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特許7079778ワクチンアジュバントとしての成長ホルモン分泌促進因子ペプチドの使用。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】ワクチンアジュバントとしての成長ホルモン分泌促進因子ペプチドの使用。
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20220526BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20220526BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220526BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220526BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20220526BHJP
【FI】
A61K39/39
A61K39/02
A61K39/12
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P37/04
C07K7/06 ZNA
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019522853
(86)(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 CU2017050006
(87)【国際公開番号】W WO2018082719
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】CU-2016-0161
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(73)【特許権者】
【識別番号】304012895
【氏名又は名称】セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス ロドリゲス、レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス ペレス、リズ
(72)【発明者】
【氏名】ギル ゴンザレス、ラザロ
(72)【発明者】
【氏名】カプリオ ゴンザレス、ヤミーラ
(72)【発明者】
【氏名】エストラーダ ガルシア、マリオ、パブロ
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】Biochemistry and biophysics reports,2016年03月,Vol. 5, pp. 379-387
【文献】Journal of Endocrinology,2012年,Vol.214, No.3, pp.409-419
【文献】Aquaculture,2016年02月,Vol. 452, pp. 304-310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61P 1/00-43/00
C07K 7/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクチンの製造における分子アジュバントとしての、配列番号:1又は配列番号:2として同定された成長ホルモン分泌促進ペプチドの使用。
【請求項2】
前記ワクチンが、感染性病原体によって引き起こされる疾患の予防において使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記疾患が、哺乳類、鳥類又は魚類に影響する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
配列番号:1又は配列番号:2として同定された成長ホルモン分泌促進ペプチド、少なくとも1つのワクチン抗原、及び薬学的に許容される賦形剤又は希釈剤を含む、ワクチン組成物。
【請求項5】
前記ワクチン抗原が、ペプチド、タンパク質、ウイルス及び弱毒化細菌からなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
感染性病原体によって引き起こされる疾患の予防において使用される、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
