(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】電子写真機器用帯電ロール
(51)【国際特許分類】
G03G 15/02 20060101AFI20220526BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
G03G15/02 101
F16C13/00 B
F16C13/00 A
F16C13/00 E
(21)【出願番号】P 2019014443
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 仁宏
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 浩
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/061441(WO,A1)
【文献】特開2015-121769(JP,A)
【文献】特開2019-003171(JP,A)
【文献】特開2010-181819(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173398(WO,A1)
【文献】特開2012-063763(JP,A)
【文献】特開2010-032692(JP,A)
【文献】特開2007-225914(JP,A)
【文献】特開2005-316196(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0170860(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 15/00
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周に形成された表層と、を備え、
前記表層は、バインダー樹脂と、平均粒子径15μm以上50μm以下の大径粒子と、平均粒子径3μm以上15μm以下の小径粒子と、を含有し、
前記大径粒子と前記小径粒子の平均粒子径の差が、10μm以上35μm以下であり、
前記小径粒子は、前記表層中に1層で配置されており、前記小径粒子間の平均距離が、前記小径粒子の平均粒子径の1.2倍以下であり、
前記大径粒子を覆っているバインダー樹脂の厚みaが、1.5~3.5μmの範囲内であり、
前記小径粒子を覆っているバインダー樹脂の厚みbが、3.0~6.0μmの範囲内であり、
前記厚みbが前記厚みaよりも厚くなっていることを特徴とする電子写真機器用帯電ロール。
【請求項2】
前記大径粒子と前記小径粒子の材質が同じであるとともに、大小粒子と前記バインダー樹脂の材質が異なっていることを特徴とする請求項1に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項3】
前記小径粒子の含有量が、前記バインダー樹脂100質量部に対し、60~110質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項4】
前記大小粒子の材質が、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネートのうちのいずれか1種であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項5】
前記バインダー樹脂の材質が、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネートのうちのいずれか1種または2種以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【請求項6】
前記大小粒子の表面粗さRaが、0.25μm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真機器用帯電ロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリなどの電子写真機器において好適に用いられる電子写真機器用帯電ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真機器において、感光体の表面を帯電させる方式としては、帯電ロールを感光体の表面に直接接触させる接触帯電方式が知られている。接触帯電方式においては、放電領域が狭いと局部に帯電が集中して画像不具合が生じるおそれがある。このため、例えば特許文献1に記載されるように、帯電ロールの表層に粒子を添加して表面に凹凸を設けることで放電領域を確保し、帯電量を維持することが行われている。また、特許文献1では、帯電量や帯電均一性を確保するために、帯電ロールの表層に大きさが異なる2種類の粒子を添加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
寿命が長く、より高速で印刷できる電子写真機器では、帯電ロールの表層に大きさが異なる2種類の粒子を添加し、放電領域を確保するとともに帯電量や帯電均一性を確保しても、ライフエンドにおいて、横スジ・ムラ・カブリなどの異常画像が発生することがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高寿命の高速機においてもライフエンドで良質な画像を提供できる電子写真機器用帯電ロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明に係る電子写真機器用帯電ロールは、軸体と、前記軸体の外周に形成された弾性体層と、前記弾性体層の外周に形成された表層と、を備え、前記表層は、バインダー樹脂と、平均粒子径15μm以上50μm以下の大径粒子と、平均粒子径3μm以上15μm以下の小径粒子と、を含有し、前記大径粒子と前記小径粒子の平均粒子径の差が、10μm以上35μm以下であり、前記小径粒子は、前記表層中に1層で配置されており、前記小径粒子間の平均距離が、前記小径粒子の平均粒子径の1.2倍以下であり、前記大径粒子を覆っているバインダー樹脂の厚みaが、1.5~3.5μmの範囲内であり、前記小径粒子を覆っているバインダー樹脂の厚みbが、3.0~6.0μmの範囲内であり、前記厚みbが前記厚みaよりも厚くなっていることを要旨とするものである。
【0007】
