状態を、フーリエレンズを介して前記検出器に空間的に分解された方法(spatially resolved manner)で投影することを更に含んでもよく、前記検出器は光検出器である。
【0013】
前記少なくとも1つの量子力学エンタングルメント測定値はレーザビームの状態トモグラフィにより測定されたコンカレンス(concurrence)、あるいはエンタングルメントエントロピー及び量子的ディスコード(discord)を含む群から選択されてもよい。
【0014】
前記VQFを算出する前記ステップは、
パウリのオペレータの3つの期待値σ、σ、σを算出することであって、前記第1の期待値σは直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第1のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第2のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出され、前記第2の期待値σは直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第3のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第4のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出され、前記第3の期待値σは直交成分の両方に関連付けられた第1の直交モード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と直交成分の両方に関連付けられた第2の直交モード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出されることと、
算出された期待値σ、σ、σを、以下の式への入力値として用いてブロッホベクトルの長さsを算出することと、
【数1】
以下の式を用いて、ブロッホベクトルの長さsの算出値を用いてVQFを算出することと、
【数2】
を含んでもよく、前記算出されたVQFは純粋なスカラーについては0であり、純粋なベクトルについては1であり、かつベクトル品質の変化する度合いについては中間値となることが理解されるであろう。
【0015】
前記光ビームを受光するステップはメイン光ビームの一部を受光することを含んでもよく、前記メイン光ビームの一部のVQFを算出することは前記メイン光ビームの前記VQFを示すものである。
【0016】
前記方法は前記測定されたVQFを用いて所定のベクトル及び/又はスカラー特性を有する出力ビームを有するレーザを設計することを含みうることに留意されたい。
【0017】
前記方法は、前記VQFを用いてレーザビームのベクトル及び/又はスカラー特性を決定することを含んでもよい。
【0018】
本発明の別の態様によれば、スカラー、ベクトル、又はこれらの組合せであり得る横電界を有する光ビームのビーム品質要因(VQF)を決定するシステムであって、VQFは純粋なスカラーと純粋なベクトルとの間で変化する光ビームのベクトル性の度合いの測定値であり、
受光した光ビームを2つの光路を進行する2つの直交成分に分割するように構成されたビームスプリッタと、
前記2つの光路を交差する整合フィルタ配置であって、直交成分当たり所定の数のモード又は状態を検出するように構成され、前記検出された所定の数のモード又は状態は各直交成分に対して同一又は実質的に同様である整合フィルタ配置と、
前記整合フィルタ配置によって検出された各モード又は状態の軸上強度を測定するように構成された検出器と、
前記検出器によって測定された前記軸上強度、又はそれを示すデータを受信し、それを処理して、少なくとも1つの量子力学エンタングルメント測定を用いることによって前記測定された軸上強度に関して前記VQFを算出するように構成されたプロセッサと、を備えるシステムが提供される。
【0019】
前記光ビームはレーザビームとすることができ、前記検出器は正規化された軸上強度を測定するように構成されてもよい。
【0020】
前記ビームスプリッタは前記受光した光ビームを2つの直交偏光成分に分割するように構成された偏光スプリッタ、又は前記ビーム又は光を2つの直交空間モード成分に分割するように構成された空間モードスプリッタとすることができる。前記偏光スプリッタは偏光格子、偏光ビームスプリッタ、幾何学的位相要素(単数又は複数)、及び複屈折プリズム(単数又は複数)を含む群から選択されてもよい。前記2つの直交偏光成分は水平及び垂直偏光成分、左回り及び右回り円偏光成分、又は斜め方向及び反斜め方向偏光成分とすることができる。
【0021】
前記直交成分当たり検出された所定の数のモード又は状態は、6つのモード又は状態のセットを含んでもよいし、あるいはそれであってもよく、前記6つのモード又は状態は、一対の直交モード又は状態、及び相互にバイアスされていない関連する4つのモード又は状態を含む。前記相互にバイアスされていない関連する4つのモード又は状態は、それらの間に相対的な位相遅延を有する前記直交基準モード又は状態の重ね合わせとすることができる。
【0022】