哺乳類、鳥類又は魚類において経口的に又は注射によって投与される、請求項4~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ワクチンが魚類へ経口で投与される場合に、配列番号:1又は配列番号:2の配列の前記ペプチドが、50~600μg/kgの処方された餌の濃度である、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
ヒトを除く哺乳類、鳥類又は魚類におけるワクチン抗原に対する免疫応答を増加させるための方法であって、前記抗原の分子アジュバントとして、有効量の配列番号:1又は配列番号:2として同定された成長ホルモン分泌促進ペプチドが投与される、前記方法。
【請求項10】
前記ワクチン抗原が、感染性病原体によって引き起こされる疾患の予防のために使用される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記ワクチン抗原及び前記分子アジュバントペプチドが経口経路によって投与される場合に、配列番号:1又は配列番号:2の配列の前記ペプチドが、50~600μg/kgの処方された餌で使用される、請求項に記載の方法。
【請求項12】
前記ワクチン抗原及び前記分子アジュバントペプチドが注射によって投与される場合に、配列番号:1又は配列番号:2の配列のペプチドが、0.1~40μg/g動物体重で用いられる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にワクチン及びそれらのためのアジュバントの開発についての分子生物学及び免疫学の分野に関する。特に、本発明は、ワクチンのための分子アジュバントとしての、合成の成長ホルモン放出ペプチドGHRP-6及びその構造アナログA233から選択される、成長ホルモン分泌促進ペプチドの使用を開示する。
【背景技術】
【0002】
成長ホルモン分泌促進物質(GHS)(Davenport et al.2005,Pharmacol.Rev.57:541-546)は、成長ホルモン(GH)の分泌をインビトロ及びインビボで刺激するペプチジル分子及び非ペプチジル分子を包含する、化合物のファミリーである(Tannenbaum and Bowers,2001,Endocrine 14:21-27)。グレリンは、成長ホルモン分泌促進物質受容体(GHS-R)についての内在性リガンドである(Kojima et al.,1999,Nature 402:656-660)。それは、エネルギーバランスの調節、食欲及び代謝シグナルを包含する複数のプロセスにとりわけ関与する(Dixit and Taub,2005,Exp.Gerontoly 40:900-910)。加えて、それは抗炎症作用を発揮し、ファゴサイトーシスを修飾し、胸腺リンパ球新生を増進するだけではなく、敗血症性ショックを減弱させる(Hattori,2009,J.Clin.Endocrinol.Metab.86:4284-4291)。
【0003】
GHSは、GH分泌を刺激することに加えて、哺乳類、鳥類及び魚類における食欲及び体重増加を調節する(Kaiya et al.,2008,Comp.Biochem.Physiol.A 149:109-128)。GHSは、複数の研究において心臓機能変数をインビボで改善すること、及び癌細胞の増殖を阻害することによる、心臓保護特性も有する(Locatelli and Rossoni,1999,Endocrinol.140:4024-4031;Tivesten and Bollano,2000,Endocrinol.141:60-66;Cassoni et al.,2001,J.Clin.Endocrinol.Metab.86:1738-1745)。さらに、GHSは炎症及び老化等のプロセスに関与する(Hattori,2009,J.Clin.Endocrinol.Metab.86:4284-4291)。
【0004】
ヘキサマーGHRP-6(そのアミノ酸配列はHis-D-Trp-Ala-Trp-D-Phe-Lys-NHである)は、哺乳類及び鳥類(Bowers et al.,1984,Endocrinol.114:1537-45)に加えて、甲殻類(欧州特許第EP1477181B1号)における成長ホルモンの放出の引き金となることによって、非常に強力で安全であるということが公知である。
【0005】
