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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】指点字システム及び指点字装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 21/00 20060101AFI20220526BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20220526BHJP
   G06F 3/02 20060101ALI20220526BHJP
【FI】
G09B21/00 B
G06F3/01 514
G06F3/02 460
G09B21/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019167136
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2020046666
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2018172342
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518330028
【氏名又は名称】一般社団法人ハートウエアラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(74)【代理人】
【識別番号】100185672
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】米山 爾
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-324922(JP,A)
【文献】特開2008-059486(JP,A)
【文献】特開平10-307530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 21/00-21/06
G06F 3/01
G06F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝達側利用者と被伝達側利用者との間で指点字を伝達する指点字システムであって、
前記伝達側利用者が指点字に係る操作入力を行うための複数の操作手段と、
前記被伝達側利用者の身体に装着可能に設けられた複数の伝達手段と、
前記操作手段による操作入力に基づいて少なくとも一の伝達手段の作動を指示する指点字信号を生成する信号生成手段と、
該信号生成手段によって生成された指点字信号に応じた伝達手段を作動させることにより前記被伝達側利用者に指点字を伝達する伝達制御手段と、を備え、
前記操作手段は、伝達側利用者の指の先端側に設けられ、指の腹を用いた伝達側利用者の動作を妨げない、
ことを特徴とする指点字システム。
【請求項2】
指点字を利用者相互で伝達する指点字装置であって、
利用者が指点字に係る操作入力を行うための複数の操作手段と、
前記利用者の身体に装着可能に設けられた複数の伝達手段と、
前記操作手段による操作入力に基づいて、他の指点字装置における少なくとも一の伝達手段の作動を指示する指点字信号を生成する信号生成手段と、
該信号生成手段が生成した指点字信号を前記他の指点字装置に送信する送信手段と、
前記他の指点字装置が送信した指点字信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した指点字信号に応じた伝達手段を作動させることにより前記利用者に指点字を伝達する伝達制御手段と、を備え、
前記操作手段は、利用者の指の先端側に設けられ、指の腹を用いた利用者の動作を妨げない、
ことを特徴とする指点字装置。
【請求項3】
請求項2に記載の指点字装置において、
前記操作手段と前記伝達手段は、利用者の指に対して一組で装着可能である、
ことを特徴とする指点字装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の指点字装置において、
前記伝達手段と前記操作手段とは互いに独立して設けられ、前記操作手段を用いた操作入力と、前記伝達手段を用いた指点字の伝達と、は並行して実行可能であることを特徴とする指点字装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一項に記載の指点字装置において、
前記信号生成手段は、前記操作手段による操作入力に基づいて文字コード情報を含む指点字信号を生成可能であり、
前記送信手段は、他の外部装置に前記文字コード情報を含む指点字信号を送信可能であり、
前記受信手段は、前記外部装置から前記文字コード情報を含む指点字信号を受信可能であり、
前記伝達制御手段は、前記受信手段が受信した指点字信号に含まれる前記文字コード情報に基づいて伝達手段を作動させることにより前記利用者に指点字を伝達することを特徴とする指点字装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指点字を利用者間で伝達可能な指点字システム及び指点字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目や耳の不自由な人や、その両方が不自由な人(盲ろう者)との間で情報伝達(会話)を行うための方法として、「指点字」が知られている。
「指点字」は、特に、所謂盲ろう者の右手、左手の人差し指、中指、薬指の甲の側に、同じ指の腹を触れさせて点字の6点の信号を伝えるものである。
すなわち、「指点字」では、1つの文字を表現する点字を構成する6個の点を、6つの指(例えば、左右の人差し指、中指、薬指)に対応させている。そして、伝達したい文字に応じて組み合わせた1以上の指で相手の身体に触れることにより、その文字を相手に伝えることが出来る。文字を表す指の組み合わせでの接触を連続的に行うことにより、一連の文字からなるフレーズを伝えることが出来る。
なお、どの点字(文字)が伝えられているかを理解可能であれば、相手の体のどの部分を、自分の身体のどの部位で触れてもよい。しかし、指点字で用いる6本の指で触れられることにより、どの文字を相手が伝えようとしているかをより直感的に理解することができる。
また昨今では、このような指点字を電気的な手段で伝達して、指点字を用いたコミュニケーションを容易化するための装置が知られている。
特許文献1には、指点字を入力するための6つのボタン(スイッチ)を備えた会話装置が開示されている。各スイッチは、それぞれ点字に対応する。また、スイッチの操作片には、振動片が設けられる。
送信側の会話装置Aにおいてボタンが操作されると、ボタン操作に応じた信号が、相手側の会話装置Bにケーブルを介して伝送される。相手の会話装置では、入力された信号に応じて、対応するスイッチに設けられた振動片が振動することで、指点字が伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-230782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の会話装置は、指点字の入力に用いるボタンが指点字の伝達手段としても用いられる。