前記整合フィルタ配置はモード分解により前記直交成分当たり所定の数のモード又は状態を検出するように構成されてもよい。前記整合フィルタ配置は、前記直交及び相互にバイアスされていないモード又は状態を検出するのに好適な直交及び相互にバイアスされていない関連する関数で符号化されたホログラムの形態の整合フィルタを含んでもよい。また、前記整合フィルタ配置は2つの領域を有する光学素子を含むことができ、各領域は、2つの直交モード又は状態、及び相互にバイアスされていない関連する4つのモード又は状態を同時に、リアルタイムで、使用中に検出するのに好適なホログラムの重ね合わせで符号化又はプログラムされてもよい。前記光学素子は好適なデジタルホログラムで符号化された空間光変調器、回折光学素子、メタマテリアル、屈折構造、非球面光学素子、及びデジタルマイクロミラーデバイスを含む群から選択されてもよい。
【0023】
前記システムは一対のフーリエレンズを含むことができ、それぞれ前記整合フィルタ配置の光路下流に配置され、各フーリエレンズはフーリエ面内の前記直交成分当たりの検出されたモード又は状態を前記検出器に、空間的に分解された方法で、投影するように構成される。
【0024】
前記検出器は電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)デバイス、及びフォトダイオードアレイを含む群から選択された光検出器とすることができる。前記検出器は整合フィルタ配置により検出されるモード数に対応する所定の数の領域を含むことができ、各領域はそれに投影された1つの検出モードを受け取り、前記モードに対応する正規化された軸上強度を測定するように構成されてもよい。各領域は検出される特定のモードに一意に関連付けられてもよい。
【0025】
前記少なくとも1つの量子力学エンタングルメント測定値はレーザビームの状態トモグラフィにより測定されたコンカレンス、あるいはエンタングルメントエントロピー及び量子的ディスコードを含む群から選択されてもよい。
【0026】
前記プロセッサは前記検出器により測定された前記受光した軸上強度又はそれを示すデータを処理し、それによって、
パウリのオペレータの3つの期待値σ、σ、σを算出し、前記第1の期待値σ1は直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第1のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第2のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出され、前記第2の期待値σは、直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第3のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と直交成分の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第4のモード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出され、かつ前記第3の期待値σは、直交成分の両方に関連付けられた第1の直交モード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計と直交成分の両方に関連付けられた第2の直交モード又は状態に対応する前記測定された軸上強度の合計との差として算出され、
前記算出された期待値σ、σ、σを、次式の入力値として用いてブロッホベクトルの長さsを算出し、
【数3】
、かつ
ブロッホベクトルの長さsの算出値を用い、次式を用いて前記VQFを算出し、
【数4】
、算出されたVQFは純粋なスカラーについては0、純粋なベクトルについては1であり、ベクトル品質の変化する度合いについては中間値となるようにすることによって、
前記VQFを算出するように構成されてもよい。
【0027】
前記システムの大部分は好適な光学的に遮蔽された筐体の中に囲われていてもよく、前記筐体は前記光ビームを受光するように構成された好適な入力ポートを含みうることが理解されることであろう。
【0028】
前記システムは、算出されたVQFを出力するのに好適な出力装置を含むことができ、前記出力装置は視覚的表示、及び音響出力装置を含む群から選択される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、スカラー、ベクトル又はこれらの組合せであり得る横電界を有するビームの定量的測定のためのベクトル品質要因(VQF)が提供され、前記VQFは、単一の数値である前記ビームのベクトル性の度合いの測定値として定義されるので、前記VQFは純粋なスカラーについては0、純粋なベクトルについては1であり、ベクトル品質の変化する度合いについては中間値となる。
【0030】
本発明の更なる態様によれば、上記の前記VQFの算出に依存する器具及び/又は方法が提供され、それによってレーザビームを定量的に測定する。
【0031】
本発明の更なる態様によれば、ビームを2つの直交偏光成分に分割することと、
偏光成分当たり複数のパターンを検出し測定することによって、各パターンの正規化された軸上強度を測定することと、