前記大径粒子と前記小径粒子の材質が同じであるとともに、大小粒子と前記バインダー樹脂の材質が異なっていることが好ましい。前記小径粒子の含有量は、前記バインダー樹脂100質量部に対し、60~110質量部の範囲内であることが好ましい。前記大小粒子の材質は、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネートのうちのいずれか1種であることが好ましい。前記バインダー樹脂の材質は、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネートのうちのいずれか1種または2種以上であることが好ましい。前記大小粒子の表面粗さRaは、0.25μm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロールによれば、表層が大小粒子を含有し、その大小粒子の粒径差が特定範囲であり、小径粒子は表層中に1層で配置されており、小径粒子間の平均距離が小径粒子の平均粒子径の1.2倍以下であり、大径粒子を覆っているバインダー樹脂の厚みaと小径粒子を覆っているバインダー樹脂の厚みbがそれぞれ特定範囲であり、厚みbが厚みaよりも厚くなっていることから、高寿命の高速機においてもライフエンドで良質な画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
【
図2】
図1に示す電子写真機器用帯電ロールの表面近傍の拡大模式図である。
【
図3】
図2に示す拡大模式図をさらに拡大した拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明に係る電子写真機器用帯電ロール(以下、単に帯電ロールということがある。)について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子写真機器用帯電ロールの外観模式図(a)と、そのA-A線断面図(b)である。
図2は、
図1に示す電子写真機器用帯電ロールの表面近傍の拡大模式図である。
図3は、
図2に示す拡大模式図をさらに拡大した拡大模式図である。
【0012】
帯電ロール10は、軸体12と、軸体12の外周に形成された弾性体層14と、弾性体層14の外周に形成された表層16と、を備える。弾性体層14は、帯電ロール10のベースとなる層である。表層16は、帯電ロール10の表面に現れる層となっている。
【0013】
表層16は、バインダー樹脂22と、大径粒子18と、小径粒子20と、を含有する。大径粒子18および小径粒子20により、表層16の表面には凹凸が形成されている。大径粒子18が存在する部分は比較的大きい凸部であり、小径粒子20が存在する部分は比較的小さい凸部である。比較的小さい凸部は、比較的大きい凸部と比較的大きい凸部との間に1または2以上配置されている。大径粒子18が存在する比較的大きい凸部が感光体に接触する部分であり、小径粒子20が存在する比較的小さい凸部は感光体に接触しない部分である。大径粒子18と小径粒子20の形状は、特に限定されるものではないが、球状、真球状などが好ましい。
【0014】
大径粒子18は、平均粒子径15μm以上50μm以下の粒子である。このような大径粒子18を含むことにより、表層16の表面凹凸が十分に大きくなり、表層16は感光体との間のギャップを十分に確保することができる。これにより、放電性能が向上するため、高い帯電性を確保することができる。大径粒子18の平均粒子径が15μm未満であると、表層16は感光体との間のギャップを十分に確保することができず、高い帯電性を確保することができない。また、大径粒子18の平均粒子径が50μm超であると、帯電の均一性を満足することができない。大径粒子18の平均粒子径は、感光体との間のギャップを大きくすることができるなどの観点から、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは25μm以上である。また、大径粒子18の平均粒子径は、帯電の均一性を高めやすいなどの観点から、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。大径粒子18の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定されるメジアン径である。
【0015】
大径粒子18は、樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の材質としては、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどを挙げることができる。大径粒子18は、1種の材質で構成されることが好ましい。大径粒子18の材質は、上記樹脂粒子の材質のうちのいずれか1種であることが好ましい。これらは双極子のある樹脂であるため、帯電しやすい。
【0016】
大径粒子18の含有量は、特に限定されるものではないが、大径粒子18の粒子間距離を適度に確保しやすい、帯電の均一性を高めやすいなどの観点から、バインダー樹脂22の100質量部に対し、5~40質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは5~35質量部の範囲内、さらに好ましくは10~30質量部の範囲内である。
【0017】
大径粒子18は、表面粗さRaの小さい粒子であることが好ましい。具体的には、表面粗さRaが0.25μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.20μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下である。表面粗さRaは、算術平均粗さである。大径粒子18の表面粗さRaが小さいほうが、粒子の形や大きさのばらつきが小さく、後述する、表面エネルギーを利用した厚み調整をしやすい。
【0018】
大径粒子18間の平均距離は、60μm以上であることが好ましい。大径粒子18の量が適度となり、帯電の均一性を高めやすい。また、この観点から、大径粒子18間の平均距離は、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上である。また、大径粒子18の量が適度となり、帯電の均一性を高めやすいなどの観点から、大径粒子18間の平均距離は、300μm以下であることが好ましい。より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。大径粒子18間の平均距離は、表層16の表面写真を撮影し、任意の5箇所においてそれぞれ大径粒子18間の距離を3つ測定し、合計15点の平均により表す。大径粒子18間の距離は、互いに向かい合う外周間距離で表す。