動物モデルにおいて、グレリンの抗炎症効果の例が記載されている(Smith et al.,2005,Trends Endocrinol.Metab.16,436-442)。大部分のそれらの研究において、病変又は用量、及び使用される治療スケジュールにかかわらず、アシル化グレリンの使用が炎症誘発性サイトカインの発現及び/又は産生を抑制することが示唆された(Baatar et al.,2011,Molecular and Cellular Endocrinology 340:44-58)。死亡率、ならびにインビボ及びインビトロでリポポリサッカライド(LPS)によって引き起こされる炎症性効果に加えて、齧歯類モデルにおける敗血症の減弱におけるその役割は以前に提案されていた(Dixit et al.,2004,J.Clin.Invest.114:57-66;Taub,2007,Vitam.Horm.77:325-346)。
【0006】
慢性炎症のマウスモデルで遂行された研究において、グレリン及び合成アゴニストGHRP-2は、活性化されたマクロファージからのインターロイキン6(IL-6)及び硝酸の放出を有意に阻害し、関節炎を減弱した(Granado et al.,2005,Am.J.Physiol.Endocrinol.Metab.288:E486-E492)。さらに、遂行された類似の研究はそれらの抗炎症効果を証明した(Gonzalez-Rey et al.,2006,Gastroenterol.130(6),1707-1720)。
【0007】
2011年にLofti及び共同研究者によって遂行された研究(Lofti et al.,2011,Kafkas Univ Vet Fak Derg 17(6):949-952)において、卵内のグレリンの注射は、新しく孵化したニワトリにおける白血球鑑別カウントに影響した。用量100ngによるインキュベーションの10日目に、それは、偽好酸球、好塩基球及び好酸球のカウント、ならびに偽好酸球/リンパ球比の増加を引き起こしたが、リンパ球を減少させた。
【0008】
硬骨魚類の事例において、インビトロの研究は、グレリンによるニジマス(Oncorhynchus mykiss)白血球の処理が、これらの細胞においてスーパーオキシドアニオンの産生、GHメッセンジャーRNAのレベル、及びスーパーオキシドジスムターゼを増加させることを示した(Yada et al.,2006,Endocrinol.189:57-65)。その研究において、[D-Lys3]-GHRP-6分泌促進物質受容体アンタゴニストによる事前のインキュベーション、及びGHの免疫中和は、この活性酸素種(O2・-)の産生を減少させたことが報告され、それは白血球へのグレリンの効果がGH分泌によって媒介されることを示唆する(Yada et al.,2007,Endocrinol.152:353-358)。その一方で、GHRP-6アナログ分泌促進物質ペプチド(A233)により実行されたインビトロの研究は、ティラピア(Oreochromis属の種)白血球におけるファゴサイトーシス活性の指標(スーパーオキシドアニオン等)の産生が刺激されることを示した(Martinez et al.,2012,J.of Endocrinol.214:409-419)。同じ研究において、浸漬浴によるA233の投与は、ティラピア仔魚(Oreochromis属の種)において、酵素スーパーオキシドジスムターゼによる抗酸化防衛のパラメーターに加えて、レクチン力価及び抗プロテアーゼ活性を刺激することが証明された。GHRP-6を経口的に与えられた稚ティラピアにおいて遂行された他の実験において、レクチン力価及び胃粘膜の上皮内リンパ球の数の増加があった(Martinez et al.,2016,Aquaculture 452 304-310)。この後者のパラメーターは先天性免疫系に関連し、非特異的であり、特定の抗原の投与に関連しない。
【0009】
異なる病原体に対する防御免疫は、適切なワクチンアジュバントにより生成され得る応答を要求する(Awate et al.,2013,Frontiers in Immunology 4:1-10)。したがって、新規のアジュバントを同定及び開発すること、従来のワクチン接種ストラテジーへこれまで抵抗性があった病原体に対するワクチンの開発に取り組むこと、ならびに利用可能な認可アジュバントがほとんどないという限定を克服することが必要である(Harandi et al.,2010,Vaccine 28(12):2363-6;Perez et al.,2012,Braz J Med Biol Res 45(8):681-92)。
【0010】