そして、そのボタンは会話装置の装置本体に設けられているため、特に指点字を伝達される利用者は、会話中に常にボタンに触れておかねばならず、行動が著しく制限され、不便が感じられていた。例えば、ジョギングやその他スポーツなどを楽しみながら、指点字による会話を行うことは極めて難しい。
本発明は、このような問題を鑑みてなされたものであり、他の動作を行いながらも指点字による会話が可能な高い機動性、自由度を有する指点字システム及び指点字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の指点字システムは、伝達側利用者と被伝達側利用者との間で指点字を伝達する指点字システムであって、前記伝達側利用者が指点字に係る操作入力を行うための複数の操作手段と、前記被伝達側利用者の身体に装着可能に設けられた複数の伝達手段と、前記操作手段による操作入力に基づいて少なくとも一の伝達手段の作動を指示する指点字信号を生成する信号生成手段と、該信号生成手段によって生成された指点字信号に応じた伝達手段を作動させることにより前記被伝達側利用者に指点字を伝達する伝達制御手段と、を備え、前記操作手段は、伝達側利用者の指の先端側に設けられ、指の腹を用いた伝達側利用者の動作を妨げない、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成したので、本発明によれば、高い機動性、自由度を有する指点字システム及び指点字装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施例に係る指点字システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る指点字システムの電気的な構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施例に係る指点字システムの処理を説明するフローチャートである。
図4】本発明の第2の実施例に係る指点字システムの概略構成を示す図である。
図5】本発明の第2の実施例に係る指点字システムの電気的な構成を示す図である。
図6】本発明の第2の実施例に係る指点字システムの処理を説明するフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施例に係る受信信号リストと、その内容に対応した処理を説明する図である。
図8】本実施形態の双方向装置の第1の装着及び操作例を説明する図である。
図9】本実施形態の双方向装置の第2の装着及び操作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[第1の実施例]
図1は、本発明の第1の実施例に係る指点字システムの概略構成を示す図である。
第1の実施例に係るシステム1は、当該システムを用いる利用者として、伝達側利用者と、指点字にて情報の伝達を受ける被伝達側利用者と、を想定している。そして、システム1は、伝達側利用者が、被伝達側利用者に対して、指点字を一方向で伝達する構成である。被伝達側利用者は、例えば、目、耳が不自由な盲ろう者等が想定される。
システム1は、伝達側利用者など指点字を伝達する側の利用者が用いる伝達側指点字装置(以下、単に伝達者側装置と記載する)10と、被伝達側利用者など指点字を伝達される側の利用者が用いる被伝達側指点字装置(以下、単に被伝達者側装置と記載する)20と、を備えている。
【0009】
伝達者側装置10は、指点字を模した入力操作を行うためのボタン(操作手段)及びスイッチを備える入力装置11と、入力装置11に対する入力操作に基づいて指点字信号を生成し、生成した指点字信号を有線通信又は無線通信を介して被伝達者側装置20に送信するコントローラ15と、を備えている。
入力装置11は、入力装置本体(筐体)11aに対して、6つのボタン(操作手段)12a~12fを備えた構成である。ボタン12a~12fは、例えば入力装置本体11aの外表面から突出して設けられる。
【0010】
指点字では、1つの文字を表現する点字を構成する6個の点を6つの指(左右の人差し指、中指、薬指等)に対応させている。そして、伝達したい文字に応じて組み合わせた1以上の指で相手の体の一部に触れることにより、その文字を相手に伝達する。
本実施例の入力装置11は、これらの指の一本ずつに対応したボタン12a~12fを有しており、一つのボタンに対応して設けられたスイッチのオン操作/オフ操作によって指点字を模した入力操作を受け付ける。一例として、ボタン12aは伝達側利用者の左手の薬指、ボタン12bは左手の中指、ボタン12cは左手の人差し指に夫々対応する。またボタン12dは伝達側利用者の右手の人差し指、ボタン12eは右手の中指、ボタン12fは右手の薬指に対応する。
なお、図1では、一つの入力装置に対して6つのボタンを配置した構成としているが、右手用の入力装置11、左手用の入力装置11に分離し、各入力装置本体に対して3つの指用のボタン12a~12c、12d~12fを設けてもよい。
歩行中や走行中に伝達者自身が指点字の入力を行う場合、両手を用い、夫々の手のための入力装置を把持するようにした構成は好適である。
【0011】
入力装置11のスイッチは周知の構造を有する。利用者によってボタンが押下されると、ボタンに連結された接点が端子に接触してスイッチはオン状態となる。ボタンの押下が終了されると、接点が端子から離間してスイッチがオフ状態となる。
スイッチのオン状態は、指点字における対応する指の接触状態に対応し、オフ状態は、対応する指の非接触状態に対応する。
【0012】
被伝達者側装置20は、被伝達側利用者の身体に装着して指点字を伝達するための伝達部(伝達手段)25a~25fと、伝達部25の制御を行うコントローラ21と、を備えている。一例として、伝達部25aは被伝達側利用者の左手の薬指、伝達部25bは左手の中指、伝達部25cは左手の人差し指に夫々対応する。また伝達部25dは右手の人差し指、伝達部25eは右手の中指、伝達部25fは右手の薬指に対応する。
コントローラ21は、伝達者側装置10のコントローラ15が指点字信号を受信し、指点字信号に基づく駆動信号を伝達部25(25a~25f)に対して出力する。
伝達部25a~25fが備える各振動片は、伝達者側装置10から受信した指点字信号に基づいてコントローラ21から入力される駆動信号に基づいて振動することによって指点字を伝達する。
【0013】
このように、伝達者側装置10の入力装置11に入力された指点字を模した指点字信号に応じた駆動信号に基づいて振動片が振動することにより、伝達側利用者が発した指点字を被伝達側利用者は触覚によって認知する。従って、伝達側利用者、被伝達側利用者との間で指点字を用いた会話を行うことが出来る。
なお、伝達部25の指への装着方法は様々である。図1に示すように、手全体を覆うグローブ状のカバー30における指部分の内側に伝達部25を備え、このカバー30を手に装着することで、伝達部25を身体に装着することが出来る。
あるいは、指サック状のカバーの内側に伝達部25を備え、このカバーを指に被せることにより伝達部25を指に装着するようにしてもよい。
【0014】
また利用者が把持するグリップ状の本体に対して伝達部25を設ける構成としてもよい。これは利用者がランニング等の運動を行いながら指点字を受信する場合に好適である。
すなわち、本体における、利用者が把持したときに人差し指、中指、薬指が触れる箇所に凹部を設ける。そしてこれらの凹部の底部に伝達部25を備える。