【0019】
大径粒子18は、感光体との間のギャップを維持しやすいなどの観点から、荷重に対する変形量が小さいことが好ましい。例えば、50mNの荷重がかかったときにその変形量が80%以下であることが好ましい。より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下である。一方、柔軟性を確保するなどの観点から、その変形量は10%以上であることが好ましい。より好ましくは20%以上である。
【0020】
感光体との間のギャップを均一に維持しやすいなどの観点から、大径粒子18と大径粒子18は凝集体を形成しないで存在することが好ましい。
【0021】
小径粒子20は、平均粒子径3μm以上15μm以下の粒子である。小径粒子20が存在する部分の凸部は放電の起点となる。小径粒子20を含むことにより、表層16は放電の起点を確保し、小径粒子20が分散することで帯電の均一性を満足することができる。小径粒子20の平均粒子径が3μm未満であると、小径粒子20が存在する部分の凸部が小さすぎて放電の起点となりにくく、帯電の均一性を満足することができない。また、小径粒子20の平均粒子径が15μm超であると、小径粒子20が存在する部分の凸部が大きすぎて放電の起点となりにくく、帯電の均一性を満足することができない。小径粒子20の平均粒子径は、帯電の均一性を向上させるなどの観点から、より好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは7μm以下である。小径粒子20の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定されるメジアン径である。
【0022】
小径粒子20は、樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の材質としては、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどを挙げることができる。小径粒子20の材質は、大径粒子18の材質と同じであることが好ましい。小径粒子20は、1種の材質で構成されることが好ましい。小径粒子20の材質は、上記樹脂粒子の材質のうちのいずれか1種であることが好ましい。これらは双極子のある樹脂であるため、帯電しやすい。小径粒子20の材質が大径粒子18の材質と同じであり、大小粒子がいずれも帯電しやすい粒子であることで、後述するように、表層16において、粒子同士は反発し、粒子とバインダー樹脂22は結びつきやすくなるため、小径粒子20を1層に配置しやすくすることができる。
【0023】
小径粒子20は、表面粗さRaの小さい粒子であることが好ましい。具体的には、表面粗さRaが0.25μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.20μm以下、さらに好ましくは0.15μm以下である。表面粗さRaは、算術平均粗さである。小径粒子20の表面粗さRaが小さいほうが、粒子の形や大きさのばらつきが小さく、後述する、表面エネルギーを利用した厚み調整をしやすい。
【0024】
小径粒子20は、表層16中に1層で配置されている。表層16中に粒子が1層で配置されるとは、厚み方向において互いに重なる粒子が存在していないことをいう。小径粒子20は、表層16中に1層で密に配置されており、小径粒子20間の平均距離は小径粒子20の平均粒子径の1.2倍以下となっている。小径粒子20間の距離は、小径粒子20の中心間距離dで表される。小径粒子20間の平均距離は、表層16の表面写真を撮影し、任意の5箇所においてそれぞれ小径粒子20間の距離を3つ測定し、合計15点の平均により表す。ロール表面は経時において摩耗したり削れたりするが、小径粒子20が表層16中に1層で配置されていることで、摩耗や削れのムラが抑えられるため、感光体の帯電への影響が小さくなる。また、小径粒子20が表層16中に1層で密に配置されることで、小径粒子20に起因する凸部が表層16の表面に多く発生し、表層16の平坦部を少なくして帯電ムラ(放電ムラ)を抑えることができる。
【0025】
小径粒子20を表層16中に1層で配置するには、大小粒子の材質を同じにするとともに、大小粒子とバインダー樹脂22の材質を異なるものとするとよい。大小粒子とバインダー樹脂22の材質が異なることで、後述する表層形成用組成物(液)を攪拌するときに摩擦が起き、粒子とバインダー樹脂22がそれぞれ帯電する。これにより、材質の同じ粒子同士は反発し、材質の異なる粒子とバインダー樹脂22は静電的に結びつきやすくなるため、小径粒子20を表層16中に1層で配置することができる。また、小径粒子20同士は反発するため、小径粒子20の凝集が抑えられる。
【0026】
表層形成用組成物(液)を攪拌するときに粒子とバインダー樹脂22がそれぞれ帯電し、小径粒子20を表層16中に1層で配置しやすくするには、大小粒子とバインダー樹脂22の材質を異なるものとすることに加え、攪拌速度をより速くするとよい。具体的には、攪拌速度を後述するより好ましい範囲に設定するとよい。また、粒子とバインダー樹脂22が帯電した状態を維持するために、表層形成用組成物(液)を攪拌しながら弾性体層14の外周に塗工するとよい。また、塗工する際に、表層形成用組成物(液)を湿度管理するとよい。具体的には、低湿度・一定湿度とすることが好ましい。
【0027】
小径粒子20を表層16中に密に配置するには、小径粒子20の含有量を多くして、小径粒子20間の平均距離を小さくするとよい。一方で、含有量が多すぎると、粒子同士が反発していても、小径粒子20を表層16中に1層で配置しにくくなる。この観点から、小径粒子20の含有量は、バインダー樹脂22の100質量部に対し、60~110質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは60~100質量部の範囲内、さらに好ましくは60~80質量部の範囲内である。
【0028】