量子力学エンタングルメント測定を用いて前記正規化された強度に関してVQFを算出することと、を含む、ビームのVQFを決定する方法が提供される。
【0032】
本発明の更なる態様によれば、レーザビームを2つの直交偏光成分に分割するように構成された偏光検出器と、
偏光成分当たりの複数のパターンを検出し測定することで、各パターンの正規化された軸上強度を決定するように構成された空間モード検出器と、
量子力学エンタングルメント測定を用いて前記正規化された強度に関してVQFを算出するように構成されたプロセッサと、を備える、ビームのベクトル品質要因(VQF)を決定するベクトル品質分析計が提供される。
【0033】
本発明の更に別の態様によれば、実質的に本明細書に記載のベクトルビームの定量的な品質測定の方法が提供される。
【0034】
本発明の更なる態様によれば、所定、若しくは所望のベクトル及び/又はスカラー特性を有する出力レーザビームを有するレーザの製造及び/又は設計方法が提供され、前記方法は、記載した方法で前記レーザのVQFを測定することと、前記レーザを適合し、例えば、レーザを調整して、決定されたVQFを監視することで所定若しくは所望のベクトル及び/又はスカラー特性をもたせることと、を含む。
【0035】
本発明の更に別の例示の実施形態によれば、所定若しくは所望のベクトル及び/又はスカラー特性を有する出力レーザビームをもたせるようなレーザの調整方法が提供され、前記方法は、本明細書に記載の方法で決定された出力ビームのVQFを監視することで、所定の又は所望のベクトル及び/又はスカラー特性をもたせるようにパラメータ、例えば、レーザのオペレーティングパラメータ、又はレーザの成分を変えることを含む。
【0036】
換言すると、前記VQFは、レーザが調整され得るパラメータ、例えば、純粋なベクトルレーザビームが本明細書に記載のシステムにより測定されるVQFが1になるまで当該レーザを調整又は適合することができることを要求するオペレータとして使用されうることを留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
ここで、本発明の非限定的実施形態を単なる例示として、以下の図面を参照して説明する。
図1】本発明の例示の実施形態にかかるシステム、換言すると、光の入力ビームのVQFを決定するベクトル品質分析計の概略ブロック図を示す。
図2】本発明の例示の実施形態にかかるシステム又はベクトル品質分析計並びに、本発明の更なる例示の実施形態では、システムを組み合わせたベクトルモード選別器を示す、ベクトルモードの生成及び分析用の実験装置の図を示す。
図3図2のベクトルモード選別器による、動径及び方位に偏光したベクトル光渦ビームの選別を示す図を示す。
図4】ホログラムが各列に示され、2つの偏光測定値が各行に示された、下記の表1の実強度測定値に対応する図1及び図2のベクトル品質分析計の実強度測定のグラフィック描写を示す。
図5】入力状態の特性に対して図1及び図2のベクトル品質分析計により算出されたベクトル品質要因(VQF)の段階的変化の図をグラフィカルにかつ図表で示す。
図6】逆多重化ホログラムを用いた図1及び図2のベクトル品質分析計のシステムによるVQFの単発発射測定の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明では、説明のため、本開示の実施形態の完全な理解を提供するために、いくつかの特定の詳細を説明する。しかしながら、当業者であれば、本開示がこれらの特定な詳細を用いずに実施され得ることは明らかであろう。
【0039】
図面のうち図1及び図2を参照すると、ベクトル品質分析計とも称される、本発明の例示の実施形態にかかるシステムは概して参照符号10で示される。図1に概して図示された分析計10は分析計10の現実世界の実装であり、図2に図示された分析計10は、実験装置9の一部であり、特に明記しない限り、両方とも実質的に同様であることは、当業者により理解されるであろうし、あるいは明らかである。また、同様の部品は同一の参照符号で参照され、それゆえ、特に明記しない限り、同様の部品についての説明は図1及び図2の両方に適用する。
【0040】
システム10は通常はシステム10が受光した入力光ビーム12のビーム品質要因を決定するのに使用される。光ビーム12は通常は、スカラー、ベクトル、又はこれらの組合せであり得る横電界を有する光ビームである。一つの例示の実施形態では、光ビーム12は未知のベクトル及び/又はスカラー特性のレーザビームであり、それゆえ、システム10はそのVQFを決定し、受光したレーザビームの品質を決定するように構成されている。この点に関し、VQFは純粋なスカラーと純粋なベクトルとの間で変化するレーザビームのベクトル性の度合いの測定値である。
【0041】
異なって定義される場合、次式の座標系(r)における横電界を考慮する。
【数5】
・・・(1)
この場合、e及びeはそれぞれ、関連する空間モードu(r)及びu(r)により、左回り及び右回り偏光状態を表す。パラメータθは、横モード(U(r,θ))が純粋なベクトル(θ=π/4)か、純粋なスカラー(θ=0)か、あるいは、部分的にベクトルモードかを決定するものである。システム10は、後述するように、VQFにより、純粋なスカラーから純粋なベクトルのビームを式(1)の左辺で与えられる0から1の範囲でマッピングする手段を提供することを目的とする。