多くのアジュバントが強い非特異的炎症応答を増強し、共投与された抗原の免疫原性を増加させるが、望まれない効果も引き起こし、そういう訳で、ワクチンによって付与される至適で安全な保護を得るために、より特異的かつより直接的な免疫応答を惹起する新しいアジュバントを開発することが必要である。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、共投与された抗原への免疫応答を有効に促進することが可能なアジュバントの提供によって、上記の問題を解決する。本発明は、異なる免疫戦略において使用されるワクチンの製造における分子アジュバントとしての成長ホルモン分泌促進ペプチド(配列番号:1(GHRP-6)又は配列番号:2(A233)として同定された)の使用を開示する。本発明の一実施形態において、前記ワクチンは感染性病原体によって引き起こされる疾患の予防において使用される。特定の実施形態において、これらの疾患は哺乳類、鳥類又は魚類に影響し;感染性病原体はとりわけウイルス、細菌及び外部寄生虫であり得る。
【0012】
本発明の文脈において、「分子アジュバント」という用語は、ワクチン抗原に対する免疫応答をポジティブに修飾でき、その増加をもたらす物質を指す。現在まで分子アジュバントとしてのグレリン及びそのアナログの使用を実証又は示唆する研究はない。これとは対照的に、炎症性疾患の治療のためのグレリンの使用が提案されてきた(Gonzalez-Rey et al.,2006,Gastroenterology 130(6),1707-1720;Baatar et al.,2011,Mol Cell Endocrinol 340:44-58)。既存の知識を考慮すると、GHRP-6又はA233をワクチン抗原と組み合わせて投与することが前記抗原に対する特異的免疫応答を刺激することを実証するという本発明において見出された効果は、予想外のものである。
【0013】
別の実施形態において、配列番号:1(GHRP-6)又は配列番号:2(A233)として同定された成長ホルモン分泌促進ペプチド、少なくともワクチン抗原、及び薬理学的に許容される賦形剤又は希釈剤を含む、ワクチン組成物も記載される。本発明のワクチン組成物は、本技術分野において当業者に公知のワクチンアジュバントとして作用する他の化合物を含み得る。これらのアジュバント内に、例えばアルミニウム塩及び油性アジュバントがある。
【0014】
本発明の異なる実施形態を例証するために、ワクチン組成物はその中に様々な抗原及びGHRP-6又はA233ペプチドを含んでいた。GHRP-6又はその構造アナログA233と組み合わせる抗原には、オボアルブミン(OVA)、デング熱2ウイルスカプシドタンパク質(C2)、Rhipicephalus sanguineusからのpP0ペプチド(Rodriguez-Mallon et al.,2012;Vaccine 30:1782-1789)、キメラタンパク質P0-my32(Lepeophtheirus salmonisの2つの抗原の融合ポリペプチド)、ならびにL.salmonisからのP0及びT細胞エピトープの融合ポリペプチド(P0-TT)がある。本発明への限定ではないが、組成物はマウス、鳥類及び魚類へ投与され、前記分泌促進物質についてアジュバント効果が初めて実証された。予想外に、抗原と組み合わせたGHRP-6又はA233の投与が、複数の動物種において、抗原特異的抗体レベルを増加させることが観察された。
【0015】
本発明の一実施形態において、ワクチン抗原は、ペプチド、タンパク質、ウイルス、及び弱毒化細菌からなる群から選択される。本発明の1つの好ましい実施形態において、前記ワクチンは、哺乳類、鳥類又は魚類へ投与される。より好ましい実施形態において、本発明のワクチン組成物は、経口的又は注射によって投与可能(administrable)である。特定の実施形態において、ワクチン組成物中で、配列番号:1又は配列番号:2のペプチドは、ワクチンが魚類へ経口で投与される場合に、50~600μg/kgの処方された餌の濃度である。
【0016】
本発明はワクチン抗原に対する免疫応答を増加させる方法も開示し、それは、前記抗原の分子アジュバントとしての有効量の成長ホルモン分泌促進ペプチド(配列番号:1(GHRP-6)又は配列番号:2(A233)として同定される)の投与によって特徴づけられる。本発明の一実施形態において、ワクチン抗原は感染性病原体によって引き起こされる疾患の予防のために使用される。前記方法の特定の実施形態において、ワクチン抗原及びアジュバントペプチドが経口で投与される場合に、配列番号:1又は配列番号:2の配列のペプチドは、50~600μg/kgの処方された餌で用いられる。前記方法の別の実施形態において、分子アジュバントとして作用するワクチン抗原及びペプチドが注射によって投与されるならば、配列番号:1又は配列番号:2の配列のペプチドは、0.1~40μg/gの動物体重で用いられる。本発明の目的のために、ペプチドGHRP-6及びA233(公知のGH分泌促進物質)は化学合成によって得られる。