大径粒子18と小径粒子20の平均粒子径の差は、10μm以上35μm以下である。平均粒子径の差が10μm以上と十分に大きいことで、ライフエンドまで最適な放電距離を維持することができる。また、この観点から、平均粒子径の差は、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。一方、平均粒子径の差が35μm以下であることで、カブリが抑えられる。また、この観点から、平均粒子径の差は、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下である。
【0029】
バインダー樹脂22は、表層材料として好適な材料が選択される。バインダー樹脂22としては、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどを挙げることができる。上述するように、バインダー樹脂22は、大小粒子とは異なる材質であることが好ましい。バインダー樹脂22は、大小粒子とは異なる材質であれば、上記樹脂のうちのいずれか1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0030】
表層16において、バインダー樹脂22の厚みは、所定の厚みである。大径粒子18を覆っているバインダー樹脂22の厚みaは1.5~3.5μmの範囲内であり、小径粒子20を覆っているバインダー樹脂22の厚みbは3.0~6.0μmの範囲内である。また、厚みbが厚みaよりも厚くなっている。バインダー樹脂22の厚みは、レーザー顕微鏡(例えばキーエンス製、「VK-9510」など)を用いて断面を観察することにより測定することができる。例えば任意の位置の5か所について、バインダー樹脂22の厚みa,bをそれぞれ測定し、その平均によってそれぞれ表すことができる。
【0031】
大径粒子18を覆っているバインダー樹脂22の厚みaが特定範囲よりも厚すぎると、感光体とのニップ面積増加による放電不足、帯電不良が発生する。これにより、横スジ画像が発生する。また、厚みaが特定範囲よりも薄すぎると、経時摩耗によってライフエンド時に感光体との最適な距離を維持できない。これにより、黒点画像が発生する。そして、小径粒子20を覆っているバインダー樹脂22の厚みbが特定範囲よりも厚すぎると、放電領域を確保できない。これにより、ムラ画像が発生する。また、厚みbが特定範囲よりも薄すぎると、放電箇所の抵抗が不均一となり、均一帯電性を確保できない。これにより、横スジ画像が発生する。そして、バインダー樹脂22の厚みa,bがそれぞれ特定範囲内の値であっても、厚みbが厚みaよりも厚くなっていないと、大小粒子上の位置で放電量を同じにすることができず、均一帯電性を確保できない。これにより、黒点画像が発生する。これは、大径粒子18の存在する部分は感光体と接地することで小径粒子20の存在する部分よりも放電量に劣るため、大小粒子上の位置で放電量を同じにするためには、小径粒子20の存在する部分よりも膜厚を薄くして静電容量を大きくし、表面の電荷量を多くする必要があるからである。
【0032】
そして、上記観点から、大径粒子18を覆っているバインダー樹脂22の厚みaは、より好ましくは1.7~3.2μmの範囲内、さらに好ましくは2.0~3.0μmの範囲内である。また、小径粒子20を覆っているバインダー樹脂22の厚みbは、より好ましくは3.2~5.0μmの範囲内、さらに好ましくは3.5~4.5μmの範囲内である。
【0033】
そして、厚みbと厚みaの差は、1.0μm以上が好ましい。より好ましくは1.5μm以上である。厚みbと厚みaの差が大きいほど、大径粒子18を覆うバインダー樹脂22の表面の電荷量が相対的に大きくなり、黒点画像が発生しない環境幅が広がる(例えば、0℃10%RH環境でも黒点画像の発生が抑えられる。)。
【0034】
バインダー樹脂22の厚みa,bは、大小粒子間の表面エネルギー差を利用して、上記特定範囲に調整することができる。また、大小粒子間の表面エネルギー差を利用して、厚みbは厚みaよりも厚くすることができる。表面エネルギーのより大きい粒子は、バインダー樹脂22を多くひきつけるため、粒子上のバインダー樹脂22の厚みをより厚くすることができる。したがって、小径粒子20の表面エネルギーを大径粒子18の表面エネルギーよりも大きいものにすることで、上記特定範囲に調整するとともに、厚みbを厚みaよりも厚くすることができる。粒子の表面エネルギーは、材料種、粒子径、表層製造時の湿度環境などによって調整することができる。大小粒子の材質が同じ場合、曲率の大きい小径粒子20のほうが表面エネルギーが大きくなる。表層製造時に後述する表層形成用組成物を低湿度・一定湿度とすることで、エネルギー状態が湿度の影響を受けにくく、表面エネルギー差を利用した厚み調整をすることができる。また、後述する表層形成用組成物を攪拌しながら塗工することで、表面エネルギー差を利用した厚み調整をすることができる。
【0035】
表層16は、バインダー樹脂22、大径粒子18、小径粒子20に加えて、添加剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。添加剤としては、導電剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離形剤、染料、顔料、難燃剤などが挙げられる。導電剤としては、イオン導電剤(第4級アンモニウム塩など)や電子導電剤(カーボンブラックなど)などが挙げられる。
【0036】
表層16は、材料種、導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。表層16の体積抵抗率は、用途などに応じて105~1011Ω・cm、108~1010Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。
【0037】
表層16は、バインダー樹脂22、大径粒子18、小径粒子20を含む表層形成用組成物を用い、これを弾性体層14の外周面に塗工し、乾燥処理、硬化処理などを適宜行うことにより形成することができる。表層形成用組成物において、バインダー樹脂22、大径粒子18、小径粒子20は、分散媒を用いて分散液として調製することができる。分散媒としては、メチルエチルケトン(MEK),メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、イソプロピルアルコール(IPA),メタノール,エタノールなどのアルコール系溶媒、ヘキサン,トルエンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチル,酢酸ブチルなどの酢酸系溶媒、ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、水などが挙げられる。