【0042】
図示していないが、システム10は通常は光学的に遮蔽された筐体内に囲われているので、ノイズ及び不要な光信号がシステムに、少なくともシステム10の光学素子に導入されない。
【0043】
システム10はその動作中、レーザビーム、例えば、材料の切断、測定手順など特定の所望の作業を行うメインレーザビームに結合され、レーザビームのオペレータにビームのベクトル性、又は当該事柄のスカラー性についてレーザビームの品質を評価できるようにするメインレーザビームのVQFをリアルタイムで測定することができる。例示の本実施形態では、メインレーザビームの数パーセントのみ、例えば、1%のみが、システム10に向けられて、本明細書に記載の方法でVQFを決定することができる。このようにして、オペレータは、ビーム品質を評価するためにメインレーザビームを中断せずに、メインレーザビームの動作中リアルタイムにビームのVQFを監視することができる。
【0044】
他の例示の実施形態では、当該技術分野の当業者が理解するように、レーザの設計内に、例えば、特定の所望のベクトル性及び/又はスカラー性の度合いの特定の出力ビームを有するレーザの設計内に、本システム10を使用できることに留意されたい。
【0045】
システム10は通常は、筐体に設けられた入力ポート(図示せず)により、入ってくるレーザビームを受光するように構成される。例示の一つの非限定的実施形態では、受光したレーザビーム12について、標準極座標で規定される、円筒形ベクトル渦モードを考慮する。
【数6】
・・・(2)
この場合、
は光子当たり軌道角運動量(OAM)の
量子を運ぶビーム12の方位指数である。例えば、θ=π/4は動径偏光ベクトルモードを規定することになり、θ=-π/4は方位偏光モードを規定することになる。左(右)円偏光スカラー渦モードについては、θ=0(π/2)となる。
【0046】
いかなる場合でも、システム10は通常、受光したレーザビーム12を2つの光路を進行する2つの直交成分14.1及び14.2に分割するように構成されたビームスプリッタ14を備える。直交成分14.1、14.2は、光の直交偏光ビーム又は光の直交空間モードであってもよい。しかし、説明の便宜上、直交成分14.1、14.2は、直交偏光成分又は水平及び垂直に偏光された成分、左回り及び右回り円偏光成分、斜め方向及び反斜め方向偏光成分などであり得る光ビームを参照して説明する。ビームスプリッタ14は偏光格子、偏光ビームスプリッタ、幾何学的位相要素(単数又は複数)、及び複屈折プリズム(単数又は複数)を含む群から選択された偏光スプリッタの形態とすることができることになる。
【0047】
システム10は、直交成分14.1、14.2を交差するように2つの光路に配置された整合フィルタ配置16を更に含む。整合フィルタ配置16は直交成分14.1、14.2当たり所定の数のモード又は状態を検出するように構成され、検出された所定の数のモード又は状態は各直交成分14.1、14.2に対して同一又は実質的に同様である。
【0048】
特定の例示の実施形態では、配置16は直交偏光成分14.1、14.2当たり6つの同一モードのセット(すなわち、成分14.1、14.2の両方に対して合計12個のモード)を検出するように構成され、6つのモードは一対の直行モードと、相互にバイアスされていない関連する4つのモードを含む。検出されたモードを検出されたパターンとみなすことができることを理解されたい。
【0049】
相互にバイアスされていない関連する4つのモードは、後述するように、それらの間に相対的な位相遅延を有する直交基準モードの重ね合わせである。また、後述するように、整合フィルタ配置16は直交及び相互にバイアスされていないモードを検出するのに好適な直交及び相互にバイアスされていない関連する関数で符号化されたホログラムの形態の整合フィルタを含むことに留意されたい。特に、整合フィルタ配置16は偏光成分当たり2つの直行モード、及び相互にバイアスされていない関連する4つのモードを同時に、リアルタイムで、使用中に検出するのに好適なホログラムの重ね合わせで符号化又はプログラムされた光学素子を含む。前記光学素子は、速度、効率又は電力処理容量を向上させるように、好適なデジタルホログラムで符号化された空間光変調器、回折光学素子、メタマテリアル、屈折構造、非球面光学素子、及びデジタルマイクロミラーデバイスを含む群から選択される。一般に、空間モードを検出するアプローチを使用してもよい。
【0050】
整合フィルタ配置16の一つの例示の実施形態では、上記の各種モードを検出するのに必要なすべてのホログラムは空間光変調器上に表示される、又は別の光学素子に符号化される単一のホログラムに多重化される。別の例示の実施形態では、それぞれ透過関数t(r)及び一意のキャリア周波数Kを有する、前述のモードを検出するのに使用される6つの整合フィルタ又はホログラムの重ね合わせは、光学素子の2つの半分、例えば、図6を参照して後述する単一の空間光変調器で符号化される。したがって、各半分の透過関数は次式で与えられる。