このような構成によって、本体を把持することで、伝達部25の振動片を各指の腹に接触させることが出来る。この状態で振動片が振動することで、利用者は好適に指点字を認知することが出来る。
【0015】
また、上記したように、伝達者側装置10の入力装置11は、左右の手のための入力装置に分離した構成とすることが出来る。
そして、各手用の入力装置についても、利用者が把持したときに人差し指、中指、薬指があたる箇所に凹部を設けたグリップ状の構造としてもよい。
そしてこれらの凹部の底部にボタン12を備える。このような構成によって、入力装置本体を把持することで、ボタン12の操作を容易に行うことが出来、利用者は好適に指点字を入力することが出来る。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施例に係る指点字システムの電気的な構成を示す図であり、(a)は、伝達者側装置の構成を示し、(b)は、被伝達者側装置の構成を示している。
図2(a)に示すように、伝達者側装置10は、伝達側利用者が操作するための6つのボタン12a~12fに対応して設けられて、ボタンの押下操作を検知する6つのスイッチ13a~13fと、を備えている。
また、伝達者側装置10は、制御部16と、無線通信部17と、を備えている。
制御部16は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、プログラムや固定データを格納するROM(Read Only Memory)と、CPUによる実行のためにプログラムやデータを展開するワークメモリとしてのRAM(Read Only Memory)と、を備えている。
制御部16は、CPUが所定のプログラムを実行することにより、スイッチ13a~13fからの操作信号に基づいて指点字信号を生成する処理を行う。
無線通信部17は、制御部16が生成、出力した指点字信号を所定のプロトコルに基づく無線信号に重畳して、不図示のアンテナから出力する制御を行う。
【0017】
ボタン12a~12f、スイッチ13a~13fは、図1に説明した入力装置11が備える構成である。
ボタン12a~12fは、入力装置11の筐体(本体)の表面に設けられ、スイッチ13a~13fは、入力装置本体11aの内部に内蔵される。
制御部16と無線通信部17は、図1に説明したコントローラ15が備える構成であり、いずれもコントローラ15の本体(筐体)内部に収納される。
図1では、入力装置11とコントローラ15は、別体で設けられているが、これは一体で設けられてもよい。すなわち、コントローラ15の構成は、入力装置11内に内蔵されていてもよい。
入力装置11とコントローラ15とが、別体で設けられる場合、入力装置11内のスイッチと、コントローラ15内の制御部16は、入力装置11と、コントローラ15、とに設けられる不図示のコネクタを介して接続される。
【0018】
図2(b)に示すように、被伝達者側装置20は、被伝達側利用者の身体、例えば、指点字を認識するために通常用いられる左手の人差し指、中指、薬指、及び右手の人差し指、中指、薬指に装着される6つの振動片26a~26fと、これらの振動片26a~26fを振動させるためのモータ27a~27fと、を備えている。
振動片26a、モータ27aは伝達部25aを構成し、振動片26b、モータ27bは伝達部25bを構成し、振動片26c、モータ27cは伝達部25cを構成する。また、振動片26d、モータ27dは伝達部25dを構成し、振動片26e、モータ27eは伝達部25eを構成し、振動片26f、モータ27fは伝達部25fを構成する。
また、被伝達者側装置20は、制御部22と、無線通信部23と、を備えている。
制御部22は、プログラムを実行するCPUと、プログラムや固定データを格納するROMと、CPUによる実行のためにプログラムやデータを展開するワークメモリとしてのRAMと、を備えている。
制御部16は、CPUが所定のプログラムを実行することにより、受信した指点字信号基づいてモータ27を駆動し、振動片を振動させる処理を行う。
制御部22と無線通信部23は、図1に説明したコントローラ21が備える構成であり、いずれもコントローラ15の本体(筐体)内部に収納される。
【0019】
図1では、入力装置11とコントローラ15は、別体で設けられているが、これは一体で設けられてもよい。すなわち、コントローラ15の構成は、入力装置11内に内蔵されていてもよい。
入力装置11とコントローラ15とが、別体で設けられる場合、入力装置11内のスイッチと、コントローラ15内の制御部16は、入力装置11と、コントローラ15、とに設けられる不図示のコネクタを介して接続される。
無線で接続される場合、コントローラ15と、コントローラ21と、の間の無線通信は、Bluetooth(登録商標)で実現される。
周知のようにBluetooth(登録商標)は、カップリングされた機器間でのみ通信を行うプロトコルである。従って、狭い空間内で、複数の伝達者側装置、被伝達者側装置が使用されても、本来の会話の相手以外の指点字信号が入力されて会話の妨げになるようなことは起こりえない。
【0020】
以下に、本実施例における処理を詳細に説明する。
なお、指点字は、点字を構成する6つの点のうちの、一以上の点の組み合わせを指の接触によって相手に伝え、1つの文字を伝達するものである。
従って、一例として、本実施例の指点字信号は、一以上のボタンが同時または略同時に操作されることによって発生する一以上の操作信号に基づいて、被伝達者側装置20一以上の伝達部の駆動を指示する信号となり得る。
指点字信号を受信した被伝達者側装置20は、指定される伝達部を所定時間、作動させて指点字を伝達する。
【0021】
下記に説明する被伝達者側装置20のコントローラは、受信した指点字信号を制御部のRAM内に設定した受信信号リストに格納する。そして、受信信号リストに対する格納順で指点字信号に基づく駆動信号を出力する。このようにすることで、指点字の順番が前後することなく、忠実に、指点字を再現することが出来る。
複数のボタンに対する一連の操作が、一の指点字信号に含めるべき一つの文字を表すための「同時」の操作であると見なすか否かは、例えば、ボタン操作に応じた操作信号の入力の間隔が、所定時間以内に行われたか否か基づいて決定することが出来る。
また、一つの文字が複数の指の接触(複数のボタン操作及び複数の操作信号)で表現される場合であっても、一つの操作信号毎に一つの指点字信号を送るようにしてもよい。
【0022】
また、指点字信号は、一つの文字あるいは一つの点に関する入力毎に生成出力されるのではなく、入力装置11における全てのスイッチのオン状態/オフ状態を指定するものであってもよい。
伝達者側装置10は、このような指点字信号を常に被伝達者側装置20に送信する。
指点字信号を受信した被伝達者側装置20は、指点字信号で指定されるスイッチのオン状態/オフ状態に応じて、対応する伝達部を作動させることで指点字を伝達する。
【0023】
図3は、本発明の第1の実施例に係る指点字システムの処理を説明するフローチャートであり、(a)は、伝達者側装置の制御部による処理フローを示し、(b)は、被伝達者側装置の制御部による処理フローを示し、(c)は、第1の実施例に係る受信信号リストと、その内容に対応した処理を示している。