【0038】
表層形成用組成物は、バインダー樹脂22、大径粒子18、小径粒子20、必要に応じて添加される添加剤、分散媒を混合し、攪拌することにより調製することができる。表層形成用組成物の攪拌速度は、350rpm以上であることが好ましい。より好ましくは450rpm以上である。また、表層形成用組成物の攪拌時における粘度(18℃)は、30~80cpsであることが好ましい。より好ましくは35~70cpsである。また、表層形成用組成物は、弾性体層14の外周面に塗工する際にも、攪拌を続けていることが好ましい。すなわち、表層形成用組成物は、攪拌しながら弾性体層14の外周面に塗工することが好ましい。表層形成用組成物を塗工する際には、湿度管理することが好ましい。具体的には、低湿度、一定湿度であることが好ましい。
【0039】
弾性体層14は、架橋ゴムを含有する。弾性体層14は、未架橋ゴムを含有する導電性ゴム組成物により形成される。架橋ゴムは、未架橋ゴムを架橋することにより得られる。未架橋ゴムは、極性ゴムであってもよいし、非極性ゴムであってもよい。導電性に優れるなどの観点から、未架橋ゴムは極性ゴムがより好ましい。
【0040】
極性ゴムは、極性基を有するゴムであり、極性基としては、クロロ基、ニトリル基、カルボキシル基、エポキシ基などを挙げることができる。極性ゴムとしては、具体的には、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、ウレタンゴム(U)、アクリルゴム(アクリル酸エステルと2-クロロエチルビニルエーテルとの共重合体、ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などを挙げることができる。極性ゴムのうちでは、体積抵抗率が特に低くなりやすいなどの観点から、ヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)がより好ましい。
【0041】
ヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンの単独重合体(CO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド二元共重合体(ECO)、エピクロルヒドリン-アリルグリシジルエーテル二元共重合体(GCO)、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル三元共重合体(GECO)などを挙げることができる。
【0042】
ウレタンゴムとしては、分子内にエーテル結合を有するポリエーテル型のウレタンゴムを挙げることができる。ポリエーテル型のウレタンゴムは、両末端にヒドロキシル基を有するポリエーテルとジイソシアネートとの反応により製造できる。ポリエーテルとしては、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。ジイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどを挙げることができる。
【0043】
非極性ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。
【0044】
架橋剤としては、硫黄架橋剤、過酸化物架橋剤、脱塩素架橋剤を挙げることができる。これらの架橋剤は、単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0045】
硫黄架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄、塩化硫黄、チウラム系加硫促進剤、高分子多硫化物などの従来より公知の硫黄架橋剤を挙げることができる。
【0046】
過酸化物架橋剤としては、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ケトンパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアシルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどの従来より公知の過酸化物架橋剤を挙げることができる。
【0047】
脱塩素架橋剤としては、ジチオカーボネート化合物を挙げることができる。より具体的には、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネートなどを挙げることができる。
【0048】
架橋剤の配合量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、好ましくは0.1~2質量部の範囲内、より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0049】
架橋剤として脱塩素架橋剤を用いる場合には、脱塩素架橋促進剤を併用しても良い。脱塩素架橋促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下、DBUと略称する。)もしくはその弱酸塩を挙げることができる。脱塩素架橋促進剤は、DBUの形態として用いても良いが、その取り扱い面から、その弱酸塩の形態として用いることが好ましい。DBUの弱酸塩としては、炭酸塩、ステアリン酸塩、2-エチルヘキシル酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、フェノール樹脂塩、2-メルカプトベンゾチアゾール塩、2-メルカプトベンズイミダゾール塩などを挙げることができる。
【0050】
脱塩素架橋促進剤の含有量としては、ブリードしにくいなどの観点から、未架橋ゴム100質量部に対して、0.1~2質量部の範囲内であることが好ましい。より好ましくは0.3~1.8質量部の範囲内、さらに好ましくは0.5~1.5質量部の範囲内である。
【0051】