【数7】
・・・(3)
【0051】
システム10は、一対のフーリエレンズ18と、整合フィルタ配置16の光学的に下流に配置された検出器20とを更に含み、空間的に分解された方法で直交偏光成分14.1、14.2の両方に対して配置16によって検出されたモードの正規化された軸上強度を測定することができる。
【0052】
検出器20は検出される波長及び電力レベルに応じて選択された光検出器とすることができる。好ましい例示の実施形態では、検出器20はCCD(電荷結合素子)である。検出された12個のモードはすべて空間的に分解された方法で、検出器20上の所定の位置又は領域に投影され得ることに留意されたい。この点に関し、システム10は、検出器の各領域に投影される検出されたモードに関するアプリオリ情報を有することができるので、検出器20上の特定の領域で受光した強度を、システム10に関連付けられた検出された特定のモードに整合することができる。例えば、一つの例示の実施形態では、検出器20は12個の領域にセグメント化され、区分され、又はパーティションを切られてもよく、検出された12個のモードは、上記したように、所定の方法で、それぞれ領域内に投影される。このようにして、例えば、検出器20の領域1~4で測定された強度は直交成分両方の検出された2つの直行モードに対応し得るものである。
【0053】
システム10は検出器20に電気的に結合されたプロセッサ22を更に含む。プロセッサ22は通常は、本明細書に記載の所望の演算を実現するよう動作可能なマイクロコントローラ、プロセッサ、グラフィックスプロセッサ、又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のうちの1つ又はそれらの組み合わせとすることができる。プロセッサ20は、本明細書に記載のプロセッサ22の演算を実行する内部メモリ又は外部メモリデバイス(図示せず)に記憶された命令の下で動作することができる。特に、プロセッサ22は、検出器20から、正規化された軸上強度、特に強度値又はその強度値を示すデータを受信し、量子力学エンタングルメント測定への入力値として、それを用いてVQFを算出するように構成されている。
【0054】
上記に言及するように、一つの例示の実施形態では、プロセッサ22は検出器20の12個の領域及びそれに投影される検出されたモードを示す情報を記憶することができる。このようにして、プロセッサ22は検出器20の12個の領域の各領域からの正規化された軸上強度値を受信し、受信した正規化された各軸上強度値を検出された特定のモードと関連付けるように動作することができる。
【0055】
プロセッサ22は検出されたモードに対応する受信した正規化された軸上強度を用いてVQFを算出するように構成されている。特に、プロセッサ22は、受光したビーム12の一致C(エンタングルメントの度合い)を決定又は算出することでVQFを算出するように構成されてもよく、そのVQFは次式により算出される。
【数8】
・・・(4)
この場合、sはブロッホベクトルの長さであり、次式で規定される。
【数9】
・・・(5)
【0056】
ここで、i=1、2、3及びσはパウリオペレータの期待値であり、後述するように、12個の検出されたモードに対応した、検出器20により測定された12個の正規化された軸上強度から算出された正規化された強度測定値のセットを表す。
【0057】
システム10は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、発光ダイオード(LED)スクリーン、CRT(Cathode Ray Tube)スクリーンなどのディスプレイの形態の出力モジュール24を更に含んでもよい。代替の例示の実施形態では、出力モジュール24は音響出力の形態としてもよく、これは、例えば、算出されたVQFが所定の閾値などを超えるか、あるいは下回る場合に、オペレータに信号を送るのに使用される場合がある。
【0058】
本発明の技術分野の当業者であれば、プロセッサ22及び出力モジュール24がシステム10の筐体内に配置される必要はなく、検出器20の出力に電気的に接続可能とし、そこから正規化された軸上強度を示す信号を受信するようにしてもよいことを理解するであろう。このようにして、システム10のモジュール実装を実現でき、その光学素子14、16、18、及び20は光学的に遮蔽された筐体内に配置されてもよく、出力ポートは、検出器20からの出力とプロセッサ22との間の電気的接続を促進するよう、筐体内に配置される。
【0059】
図示されていないが、システム10は検出器20、プロセッサ22、及び出力モジュール24を動作させるための関連するバイアス及び/又は駆動回路、及び電源を含み得ることに留意されたい。同様に、システム10はミラーなどの好適な光学素子及び所望の方法でシステム10内の光を操作するための類似部品を含んでもよい。
【0060】
使用にあたって、図1及び図2だけでなく、図3図6を参照して、一例として一般的に、かつ実験装置を参照して具体的にシステム10を説明する。更なる詳細、例えば、システム10の詳細な実装は以下の説明、特に図2に図示した実験装置9の説明から明らかになることを理解されたい。
【0061】