【0017】
本発明の様々な実施形態において示されるように、対象となる抗原に対する免疫応答の増加は、様々な感染性病原体(ウイルス、細菌及び外部寄生虫の実体が挙げられる)に対するより高いレベルの保護を導く。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】OVA、GHRP-6及びフロイントアジュバント、又はOVA及びフロイントアジュバントにより免疫したマウスにおける抗体応答。A.皮下経路(s.c)によって免疫した群における免疫グロブリンG(IgG)の力価。B.腹腔内経路(i.p)によって免疫した群におけるIgGの力価。各々の群内の中央値及び標準偏差を示す。**はp<0.0014を示し、***はp<0.001を示す。
図2】s.c経路及びi.p経路によって、OVA、GHRP-6及びフロイントアジュバント(それぞれ群3及び4);又はs.c経路及びi.p経路によってOVA及びフロイントアジュバント(それぞれ群5及び6)により免疫したマウスにおける抗体応答。A.IgG1の力価。B.IgG2aの力価。各々の群内の中央値及び標準偏差を示す。**はp<0.0014を示し、***はp<0.001を示す。
図3】i.p経路によって、A233ペプチド、OVA及びフロイントアジュバント;又はOVA及びフロイントアジュバントにより免疫したマウスにおけるIgG力価。免疫スケジュールの22日目に抽出した血清中で検出された抗体のレベルを示す。各々の群内の中央値及び標準偏差を示す。**はp<0.0014を示す。
図4】s.c経路によって、C2及びアルミニウム;又はC2、GHRP-6及びアルミニウムにより免疫した群におけるIgG力価(免疫スケジュールの28日目に検出した)。各々の群内の中央値及び標準偏差を示す。*はp<0.05を示す。
図5】i.p経路によって、P0及びフロイントアジュバント;又はP0、GHRP-6及びフロイントアジュバントにより免疫したマウスにおける免疫スケジュールの36日目のIgG力価。各々の群内の中央値及び標準偏差を示す。*はp<0.05を示す。
図6】免疫原をi.p.経路によって投与し、実験の28日目に検出した、P0-my32、又はGHRP-6もしくはペプチドA233と組み合わせたP0-my32により免疫したティラピアにおける免疫グロブリンM(IgM)力価。A.及びC.my-32に対するIgMの力価。B及びD.P0に対するIgMの力価。A及びB中でGHRP-6有り又は無しで処理した動物における力価を示す一方で、C及びD中でA233有り又は無しで処理した動物における力価を示す。各々の群内の中央値及び標準偏差を示す。*はp<0.01を示し、**はp<0.0014を示し、***はp<0001を示す。
図7】Montanide ISA 50を含むP0-my32処方、又はGHRP-6及びMontanide ISA 50を含むP0-my32による免疫後の、実験の28日目で1:1000を超えるIgM力価のティラピアのパーセント。A.抗my32の応答動物のパーセンテージ。B.抗P0の応答動物のパーセンテージ。
図8】P0-TT、又はGHRP-6もしくはペプチドA233の存在下でP0-TTによりi.p.経路によって魚に免疫した、ナマズ(claria)における、実験の28日目のIgM抗体の応答。A.アジュバントとしてのGHRP-6による評価実験群における抗P0の力価。B.アジュバントとしてのA233による評価実験群における抗P0の力価。免疫原はすべてMontanide ISA 50と組み合わせた。
図9】マゴイにおけるAeromonas hydrophilaに対する凝集抗体の力価。Y軸値は中央値±標準誤差を表わす。*はp<0.05を示し、**はp<0.01を示す。群1:PBSを注射した。群2:ホルマリン不活性化A.hydrophila細胞を注射した。群3:ホルマリン不活性化A.hydrophila細胞及びGHRP-6(1匹の魚あたり20μg)を注射した。免疫原はすべてMontanide ISA 50と組み合わせた。
【実施例
【0019】
例1 OVAに対する体液性免疫応答へのGHRP-6の共投与の効果
36匹のメスBALB/cマウスを使用した。各々6匹の動物の6つの研究群を分離した。3つの群をs.c経路によって免疫し、残りをi.p経路によって処理した。すべての群において、免疫原をフロイントアジュバントにより乳化した。
群1:プラセボ(リン酸緩衝食塩水、PBSと略)。s.c経路。
群2:プラセボ(PBS)。i.p.経路。
群3:10μg/動物でGHRP-6及び5μg/動物でOVA。s.c.経路。
群4:10μg/動物でGHRP-6及び5μg/動物でOVA。i.p経路。