弾性体層14には、導電性付与のため、カーボンブラック、グラファイト、c-TiO2、c-ZnO、c-SnO2(c-は、導電性を意味する。)、イオン導電剤(4級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤など)などの従来より公知の導電剤を適宜添加することができる。また、必要に応じて、各種添加剤を適宜添加しても良い。添加剤としては、滑剤、加硫促進剤、老化防止剤、光安定剤、粘度調整剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、充填剤、分散剤、消泡剤、顔料、離型剤などを挙げることができる。
【0052】
弾性体層14は、架橋ゴムの種類、イオン導電剤の配合量、電子導電剤の配合などにより、所定の体積抵抗率に調整することができる。弾性体層14の体積抵抗率は、用途などに応じて102~1010Ω・cm、103~109Ω・cm、104~108Ω・cmの範囲などに適宜設定すればよい。
【0053】
弾性体層14の厚みは、特に限定されるものではなく、用途などに応じて0.1~10mmの範囲内などで適宜設定すればよい。
【0054】
弾性体層14は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、軸体12をロール成形金型の中空部に同軸的に設置し、未架橋の導電性ゴム組成物を注入して、加熱・硬化(架橋)させた後、脱型するか、あるいは、軸体12の表面に未架橋の導電性ゴム組成物を押出成形するなどにより、軸体12の外周に弾性体層14を形成する。
【0055】
軸体12は、導電性を有するものであれば特に限定されない。具体的には、鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属製の中実体、中空体からなる芯金などを例示することができる。軸体12の表面には、必要に応じて、接着剤、プライマーなどを塗布しても良い。つまり、弾性体層14は、接着剤層(プライマー層)を介して軸体12に接着されていてもよい。接着剤、プライマーなどには、必要に応じて導電化を行なっても良い。
【0056】
以上の構成の帯電ロール10によれば、表層16が大小粒子を含有し、その大小粒子の粒径差が特定範囲であり、小径粒子20は表層16中に1層で配置されており、小径粒子20間の平均距離が小径粒子20の平均粒子径の1.2倍以下であり、大径粒子18を覆っているバインダー樹脂22の厚みaと小径粒子20を覆っているバインダー樹脂22の厚みbがそれぞれ特定範囲であり、厚みbが厚みaよりも厚くなっていることから、高寿命の高速機においてもライフエンドで良質な画像を提供することができる。
【0057】
本発明に係る帯電ロールの構成としては、
図1に示す構成に限定されるものではない。例えば、
図1に示す帯電ロール10において、軸体12と弾性体層14との間に他の弾性体層を備えた構成であってもよい。この場合、他の弾性体層は、帯電ロールのベースとなる層であり、弾性体層14が帯電ロールの抵抗調整を行う抵抗調整層などとして機能する。他の弾性体層は、例えば、弾性体層14を構成する材料として挙げられた材料のいずれかにより構成することができる。また、例えば、
図1に示す帯電ロール10において、弾性体層14と表層16との間に他の弾性体層を備えた構成であってもよい。この場合、弾性体層14が帯電ロールのベースとなる層であり、他の弾性体層は、帯電ロールの抵抗調整を行う抵抗調整層などとして機能する。
【実施例】
【0058】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0059】
(実施例1)
<導電性ゴム組成物の調製>
ヒドリンゴム(ECO、ダイソー製「エピクロマーCG102」)100質量部に対し、加硫助剤(酸化亜鉛、三井金属製「酸化亜鉛2種」)を5質量部、カーボン(ケッチェンブラックインターナショナル製「ケッチェンブラックEC300J」)を10質量部、加硫促進剤(2-メルカプトベンゾチアゾール、大内新興化学工業社製「ノクセラーM-P」)を0.5質量部、硫黄(鶴見化学工業社製、「サルファックスPTC」)を2質量部、充填剤(炭酸カルシウム、白石工業製「白艶華CC」)を50質量部添加し、これらを攪拌機により撹拌、混合して導電性ゴム組成物を調製した。
【0060】
<弾性体層の作製>
成形金型(パイプ状)に芯金(直径8mm)をセットし、上記組成物を注入し、180℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.9mmの導電性ゴム弾性体からなる弾性体層を形成した。
【0061】
<表層の作製>
表に記載の配合量(質量部)となるように粒子とバインダー樹脂を配合し、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を加え、所定の攪拌速度で混合攪拌することにより、表層形成用の液状組成物を調製した。次いで、低湿度、一定湿度に調整しつつ、攪拌を続けながら、この液状組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に表層を形成した。これにより、帯電ロールを作製した。
【0062】
(実施例2)
<導電性ゴム組成物の調製>
NBR(日本ゼオン社製「NipolDN302」)100質量部に対し、ステアリン酸(日油製「ステアリン酸さくら」)0.7質量部、酸化亜鉛(堺化学工業製「酸化亜鉛2種」)5質量部、ハイドロタルサイト(協和化学工業製「DHT4A」)2質量部、過酸化物架橋剤(日油製「パークミルD40」)3質量部、カーボン(ケッチェンブラックインターナショナル製「ケッチェンブラックEC300J」)20質量部を配合し、これらを攪拌機により撹拌、混合して、導電性ゴム組成物を調製した。
【0063】
<弾性体層の作製>
成形金型に芯金(直径8mm)をセットし、上記組成物を注入し、170℃で30分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.9mmの導電性ゴム弾性体からなる弾性体層を形成した。
【0064】
<表層の作製>
表に記載の配合量(質量部)となるように粒子とバインダー樹脂を配合し、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を加え、所定の攪拌速度で混合攪拌することにより、表層形成用の液状組成物を調製した。次いで、低湿度、一定湿度に調整しつつ、攪拌を続けながら、この液状組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に表層を形成した。これにより、帯電ロールを作製した。