いかなる場合でも、分析計又はシステム10は通常は、レーザビームの経路内に配置され、あるいは、メインレーザビームの一部はシステム10に導かれる。こうしてレーザビーム12は入力ポートを介して筐体に受光される。
【0062】
上記式(2)を参照すると、受光した特定のベクトル渦レーザビーム12については、円偏光が測定基準、すなわち、i={L、R}として選択された場合、偏光成分当たり検出され測定される6つの投影は2つの純粋なOAMモード、

及びインターモーダル角α=0、π/2
、π/
、3π/2
で定義される4つの重ね合わせ状態、
によって表される。すなわち、上記のような、2つの直行モード及び相互にバイアスされていない関連する4つのモードである。
【0063】
本明細書に記載の例示の実施形態では、受光したレーザビーム12はビームスプリッタ14により左及び右円偏光に分割され、整合フィルタ16は偏光当たり6つのモード(すなわち、基準状態のそれぞれに対して6つの検出されたモード)検出し、それにより検出器20での12個の正規化された軸上強度の測定値を得ることになる。
【0064】
表1は検出器20で測定された12個の強度Iのそれぞれがどのように第1のオーダのベクトル渦モードの各基準状態及び投影測定に割り当てられるかの例示の実施形態を示す。
【0065】
【表1】
【0066】
これらの6つのOAM測定値は高次ポワンカレ球をマッピングする。
【0067】
ここで上記の式(5)及び表1を参照すると、プロセッサ22は検出器20から受信した12個の正規化された軸上強度の測定値(表1に対応する)を用いて、次式により、パウリオペレータの上述の期待値を算出するように構成されている。
【数10】
【数11】
【数12】
【0068】
パウリのオペレータの3つの期待値σ、σ、σを算出するにあたって、プロセッサ22は、直交成分の両方I13&I23に関連付けられた相互にバイアスされていない第1のモードに対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分の両方I15&I25に関連付けられた相互にバイアスされていない第2のモードに対応する前記測定された軸上強度の合計との差として第1の期待値σを算出するように構成されていることに留意されたい。同様に、プロセッサ22は、直交成分I14&I24の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第3のモードに対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分I16&I26の両方に関連付けられた相互にバイアスされていない第4のモードに対応する前記測定された軸上強度の合計との差として第2の期待値σを算出するように構成されている。また同様に、プロセッサ22は、直交成分I11&I21の両方に関連付けられた第1の直行モードに対応する前記測定された軸上強度の合計と、直交成分I12&I22の両方に関連付けられた第2の直行モードに対応する前記測定された軸上強度の合計との差として第3の期待値σを算出するように構成されている。
【0069】
そして、プロセッサ22は上述の決定された期待値を入力値として用いて式(5)を用いてブロッホベクトルの長さsを算出又は決定し、その後、算出又は決定されたブロッホベクトルの長さsを式(4)への入力値として用いることにより受光したビーム12のベクトル性の度合いを示すVQF値を得て、その値はその後、例えば、LCDディスプレイなどを介して表示されるといった従来の方法でモジュール24により出力される。
【0070】
式(6-8)の期待値は偏光分布の回復に用いられるストークスパラメータ(Stokes parameters)に類似しているが、実際のところは根本的に異なり、それらは一連の偏光測定値ではなく、空間場の一連のホログラフィック測定値を表わし、結果としてベクトルビームの非可分性の度合いの測定値となることに留意されたい。これは、幾何学的及び動的位相制御の組み合わせを用いることによって実験的に実施される。
【0071】
図2及び図3乃至図6の実験装置9を特に参照して、本明細書において、完全性のため、少なくとも上述の議論をサポートするために装置9、アプローチ、及び結果を更に議論する。
【0072】
装置9は以上説明したベクトル品質分析計/システム10だけでなく、ベクトルモード選別器30、及びベクトル光渦ビーム32を生成する手段も図示している。図2は、q板を用いたベクトル光渦ビームの生成を示し、それは(ブラケット記法で記載の)選択ルール、すなわち、
及び
に従う。q板によって導入された方位電荷は
である。このビーム生成方法は単なる一例に過ぎないことが理解されるであろうし、また当業者であれば他の様々な好適な方法を利用できることを理解するであろう。
【0073】
生成技法に関わらず、ベクトルモードは実験装置9の2つの異なるシステム、すなわち、本明細書に記載した上記のベクトル品質検出システム10及びベクトルモード選別器30で分析される。ベクトルモード選別器は異なるベクトルモードを区別するのに対し、ベクトル品質検出システムはベクトルモードの品質の定量化可能な測定を提供する、すなわち、上記したようにベクトル品質要因(VQF)を提供する。
【0074】