群5:5μg/動物でOVA。s.c.経路。
群6:5μg/動物でOVA。i.p.経路。
【0020】
すべての群におけるマウスは150μLの免疫原を受け、免疫スケジュールの1及び15日目に動物へ投与された。0(免疫前血清)、8、15、22、36、43及び50日目に血液抽出を遂行した。全IgG力価、IgG1及びIgG2aを評価した。第1の免疫において完全フロイントアジュバント(CFA)及び次の免疫においてフロイント不完全アジュバント(IFA)を使用した。
【0021】
GHRP-6及びOVA(s.c経路によって)により免疫された群の動物は、実験の22、36、43及び50日目に、同じ経路によってGHRP-6無しのOVAを受けた群のものよりも高い力価(統計的有意差による:p<0.05)を有していた(図1A)。同じ免疫原であるが腹腔内経路によって注射した動物は、実験の36及び43日目に同じ挙動であった(図1B)。
【0022】
IgG1及びIgG2aの力価を、s.c経路及びi.p経路によってGHRP-6有り又は無しのOVAにより免疫された群において、36日目に抽出した血清中で決定した(図2A及び2B)。両方の投与経路について、GHRP-6により処理した群と前記分泌促進物質を受けなかった群との間で、IgG2a力価の有意差は観察されなかった。(図2A及び2B)。有意差は両方の投与経路においてIgG1について観察され、GHRP-6の存在下においてワクチン接種した群においてより高かった。
【0023】
比IgG1/IgG2a(それぞれTh2又はTh1の応答への差異的な反応性の測定値として)は、OVA及びフロイントアジュバントのみを注射した群に比較して、GHRP-6及びフロイントアジュバントの存在下においてOVAをi.p経路によって免疫した群において有意に上回っていた。この比を表1中で示し、データは、群中の6匹の動物に対応するIgG1/IgG2aの比の平均を表わす。
【表1】
【0024】
例2 OVAに対する体液性免疫応答へのペプチドA233の共投与の効果
ペプチドA233がOVAへのアジュバント効果を発揮するかどうかを評価するために、18匹のメスBALB/cマウスを使用した。すべての群におけるマウスはi.p経路によって150μLの免疫原を受け、免疫スケジュールの1及び15日目に動物へ与えられた。0(免疫前血清)、8、15、22、36、43及び50日目に血液サンプルを採取した。血清中に存在する全IgGの力価を評価した。動物を、5μgのOVA/動物及び10μgのA233/動物(群2)、又は5μgのOVA/動物(群3)により免疫した。対照群はPBS(群1)を注射した。すべての免疫原をフロイントアジュバントにより乳化した。
【0025】
OVA及びペプチドA233を注射した動物において、免疫スケジュールの22日目に、OVA単独により免疫したものと比較して、抗OVAの抗体力価で有意な増加があった(図3)。
【0026】
例3 C2抗原に対する体液性免疫応答へのGHRP-6の共投与の効果
C2抗原(デング熱ウイルスカプシドタンパク質)を、15kDaの分子量を備えたEscherichia coli中で組み換えタンパク質として得た。C2によりワクチン接種したマウスにおける液性免疫応答及び細胞性免疫応答を評価するために、GHRP-6の存在又は非存在下において、6週齢の24匹のメスBALB/cマウスを選択した。それらを3つの群へと分配した。実験群に従って各々の動物に免疫原を与えた。
群1:10μgのC2。
群2:10μgのGHRP-6と共処理した10μgのC2。
群3:PBS。
【0027】
すべての群において、免疫原は水酸化アルミニウム(アラムとしても公知)をさらに含んでいた。免疫スケジュールの0、15及び30日目にs.c経路によって、免疫を遂行した。血液サンプルを0(免疫前)、7、16、21、28及び35日目に採取して、全IgG力価を査定した。
【0028】
図4は、免疫スケジュールの28日目に、群2(C2及びGHRP-6により処理した)は、群1(GHRP-6無しでC2及びアジュバント水酸化アルミニウムにより処理した)に比較して、抗C2 IgG力価の有意な増加を示したことを示す。
【0029】
例4 R.sanguineusのペプチドP0に対する体液性免疫応答へのGHRP-6の共投与の効果
ペプチドP0は、マダニR.sanguineusとその哺乳類宿主との間で、リボソームタンパク質P0のあまり配列同一性のない領域に対応する断片である。GHRP-6及びP0の共投与によって刺激された体液性免疫応答を評価するために、24匹のメスの6週齢のBALB/cマウスを選択し、8匹のマウスの3つの群へと分割した。各々の動物は、免疫スケジュールの1、15及び29日目にi.p経路によって150μLの免疫原を受けた。第1の免疫においてFCAを用い、他の2つの投与においてFIAを使用した。