図3(a)において、伝達者側装置10の制御部16は、ステップS11において、ボタン12a~12fの何れかが操作されて、対応するスイッチ13a~13fの何れかからの操作信号が入力されたか否かを判定する。
操作信号の入力があったと判定した場合(ステップS11でYes)、制御部16は、ステップS12において、操作信号に対応する指点字信号を無線通信部17に出力して、被伝達者側装置20に対して送信する。
【0024】
図3(b)において、被伝達者側装置20の制御部22は、ステップS21において、他装置(伝達者側装置10)から指点字信号を受信したか否かを判定する。
指点字信号を受信したと判定した場合(ステップS21でYes)、制御部22は、ステップS22において、指点字信号の内容を受信信号リストの最後尾に追加して処理を終了する。
指点字信号を受信していないと判定した場合(ステップS21でNo)、制御部22は、ステップS23において、受信信号リスト内のすべての指点字信号を処理したか否かを判定する。
すべての指点字信号を処理していないと判定した場合(ステップS23でNo)、制御部22は、ステップ24において、受信信号リストの先頭における指点字信号の内容に対応するモータを駆動させる駆動信号を出力する。
そして、制御部25は、ステップ25において、処理済みの指点字信号を受信信号リストから消去する。
すべての指点字信号を処理したと判定した場合(ステップS23でYes)、制御部22は、そのまま処理を終了する。
【0025】
図3(c)において、(c-1)は受信信号リストを示し、(c-2)は対応する処理を示している。
例えば、(c-1)の受信信号リストにおいて、制御部22に対する入力順1に、伝達者側装置10から受信した指点字信号が格納されている。この信号は、伝達者側装置10でスイッチ13aがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部16は、指点字信号で指定されるスイッチ13aに対応するモータ27aを駆動する駆動信号を出力する。
制御部22に対する入力順2に、伝達者側装置10から受信した指点字信号が格納されている。この信号は、伝達者側装置10でスイッチ13fがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部16は、指点字信号で指定されるスイッチ13fに対応するモータ27fを駆動する駆動信号を出力する。
【0026】
制御部22に対する入力順3に、伝達者側装置10から受信した指点字信号が格納されている。この信号は、伝達者側装置10でスイッチ13bがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部16は、指点字信号で指定されるスイッチ13bに対応するモータ27bを駆動する駆動信号を出力する。
制御部22に対する入力順4に、伝達者側装置10から受信した指点字信号が格納されている。この信号は、伝達者側装置10でスイッチ13cがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部22は、指点字信号で指定されるスイッチ13cに対応するモータ27cを駆動する駆動信号を出力する。
【0027】
図3(c-1)の受信信号リストに含まれる指点字信号は、一つのスイッチ(1つの点を使った文字)が指定されているもののみが表示されている。
しかしながら、上記したように、複数のスイッチが所定の時間的条件を満たしてオン操作されることで、一つの指点字信号に複数のスイッチのオン操作が指定される場合もある。その場合、制御部22は、指点字信号で指定される複数のスイッチに対応する複数のモータを駆動する駆動信号を出力する。
なお、図3の説明は、伝達者側装置10が、一つの文字あるいは一つの点に関する入力毎に指点字信号を生成、出力し、それを被伝達者側装置20が受信する場合の説明である。
伝達者側装置10が全てのスイッチのオン状態/オフ状態を示す信号が常に送信する場合、上記のような処理は行われない。
制御部22は、指点字信号で指定されるスイッチのオン状態/オフ状態に応じて、対応するモータを駆動する。指点字信号においてオン状態と指定されている間は、当該モータを継続して駆動し、指点字信号においてオフ状態と指定されると、当該モータの駆動を停止する。
【0028】
以上説明した第1の実施例の指点字システムでは、特に、被伝達者側装置20において、振動部を被伝達側利用者の身体の一部に装着可能な構成としたことにより、他の動作を行いながらも指点字を受信可能な高い機動性、自由度を実現することが出来る。
伝達者側装置10のボタン及び入力装置11として、後述する第2の実施例で説明する、伝達側利用者の指の腹等、身体の一部に装着するボタン及びスイッチを用いることも出来る。
このようなボタン及びスイッチを用いることで、伝達側利用者に対しても、他の動作を行いながらも指点字を送信可能な高い機動性、自由度を実現することが出来る。
【0029】
また、本実施形態の入力装置11は、実際の指点字で用いる6つの指に対応した6つのボタンを備えている。よって、指点字における一つの指の操作に相当する操作信号を個別に入力可能である。そして、その操作信号に基づく指点字は、被伝達者側装置20における対応する伝達部で忠実に再現される。従って、伝達側利用者は、実際に相手の身体に触れて行う指点字と同じ感覚で、指点字の入力を行うことが出来る。
【0030】
第1の実施例の指点字システムは、指点字において、高い機動性、自由度を実現可能であるが、そこで行われる会話は、以下のようなスタイルとなる。すなわち、一方の利用者が自身の会話装置を使用して一方的に発言を行い、他方の利用者は、その間、自身の会話装置を使用してその発言を聞いている。発言を聞いていた利用者は、発言をしていた利用者が、発言を終了した後、発言を開始できる。
これは、会話として非常に一方向的であり、通常の会話とは異なるものである。
下記に説明する第2の実施例では、指点字を用いた双方向かつリアルタイムの発言が可能であり、利用者同士でより自然な会話を楽しみ得る指点字装置を説明する。
また、指点字信号は文字コードとして、伝達者側装置10と被伝達者側装置20の間で送受信されてもよい。文字と文字の間には所定のデリミタが挿入される。
送信を行う伝達者側装置10では、6つのスイッチによる操作信号を組み合せて表現される文字に対応した文字コードをコントローラ15が生成して指点字信号として送信する。文字コードを含む指点字信号を受信した被伝達者側装置20では、コントローラ21が文字コードに対応した文字を表現するために作動させるモータを決定し、これらを駆動させる。
コントローラ55は、文字に対する文字コード(UTF8)の組み合わせを関連づけたテーブルを例えばROMに保持している。
伝達者側装置10における入力部の操作に応じて入力された文字に対応する文字コードが送信されて、被伝達者側装置20におけるモータが動作することで、指点字による会話が行われる。
【0031】
[第2の実施例]
図4は、本発明の第2の実施例に係る指点字システムの概略構成を示す図である。
第2の実施例に係るシステム2は、利用者間で双方向にて指点字を伝達しあうための構成を有する。
図4に示す本実施例の指点字システムは、一の利用者が利用する双方向指点字装置(以下、単に双方向装置と記載する)50Aと、他の利用者が利用する双方向装置50Bと、を備える。