いかなる場合でも、両方のシステムはA.Forbes、A.Dudley、及びM.McLaren、Adv.Opt.Photonics8、200--227(2016).に記載のモード分解技法を利用し、整合フィルタでの被写界の内積はモードの重み付け係数を決定するのに使用される。ここで、入力フィールドV(r)は基準状態U(r)に分解される(
)。モーダル重み付け係数aの係数(modulus)は整合フィルタへの被写界の内積で決定される(
)。任意選択的に、内積の決定は、レンズ(FL)18を使用して、入射ビームを整合フィルタ配置16に導いて、CCDカメラ20上のフーリエ変換を概観することによって実行され、この整合フィルタ配置16は実質的に上記したような好適な整合フィルタを含むものである。
【0075】
ベクトルモード選別器
モード選別器30に戻ると、基本ガウスモードの偏光を調整するのに1/2波長板(λ/2)を使用すると、トポロジカル電荷
のq板での円筒形ベクトルモードが生成され、2つの検出システム、すなわち、ベクトルモード選別器30及びベクトル品質分析計10に導かれる(詳細は後述する)。ベクトルモード選別器30は、ビームのうち一方を、関フィルタとして作用する第2のq板及び偏光ビームスプリッタ(PBS)を通過させて、ベクトルモードを区別する。相関の出力はフーリエレンズ(FL)で測定される。
【0076】
動径偏光ベクトルビームと方位偏光ベクトルビームとを区別するモード選別器の場合、電荷
のq板は、偏光ビームスプリッタ(PBS)とともに、モード分解用の整合フィルタを形成した。q板は動径(方位)偏光ベクトル光渦ビームを均一な偏光を有するガウスモードに変換する。フーリエレンズ(FL)をそれぞれの偏光成分又はアームに配置し、軸上強度をCCDカメラに記憶した。つまり、動径(方位)偏光ベクトル光渦ビームをモード選別器に導いた場合、ゼロでない軸上強度は水平(垂直)偏光アームのみで検出されることになる。実験結果を図3に示し、動径(図3(a))及び方位(図3(b))偏光ベクトル光渦ビームをともに、各ケースにおいて、100%確実性で検出した。つまり、軸上強度を測定することによって、(a)動径及び(b)方位偏光ビーム入力の2つのベクトルモードの相対的な重み付けを決定した。ベクトルモードが方位偏光と動径偏光との混合、例えば、ハイブリッド電気モードHE21からなる場合、ファイバ内のモードカップリングのため、分解技法は相対的な重み付けを正確に決定させることができる。
【0077】
ベクトル品質分析計
2つの円筒形ベクトルモードがトポロジカル電荷
のq板で生成され、これらのモードのうち一方はベクトル品質分析計10に導かれる。ベクトル品質分析計10は、ベクトルモード選別器30とは反対に、偏光状態の測定、空間モードの測定(又は検出)及びその後の前述した量子力学エンタングルメント測定を用いた空間モードの正規化された強度からのVQFの算出により、ベクトル品質要因を決定する。
【0078】
こうして、偏光格子(PG:polarised grating)14の形態の偏光検出器、及び空間光変調器(SLM)16で符号化された位相パターンを有する軌道角運動量(OAM)投影を用いた空間モード検出器を用いて一連の偏光投影を実施することによって、VQFは本明細書に記載の方法で算出される。出力値は、図2に示すように、CCD20を組み合わせた2つのフーリエレンズ18のフーリエ面で測定される。
【0079】
同様に、以上説明したように、実験装置9では、幾何学的位相を用いて、2つの出力ビームが反対の円偏光を有するように、光を+1及び-1オーダの2つのビームに回析させる偏光格子(PG)を用いて偏光成分14.1、14.2を測定した。各偏光成分又はアームを、分解用の方位整合フィルタとして機能するデジタル位相パターンで符号化された空間光変調器(SLM)16に導いた。SLMはスクリーンで反射した所望のビームが水平偏光のみからなるので偏光に敏感である。したがって、円偏光を線形に変換するために、SLMの前に追加の1/4波長板を配置する必要はない。式(6~8)を満たすために、異なる6つのOAM状態の軸上強度を、CCD20の形態の検出器で上記の方法で各偏光アーム(成分)において測定した。
【0080】
図4(a)及び図4(b)はそれぞれ、ベクトル光渦ビーム(すなわち、図4(a)-ベクトル渦モード)及びスカラー光渦ビーム(すなわち、図4(b)-スカラー渦モード)に対する図2のベクトル品質分析計による12個の正規化された強度測定値を示す。ホログラムを各列に示し、2つの偏光測定値を各行に示す。スカラーモードは単一の偏光成分のみを有し分割できるものであるが、ベクトルモードは両方を有し分割できないものである。この場合、円偏光基準を選択し、異なる6つのOAM投影を左及び右円偏光状態の両方に対して行った。渦モードの方位成分を検出するために、位相のみのホログラムをSLM16に符号化した。
【0081】
式(4~8)を用いて、例えば、上記の方法で上記のプロセッサ22と同様の好適なプロセッサにより、VQFを、動径偏光ベクトル光渦ビームに対して0.98+/-0.01に、スカラー渦モードに対して0になるように算出した。
【0082】