群1 対照(PBS)。
群2 100μgのP0。
群3 200μgのGHRP-6と共処理した100μgのP0。
【0030】
血液サンプルを0(免疫前血清)、8、16、21、28、36、43、50及び58日目に採取して、全IgGレベルを決定した。P0により免疫した動物において、GHRP-6の存在下で、スケジュールの36日目の抗P0抗体レベルを示す図5中で観察されるように、GHRP-6を受けなかったものに比較して、IgG力価の有意な増加があった。
【0031】
例5 ティラピア(Oreochromis種)におけるP0-my32タンパク質に対する体液性免疫応答へのGHRP-6又はペプチドA233の共投与の効果
L.salmonisのP0リボソームタンパク質の35アミノ酸ペプチドをコードする相補的デオキシリボ核酸(cDNA)を、同じ外部寄生虫のmy32タンパク質をコードするcDNAのN末端部へ融合したもの(Carpio et al.,2013;Exp.Parasitol 135:188-199)を、宿主細菌E.coliにおける対象となる遺伝子の誘導発現のためにデザインされたベクター中にクローン化することによって、キメラタンパク質P0-my32を生成した。このタンパク質を細菌中で産生し、金属キレート親和性クロマトグラフィーによってヒスチジンテイルを備えた融合タンパク質として精製した。
【0032】
免疫実験を達成するために、Oreochromis niloticusのオス稚魚の6つの研究群を、各々15匹の動物により形成した。すべての群において、免疫原を、Montaide ISA 50によりアジュバント化して、i.p.経路によって投与した。実験群は以下の免疫原を受けた。
群1:PBS。
群2:P0-my32(1μg/g魚体重)。
群3:20μgのGHRP-6により共処理したP0-my32(1μg/g魚体重)。
群4:20μgのA233により共処理したP0-my32(1μg/g魚体重)。
群5:P0-my32(1μg/g魚体重)。この群の魚に、注射でのmy32の投与の1週間前及び1週間後に、1kgの餌あたり100μgのGHRP-6を処方した餌を1日2回与えた。
【0033】
実験の経過の間に、群1~4中の魚に、体重の1%の率でバランスのとれた非薬用の商業的な処方で1日2回餌を与えた。免疫をスケジュールの0及び14日目に遂行した。血液サンプルを実験の開始から0、21、28及び35日目で採取した。GHRP-6の存在下でP0-my32を注射したティラピアにおいて、P0-my32を注射した群に比較して、抗my32のIgM抗体力価の増加があった。
【0034】
28日目に抽出した血清中の抗体のレベルを示す図6A中で示されるように、この増加は統計的に有意であった。同じ効果は抗P0IgM力価について観察された(図6B)。対照群に比較して、キメラ抗原とA233の共投与は、2つの構成要素に対するIgM力価の増加も可能にした(図6C及び6D)。P0-my32を注射し同時にGHRP-6を含有する餌を与えた群も、修飾されない餌を与えたキメラタンパク質を注射した群に比較して、力価の増加を示した(表2)。
【表2】
【0035】
加えて、i.p経路によってGHRP-6を含有する免疫原を注射した群(群3)において、ペプチドGHRP-6を受けずにP0-my32により処理した群(群2)に比較して、1:1000を超えるIgM力価の有るキメラタンパク質の両方の構成要素についての応答動物の数は、より高かった。それは図7A及び7B中で理解することができる。
【0036】
例6 ナマズ(Clarias gariepinus)における体液性免疫応答へのGHRP-6又はA233及びP0-TTタンパク質の共投与の効果
キメラタンパク質P0-TTは、a)35のアミノ酸(L.salmonisのP0リボソームタンパク質とその宿主のうちの1つ(Salmo salar)における同じタンパク質との間であまり保存されていない領域に対応する)によって構成された、pP0と命名されたペプチド、ならびにb)それぞれはしかウイルス及び破傷風トキソイドに由来する2つのT細胞エピトープに基づく。実験のために、C.gariepinusの4つの研究群を形成し、各々の群中に12匹の動物があった。1グラムの動物体重あたり1μgのP0-TTタンパク質(群2)、又は1匹の動物あたり20μgのGHRP-6もしくはA233のいずれかと共投与した、同じ用量のキメラタンパク質P0-TT(1μg/g動物体重)(それぞれ群3及び4)により、120μLの全体積でi.p.経路によって、これらの動物を免疫した。対照群(群1)は同じ体積のPBSを受けた。すべての群に対応する免疫原を、Montanide ISA 50油性アジュバントにより乳化した。免疫を投与スケジュールの0及び14日目に同じ条件下で遂行した。血液サンプルを実験の開始からカウントして0、21、28及び35日目で採取した。