双方向装置50Aと双方向装置50Bは、同一の構成を備えており、いずれも利用者が指点字を入力するための入力部51と、他の双方向装置から受信した指点字を振動によって利用者に伝達する伝達部52と、を備えている。
【0032】
双方向装置50を詳細に説明する。
入力部51は、左手用の入力部51a~51cと、右手用の入力部51d~51fと、を含み、伝達部52は、左手用の伝達部52a~52cと、右手用の伝達部52d~52fと、を含む。
各入力部51は、利用者が操作するボタン(操作手段)と、ボタン操作に応じてオン操作/オフ操作され、オン操作時に操作信号を出力するスイッチと、を備える。
また、各伝達部52は、利用者の身体に接触し、振動によって利用者に指点字を伝達する振動片と、振動片を振動させるモータと、を備える。
上記のように、指点字は、一般に、左手の人差し指、中指、薬指、及び右手の人差し指、中指、薬指の合計6本の指による指示を組み合わせて行われる。
左手用の入力部51a~51c及び右手用の入力部51d~51fは、これらの指の一本ずつに対応し、利用者左手の人差し指、中指、薬指、及び右手の人差し指、中指、薬指にそれぞれ装着される。入力部が含む各ボタンが操作されることにより、指点字の入力が行われる。一例として、入力部51aは左手の薬指、入力部51bは左手の中指、入力部51cは左手の人差し指に対応する。また入力部51dは右手の人差し指、入力部51eは右手の中指、入力部51fは右手の薬指に対応する。
また、左手用の伝達部52a~52c及び右手用の伝達部52d~52fも、これらの指の一本ずつに対応し、利用者の左手の人差し指、中指、薬指、及び右手の人差し指、中指、薬指にそれぞれ装着される。
例えば、伝達部52aは左手の薬指、伝達部52bは左の中指、伝達部52cは左手の人差し指に対応する。また伝達部52dは右手の人差し指、伝達部52eは右手の中指、伝達部52fは右手の薬指に対応する。
他の双方向装置から入力される指点字信号に基づいて振動片が振動することにより、指点字を利用者に伝達する。
【0033】
また、双方向装置50は、指点字による会話を実現するために双方向装置50を制御するコントローラ55を備えている。
コントローラ55は、右手用の入力部51d~51f及び左手用の入力部51a~51cの操作に基づく操作信号に基づいて指点字信号を生成し、生成した指点字信号を有線又は無線にて、他の双方向装置に送信する。
さらに、コントローラ55は、他の双方向装置50から出力された指点字信号を受信し、受信した指点字信号に基づく駆動信号を、左手用の伝達部52a~52c及び右手用の伝達部52d~52fに出力する制御を行う。
伝達部52a~52fは、コントローラ55からの駆動信号に基づいて振動する。
各双方向装置において、指点字の入力がリアルタイムに行われ、入力に基づく指点字信号が互いの双方向装置に入力されて、駆動信号に基づいて、振動片が振動する。
これにより、双方向装置50の利用者間で指点字による会話をリアルタイムに行い、意思の疎通を行うことが出来る。
【0034】
図5は、本発明の第2の実施例に係る指点字システムの電気的な構成を示す図である。
双方向装置50は、図4に示される6つのボタン60a~60fと、これらの6つのボタンに対応して設けられて、ボタンの押下操作を検知する6つのスイッチ61a~61fと、を備えている。
ボタン60a、スイッチ61aは入力部51aを構成し、ボタン60b、スイッチ61bは入力部51bを構成し、ボタン60c、スイッチ61cは入力部51cを構成する。また、ボタン60d、スイッチ61dは入力部51dを構成し、ボタン60e、スイッチ61eは入力部51eを構成し、ボタン60f、スイッチ61fは入力部51fを構成する。
【0035】
また双方向装置50は、図4に示される6つの振動片62a~62fと、これら6つの振動部を振動させる6つのモータ63a~62fと、を備えている。
振動片62a、モータ63aは伝達部52aを構成し、振動片62b、モータ63bは伝達部52bを構成し、振動片62c、モータ63cは伝達部52cを構成する。また、振動片62d、モータ63dは伝達部52dを構成し、振動片62e、モータ63eは伝達部52eを構成し、振動片62f、モータ63fは伝達部52fを構成する。
【0036】
さらに、双方向装置50は、制御部56と、無線通信部57と、を備えている。
制御部56は、プログラムを実行するCPUと、プログラムや固定データを格納するROMと、CPUによる実行のためにプログラムやデータを展開するワークメモリとしてのRAMと、を備えている。
制御部56は、CPUが所定のプログラムを実行することにより、スイッチ61a~61fからの操作信号に基づいて指点字信号を生成する処理を行う。
無線通信部57は、制御部56が生成、出力した指点字信号を所定のプロトコルに基づく無線信号に重畳して、不図示のアンテナから出力する制御を行う。
制御部56と無線通信部57は、図4に説明したコントローラ55が備える構成であり、いずれもコントローラ55の本体(筐体)内部に収納される。
無線で接続される場合、コントローラ55同士、すなわち双方向装置50同士の間の無線通信は、Bluetooth(登録商標)で実現される。
周知のようにBluetooth(登録商標)は、カップリングされた機器間でのみ通信を行うプロトコルである。従って、狭い空間内で、複数の双方向装置50が使用されても、本来の会話の相手以外の指点字信号が入力されて会話の妨げになるようなことは起こりえない。
【0037】
なお、一例として、指点字信号は、一以上のボタンが同時または略同時に操作されることによって発生する一以上の操作信号に基づいて、双方向装置50における一以上の伝達部の駆動を指示する信号である。
指点字信号を受信した双方向装置50は、指定される伝達部を所定時間、作動させて指点字を伝達する。
双方向装置50のコントローラ55は、受信した指点字信号を制御部のRAM内に設定した受信信号リストに格納する。そして、受信信号リストに対する格納順で指点字信号に基づく駆動信号を出力する。このようにすることで、指点字の順番が前後することなく、忠実に、指点字を再現することが出来る。
複数のボタンに対する一連の操作が、一の指点字信号に含めるべき一つの文字を表すための「同時」の操作であると見なすか否かは、例えば、ボタン操作に応じた操作信号の入力の間隔が、所定時間以内に行われたか否か基づいて決定することが出来る。
また、一つの文字が複数の指の接触(複数のボタン操作及び複数の操作信号)で表現される場合であっても、一つの操作信号毎に一つの指点字信号を送るようにしてもよい。
【0038】
また、指点字信号は、一つの文字あるいは一つの点に関する入力毎に生成出力されるのではなく、双方向装置50における全てのスイッチのオン状態/オフ状態を指定するものであってもよい。
双方向装置50は、このような指点字信号を常に他の双方向装置50に送信する。
指点字信号を受信した双方向装置50は、指点字信号で指定されるスイッチのオン状態/オフ状態に応じて、対応する伝達部を作動させることで指点字を伝達する。
【0039】
また、下記に説明するように、指点字信号は文字コードとして双方向装置50間で送受信されてもよい。文字と文字の間には所定のデリミタが挿入される。
送信を行う双方向装置50では、6つの入力部51a~51fによる操作信号を組み合せて表現される文字に対応した文字コードをコントローラ55が生成して指点字信号として送信する。文字コードを含む指点字信号を受信した双方向装置50では、コントローラ55が文字コードに対応した文字を表現するために作動させる伝達部52a~52fを決定し、これらを駆動させる。