生成セクションの第1のq板の前で1/4波長板(λ/4)を回転させるだけで、生成されたビームの状態を、純粋なベクトルから純粋なスカラーまで連続的に変えることができ、この量は式(2)のθによって変わるものである。したがって、VQFは1/4波長板の異なる向きに対して測定したものであり、図5に図示した結果によれば、このベクトル品質の測定値が純粋なスカラービームから純粋なベクトルビームを0~1の範囲でマッピングするものであることが示されている。
【0083】
特に、図5は、入力状態の特性に対して図2のベクトル品質分析計10により算出されたベクトル品質要因(VQF)の段階的変化(evolution)を示す。前述のように、生成セクションにおける第1のq板の前で1/4波長板(λ/4)を用いることで、入力ガウスビームの偏光を線形から円形に変化し、その結果、q板の後で生成された光渦ビームはベクトルからスカラーに変化した。VQFを12個の分解測定値(点)から算出し、1/4波長板の各向きの理論的な予測(実線)に対してプロットした。実験画像は1/4波長板の異なる向きの左円偏光状態及び右円偏光状態の相対的な強度を示す。
【0084】
図6を参照すると、上記に示唆したように、VQFを計算するのに必要な強度測定値を、均等に、すべての必要なホログラムをSLM16などの光学素子を含む整合フィルタ配置16に表示された単一のホログラムに多重化して単一の測定で、リアルタイムに得ることができる。ここで、事前に使用した6つの整合フィルタの重ね合わせ、すなわち、偏光成分当たり所望のモードを検出するためのものは単一のSLM16の2つの半分16.1、16.2上に符号化される。このようにして、CCDカメラ20への12個の出力値の合計は単一のステップ又は1回の撮影で同時に得られ、それによって本明細書に記載の方法でのプロセッサ22によるVQFのリアルタイム算出を容易にすることができる。12個の整合フィルタのそれぞれによって検出されたモードの強度、並びに入力Iijに対する検出器の位置が図6に示されており、CCD10は上記の方法で12個の特定の所定の領域に配置されていることが分かる。しかし、本発明は、偏光成分当たり6つのモードを順次検出することを妨げるものではないことを理解されたい。
【0085】
左及び右円偏光アームはいずれも同じセットのホログラムを用いて分解されるので、強度の上段は左円偏光アームに対応し、下段は右円偏光アームに対応するものである。
【0086】
実装はベクトル光渦ビームに基づくものであったが、これは便宜上のためだけであることを指摘する。ベクトルビーム品質要因のコンセプト及び定義はベクトルビームの種類に依存するものであり、測定装置の光学素子のみを変更することが必要とされるであろう(多くのユーザは既知の形態のベクトルビームの測定を必要とすることが想定される)。また、本アプローチはどのようなベクトルモードかを直ちに示す一つの数値、すなわち、定量的測定を生成するものである。対照的に、偏光度は、フィールドのすべての点の数値を生成するものであるので、特定の点に対しては定量的であるが、全体としてモードのベクトル品質を決定するものではない。
【0087】
上記のベクトルモード選別器は必ずしもベクトル品質要因を決定するものではないが、分析されるモードの二次確認として機能することを理解されたい。したがって、単一のホログラムに対する12個のパラメータのリアルタイム測定はストークス測定の実施と同じくらい装置を比較的に簡易にする。しかし、一部の実施形態では、ベクトルビーム分析計デバイスはベクトル品質分析計とベクトルモード選別器の両方を備えることができることで、ユーザに拡張した機能を提供できることが想定される。
【0088】
さらに、検出される波長及び電力レベルに応じて、CCD検出器を他の検出器の種類に変更してもよい。
【0089】
ホログラムは考慮されているモードに応じて選択することができ、上記の例に使用した方位モードである必要はない。例えば、エルミートガウスモード用のバイナリホログラム、又はベッセルモード用の動径ホログラムを使用してもよい。
【0090】
本発明は任意のベクトルビームに対する新しいレーザビーム特徴付けツールを提供するものである。本コンセプトは、純粋なスカラー(OAMモード)から純粋なベクトル(一例として動径偏光)までのベクトル品質の様々な度合いの円筒形ベクトル光渦ビームに実証されており、予測されたベクトル品質要因と測定されたベクトル品質要因との間の整合性が示されている。ベクトル品質要因はベクトルモードの品質の定量的測定値を提供し、実験用途及び工業用途のいずれにおいて、このようなビームの分析に有用なツールになると考えられる。
【0091】
本開示では、これまで量子力学に関連付けられたツールをベクトルビームに使用し、かつ適用する。ベクトルビームを空間及び偏光自由度において「エンタングルド(entangled)」とみなすことができるので、エンタングルメント測定は、ベクトル品質要因(VGF)と呼ばれるベクトルモードの本質的特性を定量化するのに適用される。本技法は純粋なスカラーから純粋なベクトルまでの連続的範囲の様々なビームに対して実証されている。本技法はベクトルモードのレーザビーム特徴付けの新しいツールを提供するものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6