【0037】
P0-TT及びGHRP-6により免疫したナマズにおいて、GHRP-6ペプチド無しのP0-TTを注射した群に比較した場合に、抗P0のIgM抗体力価の増加があり、それは28日目で統計的有意差を有していた(図8A)。同じ効果は、P0-TT及びA233の投与後の得られた力価について観察された(図8B)。
【0038】
例7 細菌Aeromonas hydrophilaに対するマゴイ(Cyprinus carpio)の体液性免疫応答へのGHRP-6のアジュバント効果の実証
実験を40±10gのコイ(C.carpio)により実行した。これらの動物を28±2℃の温度で600Lの水槽中で飼育した。3つの実験群(各々10匹のコイ)を確立し、以下の免疫原をi.p.経路によって注射した。
群1:PBS+Montanide ISA 50。
群2:不活性化A.hydrophila細胞(1×10コロニー形成単位、CFUと省略)+Montanide ISA 50。
群3:不活性化A.hydrophila細胞(1×10CFU)+20μgのGHRP-6/魚+Montanide ISA 50。
【0039】
魚に0及び14日目に注射し、血液サンプルを0及び21日目に尾静脈から収集した。A.hydrophilaに対する凝集抗体の力価は、GHRP-6ペプチド無しの細菌により免疫された群に比較して、細菌及びGHRP-6により免疫された群において有意により高かったことを、この結果は示した(図9)。これらの結果は、魚における分子アジュバントとしてのGHRP-6の効果を確証する。A.hydrophila細胞の調製及び抗体力価の測定を、以前の報告(Yin et al.(1996)Fish & Shellfish Immunol.6,57-69)に従って遂行した。
【0040】
例8 不活性化Aeromonas hydrophila細菌及びGHRP-6ペプチドと共投与した不活性化細菌により免疫した魚における制御された攻撃投与実験
実験を30±5gのマゴイ(C.carpio)により実行した。これらの動物を30±2℃の温度で250Lの水槽中で飼育した。3つの実験群(各々20匹のコイ)を確立し、動物に以下をi.p.経路によって注射した。
群1:PBS+Montanide ISA 50。
群2:不活性化A.hydrophila細胞(1×10CFU)+Montanide ISA 50。
群3:不活性化A.hydrophila細胞(1×10CFU)+20μgのGHRP-6/魚+Montanide ISA 50。
【0041】
魚に0及び14日目に注射した。攻撃投与を細菌の50%致死用量(LD50)のi.p注射によって21日目に遂行し、各々の群における死亡率を7日間記録した。相対的生存率(RSR)を以下のように計算した。
RSR(%)=(対照の%死亡率-処理した動物の%死亡率)/(対照の%死亡率)×100。
【0042】
その結果として、65%のRSRは群2及び95%のRSRは群3において得られ、GHRP-6の投与が、病原体によりワクチン接種し攻撃投与した魚における生存率を増加させることを実証する。
【0043】
例9 :ウシ血清アルブミンに対するニワトリの体液性免疫応答へのGHRP-6のアジュバント効果の実証
15羽の新生ブロイラー(ハイブリッドEB34 Cronish×White Plymoth Rockタイプ)を使用し、それらを各々が5羽の動物の3つの実験群へと分割した。動物を、1羽の動物あたり5μgのBSA(群2)、又は1羽の動物あたり5μgのBSA及び20μgのGHRP-6(群3)により、i.p経路によって免疫スケジュールの12及び18日目に免疫した。対照群(群1)をPBSにより免疫した。血清中のIgY抗体のレベルを実験の25日目に決定した。BSAにより免疫した群の動物ならびにBSA及びGHRP-6を受けた動物における抗体力価間に統計的有意差があった(表3)。
【表3】
【配列表フリーテキスト】
【0044】
配列番号1:<223>アミド化
配列番号2:<223>人工配列の記載:ペプチドA233、LysとAspとの間でラクタム結合を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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