コントローラ55は、文字に対する文字コード(UTF8)の組み合わせを関連づけたテーブルを例えばROMに保持している。
一方の双方向装置50における入力部51a~51fの操作に応じて入力された文字に対応する文字コードが送信されて、もう一方の(他方の)双方向装置50における伝達部52a~52fが動作することで、指点字による会話が行われる。
【0040】
図6は、本発明の第2の実施例に係る指点字システムの処理を説明するフローチャートであり、(a)は、双方向装置の制御部による信号入力時処理のフローを示し、(b)は、双方向装置の制御部による双方向点字処理のフローを示している。
(a)において、制御部56は、ステップS51において、信号入力があったか否かを判定する。
信号入力があったと判定した場合(ステップS51でYes)、制御部56は、ステップS52において、入力された信号が、他装置(相手先の双方向装置)から受信された指点字信号であるか否かを判定する。
他装置から指点字信号が入力されたと判定した場合(ステップS52でYes)、制御部56は、ステップS54において、指点字信号が示す内容を、RAM内にセットされた受信信号リストの最後尾に追加する。
他装置から指点字信号が入力されていないと判定した場合(ステップS51でNo)、制御部56は、ステップS53において、入力された信号が自装置のスイッチからの操作信号であるか否かを判定する。
操作信号が入力されたと判定した場合(ステップS53でYes)、制御部56は、ステップS54において、操作信号が示す内容を受信信号リストの最後尾に追加する。
【0041】
(a)に示す処理によって、受信信号リストが生成される。
受信信号リストは、当該双方向装置におけるボタン操作に係る操作信号と、相手方の双方向装置からの指点字信号を、制御部56に対する入力順でリスト化したものである。
受信信号リストに示される順番で対応する制御を行うことで、指点字の送受信を実際の会話のようにリアルタイムかつ双方向に実施することができる。また、一の双方向装置で入力された指点字の順番を、他の双方向装置で正確かつ忠実に再現することが出来、円滑な会話を実現することが出来る。
【0042】
(b)において、制御部56は、ステップS61において、受信信号リストの先頭は、他装置から受信された指点字信号の内容であるか否かを判定する。
受信信号リストの先頭が他装置から受信された指点字信号の内容であると判定した場合(ステップS61でYes)、制御部56は、ステップS62において、指点字信号に対応するモータを駆動させる駆動信号を当該モータに対して出力する。
そして、制御部56は、ステップS63において、処理済みの受信信号(ここでは、指点字信号)の内容を受信信号リストから削除する。
ステップS61において、受信信号リストの先頭が他装置から受信された指点字信号の内容ではない判定した場合(ステップS61でNo)、制御部56は、ステップS65において、受信信号リストの先頭は、自装置で入力されたスイッチの操作信号の内容であるか否かを判定する。
【0043】
受信信号リストの先頭が、自装置で入力されたスイッチの操作信号の内容であると判定した場合(ステップS65でYes)、制御部56は、ステップS66において、操作信号に対応する指点字信号を出力する。
ステップS66の処理のあと、制御部56は、ステップS63において、処理済みの受信信号(ここでは、操作信号)の内容を受信信号リストから削除する。
そして、制御部56は、ステップS64において受信信号リストの全ての内容を処理したか否かを判定する。
全ての内容を処理したと判定した場合(ステップS64でYes)、制御部56は、処理を終了する。
処理していない内容が受信信号リストにあると判定した場合(ステップS64でNo)、制御部56は、ステップS61に処理を戻す。
【0044】
図7は、受信信号リストと、その内容に対応した処理を説明する図であり、(a)は受信信号リストの一例を示し、(b)は受信信号リストに対応する処理の一例を示している。
例えば、(a)の受信信号リストにおいて、制御部56に対する入力順1に、他装置から受信した指点字信号が格納されている。この信号は、他装置でスイッチ61aがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、指点字信号で指定されるスイッチ61aに対応するモータ63aを駆動する駆動信号を出力する。
制御部56に対する入力順2に、他装置から受信した指点字信号が格納されている。この信号は、他装置でスイッチ61fがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、指点字信号で指定されるスイッチ61fに対応するモータ63fを駆動する駆動信号を出力する。
【0045】
制御部56に対する入力順3に、自装置の操作信号が格納されている。この信号は、自装置でスイッチ61bがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、操作信号と同じ指定されるスイッチ61bを指定する指点字信号を出力する。
制御部56に対する入力順4に、自装置の操作信号が格納されている。この信号は、自装置でスイッチ61bがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、操作信号で指定されるものと同じスイッチ61bを指定する指点字信号を出力する。
制御部56に対する入力順5に、自装置の操作信号が格納されている。この信号は、自装置でスイッチ61dがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、操作信号と指定されるものと同じスイッチ61dを指定する指点字信号を出力する。
【0046】
制御部56に対する入力順6に、他装置から受信した指点字信号が格納されている。この信号は、他装置でスイッチ61bがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、指点字信号で指定されるスイッチ61bに対応するモータ63bを駆動する駆動信号を出力する。
制御部56に対する入力順7に、他装置から受信した指点字信号が格納されている。この信号は、他装置でスイッチ61cがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、指点字信号で指定されるスイッチ61cに対応するモータ63cを駆動する駆動信号を出力する。
【0047】
制御部56に対する入力順8に、自装置の操作信号が格納されている。この信号は、自装置でスイッチ61bがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、操作信号で指定されるものと同じスイッチ61bを指定する指点字信号を出力する。
制御部56に対する入力順9に、自装置の操作信号が格納されている。この信号は、自装置でスイッチ61bがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、操作信号で指定されるものと同じスイッチ61bを指定する指点字信号を出力する。