【0065】
(実施例3)
<導電性ゴム組成物の調製>
エチレン-プロピレン-ジエンゴム(三井化学製「EPT4045」)100質量部と、酸化亜鉛(堺化学工業製「酸化亜鉛2種」)5質量部と、ステアリン酸(日油製「ステアリン酸さくら」)1質量部と、プロセスオイル(出光興産製「ダイアナプロセスPW-380」)30質量部と、硫黄(鶴見化学工業(株)製)1質量部と、ジベンゾチアジルジスルフィド(加硫促進剤)(大内新興化学工業(株)製、「ノクセラーDM-P」)2質量部と、テトラメチルチウラムモノサルファイド(加硫促進剤)(大内新興化学工業製「ノクセラーTS」)1質量部と、カーボン(ケッチェンブラックインターナショナル製「ケッチェンブラックEC300J」)15質量部と、をニーダーで混練することにより、導電性ゴム組成物を調製した。
【0066】
<弾性体層の作製>
成形金型に芯金(直径8mm)をセットし、上記組成物を注入し、160℃で40分加熱した後、冷却、脱型して、芯金の外周に、厚さ1.9mmの導電性ゴム弾性体からなる弾性体層を形成した。
【0067】
<表層の作製>
表に記載の配合量(質量部)となるように粒子とバインダー樹脂を配合し、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を加え、所定の攪拌速度で混合攪拌することにより、表層形成用の液状組成物を調製した。次いで、低湿度、一定湿度に調整しつつ、攪拌を続けながら、この液状組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に表層を形成した。これにより、帯電ロールを作製した。
【0068】
(実施例4~8、比較例1、3、4、7、9、10)
実施例1と同様にして、ECOをゴムとして含む弾性体層を作製した。次いで、表に記載の配合量(質量部)となるように粒子とバインダー樹脂を配合し、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を加え、所定の攪拌速度で混合攪拌することにより、表層形成用の液状組成物を調製した。次いで、低湿度、一定湿度に調整しつつ、攪拌を続けながら、この液状組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に表層を形成した。これにより、帯電ロールを作製した。
【0069】
(実施例9、比較例2、6)
実施例2と同様にして、NBRをゴムとして含む弾性体層を作製した。次いで、表に記載の配合量(質量部)となるように粒子とバインダー樹脂を配合し、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を加え、所定の攪拌速度で混合攪拌することにより、表層形成用の液状組成物を調製した。次いで、低湿度、一定湿度に調整しつつ、攪拌を続けながら、この液状組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に表層を形成した。これにより、帯電ロールを作製した。
【0070】
(比較例5、8)
実施例3と同様にして、EPDMをゴムとして含む弾性体層を作製した。次いで、表に記載の配合量(質量部)となるように粒子とバインダー樹脂を配合し、メチルエチルケトン(MEK)200質量部を加え、所定の攪拌速度で混合攪拌することにより、表層形成用の液状組成物を調製した。次いで、低湿度、一定湿度に調整しつつ、攪拌を続けながら、この液状組成物を弾性体層の外周面にロールコートし、熱処理を施すことにより、弾性体層の外周に表層を形成した。これにより、帯電ロールを作製した。
【0071】
表層材料として用いた材料は以下の通りである。
・バインダー樹脂(PU):DIC製「BURNOCK DF-407」
・バインダー樹脂(PA):DIC製「ACRYDIC A-1300」
・バインダー樹脂(PMMA):根上工業製「パラクロンW197C」
・バインダー樹脂(PC):出光興産製「タフロンA1700」
(大径粒子)
・ウレタン粒子(PU<1>):根上工業株式会社製「アートパールC-100」、平均粒子径50μm、表面粗さRa=0.08μm
・ウレタン粒子(PU<2>):根上工業株式会社製「アートパールC-400透明」、平均粒子径15μm、表面粗さRa=0.07μm
・ナイロン粒子(PA<1>):ダンテック・ダイナミクス株式会社製「PSP-50」、平均粒子径50μm、表面粗さRa=0.16μm
・ナイロン粒子(PA<2>):アルケマ株式会社製「オルガソール2002ES3NAT3」、平均粒子径30μm、表面粗さRa=0.28μm
・アクリル粒子(PMMA<1>):綜研化学株式会社製「MX―3000」、平均粒子径30μm、表面粗さRa=0.08μm
・アクリル粒子(PMMA<2>):綜研化学株式会社製「MX―2000」、平均粒子径20μm、表面粗さRa=0.08μm
・アクリル粒子(PMMA<3>):綜研化学株式会社製「MX―1500H」、平均粒子径15μm、表面粗さRa=0.08μm
・シリカ粒子(シリカ<1>):AGCエスアイテック株式会社製「サンスフェアNP-200」、平均粒子径20μm、表面粗さRa=0.06μm
(小径粒子)
・ウレタン粒子(PU<3>):根上工業株式会社製「アートパールC-800透明 」、平均粒子径5μm、表面粗さRa=0.07μm
・ナイロン粒子(PA<3>):住友精化株式会社製「フロービーズNP-U(分級品)」、平均粒子径15μm、表面粗さRa=0.11μm
・ナイロン粒子(PA<4>):住友精化株式会社製「フロービーズNP-U(分級品)」、平均粒子径5μm、表面粗さRa=0.11μm
・ナイロン粒子(PA<5>):アルケマ株式会社製「オルガソール2001UDNAT1」、平均粒子径5μm、表面粗さRa=0.29μm
・アクリル粒子(PMMA<4>):綜研化学株式会社製「MX―1000」、平均粒子径10μm、表面粗さRa=0.08μm
・アクリル粒子(PMMA<5>):綜研化学株式会社製「MX―500」、平均粒子径5μm、表面粗さRa=0.08μm
・アクリル粒子(PMMA<6>):綜研化学株式会社製「MX―300」、平均粒子径3μm、表面粗さRa=0.08μm