制御部56に対する入力順10に、自装置の指点字信号が格納されている。この信号は、自装置でスイッチ61dがオン操作されたことを示している。それに対して、制御部56は、操作信号と同じ指定されるスイッチ61dを指定する指点字信号を出力する。
【0048】
図7(a)の受信信号リストに含まれる指点字信号は、一つのスイッチ(1つの点を使った文字)が指定されているもののみが表示されている。
しかしながら、上記したように、複数のスイッチが所定の時間的条件を満たしてオン操作されることで、一つの指点字信号に複数のスイッチのオン操作が指定される場合もある。その場合、制御部56は、指点字信号で指定される複数のスイッチに対応する複数のモータを駆動する駆動信号を出力する。
【0049】
図6図7の説明は、一の双方向装置50が、一つの文字あるいは一つの点に関する入力毎に指点字信号を生成、出力し、それを他の双方向装置50が受信する(双方向装置50間でそのような指点字信号を相互に送信しあう)場合の説明である。
双方向装置50間で、全てのスイッチのオン状態/オフ状態を示す信号を常に送信しあう場合、上記のような処理は行われない。
制御部56は、他の双方向装置50から受信した指点字信号で指定されるスイッチのオン状態/オフ状態に応じて、対応するモータを駆動する。指点字信号においてオン状態と指定されている間は、当該モータを継続して駆動し、指点字信号においてオフ状態と指定されると、当該モータの駆動を停止する。
【0050】
上記のように指点字信号に文字コードを用いる場合、基本的には図6図7と同様の処理が可能である。
ただし、自装置の一つのスイッチの操作信号が受信信号リストに追加されたあと(ステップS54)、指点字信号として一つずつ送信されるのではない。
受信信号リストの先頭に存在する複数のスイッチの操作による操作信号(デリミタで他の操作信号とは区切られている)で表現される文字に対応する文字コードが指点字信号として生成され(ステップS66)、送信される。
一方、他装置からの受信した指点字信号はそのまま受信信号リストに追加される(ステップS54)。そして、指点字信号としての文字コードに対応する文字を表現するための1以上の駆動信号が出力される(ステップS62)。
【0051】
図8は、本実施形態の双方向装置50の第1の装着及び操作例を説明する図である。
双方向装置50における振動部とボタンを指に装着する場合を示している。
(a)に示すように、利用者は、自身の人差し指、中指、薬指の甲側に、振動部を装着する。図8(b)に示すように、指の腹側には、入力部を装着している。
振動部、入力部の装着方法は様々である。図8に示すように指サック状のベースに入力部51及び伝達部52を備えた状態で、このベースを指に装着してもよいし、グローブ状の手全体を覆うカバーの指部分に、入力部51及び伝達部52を装着してもよい。
指の甲側に装着された伝達部52が振動することによって、相手側が送信した指点字を触覚的に受け取ることが出来る。
その一方で、スイッチを設けた指を図8(b)に示すように折り曲げ、手の平を押す動作を行うことで、利用者は、スイッチに対するオン操作/オフ操作を行い、自身の指点字を入力することが出来る。
入力部51及び伝達部52を備えた指を開閉することのみで、指点字を送信することが出来、且つ、指に対する振動を感じることで指点字を受信することが出来る。
これにより、ランニング等の運動や歩行中であっても、指点字を用いた会話を無理なく行うことが出来る。
【0052】
また、図8に示す双方向装置50では、指を折り曲げて入力部51による入力を行うのではなく、例えばピアノを演奏するように机の上に指の腹を押しつけることで、入力部51による入力を行うことも出来る。
指の腹に入力部51を装着することにより、着席した状態では、指点字による会話を無理なく行うことが出来る。
また、本実施形態の双方向装置50は、実際の指点字で用いる6つの指に対応した6つのボタンを備えている。よって、指点字における一つの指の操作に相当する操作信号を個別に入力可能である。そして、その操作信号に基づく指点字は、相手方の双方向装置50における対応する伝達部で忠実に再現される。従って、伝達側利用者は、実際に相手の身体に触れて行う指点字と同じ感覚で、指点字の入力を行うことが出来る。
【0053】
図8を用いて、振動部、入力部の第1の装着態様を例示する。
指に装着可能な指サック状のベース部材100において、指の腹側の内周面に、入力部51(少なくともボタン60)を設置する。
さらに、ベース部材100において、指の甲側の外周面に、伝達部52を備える。
そして、必要に応じて、伝達部52を固定するためのアウター部材101を、ベース部材100の甲側に設ける。伝達部52は、ベース部材100とアウター部材101との間に挟まれることで、好適に固定される。
このような構成とすることで、指サック状のベース部材を指に装着することにより、簡単に本実施形態の指点字を実施することができる。
また、振動部、入力部の装着態様は、上記第1の実施例にも適用することが出来る。
伝達者側装置10では、ベース部材に100に対して少なくともボタン及びスイッチ(少なくともスイッチ)を設けたものを入力装置11として用いることが出来る
また、被伝達者側装置20では、ベース部材に100に対して伝達部25のみを設けたものを用いることが出来る。
また、上記の説明では、被伝達側装置、双方向装置50に6つの伝達部を設けて指点字の伝達を行ったが、それに限らず、左用、右用の2つの伝達部を設け、歩行時や走行時の進行方向や、減速停止といたサインを利用者に伝達可能としてもよい。
また、被伝達側装置20、双方向装置50において、伝達部の設置箇所は、指に限定されることはない。耳や首、背中など6点の指点字を認知できる箇所であれば問題なく適用出来る。
その場合、伝達部は、衣服に備え付けたり、吸着パッドのようなものを備えたり、ヘッドフォン状のベースに取り付けることが考えられる。
【0054】
上記したように、本実施形態の双方向装置50はウェアラブルであり機動力を有する。
本実施形態の双方向装置50を用いることによりランニング等の運動やその他の動作を行いながら、リアルタイムで発言を行いつつ、相手の発言を「聞く」双方向のコミュニケーションを実現することが出来る。
目や耳が不自由であっても本実施形態のシステムを用いることで他者と意思疎通を行いながら、運動や様々な活動に取り組むことが出来る。
【0055】
図9は、本実施形態の双方向装置50の第2の装着及び操作例を説明する図である。
双方向装置50における振動部とボタンを指先に装着する場合を示している。
図9の構成は、図8の構成を基本としており、指先に装着された入力部51及び伝達部52の配置のみを示している。
図9(a)に示すように、利用者は、自身の人差し指、中指、薬指の甲側に振動部を装着する。また、利用者は指先の先端部に、入力部を装着している。
振動部、入力部の装着方法は様々である。図9に示すように指サック状のベースに入力部51及び伝達部52を備えた状態で、このベースを指に装着してもよい
指の甲側に装着された伝達部52が振動することによって、相手側が送信した指点字を触覚的に受け取ることが出来る。
その一方で、図9(a)に示すように、入力部51を構成するボタン60a~60fが指先から突出した構成となっている。利用者は、自身の指先を物体や壁面に対して押しつける動作を行うことで、スイッチに対するオン操作/オフ操作を行い、指点字を入力することが出来る。
【0056】