・シリカ粒子(シリカ<2>):AGCエスアイテック株式会社製「サンスフェアNP-30」、平均粒子径3μm、表面粗さRa=0.06μm
【0072】
なお、表層形成用の各液状組成物の18℃における液粘度は、東機産業株式会社製「VISCOMETER TVB-10」を用いて測定した。
【0073】
作製した各帯電ロールの表層について、各測定を行った。そして、作製した各帯電ロールについて、画像評価を行った。評価結果および表層形成用組成物の配合組成を以下の表に示す。
【0074】
(バインダー厚)
レーザー顕微鏡(キーエンス製「VK-X100」)を用いて表層の径方向断面を400倍で観察することにより測定した。
図3に示すように、大径粒子上のバインダー厚aと、小径粒子上のバインダー厚bを測定した。任意の位置の5箇所においてバインダー厚a,bを測定し、その平均によって表した。
【0075】
(粒子配列)
ロール表面をキーエンス製のレーザー顕微鏡「VK-X100」で400倍率で観察し、小径粒子の重なりの有無を確認した。小径粒子の重なりがなかったものを「1層」とし、小径粒子の重なりがあったものを「多層」とした。
【0076】
(小径粒子間の平均距離d)
小径粒子間の平均距離dは、表層の表面写真を撮影し、任意の5箇所においてそれぞれ小径粒子間の距離を3つ測定し、合計15点の平均により表した。
【0077】
(粒子の表面粗さRa)
粒子表面を日立ハイテクサイエンス製の走査型プローブ顕微鏡「AFM5100N」で、DFMモードにてカンチレバー「SI-DF3」を用い1μm走査し、線粗さRaを導出した。
【0078】
(画像評価:横スジ)
作製した帯電ロールをコニカミノルタ製の複合機「bizhubC658」に組み込み、10℃×10%RH環境下で、印字濃度1%の罫線モードで55万枚印刷後、印字濃度25%のハーフトーン画像を印刷した。横スジ画像が確認されなかった場合を非常に良好「◎」、横スジ画像が軽微に確認されたが許容範囲内である場合を良好「○」、横スジ画像が明確に確認された場合を不良「×」とした。
【0079】
(画像評価:ムラ)
作製した帯電ロールをコニカミノルタ製の複合機「bizhubC658」に組み込み、10℃×10%RH環境下で、印字濃度1%の罫線モードで55万枚印刷後、印字濃度25%のハーフトーン画像を印刷した。ムラ画像が確認されなかった場合を非常に良好「◎」、ムラ画像が軽微に確認されたが許容範囲内である場合を良好「○」、ムラ画像が明確に確認された場合を不良「×」とした。
【0080】
(画像評価:カブリ)
作製した帯電ロールをコニカミノルタ製の複合機「bizhubC658」に組み込み、10℃×10%RH環境下で、印字濃度1%の罫線モードで55万枚印刷後、印字濃度25%のハーフトーン画像を印刷した。カブリ画像が確認されなかった場合を非常に良好「◎」、カブリ画像が軽微に確認されたが許容範囲内である場合を良好「○」、カブリ画像が明確に確認された場合を不良「×」とした。
【0081】
(画像評価:黒点)
作製した帯電ロールをコニカミノルタ製の複合機「bizhubC658」に組み込み、10℃×10%RH環境下で、印字濃度1%の罫線モードで55万枚印刷後、印字濃度25%のハーフトーン画像を印刷した。画像に黒点が確認されなかった場合を非常に良好「◎」、画像に黒点が軽微に確認されたが許容範囲内である場合を良好「○」、画像に黒点が明確に確認された場合を不良「×」とした。
【0082】
(汚れ)
作製した帯電ロールをコニカミノルタ製の複合機「bizhubC658」に組み込み、10℃×10%RH環境下で、印字濃度1%の罫線モードで55万枚印刷後、ロール外観を目視にて観察した。この際、白い外添剤の汚れがロール全面に付着しており、明らかに画像不良が生じる量である場合を不良「×」、スジ状の汚れがロール表面に微量付着しているが、白い外添剤が軽微に付着している汚れであり画像不良が生じない量である場合を良好「○」、スジ状の汚れがロール表面に発生していない場合を最も良好「◎」とした。
【0083】
【0084】
比較例1は、大径粒子上のバインダー厚aが薄すぎるため、経時摩耗によって感光体との最適な距離が維持されず、黒点画像が確認された。また、小径粒子上のバインダー厚bが薄すぎるため、放電箇所の抵抗が不均一となり、横スジ画像が確認された。比較例2は、大小粒子の粒子径差が小さすぎるため、最適な放電距離とならず、横スジ画像が確認された。比較例3は、大径粒子上のバインダー厚aが厚すぎるため、感光体とのニップ面積の増加による放電不足、帯電不良により、横スジ画像が確認された。また、小径粒子上のバインダー厚bが厚すぎるため、放電領域を確保できず、ムラ画像が確認された。比較例4は、大径粒子上のバインダー厚aが薄すぎるため、経時摩耗によって感光体との最適な距離が維持されず、黒点画像が確認された。比較例5は、大小粒子の粒子径差が大きすぎるため、最適な放電距離とならず、カブリ画像が確認された。比較例6は、大小粒子の材質が異なっており、大小粒子が凝集し、表層において小径粒子が多層に配置されているため、黒点画像が確認された。比較例7は、大小粒子がシリカ粒子からなり、大小粒子が凝集し、表層において小径粒子が多層に配置されているため、黒点画像が確認された。比較例8は、小径粒子間の距離が広すぎるため、ロール表面に汚れが確認された。比較例9は、大小粒子の材質が異なっており、大小粒子が凝集し、表層において小径粒子が多層に配置されているため、黒点画像が確認された。比較例10は、厚みbが厚みaよりも厚くなっていない。このため、黒点画像が確認された。
【0085】
これに対し、実施例は、大小粒子の粒子径差が10μm以上35μm以下であり、小径粒子は表層中に1層で配置されており、小径粒子間の平均距離が小径粒子の平均粒子径の1.2倍以下であり、大径粒子上のバインダー厚aが1.5~3.5μmの範囲内であり、小径粒子上のバインダー厚aが3.0~6.0μmの範囲内であり、厚みbが厚みaよりも厚くなっていることで、高耐久時においても横スジ・ムラ・カブリなどの異常画像が抑えられており、高寿命の高速機においてもライフエンドで良質な画像を提供できることがわかる。
【0086】
以上、本発明の実施形態・実施例について説明したが、本発明は上記実施形態・実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0087】
10 帯電ロール
12 軸体
14 弾性体層
16 表層
18 大径粒子
20 小径粒子
22 バインダー樹脂