図9(a)を用いて、振動部、入力部の第2の装着態様を例示する。
指に装着可能な指サック状のベース部材110に対して、指の甲側から指の先端部までを覆うようなアウター部材111を設ける。
指先の先端側におけるアウター部材111には入力部51(少なくともボタン60)を設置する。ベース部材110において指の甲側の内面側に伝達部52を備える。あるいは伝達部52は、指の甲側においてアウター部材111に内蔵される。
このような構成とすることで、簡単に本実施形態の指点字を実施することができる。
【0057】
図9に示した双方向装置50では、入力部51を指先の先端部に設けて腹の部分をフリーにしたことで、通常指の腹で行う指点字を必要に応じて双方向装置50を装着した状態で行うことが出来る。
図9(b)に示すように、指先に備えた入力部51(少なくともボタン60)を任意の物体(机面や壁面、床面など)に押しつけることで指点字を送信することが出来、且つ、伝達部52による指に対する振動を感じることで指点字を受信することが出来る。指点字の入力と受信を同時に行うことが出来る。
図8に示した双方向装置50も十分にウェアラブルであり機動力を有するものである。しかし、図9の例ではさらに指の腹がフリーの状態となっているので、双方向装置50を装着した状態で、図9(c)に示すようにPC(Personal Computer)のキーボードに対してキー入力を行ったり、各種のボタン類を操作したり、あるいはドリンク類のキャップを開け閉めしたりする動作が妨げられることがない。日常生活の中でより自然なかたちで、双方向装置50を用いて指点字によるコミュニケーションを行うことが出来る。
【0058】
また上記では、双方向装置50同士で無線通信を行って指点字信号を送受信する構成を説明した。
それに限らず、本実施形態の双方向装置50は、無線通信部57を介して外部通信端末(スマートフォン、PC等)とBluetooth(登録商標)による通信を行い、指点字信号を送受信することが出来る。この場合、指点字信号は文字コード(UTF8)として送受信されることが好ましい。
双方向装置50は、接続モードを変更することにより接続先を他の双方向装置50から外部通信端末に変更することが出来る。双方向装置50は、接続モードを利用者に設定されるためのスイッチを、コントローラ55にさらに有する。
利用者のスイッチ操作によって外部装置との接続モードが設定され、外部通信端末と接続(ペアリング)されている場合を説明する。
外部通信端末が文字コードで表現されたテキストデータを双方向装置50に対して送信し、双方向装置50がこれを受信すると、コントローラ55は文字コード(UTF8)に対応する文字に基づいて動作させる伝達部52a~52fを決定し、駆動させる。
【0059】
コントローラ55は、文字とその文字に対応する文字コード(UTF8)とを関連づけたコードテーブルを例えばROMに保持している。
人の声やラジオ、テレビ等の音声をスマートフォンで集音し、これらの音声をスマートフォンが備える音声認識機能によってテキスト化し、それを文字コードに変換して双方向装置50に送信することが出来る。双方向装置50では、受信した文字コードに対応する文字を指点字として利用者に伝達するので、利用者は、上記の音声をそのまま指点字として受容して楽しむことが出来る。
【0060】
逆に、双方向装置50が指点字の送信を行う場合には、6つの入力部51a~51fによる操作信号の組み合わせで表現される文字に対応する文字コード(UTF8)をコントローラ55が生成して、指点字信号として送信する。その際には、上記のコードテーブルを用いることが出来る。
スマートフォンは、双方向装置50から送信された文字コードで特定される文字を、音声として出力したりテキストとして表示したりすることが出来る。双方向装置50の利用者は、指点字を入力することによって、目や耳の何れかが不自由でない相手とより円滑にコミュケーションをとることが出来る。
【0061】
なお、双方向装置50の伝達部52が備えるモータ63は、トルクや回転数などを変化させる制御が可能である。モータの振動態様のアナログ変化を利用して、双方向装置50を装着する利用者に「臨場感」を与えたり、「情緒的効果」を実現したりすることが出来る。
例えば、双方向装置50が備える入力部51のスイッチには、単なるボタン操作のON/OFFのみならず、ボタンに対する押圧操作の強弱を電圧値に変換した操作特性情報を含んだ操作信号を出力可能な圧電センサを用いる。押圧操作の長さを検知してもよい。
一方の双方向装置50のコントローラ55は、入力された操作信号に含まれる、押圧操作の強弱や長さを含む「操作特性情報」をボタン毎に検出し、指点字信号に操作特性情報を含ませて他方の双方向装置50に送信する。
指点字信号が文字コードとして送信される場合には、文字に対応する指点字を順に行ったときのボタン毎の操作特性情報を指点字信号に含ませることが出来る。
指点字信号を受信した他方の双方向装置50では、受信した指点字信号に含まれる操作特性情報に基づいて、伝達部52に与える駆動信号に、モータのトルクや回転数などを変化させる制御情報を含ませることが出来る。
このようにすることで、利用者は、単純に指点字の内容を受容するのみならず、指点字の強弱や長さなど相手の個性や状態までをも体感でき、臨場感のあるコミュニケーションを実現することが出来る。
【0062】
さらに、モータ63のトルクや回転数などを変化させる制御が可能であることに関連して、本実施形態に係る双方向装置50は指点字以外の用途に用いることが出来る。下記に説明する応用にあって、本実施形態の双方向装置50は、振動式触覚提示インターフェースとして、盲ろう者だけでなく、視覚障害者やろう者、健常者にも情報チャンネルを補完する意味で非常に有益である。
上記のように、本実施形態の双方向装置50は、外部通信端末(スマートフォン、PC等)とも接続することが出来る。外部通信端末はゲーム機であってもよい。
外部通信端末が送信する指点字信号は、キャラクタのセリフやシナリオを指点字で伝達するものであってもよいが、必ずしもテキストを指点字で伝達するのではなく、利用者の指や身体の一部に任意の情報を振動で伝達するものとすることが出来る。
例えばゲームの内容や、利用者の操作に対するフィードバックとして、外部通信端末から双方向装置50に与える指点字信号に、利用者に与えるべき振動の特性を示す情報を含ませる。指点字信号を受信した双方向装置50のコントローラ55は、伝達部52に与える駆動信号に、モータのトルクや回転数などを変化させる制御情報を含ませる。利用者は、指点字に限られない様々な情緒的刺激を得ることが出来る。
【符号の説明】
【0063】
1、2…システム、10…伝達者側装置、11…入力装置、12a~12f…ボタン、13a~13f…スイッチ、15…コントローラ、16…制御部、17…無線通信部、20…被伝達者側装置、21…コントローラ、22…制御部、23…無線通信部、25…伝達部、26a~26f…振動片、27a~27f…モータ、30…カバー、50A…双方向装置、50B…双方向装置、51a~51f…入力部、52a~53f…伝達部、55…コントローラ、56…制御部、57…無線通信部、60a~60f…ボタン、61a~61f…スイッチ、62a~62f…振動片、63a~64f…モータ
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